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書に耽る猿たち https://honzaru.hatenablog.com/

本と猿をこよなく愛する。本を読んでいる時間が一番happy。読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる色々な話をしていきます。世に、書に耽る猿が増えますように。

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2020/02/09

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  • 『エリザベス女王の事件簿 ウィンザー城の殺人』S・J・ベネット|愛すべき国民の母が名探偵

    『エリザベス女王の事件簿 S・J・ベネット 芹澤恵/訳 ★ KADOKAWA[角川文庫] 2022.9.25読了 世界で1番キュートで、おしゃれで、慎ましくかつ知的な女性はエリザベス女王で間違いないと思う。つやつやの肌、キラキラした目、全身から光り輝く姿。英国王室の女王に向かってこんなことを言うのは失礼かもしれないけど、あんなにかわいいおばあちゃんはいない。ウィット溢れる発言が醸し出す知性、生涯を国民のために捧げた素晴らしい人間性。一般参列や国葬をメディアで拝見してわかるように、英国民にとっては本当に「母」だったのだ。 そんなエリザベス女王が主役になったこの作品。過去にもエリザベス女王が登場し…

  • 『すべて忘れてしまうから』燃え殻|くすぐったい懐かしさとほっこりする優しさ

    『すべて忘れてしまうから』燃え殻 新潮社[新潮文庫] 2022.9.23読了 燃え殻さんの小説『ボクたちはみんな大人になれなかった』は、大人泣き必須ということで話題になり映像化もされた。著者の燃え殻さんは、映像美術の仕事をしながら執筆をしている。現代を象徴するSNS手段を交えた作品でありながらも、昭和や平成初期の懐かしの風物詩が多く、特に同世代の男性から共感する声が多かったようだ。 で、私はその『ボクたちはみんな〜』をなんとなくまだ読んでいない。正直、たぶん好みじゃないだろうなと思って避けていた節がある。だけど、先日文庫の新刊として書店にあったこのエッセイは目に止まった。エッセイだし、薄くてす…

  • 『人生と運命』ワシーリー・グロスマン|自分の人生を切り開くのは自分の歩みによる

    『人生と運命』123 ワシーリー・グロスマン 齋藤紘一/訳 みすず書房 2022.9.22読了 現代ロシア文学の傑作として名高い大作『人生と運命』を読み終えた。全三部作でとても長かったが、タイトルから想像できるように重厚で濃密な読書時間を堪能できた。小説でありながらも記録文学のようで、それは著者が独ソ戦の従軍記者だったことからもうかがえる。 著者のグロスマンが生きている間はこの作品は刊行されなかった。「スターリンの指導のもとにあったときにわが国で起きた過酷なこと、間違ったことのすべてに、新しい力をもって光を当てた(第一巻514頁 解説より)」ために、家宅捜索され原稿は没収されてしまったのである…

  • 『独り舞』李琴峰|台湾人から日本語を教わる

    『独り舞』李琴峰 光文社[光文社文庫] 2022.9.16読了 以前読んだ李琴峰さんの『ポラリスが降り注ぐ夜』がとても良かったので、デビュー作で群像新人文学賞を受賞されているこの作品を読んだ。テーマは『ポラリス〜』と似ており、性的マイノリティに悩む若者の影と光を描いた小説である。 40年以上生きてきてそれなりに本も読んでいるはずなのに、「風声鶴唳(ふうせいかくれい)」も、「草木皆兵(そうもくかいへい)」も、初めて見知った四字熟語だ。どちらも「少しのことでも驚いて、恐れて怯えること」の意味で故事から来ているらしい。また、そばかすを「雀斑」と漢字で表現するのは見たことがなかった。そんなに難しい漢字…

  • 『ゼロ時間へ』アガサ・クリスティー|全てが集約される

    『ゼロ時間へ』アガサ・クリスティー 三川基好/訳 早川書房[クリスティー文庫] 2022.9.15読了 タイトルにある「ゼロ時間」とは、刻一刻と迫る何かのタイムリミットなのか?いや、ここではクライマックスの最後の瞬間のことである。全てが集約されるゼロ時間。普通は殺人事件が最初に起こるのに対して、ここでは逆をいき、ゼロ時間の要因となる現象が次々と展開される。今であればこういう小説は結構多いが、当時は斬新だったと思う。 初めの章で、多くの人物の断片的なエピソードが散りばめられている。てんでバラバラな出来事の数々を読んでいると、この小説にどう関係あるのかと疑問に感じる。しかし、全ては繋がっているのだ…

  • 『君がいないと小説は書けない』白石一文|自己分析を突き止めた到達点がある

    『君がいないと小説は書けない』白石一文 新潮社[新潮文庫] 2022.9.13読了 敬愛する作家の一人、白石一文さんの自伝的小説を読んだ。単行本刊行時から気になっていたが、確かあの時はほぼ同時に刊行された島田雅彦さんの作品(これも自伝的小説)を手に取った記憶がある。 honzaru.hatenablog.com 小説のタイトルだけを読むと、君(妻または恋人)がいないと仕事ができない、つまり「君がいないと何もできない」というように、言ってみれば他人に依存してしか生きられないやわな男を描いたものなのか?と訝しんでいた。しかし、読んでみるとそういう話ではなかった。 なんというか、深淵に迫るものがある…

  • 『だれも死なない日』ジョゼ・サラマーゴ|死がなくなることの恐ろしさと混乱

    『だれも死なない日』ジョゼ・サラマーゴ 雨沢泰/訳 河出書房新社 2022.9.10読了 死はどうして恐ろしいのか。『火の鳥』(手塚治虫著)で永遠の命を欲しいと願っていた人たちは、何故死を恐れ、何のために永遠に生き続けたい(死にたくない)と思っていたのだろうか。 永遠の命なんて欲しくない。そう気付いたのはいつからだろう。自分だけが生き残ってしまうという残酷で孤独な世界を映画で見たり小説で読んだからだろうか。確かに1人生き残ることほど辛いことはない。人間は孤独というものが苦手なのだ。 この世で誰も死ななくなったらどうなるのだろう。恐ろしいことがこの小説の中で起こる。「死」がなくなったときに想定さ…

  • 『むらさきのスカートの女』今村夏子|他人に執着する

    『むらさきのスカートの女』今村夏子 朝日新聞出版[朝日文庫] 2022.9.7読了 今村夏子さんが第161回芥川賞を受賞した作品である。単行本の時から表紙のイラストは同じだが、これなら「水玉のスカートの女」じゃないのかなぁと思っていた。 知り合いでもなんでもないのに、ちょっと気になる人っている。私の場合は毎日通勤電車で見かける人だ。降りる駅は決まっていて、ぐっすり眠っているのに、その駅に着く少し前にビクッと起きてドアに向かうその女性。携帯のアラームをつけているわけでもないのにすごいなといつも思っているのだが、もはや身体にしみついた習慣になってるのだろうか。こんな風に、特に思い出して考えるまでも…

  • 『月の三相』石沢麻依|面の裏側にあるもの|装幀が素晴らしい

    『月の三相』石沢麻依 講談社 2022.9.6読了 芥川賞受賞作『貝に続く場所にて』がとても良かったので、受賞後第一作目となる『月の三相』を読んだ。 旧東ドイツの南マインケロートという街がこの作品の舞台となっている。「面」に惹かれた女性たち、望(のぞみ)、舞踏家グエット、面作家ディアナが主人公である。絵画や文学作品をモチーフにしながら、記憶と歴史を多角的な面(視点)で捉えていくストーリーである。 この街では「眠り病」が流行っているという。ひとたびこの病にかかると、数ヶ月間目を覚まさない。その間に肖像画家が眠り人の肖像を作るならわしがある。この地域ならではの逸話がおもしろい。また、月といえばごつ…

  • 『スクイズ・プレー』ポール・ベンジャミン|もっとオースターさんの探偵ものが読みたくなる

    『スクイズ・プレー』ポール・ベンジャミン 田口俊樹/訳 ★ 新潮社[新潮文庫] 2022.9.4読了 なんと、ポール・オースターさんが別名義で小説を書いていたなんて!Twitterでフォローしている方のツイート見て初めて知ったのだ。しかもこの作品はデビュー作にしてハードボイルドもの。 お決まりの、探偵事務所に依頼人がやってくるところから始まる。タイトルが『スクイズ・プレー』だから野球を連想させる。そう、MVPを取ったこともある元メジャーリーガーのジョージ・チャップマンが依頼主だ。彼のところに命を狙う脅迫状が届いたというのだ。 主人公である探偵マックス・クラインのなんとキザでタフガイなことか!ま…

  • 『ルコネサンス』有吉玉青|透明感と美しさが共存する父娘の物語

    『ルコネサンス』有吉玉青 集英社 2022.9.3読了 著者の有吉玉青さんは有吉佐和子さんの娘である。お母さんの佐和子さんの作品は結構好きで何冊か読んでいるが、娘さんも小説を書いていたのは知らなかった。玉青と書いて「たまお」と読むこの名前がとても素敵だ。自伝的要素を取り入れたフィクションになっている。 「ルコネサンス」という言葉を知らなかったから、最初はルネサンスかと勘違いしてしまった。フランス語で、感謝、再認、承認、告白、偵察、踏査、などの様々な意味がある。 生後すぐに両親が離婚して母親に育てられたから、珠絵(たまえ)は、実の父親に26年間会ったことがない。決して恨んでいたわけではない、顔も…

  • 『優等生は探偵に向かない』ホリー・ジャクソン|「ハイ!みんな!」ピップの爽快な挨拶とひたむきな信念

    『優等生は探偵に向かない』ホリー・ジャクソン 服部京子/訳 ★ 東京創元社[創元推理文庫] 2022.9.1読了 お待ちかねの『自由研究には向かない殺人』の続編である。今年の初めに『自由研究〜』を読んでめちゃくちゃおもしろくて、次回作を楽しみにしていたから期待値半端なく読んだ。 honzaru.hatenablog.com 続編でシリーズ2作めといっても、一続きの作品といっていいほど内容が重なっている。ピップとラディ以外の登場人物も前作とかなりかぶる。だから、これから読む人は絶対に前作から読まないとダメ。そうじゃないとおもしろさは半減すると思う。そして、間を置かずに続けて読むのがおすすめだ。 …

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