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2020/01/29

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  • 翳(かげ)~莫逆(ばくぎゃく)と裏切り~終章

    チェから渡されたのは自動拳銃「グロック17」とやはり9mmパラベラム弾の装填された一ダースのマガジン(弾倉)だった。戦争でもおっぱじめるのだろうか?これで身を守れということらしい。マーシャルもそれを手にしている。「姐さん、こらやっかいなことになるかもしれまへん

  • 翳(かげ)~莫逆(ばくぎゃく)と裏切り~④

    蒲生譲二が会頭を務める「琴平会」は会津小鉄会系の指定暴力団とされているが、京都の宇治市と伏見区から島原付近をシマとするほぼ独立系の団体である。組の名は蒲生の故郷である香川県琴平町に由来する。この団体は、食肉業界や北朝鮮系遊戯協会(パチンコ業界)との関係が

  • 翳(かげ)~莫逆(ばくぎゃく)と裏切り~③

    夫の祥雄は意識を取り戻したが、あたしのことがよく認識できないらしかった。主治医は「一時的なものです。そのうち奥様の顔がわかるようになります」と言うのだが…ICUから一般病棟に空きができ次第、移動するとのことだった。病院にいても仕方がないので、マーシャルと一緒

  • 翳(かげ)~莫逆(ばくぎゃく)と裏切り~②

    病院のICUの待合室であたしはまんじりともせず朝を迎えた。執刀医の説明では、夫の祥雄はワーファリンの長期服用による脳血管脆弱で脳内出血を起こし、左脳の大部分を損傷したということだった。彼の一命はとりとめられたが、これからの生活は百八十度変わるだろう。今一度、

  • 翳(かげ)~莫逆(ばくぎゃく)と裏切り~①

    あたしは命を狙われているようだ。2009年一月に「金(キム)王朝」金正日の後継者として金正恩を指名したころから、あたしへの執拗な攻撃が始まったように感じていた。日本人拉致に関わった日本人の口を封じたいのではなかろうか?京滋バイパスで真っ黒なワゴンに幅寄せされ

  • 翳(かげ)…(10)

    平成十七年(2004年)、四度目の司法書士試験の挑戦も足切り点に満たず不合格となった。あたしは落胆の色を隠せなかった。夫はいろいろと励ましてはくれたが、あまり勉強には身が入らなくなってきた。「やっぱり、法学部出身でないと難しいのかな」「主婦でも合格しとんねん

  • 翳(かげ)…(9)

    マーシャルこと若頭の柏木勝が、あたしに会いたいとメールをくれた。近鉄京都線大久保駅の駅中のマクドで落ち合った。琴平会の組事務所がすぐそこなので、お互い都合が良かった。「姐さん、行ってきましたで」開口一番、彼は坊主頭を逆なでしながらにこやかに言う。三十半ば

  • 翳(かげ)…(8)

    いけない、いけない。帰宅が遅くなってしまった。夫の祥雄が、先に帰って夕飯の支度をしてくれていた。夫は、おととしに長年勤めてきた、あたしも勤めている化学会社を体のことで辞めた。今は近所の染色会社へパートに出ている。「おかえり。最近、忙しいんやね」「うん。ち

  • 翳(かげ)…(7)

    あたしは、久しぶりにJR京都駅のラウンジで蒲生譲二とグラスを傾けていた。「なんや、おりいって相談って」「おととい、舞鶴でブツを受け取った帰りにね、敦賀をまわってきたんですよ」「ほう」「そこで旧友から、浩二のことを聞いてね」「いとこの男か?おまえの想い人の」

  • 翳(かげ)…(6)

    浩二の噂を耳にしたのは、意外な人物からだった。あたしは、舞鶴での仕事の帰りに、福井県の敦賀に実家のある大学時代に知り合ったボーイフレンドを訪ねてみようと思い立った。たしか、その男性は上智大学出身だったと言っていた。もしやと思い、電話して従弟のことを尋ねる

  • 北帰行

    あたしは北陸道をポンコツ「バネット」で飛ばしていた。このマニュアル式のワンボックスしかなかったのだ。バネットに2mのFMトランシーバをつけて、マグネット基台のホイップアンテナを天井に貼りつけている。利根を過ぎたあたりだ。賤ヶ岳SAで昼を食って、そのまま北へ進ん

  • Naobon's Crisis

    The Glock 17 was on my hand.The gun was my good co-worker."Hey Naobon, Can you hear?"From my inter-come, I heard a voice of John Hogan.He is our Boss."Yes, sir.""An enemy hides in the passage before you. Watch it."This passage became the "T" character

  • 嫂(あによめ)

    嫂(あによめ)は優しかった。兄さんには「甘えた」だったけど、ぼくには「姉」のようにふるまった。「耕ちゃん、汚れ物は出しといてね」「う、うん」朝の洗濯に間に合わせるために、家族の汚れ物をたらいに入れておくのが嫂のやり方だった。おふくろが早くに亡くなって、秋

  • 湘南ラプソディー(ある狂詩曲)

    小麦色の肌と割れた腹筋、きれいに剃り上げられたアンダーヘア…そそり立つ「龍」は両手で握っても余るくらい。しなやかにしなるが、しっかりとした硬さが手のひらを通して感じられる。彫の深い目鼻立ちが、歪み、眉間に深いしわを刻む。射精が近いのか?ふいごのような息を

  • ひでちゃん

    秋の長雨がアパートの窓ガラスを滝のように潤していた。薄暗い部屋の中から、この窓越しの景色を眺めていると、あの時のことを思い出させる。ぼくには、十違いの叔母がいた。その叔母が亡くなって、五年が経ち、ぼくは東京の大学に行くために故郷を離れている。叔母は父の妹

  • ボンサラの落日

    この道をイニ(訳注:日の沈む方向、つまり西)に行くと、どこに着くのだろう。あたしは、幼いころから抱いている疑問を、また自分に問うている。世の中は日ごとに暗くなりつつあった。「シマックイマック(訳注:紫のたそがれ)」を迎え、やがて「ナラカイダ(訳注:闇の沈

  • 決行

    東海(日本海)の秋は早い。とはいえ日本の秋は、色彩が豊かだ。祖国はあまりにも寒く、荒涼としていて、思い出すのもつらい。「おい、本部からの指示らしい」うしろのテントから李仁念の声がした。私は、しゃがんで深い緑色の天幕を分けて頭を突っ込む。中には通信機が並び

  • 売国奴

    高校の時に、クラスメイトに在日の女の子がいた。日本名を「金沢明恵」で通していたが、あたしには本名の「金明恵(キム・ミョンヘ)」と明かしてくれた。彼女とはかなり親密な関係で、身も心も許し合ったと言っていい。とはいえ、あたしの方から彼女に近づいたのではなく、

  • 年上の女(ひと)

    秋の夕暮れはすぐに暗うなる。玄関をそっと開けて、夕飯の支度をしている、お母ちゃんの後ろを、こそこそ歩くと、「雄太、あんたどこに行ってたんや」 と、きつい口調で訊かれた。「西浦さんとこ」 「このごろ、よう政子さんとこ行くなぁ」 「うん」 お母ちゃんには、知

  • W Jun-ichi

    あたしに、その女は「宮崎やおい」と名乗った。どこかで聞いたような名だし、第一、顔があの「女優」そっくりだった。『W Jun-ichツングースカを駆ける』というドキュメンタリータッチの番組の制作にあたしは参加していた。「宮崎やおい」が、番組では「矢追純一」になってい

  • ブルーマックス Ⅱ

    あたしはヴァーチャルリアリティゴーグルを装着した。本来このゲームはVRで行うものだった。スマホ版は簡易版でしかない。操縦かんはないがそれを握るように手を持っていくとゴーグル内の自分の手がちゃんと操縦かんを握っているように映っている。タッチパネルが前方にあり

  • もくじ9

    私の書きたい気持ちがあふれているんですね。もうこれは、自分のためなんです。読んでもらわなくてもいいです。オトナ未満(1)~山本先生の言葉ナオボネチカ・ナオボネスカヤの話強奪ノマド夫婦善哉郭公の家…旭日の陰、麗子奪取作戦宙(そら)へ…流離篇中島飛行機でのこ

  • 家出 おわり

    横山さんと別れて、おれたち母子は今日の宿を南インターに探した。城南宮の北側の道に面してラブホ通りという風情だった。中をぐるぐる回って、かわいいネコの絵のあるホテルに入った。そこは駐車場から直接、部屋に行ける階段があって、だれにもまったく会わないように工夫

  • 家出(4)

    おれは射精した後、しばらく母の胸に顔をうずめていた。「よしよし。よくがんばったね」母は、おれを赤子のように頭を撫でてあやす。「母さん、もう寝ようよ」「そうね。寝ましょうね」母は、出したものをティッシュで始末し、そのかたまりをくず入れに放り込んだ。そうして

  • 家出(3)

    wawabubu Comment(0)もう、十一時を回った。おれはテレビを消した。母はドライヤーで髪を乾かしている。ベッドしかない部屋で、おれは思案した。ひとつのベッドで母と寝るのだ。このベッドは男女がセックスをするための特別なベッドなのに。枕元を見ると、避妊具の包みが二

  • 家出(2)

    ラブホテルというのは、いわゆる男女がセックスをするために使う施設だ。おれは、高校生だからその程度の理解はある。ホテルなのだから当然泊まることができる。それもわかる。わかったうえで、このシチュエーションは問題だろう。母は、さっさと風呂の用意をし、家でふるま

  • 家出(1)

    夏休みが始まったばかりだというのに、家の中は暗かった。父が母に暴力をふるうのだ。いったい母の何が気に入らないのだろう。おれが小学生の頃は、こんなじゃなかった。父の仕事がうまくいかずに、職を変えたころだったろうか?呑めぬ酒を無理にあおっては、ひっくり返って

  • 蒼頡(そうけつ)

    あたしが書道教室を手伝っていたころの話。師範の今井先生はお体がだいぶ悪くって、その師範代をあたしが仰せつかっていた。今井先生は、書道界の重鎮的な方だったが、その娘の美智代さんが、蒲生と内縁関係にあって、二人には娘もいた。美智代さんは河原町の方で輸入雑貨店

  • 少女時代

    あたしが小学生のころ、父の仕事が不安定だったらしく、母が松下電器産業(現パナソニック)の下請けだか孫請けだか知らないけど配線の内職をしていた。近所のひとの誘いで始めたんだと思う。だから、部屋はいつもラグ板や抵抗器、コンデンサの箱が積みあがって、半田(はん

  • ゆらさん

    まだ生理の来る前のあたしは、男の子といっしょになって、暗くなるまで遊んでいた。同級の女の子が近所に少なかったという事情もあった。でもあたしの住んでいた借家の大家さんの娘さんがよく遊んでくれた。ゆらさんと呼んでいたわ。ゆらさんは、あたしより七つほど年上のお

  • まり子

    ぼくは、夜中遅くまで起きていることが多い。夏休みなんか夜更かしばかりしている。もちろん来年は高3なんで、受験勉強もしなければならないけれど、短波ラジオを聞いたりするのが趣味なんだ。もうすぐ、京都の名物「市電」が廃止されるらしい。ぼくは、写真も趣味なので「市

  • 主婦日記(3)

    あたしがバスルームから出ると、雅人はビデオカメラを三脚に取り付けて待っていた。「あら、なぁにそれ」「おれたちのやってるところを撮ろうと思ってさ」「顔、写っちゃうの?」「なるべく写さないようにするからさ」「しょうのない人」あたしは、べつに構やしないけど。濃

  • 主婦日記(2)

    山下雅人(マサト)は、何度かあたしを指名してきた。「大野さん、気に入られちゃったね。またあいつからご指名だよ」柏木がニヤニヤして、あたしに告げた。払いがいいので、柏木も「上客」と認めているらしい。あたしは「中出し料」として五千円を内緒でもらっているが、指

  • 主婦日記(1)

    外は雨だった。「じゃあ、あなた、あたし仕事に出ますから」「ああ」夫の英介は新聞を見ながら、気のない返事をくれた。結婚して十九年、来年は二十年の節目だというのに、あたしたちはもう倦怠期を迎えている。どこのご家庭でも同じようなもんだとも聞くけれど…一人息子の

  • 遠くない現実?

    北朝鮮のミサイル「ノドン」が福井県の高浜原発付近を直撃したのが二日前。日本は蜂の巣をつついたような騒ぎになっている。報道は事実上、NHKのみが放映されて、政府の資料を読み上げるだけのお粗末さ。民放ではACのCMがずっと流れていた。国民はパニックに陥り、非常事態宣

  • いつか…

    宇治の町も戦時下のためか、急にものものしくなっていた。このたびの戦争について語ることは禁止されていないにせよ、一般には、はばかられた。この辺は在日の人も多いからだ。六平直政(むさかなおまさ)を十倍ぐらい恐くしたような国防軍の将官がマクドで新聞を広げて読ん

  • ある日の日本(2)

    土塁まで五十メートルくらいだろうか?その奥はカイヅカイブキの並木になっていて、また小高い人工の丘になっている。駐屯地の試射場だ。あたしは、座学で銃器の講義を受けた後、「9mm自動拳銃」を試射させてもらう。ほかの奥さん連中は、怖がってやらないから、あたし一人の

  • ある日の日本(1)

    2020年、日本の新しい憲法が国民の無関心のまま発効した。東京五輪はテロの脅威におののきながらも開催され、未遂事件はあったものの平和裏に終わった。北朝鮮からの弾道ミサイル実験が日増しに多くなり排他的経済水域(EEZ)を簡単に超えて来る。その落とし方が、何度もやっ

  • 北の赤い星からの便り(5)

    祖国日本では天皇陛下の容態がかなり悪く、噂では年内は持たないのではないかと言われていると、あたしは新発田研究員から聞かされた。ソウル五輪が終わったころの話である。鈴木大地が100メートル背泳ぎで金メダルを獲得したのが記憶に新しい。日本は竹下登首相のもと初めて

  • 北の赤い星からの便り(4)

    ピョンヤンにライラックの花の香が満ちるころ、子供たちの生き生きとした笑顔に出会えて安堵する。どの国でも子供は宝なのだと、普遍的な価値を見出せるからだ。彼ら、彼女らの希望に満ちた瞳は、無論、この国の大人たちの導きがあってのことだ。同じ時代、日本ではどうだろ

  • 北の赤い星からの便り(3)

    佐藤元(はじめ)というクラレの研究所から来た化学者が妙なことを言っていた。あたしたち、日本人の北朝鮮奉職者には金銭的インセンティブを与えて国につなぎとめておくことはもちろん、そのインセンティブにしても人それぞれなわけだ。あたしの場合、この国で不自由を感じ

  • 北の赤い星からの便り(2)

    金日成総合大学は朝鮮民主主義人民共和国の名門かつトップレベルの最高学府として君臨している。名前からして「金日成」である。あたしは、そこの工学部物理化学教程の韓丘傭(ハン・グヨン)教授の下に編入学させられた。韓先生は、中国の清華大学で化学を修められ、そこで

  • 北の赤い星からの便り(1)

    ピョンヤン(平壌)の春は遅い。大阪にいたころは、こんなに寒い経験をしたことがなかった。テドンガン(大同江)の緩やかな流れを見ながら、宿舎から大学への道を歩いていた。午前中は朝鮮語を習得するために派遣先の金日成総合大学工学部から、向かいの平壌外国語大学に行

  • 夏は来ぬ(3)

    耕三との山の生活も半年近くになった。もうあたりの木々は葉を落とし、ずいぶん明るくなったし、息も白くなってきた。まだあどけなさを残した耕三は、あたしにとって弟のような存在だった。おそらく親たちは耕三の行方を追っているだろうが、この急峻な山中にまで捜索の網を

  • 夫婦善哉

    夫婦も二十年も経てば、肉の関係なんてあらしません。今日お話しする小山内忠雄・良子夫妻も結婚して二十六年になります。喧嘩もするが、まあ仲の良い夫婦です。息子が一人いますが、昨年、結婚して神戸のほうに新居を構えて出て行ってしまい、夫婦が新婚からずっと住んでい

  • ノマド

    ヨシファの短剣には妙な模様があった。たき火を囲みながら、クミス(馬乳酒)を酌み交わしているとき、あたしは「あんたのその剣を見せてよ」と乞うてみた。ヨシファは皮のサックから短剣を抜くと、あたしに渡してくれた。地金の表面に縞模様のような、渦のような細かい文様

  • 強奪

    三億八千万円あまりの現金強奪白昼堂々と…新聞紙面がにぎわっていた。琴平会の蒲生会頭によれば、ここ数年、福岡を中心に、韓国人マフィアと日本の暴力団が金塊密輸に余念がないという。「あの空港でしょっ引かれた韓国人な、あれはシロやで」「なんで、そう思うんです?」

  • ナオボネチカ・ナオボネスカヤの話

    ペトログラード(現サンクトペテルブルク)の「冬宮殿(現在のエルミタージュ美術館)」はリラの花が香り、春の陽気に包まれています。そのころの、わたくしはアナスタシア・ニコラエヴナ様にお仕えしていた、お側用人だったのです。アナスタシア様は、ロシアの二月革命で失

  • オトナ未満…山本先生の言葉

    どうも、山本真理子です。高校で化学を教えております。あの時は、高安尚子さんには悪いことをしました。長谷川君が、あたしのことを好きなことは知ってました。フィールド・サーベイに参加する、ずいぶん前に告白されていたんです。でも、わたし、教員じゃないですか。生徒

  • オトナ未満(7)

    九月になって新学期が始まった。早い台風がもう南海上に現れて天気はいいが、風がきつい日だった。あたしは、生理がまた始まってプールの授業を休んだ。 「なおぼん、顔色悪いで」と、クラスメイトの前田敬子が さらに日焼けした顔で覗き込む。「あかん、お月さんや」「痛む

  • オトナ未満(6)

    フィールド・サーベイが終わってしばらく、あたしはどうかしていたようだ。母から、「合宿から帰ってから、あんた、ずっと、ぼけーっとしてるなぁ」「そ、そうかぁ?夏バテかな」「ええ若いもんが、なにぬかす」母は、口が悪い。しかし、原因はあたしが一番よくわかっている

  • オトナ未満(5)

    中房温泉の駐車場でみんなと別れて、あたしと西村さんの無線班と真理子先生、副部長の長谷川さん、地学の秋山先生、科学部の二年生柏木信也さん、一年生の市原君と杉本君は燕岳(つばくろだけ)登山に向かった。もう一人の無線班の佐野さんは安曇野散策コースに参加し、山と

  • オトナ未満(4)

    まだ梅雨は明けないが、高校生になって初めての夏休みが近づいてきた。科学部では合宿を兼ねた「フィールド・サーベイ(FS)」を主催するのが恒例となっている。本校のFSは、科学部部員だけでなく、全校生徒を対象に自由参加で行われる、約一週間の旅行である。自然科学系、

  • オトナ未満(3)

    科学実験室は、中学の理科室よりも大きくて、壁際の戸棚には様々なガラス器具が整然と並んでいた。黒い艶のない天板のテーブルが八面もあり、二面ずつが間に「流し」を挟んででつながっている。丸椅子にめいめいが腰かけるようになっていた。「さてと、山本先生がまだ来られ

  • もくじ8

    ポルノばかりではありません。いろいろあります。オーシャンフリーダム号(1)~(4)戦争だったころ(1)~(3)海軍燃料廠の尚子太平洋横断の夢ある村の風習病葉(わくらば)(1)~最終回玉緒うちあけ話帰省ゆかと「床」上手光一郎無理自慰姉妹夫婦…新婚夫婦…春子

  • 女子の気持ち

    高橋彩菜(あやな)と野上さくらはともに高二の女の子だ。※いずれも仮名にしときます。彼女らはあたしが手伝っている塾に、中学生のころから来ていて、今は勉強するほかに、小さい子たちの面倒も見てくれている。最初は勉強の嫌いな、ゲームばかりしている困った子たちだっ

  • 夫婦…共白髪(ともしらが)

    老健施設は人手が足りないことが常態化している。報酬を上げれば、人が来るかというとそんなに甘いものではない。人の、それも認知症やら、満足に歩けない老人やらの世話をするなどということは生半可な志では折れてしまう。このホーム「あさみや」はベッドこそ100床もあ

  • 夫婦…凌辱

    園児を帰すときもまた春子は倉田の運転する園児バスに乗り合わせた。今春からだいたいそうだ。倉田とよく話すようになったのもそのためだった。倉田は園の理事長の親戚筋の男で、理事長とは「おれ、おまえ」の仲だった。だから横柄な態度が端々にみられた。最後の園児を降ろ

  • 夫婦…家庭の医学

    一郎の部屋には「家庭の医学」という分厚い本があった。彼ら夫婦にとって、唯一の「性」の手引きだった。一郎が実家から持ってきたものに相違なかった。思春期を迎えた彼が、むさぼるように性の知識を吸収した本だったからだ。むろん、彼の両親もそうやってつましい性の営み

  • 夫婦…春子

    春子は、結婚して、夫の一郎と肌を重ねることで心の奥深くで眠っていた「女」を目覚めさせた。婚前交渉では痛いだけのセックスが、結婚して遠慮なく家庭で求め合える環境になると積極的に体が潤い、夫を受け入れる。その体の変化に春子はときめきを覚えたのだった。短大を出

  • 夫婦…新婚

    一郎と春子は、親の知り合いの勧めで一緒になった。郊外の真新しい団地に新居を得、二か月ほどが経ち、二人は落ち着きを見せ始めていた。浅野一郎は、東京の大学を出て大手の印刷機械メーカーに就職し、故郷に近い都市の工場勤務となったばかりで急に、お見合い話が持ち上が

  • 姉妹

    ぼくには、千紗(ちさ)と奈々子(ななこ)の従姉妹がいた。父方の祖父母と伯父夫婦つまり彼女たちの両親が谷中に住んでいて、ぼくも小さいころからよく夏休みや正月休みになるとそこに訪れた。千紗はぼくより三つ年上で、奈々子はぼくと同い年だった。お姉さん風を吹かせる

  • 無理自慰

    何が腹立つって、嫁にオナヌーの現場を見られたとき。世の男性の共通の「憤懣本舗」だろう。誘ってもやらせてくれんくせに、しゃあないからエロサイトを観ながら自家発電してたら、すっとふすまが開いて、「何しとんの?」嫁が、しれっと聞くわけ。おれは息子を握りしめて、

  • 光一郎

    あたしに弟ができた。それも一つ違いの…父が再婚したのだ。母が亡くなったのをあたしは覚えていない。それからずっと父は一人であたしを育ててくれた。だから、藤代秀子さんと父が一緒になることは正しいことだと思えた。藤代さんはあたしが小学校に入学したときに、忙しか

  • 病葉(わくらば)…最終回

    叔母と初めてラブホテルに入り、大人のセックスを楽しんだ帰り、叔母の真っ赤なアウディ「クワトロ」でドライブに連れていってもらった。叔母は、運転が好きで、この外車も叔母の所有だった。会社役員の叔父は別にシルバーのジャガーに乗っている。掛波(かけなみ)海岸を二

  • 病葉(わくらば)…6

    あんなことがあってから、ぼくと叔母は祐太郎に見つからないよう、ぼくの家で会うことにした。叔母の方から「したいんだったら、亮くんのお部屋で」と言ってくれたのだった。今年の夏休みはぼくにとって最高の夏となった。だって、大好きな奈津子叔母と何度も交わって過ごし

  • 病葉(わくらば)…5

    ひとしきりキッチンで叔母と抱き合ったぼく。こんなに身近に女の人を感じるのは初めてだった。叔母はぼくとほぼ身長が同じくらいで、髪は染めていないから真っ黒だった。そしてその髪から香る汗の匂い。そうだった。叔母はまだお風呂に入っていないのだ。でも、その乳製品の

  • 病葉(わくらば)…4

    よその家でぼくはペニスをしごいていた。遅い風呂に入って、奈津子叔母の裸体を想像して…はぁ、はぁ自分の息遣いが風呂場に響いた。叔母の使うボディシャンプーを体に塗りたくり、その香りが叔母のものと思ってより激しく勃起する。「亮く・・ん?だいじょうぶ?音がしない

  • 病葉(わくらば)…3

    ボールが巧みな弧を描いて、ストライクゾーンに侵入する。奈津子叔母のきれいな指から離れた黒い球体が見事に十本のピンを弾き飛ばした。「ストライーク!」叔母が小さくガッツポーズをし、次に投げるぼくとハイタッチをした。「おばちゃん、上手すぎ。かなわないよ」すると

  • 病葉(わくらば)…2

    叔母がぼくの汚した下着に気づいたかどうかはわからなかったけれど、その後も変わらず接してくれたので、安心した。母の初七日も過ぎた土曜日、叔母が気分転換に遊びに行こうと誘ってくれた。「祐太郎といっしょに亮君もボウリングでもしにいかない?」「いいね。でもボウリ

  • 病葉(わくらば)…1

    母さんが死んでしまった。クモ膜下出血という恐ろしい病(やまい)で、何の前触れもなく、母さんを連れ去ってしまった。これからぼくは、どうしていいかわからない。お葬式も父に促されてお焼香をしたけれど、自分はどこか別の世界から見ているような錯覚があった。そして、

  • ある村の風習

    明石定巳(あかしさだみ)少尉(当時)の話は興味深かった。あたしが厚生省の恩給局の係官として戦争体験者への聞き取り調査を行っていたころの話である。明石氏は学徒兵として陸軍に入営したものの、苛烈なインパール作戦の敗走のさなか、夜間に疲れ果てて倒れ寝ている間に

  • 太平洋横断の夢

    昭和二年の五月二十三日、あたしは大毎新聞(大阪毎日新聞)のリンドバーグ氏の快挙を伝える記事を見ていた。「もうお昼か」倉庫を改造した、ここ「川西機械製作所」は兵庫県兵庫区の川西財閥の所有地にあった。あたしは父と二人で旋盤工としてここに雇われている。「なおぼ

  • 海軍燃料廠の尚子

    昨年末の十二月七日のお昼に起こった地震で、名古屋から四日市にかけて相当な被害を受け、あたしたちの勤務する第二海軍燃料廠四日市工場もずいぶんやられた。戦時下でもあるので、軍や政府も情報をひた隠ししていて、我々も被害状況をみだりに口外することを固く禁じられて

  • 戦争だったころ(3)

    三、空襲のあと昭和二十年三月十七日未明の神戸の大空襲により、神戸の街は壊滅した。川西航空機に戻った田中さんはそのまま帰らぬ人となり、ぼくらの長屋は戦災を免れたものの、火は目の前まで嘗め尽くした。十八日の夜はぼくらの長屋は近所の家を亡くしたおばさんたちでい

  • 戦争だったころ(2)

    二.昭和二十年のことお正月は、実家に帰らせてもらえたが、二日からは工場に出なければならなかった。去年の十月だったか、初めて兵隊さんがゼロ戦に乗って、爆弾を抱えて敵艦に突っ込んで名誉の戦死をとげられたという話でもちきりだったが、今年もゼロ戦をつかった「神風

  • 戦争だったころ(1)

    一.昭和十九年霜月のことぼくは冬の星空の下を下宿まで走った。白い息が銀河に重なった。運河まで来て、また空を見上げる。兵庫区は昔から運河が発達していた。あの星々までは、光でさえも何万年もかかるというのに、ぼくの時間はすぐに過ぎていく。北に大きな「ひしゃく」

  • オーシャンフリーダム号(4)

    そのころ、柏木真琴はというと…「いいね、きみのその若鹿のようなばねのある腿(もも)」シャッターを忙しく切りながら、陣内が彼女を舐めるように撮る。「ああ、そうやってプッシーを自分で開いて。いいよ。そのショットもらおう」「ねぇ、陣内さんは、あたしの見て勃(た

  • オーシャンフリーダム号(3)

    陣内がアルミのカメラケースと三脚を携えて、有村とともに部屋にやってきたのは午後九時を回ったころだった。滑るように太平洋を進む「オーシャン・フリーダム号」は、そこが船室であることを感じさせなかった。「この船は広いから、エレベータで降りる所を間違っちまったよ

  • オーシャンフリーダム号(2)

    みずみずしい果実のような乳房にあたしは思わず舌なめずりをした。真琴の形のいいバストは、女でさえも嫉妬してしまう。「マコのバストはいい形…」ぺろりと、左の乳首を舐めて、あたしは果汁を味わう。ひくっと真琴が痙攣し、あたしの口元をじっと見つめている。ジャグジー

  • オーシャンフリーダム号(1)

    あたしは親友のマコと待ち合わせていた。新宿西口に面した喫茶店で。スカイフォン(スマホの次世代型)をエレバンのバッグに仕舞い、窓の外の往来を眺めた。マコは交差点の方から来るはずだった。マコこと柏木真琴とあたしは「Callgirl」という、いささか特殊な仕事仲間だっ

  • 成吉思汗の末裔

    チンギス・ハーン(成吉思汗)はモンゴル帝国を創りあげた英雄ですが、彼の遺伝子を受け継ぐ人々が現在、1600万人とも言われます。※オックスフォード大学の研究成果より。どういうことかって、テムジン(チンギスの幼名)がそんだけ女を犯して、子供を産ませたってことです

  • かわいい男優

    AV監督の藤堂真司が、「かわいい男の子主演で撮りたい」と言う。いつもの喫茶店で話すのも、内容が内容なので、あたしたちはギャラクティカ企画の事務所に場所を移した。「で、どんな男の子?」「りゅうちぇるみたいな」「ああ、なるほど…かわいくなりたいって自分でも言う

  • 雨の物語(7)

    「今日ね、家(うち)を見に行ったんよ」姉が夕飯の支度をしながら、そう言った。おれは、仕事から帰って軽くシャワーを浴びるのが日課だったので、浴室から出たとこで聞いた。「へえ、おやじ、どうしてた?」「会おうかと思ったんだけど…たばこ屋まで来たときに見てしもた

  • 雨の物語(6)

    姉の裸はすばらしかった。グラビアのモデルなんか比較にならないと思った。腕を交差して胸を隠しているが、それがかえって豊かな胸を強調してしまっている。「ねえちゃん、めっちゃええ体してるやん」「何言うてんの。からかわんといて」怒ったような表情が、またかわいらし

  • 雨の物語(5)

    姉の和子と一緒に暮らすようになって一週間が過ぎた。姉に泣きつかれて「勃起」させてしまったこと以外は、何事もなく過ぎた。いや、おれが避けてきたのだ。あの日から、姉を「おんな」として見ている自分に気づいたからだ。こういうのを「近親相姦」と言うらしい。いかがわ

  • 雨の物語(4)

    立春は過ぎても、世の中はまだまだ冬真っ只中だった。とはいえ、この狭いワンルームに一人ではなく、二人で寝ているのが何より暖かいと思えた。「カズちゃん…もう寝てしもた?」姉も寝られないらしい。「ううん」「あんたが出ていってから、あたし、さみしかった」「ごめん

  • 雨の物語(3)

    その年の二月は雪より雨が多かった。仕事も雨やと減るから困ったことだった。例年、二月はどの月よりも上がり(売上)が少ない。社長の立石さんも機嫌が悪かった。おれに社長はポスティングを命じた。この雨模様の寒空に、各家々のポストにうちのチラシを投げ込む仕事だった

  • 雨の物語(2)

    あんなことがあって、おれはとうとう家を出た。姉には申し訳なかったけれど、我慢の限界だった。住み慣れた家から一駅離れた三ツ畑駅前のレオパレス21の賃貸マンションだった。アパマンショップとかミニミニマンを当たってここにした。ここなら、職場の立石工務店にも近く

  • 雨の物語(1)

    仕事から帰ると、オヤジが酒を飲みながら独りでブツブツ言うとった。目が険しい。また暴れるんやないやろか?二つ上の姉ちゃんも、押し黙ったまま夕飯の用意をしていた。「なんや、カズオ、ただいまくらい言えや」低い声でオヤジがすごむ。「た、ただいま…」おれは、小さい

  • ロバート

    あたしがR大学の社会人院生だったころ、ロバート・カートライトというポスドクの下につけられた。彼は、光学分割の研究を主にやっていて、あたしもその手伝いをしながら与えられたテーマの実験をこなしていた。あたしはある種の半透膜を使った分子の移動メカニズムを研究テー

  • 真珠港(Pearl Harbor)

    山本五十六聯合艦隊司令長官はハワイ作戦の攻撃目標の地を「真珠港」と言った。アメリカが"Pearl Harbor"と綴っているので、英語がわかる長官は直訳したのである。実際、「湾」ではなく、入江にできた「港」であることは、ここに来れば理解できる。あたしは、日本料理店「春

  • 春潮楼

    真珠湾を望む小高い丘に「春潮楼」という日本料理店があった。あたしは、そこで森村という若い男と、元広東総領事の喜多長雄という壮年の男と落ち合った。昭和十六年という年は、大日本帝国が外交的に行き詰まっていた。布哇(ハワイ)は常夏と言われるが、こういった場所に

  • 一人寝(ひとりね)

    秀一(しゅういち)は三十になった。学生向けズック靴などを作っている中堅どころの靴メーカーの営業をやって八年目になる。最初は工場に配属されていたが、接着剤にかぶれやすく、営業職に変えられてしまった。「川野、坂田ゴムの見積もりはどうなってんねん?」上司のの長

  • 相談(ある男性から)

    今年二十八歳になった男性です。結婚して三年目になります。実は家内の妹のことで困っていることがあります。わたしと同い年の家内には、七つ年下の妹がいますが、この娘が実に奔放というか、いい加減な娘でして、大学のワンダーフォーゲル部って言うんですか、山岳部みたい

  • 夫婦(3)

    信也は枕元に用意されている避妊具を装着すると、紀子に戻った。「いくぜ」「来て」正常位で二人は合体し、そのまま見つめ合った。「どうなの?奥様より」「いい、おまんこだよ」「いやらしいわね。その言い方」「上品ぶってんだね」「イヤミね」信也が、腰を動かし始めると

  • 夫婦(2)

    紀子が「即尺」で蒸れた信也を口に含んだ。「クソ」がつくほど真面目なオフィスレディから淫乱に豹変した紀子は、羞恥や不潔といった理性が飛んでしまうらしい。さすがに、信也も、「先に、シャワーを浴びないか」と助言する有様だった。「そ、そうね」豊かなバストを、はだ

  • 夫婦(1)

    淑子(よしこ)は、夫の信也(しんや)に愛されている。少なくとも、淑子はそう思っていた。結婚も三年を過ぎると夫の浮気も心配される頃である。しかし淑子に限っては、そんなことをつゆほども疑ってはいなかった。第一、昨日も、淑子から誘っての夜の営みも十二分に信也は

  • 母と蒟蒻(こんにゃく)

    与志雄(よしお)は、母親を犯していた。最初は、母の照子から誘ったのだった。山奥のひとつ屋根に住まう、母子は禁忌を犯したのだった。息子が、自分たちが畑でつくっている蒟蒻(こんにゃく)で自慰にふけっているのを照子がのぞき見て、不憫に思い、相手をしてやったのが

  • 亮太

    亮太が妙な夢を見て目を覚ますと、下腹部に力がみなぎっている。「うわぁ、ひさしぶりに、あさまらやわ」タオルケットを持ち上げている勃起を見て亮太は、誇らしげだった。手を伸ばしてそれを確めるように握りしめた。「かったいわ」 昨日の夕飯に肉を食ったからだろうか?

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