転倒リスクに対する多因子介入プログラムの有用性検証STRIDEの残念な結果
高齢者における転倒は、死亡にもつながる重篤な事故です。アメリカでは毎年4人に1人の高齢者が転倒しており、20ー30%が中等~重篤なケガを負い、約3万人の死亡、300万件の救急外来受診、80万件の入院へと至っています。転倒予防を目指した介入も積極的に行われており、多方面からアプローチを行う多因子介入プログラムmultifactorialinterventionsの有用性を示す報告も出ています。日本骨粗鬆症学会の骨粗鬆症マネージャーや日本転倒予防学会の転倒予防指導士も同様の発想です。アメリカでは2014年にStrategiestoReduceInjuriesandDevelopConfidenceinElders(STRIDE)という患者中心の介入(patient-centeredintervention)の有効性...転倒リスクに対する多因子介入プログラムの有用性検証STRIDEの残念な結果
"Lifeislikecoffee,thedarkeritgets,themoreitenergizes." (人生はコーヒーに似ている。濃くなれば元気がでる。)ーAnkitaSinghalー「○○(食品)は癌を防ぐ」「××は老化を抑える」という類の情報番組は、癌の民間療法のように真に有害なものは困りますが、エンターテインメントの枠に収まっており、害がなければよいかと思っています。しかし一昔前の情報番組の直後からスーパーの納豆が消え去ったというような話を聞くと、困ったもんだと思います。などと言いながら、緊急事態宣言後のステイ・ホーム期間にコーヒーを飲むことが増えたので、NEJMのreviewでコーヒーが健康にいいとか悪いとか言われると小市民なので結構気になります。「へー」と思ったところを順不同で箇条書きにします...コーヒー・カフェイン・健康
近年のヨーロッパにおける洪水頻発期間は過去500年と異なった特徴を有する
「近年のヨーロッパにおける洪水多発期間は過去500年とは異なる特徴を有する」ー神よねがはくは我をすくひたまへ大水ながれきたりて我がたましひにまでおよべり (詩篇第六十九篇)ーこの度の球磨川や最上川の氾濫による大きな被害状況を見ると、もう少し有効な対策が取れないものかと、もどかしく悲しい気持ちになってしまいます。被害にあわれた方々には心よりお見舞い申し上げます。最近このような豪雨や洪水が増えているように感じますが、これも地球温暖化の影響でしょうか。実はヨーロッパでも近年洪水が頻発しているようです。今週号のNatureに掲載されたGünterBlöshlらの論文では、過去500年のうちヨーロッパで洪水が頻発した期間を同定し、最近の傾向と比較しています。彼らは洪水に関する信頼できる記録を元に、ヨーロッパにおける「洪水...近年のヨーロッパにおける洪水頻発期間は過去500年と異なった特徴を有する
COVID-19の病態におけるtypeIinterferon(IFN)の役割についてはいくつかcontroversialな結果が報告されており、この論文では重症なCOVID-19患者の血液細胞ではTNF/IL-1β-driveninflammationとともにtypeIIFN反応も亢進していることをsinglecellRNA-seqによって示しています。このようなtypeIIFNresponseは重症インフルエンザ患者においても見られましたが、マイルドなCOVID-19患者では見られなかったという結果です。一方以前紹介したJérômeHadjadjらの論文(Science 13Jul2020:eabc6027DOI:10.1126/science.abc6027)ではtypeIIFNresponseは低下してい...COVID-19とtypeIinterferon反応
周術期合併症のうち、心筋梗塞などの心血管障害は患者死亡にもつながる重篤な合併症であり、適切なリスク評価、そしてできれば予防が望まれるものです。我々も術前検査としてルーチンで心電図検査は行っていますし、何らかの問題がある患者については循環器内科にリスクを評価していただいてますが、結局よほどリスクが高くなければ、(不安を感じつつも)ある程度のリスクは覚悟して手術を行う、という選択肢に落ち着くことが多いです。このreviewでは心臓手術以外の手術における周術期心血管合併症について、リスク評価、検査、予防の現在の知見をまとめてくれています。内容を自分なりに要約しますと----------------------①もちろん手術の種類ごとにリスクは異なります。一般的な整形外科手術は≥1%risk(中リスク)、脊椎外科を含む...周術期心血管合併症について
サイトカインストーム患者に対するメチルプレドニゾロンおよびトシリズマブ治療
RECOVERYtrialからメチルプレドニゾロン(MP)の有効性が示されましたが、この論文ではサイトカインストーム(cytokinestormsyndrom,CSS)に陥った患者を対象にMPおよび抗IL-6受容体抗体トシリズマブ(TCZ)の有効性を検討したものです。CSSの定義は酸素飽和度≤94%あるいは頻脈(>30/min)を示し、CRP高値(>10mg/dL)、高血清ferrtin(>900μg/Lあるいは入院後48時間以内に2倍以上の増加)、高D-dimer(>1500μg/L)のうち2つ以上を満たすというものです。入院後すぐにMP投与(250mgIVonday1,80mgIVondays2–5)を行い、反応が無かったり呼吸状態が悪化した患者に対しては8mg/kg(max800mg)のを単回投与、反応が...サイトカインストーム患者に対するメチルプレドニゾロンおよびトシリズマブ治療
ネアンデルタール人Homoneanderthalensisは約40万年前に出現し、2万数千年前に絶滅したホモ属ですが、DNAの解析から現生人類Homosapiensの祖先ではなく別系統のHomo属であると考えられています。しかし最近の研究から、現生人類の遺伝子にネアンデルタール人類特有の遺伝子が1~4%混入していることから、両者の混血が存在したことが明らかになりました(Greenetal.,Science.2010May7;328(5979):710-722)。両者に共通した遺伝子の中で、現生人類遺伝子の変異につながっているものがいくつか存在し、中でも1つの遺伝子中に数個の変異があるものは、変異に何らかの意味が存在すると考えられています。そのような遺伝子の1つが電位依存性ナトリウムチャネルであるNav1.7をコ...ネアンデルタール人は痛がりだったか?
COVID-19診断法のブレークスルーを目指すRADx program
"Sharktank"というのは何かと思ったらアメリカ版の『マネーの虎』(どちらが最初か知りませんが)なんですね。でもこのマネーの虎に出資するのは一般投資家ではなく、NIHです。アメリカでは中々COVID-19の感染拡大に歯止めがかからず、経済活動や文化活動にも計り知れないダメージを与えています。感染拡大抑制が難しいのは、無症状感染者が周囲に感染を広めるため、という点に関してはコンセンサスが得られていると思います。無症状感染者を検出するには検査を行うしかないわけですが、現在行われているRT-PCR検査には欠点があり、責任あるデータを出すのであれば、通常の研究レベルのPCRではだめで、然るべき認可を受けた機器や設備、スペースが必要ですし、検査を行う人手や結果が出るまでの時間の問題もあり、ただ単に「PCR検査を1日...COVID-19診断法のブレークスルーを目指すRADxprogram
オルガノイドの話が出だした頃は今一つ有用性が理解できなかったところもあるのですが、最近のこの分野の進歩は目を見張るものがあり、完全に動物モデルとヒト病態をつなぐ実験系というポジションを確立したように思います。自分が関心のある分野でいえば、京都大学の小川誠司先生および慶応大学の佐藤俊朗先生らが今年発表された患者細胞から作成したオルガノイドを用いた潰瘍性大腸炎の遺伝子変異同定に関する研究などは、オルガノイド研究の強みを発揮したすばらしい研究です(Nature.2020Jan;577(7789):254-259;Nature.2020Jan;577(7789):260-265)。整形外科分野においても京都大学の戸口田先生らは骨オルガノイドを用いて創薬スクリーニングを行っておられます。今後例えば脊髄オルガノイドを用いた...オルガノイド研究に対する期待
カテプシンK阻害薬Odanacatibは骨形成を阻害することなく骨吸収を抑制する
カテプシンKは破骨細胞に高発現するシステインプロテアーゼとして当時明海大学におられた久米川正好先生、手塚健一先生らによってはじめて同定されました(Tezukaetal.,JBiolChem.1994Jan14;269(2):1106-9)。Odanacatib(ODN)はカテプシンK特異的な阻害作用を有する骨粗鬆症治療薬として開発が進み、大規模なphaseIIIstudyであるLong‐termOdanacatibFractureTrial(LOFT;NCT00529373)において脆弱性骨折予防効果が示されましたが、脳梗塞の有害事象が有意に増加(1·7%[136/8043]vs1·3%[104/8028],HR1·32,1·02-1·70;p=0·034)したということで開発が断念されたという経緯があります(...カテプシンK阻害薬Odanacatibは骨形成を阻害することなく骨吸収を抑制する
Denosumabは破骨細胞分化・活性化を抑制することで骨密度を上昇させ、脆弱性骨折を減少させますが、リモデリングに伴う骨形成(remodeling-basedboneformation,RBBF)も強力に抑制することが知られています。しかしビスホスホネートとは異なり、大腿骨近位部の骨密度が持続して上昇することから、RBBF以外のメカニズムで骨密度増加を生じているのではないかと考えられています。以前Ominskyらはサルを用いた検討から、モデリングによる骨形成(modeling-basedboneformation,MBBF)がその機序ではないかと報告しました(JBoneMinerRes.2015Jul;30(7):1280-9)。今回のDempster先生らの報告はこれをヒトサンプルで示したものです。予定人工...デノスマブのモデリング依存性骨形成促進作用
少し前に世界中で大きな話題になったRandomizedEvaluationofCovid-19Therapy(RECOVERY)trialにおけるデキサメサゾンの有効性についての結果がようやくfullarticleとしてpublishされました。結果についてはすでにpublishされる前から散々解説されているように、6mg/dayのデキサメサゾン(経口あるいは静脈内)を10日間(あるいは退院まで)投与した患者では、標準治療のみの患者と比較してランダム化28日後までの死亡率が低く(22.9%vs25.7%,rataratio0.83;95%CI0.75to0.93;P<0.001)、補助換気を受けている患者ではrateratio0.64、酸素投与を受けている患者では0.82と有意に低かったのに対して呼吸補助を受け...RECOVERYtrialのどこがすごいか?
大腿骨近位部骨折患者の予後に対するCOVID-19の影響(スコットランドの場合)
同じような論文ばかりで恐縮ですが、大腿骨近位部骨折の術後転帰に対するCOVID-19の影響についてのスコットランドからの論文です。InternationalMulticentreProjectAuditingCOVID-19inTrauma&Orthopaedics(IMPACT)の一環として行われたものです。スコットランドの外傷センターを含む6病院で2020年3月1日から4月15日までに入院した大腿骨転子下骨折も含む大腿骨近位部骨折患者317人が対象です。うち27人にSARS-CoV-2感染が認められましたが、入院時に有症状だったのは7人だけで、うち1名は1回目のswabでは陰性で2回目検査で陽性になりました。残りの20人は入院時には無症状で、11人は入院後14日以内、9人は14日目以降に陽性になりました。入...大腿骨近位部骨折患者の予後に対するCOVID-19の影響(スコットランドの場合)
関節リウマチ(RA)の治療戦略はMTXを始めとしたDMARDsや生物学的製剤、そしてJAK阻害薬の登場とともに劇的に変化しており、現在では早期に診断されれば寛解導入が現実的な目標になっています。しかし寛解はゴールではなく、それ以降も治療は続くわけで、特にいかにして治療のde-escalation、つまり薬物の減量や中止を行っていくかがlife-longの治療戦略において重要になってきます。このような中で、疾患のflareup(再燃)を早期に検出できれば治療の組み立てに大いに役立ちます。このRockefeller大学からの論文は血球細胞のRNA-seqデータから、flareupに関与する遺伝子群を明らかにしたものです。RA患者自身に依頼して、毎週RoutineAssessmentofPatientIndexDat...関節リウマチの再燃は事前に検出できるか?
昨日は東京都の新規感染者(ウイルス陽性者)が286人ということで1日の記録更新だそうです。でもこのような1日1日の横断的な数字(検査数によって変わるので日ごとの比較は困難)よりも、本当に知りたいのは、①2週間前の新規患者の年齢分布と診断時の重症度②その人々がその後どのような経過をたどったかというような縦断データなのですが。。 この調査が一種のコホート調査であると考えれば、ある1時点における横断的なデータでは、調査した人が全体を代表するpopulationであることが担保されないと、結局全体については何も言えません。調査した集団が、例えば東京都全体の人口と年齢分布や性別、生活習慣、職業、併存症などが一致しているのであれば代表集団とみなせますが、極端に言えばすべて20代だったりすると全体の傾向を代表するデータとは言...どうして縦断データを調べないのでしょうか?
リツキシマブ使用関節リウマチ患者はCOVID-19が重症化するかも
日本では適応になっていませんが、リツキシマブRTXを投与していた関節リウマチ患者のCOVID-19患者で2例の死亡例があったというドイツからの報告です。またドイツのNationalRegistryからは、RTXを使用しているリウマチ性疾患患者がSARS-CoV-2感染症になると67%において入院が必要になったというデータもでているそうです(Hasselietal,submittedforpublication)。無γグロブリン血症(agammaglobulinemia)の患者では必ずしもCOVID-19が重症化しないのに対して、分類不能型免疫不全症(commonvariableimmunodeficiency)の患者では重症化したという他の報告(QuintiIetal.,JAllergyClinImmunol2...リツキシマブ使用関節リウマチ患者はCOVID-19が重症化するかも
現代の移植医療は驚くべきペースで進歩しており、当院でも心移植、肝移植はもちろん、肺移植も行われるようになりました。しかし脳死肺移植の場合には他の臓器移植にも増してにドナー肺の選択は厳格に行われ、提供された肺が条件を満たさない場合には移植はできません。移植医療の常で、ドナー肺の数は移植を必要とする患者数に全く足りていませんが、何らかの問題がある「障害肺」については、残念ながら移植に適さないとして廃棄されてしまう場合もあります。「障害のある,または障害の可能性が有るドナー肺」の積極的な利用を目的として体外肺灌流(exvivolungperfusion,EVLP)という方法があります。これは摘出したドナー肺に対して体外灌流を行う方法であり、日本でも京都大学のグループなどが積極的に研究を進めています。EVLPのメリット...ブタを用いたヒト移植肺の体外肺灌流
変形性膝関節症(KOA)に対するビスホスホネート(BP)の効果については、つい最近もオーストラリアからゾレドロン酸が軟骨の減少や臨床症状に影響しないという論文が出たばかりなのですが(Caietal.,JAMA.2020Apr21;323(15):1456-1466)、このOsteoarthritisInitiativeからの報告は、患者のsubgroupによっては有効かも、というものです。対象にしたのは4,674名(1,977人が女性)のコホートで、ベースラインで346人が何らかのBP(69%alendronate,19%risedronateなど)を内服していました。このコホートを2年間フォローしたところ、95人(13.8%うちBPuser35人)に単純XPでKellgren-Lawrence(KL)grad...ビスホスホネートは変形性膝関節症の進行予防に有効?
SARS-CoV-2に対するmRNAワクチンPhase 1 trialの結果
SARS-CoV-2のSpikeタンパク部分(S-2P)を標的にしたmRNAワクチンmRNA-1273(Moderna社)についてのPhase1trialの結果が報告されました。18歳から55歳の健常成人45人(大部分白人)に対して25,100,250μgのワクチンを投与したところ、2度の投与で全例にウイルスの中和活性が認められた、一方で何らかの副作用も全例に見られたとのことですが全体としてはmild(とはいえ1例は39.7度の発熱あり。mRNAを投与することによる自然免疫反応でしょうか)だったとのことで、期待が持てる結果かと思います。現在600人を対象としてPhase2trial(50μg,100μg投与)が進行しており(ClinicalTrials.gov number,NCT04405076)、Phase...SARS-CoV-2に対するmRNAワクチンPhase1trialの結果
OpenSAFELYを用いたCOVID-19の死亡リスク解析
OpenSAFELYというのはCOVID-19パンデミックに際してイギリスオックスフォード大学のDataLab、LondonSchoolofHygieneandTropicalMedicineのEHRgroup、そして電子カルテ企業がタイアップして作り上げたNHS電子カルテの解析プラットフォームです(https://opensafely.org/)。2400万人の患者情報を匿名化(仮名化)して解析可能としているそうです。今回OpenSAFELYを使用して10,926人のCOVID-19死亡者のデータを解析して死亡リスク因子を解析したという論文がNatureに出ました。男性(hazardratio(HR)1.59,95%confidenceinterval(CI)1.53–1.65);高齢と貧困、糖尿病、重症の喘...OpenSAFELYを用いたCOVID-19の死亡リスク解析
重症COVID-19においてはI型インターフェロン反応性が低下している
COVID-19の特徴として、ほとんど症状を示さない患者がいる一方で、一定の割合で重症化する人がいることが挙げられます。例えば中国からのICU患者についてのデータでは補助換気要あるいは死亡が6.1%、フランスからの報告では死亡率が0.7%とされています。これまでの臨床報告から、高齢者に重症者が多く、糖尿病や高血圧などの併存症を有する患者では重症化しやすいことが知られていますが、50歳以下の若年層や小児でも重症化する患者がいるのも確かです。したがって今後の治療戦略を考える上で重症化のリスク因子の解明が重要ですし、それによって日本人を含むアジア各国で重症者が少ない理由もわかるかもしれません。この論文で著者らは様々な重症度の患者について、臨床および生物学的データ、免疫細胞の詳細な表現型解析、全血トランスクリプトーム解...重症COVID-19においてはI型インターフェロン反応性が低下している
PCR検査についてはこれまで多くの方が色々な場で色々なことを仰っており、意見が異なる人を説得したり、考えを変えさせることは不可能だ、ということが良くわかったので、これまであまり自分の考えを述べませんでした(怖い人も多いし)。しかし東京でもまた感染者(症状がない人も多いので「ウイルス陽性者」という言い方の方が正確かもしれませんが)が増加してきて、再びPCR検査の議論が喧しくなってきたので、自分の考えをまとめてみたいと思います。とはいえ、自分の意見だけが正しいとも思いませんので、異なる考えの方の意見を変えたいというような野望はありません。私自身はPCR検査は「病院で医師が必要と考えた人が、速やかに、面倒くさい手続き(ストレス)なしに」行えればそれで良いという考えで、とにかくたくさん行うべき、という意見には反対です(...PCR検査をめぐる議論に思う事
COVID-19陽性の大腿骨近位部骨折患者においては術後生命予後が不良である
SARS-CoV-2陽性でも大腿骨近位部骨折の場合には手術を行うケースが多いと思いますが、この論文はイギリスのGreaterLondonのNHShospitalsで2020年2月1日から4月20日までに大腿骨近位部骨折で手術した全患者を対象に、COVID-19が予後に与える影響を検討したものです。解析対象になった442人のうち340人がPCR検査でSARS-CoV-2陰性、82人が陽性でした。陽性者には施設入所者が多い(79.3%vs16.5%,p<0.001)という特徴がありました。陽性率の高さにまず驚きますが、陽性例のうち40人(48.9%)は初回のPCRでは陰性で2回目以降に陽性になったという事実にさらにビビります。また陽性者のうち9人は無症状で、入院後呼吸器症状が出現しました。要は「施設に入っている大腿...COVID-19陽性の大腿骨近位部骨折患者においては術後生命予後が不良である
αβγの三つのサブユニットからなる三量体Gタンパク質(trimericGprotein)は、細胞内シグナル伝達の分野では古典的ともいえる存在で、1994年のAlfredGoodmanGilmanとMartinRodbellによるノーベル医学・生理学賞受賞をはじめとして、シグナル伝達系や受容体の発見など、何らかの意味でGタンパク質に関係する研究分野は5指に余るノーベル賞受賞者を輩出しています。また現在までに米国FDAが承認した治療薬の何と30%がGタンパク質受容体(G-proteincoupledreceptors,GPCRs)を標的とするものだそうです。日本からも宇井理生先生による百日咳毒素の研究(Giαを抑制する)や、堅田利明先生によるGiの発見など、世界に誇るべき研究が数多く出ている分野でもあります。さて細...三量体Gタンパク質活性化の可視化
臓器の構造細胞structural cellによる免疫制御機構
言うまでもなく生体の免疫機構は外来病原体に対する防御反応に必要不可欠です。その中心となるのは血液系細胞であり、自然免疫は骨髄球系細胞、獲得免疫はリンパ球系細胞によって主に担われています。しかし最近になり、上皮細胞(epithelialcells)、内皮細胞(endothelialcells)、線維芽細胞(fibroblasts)など、組織の構築に重要と考えられている細胞(構造細胞structuralcells)が、免疫制御に重要な役割を果たすことが明らかになっています。この論文で著者らは様々な組織のstructuralcellにおける遺伝子発現やepigeneticsを検討し、これらの細胞がウイルス感染による免疫関連遺伝子発現に重要な役割を果たしている可能性を明らかにしました。著者らはまずマウスの12臓器(脳、...臓器の構造細胞structuralcellによる免疫制御機構
ストレスが様々な疾患の病態に影響を与えることは古くから知られていました。日本医科大学リウマチ科名誉教授の吉野槇一先生らは、その先駆的な仕事において、関節リウマチ患者に落語を聞かせたところ血中のIL-6濃度が低下するとともに症状が緩和するという結果を報告され、IL-6などのサイトカインを介したストレスによる炎症性疾患病態制御の重要性を示されました(YoshinoSetal.,JRheumatol.1996Apr;23(4):793-4)。この論文においてYale大学のAndrewWangらは、ストレスによって誘導されるIL-6の作用を詳細に解析しています。まず彼らは様々なマウス急性ストレスモデルにおいて、様々なサイトカインの血中濃度が上昇すること、中でもIL-6の上昇が最も顕著であることを確認しました。IL-6の...IL-6による急性ストレス反応制御
コロナウイルスには変異を生じてもこれを修復する機構proofreadingを有しているためSARS-CoV-2についても遺伝子変異は少ないとされています。インフルエンザウイルスで毎年のように新たなワクチンが必要になる理由は、変異の頻度がコロナウイルスと比較すると桁違いに多いためです。しかしコロナウイルスについても自然淘汰naturalselectionによって変異型の選択が生じる可能性はあります。現在SARS-CoV-2についてはワクチンや抗体製剤の開発が急速に進んでおり、その多くが受容体結合に重要なSpike(S)タンパク(の3量体)を標的にするものですが、その際に抗原として用いているのは武漢株のSpikeタンパク配列です(WangCetal.,JournalofMedicalVirology92,667-6...新型コロナウイルスのpositiveselection
バイオフィルムにおける細菌の動態解析ーcollective fountain flowー
「全体とは部分の総和以上のなにかである」と喝破したのはアリストテレスでした。今だとサバクトビバッタの方が話題かもしれませんが、昔からイナゴは大群になると整然とした群れを形成して集団行動をするようになることが知られていました。同様の現象はV字飛行をして飛ぶ雁やイワシの群れなどにも見られます。バクテリアにおけるバイオフィルム形成もバクテリアの集団行動と考えることができるかもしれません。バイオフィルムは固体や液体の表面に付着した微生物が形成する生物膜であり、整形外科の分野だと、黄色ブドウ球菌が形成するバイオフィルムは、人工関節感染などにおいて抗菌薬や生体の免疫に対して耐性となるため厄介な存在として知られています。この論文で著者らはmNeonGreen-mNS(mNG-mNS)fluorescentproteinでラベ...バイオフィルムにおける細菌の動態解析ーcollectivefountainflowー
日本臨床リウマチ学会雑誌に「コロナ時代のリウマチ診療」という総説を書かせていただきました。自分の知識を整理する目的で書いたという面もあります。2カ月ほど前に提出したものなので内容が古くなってしまっている部分もありますが、ご興味のある方はご一読いただければ幸いです。 コロナ時代のリウマチ診療.pdfコロナ時代のリウマチ診療.pdfコロナ時代のリウマチ診療
変形性膝関節症(kneeosteoarthritis,KOA)には性差があり、女性の方が頻度が高いことがコホート研究などから明らかになっています(YoshimuraNetal.,JBoneMinerMetab.2009;27(5):620-8)。このような性差は動物にも存在するのですが、興味深いことにマウスKOAモデルではメスのほうが軽度であることが報告されています(MaH-Letal.,OsteoarthritisCartilage.2007Jun;15(6):695-700)。このような性差がなぜ生じるのかについては明らかになっておらず、単に性ホルモンの違いだけでは説明できないようです。この論文で著者らはマウスKOAモデルを用いて、メスでは軟骨損傷が軽度であるのにたいし、骨棘形成には性差がないことを明らかに...マウスにおける変形性膝関節症の性差には疼痛が関与している
関節リウマチ患者滑膜マクロファージsubpopulationの解析
滑膜組織は関節リウマチ(RA)において炎症の主座となっていますが、最近のsinglecelltechnlogyによって滑膜における様々なsubpopulationがRAの病態に関与することが報告されています。最近CX3CR1+CD68+F4/80+liningmacrophageが関節腔を隔てるバリアーを形成し、活動性RAではこのバリアーが破綻することが報告されています(Culemannetal.,Nature.2019Aug;572(7771):670-675)。この論文で著者らはやはり滑膜マクロファージ(synovialtissuemacrophage,STM)に注目し、そのsubpopulationの役割を明らかにしています。多様な疾患活動性を示すRA患者からの滑膜サンプルをscRNA-seqで解析すると...関節リウマチ患者滑膜マクロファージsubpopulationの解析
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