chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
書に耽る猿たち https://honzaru.hatenablog.com/

本と猿をこよなく愛する。本を読んでいる時間が一番happy。読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる色々な話をしていきます。世に、書に耽る猿が増えますように。

本猿
フォロー
住所
未設定
出身
未設定
ブログ村参加

2020/02/09

arrow_drop_down
  • 『おいしいごはんが食べられますように』高瀬隼子|他人が何を考えているかはわからない

    『おいしいご飯が食べられますように』高瀬隼子 講談社 2022.7.30読了 とても評判が良かったから芥川賞候補に挙がる前から購入していたのに、ついつい読むのが遅くなってしまった。先日第167回芥川賞を受賞された作品。発表前に読みたかったけれど、まぁ特に候補作を読み比べているわけではないからいいか。 ある職場の人間関係を「食」を通じて描いたストーリーである。淡々と仕事をこなし、食に興味がなく生きる為に栄養を摂るという男性二谷さん、か細くてみんなが守りたくなる料理上手の芦川さん、そして、二谷さんのことが気になる仕事が出来て頑張り屋の押尾さん。この3人だけで物語が進むといっても過言ではない。 これ…

  • 『チーム・オベリベリ』乃南アサ|偉大な人物は大成するのが遅い

    『チーム・オベリベリ』上下 乃南アサ 講談社[講談社文庫] 2022.7.28読了 タイトルにある「オベリベリ」とは、北海道・帯広のことである。元々アイヌの土地だったため、アイヌ語でオベリベリ、漢字に「帯広」が当てられているのだ。帯にリアル・フィクションとあるが、つまり史実に基づいた小説で、ノンフィクションに限りなく近いということ。帯広地方を開拓した渡辺(旧姓鈴木)カネと周りの男たちを描いた壮大な作品だった。 明治時代、横浜の女学校で学び、父の薦めで洗礼を受けた鈴木カネは、兄の銃太郎が北海道開拓を挑戦しようとしたことをきっかけにして、自分の人生を考える。このままでいいのか。銃太郎から、開拓仲間…

  • 『私の名前はルーシー・バートン』エリザベス・ストラウト|言葉にしなくてもわかりあえること、ただ感じるだけで充分なこと

    『私の名前はルーシー・バートン』エリザベス・ストラウト 小川高義/訳 早川書房[ハヤカワepi文庫] 2022.7.24読了 2年半くらい前に、1週間弱の入院をしたことがある。手術も入院も初めてのことだったから、不安と心配との連続だったけれど、終わってみればあっという間だった気がする。入院中は独りで心細くもあった。本を持っていったのに、ほとんど読めなかった。入院している姿なんて誰にも見られたくないとは思っていたものの、お見舞いに来てくれた家族や友人には感謝しかない。 主人公ルーシーは、盲腸が元で原因で入院をする。しかし入院は9週間と長引くことになった。そこに何年も疎遠だった母親がお見舞いにやっ…

  • 『道』白石一文|あの時、ああしていれば

    『道』白石一文 小学館 2022.7.23読了 白石一文さんの小説は、年々柔らかくなってきているような気がする。昔の作品は切れ味鋭く、読むたびに感情を揺さぶられた記憶があるのだが、今はゆったりとした心持ちで読める。それはそれで悪くないと思うのは自分も歳を重ねたからであろう。 帯にもあるように、タイムスリップの話である。娘を交通事故で亡くし、精神に異常を喫した妻と過ごす日々、功一郎は過去を悔やむ。あのときああしていれば、娘の事故は未然に防げたのではないか、妻も自殺未遂をしなかったのではないか。昔一度成し遂げた「あれ」を試し、2年ちょっと昔の自分に戻るのだ。 あり得ないストーリーではあるのだが、妙…

  • 『嘘と正典』小川哲|小川さんの文章はクールすぎる

    『嘘と正典』小川哲 早川書房[ハヤカワ文庫JA] 2022.7.18読了 直木賞候補にもなっていたから単行本刊行時にとても気になっていた本。ようやく文庫になって迷わず購入した。小川哲さんといえば、『ゲームの王国』を読んだ時の衝撃を今でも忘れられないし、こんな天才がいるのか!と読んでいてぞくぞくした。 この本は表題作を含む6作の中短編が収められている。最初の『魔術師』から、小川さんの異才ぶりが発揮されている。手品師(魔術師)の壮大なトリックが長い時間をかけて作り出される。何より小川さんが書く小説自体が一番トリッキーで、まんまとやられるのだけれど! 作品の中で唯一SF要素がない『ひとすじの光』は、…

  • 『ゴルフ場殺人事件』アガサ・クリスティー|ポアロとジロー、ポアロとヘイスティングス

    『ゴルフ場殺人事件』アガサ・クリスティー 田村義進/訳 早川書房[クリスティー文庫] 2022.7.17読了 エルキュール・ポアロシリーズ1作目『スタイルズ荘の怪事件』に続く2作目である。ポアロの友人ヘイスティングスが語る構成は、初回と同じである。それにしてもヘイスティングスはなんとおっちょこちょいというか、間抜けというか、素直すぎるというか…。ポアロにも「きみは相変わらず頭を使わずに話しているね」と言われてしまう。ま、そんな2人のコンビが読んでいておもしろい。 南米の富豪ルノー氏から不穏な手紙を受け取ったポアロは、ヘイスティングスとともに急いでフランスを訪れる。しかし到着した時にはルノーは無…

  • 『喜べ、幸いなる魂よ』佐藤亜紀|独特の世界観で魅了する

    『喜べ、幸いなる魂よ』佐藤亜紀 KADOKAWA 2022.7.12読了 初めて訪れたヨーロッパの国がベルギーだったこともあり、首都ブリュッセルの古き美しき建物の荘厳さがありありと目に浮かぶ。今でもあの感動は忘れない。この小説の舞台は、現ベルギーがある位置のフランドル地方である。時代は18世紀。表紙のイラストはブリューゲルの作品のようであたたかさがこもる。 亜麻糸商ファン・デール氏には、双子の姉弟(姉ヤネケ、弟テオ)がいる。そこに、かつての仕事上の相棒の子供、ヤンを引き取ることになる。3人の子どもたちはまるで家族のように暮らす。性生活に興味を持ったヤネクは、実験を行うようにヤンと性行為を行い子…

  • 『正体』染井為人|人は何をもって真実と図るのだろう

    『正体』染井為人 ★ 光文社[光文社文庫] 2022.7.10読了 は〜、おもしろかった。最初は、よくある脱獄犯の逃亡小説なんだろうなとあまり期待していなかったのだけど、途中から目が離せなくなりぐいぐい持っていかれた。単純にストーリーを楽しみたい、おもしろい小説を読みたいと思っている人にはオススメだ。 拘置所に収監されていた鏑木慶一(かぶらぎけいいち)が脱獄した。彼は1年半前に、埼玉県熊谷市に住む一家3人の惨殺事件を起こし死刑囚となっていたのだ。脱獄した目的は何なのか、彼の正体は何なのか。 いわゆるサイコパス系のストーリーではない。むしろ、それぞれの潜伏先で鏑木と関わる人たちの人間ドラマに心を…

  • 『八甲田山死の彷徨』新田次郎|成功と失敗、組織のリーダーとは|天はわれ達を見放した

    『八甲田山死の彷徨(ほうこう)』新田次郎 ★★ 新潮社[新潮文庫] 2022.7.6読了 これは明治35年に青森で実際に起きた八甲田山の遭難事故を元にして作られた小説である。記録文学に近い。そもそも何の目的でこのような行軍があったのかというと、ロシアとの戦いに備えた極寒での訓練のためであった。 行軍は2つのルートで行われる。弘前ルートを辿るのが、徳島大尉率いる弘前歩兵第三十一聯隊(れんたい)、総勢38名の小規模聯隊である。一方、青森ルートを辿るのが、神田大尉率いる青森歩兵第五聯隊、総勢210名の大規模聯隊だ。この2つの行軍は対照的な結末をたどる。 第五聯隊にいる山田少佐は「雪の中を行く軍(いく…

  • 『うつくしが丘の不幸の家』町田そのこ|対称でありながら非対称

    『うつくしが丘の不幸の家』町田そのこ 東京創元社[創元文芸文庫] 2022.7.4読了 町田そのこさんは『52ヘルツのクジラたち』で昨年本屋大賞を受賞された。感涙小説と絶賛されているから読もう読もうと思いながらも、なんとなく機会を逸してしまっている。 タイトルに「不幸の家」なんてあるから、ホラーやサスペンスかと思っていたけど、読んでみるとほっこりと心温まる家族小説だった。そもそも東京創元社から刊行される作品はどうしてもミステリーのイメージが強い。だけどこの本の文庫のレーベルは「創元文芸文庫」である。よく考えたら「創元推理文庫」しか読んだことがないかも。 この小説は「うつくしが丘」という海を見下…

  • 『らんちう』赤松利市|人間の業をせせら笑いながら見つめているのだろう

    『らんちう』赤松利市 双葉社[双葉文庫] 2022.7.2読了 らんちうとは、奇形の高級金魚「らんちゅう」のこと。なんと一匹200万円もするという。調べてみると、背びれがなく、ずんぐりとした身体を持つ赤い金魚だった。金魚というと、私はお祭りの屋台にある金魚すくいの金魚、細くて小さなイメージがある。または黒い出目金。らんちゅうは、どちらかというと見た目は出目金に近いかな。 田舎の老舗旅館の従業員6人が、総支配人を殺害した。自首した彼らと、旅館関係者が順番に独白していくという構成になっている。殺害動機があまりにも薄っぺらい感じがしたから、誰かが嘘をついているのかと勘ぐっていたのだが、そういうことか…

  • 『リリアンと燃える双子の終わらない夏』ケヴィン・ウィルソン|親友の語りを聞いているようで楽しくなる

    『リリアンと燃える双子の終わらない夏』ケヴィン・ウィルソン 芹澤恵/訳 集英社 2022.6.30読了 表紙のイラストがとても気になって、パラパラとめくってみる。導入から自分の好みに感じたし、集英社のなめらかな字体が読みやすい。ソフトカバーであることも気軽に持ち歩ける。 女性の方が書いているのかと思っていたら、男性だったとは。主人公リリアンの女性特有の気持ちがリアルで正直でほほえましい。そしてまた、ダルさ加減がおもしろくて共感でき、いつしかリリアンの虜になってしまうのだ。 リリアンは学生時代からの親友マディソンからある依頼を受ける。それは、マディソンの夫ロバーツの先妻との間に産まれた双子の面倒…

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、本猿さんをフォローしませんか?

ハンドル名
本猿さん
ブログタイトル
書に耽る猿たち
フォロー
書に耽る猿たち

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用