chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
書に耽る猿たち https://honzaru.hatenablog.com/

本と猿をこよなく愛する。本を読んでいる時間が一番happy。読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる色々な話をしていきます。世に、書に耽る猿が増えますように。

本猿
フォロー
住所
未設定
出身
未設定
ブログ村参加

2020/02/09

arrow_drop_down
  • 『統合失調症の一族 遺伝か、環境か』ロバート・コルカー|家族とは何か

    『統合失調症の一族 遺伝か、環境か』ロバート・コルカー 柴田裕之/訳 ★★ 早川書房 2022.11.27読了 こんな家族が実在したなんて信じられない。統合失調症以前に、今どき12人も子供を産む夫婦がいることにまず驚く。その子供のうち半数が統合失調症になってしまったある家族についての衝撃のノンフィクションである。 このひときわ目を惹くジャケット(何かとてつもない怖さを感じる)に吸い寄せられるように、数日間この本の世界に没頭した。これが現実にあったことだと思うと、おもしろいという表現は少し違うけれど、読み物としてこんなにも夢中になり心を揺さぶられた作品は久しぶりである。 自分の家なのに、兄たちを…

  • 『夢も見ずに眠った。』絲山秋子|夫婦の関係とは。しみじみと余韻が残る作品。

    『夢も見ずに眠った。』絲山秋子 河出書房新社[河出文庫] 2022.11.24読了 日本の至る所を旅しているような、いや再び訪れて懐かしむような気分になったといったほうがいいだろうか。岡山県・倉敷、岩手県・盛岡、島根県・松島、北海道・札幌は旅で訪れたことがあるし、東京都・青梅市は以前仕事で一年ほど通った地、そして神奈川県・横浜市は今もお世話になっている街だ。沙和子の実家である埼玉県・熊谷こそ訪れたことはないが、この作品に出てくる多くの土地には馴染みがあり、他人ごととは思えなかった。 こういう夫婦は実はたくさんいるんじゃないかと思う。結婚をしていても住む場所、生活が別々。学生の頃からの付き合いの…

  • 『マーダー・ミステリ・ブッククラブ』C・A・ラーマー|クリスティ愛に溢れたライトなコージーもの

    『マーダー・ミステリ・ブッククラブ』C・A・ラーマー 高橋恭美子/訳 東京創元社[創元推理文庫] 2022.11.23読了 このタイトルと帯の文句を見ただけでワクワク感が止まらない。ミステリ好きかつクリスティ好きなんて!私は読書会というものに参加したことがない。読みたい本ってその時によって違うし自分のタイミングみたいなものがあるから(今はミステリが読みたい、恋愛系がいい、歴史小説を読みたい、軽いエッセイしか無理、のような)、課題図書を読むことにちょっと抵抗がある。でも、この作品と訳者による解説を読んで一度は参加してみたいと思った。 読む前は、クリスティやP・D・ジェイムズ作品のような濃密なミス…

  • 『デッドライン』千葉雅也|本気にならず何かを結論づけることもなく

    『デッドライン』千葉雅也 新潮社[新潮文庫] 2022.11.21読了 千葉雅也さんは立命館大学の教授をされており『現代思想入門』の著者で知られる哲学者である。哲学者が書いた小説、しかも芥川賞候補にもなっていたので、かねてから気になっていた作家である。 大学一年の時『言語と論理』という履修科目があった。1年間の授業でテキストに使用している本のわずか30頁ほどしか使わず、ひたすらフーコーの思想を深く掘り下げて語っていた教授が懐かしい。学生たちに厳しく、半数以上の学生が単位を落としていた。私もそれに漏れず2年生で再履修することになってしまった。この小説を読んでフーコーやらドゥルーズがでてきたので、…

  • 『嫉妬/事件』アニー・エルノー|書くことで感情を解き放つ

    『嫉妬/事件』アニー・エルノー 堀茂樹・菊地よしみ/訳 早川書房[ハヤカワepi文庫] 2022.11.20読了 アニー・エルノーさんがノーベル文学賞を受賞された時には、すでにこの作品の文庫化が決まっていたようで、早川書房さんは先見の明があるなと感心していた。この本には『嫉妬』と『事件』の2作の中編が収められている。文学的な意味合いでは『嫉妬』のほうが優れているように思うが、強烈な存在感を放つのは『事件』のほうだ。 『嫉妬』 嫉妬は、人間が持つ感情の中で一番といってもいいほど醜くて嫌な感情だと思う。つい最近まで付き合っていた男性に新しい彼女ができ、一緒に住むことになったという。別れたはずなのに…

  • 『みんなが手話で話した島』ノーラ・エレン・グロース|ある共同体に生まれた文化を紐解く

    『みんなが手話で話した島』ノーラ・エレン・グロース 佐野正信/訳 早川書房[ハヤカワ・ノンフィクション文庫] 2022.11.19読了 コミュニケーション手段のメインが「言葉を発する会話」によるものだという概念を覆す作品だった。アメリカ東海岸・マサチューセッツ州のリゾート地、マザーズ・ヴィンヤード島では、かつて島に住む人々みなが手話を使って話していたという。この共同体の歴史や文化を紐解き、ろう者に対する考え方をまとめたのがこのノンフィクションである。 中学生の時に(今でも仲の良い友達だ)生まれつき難聴の友人がいて、その子に指文字を教えてもらった。手話ではなく、単純にアイウエオを「ア」を示す指の…

  • 『人間のしがらみ』サマセット・モーム|幸せは苦しみと同様に意味がないもの

    『人間のしがらみ』上下 サマセット・モーム 河合祥一郎/訳 ★★ 光文社[光文社古典新訳文庫] 2022.11.18読了 まさか年に2回も同じ小説を読むとは!どれだけこの作品が好きなんだろう。『人間の絆』という邦題で広く知られる名作であるが、今回訳者の河合祥一郎さんは、「絆」ではなく「しがらみ」とした。確かにミルドレッドとの関係性はもはや絆というよりもしがらみといえるかもしれない。「絆」も「しがらみ」も表裏一体であるからこの訳も頷ける。しかしタイトルから受ける印象はガラリと変わるから、なかなか思い切ったことをしたな~と思う。 作品の中でフィリップの精神を不安定にし、感情を大きく揺さぶられるのは…

  • 『本物の読書家』乗代雄介|文学観と小説蘊蓄|単行本を読む前に文庫化されてしまった

    『本物の読書家』乗代雄介 講談社 2022.11.12読了 読書家に本物も偽物もあるのだろうか。まぁ、読書家を気取っているニセモノはいるかもしれない。そもそも「読書家」は「家」がつくのに個人の趣味が高じただけになっているけれど、他の「家」がつく「建築家」「音楽家」やらはその道のプロを指す言葉になる。 実はこれらの「家(か)」の意味は異なり、「読書家」につく「家」のほうは、そのことに固執している、凝っている、性向にあるの意味である(努力家、愛妻家など)。「建築家」の「家」のほうは、そのことに専門性をもって従事している人の意味だ。日本語は難しくてやっかいだ。だからこそ趣があって美しい。 大叔父とは…

  • 『歩道橋の魔術師』呉明益|現実の世界にはない「本物」がきっとある

    『歩道橋の魔術師』呉明益 天野健太郎/訳 河出書房新社[河出文庫] 2022.11.11読了 読んでいる自分がマジックに魅了されてしまったようだ。やられた!とかではなく、むしろ心地よい騙され感。そんな不思議な魔法に包まれている、ずっと読んでいたくなるような作品だった。 昔、街頭の大道芸人が丸く書いた円の中で、踊る人形を操っていた。どう見ても電池が入る大きさではないし、何も繋がっていない。しかし私は、斜め後ろから観客然として見つめていた男が、細い糸で人形を操る姿に気づいてしまったのだ。 その透明に近い細い糸を横切ろうとしたら、別の男性がまるで怒鳴りだすように注意をしてきた。ここで私が横切ったら人…

  • 『プロトコル・オブ・ヒューマニティ』長谷敏司|ロボットと義足ダンサーの表現法、そして介護

    『プロトコル・オブ・ヒューマニティ』長谷敏司 早川書房 2022.11.9読了 帯に「10年ぶりの最高傑作」なんて書かれているけど、そもそも長谷敏司さんという作家を私は知らなかった。それもそうか、早川書房でも滅多に読まないハヤカワ文庫JAに名を連ねる方のよう。早川が好きで多く読んでいるけれどJAやSFの棚はほとんど見ないからなぁ。読まず嫌いは良くない、いつか小川一水さんの作品も読みたいのだが。 この作品に登場する護堂恒明(ごどうつねあき)は、ダンサーとして素晴らしい活躍をしていたが、バイク事故で首の骨を折り右足を切断することになる。新しくカンパニーを立ち上げた谷口と組み、AI搭載の義足をつけた…

  • 『白い薔薇の淵まで』中山可穂|究極の愛を突き詰める

    『白い薔薇の淵まで』中山可穂 河出書房[河出文庫] 2022.11.7読了 以前から気になっていた中山可穂さんの作品。李琴峰さんの小説の中にも登場しており、おそらく台湾をはじめとして海外でも広く読まれているのだろう。同性愛者の恋愛を描いた作品群でよく知られている。 どんな作品なのかも知っていたし予想もしていたはずなのに、読み初めてすぐ、濃密な描写に恥ずかしくなってしまった。しかし、その淫らな描写と作品の2人の主人公とく子と塁(るい)の奔放で真っ直ぐな想いから目を背けることができず、ものの2時間たらずで読み終えてしまったのだ。 異性同士であれ同性同士であれ、色々な愛の形があると思う。だけど、異性…

  • 『牧師館の殺人』アガサ・クリスティー|わちゃわちゃ感が半端ない

    『牧師館の殺人』アガサ・クリスティー 羽田詩津子 早川書房[クリスティー文庫] 2022.11.7読了 ミス・マープルシリーズの最初の長編がこの『牧師館の殺人』である。順不同に読んでいるから今さら順番はどうでもいいのだけれど、なんとなく最初の事件は早めに読まないとなと思ってしまう。ポアロシリーズのほうが名作は多いけれど、探偵個人としてはマープルの方が好きなんだよなぁ。 たしかにむだなおしゃべりはほめられたものではありませんし、残酷ですけど、たいてい真実をついていますのよ(38頁) 長く人間観察をしてきたマープルの言葉。そう、井戸端会議での会話は意外とみんなが気になる話題だ。もちろんとんでもない…

  • 『自転しながら公転する』山本文緒|そんなに幸せになろうとしなくてもいい

    『自転しながら公転する』山本文緒 ★ 新潮社[新潮文庫] 2022.11.5読了 中央公論文芸賞、島清恋愛文学賞を受賞され、評判も良かったから単行本で手に入れようと何度も思っていた。結局タイミングがあわずここまで来てしまったが、なんと2年で文庫化された。きっと良作ということもあるが、去年まだ58歳という若さで亡くなった山本さんの追悼の意も込めて、そして病床時を綴ったエッセイが同じく刊行されたからそれに合わせて、という出版業界の思惑もあるだろう。 主人公の都(みやこ)は、重度の更年期障害となった母親の手助けのために、都会から田舎に帰ってきた。ショッピングモールで契約社員として働き、回転寿司屋さん…

  • 『ビトナ ソウルの空の下で』ル・クレジオ|雄大な空を飛ぶ自由な鳥のように

    『ビトナ ソウルの空の下で』ル・クレジオ 中地義和/訳 作品社 2022.11.3読了 ノーベル賞作家、ル・クレジオさんの小説を初めて読んだ。彼はフランス人であるが、この作品の舞台は韓国・ソウル。ソウルと聞いただけで、先日の梨泰院の事故を思い出し辛くなる。クレジオさんはアジアの中でも韓国に独特の見解を持っており、特に若い女性にとって生きにくい国だとしている。あんなに煌びやかに見える韓国なのに。 田舎に住む18歳になるビトナは、ソウルに住む伯母の助けを借りて大学に通っている。伯母の娘のパクファとはうまくいってない。ある本屋の書店員から、病で外出ができない「サロメ」という中年女性のもとで物語を語る…

  • 『ストーンサークルの殺人』M・W・クレイヴン|ストーリーもさることながら、魅力はやはり登場人物たち

    『ストーンサークルの殺人』M・W・クレイヴン 東野さやか/訳 ★ 早川書房[ハヤカワ・ミステリ文庫] 2022.11.2読了 この『ストーンサークルの殺人』から始まる〈ワシントン・ポー〉シリーズは既に邦訳が3巻まで刊行されており、どれも好評だ。ようやく第1巻を読んだが、売れていることがよくわかる!最初から最後まで、かたときもだれることなく抜群に楽しめた。さすがゴールド・ダガー賞を受賞した作品だ(とはいえ、マイケル・ロボサム著の受賞作は私にはピンと来なかったからダガー賞=満足ではないけれど)。 そもそもストーンサークルってあまり聞きなれないが、石の遺跡のこと。日本にもあるが、世界でみるとイギリス…

  • 『定価のない本』門井慶喜|古書店街、本を守る人たち|神保町ブックフェスティバル・神田古本まつり

    『定価のない本』門井慶喜 東京創元社[創元推理文庫] 2022.10.31読了 門井慶喜さんの小説を読むのは、直木賞受賞作『銀河鉄道の父』以来だ。この『定価のない本』は、タイトルと表紙のイラストから想像できるように、古本・古書店が主役。それも、日本一、いや世界一の古書店街と言える東京・神田神保町が舞台だ。本好きに取ってはたまらないだろう。 庄治が構えた琴岡玄武堂という店は、古書ではなく「古典籍」専門の古本屋である。古典籍なる言葉は初めて知ったが、明治維新以前に出された和本で、古書よりも仕入れが困難で高価であるようだ。 庄治の古書店仲間で昔から兄弟のように仲が良かった芳松(よしまつ)が本の下敷き…

  • 『インド夜想曲』アントニオ・ダブッキ|幻想的、魅惑的な独特の世界観

    『インド夜想曲』アントニオ・ダブッキ 須賀敦子/訳 白水社[白水uブックス] 2022.10.30読了 イタリア人作家の本を続けて読むことに。実はダブッキさんの作品はまだ読んだことがなくて、どれから読もうかと迷っていたが、帯にある「内面の旅行記」という言葉に惹かれてこの作品を手に取った。 インドは訪れたい国のひとつである。出来れば若い頃に行って「世界観が変わった」なんて感想を言ってみたかった。そのセリフを言いたいがためにインドに行った人もいるんじゃないかしら。世界観なんて実は数日旅行に行ったくらいで変わるはずがないのに。少しだけインドの奔放さと泥臭さに驚く程度のものではないのか。なんて、行った…

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、本猿さんをフォローしませんか?

ハンドル名
本猿さん
ブログタイトル
書に耽る猿たち
フォロー
書に耽る猿たち

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用