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2020/01/29

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  • 相姦

    咲子は息子の忠士(ただし)のペニスをほおばっていた。「ああんむ…」「おかあちゃん、やらしいなぁ」目で、淫乱に応える咲子だった。十四にして、息子はいっぱしのヤリチン男に育っていた。体格もたくましくなり、もうはや咲子の背を追い越している。父親譲りのカリの張っ

  • 夜遊び

    諸星静江は四十路の細身の女だった。三光生命の外交員として、そこそこの成績を収め「脂ののった」人生を送っていた。ただ、男に恵まれなかった。これまでつき合った男は「ヒモ」のような男ばかりだった。外交員の「枕営業」とよく言われるが、静江もその手段を使う。「ヒモ

  • 背徳の美

    赤井玲士は福崎工芸で染色工として働いていた。この捺染(なっせん)工場には彼が高校を卒業してすぐに就職した。宣伝用の幟(のぼり)などの染色をおもにやっていて、京都府下ではこんな会社がたくさんある。玲士はこの仕事に就いてすぐ、社長の次女、咲子と親密な関係にな

  • 尚子の部屋…母子

    カズミはそのころ、結婚して二年目の、まだまだ新婚さん気分が抜けない女だった。私が前の会社にいた頃だから十七、八年前の話である。知財関係の部署に配属されて、私も三年ほどが過ぎていた。カズミは、総務部からコンバートされてきた社員だった。知財部は、とにかく書類

  • 旅立ち…無情の末路、番外の章

    藤原泰造は後継者として息子の功一を政治家に育てていた。できることなら、いきなり国政へ挑戦させたかった。というのも、禅定寺町町議から県議会へ鞍替え選挙を企てたものの、革新派議員らから「西ノ端」部落の治水事業で談合に与(くみ)したとか、手抜き工事で、何度も同

  • 旅立ち…二十二歳の別れ、終章

    功一は妹、明日香の潜伏先を追い求めて、執拗に調査していた。彼が、かつて司法試験に挑んだとき以上に励んでいる様子だった。その執念は、彼が司法修習で上席検察官に「不適格」と断じられた腹いせから来るのかも知れなかったし、妹をどこの馬の骨かわからぬ男に奪われた憎

  • 旅立ち…潜伏の章

    「もしもし・・・店長ですか?」「明石、お前、今、どこにいるんだ?え?」勤め先のスーパーの岩崎店長が、いつになく声を荒らげて受話器の向こうでしゃべった。「すみません・・・今はちょっと」直之は、口ごもった。ひとしきり、沈黙の後、「言えないってわけか?彼女も一

  • 旅立ち…逃亡の章

    父よりも兄の剣幕がすさまじかった。明日香の妊娠を知った藤原家の人間は、ことごとく彼女を責めた。辛うじて、母の京子が、かばってくれたが、直之との交際は許さなかった。兄は、妹を犯した男をすぐさま調べ上げ、明石という男が、西ノ端の出身であることまで突き止めてし

  • 旅立ち…発覚の章

    明日香との逢瀬は、明日香の高校卒業とともに、なし崩し的に、ほぼ同棲生活となってしまった。兄の功一は、妹が大学進学を断念したことに、たいそう腹を立てていた。「これからは、女も学問を身につけねばならん」「あたしは、いやよ。働きたいの」しかし、父親の泰造(たい

  • 旅立ち…同棲の章

    藤原明日香の家は、禅定寺の町の旧家だった。父親が町会議員、母親は華道師範、兄は司法修習生だった。厳格な父をそのまま受け継いだような兄の功一は腺病質で、事あるごとに母親に意見し、妹の生活態度にまで干渉した。そんな兄に反発するかのように、明日香は、学友と遊び

  • 黄昏の小径(9)最終章

    疲れと高山ということで一本のビールで酔いがよく回る。根岸さんも、レイコさんも顔を赤くして、いつになく冗舌だった。「ほんとは、菅野君は音(ね)を上げるんじゃないかって思ってた」と根岸さん。「いやぁ、実際、投げ出したくなりましたよ。何度も。でもどこへ逃げるん

  • 黄昏の小径(8)

    いつのまにか、外は白々と明けていた。おれは「朝立ち」を感じて目が覚めた。夜気が残って、アルプスに来ているんだと改めて感じた。いつ戻ったのか、左隣りに杉本さんの背中が見える。「あああ」根岸さんが右隣りで腕をだして伸びをした。「起きてよ」続けて、根岸さんに呼

  • 黄昏の小径(7)

    ホエーブス(灯油コンロ)を根岸さんが用意した。「これはね、灯油で火がつくコンロなの。携帯燃料もあるんだけど、火力が違うのね」「はい、メタ」杉本さんが、白いペッツ(ラムネ菓子)みたいな塊を根岸さんに渡す。「ポンピングっていって、こうやって…」ホエーブスとや

  • 黄昏の小径(6)

    ふくらはぎに乳酸が溜まってきたのか、痙攣しそうだった。斜面を登るのでどうしても前かがみになる。背中の荷物がおれを押しつぶそうとするようだ。そして杉本さんが言っていたように息が苦しい。頭痛もするので、高山病になりかけのなのかもしれなかった。足元は岩がちにな

  • 黄昏の小径(5)

    八月四日、おれと根岸さん、杉本さんの三人は信州行きの長距離バスに揺られていた。「穂高駅からタクシーで中房温泉の登山口まで行くわよ」「温泉があるんですか」「そうよ。入る時間がないから、今回はパスするけど」とは、杉本さん。夏とはいえ、2000メートル級の北アルプ

  • 黄昏の小径(4)

    長引くと言われた梅雨も七月なかばには明けたように晴れの日が続いた。それでも梅雨前線がまだあるらしく、気象庁は「明けた」とは宣言しなかった。仕事にも慣れ、仲間と冗談を言い合えるようにまで打ち解けた。頼まれていた牛乳パック充填機の英語版取説も完成し、パソコン

  • 黄昏の小径(3)

    「菅野くん、ビール空いてるがね。もう一杯いこう」谷口課長が真っ赤な顔で勧める。「あ、はあ」あれから二週間たち、おれの歓迎会を第一製造課でやってくれたのだった。稲田駅前の居酒屋「とことん」は、この太平機械工業の社員が良く使うらしい。木下真帆さんを除く、課の

  • 黄昏の小径(2)

    床は濃い緑色に塗られ、何かの区画を表すのか、黄色いラインが引いてある。壁は灰色で、天井は高くホイストのレールが東西に走り、水銀灯が一定の間隔で輝いている。以前働いていた染色工場とは雲泥の差のきれいな工場だった。おれは年恰好が同じくらいの友田という主任の下

  • 黄昏の小径(1)

    今年は梅雨が長引くらしい。おれは、ゆううつな気分で、玄関を出た。今日から新しい職場なのだ。西佐久市で一人暮らしを始めたのが五年前の今頃だった。前の仕事がつらく、それでもなんとか六年近く頑張った。染色の仕事で、暑く、汚い仕事だった。その割に、給料は少なく、

  • 祭りの夜

    夏祭りには、私と浩二は、祖母から浴衣(ゆかた)を着せてもらった。私の記憶では、中三の夏休みが浴衣を着た最後だった。高校になって、もはや高安に泊まりに行くことはなくなったからだ。私は、浴衣の下に何もつけていなかった。たぶん、浩二が後ろから突かせてくれと言う

  • 浩二との思い出

    従弟のこうちゃんネタで申し訳ないが、最近よく思い出したり、夢に出てくるのだ。もう四十年も前のことなのに、鮮明に思い出されて驚いている。男の子の射精を初めて見たのも、こうちゃんのものだった。彼の求めるように手でしてあげると、目の前で高く噴き上げた。こうちゃ

  • プラネタリウムの思い出

    従弟の浩二と二人で大阪の四ツ橋にあった電気科学館へプラネタリウムを観に行ったことがあった。あたしが高一で浩二が中三だった。季節は今頃だったと思う。交野から片町線(今のJR学研都市線)で京橋まで出て、環状線で梅田に出て、地下鉄四つ橋線「西梅田駅」から地下鉄に

  • 大マゼラン雲

    こうちゃんの体越しに南天の星座が広がる…「ああ、大マゼラン雲が、届きそうなほど近くに見えるわ」「なんだって?」こうちゃんは、入ろうとして、暗がりのために難儀しているみたいだった。「すっごくきれい」「なおぼん」ぐぐっと、私を押し広げて侵入してくるものがあっ

  • 弁明 終章

    「その手帳、借りていいかな。調べてやるよ」そう言って私は、飯塚の手帳を律子から預かったのだった。翌日、秀子が私の家にやってきた。「お昼、冷麺っていうのはいかが?」彼女は額に汗しながら、レジ袋をテーブルに置いた。「いいね。お願いするよ」「じゃ、今から作るね

  • 弁明 (17)

    私は、律子を抱いた。初めて私の前で涙を見せた彼女は、幼子のように従順になった。私は、飯塚が、隠されていた律子の男性遍歴に嫌悪して逐電してしまったのだと思っていた。しかし、飯塚もまた律子に隠していた女性関係があった。「君たちのなれそめはどういうものだったの

  • 弁明 (16)

    河原町の「一品香」で中華を律子と堪能したあと、タクシーを呼んで、岡崎のラブホテルに向かった。金曜の夜は「待ち」が出るくらい盛況だった。「どうする?」「待とうよ」「なんだかなぁ」「そこ空いてるから座ってて。あたしフロントに行ってくる」律子は、てきぱきと慣れ

  • 弁明 (15)

    飯塚幸生が行方知れずになって半年が過ぎ、はや夏真っ盛りである。私は、表面上は順調に角野秀子と交際を続けていた。秀子は、私の部屋にも来てくれて、片付けてくれたり、洗濯や料理をしてくれるまでになった。私の部屋にも二度泊まった。ただ、プロポーズはまだできていな

  • 弁明 (14)

    「ああん、いい、すごくいい」私の上で女が首をのけぞらせながら腰を打ち付けている。まるでタヒチアンダンスを踊る女のような律子だった。私は、またもや律子に誘い出され、京都の以前に訪れたホテルにいた。そして、角野さんの手前、二度と律子には会うまいと誓ったのにこ

  • 弁明(13)

    角野さんが紅茶をいれてくれ、その間に、パエリアの下ごしらえが始まったようだ。私は、角野さんのバーミヤン遺跡の写真集などを見ながら待った。イカとアサリ、エビが入り、サフランであざやかな黄色に染まった食欲のそそる良い香りのパエリアがフライパンごと食卓に並べら

  • 弁明(12)

    桜ノ宮駅を降りると、そこは雑然としたいかがわしい空気に満ちていた。こんなところで、清純な角野さんに、一生の思い出を作らせて良いものだろうか?角野さんも、うつむき加減で私の後ろをついてくる。数分も歩けばラブホテルのけばけばしいたたずまいがいやでも目に入る。

  • 春一番 (9)

    おれは、恥ずかしさで穴があったら入りたい心境だった。早苗の初めての相手として、早漏で終わってしまい、早苗に恥をかかせることになったからだ。早漏も早漏、体を重ねただけで、ほとばしらせてしまったのだから…あの時の早苗の、おれを憐れむような顔が脳裏に焼き付いて

  • 春一番 (8)

    ゴールデンウィークの初日「憲法記念日」に、おれはとうとう、インキンタムシの痒みが最高潮に達していた。風呂で石鹸で洗ったのが良くなかったらしい。「牛乳石鹸」の「赤箱」で洗ったのだ。ものの本によれば「石鹸」はアルカリ性であり白癬菌を元気づけてしまうというのだ

  • 春一番 (7)

    造幣局の通り抜けにはまだ早いが、大阪城公園の桜は盛りを過ぎようとしていた。それでも満開には違いなく、人出もそうとうなものだった。「滋賀は今が盛りかな」「海津大崎はそろそろ見ごろやと思うわ」海津大崎とはびわ湖の北端の桜の名所だそうだ。「そこの桜をバックに写

  • 春一番 (6)

    日曜の朝、目覚めてすぐ、寝床でしばらくじっとしていた。珍しく「朝立ち」していたのだ。いささか尿意もあり、それが手伝って「勃起」しているのかもしれない。こういうときは、さっさと小便に行くことだ。四月とはいえ、まだ肌寒かった。首を曲げて見た目覚まし時計は、7時

  • 春一番 (5)

    おれが小学校を卒業するまではこの家にもオトンの会社の社員が二人、下宿していた。今でいえば「社宅」というものだ。オカンがまかないをして、朝と晩をおれら家族と一緒に食べていた。その人たちも、家庭を持って独立してしまい、がらんとした空き部屋ばかりになった。中学

  • 春一番 (4)

    桜も散り始め、代わって若葉がグイグイと目立ち始めたころ、第五十回センバツ高校野球は浜松商業の初優勝で幕を閉じた。そしてキャンディーズが解散した。「行きたかったなぁ、後楽園」おれにとって、今は甲子園よりも後楽園だった。おれは、少年野球を二年ほど経験したので

  • 春一番 (3)

    おれの家は、オトンが材木商をやっている。代々の家業なのだ。新建材も時代の流れから取り扱うようになり、この家の倉庫以外に、平野区のほうにも支店と称して倉庫を持っている。おれが一人っ子なので、家業を継がなければ絶えてしまうのだ。しかし、その気になれないおれが

  • 春一番 (2)

    春一番が 掃除したてのサッシの窓にほこりのうずをおどらせてます机 本箱 運び出された荷物のあとは畳の色がそこだけ若いわ(キャンディーズ『微笑がえし』阿木耀子 作詞)キャンディーズのラストシングルを買った友人に頼んでカセットテープにダビングしてもらったもの

  • 春一番 (1)

    部屋を片付けておかないとな…従妹の早苗(さなえ)が大阪の大学に受かったとかで滋賀県のド田舎から、うちに下宿するってんで出てくるのだった。ここは旧家だから広いのだけれど、二階の部屋の日当たりのいい部屋をおれが占領していたので、オカンが「早苗ちゃんに明け渡せ

  • 三式戦闘機「飛燕」終章

    三式戦闘機「飛燕」は私の知る限り、失敗作だと思っている。それは川崎航空機の主任技師土井武夫さんや副主任の大和田信さんのせいではない。ひとえに、日本の航空機生産能力の低さにあった。陸軍の試作機番号でキー60とキ-61がのちの「飛燕」となるわけだが、正確には「キ-

  • Kattchan, a naughty boy (1)

    これは「かっちゃん」の英訳です。長くなったので、二回に分けました。When I was promoted to a 6th grader from a 5th grader, both my teacher in charge and my classmate were just promoted togather.Japanese called it "mochiagari".In short, we were enjoying scho

  • ギルバートの夜

    バー「アングラ・ベース」は、たばこの煙でかすんでいた。長官(マスター)はグラスを磨いている手を止めて、後ろのキャビネットにおさまった銀色のCDプレーヤーを操作する。ほどなく「X-JAPAN」の『Tears』の静かな前奏が店の底から湧いてきた。「やあ、ノベンバー、表の

  • 石橋先生、あの…

    勃起力がペニスの「廃用萎縮」を防ぐのだと、吾妻厚生病院泌尿器科の石橋銑十郎医師がおっしゃる。「陰茎ちゅうもんは、さながら風船みたいなもんでな、中から圧力をくわえたらなんぼでも膨らむんや」「はあ」還暦は超えておられるだろうが、年齢不詳のお医者だ。私は冷めた

  • MMKの則子さん再び

    MMK(モテてモテてこまる)の則子(のりこ)さんとお酒を飲む機会があった。そしてやっぱり、アノことに話題がいってしまう。「やっぱり、迫られるのよね」「サークルでも?」彼女は市の生涯教育プランのひとつ「川柳教室」に通っているそうだ。そこでは四十七歳の則子さんは

  • 仏師 (6)

    おれが石本師の仕事場に帰ってきたのは夕刻の六時前だった。師は常照寺の阿弥陀如来坐像に没頭している様子で、声をかけるのも憚られた。「ただいま帰りました」「おう。遅かったな」「すみません」しゅっしゅっと鑿の走る音だけが、やけに大きく響いた。「飯の支度をします

  • 仏師 (5)

    是枝秀子は四十三歳になったばかりだそうだ。三十二で入り婿を迎えたが、その八年後に夫は情婦の褥(しとね)で腹上死を遂げる。秀子が二度も流産したのは、子宮筋腫のせいだったのだが、是枝家の当主が婿の「種無し」が原因だと陰口をたたいていたのが、夫を祇園の情婦に走

  • 仏師 (4)

    石本師の下で働くようになって一月以上が経った。親には落ち着き先が決まったことも知らせ、「こちらは順調だ」と書いて安心させた。電話は里心がつくと師がいい、ここの電話番号を親に教えてはならないことになっている。師に寝床を襲われるということはなかった。あの日か

  • 仏師 (3)

    おれは言われるまま、師の前にしゃがみ、そのそそり立った肉をほおばった。太い…こめかみがきしむ。大人はみんなこんなものを持っているのだろうか?「もっと舌をつかって、そうそう。ええね、ずぼずぼってやってくれや」「ぐ…」正直、苦しかった。鉄骨のように固いちんぽ

  • 仏師 (2)

    石本師の部屋に入って、目を引いたのは鴨居(かもい)にずらりと掛けならべられた天狗の面だった。木地のまま漆を施したものや、朱の漆を施したものなど十数面がこちらを睨んでいる。じっと鑑賞していると、その伸びた鼻がリアルな男根の形に作ってあった。「なんじゃ?こり

  • 仏師 (1)

    京仏師というのは仏師の中でも格別の扱いであるらしい。おれは留萌(るもい)で一刀彫の熊を彫っていた父親に倣って、木彫りのまねごとをしていたが、昭和四十四年に高校の修学旅行で京都に来て、京仏師の仕事を見て「これだ」と思った。おれは卒業を待って、無謀にも単身、

  • マキ(Maquis)のなおぼん 最終回

    日も沈もうとしているころだった。丸窓の西日が消え入りそうになり、紫色の空に反転しつつあった。「もうすぐヴィシーだ。アラン」機長のジル・ボードワン少尉が後部貨物室で横になっている、けが人のアラン・モリエール少尉に呼びかけた。アランは少し寝られたので、いくぶ

  • マキ(Maquis)のなおぼん (6)

    アラン・モリエールは釈放された。が、しかし、体はズタズタにされ、青息吐息だった。歯も一本、ぐらぐらになっている。しかし、精神は研ぎ澄まされていた。やつらへの憎しみと、イヴォンヌ・ナオボンヌへの愛と…「あいつが危ない…あいつの親兄弟が…危ない」アランは拷問

  • マキ(Maquis)のなおぼん (5)

    パリに本拠のあるフランス空軍の第十八輜重(しちょう)部隊の空輸科輜重兵アラン・モリエール少尉は、ジポ(ナチス保安警察)に連行され、厳しい尋問を受けていた。「君は、イヴォンヌ・ナオボンヌとどこで知り合った?え?」保安警察官にドイツ訛りの耳障りなフランス語で

  • マキ(Maquis)のなおぼん (4)

    窓の景色は寒々としたサヴォワ地方を映している。と、マリウスが小銃を抱えて、山小屋に帰ってきた。ジャンがストーブで湯を沸かそうとやかんをぶら下げているところだった。あたしは、シモーヌとあやとりをしていた。「こんな日がつづくといいわね」まだ十九のシモーヌが悲

  • マキ(Maquis)のなおぼん (3)

    飛行機の好きな女は、淫乱だと誰かが言っていた。あたしは「当たっているかも」と思っている。飛行機の社会は男社会の典型で、そんな中に女が入れば、奇異の目、好色な目で見られるのは当然だったかもしれない。いい地位を得るために「体」を利用したこともあった。女である

  • マキ(Maquis)のなおぼん (2)

    あたしはポン・ヌフ橋を渡ってサンジェルマン地区に向かっていた。この橋は、セーヌ川のノートルダム寺院のある中州を通って対岸に架かる大橋だった。占領下でなければパリジャンのカップルが行き交う、いかにも楽しげな名所なのに、今はどうだ?灰色のドイツ兵の軍服ばかり

  • マキ(Maquis)のなおぼん (1)

    年が明けて1941年、フランスの政権がヴィシーに移ってからというもの、ナチスのレジスタンス狩りが一層激しくなった。あたしはイヴォンヌ・ナオボンヌ(Ivonne Naobonne)。「マキ(抗独派)」の「ジャンヌダルク」とひとは呼ぶ。エレーヌ・ブーシェに見込まれて、飛行機の操

  • 夫婦の朝

    ルルル…目覚まし時計のアラームが鳴っている。起きねば…雄一と晶子のお弁当を作らねばならなった。ふと横に寝ていた夫の姿がない。あたしはベッドサイドに座って、しばらくぼおっとしていたら、夫がトイレから戻ってきたらしい。「起きたんか」「お弁当、作らんと」あたし

  • あしたの風(15)

    二人してベッドに入った。おれの隣には、裸の純子がいる。ついこの間まで、今日のデートまで、こんな状況を予想しなかった。いや、少しは期待していたかもしれない…コンドームをカバンに潜ませているのだから。いよいよ、おれはセックスをするんや…「ほな、ええか?」純子

  • あしたの風(14)

    「すごいね、それ」純子がおれの勃起を指して言った。「そうかぁ?男はみんなこんなもんやろ」「あたし、兄弟がいいひんから…普段はもっと小さいんでしょ?」「そらそうや。いっつもこんなんやったら歩けへん」「あはは。湯船にお湯張ってるからね」馴れた感じで、純子は惜

  • あしたの風(13)

    おれは間近で純子をみつめた。眼鏡越しの黒目がちなつぶらな瞳。そして右側の目の下に小さな泣きぼくろ。肌が白いからか、くちびるがいやに赤く見えるのがなまめかしかった。「どうしたの?あたしの顏、変?」「そんなことないよ。こんなに近くで女の子の顏を見るのがはじめ

  • あしたの風 (12)

    今年のイブは火曜日だった。その前の週の金曜日が終業式だったのでおれらはクリスマスを満喫できるのだった。山本純子と二人で朝から淀水橋に出て、「エル・グランデ」でお店を見て回り、ケンタッキーで昼を食って、ガード下のゲーセンをぶらぶらして「クレーンゲーム」や「

  • あしたの風 (11)

    宮本さんは、おれの気持ちを分かっているくせによそよそしかった。おれは何度も「のりこっ!」と聞こえるように叫んで、自慰行為をしているのに…そして、今日の朝、極めつけにこんなものをもらった。「いざとなったら、ちゃんとこれ使いなさいよ。純子ちゃんを泣かしたらあ

  • あしたの風 (10)

    なんで、プラネタリウムで宮本さんは、あんなことを…おれは、家に帰ってからもずっとそのことを考えていた。山本純子とつきあうことが、成就したというのに、おれの頭の中から宮本規子の存在が離れなくなっていた。しょせん、宮本さんは年上であり、一児の母であり、旦那さ

  • あしたの風 (9)

    日曜日は、あいにく雨模様だった。傘をさすほどではないけれど、肌に雨粒が感じる寒い日だった。多治比駅の南改札で、おれと宮本さん親子が山本純子を待った。「おねえちゃん、来てくれるやろか」陽菜ちゃんが、不安げに言う。「だいじょうぶよ。雨でも来るって言ってたから

  • あしたの風 (8)

    その日の夕方、おれは山本純子に声を掛けられた。おれは、水道のところで、たこ焼きの粉を溶いたバケツを洗っていた。「小縣くん…」その声ですぐに純子だとわかったので、振り向いた。「あ、山本さん」「あの、聞いてるでしょ?」愛くるしい表情で彼女が言う。とぼけるのも

  • あしたの風 (7)

    おれらの高校では、十一月の三日~五日までの三日間、文化祭がおこなわれる。毎年恒例の学校行事で、地域の皆さんもこの日ばかりは自由に学校に来てもらって、イベントや展示を楽しんでもらうことになっていた。「宮本さん、これ」おれは十月も残すところ幾日と言うある日の

  • 盆 (3)

    その日の夜は、夕食にすきやきをごちそうになり、ビールもロング缶を二本飲んだ。田舎の夜は静かだった。美羽は「おばあちゃん」とお風呂に入って、ご機嫌で寝てしまった。ここは、風もあって冷房を入れなくても寝られそうだった。大阪の茨木の自宅ではとうてい暑くて寝られ

  • 盆 (2)

    蝉時雨だけが聞こえる。彦根からやや山側に入った集落に、幸子の実家があった。いつも車を停める空き地があった。ここは、私有地なのだが、少しの間なら車を停めても誰も何も言わないということだった。なにわナンバーの日産キューブから降り、回り込んで助手席の美羽をチャ

  • 盆 (1)

    幸子が、幼い美羽(みう)を残してクモ膜下出血で逝ってしまって二年近くになる。美羽を産んでから体調がすぐれなかった。育休していた市立博物館の勤めも、結局そのまま退職してしまった矢先だった。家のトイレでぐったりしているのを見つけ、おれが救急車を呼んだけれど、

  • 白球を追う夢

    私は、私立四葉(よつば)学園高校野球部監督を拝命していた。とうとう甲子園にやってきた。※群馬県伊勢崎市の「市立四ツ葉学園」とはまったく関係がありません。監督が女性であるということで以前から注目もされ、誹謗中傷も受けてきた。2020年の東京オリンピック以後

  • 夜伽(よとぎ)

    月遅れの盆が過ぎて、夏の暑さも衰えを見せ始めた。庭ではコオロギがささやき始め、蝉時雨も、遠のいた感があった。八月三日にテニアン島が、十一日にガム(グァム)島が米軍の手に落ちたという知らせがこの山深い寒村にも届き、この村から出征した何人かがその南方の島々で

  • 自由研究のお手伝い

    「なおぼんせんせ、ぼくな、USJに行ってきてん」中一のS君が、お土産のクッキーをそう言って、私に差し出した。「ええなぁ、楽しかったか?何に乗ってきたん?」「フライングダイナソー」「あれって、よう止まるやっちゃな。大丈夫やった?」「うん。怖かったでぇ」「せやろ

  • ヘスの法則

    夏休みの自由研究に、温度ロガーを使って「ヘスの法則」を確認してみたい。最近はbluetoothとスマホがあればこんな高度な実験ができてしまうのね。ヘスの法則とは系の変化はその経路に関係なく、熱の出入りによる状態変化だけで決まるというものです。吸熱反応や発熱反応は、

  • 中和滴定

    私は、学生時代より親しくしている中山弥生(やよい)が産休に入ったので、いわゆる「産休先生」として、私立至誠館学園高等部の理科教員を仰せつかっている。もともと私は、大学院を中途で辞めてぶらぶらしていて、たまたま高校化学教諭の免状を持っていたことから親友の弥

  • 真夏の夜の夢

    二回生の夏休み、ワンゲルの合宿から帰ってきたころだった。ボーイフレンドから夜遅くに電話をもらった。両親も寝ていたので、電話のある階段の下で、ぼそぼそと話していたのを思い出した。内容とて、たいしたことはなく、とりとめもない話題だったと思う。「暑くって、なに

  • 半分、赤い。

    校門までの間の石垣にはずらりと「たて看」が並んでいる。大学の風景になった歩道を学生たちが列をなして歩いている。あたしも、その中の一人だった。「来たれ!脚光の舞台へ。ポポロ劇団」「落研・緑蔭寄席」「学費値上げ反対!!許すな文部省利権政治」見上げるような大きな

  • 儀式

    恩田(おんだ)八幡宮は旧富樫藩の初代藩主富樫盛孝が「誉田(こんだ)様」として弓の上達を祈念して建立したものだ。「誉田」とは元「ほむた」もしくは「ほんだ」と読み、応神天皇を祭神とする社(やしろ)である。「応神天皇(誉田別尊命:ほむたわけのみこと)」が弓の名

  • 山科にて

    蒲生譲二と喫茶店で落ち合った。私のセカンドバッグを見て、「なんやそれ、ヴィトンのパチもんけ?」「失礼な、本もんですって」「うそこけぇ、そんなカエルみたいな色のヴィトンがあるけ」「ありますって!」関西では「偽物」のことを「パチもん」という人がいる。「本物の

  • 宿り木(9)

    周平君は主人の部屋で寝てもらっている。主人の部屋は二階にあり、シングルベッドがあって、本棚と机がある、いわゆる書斎だった。本棚には薬学系の分厚い本が並んでおり、その中に混じって漫画や小説もあった。床は黒っぽいつややかなフローリングで、スリッパを履くように

  • 宿り木(8)

    私は、周平君にコーヒーをたててやり、お客用のカップに注いだ。「おばちゃん。だったら、母さんは学生時代におれを産んだの?」姉は息子になんにも話していないのだろうか?「そうよ。大変だったのよ。あなたのお祖父さん、つまり私たちの父親が逆上してね、姉さんと周一さ

  • 宿り木(7)

    若い男の子とひとつ屋根の下に二人きり…そのシチュエーションが、妙に私の心を穏やかにしない。「危険だわ…」「欲しいくせに…」主人に不満はないけれど、そういうんじゃない、危ない関係に自分を置いてみたい…そんな道ならぬことを私は欲しているのかもしれない。その手

  • 宿り木(6)

    八時に店を仕舞い、夕方に作ったカレーを周平君と食べる。「食べたら、お風呂に入ってね」「わかった」「二年生になったら進路も決めるんでしょ?」ライスにカレーをよそいながら、私は訊いてみた。「まあ、二年になってみないと…」「なりたいものはないの?」「ない…てゆ

  • 宿り木(5)

    週があけて月曜日の朝、「じゃあ、行ってくるよ」そう言って主人は出張に出かけた。たまにしか着ないスーツ姿の主人の背中を見送って、私は店内に戻った。店には甥の周平君と私が残された。彼は紙おむつの段ボールケースを開梱している最中だった。このかさばる商品は、積み

  • 宿り木(4)

    うちは薬局といっても、扱いは日用品の方が多い。主人は薬剤師であるから、処方箋による調剤もできる。しかし、処方箋を持ち込んでくるお客は、昔馴染みばかりでご新規さんはいない。新薬情報や保険調剤の新たな適用薬、ジェネリック関係などのプロパー側の説明会などが個人

  • 宿り木(3)

    周平君がうちに来て、二、三日は何事もなく過ぎた。お店の手伝いも喜んでしてくれ、品物の並べ方もすぐに覚えてくれた。ハンドラベラーの扱いも、面白いらしく、やりたがった。「おばちゃん、ティッシュの五個組はいくらだっけ?」「クリネックスが450円、ネピネピが38

  • 宿り木(2)

    周平君の歓迎会をその日の晩にやった。「焼き肉がいいっていうから、おっちゃんがいい肉を買ってきたぞ」主人が、そういってスチロールケースを車から降ろしてくる。「あなた、どんだけ買ってきたのよ。肉屋じゃないんだから」「食うだろ?周ちゃん。おれも食うし」「アロー

  • 徒然草

    外は寒い木枯らしが吹いているが、あたしたちの高校の教室は暑いくらいに暖房が効いていた。古文の授業だった。「はい、ここの『あやしうこそものぐるほしけれ』の訳は、R命館大学の過去問などにも出題されています。横山さん、どうですか?」「え?あたし?」「つれづれなる

  • 人類の手の長さ

    「今日は、京都大学理学部霊長類研究所の横山尚子准教授にお越しいただきました。横山先生よろしくお願いいたします」FM-WAWABUBUの内外小鉄キャスターが横山を紹介した。「こちらこそ、よろしくお願いいたします」横山も会釈する。「今回はですね、人類の手の長さがどうして

  • 2001年春、カブールにて

    ヒンズークシを超えれば、アフガニスタンに入る。この「インド人殺し」の名を持つ山脈が、違和感なく私たちの前に立ちはだかる。見るからに恐ろしい山容である。切り立った崖が屏風のように連なり、そこに蟻の這うような道がついている。車のタイヤはぎりぎりのところを転が

  • もう一つの地底探検(2)

    アイスランド人でフローキ・ビリガルズソンの名を知らない人はいない。彼はヴァイキングであり、ノース人の冒険家であった。「冒険家」というのは、いささか今様(いまよう)に聞こえるが、とにかくこの地を「アイスランド」と名付けたのは彼だと、この国の人は信じて疑わな

  • もう一つの地底探検(1)

    この白色の濁流は何だ?温泉のようだった。湯気がもうもうと上がっている。流れが崩している両岸は滑石の層だろうか。「たぶん、温泉流が分厚い滑石層を溶かして川になっているんだ」博士はザックを背負いなおしながら、ひげもじゃの口を開いた。塊のカッテージチーズを切り

  • 翳(かげ)~莫逆(ばくぎゃく)と裏切り~終章

    チェから渡されたのは自動拳銃「グロック17」とやはり9mmパラベラム弾の装填された一ダースのマガジン(弾倉)だった。戦争でもおっぱじめるのだろうか?これで身を守れということらしい。マーシャルもそれを手にしている。「姐さん、こらやっかいなことになるかもしれまへん

  • 翳(かげ)~莫逆(ばくぎゃく)と裏切り~④

    蒲生譲二が会頭を務める「琴平会」は会津小鉄会系の指定暴力団とされているが、京都の宇治市と伏見区から島原付近をシマとするほぼ独立系の団体である。組の名は蒲生の故郷である香川県琴平町に由来する。この団体は、食肉業界や北朝鮮系遊戯協会(パチンコ業界)との関係が

  • 翳(かげ)~莫逆(ばくぎゃく)と裏切り~③

    夫の祥雄は意識を取り戻したが、あたしのことがよく認識できないらしかった。主治医は「一時的なものです。そのうち奥様の顔がわかるようになります」と言うのだが…ICUから一般病棟に空きができ次第、移動するとのことだった。病院にいても仕方がないので、マーシャルと一緒

  • 翳(かげ)~莫逆(ばくぎゃく)と裏切り~②

    病院のICUの待合室であたしはまんじりともせず朝を迎えた。執刀医の説明では、夫の祥雄はワーファリンの長期服用による脳血管脆弱で脳内出血を起こし、左脳の大部分を損傷したということだった。彼の一命はとりとめられたが、これからの生活は百八十度変わるだろう。今一度、

  • 翳(かげ)~莫逆(ばくぎゃく)と裏切り~①

    あたしは命を狙われているようだ。2009年一月に「金(キム)王朝」金正日の後継者として金正恩を指名したころから、あたしへの執拗な攻撃が始まったように感じていた。日本人拉致に関わった日本人の口を封じたいのではなかろうか?京滋バイパスで真っ黒なワゴンに幅寄せされ

  • 翳(かげ)…(10)

    平成十七年(2004年)、四度目の司法書士試験の挑戦も足切り点に満たず不合格となった。あたしは落胆の色を隠せなかった。夫はいろいろと励ましてはくれたが、あまり勉強には身が入らなくなってきた。「やっぱり、法学部出身でないと難しいのかな」「主婦でも合格しとんねん

  • 翳(かげ)…(9)

    マーシャルこと若頭の柏木勝が、あたしに会いたいとメールをくれた。近鉄京都線大久保駅の駅中のマクドで落ち合った。琴平会の組事務所がすぐそこなので、お互い都合が良かった。「姐さん、行ってきましたで」開口一番、彼は坊主頭を逆なでしながらにこやかに言う。三十半ば

  • 翳(かげ)…(8)

    いけない、いけない。帰宅が遅くなってしまった。夫の祥雄が、先に帰って夕飯の支度をしてくれていた。夫は、おととしに長年勤めてきた、あたしも勤めている化学会社を体のことで辞めた。今は近所の染色会社へパートに出ている。「おかえり。最近、忙しいんやね」「うん。ち

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