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書に耽る猿たち https://honzaru.hatenablog.com/

本と猿をこよなく愛する。本を読んでいる時間が一番happy。読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる色々な話をしていきます。世に、書に耽る猿が増えますように。

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2020/02/09

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  • 『下駄の上の卵』井上ひさし|人間の本能のところでたくましい

    『下駄の上の卵』井上ひさし 新潮社[新潮文庫] 2022.8.29読了 今年の夏の高校野球の優勝校は宮城県・仙台育英だった。全て観たわけではないが、家にいてテレビをつけていると、やっぱり高校野球っていいよなぁと球児達のプレーや心意気、笑顔と涙に喝采を送りたくなる。東北勢が今まで優勝をしたことがなかったのは意外だった。 この作品で野球少年たちが通っているのは、東北・山形県南部の小さな宿場町にある小学校だ。そう、今年の高校野球で全国制覇を成し遂げた東北が舞台。ただしこの小説では高校生ではなく小学校6年生が主人公である。 無我夢中で野球に励み、大会で勝ち進んでいくようなスポ根の話かと思っていたら、実…

  • 『ロボット・イン・ザ・ガーデン』デボラ・インストール|子供たちに読んで欲しい物語

    『ロボット・イン・ザ・ガーデン』デボラ・インストール 松葉葉子/訳 小学館[小学館文庫] 2022.8.27読了 二宮和也さん主演の映画『タング』が現在公開されている。劇団四季のミュージカルも評判が良かったから、この原作は前から気になっていた。文庫の版はもう23刷だし続編も何冊も刊行されているから、シリーズとして人気のほどがうかがえる。 これは児童文学じゃないかって思うほどとても読みやすかった。主人公は34歳になる中年のベンとロボットのタング。妻のエイミーは弁護士だが、ベンは無職でのらりくらりと生活している。2人の生活にヒビが入りかけた頃、タングが突如自宅の庭に現れたのだ。 子供ロボットのタン…

  • 『水平線』滝口悠生|全ては時空を超えてつながっている

    『水平線』滝口悠生 ★★ 新潮社 2022.8.25読了 あの人と私は、海の彼方でつながってルルル 帯に書かれたこの文章。ルルル?ルルルって…。ハミングしてるのだろうか。この感じが早くも滝口悠生さんっぽい。霊的な力を持つという巫女さんから、名前がよくないと言われて「ル」をくっつけて「重ル(シゲルル)」という名前になった人物が作品に登場する。きっと何か関わってるのだろうと思いながら読む。 滝口さんのほのぼのとした作品かと思っていたら、この『水平線』は小笠原諸島の一つ、硫黄島のことを描いた重厚な物語だった。硫黄島といえば太平洋戦争の激戦地であり、アメリカ軍に占領されていた場所。硫黄島の戦いを描いた…

  • 『杏っ子』室生犀星|親子でありながら、友達、恋人、同志のような関係性

    『杏っ子(あんずっこ)』室生犀星 新潮社[新潮文庫] 2022.8.21読了 小学校か中学校の国語の教科書で室生犀星さんの詩が出てきたのを覚えている。「ふるさとは遠きにありて思ふもの」という書き出しだけで、詩自体の内容は全く覚えていないけど…。詩人、小説家である室生さんだが、思えば小説をちゃんと読んだことがなかった。この機会に自伝的小説と呼ばれている『杏っ子』を手に取った。 室生さんの分身であろう平山平四郎と愛娘の杏子(きょうこ・呼び名が杏っ子)の親子の絆を描いた作品である。作中には芥川龍之介、菊池寛、佐藤春夫、大杉栄まで登場し、文壇にいた室生さんを想像しながら読んだ。古い作品だが、新聞小説だ…

  • 『無垢の博物館』オルハン・パムク|頬擦りしたくなるほど美しい作品を読んでしまった

    『無垢の博物館』上下 オルハン・パムク 宮下遼/訳 ★★★ 早川書房[ハヤカワepi文庫] 2022.8.18読了 先日書店に行ったらハヤカワepi文庫で刊行されていて迷わず購入した。とても美しく、身体が痺れてしまうほど素晴らしい作品だった。どうしてこんな小説が書けるのか…。本に対して「愛しい」なんて表現はおかしいかもしれないけれど、私にとっては頬擦りしたくなるほどの小説だ。たまらない! もう、一文づつ、一頁づつ、ゆっくりと丁寧に大切に読んだ。こんな風に一途に何年も1人の女性を愛せるものなのか。これが真実の愛というなら、世間に蔓延る愛と呼ばれるものが薄っぺらに思えてしまう。本当の愛って苦しいけ…

  • 『陽気なお葬式』リュドミラ・ウリツカヤ|周りの全てを好きになること

    『陽気なお葬式』リュドミラ・ウリツカヤ 名倉有里/訳 新潮社[新潮クレスト・ブックス] 2022.8.13読了 タイトルがいい。お葬式が「陽気」だなんて。もちろん大切な人が亡くなることは辛く悲しいことだから悼むことは必要である。だけど、お葬式が「悲しいこと」だという概念がそもそも一般化しすぎているのではないか。もちろん、不慮の事故や事件で命を落とした場合はやむを得ないが、大往生を遂げた人に対するお葬式はもっと明るいものでいいんじゃないだろうか。お葬式のあり方を変えていくべきじゃないかと最近思う。 亡命ロシア人の画家アーリクが重篤な病に侵されている。やがて亡くなる彼の元に、アルコール依存症の妻ニ…

  • 『遠い声 遠い部屋』トルーマン・カポーティ|豊潤な言葉遣いと比喩表現が美しい

    『遠い声 遠い部屋』トルーマン・カポーティ 河野一郎/訳 新潮社[新潮文庫] 2022.8.11読了 アメリカ文学が無性に読みたくなり、手にしたのがこの本。カポーティさんの自伝的小説のようである。表紙の写真からは雄大な土地と空が立体的に感じられ、雰囲気がありとても良い。 母を亡くした13歳のジョエルは、まだ見たこともない父親を探しにアメリカの田舎町を訪れる。父親が住んでいる家にたどり着くが、父親は具合が悪いということでなかなか会わせてもらえない。継母のエイミイ、召使いのミズーリ、近所に住む双子の姉妹、エイミイの従兄弟のランドルフなどと親しくなりながら、まだ成熟していないジョエル少年の精神の成長…

  • 『1R1分34秒』町屋良平|若者の素直な感情が溢れ出す

    『1R(ラウンド)1分34秒』町屋良平 新潮社[新潮文庫] 2022.8.9読了 男の人ってどうしてあんなにもボクシングが好きなんだろう。ボクシングというより格闘技全般か。私なんて、リングの上で誰かが血を流すのを見るだけでも目を背けたくなるのに。道具もなく身体だけを使い、拳を武器に相手に挑む姿勢。ただ1人で強さを競うという競技が、強さへの憧れとなり、自己をも強くなったかのような疑似体験になるのだろうか。 この作品は町屋良平さんが芥川賞を受賞した作品である。文庫にしてわずか170頁あまりの中編小説だ。しがないボクサーである21歳の「ぼく」が、ボクシングをやり続ける意味、生きる意味を自問していくス…

  • 『もう行かなくては』イーユン・リー|人生を振り返るとき誰を想う

    『もう行かなくては』イーユン・リー 篠森ゆりこ/訳 河出書房新社 2022.8.8読了 高齢者施設に住む81歳のリリアが、かつて恋人だったローランドの著作を読みながら過去を回想していくストーリーである。時間軸と構成がけっこうややこしくて難解に思えるけど、リリアのあっけらかんとした語りが時にユーモラスで意外とすらすら読めた。 人生で4回しか会ったことがない相手をこんなにも愛していたと言えるのだろうか。会えない時間が想いを募らせているのだろうか。人が人を想うことは、誰かと比べるものでも図れるものでもない。その人なりの愛し方がある。 一方、ローランドにもとびきりの想いを寄せている人がいた。それは親子…

  • 『本にだって雄と雌があります』小田雅久仁|大阪弁による軽妙な語りと蘊蓄を楽しむ

    『本にだって雄と雌があります』小田雅久仁 新潮社[新潮文庫] 2022.8.6読了 受賞は逃したけれど本屋大賞にノミネートされた『残月記』は、あまり体験したことのない読後感であり、今でも印象深く心に残っている。この小説は、小田雅久仁さんが2012年に刊行した作品である。 奥泉光さんの作風に似てる!というか、夏目漱石さん作品をオマージュして書いた奥泉さん的な感じ。ぐだぐだと、こりゃ長くなりそうだなぁと最初は思いながら読み進めていたが、あれよあれよと言う間にいつの間にか読み終えていた。多分、本好きなら沼ってしまう類の本だ。 本にも雄と雌があり結婚して子供が産まれて本はどんどん増えていく、というよう…

  • 『神学校の死』P・D・ジェイムズ|英国神学校と聞くだけで胸高鳴る

    『神学校の死』P・D・ジェイムズ 青木久惠/訳 早川書房[ハヤカワポケットミステリー] 2022.8.2読了 聖アンセルムズ神学校の住み込み看護婦の手記ではじまる導入部、これがとても引き込まれる。神学校と聞いただけでウンベルト・エーコ著『薔薇の名前』が思い浮かんだ。あれはめちゃめちゃおもしろかった。もう一度読みたい。だからなのか、神学校を舞台にしたこの作品にもおのずと期待してしまう。マントや法衣、司祭や信仰、こんな単語があるだけで胸高鳴る!(聖職者の方には勝手な思い込みで申し訳ないけれど) 一人の神学生が海の近くで砂に埋もれた姿で発見された。事故死と処理されるが、疑問を持った義父はダルグリッシ…

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