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書に耽る猿たち https://honzaru.hatenablog.com/

本と猿をこよなく愛する。本を読んでいる時間が一番happy。読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる色々な話をしていきます。世に、書に耽る猿が増えますように。

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2020/02/09

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  • 『ブラックサマーの殺人』M・W・クレイヴン|ポー、大変なことになった

    『ブラックサマーの殺人』M・W・クレイヴン 東野さやか/訳 早川書房[早川文庫] 2022.12.29読了 ワシントン・ポーシリーズの第2作である。先月『ストーンサークルの殺人』を読み、とてもおもしろかったからあまり時間をかけずに続編を。イモレーション・マンのことにも触れられているし、前回の事件からわずか1ヶ月後の設定である。今の小説って、最初から読まないと結構辛いものがあるかも。昔のシリーズものは一話完結型でどれを取り出して読んでもOKなイメージがあるんだけど。 「ポー、大変なことになった」 誰かから電話がかかってくるたびに、ポーはこのセリフを聞くことになる。何度も、何度も。 ポーが6年前に…

  • 『君のクイズ』小川哲|多くの読者を獲得しているはず

    『君のクイズ』小川哲 朝日新聞出版 2022.12.26読了 メディアに取り上げられたり色々なところで紹介されているから、小川哲さん史上一番売れているのではないか。こんなに宣伝しなくても、小川さんの作品なら読むのに!って思う。『ゲームの王国』で心を鷲掴みにされて、読む本はどれも当たりでおもしろいのだ。なんせ、彼の思考回路は天才過ぎる。 私もテレビのクイズ番組が好きなクチだった。出演者が芸能人であるものよりも、一般人が出るような番組が良い。モノマネでもなんでも、プロよりも一般の人がやるほうが、事前知識がない分絶対におもしろい。一般人はメディアに慣れてないのも良い。今は圧倒的にテレビよりもYouT…

  • 『ここはとても速い川』井戸川射子|文体から立ち昇るもの悲しさ

    『ここはとても速い川』井戸川射子 ★ 講談社[講談社文庫] 2022.12.25読了 井戸川射子さんは、小説家というよりも詩人として紹介されることが多い。その彼女が、この作品で選考委員満場一致で第43回野間文芸新人賞を受賞したということで、単行本刊行時から気になっていた。それにしても文庫になるのが早すぎでは?単行本は去年の5月に刊行されたから、2年と経たずに文庫化されたことになる。先日井戸川さんの新しい作品『この世の喜びよ』が芥川賞候補に選ばれたことも関係しているのだろう。 児童養護施設に暮らす小学校5年生の集(しゅう)が日常をただ語り尽くす。透き通った繊細な感性が眩しく、しかし時折り鋼のよう…

  • 『タール・ベイビー』トニ・モリスン|同じ人種でも価値観がこうも異なるとは

    『タール・ベイビー』トニ・モリスン 藤本和子/訳 早川書房[ハヤカワepi文庫] 2022.12.24読了 まるで2章分くらいカットされたものを途中から読んでいるのかと思うほど、最初の方は誰と誰の会話なのか、何をしているのか、彼らの関係性はどうなってるのかがわかりにくかった。あぁ、トニ・モリスンさんの小説はそうだ、過去に『ソロモンの歌』を読んだ時にもこのような感覚になったのを思い出した。初めのうちは忍耐強く頁を進めるしかない。 脱船して島に泳ぎ着いたサンは、ある屋敷に潜り込み、食べ物を漁り数日間寝泊まりしていた。ここでサンはジャディーンと出逢う。ジャディーンは白人の元で育った黒人女性、サンは黒…

  • 『天路の旅人』沢木耕太郎|未知の土地を歩くことが全てに勝る

    『天路の旅人』沢木耕太郎 新潮社 2022.12.22読了 第二次世界大戦末期、敵国である中国の奥深くまで潜入した諜報員西川一三(にしかわかずみ)さんのことを書いたノンフィクション作品である。西川さんは諜報員であることを隠すため、巡礼と称して蒙古人ラマ僧になりすました。しかし、もはや彼は本当に巡礼の旅をしたと言えるのではないか。天路、つまり「天へつながる道・天上にあるとされる世界・鳥や月が通る空」を旅した人、悟りを開いた人間の生き様が書かれている。 西川さんは、8年間の巡礼を終えて日本に帰ってきた後、『秘境西域八年の潜行』という総頁数にして2千頁にも達する紀行作品を書き上げた。本人による著作が…

  • 『英国クリスマス幽霊譚傑作集』チャールズ・ディケンズ他 夏来健次編|クリスマスに読みたい怪談

    『英国クリスマス幽霊譚傑作集』チャールズ・ディケンズ他 夏来健次編 東京創元社[創元推理文庫] 2022.12.19読了 この手の季節感がある作品(特にタイトルになっているもの)は、時期を外すと一気に読む気が失せてしまうので、クリスマス前になんとか読み終えた。作品を味わうのに季節も何も関係ないのに、やはり夏にはあんまり読みたくない。 この表紙を見て、ぞくぞくしてたまらない。暗がりの中、鏡に映るロウソクとそれを見つめる横顔の女性(顔よりもロウで出来たような手)に惹かれたのもあるけど、何よりも「英国」と「ディケンズ」に反応してしまったようなもの。イギリス人って幽霊や怪談が好きなのか〜。この本にはク…

  • 『完全犯罪の恋』田中慎弥|文学を通した共犯関係

    『完全犯罪の恋』田中慎弥 講談社[講談社文庫] 2022.12.17読了 私は田中慎弥さんの書くものが好きだが、同時に彼自身にもとても興味をそそられる。私生活はどんな風だろう、どんな人を恋愛対象にするんだろう。彼の思考と文章があれば好みの女性を一発で落とせそうだけれど…。とは思うけど、田中さんが好きになる女性が文学好きとは限らないか。 そもそも、彼が恋愛に溺れている姿は想像できない。だから、初めての恋愛小説ということで興味津々で読んだのだ。フィクションではあるけど、こと恋愛小説に限っては自分の体験が多少は影響されているのではないかと。 作家である40代後半の独身男性の田中の元に、ある若い女性が…

  • 『木曜殺人クラブ 二度死んだ男』リチャード・オスマン|ダイヤモンドの行方は

    『木曜殺人クラブ 二度死んだ男』リチャード・オスマン 羽田詩津子/訳 ★ 早川書房[ハヤカワポケットミステリー] 2022.12.15読了 ついに木曜殺人クラブの続編が出た!シリーズ一作目がとてもおもしろかったので、楽しみにしていた。とは言っても、読んだのが1年以上前だから謎解き要素は実はあんまり覚えてない。ミステリー小説って、バックグラウンドみたいなもののほうが意外と記憶に残る気がする。登場人物たちの背景やら、仲間との会話やら、その舞台となる場所から立ち昇る空気やら。 やはり、謎だらけだったエリザベスの過去から物語が展開していく。エリザベスと昔関わりがあった男性にダイヤモンド盗難の容疑がかけ…

  • 『アンネの日記 』アンネ・フランク|死んでもなお人々の心のなかに生き続ける

    『アンネの日記 増補新訂版』アンネ・フランク 深町眞理子/訳 文藝春秋[文春文庫] 2022.12.13読了 先日読んだ『あとは切手を、一枚貼るだけ』という小川洋子さんと堀江敏幸さんの共著作品(2人の書簡小説)で、小川洋子さんのパートで何度も登場したのがアンネの日記である。久々に読みたくなった。読むのは3回目である。1度目は子供の頃でほとんど覚えていない。 再読したのは大人になってからで、その時はアンネの純真無垢さ、大人の仲間入りをする思春期の想いが溢れていたことを覚えている。そう、ユダヤ人迫害、人種差別に対する実態を知るための日記としてだけでなく、ある少女の思春期の成長を記憶した書物でもある…

  • 『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』川内有緒|誰かと一緒に過ごして得られるもの

    『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』川内有緒 集英社インターナショナル 2022.12.5読了 この作品は去年の9月に刊行され、私が買った本の奥付を見ると既に9刷の版を重ねている。2022年Yahoo!ニュース|本屋大賞ノンフィクション本大賞を受賞した、ほっかほかに流行っている本である。 目の見えない人が美術館に行くってどういうことなのか?見えないのに楽しいのか?感じることができるのか?と不思議だった。けれど、これを読んで目から鱗が落ちる思いになった。今まで自分がいかに浅はかに絵を観に行っていたのか、美術館巡りが趣味のひとつだなんて、ちょっと知的な響きに酔いしれていただけなのだと。 白鳥…

  • 『銀花の蔵』遠田潤子|醬油蔵を継ぐこと、家族をたぐりよせること

    『銀花の蔵』遠田潤子 新潮社[新潮文庫] 2022.12.4読了 海外小説が大好きなのに、時々疲れてしまうことがある。おそらく翻訳された文章に気疲れするのだろう。現代は優れた邦訳がとても多く、そのおかげで私たちは素晴らしい世界文学に触れることができるのだけれど、原文を翻訳した文章だと思うだけで、何かの変換モードが働いてしまい、少し頭のどこかを余分に働かせてしまうようだ。既に日本語に変換されているはずなのに。 そんなわけで日本人が日本語で書いたもので、すらすら読めるもの、そして出来ればまだ読んだことがない作者のものを、と手に取ったのがこの『銀花の蔵』だ。この作品だは直木賞候補に選出されたこともあ…

  • 『ラブイユーズ』バルザック|散りばめられた人生の教訓と重層的な人間模様

    『ラブイユーズ』オノレ・ド・バルザック 國分俊宏/訳 ★ 光文社[光文社古典新訳文庫] 2022.12.3読了 バルザック著『ゴリオ爺さん』を15年ほど前に読んだ時、実は最後まで読み通せなかった。おもしろさを感じられなかったからなのか、当時はまだ翻訳ものを上手く読みこなせなかったからなのか不明だ。だからバルザックについては苦手意識があった。敬愛するサマセット・モームが天才だと認めたバルザックを私は理解できないのかと、少し残念な気分を常に持っていた。 時はフランス革命直後、ナポレオン帝政から復古王政に至る時代である。この頃のフランスは動きがあってやはりおもしろい。タイトルの『ラブイユーズ』という…

  • 『三十光年の星たち』宮本輝|人間としての深さ、強さ、大きさを培う

    『三十光年の星たち』上下 宮本輝 新潮社[新潮文庫] 2022.11.30読了 もっと古めかしい作品なのかと思っていたが、読んでみるとそうでもなかった。毎日新聞に連載された作品で、単行本になったのは平成23年だ。確かに新聞に連載になるような品行方正さがあり、すらすらと読みやすい作品だった。 親に勘当され恋人にも逃げられ、職もなくうだつの上がらない青年坪井仁志(つぼいひとし)は、80万円の借金をすぐには返せないため、金貸しの佐伯平蔵(さえきへいぞう)の仕事を手伝うことになる。毎月僅かながらも長年借金を返済し続けた女性に会いに行くため、運転手として一緒に旅路に出る。 相手のことをほとんど知らない2…

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