死ねばいいのに
何もしたくない。
色々と耳に痛い言葉を見つけた。 何事であれ、最終的には自分で考える覚悟がないと、情報の山に埋もれるだけである。 ――羽生善治 善人はこの世で多くの害をなす。彼らがなす最大の害は、人々を善人と悪人に分けてしまうことだ。――オスカー・ワイルド
「〇〇で人生は決まる」なんて決めつけるなよ、んなもんで人生決まらねえ。
テレビ。連日コロナ報道、疲弊した人々が映し出されているのを見ていると、だんだん辛くなってきて、精神的に参ってきて、飯を食うのも厭になってきた。ニュースも見たくない。早く収束しないかな。
俺は何がしたいんだ?
世界の片隅の部屋で 静かに何かを待っている 昨日も今日もおそらく明日も 性懲りもなくひたすら堂々 それは無気力怠惰による静止 生きたまま死んでいる状態 窓の外に広がる景色は 一秒たりとも移ろいを止めないのに 河川敷の奥に浮かぶ町並み あちらは此岸、こちらは彼岸か 一見にして秩序立つ様相だが、 一瞥くれるなどただの狭窄状態 裏庭には青く、美しく、トリカブトもあるだろう 素知らぬ顔で、川沿いで無邪気にはしゃぐ子ども 笑い声は大空に吸い込まれる カーテンの隙間からそよぐ風だけが頼りの舟乗り 故郷の米菓子みやげに一つもって 非現実の国を目指して進む 共生ダイヤを外れた先の 醜く、暗く、みすぼらしいとこ…
とある一問一答形式的なインタビュー記事を見て、感銘を受けたところ。 自由であるために、好きなことを表現し続けるためにはどうすれば良いか。→ゲームチェンジが必要。自分が今「させられている」ゲームを次々に降りていき、自分が得意な、またはやりたいゲームに置き換えていく。 なるほど。戦わずして勝つというか、戦略的撤退だ。自分が「参加を強いられている」と感じること(ゲーム)は、総じて自分が不利な状況であることが多い。だからこそ、参加させられていると感じ、そのゲームに対し前向きになれないのだ。はっきり言ってそのゲームは嫌いなのだ。それらのゲームは大抵フェアではない。戦う前から有利、不利がはっきり決まってい…
無限に広がる空の下で、イデオはひとりぼっちだった。青みがかった黒一色で塗りつぶされた大きな空を眺めていると「空では何もかもが閉ざされてしまったのではないか、僕もあの無窮の暗闇に引きずり込まれて閉じ込められてしまうんじゃないだろうか」と不安になった。真黒の空にパラパラと水銀のように輝く星々は、イデオには随分遠くのもののように感じた。空の大きさも知らずに煌々と光る星たちを眺めていると、イデオは何だか苛立った。 宇宙空間を駆け抜けていく風は無機質で冷たく、イデオの身体を凍らせた。イデオは身震いして、コートの襟を立てた。両手で口元を覆い、ハーッと息を吹き込んだ。熱い吐息はイデオの掌を温ませたが、すぐに…
今日は4月30日。4月最後だ。明日が終わればゴールデンウィークがやってくるというのに、コロナのくそやろうのせいで全く胸がはずまない。連休中ももちろん、連休が終わった後も外出自粛が続きそうで気が滅入る。どうしてこんなことになったんだろう。令和に入って本当に予想外のことばかり(しかも大抵悪いことばかり)が起きている気がする。 僕はまさかの事態で卒業後、就活を再びやることになってしまったし、しかももう5月になるというのに全く就活スイッチが入らないし、コロナのせいで企業の採用活動も止まっているし……。なんというか、今まさに人生の岐路に立っているというか、人生のどん詰まりというか、非常に苦しい状況だ。去…
昨日に引き続き、絵を描いた。 もっとも何も考えずに、空白を埋める目的に描いたので、この絵に何の意味も象徴も無い。 無意味な、不条理な線を引いて出来た空間に、一体何を見出すことができるだろう。
途中で何を描いているか分からなくなった。
最近「7日でできるSPI頻出問題集」を取り組んでいる。本書は1日1テーマで基本的なことが1週間で身につけられることができる。今日で5日目を無事終えることができた。一般常識のドリル式問題集も一緒に買ったけれど、こっちは37テーマ中、4テーマしか終わっていない。序盤の日本の政治に関連する問題から詰まってしまっている。日本国憲法の内容や三権分立、選挙制度なんて中学校くらいから社会科でさんざん習ってきているのに、全く覚えていなかった。板書の内容をノートに必死に書いていたり、問題集を解いたりと、定期テストや入試のために、それなりに一生懸命勉強したつもりなんだけれど、年をとって忘れてしまったようだ。今はあ…
ほとんどが自粛自粛、全てが硬化してしまっているような毎日だ。日に日に自粛疲れでストレスが溜まっていくのが自分でも分かる。テレビは連日連夜ずっと新型コロナウイルス関連の報道ばかり。確かにウイルスの動向とか社会情勢の動きとかいちいち気になるけれど、こればっかり流されるのも気が滅入ってしまう。 ネガティブなことってポジティブなことよりも頭に残りやすいらしい。本を読んでいたら、脳科学のデータによれば脳にネガティブはポジティブよりも素早く入り込んで、長く居座るらしい。さらに、過度なネガティブ情報は脳の動きを鈍らせるという。大量にネガティブを取り込んでしまったらどうなるか。恐ろしい話だ。 新型コロナの最新…
目が乾いている気がする。頬が乾いている気がする。のどが乾いている気がする。からだ中が乾いている気がする。ドライシンドローム(乾燥症候群)だろうか。 水分は生命を保つために必要なものだ。身体に必要な潤いがなくなってしまうのが、ドライシンドロームだ。これにより目の乾きや口の乾きや乾燥肌などの症状があらわれてくる。 ドライシンドロームの原因は、ストレスや筋力低下、パソコンを使いすぎの疲労などである。僕はどれにも当てはまっている。 ドライシンドロームは漢方薬などで改善するらしい。漢方は苦いし、調合が面倒だから処方されるまで結構時間がかかる。だからとりあえずのその場しのぎに目を潤そうと目薬をさした。その…
疲れた。ここ最近、何一つまともに出来ずにいる。やるべきことは山積みなのに、取っ掛かりさえできない。気力も尽きた。ここ数日同じような毎日を繰り返し、憂いを堂々巡り、何処に辿り着くこともなく日々を徘徊し、結局一歩も進めずにいた。現状維持ではなく停滞。大したこともしてないくせに疲弊して、他人の言葉に傷つき、あまりのひ弱さに泣きたくなる。延々と続く日々の圧迫感に心臓が痛む。心も荒み、常日頃死ぬことばかり考えている。それは鬱ではなく、生きるための責務に嫌気がさし、それからただ無様に逃げ続けているだけだ。本当に死にたかったら、もうとっくの昔に首を括っている。あまりの怠惰に気力も心も死んじまったのか。何にも…
夢の中で、僕は見知らぬ住宅街の路地を歩いていた。様々な家屋が立ち並んでいる。その家は僕の身体の大きさと釣り合わないほど大きかった。僕だけが縮んでしまったようだ。狭い路地を進んでいくと、一際大きい赤い屋根の建築物がある。博物館のようだった。そのあまりのスケールのちぐはぐ具合にビビってしまい、足早に通り過ぎた。路地の先は開けた大通りだった。通りの向こう側には、先程の赤屋根とは比べ物にならないほど大きな白い建物があった。教会のようだった。建物はあまりに大きく山のようだった。その大きさにすっかり萎縮してしまい、建物から背を向けて、元来た道を急いで戻った。進むうちに不審に思ってきた。進んでいく道の風景は…
無機質なアナウンスが響き渡った。所々が赤ん坊のぐずり声にかき消されていたが、この列車がまもなく次の駅に着くことを告げた。背広の男は難儀そうに座席に広げていたつまみや酒をコンビニ袋に放り込み、身支度を始めた。 「もう着いちまったか。帰りの列車というのはなんだかつまらないね」と独りごちた。すると男の前に座っていた赤眼鏡の女がにわかに立ち上がり、振り返った。かなりきつい口調で男に叫んだ。 「貴方にとってこの電車は復路かもしれませんが、私にとっては往路なんですよ」 背広の男は思わず眉をひそめた。 赤眼鏡の女も眉をひそめた。 泣いていた赤ん坊も眉をひそめた。 この車両の乗客全員が眉をひそめた。 無機質な…
一人の男が河の側のベンチに座り込んでいた。水面が夕闇に染まる様子を漫然と眺めていた。河の向こう岸沿いに庁舎や県庁などを中核とした都市の町並みが見えた。建物に配された窓群から散発的に明りが灯っていた。あの光の一つ一つに自分とは異なる人間の営みが彼抜きに展開されていると思うと、耐え難い寂寞が彼の胸に迫った。手に持っていたノートを握りしめた。 男は数年前に上京し、就職した。それなりに仕事に精進していたのだが人付き合いがどうにも上手くいかず、職場では孤立していた。初めの内は我慢していたが一、二年もすれば精神は病んでくる。結局五年を待たずして辞職し、ついこの間帰郷してきた。社会の帰属も無くし、両親も早く…
書きたいことが書けないのだ。
時計の針は今日も僕を 急かすようにカチコチと 夢の果てで出会った今日は 何故か寂しそうに笑った ぽかり一つ雲がある 昼下がりのよくあるシーン それを踏んづけ街角 苛立ちにおうガラスケース 通り抜けて僕は笑った なんだかどうでもいいやなんて なんだか疲れたなんにもせずにさ 震える足でやってきた 先はあまりに浅はか 痛む胸を押さえつけて 人だかりに舌打ちして 時計の針はいつもの ように僕を苦しめた はやくしろよと脅した 自分じゃ動けないくせにさ なんだか僕だけ堂々巡り 全てがうまくいかない気がしてさ 時計の針はカチコチと 急かすように脅すように 夢の果ての昼下がり 踏んづけるよ人だかり 全てがくだ…
遂に僕は覚悟ができたようです。その時が来るのを受け入れることができるようになったようです。くだらない世界に見切りをつけることができるようになったようです。自分でも驚くほど冷静で、清々しい気持ちです。もう無意味に苦しむこともないでしょう。長すぎた苦悩がようやく報われたのです。僕は救われたのです。
黄色い浮きの沈殿に 水面はくすりと微笑んだ 三つ並んだ鴨の陰 何処へ行くのか跳び泳ぐ そがいろ らんちゃ くちなしの 映える川縁 急斜往く 風に従い音を立て 明滅うねる山頂を 眺める私はでくのぼう 不意にはぐれた一枚が 枯芝の下に溶け込んだ 桜並木は笑ってる 私を馬鹿だと笑ってる
暖かくなってきて外に出るのも楽になってきた。最近の楽しみは、朝の透き通るような青空と静かな街を鑑賞しつつゴミを出すことだ。最近は規則正しく生活できていて、体の調子も悪くない。なんだか胸の痛みがあって、ふとしたきっかけで血圧を測ってみたら、不規則脈波みたいなやつが検知されて怖い思いをしたけど。新型コロナの影響で外出も自粛しなければいけないので、引きこもり気味の僕でも、それなりに閉塞感がある毎日を送っている。家に出られるけど出ないのと、出られないのとでは雲泥の差がある。いつでも家を出れる状態だと、あんまり外出する気にならないが、いざ外出自粛の状態になってしまうと、途端に外に飛び出したくなる。人間は…
私はいつものように部屋の灯りを消して布団に潜り込んだのですが、いつの間にか夜の外に一人でぼんやり立っていました。ここはどこだろうと辺りを見回してみると、私が立っている場所は、どうやら海沿いをはしる国道のようでした。私の側には真っ白いガードレールが遠くまで続いており、その先にはテトラポッドがひしめきあっていて、さらにその奥には青黒く凪ぐ夜の海が横たわっています。月明かりが反射して海面がちらちらと音もなく騒めいてきれいです。私はすることもないので遠くの方をぼんやりと眺めていると、陸から海へ仰角にさしこんでくる一直線の光線が飛び込んできました。光の先を目で追うと、それは防波堤に佇む灯台から発せられた…
少しばかりの冒険を 喧騒を避けるように脇道へ 急な階段を降りていくと、 昼下がりの静寂に自動車の音も呑み込まれる 黄金の土堤、いやこれは枯れ草か 桜木がお利口に並べられているが、 花よりも川の流れを私は見たい つんのめるように急ぎ歩く雀を避けて、 橙色の大橋往くと、昭和施工の音がする ふと見下ろすと網目のようにうねる水面 手すりの列が揺さぶられ、ギーッガタガタと共鳴する 今日の風は少しばかり強いみたいだ そんな風をものともせずに コンクリの要塞は佇立する 堰の下で川が懸垂し、白き波が立つ。 それを跨ぐと、一面に真っ青な海 遥か遠くで横一文字に空と海は拮抗している 海の方が少し濃いブルー 綯交ぜ…
或いは安心 或いは不安 或いは充足 或いは虚無 或いは安楽 或いは苦悩 或いは希望 或いは絶望 或いは生 或いは死或いはを全て内包し混沌とする心、 すなわち 「惑」
少し遅めに昼飯を食べて 夕食ごろでも腹減らず 満腹感じつつも、夕飯を食らって 貧困をテレビ越しに眺めている 僕はなんて恵まれているだろう 僕はなんて残忍な奴だろう
山積みになっちまった今日を監理することも出来ず、床に放りっぱなしだスイッチ一つで遠くまで駆けていけたあの頃の怖気一つもなく、希望を抱けていた俺をうらやましく思うぜショートアイアンでいいから何もかも吹き飛ばしてくれよもうそろそろ夕晴れを俺に眺めさせてくれよ落ちこぼれ注意報が発令された拙宅の片隅にて、どん詰まり。
春も終わり、桜の花をすっかり散らし、洗い流してしまうような長い雨が降る季節のことである。この時期は、蛙たちは冬眠からの目覚めと雨のお恵みを祝して、リズミカルに草葉を叩く雨の音に合わせて皆で輪舞するのが慣習になっていた。 その日は夕方から蛙たちが暮らしている深緑色の草むらにぱらぱらと雨露が降り注いだ。蛙たちはすっかり陽気になり、踊り狂って遊んでいた。 その様子を少し離れた草むらからじっと伺っている一匹の蛙がいた。彼は他の蛙たちと肢体の姿かたちは全く同じだが、姿勢は全然違った。他の蛙たちは背筋がぐだっと曲がっていて、前足、後ろ足の四本で身体を支えている。ところが、その蛙は背筋がピンと伸び、後ろ足二…
生きることにも、死ぬことにも勇気を持てず、本気になれず、宙ぶらりんのままに生き長らえている。常に押しつぶされているような圧迫感、常に焦っている切迫感、常にどうでもいいと投げやりになっている虚無感、常に早く楽になりたいという希死感。色んなもので容量は限界で、他の何も入る余地がない。張り裂けそうになる毎日、終わらない日々の憂い。畜生、こんな状態でも馬鹿みたいに腹が減る。
これは人間か、アンドロイドか、判断下すためのテストだ沸沸と君は夢をこさえて、まさか人間のふりでもしているのかい?これは駄目だよ君、解答用紙に工業用油の臭いがついているこの罪は尊厳の強盗殺人罪に匹敵する罪の重さださて、君の罪に似合う罰の準備をしようじゃないか、粢の具合はもう良い塩梅だろう?粛然と喪服を整えて、ほら、あの祭壇に一礼して安心しな、君にとっちゃ答案を埋めるよりは苦しくは無いはずだ、ちょうど昏睡に近く君は神様の側へ行ける……なんだ、ちっとも君は冷たくならないじゃないか。
厳しく、取り締まり、 不正を除き、規律を正す。 異分子を除き、組織を清める。 不正は異分子、 異分子は不正、 これは本当に正しいのか 判断しかねるけれどさ。 結局、排除以外に解決法は無いのだろうか。
「ありがとう」じゃ報われない 「大丈夫だよ」じゃ救われない 「しょうがないよ」じゃ納得できない 「よくやったね」じゃ喜べない 「 」じゃ届かないありがとうを「ありがとう」以外の言葉で、真摯に表現するべきときが来たんだ。
昨日までの自分と、今日に至った自分……。その隔たりはあまりにも大きい。まあ、どちらも同じ僕だけど。僕が延々と無限に連続して存在している……。今日に至った僕は、昨日の僕の続きだ。よう、昨日も相変わらずだったな、君。昨日の君は君で息の詰まるような苦しさのなかで悶えていたのかもしれないけれど、今日も今日で僕はまた違う苦悩に身を削られているよ。君は今孤独と思っているかもしれないが、後ろには僕がいる。決して独りじゃない。あの日君は人生を左右する決断に迷っていたけれど、その迷いは必然的なもので運命的な出会いだったんだ。……遥か前の君が犯した罪の罰だよ。僕が犯した罪の罰とも言える。選択肢のどちらも、実は君の…
ずっと使っていたノートがもうすぐ終わる。いつぐらいから使い始めたっけ?とふと最初のページからパラパラとめくってみると、初めに記された日付は2019年6月20日だった。あと2ヶ月くらいで1周年だ。約1年で使い切った。そういえばノートを最後まで使い切ったのは初めてのことじゃないだろうか。使っているのはなんの変哲もない飾り気もない百均のノートである。僕はノートが好きだ。色々なメーカーの多種のノートを買ってみるが、最後まで使い切ったことはほとんどない。いつも中途で別のものに鞍替えしてしまう。コレクション状態だ。僕の飽きっぽい性格も原因の1つだろうけど、最大の原因は「書くことに躊躇ってしまうこと」だと思…
未来なんてありません。 望んでもいません。 今日が来るたびに、僕は落胆します。 また昨日と同じ今日が来てしまいました。今日をいかに費やせばいいか、考えなければいけません。 無気力で、何に対してもやる気のない僕は、 今日一日の予定を立てるのも苦痛です。 だって予定を立てたところで、 それをやりたくもないし、 どうせやらずに今日が終わってしまうのだから、 予定なんて全くの無意味です。無気力に、早く今日が終わればいいのにと待っています。 ただじっと待っています。 太陽は意地悪なことに、なかなか居なくなってくれません。 苦悶する僕を照らします。 僕を置き去りに動き続ける世間を照らします。 見たくもない…
またしもやけがぶり返してきた。左足の小指が中に水が詰まっているように赤黒く腫れている。他の指よりも一回り大きく、変形していて痛々しい。患部は掻き毟りたくなるほどむず痒い。何か作業をしていても、しもやけが気に障って集中できない。痒くてしょうがない。指を折り曲げたり歩いたりすると、腫れが潰されじくりと痛む。仕方が無いので前回皮膚科に罹った際に貰った軟膏を小指に塗りたくった。軟膏により、濡れたように輝く小指はさらに痛々しく見える。どうやらこのしもやけ、長く靴を履いていたせいで足が蒸れたことが原因らしい。僕の靴や靴下はバーゲンセール以下の安物だから、通気性が悪いのだ。これに加えて僕は比較的多汗なのでな…
連日続く新型コロナ関連の報道に、日夜憂い、緊張し、疲弊している。日本はおろか世界中で毎日感染者は増加していく。亡くなる方も多い。感染拡大の抑制に外出制限を設ける国も多くなってきている。ニューヨークでは医療現場が崩壊の危機へと陥っている。日本は明日にも非常事態宣言を出そうかという危機迫る状態だ。世界中混乱している。もはや人間とウイルスの戦争だ。 戦争の最中、それでも各々は生活をしなければいけない。人間全員が、家にずっと閉じこもっていれば大丈夫だろうけど、そんな訳にはいかない。時に家を出る用事だってあるだろう。人間がずっと家に閉じこもっているには、ある人間は家から出て仕事をしなければいけない。生活…
デマに踊らされる僕らは、魔女狩りを滑稽だと笑えないね
朝日に照らされた庭の草木は鮮やかに がら空きの青空に薄く白雲が棚引く 寂れたバス停、錆びついた時刻表 黄昏時の駅前、真っ赤に染まる 名も無き人の往来する交差点 遥々より滑走してきた貨物列車の徒然 目深に帽子を被る隣席の御客人 やおら立ち上がる祖母の影が伸びて 雷鳴高鳴る初春の午後 湧き立つ風呂釜の如く空に雨雲重なり をかしな話を一つ、 ん
物干し竿の片隅にひっそり吊るされている。こうして外に干しておくことで、太陽の光や外気に晒されて、鮭の水分が飛ばされる。口は大きく開かれて側面には小さく鋭い歯が見える。鮭の目は腐り落ちてただの空洞が二つ空いているだけ。目の奥は暗く、ほぼ真っ黒に近い。身体は乾燥し首の辺りは骨が浮き彫りになっている。鱗も日の光を浴びて鮮やかに輝いているけれど、どこか虚ろだ。尾ひれや腹ひれは石像のように固まっていて動かない。鮭は静かに干からびていた。鮭よ、お前が遥々河川を遡り故郷に戻ってきたばっかりにこんな姿に成り果ててしまったのだ。お前にとって帰郷は死を意味するものなのだ。お前がまだ稚魚の頃、解き放たられた時に、故…
人の苦しみを消し去り救いになるはずの宗教によって人に苦しみが伝播することになるとは皮肉なものだ。
引越しの荷物がようやく届いた。運が悪く雨が降っていたので気が滅入る。受け取りは、とりあえず物置に箱を詰めていくだけだったので十五分くらいで終了した。 引越しが終わる頃には雲の切れ間から太陽が見え、小雨になっていた。 少し休憩して、荷物整理を始めた。段ボールを開け、捨てるものの算段をつけた。捨てるものは結構沢山あり、全体の半分くらいの量になった。引越し前にさっさと捨てれば良かったと反省した。
空腹感が無ければ、餓死できるのかな
就活サイトに登録をし、エントリーシートもwebに掲載した。早速企業からスカウトメールが何通か届いたけれど、見通すだけで応募しようという気がしない。履歴や自己PRなど文章を書くのはまあまあ出来るけれど、面接に進むのが本当にだるい。面接が嫌い。新卒の時も面接は大嫌いだった。何故身なりに過敏なまでに気を使わなければいけないのか、何故笑顔で明るく応対しなければいけないのか、何故エントリーシートで書いたことを口頭でもう一度説明しなければいけないのか、何故面接官に気に入られようと回答対策をしなければいけないのか…、何故、何故、何故と面接の時は何度も自分がやっていることに疑問が湧いた。こんなことをして面接官…
不意に誰かが路上にてくしゃみを一つしたのが聴こえた。厄介な疫病を飛散していなければいいんだがな。まあそんな懸念なんて何の足しにもならないけれど。ただこんな状況だから過敏になってしまっているのだろう。くしゃみ一つで不安になるぐらいセンシティブな世の中。息をするのも躊躇うほど……。だったら息をするのを止めればいいのではないか。つまり死ねばいい。そうすればくしゃみ一つにこんなに不安な気持ちにならなくても済むし、それはおろか一切の不安から吹っ切れることができる。…で、だから何なんだ?世間はここ数ヶ月、疫病関連のニュースで騒がしいが、僕らにできることなんて外出を避けるだの、マスクをしろだの、手洗いうがい…
駅の休憩室で列車を待っていたら、知らないおじいさんに話しかけられた。おじいさんは、数十年前僕と同じ大学に通っていた大先輩らしく、学生時代の思い出や街の沿革や戦争について色々と楽しげに語ってくれた。経験に裏打ちされた生きた言葉で話してくれたので、昔の話なのに鮮やかに聞こえた。おじいさんは僕に話したいこと、伝えたいことを純粋に話してくれた。僕も時間を忘れて聞いていた。久しぶりに会話が楽しいと思った。テレビやyoutubeでトークを色々と聞くのが好きだけど、おじいさんのトークはここ最近で一番印象深かった。一期一会で、一瞬の会話。そして、この地での最後の会話だった。おじいさんが立ち去ってからしばらくし…
驚くほど晴れている。 新型コロナが無くて、就職先があれば 最高の一日なのになあ。
疲れた
引越しが終わり、ホテルへと歩く道。 歩き慣れた道。住み慣れた街。 だけど、僕が居る時間はもうあと少ししかない。名残惜しく、寂しい。住み始めた当時、早く出て行きたいと思っていたけれど、今はもう少しここに居たい、離れたくないという気持ちだ。住み慣れた部屋が空っぽになってから、掃除をしていたら、色々と思い出してきた。1つ1つの思い出は大したことない。ベッドでうだうだしていたり、朝まで机に向かっていたり、めんどくさいけれどご飯を作ったり、風呂あがりに寒さに耐えつつ急いで部屋に入ったり、普通の、平凡の暮らし。その暮らしが何よりも自分らしく、悠々自適としていて、自由で、過ごしやすかった。自分の過ごしたいよ…
また一からやり直し 何故こうも上手く行かないか 不安、漠然とした不安、拭きれない不安、先が見えない不安、 息詰まり、どん詰まり、苦悩の血栓、 近くのものが遠くに感じる、自分だけが遠くに感じる、孤立
今日は色々ありすぎて、疲れた。とても書きたくない。
自分の意見が善きことだと信じて疑わず、自分ルールを人に押し付ける人たちってどこにでも居る。僕の周りにいるこういう人たちってそれなりに社会経験や地位があるなどの過去の栄光による絶対的自信を持っていることが多く、意見も相当前時代的なのだ。しかも自分の意見以外は決して認めない。全否定する。余計にタチが悪い。 こういう人の特徴として、自分の意見を理論的に話せることが少なく、感情的に意見を押し付けることが多い。意見の正当性をきちんと言語化して説明できない人がとにかく多い。「細かい理由はよく分からんけど、とにかく俺が正しいんだ」である。 さらに意見の根拠を突き詰めて聞くと、その人の意見が経験知に依拠するも…
夢に出てきた猫 - 断片
身体の調子が悪いとき、何か心に引っかかるものがあるとき、やる気が全く起きないとき、今の自分に疑問があるとき、何もかもが上手くいかなくて自分が信じられないとき、自己嫌悪に陥ってしまったとき……。まあ色々なときがあるけれど、総じて心身になにか一物を抱えているときは、どんなに躍起になったって、どんなに歯を食いしばったって、物事はうまく進まないものだ。何をやっても駄目な時、うまくいかない自分に苛立ち、悲観し、何とか立ち直るために、或いは慰めのために、ネットを奔走し数多のうまくいかないときの処方箋を探し続ける。だけど見つかるのはまるで中身がない内容を良きことげに虚飾した自己啓発系サイトだったり、過去の失…
彼は裁かれた 社会正義 法の下に その首を切り落とされた 夥しいほどの鮮血 転がる死体 広がる臭気 それを知らぬ人々は にわか雨に舌打ちをした 正しさにおいて裁かれた者が居る。罪や罰の裁量は本当に正しいものだったのだろうか。そもそも正しさとは本当に正しいものなのか。本当の正しさとはなんだ。それは社会や法の傘下に隠れている僕らには正確に判断できかねるものだろう。とにかく正しさは定かではないけれど、その正しさによって罪人が断罪されたのは紛れもない事実である。現に処刑台には遺体が横たわっている。曖昧な正しさによって下された確実的な死。 ニュースで誰かの死刑執行が報じられているけれど、素知らぬ顔でにわ…
聞きたいのはコメンテーターの感想じゃなくて、確かな情報だ。
掃除がなかなか終わらない。特に便器のフチ裏の汚れと浴室床の黒カビが強固で、全く落ちない。使い方を一歩間違えると死に至るくらい強力な洗剤を汚れにありったけばらまいて浸け置き、しばらくしてからブラシでゴシゴシとやる。これが結構きつい。三十分も中腰で研磨していると腕と腰が痛くなってくる。強く擦るとブラシが毛羽立って、汚水が顔とかに跳ね返ってくる。それでも我慢して擦り続ける。一時間くらい何も考えずに続け「そろそろ汚れも落ちたろう」と水で洗い流す。ところが全く綺麗になってない。掃除前と全く変わらぬ様相で汚れがこびりついていた。「どうにもならない」とすっかりやる気を無くし、用具を放り投げて、掃除をやめてし…
心臓の音が気になって眠れない。
何が本当で嘘で、どんなことを隠蔽したのか分からないけれど、たった一つ確実に分かることは、信用できる組織では無いということだ。私利私欲のために多くを欺き、誰かにしわ寄せを押し付け、コトが済んだら後は知らぬ存ぜぬ。こんな人間の為に何故僕らは生涯税金の支払いに苦悶しなければならないんだ?
口内炎が痛い。
もうすぐ卒業式。友達との別れも近い。今日ご飯を食べに行った友達が帰り際にぽつりと「卒業したらもうしばらくは会えなくなるね」と言った。急に寂しくなって、不安になった僕は、気持ちを晴らすように「大丈夫だよ、またいつか会えるよ」とわざと明るい調子で言った。でも寂しさは収まらなかった。家に帰ってきて、独りになって、さっきの会話を思い出して少し泣きそうになった。気の合う友達との別れは寂しい。これまでの人生において、数々の出会いと別れを繰り返してきた。出会いの中でも、気の合う仲間と出会ったときは、ずっと一緒にいたい、この関係がずっと続けばいいな、なんて思うけれど、実際そんなことはない。仲良しの仲間みんな足…
会話中、発言のタイミングが被ることがよくある。誰が相手でも、どんな状況でも起こりやすいので、僕のタイミングが悪いんだろうなと思う。被ったときは、僕はすぐに口をつぐみ、相手の発言に耳を傾ける。言いたかったことは一旦胸にしまう。一通り相手の言葉を聞いたあと、僕は申し訳ないような、決まりが悪いような感じで、おずおずと言いたかったことを話す。こんなことばかり起きるもんだから、コミュニケーションって、会話って面倒くさいなって思ってしまう。気まずい思いばかりするくらいなら、黙ってチャットでもやっていた方がいいような気がする。LINEとかだったら自分の好きなタイミングで発言できるのになあ。 コミュ障は発言の…
Twitterを見てると、色んなニュースが飛び交っている。最近はやっぱりコロナウイルス関連のニュースが多い。ウイルスそのものよりも経済的な様々な問題が多くなっている。僕はあまり経済に詳しくないけれど、大まかに言えば世界中での消費が落ち込んでいて、経済が回らんということらしい。日本も業績悪化した中小企業とか倒産している。Twitterを見ると、こうした問題に対して「消費税を無くそう」とか、「給付金をつけよう」とかまあ色々意見が散見される。言いたいことも分かるし、そのどちらも僕はやって欲しいと思うけれど、たぶん現実的には難しいんだろうなあと諦める。僕には、コロナショックの経済悪化に対しての策が全く…
今日描いた落書き。本当に落書き。すげえ雑だし。僕は絵を描くのが好きだけど、人が全く描けない。なんか体のバランス悪かったり、立体感ゼロで平べったみえたり、体の部位の形が変だったりと散々だ。この絵はだいぶラフだけど僕にしてはバランスが上手くとれた方だと思う。嬉しくて、ブログに載せてしまった。 バランスはそれなりだけど、まだ腕とか足の付け根あたりが違和感ある。体の構造がよく分かっていないからだろう。まだまだ勉強しなければ。 それはそうと、Twitterを見ると色々な方が落書きを投稿されているけど、どれもこれも、あまりのクオリティの高さに「落書きって何だっけ…?僕が描いた落書きなんて落書きですら無いゴ…
僕はあまり掃除や片付けをするのが好きじゃない。とにかく面倒くさい。そんなことをするより僕は本を読んだり、スマホを弄ったり、ベッドで寝ていたりしたい。掃除片付けは僕の中では相当優先順位が低い。だから部屋の中は物にあふれ、埃は溜まり、ゴミは放置と、相当汚い状態にあると思う。 このままじゃ駄目だ、今日こそ部屋を掃除しよう、と一年に三回くらい一念発起することもあるけれど、すぐに嫌になってしまう。部屋の中が乱雑すぎて、何処から手をつけて良いのか全くわからないのだ。机の上にはいつ学校からもらってきたか分からないようなレジュメの山や本、本棚は読み終わった論文や雑誌や文庫本がでたらめに差し込んであり、テーブル…
自由は恐ろしい。誰からも何からも縛られていないというのは、まるで誰からも何からも必要とされていないのと同じような気がする。言い方を変えると愛されていない、である。だから自由は恐ろしい。制約や規則は、その人を必要としているからこそ、その人を拘束するのだ。自由の反対は不自由だ。不自由は誰からも何からも縛られて、自由な状態ではない。縛られるものが多くなってくると、雁字搦めになって、身動きがとれなくなって、思考の逃げ場すら失ってしまう。誰からも何からも過剰に緊縛されている状態。不自由も自由と同じくらい恐ろしい。 人は皆、自由を求めるものだけど、僕らが受け入れられる自由にも限度がある。もちろん不自由にも…
目覚ましよりも早く起きた 決してポジティブな意味合いではなく、 ストレスや不安により睡眠が浅いのだ。
自分にとって、他人とは自分の一部なのかもしれない…… おしべ、めしべは、それ自体では不完全であり、それぞれの不完全さを満たすように求めあう 僕らも同じで、自分だけでは不完全な存在なのだその不完全さを満たすために他人を受け入れるのかもしれない ということは他人とは自分の一部といえなくもないだろう 互いの不完全さを補完する行為、これを愛というのだろうけど、すべてを満たす完全な愛というものはあるのだろうか 完全な愛……、他人を取り込み、かつ取り込まれる……他人と自分が綯い交ぜになってできた綱を手繰り寄せてくる、暗がりの中の光。
過密スケジュール、かつ無謀スケジュール。 引越し日がようやく決まった。もう引越しできないと思うくらい焦った。ひとまず良かった。引越し業者さんありがとう。後は入社時に提出しなければいけない書類を完成させなければいけない。ここで致命的なミスに気がつく。どうやっても入社時に間に合わない書類があった。もうどんなに悔やんでも悔やんでも後の祭りである。悔やんだって先週は帰ってこない。開き直って、「後日提出します、すみませんでした」でいく。ただ反省はきちんとしなければいけない。 ちゃんと予定を立てる。グズグズせずすぐにとりかかる。いい加減にしない。
何故日本で貧困はなくならないのか、間違った日本の貧困観・清貧主義、そして子どもへの弊害 ~豊かさと貧しさ~ など雑記
今日は偶然ネットで拾ってきた、「日本の貧困」についての論文を読んでいた。日本では貧困について問題視されはじめたのは2008年くらいだと思う。やはり原因はこの時期起こったリーマンショックだろう。実は結構最近になってからである。湯浅誠さんがこの年に『反貧困「すべり台社会からの脱出」』という新書を出している。この本では、実は貧困問題は結構身近なものであり、正社員・非正社員関係なく、さらに貧困は自己責任では片付けられない、ということなどを書いている。10年前の本だけど、むしろ現在の貧困問題を的確に示していて今こそ読む価値が高い本だと思う。10年前からこんなに貧困問題について指摘されているのにも関わらず…
会社から連絡が来た。ようやく配属先が決まったとのことだった。福島県だった。配属は現住地からそんなに離れていないだろうと勝手に考えていたから予想外だった。まさか生涯で福島県に住むとは思いもしなかった。そういえば4年前の現住地に越してきたときも同じようなことを思ったような気がする。 思いがけない場所に来た僕は、次の思いがけない場所へ行く。そうやって流浪するように、揺蕩うように、これからも僕は生きていく。軸の無い人間だからこそ、思いがけない場所に辿り着けるのさ。
識る者は今を知ろうとせず カビの生えた初版の教養から物事を判断し 前時代的な良き事を疑うこともせず善とし、 新しい価値については不気味がり糾弾する 或いは己の古ぼけ歪曲されたイメージのみで今を批判する そして「昔は良かった」と語る こちらの主張には耳を傾けることなく、古昔を押し付ける 歩み寄ろうともせず 勘違いするな 今を創る者は、今を見つめることができる者であり、今を見もしない者では無い 今を批判するために、昔を知ろうとする者であり、今を貶すために、昔を賛美する者ではない 今を良いものにしようとする者であり、昔は良かったと思いを馳せる者ではない それが出来ない奴は今を創る資格なんて無い 識る…
いつまで経ってもどこの店でもマスクが品切れ状態で、全く入手できない僕は、今日もマスクをせずに外出した。依然としてコロナウイルスの感染が広がっているが、もう「感染してもいいや、しょうがないよ、マスク無いし」みたいな半ば諦めた状態だ。はっきりいってコロナなんてどうでもいいやと思っている。コロナウイルスそれ事態の懸念よりも、感染拡大による世界的な影響の方がよほど深刻だろう。コロナウイルスは「一・二週間が山」と言われていたのがすっかりなかったことになり、専門家によると「長期化」が危惧されている。これによる影響も当然長引くだろう。こうなると東京オリンピックはどうなるんだろうか……。というか日本の経済は持…
9年前、2011年3月11日。当時僕は中学生で、ちょうど春休み前の修学旅行で東京に訪れていた。この日はグループで一日自由に行動できる日だった。僕の班は、科学館や日銀や上野動物園などを見て回っていた。十分に東京を満喫した僕らは早めにホテルに帰ろうと、浜松町駅に向かっていたときのことだった。14時46分、急にめまいがした気がした。はしゃぎすぎて疲れたのかなと思っていたら、周りの人が「揺れてる」と騒いでいるし、近くの高層ビルの上階がありえないほど揺らいでいた。まるでペラペラの定規のようだった。僕のめまいではなかった。突如として歩けないほどの強い地震が起きたのだ。でもこの時は、そんなに大した地震じゃな…
池の水が、春の風に揺さぶられ、きめ細やかな鱗を掬いだす鱗の一枚一枚は陽光に照らされ、ちらちらとざわめくその中を静かに滑っていく鴨の群集各々の生活のために、下を向いて虫を狙っている妙に秩序だっている様相だった 不意に強い風が吹き付けた 一枚の枯葉が群れの中に舞い降りた鴨たちは一斉に羽をばたつかせ、跳びはねた水面は騒然として、鱗がばらばらに剥がれ落ちた鴨が、また水に吸い付くように降り立ってすぐに、また池に秩序が訪れた 刹那的な乱れだった 鴨たちは、水面を乱したことなんて素知らぬ様子で依然として下を向いている池の水も、鴨たちに面を乱されたことなんてすっかり忘れた様子である春風も、水面を乱した根本原因…
今日は晴れていたから歩いた。遠くの山々もくっきりと青空に浮かび上がっていた。まだ頂は白い氷雪が覆っていた。外はもう春を越えて5月になったような暖かさで、ぶ厚い厳寒期用のコートを着て歩いていたら汗が滲んだ。雪はもはや路傍に少々横たわるのみだったので、滑り止めが付いた靴も必要無い。 あてもなく歩いているつもりだったけれど、自分がよく通る道ばかりを進む。見知らぬ道に逸れると何処へ繋がっているのか分からないので、怖いし億劫だから、自然とこうなる。見知った道を進めば、見知った場所に辿り着く。往路も目的地も復路も知り合いだ。僕は好奇よりも平穏を優先する。散歩だけの話ではなく、生き方など全てにおいてそうかも…
リンゴは赤いいや、皮を剥いたら黄色い空は青いいや、夕焼けは赤いし、夜になれば黒い樹葉は緑いや、枯れれば茶色い 曖昧な象徴曖昧な認知それを疑いもせず良しとする曖昧さ
私のために私がいる 誰も助けてくれなくても 私の側には、ずっと私がいる
守らなければいけないものもあるが、 それを顧みずに進まなければいけない時もある 守っていたものを捨て、 次に守るべきもののために進まなければいけない時もある 進むのと同時に、次世代でも守るべきものを遺す時がある 進むことで、喪ってしまうものもたくさんある 僕らは進む度に僕らは何を喪い、何を遺しているのだろう 拓本に、生活の、伝統の、文化の、歴史の明暗が滲む 僕らはいつも前に進むことばかりを考えてしまうけれど、 前進によって喪われてきたものも時折思い出すことも必要だと思う 厳かに展示された拓本たちは、そんな大切なことを僕らに静かに、切実に訴えている
昔、未だ僕が幼い頃に曾祖母の墓にお参りに行ったときのことを不意に思い出した。その墓は山を登る道の途中から脇にそれた、木々に囲まれている小高い丘の墓地にある。ここからは祖父母の住む町が望める。その日は一面に霧がかっていて、何も見えなかったが、雲の上に居るような感じがして幻想的だった。供養の最中、不意に一羽のカラスが付近の他の墓石にとまった。カラスは鳴きもせず静かに墓石の上を歩きまわり、墓周辺の様子を伺っていた。カラスは恐らくは墓下のお供え物の菓子やら果物を狙っていたのだろうが、小さい僕には静かに墓にお辞儀をしているように佇むカラスは、僕らと同じように亡くなった者を弔っているように見えた。 カラス…
平板化された基準に人の痛みなんて反映できるわけもなく、 痛みを知るはずもない人間共の裁量により、耐えがたい苦痛を強いられる人々 もはや弱き者のための社会なんて存在しない 事情を深く鑑みることもせず「自分は良いことをした」なんて利己的な快楽のために、独善を押し付け、痛みすら無視して生存を賛美した人間には勲章を与えて、 事情は封殺され、これ以上の苦しみは耐えられないほど様々なものを耐えてきて、ようやく見つけ出した解決法すら社会に唾棄された人間には舌打ちか 腐敗した人間の尊厳 誰かが傷つかなければ成り立たない関係 暗黙知の称賛のために無視される個人的事情 立場の弱い者から順に押し付けられるしわ寄せ …
水銀灯を見つめる猫。 猫は強い光に弱いらしく、長い時間光を目に受けると網膜が傷ついてしまうらしい。
引き続き、引越し作業中。最近はものを捨てたり整理したりの毎日である。のんびりと片付けているから中々終わらない。だけど次第に着実にゴミやものが整理されてきて、部屋が広くなってきた。そういえば引越し手続きもやらなければいけない。書類とか書くのを忘れそうで怖い。早めに取り組んでおかなければいけない。今日はダンボールなど、ものを収納するやつを色々と揃えてきた。ダンボールって折りたたまれた状態でもかなり大きく、店から歩いて持って帰ってくるのは結構大変だった。体の前でダンボールを抱えていると、些細な風が重く感じて歩きづらい。こんな時車があれば便利なのにと、僕の横を颯爽とすり抜けていく自動車たちを見ながら思…
僕には聴こえた気がしたんだ、よだかが天に向かって哭き叫ぶ声が。堪らずに僕は家を飛び出した。どうしてか分からないけれど、僕はよだかを留めたかった。 空は不気味なほど輝く星で埋め尽くされていた。ぼろぼろになった、穴だらけのテントのようだった。星たちは僕を、まるでゴミを見るような目つきで見下ろしていた。 夜を駆ける。 冷たい風が頬を殴りつける。「行っても無駄だ」と静止しているように吹き付けた。それに構わず僕は突き進んだ。 途中、山背が赤く彩られているのが見えた。山が燃えていたのだ。火事を横目に気にしながら、僕はひたすら暗い森の道を駆け抜けた。 高く大きな樹木たちによって切り取られた夜空を見回しながら…
花と茎 - 断片
ある問題が起きたとして、誰が罪に問われるか、責任の所在はどこにあるのかなんて争っている間に、問題が膨れ上がり、取り返しのつかないことになってしまうことがある。罪のなすりつけあい、犯人探しよりもまず、問題の対処を急がなければいけない。場が混乱し、誰もが責任を取りたがらないせいで、事の優先順位を見誤ってしまい、進むべき方向性を見失った社会や集団は瓦解していく。 飛び交うのは空っぽの糾弾や、不安を過剰に煽るオピニオンや、嘘か真か判然としない眉唾物な情報ばかり。風説に狂わされた人々は、今日も無意味な買い占めの歴史を繰り返す。爆買いを貶していた彼等も混雑したレジ前にに不安そうな顔で並んでいる。 混乱に乗…
学ぶ場所はどこでも良い。学ぶ姿勢さえあれば、どんなものからでも学べる。学ぶ環境が完全に整っていたって学ぶ姿勢の無い人間には学習なんて不可能だし、無意味だ。
不安定な日々に安息なんて無くて、通りすがりの人が全員敵に見えてきて、僕の憂き目は誰かに仕組まれたもののような気がして、不純物のようなシステムの狡猾さに腹が立って、些末でよくある昨日今日に疲弊して、その度に、世界を包み込むほど大きな爆弾で、何もかもが消えて無くなってしまえばいいのにと過激的な厭世に苛まれて、苦しさから逃れるためには、ちっぽけな僕には、もうたった一つの末路しか残されていないと悟ってしまった。最期くらいこの世に爪痕を残してやろうかと、人に迷惑をかけてやろうかと、その不気味な薄笑いを思い切り歪めてやろうかと、不安も怒りも憂いも綯交ぜになった火炎瓶を雑踏に投げ込んで無理心中してやろうかと…
堕ちてきそうなほど灰色の雲が積み重なった空を 貫くように高層ビルが立ち並ぶ街の一角にて――、 煤けた背中をした男が無表情にふらついている 深い泥沼に静かに埋没していくようなその姿を 街往く人々は気にも留めない 彼は確かに其処に存在しているのに、 彼らには存在していないような、 そんな、半透明の男 瞬間、 雲の切れ間から、太陽の青白く輝きが差し込んだ 雑踏を往来する人々も、 綺羅びやかなのに無機質な繁華街も、 交差点を駆け走る車も、 鈍行の運転見合わせを示す電光掲示板も、 全てが陽光の下にくっきりと照らされ、 存在の下に暗い影を落とす 半透明の男の足元には陰影すら落ちることなく、 ただ底知れない…
いずれは日が昇る、いずれは日が沈むいずれは起こるし、いずれ鎮火するいずれは始まり、いずれは終わるいずれは死ぬ、そして、いずれは忘れ去られる いずれはいつか、それは誰にも分からないが、いずれは比較的近い将来の話。夜中に、目を閉じると、それが意識の終着点で、眠りとともに「いずれ」が訪れてくるのではないかと考える。少し怖いような、肩の荷が降りたような……、 隣の部屋から聞こえてきていた音が不意に途絶えた。隣人に「いずれ」が来たのか、それとも明日のための休息に入ったのか、僕には区別もつかない
40冊もの本たちがラーメン1杯分になった 値札すらつけられなかった本もたくさんあった
今日も大学で作業をした。単純な作業で、なんだか集中力が続かない。やっていることと全く関係ないことをぼんやりと考えてしまう。姿勢が気になったり、シャーペンの構造について考えたり、コロナウイルスによる日本経済の影響はどんなものなのか、オリンピックはちゃんと開催できるのか不安に思ったり…。次々浮かぶ考え事には全く脈絡が無い。大抵こういう思考の旅の辿り着く先は「ああ、早く終わらないかな」である。無駄な思考回廊は作業に集中できないことからはじまっている。普段もわりと考え事をすることが多いけれど、今日は特にひどい。考える内容も、その末路も。その原因は昨日あまり眠れなかったことかもしれない。 眠れなかった原…
孤独には言葉なんか必要ない
今日を振り返ってみると、一日中忙しく色んな所を駆け回っていたけれど成果はあまり無しみたいな日だった。徒労感が大きく、帰ってくるなりすぐにベッドに倒れ込んでしまう。なんか今日は一日無駄だったなあなんて考える。 無駄なことをするといつも以上に疲れてしまうのは、その行為が無駄だからだ。やらなくても良かったことをした、というよりその行為の意味がそもそも無かったという感じだろう。あくまでもこれは自分の感想だ。他人にとって無駄じゃないことも、自分にとっちゃ無駄だと感じることがあるだろうし、その逆もある。自分が価値を感じない行動をしたとき、それに無駄を感じ、必要以上に疲れてしまうのだ。 神経質になって無駄を…
絵を描いた。 何を描いたのかは不明だが、何年かぶりに没頭して絵を描いた。 僕にとって何を描くのかはそんなに重要なことではなく、何かに没頭することが重要だった。そういえばやるべきことは沢山あるはずだった。この作業はひとえに現実逃避だったのかもしれない。 今日は天気が良く、羽織りが要らないくらい暖かったので、春先のようだった。積もった雪もほとんど溶けて無くなっていた。大学では前期試験が行われていたらしく、見回りの人が校内をうろついていた。受験生と思わしき人たちが茶封筒片手に校舎からぽつぽつ出てくる。その背中には長きにわたる受験勉強から解放された達成感と期待が見えて、だけど少しの不安が滲んでいた。そ…
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