Compassionateuseで有効だったというNewEnglandJournalofMedicineの論文などもあり、remdesivirにはCOVID-19治療薬としての期待が高まっています。日本でも「5月にも承認か٩(๑>◡<๑)۶」などの報道がなされています。さてこのたびLancet誌に武漢の10施設で行われたCOVID-19に対するremdesivirの医師主導二重盲検RCTの結果が報告されましたが、結果は残念なものでした。----------------------------組み入れ基準はPCRでSARS-CoV-2感染が確定している18歳以上の男女で、画像上肺炎があり、roomairでSaO2が94%以下、あるいはPaO2/FIO2ratioが300mmHg以下で発症から14日以内の患者です。...レムデシビルの臨床的有効性は「示されなかった」
SARS-CoV-2に対するワクチン開発の現状を分かりやすくまとめたgraphicsです。私自身はこの中ではやはりウイルスタンパクを用いたオーソドックスなアプローチ(protein-basedvaccines)が最も有望だと思いますし、コストのことも考えると弱毒ウイルスあるいは不活化ウイルスを使ったワクチンが(安全性の検討は十分しなければいけないとしても)将来的には残っていくような気がします。 Theraceforcoronavirusvaccines:agraphicalguideEightwaysinwhichscientistshopetoprovideimmunitytoSARS-CoV-2.Theraceforcoronavirusvaccines:agraphicalguideSARS-CoV-2に対するワクチン開発のgraphics
日本でも行われているのかもしれませんが、COVID-19が苛烈を極めたヨーロッパでもようやく患者増が横ばいになってきているようです。このような中で、各国がとった様々な政策がどのように異なる結果を示したかという検証が行われつつあります。このような検証からベストな選択肢を模索しようというサイエンティフィックな姿勢は我々も見習うべきだと思います。各国でどの程度厳しい行動制限をして、その結果としてtotalconfirmeddeaths(確定死亡者数)がどのように変化したかを示した図は必見です!https://www.nature.com/articles/d41586-020-01248-1 Whosecoronavirusstrategyworkedbest?ScientistshunttoppoliciesRes...どの国の政策が良かったのか?
日本整形外科学会のロコモチャンネル「コロナに勝つ!ロコモに勝つ!」がオープンになりました。ご自宅で運動不足になりがちな高齢の方に是非お勧めください!!https://locomo-joa.jp/withcorona/https://locomo-joa.jp/withcorona/locomochannel/ロコモチャンネル ロコモONLINE 日本整形外科学会公式ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイトロコモチャンネルでは、ロコモ予防トレーニング動画を発信しています。ロコモONLINEでは、日本整形外科学会専門医が中心となり、ロコモの予防・啓発活動を行っています。健康寿命は、健康な足腰から。今日から「長生きを支える、足腰づくり」、始めましょう。ロコモチャンネル ロコモONLINE 日本整形外科学会公式ロコモ...コロナに勝つ!ロコモに勝つ!
現在世界中の企業がSARS-CoV-2のワクチン開発にしのぎを削っていますが、Yale大学免疫学教室の岩崎明子教授らによる、ワクチン開発の問題点についてのCommentがNatRevImmunolに掲載されました。内容をかいつまんで紹介させていただきます。あるワクチンが有効かどうかは、当然どの程度感染抑制効果のある抗体(中和抗体)産生を誘導できるかにかかっているわけですが、SARS-CoVとのアナロジーから考えると、中和抗体の作用点はウイルスの細胞への侵入、融合、排出(出芽)などの抑制であろうと予想されます。一方で抗体はantibody-dependentenhancement(ADE)と呼ばれる、かえって病原性を高めてしまう作用を示すことがあります。SARS-CoVの場合には、抗体がFcreceptorを発現...COVID-19ワクチン開発の問題点
LegacyConstrainedCondylarKneeprosthesis(LCCK;Zimmer)は内外反の制動性が強い人工膝関節で、よほど不安定性や破壊が強い膝でなければprimaryに使用することはないのですが、再置換の際には私も好んで使用しています。EwhaWoman’sUniversitySeoulHospitalから人工膝関節再置換術(reTKA)例におけるLCCKの長期成績についての報告が出ましたので紹介します。成績評価に用いたのはLCCKを用いてreTKAを行った中で、ある程度長期にフォローできた97患者(114膝)です。平均年齢は65歳で男女比は77:13で男性が86%でした。再置換の理由としてはasepticloosening56%,tibialpolyethylenewear21%,i...RevisionTKAにおけるLCCKの長期成績
新型コロナウイルスの影響、そしてロックダウンを含めた政策の効果を判断するうえで、今後出てくるであろう超過死亡を見ていくことは重要です。ヨーロッパのデータベースであるEUROMOMOにはヨーロッパ各国の超過死亡が年代別に示されています。厳しい制限をしていないスウェーデンをはじめとして、ほとんどの国で超過死亡は減少傾向にあるにもかかわらず、UK(England)ではまだ減少傾向が見られません。これは当初集団免疫政策をとったためかもしれませんが、ロックダウンをスタートした段階ではそれほどひどくはなかったのですが。。またヨーロッパ全体で見ても14歳以下の超過死亡は実は減少しているというのも興味深いデータです。インフルエンザや他の感染症が低下していることを表しているのかもしれません。このような一次データをにらみながら次の...ヨーロッパ各国の超過死亡は?
人工股関節全置換術(THA)において、特に骨頭が脱臼位にある場合には引き下げが必須ですが、どの程度引き下げて(延長して)良いのかについては迷うことも多いです。当施設でも神経刺激器などを用いて慎重に引き下げているのですが、なんとなく「30mmくらいの延長は大丈夫ちゃうか?」というようなエビデンスのない基準を設けております(間違ってたらごめん)。さてトルコのIstanbul大学から発表されたこの論文では、術中神経モニタリング(intraoperativeneuro-monitoring,IONM)を用いてMEPおよびSEPを測定して、どの程度安全に引き下げが可能かを検討しています。モニターした神経は深腓骨神経(前脛骨筋)、脛骨神経(腓腹筋)、大腿神経(大腿四頭筋)のMEP、そして後脛骨神経のSEPです。アプローチは...THAにおける大腿骨引き下げはどのくらいまで安全か?
SARS-CoV-2感染が示すユニークな遺伝子発現プロファイル
SARS-CoV-2は極めてユニークな病態を形成しますが、この論文ではインフルエンザウイルス(IAV)などと比較して、SARS-CoV-2の誘導する遺伝子profileの違いを調べることで病態に迫ろうとしています。ヒト肺胞基底上皮腺癌細胞であるA549細胞(にACE2を発現させた細胞)やprimaryの気管支上皮(normalhumanbronchialepithelial,NHBE)細胞への感染系を用いて、SARS-CoV-2ではIAVと比較してinterferon(IFN)-I,III発現に関与するTBK1の活性化、STAT1,MX1,INF-1stimulatedgenesの誘導が生じず、IFN-I,III誘導が極めて弱いことが明らかになりました。一方interferonstimulatedgenes(I...SARS-CoV-2感染が示すユニークな遺伝子発現プロファイル
アメリカワシントン州の高度看護施設におけるCOVID-19アウトブレークについての報告-無症状、あるいは未発症者からの感染の問題
アメリカはCOVID-19患者も関連死亡者も世界最多であり、その対策は焦眉の急となっています。トランプ大統領は、「完全な勝利になるだろう」というコメントを出していますが、言葉通りにとらえる人は多くないと思います。アメリカワシントン州の看護施設における集団感染についてのレポートが発表されました。重要な報告と思いますので、下記に概要をまとめてみます。また長くなりますので、この研究結果に対する私の意見は別項目で述べたいと思います。-------------------------------2020年3月1日にワシントン州KingCountryの高度看護施設(skillednursingfacility)である”FacilityA”の医療スタッフにおいてSARS-CoV-2感染が明らかになりました(このスタッフは2月...アメリカワシントン州の高度看護施設におけるCOVID-19アウトブレークについての報告-無症状、あるいは未発症者からの感染の問題
平野俊夫先生、村上正晃先生によるSARS-CoV-2による病態形成メカニズムに関するreviewarticleがImmunity誌に掲載されました。最初の段階としてウイルスは受容体であるACE2に結合して細胞に侵入しますが、その際にTMPRSS2やcathepsinB/Lといったプロテアーゼのアシストを必要とし、この経路が治療標的になることを最近の論文に即して説明されています。しかし真に死亡へとつながるのはウイルス感染が生じる顕著な炎症であり、それがacuterespiratorydistresssyndrome(ARDS)へとつながること、その過程にACE2が結合したウイルスとともにendocytosisされ、細胞表面のACE2のdownregulationの結果生じる血中angiotensinII(AngI...SARS-CoV-2による病態形成メカニズム
抗リウマチ薬を使っていると新型コロナウイルスに感染しやすいか?
このところ患者さんに色々と尋ねられるのですが(「リウマチの人はコロナウイルスに感染しやすいんでしょ」の類)、もちろんデータはありませんので、「免疫がもともと強いから免疫を抑える薬を使っているわけで、でもハイドロキシクロロキンとかトシリズマブのようなリウマチの薬が有効だという話もあるので・・結論は・・わかりません!!」と力強くお話ししてます。患者さんとしては「大丈夫ですよ~」と言ってほしいのだと思いますが、そうも言えず。。さてこのイタリアからの論文は生物学的製剤、あるいはtsDMARDsで治療している関節炎の患者さん320人に連絡をしてSARS-CoV-2感染の様子を聞いたという内容です。女性68%,平均年齢55±14歳で疾患の内訳は関節リウマチ57%,SpAが43%です。52%はTNF阻害薬、40%はその他の生...抗リウマチ薬を使っていると新型コロナウイルスに感染しやすいか?
英国における医療スタッフの新型コロナウイルス感染スクリーニング
各国で医療スタッフの新型コロナウイルス感染が問題になっていますが、英国のTheNewcastleUponTyneHospitalsNHSFoundationTrustでは3月10日から医療スタッフを対象にしたSARS-CoV-2感染スクリーニングを行いました。1stscreeningとしてはスタッフに「持続する咳嗽あるいは熱発」などの症状があるかをemailで質問し、「あり」の人については24時間以内に熟練した看護師によるPCR検査が行われ、結果は24時間以内にemailで通知され、陽性の人は自宅待機となります。結果は、1654名のスタッフのうち症状が持続したため再検査した人も含めて14%が陽性でした。検査は3月10日から31日まで実施されましたが、10-11日に検査したスタッフで5%、3月30日ー31日に検査...英国における医療スタッフの新型コロナウイルス感染スクリーニング
COVID-19が猛威を振るうNewYorkCityから、通常診療の中で得られたデータをまとめたcaseseriesが報告されました。鼻咽頭swabのPCRでSARS-CoV-2の感染が確定され、2020年3月1日から4月4日までにNorthwellHealthacutecarehospitalsに所属する12病院での入院加療が必要であった患者が対象です。全部で5700人の患者が含まれ、平均年齢は63歳(interquartilerage,IQR52-75歳,0-107歳)、39.7%が女性でした。人種別では黒人が22.6%、アジア系が8.7%、白人が39.8%、その他(ヒスパニックなど)が28.9%でした。併存疾患としては高血圧56.6%、肥満41.7%、糖尿病33.8%が主たるものでした。CharlsonC...ニューヨークにおけるCOVID-19入院患者データ
変形性関節症(osteoarthritis,OA)に対する薬物療法としては対症的な効果を期待するものがほとんどであり、最近出されたOARSIのガイドラインでも、推奨されているのは貼付薬も含めてnon-selectiveNSAIDsやCOX2inhibitorだけだったりします。ビスホスホネートは極めて良好な有効性を示す代表的な骨粗鬆症治療薬です。以前から動物実験レベルではビスホスホネートの有効性が示されていました(Hayamietal.,ArthritisRheum.2004Apr;50(4):1193-206など)。しかしこれまでのところ臨床的な有効性に関してはcontroversialであり、Vaysbrotらによる7つのRCTのmeta-analysisでは変形性膝関節症(KneeOA)の疼痛や単純XPに...変形性膝関節症に対してゾレドロン酸の有効性は示せなかった
皮質脊髄路あるいは錐体路(corticospinaltract,CST)は人の能動的な運動に重要であり、脊髄損傷が治癒しない大きな原因はCSTが再生しないことです。遺伝子操作や再生医療によって脊髄損傷を回復させようという試みは古くよりたくさん報告されており、日本では慶應大学グループの研究が有名です。PtenやSocs3遺伝子のノックアウトによって損傷したCST神経の再生が促進されるという報告もありますし、自家神経幹細胞(neuralstemcell,NST)や神経前駆細胞(neuralprogenitorcells,NPC)移植による再生促進の報告もあり、著者らはNPC移植によりCSTを構成する軸索の顕著な再生が認められることを報告しています(Kadoyaetal.,Nat.Med.22,479–487,201...神経前駆細胞による脊髄損傷改善のメカニズム
辛党の人間には「ケーキは別腹」などと話す女子は異星人に思えますが、動物にとって砂糖は基本的なエネルギーのソースであるため、ほとんどの種では砂糖を嗜好する脳回路があることが報告されています。ヒトでは栄養的な必要性からではなく、脳内報酬系が砂糖の消費を促すことが、砂糖の過消費、そして肥満につながっているとされています。甘味は舌や口蓋上皮に存在する特異的な甘味受容細胞によって検出されますが、この細胞からシグナルは脳に伝達されます。興味深いことに、甘味受容体を欠損していても、砂糖への嗜好は見られます。この論文で著者らは腸管から脳に伝わるシグナルが砂糖への嗜好性を制御していることを明らかにしました。のどが渇いていないマウスに水と砂糖水を自由に選ばせると、マウスは例外なく砂糖水を選びます。面白いことに、人工甘味料入りの水と...「甘いものは別腹」のメカニズム
新型コロナウイルス感染症が広がり、自宅で過ごす方が多くなったせいか、骨折患者数も減っているような気がしますが、COVID-19と骨折との合併についての論文が中国から発表されました。カルテ情報からCOVID-19と骨折との合併を拾い出したところ、10例(女性8名、男性2名)の骨折例が抽出されました。このうちPCR検査で確定していたのが6名、3名はPCR陰性でしたが臨床的に疑わしい肺炎症例、1例はPCR未検査の症例でした。年齢は34歳から87歳で、骨折としては低エネルギー外傷が9例、1例は高エネルギー外傷でした。3例は骨粗鬆症に加えて高血圧、糖尿病、COPDなどの併存症を有していました。術前データとしては、4例に白血球上昇、6例にリンパ球減少が見られました。リンパ球減少はCOVID-19の特徴でもあります。著者らは...COVID-19と骨折の合併
日本医師会の横倉会長も「医療危機的状況宣言」を発表されたり、COVID-19疑いの患者さんが100以上の病院に受け入れを断られたりなど、日本でも医療崩壊が間近なのではないか、という機運が高まっています。しかし冷静に海外データなどと比較すれば、日本の①陽性患者数も、②COVID-19患者の死亡数も、③case-fatalityrate(死亡数/陽性患者数)も欧米などと比べると驚くほど低いことが分かります。米国は話にならないくらいダメなので、Oxford大学が運営しているCoronavirusDisease(COVID-19)–StatisticsandResearchというサイトの公開データを用いてドイツ(独)、イギリス(英)、イタリア(伊)と比較してみます(https://ourworldindata.org/...医療崩壊を防ぐために
「アイスランドにおける感染の広がりに関する調査」アイスランドは人口36万4000人と日本で人口の最も少ない鳥取県(57万人くらい)よりも少なく国際空港も1つしかない国ですが、一人当たりのGDPは$74,515.47(世界6位)と高いレベルを誇る島国です。新型コロナウイルス感染症に関しても、人口密度が低いからかもしれませんが、ヨーロッパの中では良好な経過をとっているようです(4月15日のJohnsHopkins大学のデータでは感染者1720人、死亡者8人)。対策としてはロックダウンのような厳しい政策はとっておらず、海外からの帰国者の自宅待機、多人数の集会の禁止、大学は休学ですが、小学校では授業を継続しているなど、比較的制限は緩やかなものです。この報告ではtargetedtestingおよびpopulationsc...アイスランドにおけるCOVID-19の広がりに関する研究
イスラエルはサイエンスのレベルも高く、その取り組みは我々も大いに参考になります。イスラエルで初めてCOVID-19患者が確認されたのは2020年2月21日でした。その後、特定の国からの入国者を14日間自宅待機にしたり(2月21日)、100人以上の集会を制限したり(3月11日)、緊急事態宣言を出したり(3月19日)など、日本に近いようなグレードや時間軸で対策が取られ、4月15日時点で感染者12046人、死者123人(JohnsHopkins大学のデータベースより)と、これまでのところ医療崩壊にもならず比較的良好なコントロールが行われています。とはいえ日本と同様の悩みは抱えており、感染の広がり(クラスター形成)をいかにして早期にとらえるかがその後の感染の広がりを制御するために重要だということはわかっていても、全例に...大規模サーベイによるCOVID-19早期検出の可能性
vanDoremalenらがNEJMにcorrespondenceという形で発表した、エアロゾル中のSARS-CoV-2およびSARS-CoVの感染性や様々な物体(プラスチック、段ボールetc.)の表面上での安定性についての報告(NEnglJMed.2020Mar17.doi:10.1056/NEJMc2004973)はマスコミがこぞって取り上げるところとなり、わが国においても大きな衝撃を与えました。エアロゾル中に長時間感染性のあるSARS-CoV-2が存在し続ける、プラスチックや段ボールの表面にもウイルスが長時間とどまる、などの情報に多くの人は恐怖を感じました。しかし実はこの報告に対する反論も数多く出されており、下記のcorrespondenceは様々なletterをまとめて掲載したものです。これらを読むと、...エアロゾル感染はどのくらい危険なのか?
台湾の方は大変親日的で、私も台湾に行くたびに体重が〇〇kg増えるくらいご馳走になるのですが、申し訳ないとは思いつつ、ある程度満腹になるとそれ以上は食べられなくなります。無限の食欲を誇るギャル曽根さんのような方もいますし、「ケーキは別腹です!」というようなことをおっしゃる方もいますが、基本的にヒトは、「いくらでも食べてください!」と言われても無限には食べられません。この理由として、食事による血糖値↑→インスリンの分泌↑→レプチン分泌↑→食欲中枢に働き食欲↓というような神経内分泌的なメカニズムも明らかになっていますが、それでは血糖値が上がらないコンニャクだったら永遠に食べられるか、というとそういう訳ではありません。水だって無限には飲めないし。ビールは??古くより消化管の膨満が迷走神経や脊髄の求心性線維を介して摂食や...どうして無限に食べられないか?
新型コロナウイルスSARS-CoV-2の治療薬開発は急ピッチで進んでおり、その標的もspikeproteinなど多岐にわたります。本論文はコロナウイルスのプロテアーゼに注目した治療薬開発についての研究です。コロナウイルスの複製およびmRNA転写に必要な機能はすべてレプリカーゼという遺伝子によって担われており、レプリカーゼはpp1aおよびpp1abという2つのoverlappingポリ蛋白から成り立ちます。これらのポリ蛋白はウイルスプロテアーゼによって11カ所以上で切断されることが活性に重要ですが、C端側の切断を担う主たるプロテアーゼが33.8kDamainproteease(Mpro)です。この論文の著者らは、SARS-CoV-2のMproリコンビナント蛋白を大腸菌で作成し、基質であるプロテアーゼ自身のN端配列...新型コロナウイルスに対するプロテアーゼ阻害薬開発
COVID-19重症肺炎に対するremidesivirの有効性
新型コロナウイルス感染症では肺炎の重症化が生命予後を左右し、人工呼吸器やECMOが必要になった患者では生命予後が悪いということも報告されています。このNEJM論文はCOVID-19の重症肺炎患者に対する抗ウイルス薬(エボラウイルス治療薬)であるremdesivirの有効性を検討したものです。対象となった61例のうち30例(57%)は人工呼吸器を、4例(8%)はECMOを使用していました。28日間のフォローアップで改善が見られたのは84%(95%confidenceinterval[CI]70to99)で、人工呼吸器装着(hazardratio[HR]0.33,95%CI0.16to0.68)、70歳以上(50歳未満と比較したHR0.29;95%CI0.11to0.74)患者では改善が見られにくかったとのことです...COVID-19重症肺炎に対するremidesivirの有効性
NewEnglandJournalofMedicine(NEJM)は実にインパクトファクター70.670という驚異の値を誇るモンスタージャーナルです。臨床研究のトップジャーナルとして長年君臨し、多くの臨床エビデンスがこの雑誌から発信されているのはご存知の通りで、臨床家の間では"PublishNEJManddie(NEJMに論文を出してから死ね)"という諺もあるくらいです(嘘です)。しかしながら時々「??」という論文が掲載されることがあります。という失礼な前振りで紹介する論文は、米国のBrookeArmyMedicalCenterから発表された”PhysicalTherapyversusGlucocorticoidInjectionforOsteoarthritisoftheKnee"という論文です。変形性膝関節...変形性膝関節症に対するステロイド関節注射は有用
米国コネチカット州の医師で軍医であったWilliamBeaumont(ウィリアム・ボーモント1785年11月21日–1853年4月25日)は1822年6月6日に散弾銃の暴発のために腹部に穴が開いてしまったAlexisSt.Martin(アレックス・サン・マルタン)の治療にあたりました。アレックスは奇跡的に助かったのですが、その後も胃壁に穴が開いたままの状態であったため、ボーモント医師はアレックスの胃の内容物を食後経時的に採取して調べる等という、およそ現在では許されないであろう過激な研究を行い、消化の動態について大きな成果をあげたとのことです(Wikipediaより)。さて今回のHuangらによるScience論文は、マウスの子宮に窓を開けて経時的に胎児が発育していく様子をinvivoimagingで詳細に観察し...アレックスか!
EBMの元祖である英国をはじめとして、様々なmedicalpracticeをしっかりとした臨床研究で検証して、確かなものだけを認めて政策にも反映させよう、というサイエンティフィックな態度は本当に尊敬しますし、科学者として正しいスタンスだと思います。でも巨額なコストがかかるのでなければ、「とりあえずやってみたらいいのでは?」という極めて日本的なストラテジーも私は良いと思っています。たとえば整形外科領域では、手術の後にイソジン入りの洗浄水で創を洗う、というようなことは日本では昔からよくやられていましたが、CDCガイドラインでは大規模な無作為化比較試験を経て2017年にようやく「推奨」となりました。それはそれでよかったのですが(しばしば慣習的なpracticeは「意味ない」と言われるので)、「イソジンなんか安いんだか...またまたマスク
SARS-CoV-2感染症終息のため、ヨーロッパの多くの国ではロックダウン(都市封鎖)という極端な政策を採用して、(徐々に)感染者数が減少しているので有用であった、と主張しているわけですが、それではこのようなisolationをどのように緩めていくのかについて、はっきりした指針が示されているわけではありません。中国の武漢市ではロックダウンが解除されたようですが、今後再燃というリスクは十分にありますし、外部にいる多数の非感染者に無症状感染者が接触しても大丈夫、という保証は全くないわけです。このeditorialの著者は、このような事態を避けるためには、①優れた抗体検査の開発、そして②繰り返し(容易に)可能なPCR検査法の開発が必要としています。しかしながら、イギリスの調査で、これまでに調べた10をこえる抗体検査キ...ロックダウンの先にあるもの
COVID-19の示す厄介な特徴の一つに心ダメージheartdamageがあります。中国からの大規模な報告によると、患者の19%に心ダメージを示唆する所見があり、心ダメージがあった患者では死亡率が51%(なかったヒトは4.5%)であったとしています。これが直接のウイルスの作用か、あるいは肺炎から二次的に発生するのかはまだ分かっていませんが、必ずしも基礎疾患として心疾患を有していなかったヒトにも生じ、生じた際にはやはり予後が悪いことも分かっています。COVID-19対策のキモは致死率を減らすことですが、このような心ダメージをどのように防ぐのかという点がカギになりそうです。 HeartDamageinCOVIDPatientsPuzzlesDoctorsUpto1in5hospitalizedpatientshav...新型コロナウイルスによる心ダメージ
進行性骨化性線維異形成症(fibrodysplasiaossificansprogressive,FOP)という疾患があります。主として筋内に異所性骨化が生じ、最終的にはほとんど動くことができなくなるという重篤な疾患で、日本でも難病に指定されています。原因遺伝子はALK2と呼ばれる骨形成因子受容体で、ALK2の活性型変異が患者では存在することが報告されています。変異型ALK2は通常では活性化されないアクチビンAによって活性化され、異所性の骨形成に関与すると考えらえています。この疾患の特徴として、生まれた直後から異所性骨化があるわけではなく、学童期から徐々に骨化が進んでいくのですが、骨化が出現するトリガーになるのが外傷です。例えばなんでもない打撲などがきっかけとなって筋内に著明な骨化が生じたりします。骨化が生じる...局所の炎症細胞による異所性骨化の制御
様々な方面からの要望(突き上げ)もあり、安倍総理もいよいよ緊急事態宣言前夜という雰囲気を出しておられます。私自身は罰則規定のない緊急事態宣言にあまり意味はない、と考えているのですが、仮に出た場合にどのようなことが可能になるかを小池都知事のコメントなどを踏まえて考えてみたいと思います。①外出は?:これについて小池知事が「都民の自粛などを要請」という言葉を使っておられるように、海外のように罰金とか罰則を科すことは現行の法律では不可能と思われます。それでは現在の要請とどう違うのかということですが、「周囲の目がより厳しくなることにより、外出しているヒトをお互いに監視して非難しあうことで抑止力になる」という嫌な世の中が来るというのが私の予想です。②イベントなどは?:小池知事は「各施設やイベントの主催者には施設の使用停止な...緊急事態宣言でできることは?
人工膝関節全置換術(TKA)においてcomputer-assistedsurgery(CAS)はかなり市民権を得てきており、正確な骨切りが可能であるなどの有用性が報告されています。この論文は19,221例という多数の症例を対象にして、CASの臨床成績に与える影響を検討したNewZealandからの報告です。結果としては再置換率も臨床スコア(OxfordKneeScorem,OKS)も差がなく、手術時間はCASで有意に長かった、ということで、結論は「CAS意味ないんちゃうか。名人には必要ないで。」ということになっています。しかしよく考えると、この結果は「より正確に骨切りをしても手術成績が変わらなかった」ということを示しているわけです。それで全員が100点なら良いのですが、そうではありません(TKAは人工股関節全置...人工膝関節においてコンピューター支援手術は有用か?
コロナウイルスが特徴的なspikeprotein(Sタンパク)を有しており、これが細胞の受容体と結合することが細胞内へのウイルスの侵入に重要なことは私のようなウイルス学のド素人にもすっかり周知のこととなりました(そうでもないか・・)。2003年に発生した重症急性呼吸器症候群(SARS)の原因となったSARS-CoVウイルスと今回の新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク間にはアミノ酸配列で77%という高い相同性があります。この論文は回復期SARS患者の抗体をもとに作成されたCR3022というSARS-CoVのSタンパクの受容体結合部位(receptor-bindingdomain,RBD)に対するモノクローナル抗体を用いて、2つのウイルスのSタンパクの構造を比較したものです。(結果)CR3022のSA...コロナウイルスSタンパクと受容体との結合部位の構造解析
白状しますと基本的に私はマスクをつけるのは嫌いです。息が苦しくなる気がするし、メガネも曇るし、しゃべりにくいし。。ただしこれまで何度も書いておりますようにウイルスの飛沫による拡散予防にマスク着用は有用と信じております。特に感染者はもちろん、自分が無症状患者(不顕性感染患者)だった時に周囲への飛沫感染を防ぐという意味はあると思っております。しかしながら、特に欧米ではマスクの有用性には懐疑的で、WHOも「マスクつける奴はあほや(とは言ってませんが)」というような態度です(でした)。まぁマスクが有用というしっかりとしたエビデンスがないから仕方ないなぁ、とあきらめておりましたところ、出ましたね。マスクのエビデンス。しかもNatureMedicineですよ!香港大学のグループは呼吸器ウイルス感染症患者を対象に、マスク非着...やっぱりマスクは有用!
日本整形外科学会に「ロコモでコロナを撃退!」という高齢者むけYouTubeチャンネルを開設してほしい! ロコトレ ロコモONLINE 日本整形外科学会公式ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイトロコトレは「片脚立ち」「スクワット」の2種類あります。ロコモONLINEでは、日本整形外科学会専門医が中心となり、ロコモの予防・啓発活動を行っています。健康寿命は、健康な足腰から。今日から「長生きを支える、足腰づくり」、始めましょう。ロコトレ ロコモONLINE 日本整形外科学会公式ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイトロコモでコロナを撃退!
Tauタンパクは微小管結合タンパク質の一種であり、主に神経細胞の軸索に存在することが知られています。Tauがアルツハイマー病などの脳に形成される神経原線維変化(neurofibrillarytangle)の主要成分であることや、家族性前頭側頭型認知症パーキンソニズムであるfrontotemporaldementiaandparkinsonism-17(FTDP-17)において多くのtau遺伝子変異が同定されたことなどからtauと神経疾患との関係が注目されるようになり、Tau細胞内封入体を有する神経変性疾患のことはtauopathyとも呼ばれています。アメフト選手などに見られることで有名になった慢性外傷性脳症(chronictraumaticencephalopathy)もtauopathyの1つであるとされてい...LRP1はtauタンパクの細胞内・脳内拡散を制御する
欧米でもようやくマスクの有用性を認めるようになってきたようです。前にも書きましたが、自分の感染予防というよりは、自分が無症状感染者だった場合に、周囲に飛沫で感染を広げるリスクを減らすという効果は間違いなくあると思います。そういう意味では安倍マスク(布マスク)も十分に役に立つと思います。病院でのマスク着用の効用
欧米でもようやくマスクの有用性を認めるようになってきたようです。前にも書きましたが、自分の感染予防というよりは、自分が無症状感染者だった場合に、周囲に飛沫で感染を広げるリスクを減らすという効果は間違いなくあると思います。そういう意味では安倍マスク(布マスク)も十分に役に立つと思います。UniversalMaskinginHospitalsintheCovid-19Era病院でのマスク着用の効用
2020年4月に入り、東京ではまだ桜も残っております。普段なら新たなスタートに胸躍らせる方が多い時期ではありますが、新型コロナウイルス騒ぎで様々な行事が中止になったりで、ストレスが溜まっている方も多いのではないでしょうか。「37.5度以上が4日間続いたら感染を疑う」というようなルールが浸透しているため、毎朝体温を測る前には「熱発していたらどうしよう・・」と不安を感じているこの頃です。さて今回紹介する論文はさて「ストレスが体温上昇に働くメカニズム」という内容です。著者である名古屋大学の中村和弘教授は以前から脳による代謝や体温調節メカニズムの研究に取り組んでおられて、この分野では第一人者です。一般の方にもストレスが様々な生体反応を惹起することは周知されていますが、過去の研究から過度のストレスによる交感神経系の亢進は...ストレスが体温を上昇させるメカニズム
政府からの再三の自粛要請にもかかわらずイベントに参加したり、飲み屋にたむろしたりする若者に業を煮やしてか、いわゆる識者と呼ばれている方々からも「早く緊急事態宣言を出して首都閉鎖(ロックダウン)しないと医療崩壊になるぞ(怒)」というような声が聞こえてきます。しかし緊急事態宣言は多かれ少なかれ「基本的人権を制限する」措置ですし、自らに自らの行動を律する能力がないからお上に強制的に禁止してもらおう、というのではエーリッヒ・フロムのいう「自由からの逃走」であり、ナチスの強圧的なイデオロギーを熱狂的に歓迎した戦前のドイツ国民と変わらないように思います。そもそもロックダウンによってすぐに感染の状況が改善する訳ではないですし、長期間のロックダウンによって社会的、心理的状態が悪化することはロンドン在住の方からのメッセージを読ん...首都封鎖?
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