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2020/01/04

1件〜100件

  • 同類意識

    プレゼントをもらうのは誰しも嬉しいもの。だけど必要ないもの、むしろ嫌いなものをもらったら──「まとも」な人なら、それが苦手だなどと間違っても口にせず、ありがとう!これが欲しかったの!などと積極的に嘘さえつくかもしれない。私も、そのくらいのことはできる。できるけど、その後で違和感にとても苦しむ。そういうものなんだから、みんなそうしているから、と片付けることができなくて。 苦手な食べ物などもらって、食べずに捨てるのにも罪悪感を感じてしまう。当たり前のことを当たり前とはどうしてもやり過ごせない。それをくれた人は100%良いことをしたつもりでいる。もらった方は罪悪感を感じる。捨てられるものも無駄になる…

  • 永遠の命

    『還魂』 Netflixにて視聴。 魂が自分か、肉体が自分か。自分の魂が誰かの肉体に入り、誰かの魂が自分の体に入ったら、どちらが本当の自分なの? 意識は別人の体の方にあり、血や遺伝子は元の体の方に残っているわけで。 血による生体認証のシーン。一族に代々流れる血によって認証され、秘密の倉庫の扉が開く。魂は別人が入っていても問題なく開くわけで。違う肉体に入っていても、瞳を見つめれば、あの人は自分だと分かってくれるのだろうか? 「違う魂が自分の体に入っている間に子供を作ったら、生まれた子は自分の子と言えるのかどうか」というのは強烈な問い。心は否定するだろうけれど、たしかに血は流れている。私は肉体より…

  • 羨ましがられる条件

    近くに住んでいるけれど疎遠になって久しい幼馴染が、私のことを「羨ましい」と語っていたと、人伝に聞いた。私が働きもせず、家にいて悠々自適の生活をしているから、みたい。すごく単純なことなのに、不意に盲点を突かれたような衝撃を感じた。 気力体力ともに充実して、毎日バリバリ働いて、社会に貢献できるということのほうが羨ましがられる条件として真っ当だと、未だに信じ切っていたということに気づいた。 私から見れば、彼女のほうが羨ましい。羨ましいと思われるにふさわしいと思っていたんだ。社会参加できていない、何者でもない肩書のない自分。親の築いた財産で食わせてもらっている自分。それを恥ずかしく思い、他人を羨むのが…

  • 『うさぎとかめ』の別解釈

    うさぎはいつもスタートダッシュは得意大抵のことはうまくこなせる 途中であれっ?と考えるわたしはなぜ競走をしているのかななんのために勝負をしているのかなかめに勝ったらそれでどうなるというの?こんな勝負に意味なんかあるの?うさぎは走ることの意味を見失う でも走らなくちゃいけないような気もするみんなはその価値を疑っていないしかめに勝ったら褒めてもらえるだろうだけど一旦迷いの生じたうさぎの体は重くもう走れないと立ち止まる空を見ながらぼんやり考える かめはゴールだけ見てひたすら進むやがてうさぎを抜いてゴールするかめはみんなに讃えられ達成感に満たされる うさぎはそれを見てもやもやとする勝負を放棄したのは自…

  • 向上心を捨てる

    人が 生まれながらに愛そのものであるのと同じように向上心や何かを達成したいという願いを持たない人は いないんだと思うだから無理矢理に向上しよう達成しようと 必死になる必要はない 足りないところにばかり注目し自分を責め 虐げることに常に意識が行ってしまう知らず知らず 他人と自分を比べ自分の至らない部分を探し 叩こうとしているそうしなければ成長できないと血眼になっている向上心と自虐が同じものになっている自虐すればこそ進化があるという どこまでも深い思い込み 気づいたなら 自分を『抱擁椅子』に座らせてあげる 成長も 達成感も要らないそれは求めるものでなく やってきたときに味わう おまけのようなもの道…

  • 妖怪人間

    高校のとき、ちょっと変わった男子がクラスにいた。当時はそうは思っていなかったけれど、今思えば、トランスジェンダーっぽい感じ。男子にも女子にも誰彼ともなく話しかけ、どちらにも同性に接するように接していた。 圧倒的な圧で迫ってきて、弾丸のシャワーのように話しかけてくるので、変な奴……とは思った。口数の少ない私にとっては相手が話しまくってくれる方が楽だし、彼と話すのはそんなに嫌ではなかった。私から見ると、他のクラスメイトたちも、彼のペースに巻き込まれてついつい相手をしてしまうという感じには見えたけれど、誰もそんなに嫌がっているようには見えなかった。 通っていた高校は、男子のほうが女子の3倍程度いて、…

  • 一粒の葡萄の瞑想

    体の中心から 光が降りていくどんどん どんどん降りて 地球の中心まで達するマグマに熱せられた光が また上昇してくる私の中心へと 美しく赤みを帯びた光が還流する 体の中心から 光が昇っていくどんどん どんどん昇って 宇宙の中心まで達する星々に彩られた光が また下降してくる私の中心へと 美しいゴールドの光が還流する 地球からの光と 宇宙からの光が対流し続ける2つの光の重なるところ 私の中心でそれは火花を散らし鎖をつなぐようにして交わる 私の中心に 魂のかたまりがある光のつなぎ目と 魂とがぴったりと合わさったとき光に融かされるように 塊の周囲にある薄皮のようなものが一枚剥がれる 双方向からの光が流れ…

  • ギュッとしてくれる椅子

    『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』 Netflixにて視聴。 「上から読んでも下から読んでもウ・ヨンウ。キツツキ・トマト・スイス・子猫・南…」自己紹介の際に必ずこの定型句をぶっ込んできては相手を凍りつかせる彼女は、韓国初の自閉症弁護士。あらゆる法律を一言一句違わず暗記し、司法試験をほぼ満点で通過したにもかかわらず、職場のビルの入口にある回転ドアをどう通り抜けたらいいのかわからない。 歩き方から細かな仕草に至るまで、丁寧に作り込まれた役作りが最高で、どうしようもなく可愛らしい。ゆるあにまるとか、すみっコぐらしとか、そういう癒やし系の動物キャラクターみたいな愛らしさ。特徴ありすぎるドアノックから、指折り…

  • 観察する私

    昨年末頃から調子が悪くなり、年頭から一ヶ月ほど、精神科病棟に入院した。今回のうつ状態は人生で一番ひどかったかもしれない。 入院中、父の容態が悪化し、誤嚥性肺炎で亡くなった。葬儀にも出席しなかった。外出許可が取れないわけではなく、無理して頑張れば行けないことはなかったけれど、主治医と相談した結果、参列しないことに自分で決めた。父との確執が長くあったけれど、いざとなったら、たぶん私は後悔を多くするのだろうと思っていた。良くしてあげなかったことを、最期までどこかぎこちなく、いがみ合うような態度を崩せなかったことを悔やむだろうと思っていた。 実際は、不思議なほど心は凪いでいて、穏やかだった。抗うつ薬と…

  • 普通

    他人の領域に入り込んできて、親切を笠に着て、自分の良かれと思うやり方をゴリ押ししてくる人がとても苦手だ。他人なら適当に距離を取るけれど、親戚とか突き放せない相手では辛くなる。更に、相手はどこまでも親切でしているつもりなので、拒絶の仕方ではこちらが悪者になる。我慢していると、すぐに限界に至る。許容できる余力がなくなって久しい。 相手と自分が大切に思うポイントが違いすぎて、共感されないことが当たり前過ぎて、自分が良しとすることを相手は良しとしないという経験が多すぎた気がする。わかり合えないことが当たり前であることで、相手に自分にとっての「普通」を押し付けるということができなくなるので、そこは利点だ…

  • いちばんきらいな歌

    『ダニー・ボーイ』 アイルランドの民謡歌詞の意味も全くわからなかった幼いときから聴くと胸が張り裂けそうになるバグパイプの音色もそうケルト音楽もなぜこんなに苦手に感じるのかかなしくてかなしくて息もできなくなるアイルランドで生きた前世でもあるのかな 祈りって 愛のことだ愛が深いほど 喪失感も かなしみも深くそんな自分を憐れむことなく ただ誰かのために涙を流すことかなしみに自我が混じったものは 透き通らない 欲望は 願いではない海の見える大きな家を引き寄せられますようにだとか条件の合うパートナーを引き寄せられますようにだとかそういうのは祈りとは言えない 願いですらない 本当の祈りを知ったあとでは欲望…

  • まぶしすぎるから

    未来が真っ暗だから怖いんじゃない未来がまぶしすぎて目が眩んでいるだけ 私は「光」を怖がってきたんだ 光が全てを溶かしてしまい何も見えなくても歓びだけをあらかじめ味わっていればそれでいい

  • 蝶ネクタイを切る

    木曜日の時間割を見ると、一時限目が社会科関連の授業、歴史でも公民でも倫理でもなく、見たことのない科目だった。二時限からは何をやるのかさっぱりわからない科目名がずらりと書かれている。 朝起きて、かばんに何を詰めていったらいいか考えてしまう。まともな教科書があるのは一時限目だけだった。新学期が始まるやいなや、私は体調が悪く欠席していた。体調というよりは心の調子が悪いのが本当のところ。木曜日に登校するのは初めてだった。 何時限目かの授業で、自由研究みたいにおのがじし何かを制作して、提出することになっているらしい。先週課題が出され、今週が期限らしい。周りの人たちの会話の端々からその事を知る。 近くに座…

  • 作品レビュー

    かつて書いた『無彩色の寓話』という短い小説もどきの文章が、雑誌に掲載されることになる。本当に載っているのか?と半信半疑でページをめくると、いくつかの作品に混じって本当に掲載されていた。くすぐったいような、華麗なマジックに騙されているかのような、なんとも言えない不思議な心持ち。 洋書のように文章は横書きになっていて、最後に作品レビューの並んでいる箇所がある。まるでアマゾンの商品ページのよう。本文より一段小さいフォントで、ぎっちりと感想文が並んでいた。その殆どは、文面からとても若い世代の書いたものと推測される。擬音や絵文字がいっぱいの可愛らしいレビューたちは、言葉足らずで、決して上手な感想文ではな…

  • 鈍感になる

    繊細なのが好きだったから鈍感な人が大嫌いだったから自分が鈍感な人にはなれなかった繊細なままでいたかった 変わりたくなかった 繊細すぎて生きるのが苦しくて 死んでしまいたいくらいならキャラ変すればいいだけだった 鈍感な自分を認めて受け入れるかならず両側がある

  • 自分を苦しめる理由

    自分に 苦しめ苦しめもっと苦しむべきだって思ってたできの悪いお前なんかもっと苦しまなくてはだめなんだってそう言っていたのは 他の誰でもなく 私だ醜いお前なんか できの悪いお前なんかそのままでは価値がないと 料理ができなくても きれいに着飾れなくても社会とうまく接することができなくても私がそれを否定しなければ 他の誰も否定していない 否定して安心していた それはなぜ?自分が神みたい これじゃ 罰する神みたいエゴが全能感を得るために自分を罰していたのかな 駄目なところを探して責めて繰り返し繰り返し同じところを周るのも粘着質にへばりつくのも私自身が私自身にしていること私自身が私自身に復讐したかった私…

  • エラー

    鏡を見るのが怖かったのは自分が内側で認識していることと外側の世界の現実が一致しないことを知らしめられるからそして内側の認識のほうが間違っていると信じてしまうから写っているもの見えているもののほうがエラーだとは思いもしないで 真実は外側の世界じゃない私が 私と私の世界をどう認識するかが全てだ 私の認識が間違っていると信じるから鏡にエラーの像が映る

  • 手のひらに隠した貝殻

    彼は、とても女性的な男性だった。見た目も、心の中身も、誰よりも繊細で、艷やかな絹のように傷つきやすかった。彼自身、それをコンプレックスに感じている。彼はそれを語ったわけではなかったけれど、私には手に取るように理解できた。気づいているだろうけど、あなたが恥じていること、それはあなたの魅力でしかない。そう伝えると、彼は目を潤ませ、遠くを見るふりをした。 彼の心の傷は、とてもわかりやすく、誰の目にも明らかなように思えた。わざわざ私が言葉にして伝える意味はないように思えた。余計なことを言ったら、気分を害してしまうかも知れない。それでもなぜか、彼に伝えなければいけないのだということを知っていた。私には当…

  • どうにでもなれ

    人生はロールプレイングゲーム自分がその主人公ゲームのルールは主人公にも変えられない大まかな筋書きも変えられない どうにでもなれどう転んでも どうにかなるどう転ぶかを楽しんで観ている眼差しを持つ

  • 宇宙のかけら

    私は 社会に生きたくはない世界に生きたい宇宙に生きたい これが私のいつも戻る場所でいつも再確認すること宇宙のひとかけらであることをいつも忘れずにいたい 社会にどう適応するかなんていのちから見るならば なんてちっぽけで 近視眼的なこと 長い迷路に迷い込み 出口が見つからないまま袋小路でうずくまっている 正しい呼吸の仕方もわからない それが私の人生それでも 私は世界に包まれていて世界のなかで息をしている

  • 夾竹桃

    緩いカーブの坂道を下りながら、家へと歩く。中学校の裏手の、よく知る坂道だけれど、あたりは薄暗く、鉛のような灰色の重たい粒子が軋み合っている。道路脇の幼稚園の敷地から、はみ出た木々が侵食している。立派な枝振りで、一枚ずつの葉が異常に大きい。人間の顔二つ分くらいの面積の葉が、我が物顔で道路にせり出し、それを避けて道路の中央近くまで膨らんで歩かなければならなかった。対向車が放つ上向きのライトが、眼底を刺す。車は私を避けるためハンドルを切らねばならず、ドライバーの舌打ちの音が聞こえてくるよう。 車道にできるだけ飛び出ないように気を遣って歩くうち、巨大な葉の一枚が私の頬を掠った。葉の縁は剃刀のように鋭利…

  • こころとからだへの信頼

    体の声を聞きなさい ってよく言うけれど 体がうまく働いているときは多少は聞いていたかもしれないうまく働いているときだけは優しくしていた うまく行かないときは鞭を打つなぜちゃんと働かないんだろうと不安になってなんとかして働くように仕向けようと躍起になるそれは信頼の欠如 心を整えようとすることも必死になってあれこれ手法を試みて努力やあがきになってしまう結局疲れるだけで効果は望めない効果を期待していること自体まず間違っている 心を整えたいときは 体に聞き体をいたわる体を整えたいときは 心に聞き心をいたわる対象にこだわり過ぎず距離を保つのにもそれがいい ここ数ヶ月の体調不良で必死になって良かれと思うこ…

  • ドリアンのような臭気

    『毒戦 BELIEVER』 2018年の韓国映画を観た。 パク・チャヌク映画の脚本家だって。たしかに、華美で過剰でグロテスクで、どこかキュビズムの絵画を思わせるようなテイストが共通している。ドライでザラリとした質感のノワールじゃなく、ジトッとした情のからむような湿度がある。その湿度が、ドリアンみたいな強烈な臭気をより凝縮し、際立たせている感じ。 グロテスクなシーンは目を覆った。でもなぜか不思議と、嘔吐したくなるような嫌悪感が残らない。なぜなんだろう。主演のチョ・ジヌンの清廉で実直な存在感が、それ以外の全てと対立して、相手を一手に引き受けて均衡を保っている、というような。この俳優さんは、はじめの…

  • 嫌なことはしない

    嫌なことはしない 気の向かないときはしない何の我慢もせず 浅はかな配慮もしない 何かをしたいような気がしても いざ取り掛かるには抵抗が強すぎるだとしたら無理に足掻かずに手放してしまう 「やらずに後悔するよりやって後悔したほうがいい」手垢のついたそんな警句に 胸がチクリと痛むそれも程度によりますよやり散らかして苦しみ続けてきたなら 学び直すとき何でもいいから前進したいハンドルぶっ壊れてるのにアクセル踏み込む手当たりしだいに方向転換アクセルぶっ壊れてるのにハンドルいじり続ける 壊れたものを蹴っ飛ばしても動かないそれすらできなくなって ようやく止まるそれが私の人生 本当に必要なことなら必要なときに …

  • 夢なんてない方がいい

    夢なんてない方がいい叶うと心から信じられるならばそれを夢見る必要はなくそれはすでに夢ではないのだし 夢が何もなければそれが叶わないという苦しみもない何の夢もないことがいちばん素晴らしい 夢や希望といった言葉に膠のようについて離れない偽善と嘘のにおいそれが我慢ならない 諦めず頑張れば夢は叶う?冗談はやめてください頑張っても叶わない夢もあれば頑張らなくても叶う夢もある叶った夢はその人の人生に必要だっただけ叶わないのなら「それが叶わないという経験」が必要だったただそれだけ 眠っている間に見る「夢」と将来の希望としての「夢」が同じ言葉なのはどうしてなんだろう何故だか希望という夢を手放していくほど夜に訪…

  • 頑張らないことを頑張る

    頑張らないことを頑張ってきたできないことや頑張れなかったことを諦めるということを学んできた手放すということを学んできた逃げ出してしまうということから逃げ出さなかった 頑張ることを生きる目的として頑張ったことで自分を認めたい人々と私自身を比較しない全く違う物差しで測ることに意味はない意味がないどころかそれは罪悪 自らに振り下ろす鞭でしかない これは自己弁護のように聞こえるけれどそうならば今までこんなに苦しむことはなかった

  • 青い悲しみの気配

    どこか東欧の古い街並みにいる。近未来的な、どこまでも冷ややかで無機質な建造物に混じり、数百年の息吹を感じさせる古い建物が林立している。秩序の消えたその街で、オリンピックのような大規模な競技大会が催される。 私は、想いを寄せる男性と一緒に観戦をしたかった。スポーツの内容などどうでもよく、その人と共に在ることだけが大切だった。彼は、男子のテニスを観戦したいと言った。その言葉に、私はなぜだか、冷たく突き放されたように感じた。その感覚は曖昧で捉えがたいものだったけれど、意識のなかで容赦なく拡大していき、内なる闇がさらなる闇に刻々と沈んでいく。 彼は私と一緒にいたくないのだろうと、闇はその気配を翻訳した…

  • 命のための祈り

    『食堂かたつむり』 小川糸 著 読了した。 (……内容に踏み込んでいる箇所があるためご注意を) 食べるということは生きるということ。自分以外の命をいただくことによって、私達は生かされている。命というものの持つ価値、生きることへの讃歌。この物語は最高の食育となり、命とは何たるかを教えてくれる最高の教科書となるのかも知れない。 わかってる。この小説の語りかける温かな世界については。ただ、それが私の魂に届かない。これは私の問題。私の魂までの間に、分厚く透明な結界があり、そこを超えることができない。感動できない。心が震えない。心の底に届かない。肉体よりも「魂」に、自分を同化している。身体を心から大切に…

  • 聖域を守る

    心に健全な壁を作っている人ほど壁がなく心を開け広げているように見えるのでは?本当は逆なんだ私みたいに 人と接すると花壇に土足で踏み込まれるように感じる人ほど健全な壁を持って自分をきちんと守れていないんだ 人との間に壁を作るのは良くないことだ とかこちらが心を開けば相手も開いてくれるんだ とか手垢のついた道徳論に惑わされ続けて 自分を守るためにそもそも花壇に立ち入らせなければいい入ってはだめですとはっきり言えばいいそれができずに 他人を責めるのはお門違い 自分の聖域は自分で守る誰彼ともなく立ち入らせるのが正しいことなんかじゃない 「壁がない」ように見える人ほど本当の聖域は誰にも見せないのかも知れ…

  • 淡い水色のシャツ

    CDのジャケットは、黒いキャンバスの上、赤や黄色や、蛍光ピンクの絵の具が舞い踊る絵画。自我を廃して、神の意志の通り道となり、色彩を鏤めたオートマティック・ペインティングのようなものだった。 ケースからCDを取り出し、恐る恐る再生する。音声はくぐもっていて、ボリュームを上げても、靄がかかったように聞き取りにくかった。ジャケットと同じ図柄の描かれたCDを、プレイヤーから取り出そうとする。ディスクは非常に熱せられていて、指を容赦なくはじく。持ち上げると、とろけたようにぐにゃりと曲がり、自重で滴り落ちそうになる。空気で冷やされ、固まって、中央からパキリと音を立てて割れる。細切れになった絵画が、色とりど…

  • いびつな像

    憂鬱になるのは 魂の真実とかけ離れたことを考えただけ幸せになるのは 魂の真実と響き合うことを考えただけたったそれだけのこと 感情も気分も 思考から始まり 思考から生まれる思考とは自分の心のスクリーンに何かを映しているだけで決して 絶対の真実ではないむしろ歪んだいびつな像がそこに映っていると思ったほうがいい経験によってひずんでしまった古い色眼鏡で世界を見ているから 思考に溺れなければそれでいい生まれる思考にかかずらわることなくただ流してしまう淀みなく流れる水のように少しでも滞ると腐り始めるんだ

  • シュールな自虐ネタ

    『ほえる犬は噛まない』ポン・ジュノ監督の長編デビュー作。ポン・ジュノ監督は初期の作品が好きかも。『殺人の追憶』もとても好みだったし、最近の、評価の高い『パラサイト〜半地下の家族』とかよりむしろ良いんじゃない? このデビュー作も、細かいエピソードを上手にパズルのように組み合わせていく感覚が、凄く生きていると感じた。なんとなくシュールで、得体の知れない感じが上手く醸し出されて、ちょっと残酷なシーンなどあるのだけれど、なぜかその残酷さが上手に変換されてしまって、シリアスにならずにスルッとすり抜けて逃げてしまう。とはいえ、犬を殺すシーンなどは不快で目を逸らしたくなり、コミカルな映画だとは感じられなかっ…

  • テイクバック

    人に判ってもらえない 誤解されるという孤独な現実を創り出すのは大切な誰かに対し あの人とだけは通じているという強烈な歓びを感じたいから大多数とうまく交流できないのは限られた人と深く交わることの歓びをより感じたいから禁忌を犯すことでより高い高揚を得るのと同じだ渇き切った後に飲む一杯の水がどれだけ美味かを知りたいだけそのために自らの手で計画した現実

  • 椅子取りゲーム

    通っていた高校の最寄りのH駅に向けて、自転車を漕いでいる。駅前は、しばらく見ないうちに、特殊な変異を遂げた生物のように、見ず知らずのものに変貌していた。ひしめき合う原色と幾何学の洪水。熱を帯びた人いきれと喧騒。あらゆるエネルギーが不自然に圧縮され、あるべき数より多く、居場所を失ったものが溢れ出す。まるで椅子取りゲームでもしているように。自転車を駐める場所を探して歩き回るうち、くらくらと目眩がした。駐輪できそうなスペースには、どこも既にたくさんの自転車が並び、柵に繋がれた家畜の群れのように見えた。ハンドルはそれぞれに勝手な方向を向き、圧搾されてひしゃげた憤りを象っている。 あり得ない場所に、セブ…

  • 神は支配しない

    『エクス・マキナ』 アレックス・ガーランド監督。第88回アカデミー賞視覚効果賞受賞作品。 アンビエント調の音楽と、選りすぐられた視覚効果との影響で、だんだん意識が麻痺してくる感覚。主人公と同じく、自分が本当に人間だったかどうかが疑わしくなってくる。 高性能なアンドロイドを造り出す人物は、自らを神に限りなく近いものと思い込んでいく。世界をほしいままに操り、全てを玩具にしても良い存在なのだと。自分の欲望を満たすために世界がある。アンドロイドは皆、男性から見て欲望の対象である、若く美しい女性の形状をしている。思いのままの創造と、気まぐれな破壊。神は欲望によって創造するのではない。神は支配しない。 ウ…

  • 世界の秘密の鍵

    「信じたいことを信じたまま死んじゃえば、それが私の真実になる」旧いサイトのプロフィールに、座右の銘としてこんな言葉を載せた。死を祈念しているようなニュアンスを与えてしまうような気がして、後に変更した。「信じたいことを信じたまま生き抜けば、それが私の真実になる」二つは、私にとっては全く同じ意味だったので。 信じたことが、叶わないと判っていたとしても、それでも信じぬくという決意。たとえ叶わなくても、その願いとともに心中するという覚悟。そうやって生きれば、死の瞬間には、それが現実に叶ったかどうかなんて、どちらだって同じことだと思えるんじゃないか。 心の中の果てしない宇宙と、自分という存在が配置されて…

  • 双子の相剋

    双子の兄は、優秀ではあるが屈折し、心の闇に支配され、その支配を外界に投影しようと生きる。双子の弟は、自由奔放で、渓谷を吹き渡る風のような清々しさを持つ。兄は徒党を組み、自らの生み出すルールや不文律に絶対忠誠を求める。それに背く者やはみ出る者は容赦なく断罪する。平屋の屋根の上にたくさん集まった彼らは、たったひとりで立ち向かう弟ににじり寄る。時代背景は明らかに現代ではないけれど、それほど遠い過去でもないように感じられた。これが映画の中の出来事なのか、現実なのかも、よくわからなかった。 双子の幼少期。一緒に生まれた双生児というのに、二人は何もかも対照的だった。弟はすくすくと芽吹いたのに対し、兄は一回…

  • うさぎに小判

    愛用のMacBookに向かって、何か夢中で作業している時に、父にしつこく話しかけられて苛立つ。半分無視してあしらった。父は腹を立てたのか、私のMacBookを絨毯の上に置いた。絨毯はみるみる色を変え、銀色に輝き始める。しだいに境目は曖昧になり、環境に溶け込むために色を変える動物のように、姿を晦ました。私は気づかず、ダイニングチェアの脚でMacBookを踏んでしまう。チェアに腰掛けて、座面がぐらついていることで初めて気づいた。リンゴマークのそばに同じくらいの大きさの穴が空き、その周辺から、モロモロと腐った壁のように崩れ始める。 仕方なく、新しいMacを買いに出かけた。店には凄まじく大きな、本格的…

  • 復讐と感謝

    私は父に復讐したかったされた分だけ返してやりたい苦しめてやりたいと感じていただから父に苛立つような出来事を掬い上げてその機会を窺っていたその機会に思う存分遣り込めたいと願っていた 決して父の言動に「苦しめられ」ているのではなく復讐の機会をみずから創造しているだけ私は被害者ではないその事に気づき 善悪で裁くことなく受け容れる そのような創造の機会を父の存在が創ってくれた生きることを難しくし ハードルを上げてくれたそのことに感謝する

  • 原色の愚者

    私と恋人は若く、二十歳くらいに見えた。何も知らないがゆえの豪胆さがあり、怖いもの知らずで、シンプルに未来の輝きを信じている。タロットの愚者のカードのように思えた。私たちは、カラフルな原色を重ね合わせたピエロのような服装で、特に鮮やかな黄色が目を引いた。 銀色のステンレスで出来たカートのような乗り物があり、彼は、それに乗ろうと言った。これに乗れば、空を飛ぶこともできる。私は、それは無理だと言った。二階の窓から飛び出せば、コンクリートの地面に打ち付けられて大破する。 私たちは実際に試してみることにした。二階の窓から空中へと勢いよく飛び出した銀色のカートは、真っ逆さまに地面へと墜落した。けれどカート…

  • 相談者

    二十歳くらいのの若い女性に相談を受ける。資格か何かの勉強をしなくてはいけなくて、朝方まで机に向かって頑張っているのに結果が出せないと言う。 何時間机に向かったから凄いんだと、時間だけで判断していませんか? 音楽を聞きながらとか、ラジオを聞きながらとかだったら、集中しているのはほんの一瞬、あとは意識が違う場所へ流れ出しているんです。無駄でしかありません。だったら一時間なら一時間と時間を決め、その間だけ勉強する、あとはすっぱり忘れて遊ぶ、としたほうがずっといいと思います。集中力も才能です。長く続けられる人もいればそうでもない人もいる。自分の才能を知ってそれに合わせたほうが得策です。私はそう答える。…

  • 漂白された闇

    真っ白で艷やかな床が一面続いていて、その上に、寸分狂わず並べられたナイフやフォークのように、人々が並んで横になっている。その展開図は限りなく続いているかに見える。壁も天井も白く、白過ぎて、それが壁なのかどうかわからない。壁という概念や言葉さえ、吸収して真っ白にしてしまう。 寝そべった人々は皆、黒ずくめの服を着ているように感じられる。その真っ白な世界には無しか存在しないので、色も存在できなかったのかもしれない。 その世界で、整頓されて寝そべっているなかの一人の男性に、インタビュアーが話しかける。こんなに密集していて、周りには異性ばかりが寝転がっているのを、どう感じていますか。異性がよりどりみどり…

  • 恥の効用

    たくさん恥をかけばかくほど 私は自由になる失敗すればするほど それを許せるようになる恥をかくことは なんて素晴らしい恵みなんだろう できないことや下手なことをチャームボイントと捉え魅力に変えるのか恥ずかしくて消し去りたいものと捉えるのか選択する自由があることを思い出させてくれる

  • スピリチュアルマガジン

    届いたメールマガジンにこんな内容が書かれていた。……◯◯さんがずっと畏れてきた存在が、光の橋を越えて、体を脱ぎ棄てていかれました。(確かにこの「畏」れるという字が使われていて、それが妙に引っかかった)◯◯さんは、虚脱感と開放感、そして喪失感に翻弄され、一気に訪れた感情の大波にご自分を見失っていらっしゃいます。 その存在は肉体を離れ、もう二度と手の届かない別の世界へと旅立ってしまったように感じているでしょう。死後の世界のような、自分も死んだら同じ場所に行けるという期待の持てる場所ではなく、本当に永久の別れとなる、どこかまったく違う位相にある場所へと旅立ったのだと。 しかし、あなたが畏れ、崇めてき…

  • 雨音の独白

    インクの切れた万年筆で手紙をしたためました埃を被った灯りの下でぼんやりと太陽の亡霊が揺れましたペンのキャップを閉めたなら明日のスープを煮つめるのです錆を落とすために握りしめた右手が痺れます長い長い晩春の雨流れる雫を数えます喉に絡みつく飽和した蒸気にうっかり呼吸を忘れてしまうのです 百日紅の根元に埋めたあの結晶が見つかりません幾重もの薄い皮を剥いたなら葡萄の一粒のように瑞々しくあなたとわたしの舌を痺れさせるあの結晶のことですお利口な大地が代謝したあの宝石はいったい何に生まれ代わったのでしょうか明日の朝が来たならば瑠璃色の蝶に尋ねましょうか 燥き切った唇を潤す涙はもう零れることがありませんそれは正…

  • 生命のスパーク

    『タイタニック』 誰もが知る言わずもがなの超大作。地上波で放映していたので観た。たしか公開後しばらくした頃に一度観たきりで、細かいところは殆ど忘れていた。 彼は彼女に言う。君は何人も子供を生んだ後、この冷たい海ではなく、温かいベッドて最期を迎えるのだと。それを約束してくれと。彼女は息絶えた彼の手を離し、氷の海に沈みゆくのを見届け、救助の手を求める。二人分の生命力が宿ったかのような、噴火口からほとばしる光のスパークが、重く立ち籠める闇を切り裂く。 二十年も前に見たときには、彼女に漲るちからに素直な共感ができなかったのを思い出した。生きるって素晴らしいね、という、いかにも安っぽい感動として消費され…

  • 目には見えない爆弾

    数分後に、原子爆弾が落ちることがわかっていた。私たちはできるだけ頑丈なビルに駆け込んで、じっと息を潜める。眼の潰れるような閃光、耳をつんざく轟音、そういったものを想像していたけれど、具体的な光や音は、何も検知されなかった。目に映る世界は何の変化も起きたように見えない、しかし現実に原子爆弾は落とされ、私たちの世界の何らかのシステムが崩壊したことは確かだった。なぜそうなのかはわからないけれど、そう確信している。 人々は誰もが戸惑い、おろおろと慌てふためきながら、周りの人間がどう出るかを横目で観察している。皆が自分の行く末を、自分の責任で判断しなければならない。なのにその責任は重すぎるので、誰もが誰…

  • 足りないものを数える悪癖

    常に100点から引き算をしていた98点でも なぜあと2点が取れなかったのだと強く叱責された子供の頃の記憶がまだ 私の中では生き続けていて 何ができるようになったかではなく何がまだできないでいるかを常に考えてしまう癖 完璧になるために何が足りないか完全であるためにどうしなければいけないかその隙間を必死で埋めるだけの人生それは完璧には程遠い 邪魔なものを減らしていく人生と素敵なものが増えていく人生と起きていることは全く同じでも二種類の人生がある

  • 日常の魔法

    『八月のクリスマス』 1998年の韓国映画を観た。ハン・ソッキュ、シム・ウナ主演。 盛り場のトイレの鏡の前で、突然姿を消した彼を想い、涙を流し、鼻をかむシーンが印象的。日常のなんでもないようなシーンが降り積もり、それが次第に輝く宝石となっていく魔法を、丁寧に編み込むように描き出している。それは誰もの人生にある、身近な魔法でありながら、すり抜けてしまい手が届かないもの。 遊園地で手渡した缶飲料の飲み口を、そっと拭いてやる彼女の横顔や、彼の昔話の中に登場するおならをする幽霊の話や、本当に些細な出来事の一つ一つが次第に重みを増し、煌めいていく。万年筆を丁寧に洗い、新しいインクに思いを込めてしたためた…

  • ウズモレル

    情報に埋もれると窒息する何もない場所に埋もれていたい柔らかい眠りに揺られていたい無数の塵が沈殿するのを見つめていたい 光が瞼を透かして囁いてくるのを感じたい風が肌の上で遊ぶのを感じたい時がまろやかに軋む音に耳を澄ませていたい鼓動のなかにある宇宙を感じたい銀河を逆に廻すんだ

  • スパイ養成所

    青春グラフィティ的な群像劇。主人公の二人の男子は、何らかの養成所に入所する。そこは表向きは何の変哲もない、どこにでもある専門学校のようだったけれど、内実は、諜報機関の要員を育成するという裏の顔がある。敵地に潜入捜査員として紛れ込むために、彼らはあらゆる技術を習得し、マルチプレーヤーとなる必要があった。 その日の実習は、なぜか、電車の塗装をすることだった。古くなった車両をペイントし直し、生まれ変わらせる。主人公の二人は、同級生たちに妬まれ、陥れられる。故意に誤った情報が伝えられ、赤く塗るはずの車両を青く、青く塗るはずの車両を赤く、ペイントした。透き通った青空は、宇宙の果てまで続くかに思われる。二…

  • 秘薬

    あなたを見つめていられれば幸せだったあなたを欲しいと願ったからあなたを見つめることは苦しみに変わった 痛みのためあなたを見つめることができなくなったわたしはあなたを失ってわたし自身を失った もう一度あなたを見つめたいただそれだけが私の願いとなったそれだけが私の恐れともなった わたしを醒まさないで 血を吸い上げた紅い薔薇昨日までは純黒だった紅い薔薇 秘薬だと確信できないその液体を無心に吸い上げ熱に浮かされるあなたの血でわたしを染めてほしい紅いままで朽ちていくことをどうか赦してほしい 鎮痛剤はもう要らないふたつに割れた黒曜石の片方天穹の半分 つまりわたしの半身が尖った刃となりこの心臓をを切り刻んで…

  • お大事に

    アトピー性皮膚炎が再発してしまった知人に会った時のことを、ふと思い出した。普段はほとんど完治してきれいな肌を取り戻していたけれど、最近過労が祟ったらしいと話していた。いつもばっちりとメイクしていたのにその日はノーメイクで、腕も露出できないらしく、オーガニックコットンのアームカバーをつけていた。そのせいか、生き生きとした印象がすっかり影を潜め、遠い靄の向こうにいるかのように見えた。 私は幸いなことにそのような皮膚トラブルとは無縁で生きてきて、彼女がどれだけ大変でどれだけ辛いのか、分かったつもりになっても本当には分かるはずがなかった。大変なんだなぁ、くらいの印象しか持てなかった。 当たり障りのない…

  • 干涸びた水路

    すれ違う若い女性たちや、十代くらいの少年たちの会話が、風に途切れ、断片的に耳に届く。ちぎれた便箋を寄せ集め、コラージュするように意識の中で繋げていく。若者たちの会話は、私自身の人生の中、どこかしらで実体験してきた思いの断片であり、色とりどりの便箋を繋ぎ合わせた後に、どこか既視感のあるひとつのレポートが出来上がる。それが自分自身の人生のストーリーによく似ていることに気づいて、不思議な気分がする。 朝起きて、窓辺で手鏡を覗くと、目の周りにたくさんの深いしわができているのを見つける。朝の白い光が率直に映し出したしわを、一つ一つ丹念に追いかけていくと、額にも、鼻筋にも、格子状に縦横に細かいしわが張り巡…

  • 他者の視点

    他者の目で自分を見るということは他者の基準に自己を売り渡すということじゃなく自分の価値基準が 知らす知らず凝り固まった偏りのあるものになっていることに気づくために必要 自分が大きいと思うものが 誰かには小さいのかもしれない自分が醜いと思うものが 誰かには美しいのかもしれない自分の価値基準は自分にしか通用しない狭い枠の中から世界を見ているのだと気づくことに意義がある それ以上でも以下でもない他者に合わせて自分が大きいと感じたものを小さいのだと思い込む必要はない自分の方がおかしいのだと審判を下す それはもっと異常なことそんな異常な日々を生きてきたのだから何もかも狂って当然だった

  • 地下水脈を流れる輝き

    『オアシス』 2002年、イ・チャンドン監督作品を観た。社会不適合者の男性と、脳性麻痺の障碍を持つ女性との、異形でありながらも純粋な恋愛。社会のタブーに果敢に切り込んでいく姿勢には、痺れる。 脳性麻痺の女性を演じた、ムン・ソリの演技が凄すぎた。実際にリハビリテーションを本格的に学んだそうだけれど、そこから得られたものを見事に昇華していて、本当に凄いとしか言いようがないと思った。障碍のある方の見た目をただモノマネするようなものであれば、侮蔑的なニュアンスが加わってしまう危険さえある難しい役どころだと思うのに、その精神の深みまで完全コピーしていると感じられた。女優としての生命だけでなく、一人の人と…

  • 過大評価

    他人から見て 他人の価値観で測られて どう思われようと構わないでも自分から見た 自分の価値観で自分の価値を判断している 私の中にある価値の基準だって 正しいものとは限らないなのに 自分の価値基準を 随分過大評価していない? 勝手に 自分には価値がないと決めつけないでそれは尊大になるのと同じこと自分の価値を低く見るのも 高く見るのも自分の判断力を過大評価しているということ 価値を見出だすために理由も根拠もいらない信頼だけがあればいい 人生に必要な能力は与えられる与えられていないのは この人生に必要ない才能だから

  • ひび割れた指

    理科室のような、黒いテーブルと背もたれのない椅子が規則的に並べられた空間で、雑巾を手にしている。床にはなぜか、毛足のとても長い絨毯が敷かれていた。大勢に踏みしめられて、毛足は潰れ、ぺしゃんこに固まっている。そこへ、丁寧に雑巾がけをしていく仕事。毛並みに沿って何度も撫でるように雑巾をかけると、絨毯はふんわりと生き返ったように活力を取り戻す。命ある動物の被毛を手入れしているかのようだった。やがて絨毯の表面には、黒とダークグリーンを基調にした細かな文様が浮かび上がり、それはどこか古代の壁画のような印象を与えた。 雑巾を洗っていると、左手の人差し指にひび割れができているのを見つける。第一関節と第二関節…

  • ソフトフォーカス

    鋭い照準は残酷に綿密にこの皮を剥いでいく 両眼を閉ざし柔らかく滲ませた曖昧な輪郭と想念を織り合わせて出来上がるざらりとした手触り世界は夢 もとめる心がなければ 苦しみもない そして 深い悦びもない毒蛇をまるごと飲み込んだ者だけに金糸が一筋 垂らされる 儚くも美しく一瞬をとじ込める屈折した無数の彩根源の光から分離した そのひとつの光線を愛するということ 根源の光から分離した そのひとつの魂を愛するということ 銀河が幻と消える日が来ても最果てに残るその幽けき余韻を抱きしめて永遠と眠る貴方という夢を見る

  • 光の射す方向を

    ポジティブなエゴである「欲」とネガティブなエゴである「恐れ」とをぶつけて相殺させられる ゼロになるそこで終わりではなくその後に美しく温かい方向を自らの意志でもう一度選択し直さないといけないの? 大丈夫闇に向かって伸びる植物はない私たちはもともと光で出来ているのだから

  • エアポケット

    不安障害、パニック障害、摂食障害、醜形障害、鬱……様々な心の問題を抱えてきた中で、摂食障害だけは完全に治ったと言えるし、再発しないと信じられる。これは本当にありがたいことで、炭水化物をしっかりと摂る食事療法で完治したと思う。世の中は糖質制限を肯定する人が多くて、全く逆行しているけれど、自分の実体験からも、エネルギーの一定量は炭水化物で取るのが良いと信じている。 蛋白質は体を作る材料になるけれど、カロリーの摂取量が不足していれば、不足する熱量を補うために燃焼してしまい、燃焼してしまったら既に、体を作る素材としては使えないのだそう。考えたら当たり前のことなのに、そんなこともわからなかった。熱を作ら…

  • 成功者

    私は最高の成功者だ どんな高価な指輪をもらうより どんな大金を稼ぐより周りに人がたくさん集まる事より ずっと大きなものを得るのだから

  • 潜在意識に強要しない

    潜在意識は 表の理性の言うことは聞かないああしろこうしろと言われると反抗するパニックになって泣き出す 喚き出す インナーチャイルドって潜在意識のことなんだろう子供や動物をあやすように優しくなだめてあげないと声をちゃんと聞いて 上から指図するのでなく感情を持った相手として対応する 尊重する 決して反論しない 叱りつけないどんなおかしなことを言い出しても否定しない 泣き出したとき 喚き出したときこそチャンス 潜在意識は 集合的無意識とは仲がいいし つながりが深いだから 好ましい集合的無意識の方に先につながることで傷ついた潜在意識を書き替えられる優しい母のような意識に 先につながる

  • 致命的な失言

    階段の上に岡村さんがいて、階段の下に田島さんがいた。私は階上の岡村さんに向けて、「田島さんがお越しです。岡村さんをお探しですよ!」と言うべきところを、「岡村さんがお越しです。田島さんをお探しですよ!」と、うっかり名前を反対に言ってしまった。 なんとも微妙な空気が流れた。二人とも、口元に半笑いを浮かべたまま固まっている。はっとした私は、慌てて失礼を詫びる。再びの微妙な一時停止の後、何事もなかったように事は滞りなく進んでいった。 ーくだらないけど笑えた夢で、印象に残る。なぜかこの二人、岡村靖幸さんと田島貴男さんだった。

  • 正しい羨み方

    誰かを羨ましいと思ったらその人と同じ風になったらどう感じるだろうってイメージすると良いそうでもなぜか そういうのってとても疲れる今同じようにできていない自分を意識して 嫌ってしまうから?それこそが「呪い」なんだ 自分自身を呪ってきたようなもの 立派な人に「勇気をもらった」という人が嫌いだったけどその相手を通して 集合無意識に繋がってたというだけなんだ 相手と同じような素晴らしい考え方ができない自分を責めるのじゃなく相手の素晴らしいところをちょっと拝借してしまえばいいだけそれは相手から奪うことではないんだ相手と直接つながってるのではない 与えたり奪ったりすることではないチューニングしてその波動に…

  • 時を超えた郵便物

    自宅の郵便受けを開けると、幾つかの郵便物と一緒に、何やら大きな包みが入っていた。包装を解いてみると、数枚の皿が現れた。自宅で頻繁に使っている、桜の柄がワンポイントで入った平たい皿と全く同じデザインで、花の色が橙色で描かれた色違いの皿だった。よく使う皿と同じものなので、これは実用性があり、もらっても使わず仕舞い込むだけになってしまうことはないな、有り難い。頭を過ぎったのはまずそんなことだった。差出人は誰かを見る。見覚えのない女性の名前。首を捻りながら、添えられていた手紙を開封する。 文学的で、やや冗長な文章。思い出語りが長く、回りくどい表現が続き、言わんとすることが見えてこない。数ページの後の一…

  • 金色の小箱

    美しく切ない郷愁の想いに潜っていく想いをぼんやりとしたビジョンに置き変えていく万華鏡を覗き込むように 規則的に回転するそのビジョン次第に引き込まれ 解像度を上げていく 蓮華の咲き乱れる草原 柔らかい風が髪を揺らす幼い頃よく遊んだ場所に似ている 金色の小箱が置かれている 細かい彫金細工が施され美しく装飾されたずっしりと重みのあるその小箱時を超えて慈しんできたとても大切な小箱であることがわかる 蓋を開ける内部から淡い桃色の光が溢れこぼれる甘やかな果汁がほとばしるよう心の傷にしみるようなそれでいて優しくくすぐられるような 自ら鞭打った沢山の痣が心の表面に浮かび上がりいつかどこかで見たような不可思議な…

  • 踊る花のオブジェ

    中華料理店から出前が届く。2人前のチャーハンと餃子は、まるで宮廷料理のように細かい細工で飾り立てられ、高級感が漂っていて驚く。これ、どこから取ったっけ? 母に訊くと、大通りに出たところのパン屋さんの先にある店と答える。そんなところに中華料理店があったのを思い出せない。赤い外装の店構えは記憶にあり、○○軒と白い字で書かれていたのはぼんやりと覚えている。早速食べてみる。本格的過ぎて、取り澄ました味。日本人好みにアレンジされていない、本場の味はこんななのかな? 母と話しながら食べるけれど、二人とも箸が進まない。 テレビから、お世話になった中華料理店に、日頃の感謝を込めてお礼をしたという高校生の美談が…

  • 欲望と犠牲

    韓国歴史ドラマ『六龍が飛ぶ』 終了。欲望に忠実な人って魅力的。自らの欲望を、自らの意志で肯定できる人っていうのかな。持て余すほどの才覚と胆力があって、それを埋もれさせて生きることは、何より耐えられない。一人の生身の人間としての、恋慕も友情も尊敬もあった上で、血も涙もない悪魔では決してなく、葛藤の先に自ら選び取った道だから。残忍であっても非道であっても、輝かしい。欲望が叶い行くのと引き換えに、周りの人々が一人ずつ背を向けて行ったとしても。そのひとつひとつの選択を、心の揺らぎを、共に見届けてきたから。 歴史の中でどんな役割だったかが重要なのではなく、個人の内面を克明に描き出すことに重きを置いている…

  • 邂逅の時

    花弁のように降り積もる悔恨を柔らかく踏みしだく前に木枯らしが奪い去る吹き溜まる桃色の溜息に冬は恋をした あなたの背中に降りしきる黎明の雪首筋にほどけていく結晶をわたしはつぶさに見つめている 振り返らないで もう一瞬少しだけ怖いから 瞳のなかに繰り返される原風景 いつでも同じ幾何模様幾万の深淵を覗き込み渦巻く郷愁に身をやつす 記憶を手繰り寄せるまでのたまゆらの時 瞬きのしじまに往き過ぎる幾光年の旅 あらゆる種子があらゆる屍が眠りつづける大地を踏み締め霜柱は軋む 呼吸を止め重力を裏切りこの浮遊にたましいを懸ける眼差しに灼けてこの軀が融けてしまおうとも

  • 水底を映し出す鏡

    トート・タロットに魅了されている。タロットカードはずいぶん昔、若い頃に一度興味を持って、二つほどデッキを買った。一つはメジャーなライダー版に準ずるもの、もう一つがトート版だった。当時は、トートの図柄がなんとなく強烈すぎる気がして、自分のなかの暗闇まであからさまに白日の下に曝すような残酷さを感じて、苦手意識を持った記憶がある。買ってみたものの、トート版は殆ど使わなかった。 自分の念が強すぎたのか、こうあってほしいということ以外を許せなかった狭量さからか、タロットは私の手の中で暴れるように、私の願いをあざ笑うように、期待を裏切って見せた。すっかり信じられなくなり、タロットなんて当たらないと思い込み…

  • 世界を受胎する

    胸に圧縮した憤りも限りない密度の結晶となれば透明な水のような静けさを抱く 沈んでいく なにもかもが沈殿したのちに荒涼とした世界はひとしずくに凝縮される それを飲み干すのは かんたんなこと 見つめていたのはあなたの影だったいいえ わたしの影だったわたしはそれを あなただと信じ込んだ あなたをこの手に抱きしめるためにはわたしは世界を飲み干さなければならない世界を受胎しなければならない 涙も血も流し尽くせば わたしは抜け殻となり抜け殻だけが 世界を孕むことができるその無彩色の中空に 色を想い出させる 深紅の生命を遺伝子に刻まれた暗黒物質の行方を

  • 因果律

    まだ薄暗い早朝、校舎の階段を上っていた。煤けたコンクリートの灰色だけに支配された、廃墟のような空間。階段の途中には、新聞紙が散乱して行く手を阻んでいる。折り畳まれた大量の古新聞に混じり、スナック菓子やウエットティッシュの袋も散乱していた。それらは、なぜか全て未開封の新品だった。 そばに、石田純一風の、年季の入ったプレイボーイが佇んでいる。イタリア製のシャツとジャケット、首元にカラフルなスカーフを巻き、この殺風景な場所にどうにもそぐわない出で立ち。彼が振り向いたので、仕方なく声を掛ける。この散らかった新聞紙は一体何ですかね? 彼は、視線を泳がせて言う。僕も知りません、ただ通りかかっただけなので。…

  • 思いのエコロジー

    未来のことを心配するのに 今の時を使うのは ただの無駄遣いあらゆる無駄を省こうと必死なのに どうして今という時間の無駄遣いは平気でしているの? 心配は最小限にするのが エコというものどうしてもそれが起こってしまったら その瞬間だけ心配すればいいそれが起こったらどうしようと 前々から心配し続けるのはエネルギーの垂れ流しであり 人生の乱獲でもある 過去に起こったことを悔やみ続けるのも 同じこと人生の乱獲を続ければ 魂の生態系は崩れ 動植物は絶滅し 資源は枯渇し砂漠化が待っている

  • 演技派女優

    ドラマのセットは、ちょっとしたアスレチックか何かのようで、一軒の家の内部に、緩い螺旋を描く滑り台のようなものがあったり、ボルダリングの壁のようなものがあったり、複雑に込み入って、目眩がするほど派手な原色が散りばめられた内装となっていた。私は端役で出演する。老婆の特殊メイクをしていた。 二階の畳の間から、曲がりくねった滑り台の隙間を通して、一階を見下ろしている。一階では主要キャストが撮影をしていた。それを見ているうち、自分がただの観客だったことを、不意に思い出す。こんな場所に居てはいけなかったことに気づき、二階の窓からそっと逃げ出そうと企む。 窓の外には出番待ちの端役の俳優たちがたくさんいて、背…

  • 過去へと向かう列車

    『ペパーミント・キャンディ』 1999年のイ・チャンドン監督作品を観た。 人生に失敗した男が、思い出の場所へ帰ってくる。同窓会に現れた彼は、妙なハイテンションで騒ぎまくり、旧友たちに呆れられる。気がつけば彼はひとり陸橋に登り、線路の上で列車の到来を待っていた──。強烈な自死のシーンから物語は始まり、彼の人生の時を数年ずつ遡る形で、物語は過去へ向かって進んでいく。彼がなぜこのような最期を選ぶことになったのかが、少しずつ紐解かれていく。 初恋の人が探していると聞かされ、彼は病院に駆けつける。昨夜まで話ができたという彼女は、すでに意識を失って昏睡状態だった。彼女の夫は初恋の人にひと目会いたいという妻…

  • 優先順位

    自分に愛を捧げるのも世界に愛を捧げるのも本質的に同じことならまず世界に捧げてみれば 自意識から離れやすくなる?世界を優先して自分をないがしろにしてしまう?やはり自分が先のほうがいいの?これに答えはないのかもしれない 世界を愛せないほど傷ついているなら自分を愛するのが優先自意識に囚われがちで競争意識に苦しむときは世界を愛するのが先

  • 集合的無意識の視点

    自分が変われば周りも変わる。周囲の人は自分の鏡だ……という、よく精神世界の教科書などで言われていることがどうしても納得できなかった。実践する努力をしても全く現実は動かないし、苛々して余計ストレスが溜まって爆発していた。これに関しては本当に本当に長い間苦しんできた。視点が足りなかったんだ。集合的無意識の視点が。 憎たらしい人に優しくしようなんて努力したってできない。できなくても当然。集合無意識とのつながりを変えて、憎たらしい人にどう対応するかということ以前に、自分が愛に満ちて、世界に愛を捧げるような在り方でいること。自分が変われば、ということの本当の意味はそれだったんだ。変えなければいけないのは…

  • ミッシングレター

    音楽室で、多くの児童と一緒に歌を歌っている。小学校の音楽の時間らしい。アルファベットの歌を歌っていたので、英語の時間だったのかもしれない。ABCDEFG〜と歌おうとするのだけれど、その続きが所々どうしても思い出せない。記憶が部分的に黒塗りされてしまったようで、何度スキャンしても反応がない。所々が破損したタイプライターのように、特定の文字だけが消えてしまった。焦りと苛立ちが胸に詰まって、息苦しい。 隣の席の女の子に、アルファベットが思い出せないことを打ち明ける。その子は一瞬目を丸くして固まった。その後、あからさまな侮蔑の表情へと、見事なまでの変貌を遂げた。アルファベットも分かんないの? それマジ…

  • 崖へと突っ走る列車

    『人新世の「資本論」』 斎藤幸平著 読了。SDGsは大衆のアヘンである! という扇情的な見出し。それに釣られて読んでしまった。 SDGsには、本質的に、資本を崇拝する今の社会構造を変える力などなく、焼け石に水状態であり、結局は現状維持状態しかもたらさない。聞こえのいい美辞麗句に酔ってしまうことで、むしろ実態は、深刻な現状から目を逸らしながらも、自らは環境に貢献しているという良い気分だけ先行してしまう。ざっくり言って、そのような状態を、著者はアヘンと評したように思う。 使い捨てのレジ袋を廃止しても、おしゃれなエコバックを次々と購入しては、すぐに飽きて廃棄するような「ファッション」が、その代替とし…

  • 肉体と血

    父の性根がねじ曲がっていたとしても それは血とは関係がない父の血がこの身体に流れていると思うと 自分を殺したくなったものだけれど 血そのものが穢れているわけじゃない肉体やDNAに罪はないそれは人智を超え エゴを超えた世界に属するものエゴによって汚されることはない誰の肉体も汚れてなどいない 肉体は与えられた神殿一時的に借りているだけのもの自分のものだと思うことから 誤ちが積み上がる

  • 与えられた名前

    私は赤ちゃんを産んだ。正確には私のお腹から産んだわけではないのだけれど、どこからともなく降ってきたように私の手に授けられている。そして確かに私の子であることが分かっている。 あなたの名前は何なの? 私は赤ちゃんに問いかけた。赤ちゃんは「ヒロユキ」と答えた。はっきりとした発声。完全に大人の声だった。赤ちゃんは女の子のはずだった。ヒロユキと言ったら男性の名前では? あなたは女の子でしょ? そう尋ねると赤ちゃんは暫く無言だった。その後、ゆっくりと口を開いた。名前なんか、後でいくらでも考えられる。今は適当にヒロちゃんとでも呼んでおけば? そうすれば「ヒロ」のつく名前なら何でも、ヒロコにしようがヒロミに…

  • 真心と嘘とが分裂した人

    『よく知りもしないくせに』 2008年のホン・サンス監督作品を観た。 日常のごくありふれたシーン、ごくありふれた会話の積み重ねの中に、よく知るはずの人の全く知らない顔を見つけて愕然とする。他人とは、まるっきり理解不能の、得体の知れないモンスターのようだ。そういう自分も、誰かにとってのモンスターなんだ。 誰もが誰ものことを、よく知らないくせに勝手に理解した気になり、はじめから誤っているその認識を裏切られると、相手が悪いと言って責め立てたりする。誰も人のことを全く理解などしていないのに、どこにも本当の接点がないのに、なぜだか器用に繋がって人間関係はそれなりに円滑に進んだりする。そんなものだと誰もが…

  • 競争のない世界に生きたい

    足の速い人同士がどちらが速いかを競いクイズ王同士がどちらが知識豊富かをを競い社員がどちらが先に昇進するかを競いママ友同士もなんとなくの空気でマウンティングするスピリチュアルな人々もどちらがよりスピリチュアルかを競ったりしてどこに属しても競争がある一見ないように見える場でさえも 子供の頃から競うことが大嫌いだった勝つより負けるほうが気が楽だと思ったそれは一種の負けず嫌いで真剣勝負して負けるくらいなら初めから負けを選ぶという「逃げ」なのだろうと自分を裁いていた私は勝負から逃げているだけの卑怯者なのだと 自分のなかの競争心が大嫌いだ人と自分を比較して人に負けたくないという思いが苦しいから大嫌いだやは…

  • 暗闇に舞う光の軌跡

    『メモリーズ 追憶の剣』 2015年の韓国映画を観た。何度生まれ変わってもあなたを恨み続ける──この血の最後の一滴までもあなたを恨み続ける──それは、切なくて胸が痛くなるほどの愛の告白だった。 信じ、魂を捧げた大義を、愛のために裏切った。その贖罪は自らを最も苦しめる方法でなされなければならなかった。自らの延長である、大切な存在をも傷つけることになっても、そうせざるを得ない。そうするしか生きる選択肢がない。それ以外に、死ぬための選択肢もない。 どうすることもできないほどの重い十字架を背負わされ、愛することが罪と同義になってしまった後では、その罪に対しての罰を受けることだけが、愛を完結させる。愛と…

  • 滑降

    山あいの清々しい空気を胸いっぱいに吸い込む。辺りは新緑の他に何も目に付くものがない。自転車にまたがり、急な坂道の上にいる。これから、ここを滑り下りるのだ。なぜだか不安が過る。ブレーキはきゅっと握りしめれば手応えがあり、きちんと車輪の回転を制御してくれるはずだった。なぜ不安を抱くのか、自分がわからない。 急な坂を見下ろしている私を、徒歩のお婆さんが追い抜いていった。坂は細く、スキーのジャンプ台の上にいるような錯覚を覚える。転がり落ちれば、自転車も私の身体もバラバラに分解され、宙を舞うような気がする。既視感のある恐れと、出所のわからない不思議な快感とが混じり合って、私を支配している。 自転車は分割…

  • 下心

    アファリエイトだとか広告収入を得るため、とにかくアクセスを集めたい。いいねとかスターとかスキとかが欲しいから、自分の記事に呼び込む目的で、手当たり次第に足跡を残していく。これらがブログやSNSを駄目にしていると思う。(使い方によっては)目的を歪めるようなシステムが持ち込まれ、皆がそれに帰依してしまっている。 昔の個人サイト隆盛のときにも、自分のサイトを見てもらいたいから、その下心で他のサイトと交流するという人はいたと思うけれど、今のように大っぴらではなかった。もう少し純粋に相手のサイトを内容が好ましいと思うかどうかで判断していたような感触がある。 もちろん今も、内容に共鳴して本物の交流が芽生え…

  • 靴の片方

    駅前の暗い夜道を歩く。霧雨が降っていて視界が悪く、ねっとりとした湿気が世界中をゼリーの中に閉じ込めたかのよう。変則的な形の横断歩道。アスファルトの上の白線が辛うじて視認できる。渡ろうとしてそれが横断歩道でなかったことに気づく。信号が変わって車両が次々に雪崩込んできた。私は中洲に一人取り残される。混雑した道で、ブレーキランプの赤い色が整列して滲んでいる。長時間露出した写真のように、赤い光は時間とともに赤い線となり、意識の上に傷をつけていく。 私は靴を探していた。こんな雨の日に履くためにぴったりの靴があったはずだ。手元にあったのは、黒い合成繊維でできた軽量なバレーシューズ。これでは役に立たない。小…

  • 旧い試験紙

    水辺を横切る翼の影湧き出でる形有る生命を弔っていく涼み行く魂のリファレンスこの世界に色を添える 水のなかに揺れ続ける想いはどこまでも薄められた結果最新機器により検出不能どこまでも拡められた結果色は色を見失った 旧い試験紙が示す永遠より巨きな真実がかろうじて生命の在処を指している紙ひとえの重み 誰かの嗤い声が永遠すら覆い隠してもこの恐怖がどれだけ癒されなくとも誰にも聴こえない囁きを聴く空耳でも構わない 蒼い宇宙が私を呼ぶ私のなかの空拍が鳴る

  • 筆跡

    筆跡というものに宿る肉体性に、目を見張ることがある。精神性は文字の外観よりもその内容に宿るけれど、筆跡は殆どその人の体の延長に思える。筆跡には、精神性とは違う次元の、粗雑でありながら精密な肉体の豊かさが織り込まれている。自分では知らない自分まで出てしまう。自分の大嫌いな自分も出てしまう。意識するものでなく、意図して作り上げたものでなく、本人のものでありながら、本人にはどうにも変えることができない。それを愛するなら宝のようなものであり、それを嫌うなら呪いのようなものになる。 私にとっても、それは呪いであり宝でもある。その間を揺れつづける。大嫌いだけれど、大好きでもある。それでいいんだ。無理に好き…

  • 宇宙の朝

    階段を、目を閉じて上っていく。闇の中を手探りで、ゆっくりと一段ずつを噛みしめる。上り切り、目を開くと、自分の部屋が整然とした美しいものに変わっていた。ベッドの向きが違い、鮮やかなフクシアピンク色でペイズリーのような模様が描かれた、真新しいカバーがかかっている。静謐とした空気の中、大きな花瓶に生けられた緑の葉たちが穏やかに呼吸していた。小さな白い花が一輪、葉陰に隠れて恥じらっているようだった。 他に余分なものは何一つなく、うんざりしていた参考書の類も何もなく、脱ぎ捨てた昨日の服もなかった。残った一合ほどの米が入った袋を小さく折りたたんだものが鞄に入っていたはずなのに、それも鞄ごと消えていた。 こ…

  • 暗い小部屋

    憂鬱な気分というものは「感情」ではなく憂鬱な思考が積み重なった後の味わいなだけ憂鬱さは「思考」でしかないんだ その思考を手放そうと躍起になると手放せないという現実を責め始める苦しみの上塗りにしかならない そんな思考にかかずらわることを一旦やめてすべてを放り出して心の内側の暗闇に 深く深く潜っていく 暗い あたたかい小部屋を見つけるその中に避難する部屋の外で何が吹き荒れていようと関係ない思考は遥か上方をかすめて流れていくだけ私はその部屋に守られて穏やかに微睡むことができる 雑念が湧いてきたら一つ一つ小舟に乗せて手放すイメージをするとか数を数えながら呼吸をするとか心が乱れているときに 思考が盛んに…

  • 核融合のような

    『渇き』 2009年のパク・チャヌク監督作品を観た。気持ち悪い!どうしようもなくグロテスクだし気色悪い。もう吐きそう。なのに、何なんだろう、圧倒的な力で揺さぶられる。衝動が地核の奥深くから轟いてきて、精神を粉々に砕かれるようで。 映像のどの瞬間にもどの隅々にも、どれほど拡大しても電子顕微鏡で見たとしても、フィルムの毛細血管に監督の血が流れ、監督のDNAが埋め込まれている。映像が完全に監督の肉体と化している。 この映画はアートそのもの。日々の社会生活の垢が溜まり、白く体を覆い尽くしミイラのような外見になっている自分、コンクリートのような灰色にうずもれて息絶え絶えになっている感性──印字された新聞…

  • 点描画

    寒い夜に暖かな布団にくるまって眠れること無事に朝を迎えられることそれだけでも奇跡のようなことそれ以上を求めるのは強欲なのではないだろうかともう一度噛み締めてみる 人間は 食べては便を出し食べては歯を磨き汚れては風呂に入り部屋を散らかしては掃除をしなんて馬鹿なんだろうといつも思うそもそも 生きるってくだらないことの繰り返したいそうな意義なんてなくていい 日々を点として見れば価値なんてないその点を遠くの遠くから神の視点で見つめたときに初めて描かれているものが見えてくる点描画のように その価値が目前に見えなくても当然今日も私はひとつの点を描き足しくだらない一日を過ごせばいい

  • ブルージーな煮豆

    夢の中で、こんなドラマを観た。国内の少し古いドラマのテイストだった。主人公の若い女性が、書店でベストセラーを見繕う。彼女は自分の少々風変わりな個性を封印して、社会に認められる存在になろうと思い詰めている。いま世間で流行っているもの、世間が価値あるとするものが彼女にとっての価値あるものだった。売れている本を手に取り、ページをめくる。チャート式の図解のようなページばかりで、本文はわずか、キャッチーな見出し文が踊り、一般的な読者層にどこまでも媚びた作りだった。 直情的な彼女は突然、何もかもが馬鹿馬鹿しくなる。本は世間に媚び、自分も世間に媚びている。世間は一体何に媚びるのか。世間も世間に媚びているだけ…

  • 他人のお喋り

    思考は 自分自身のものじゃない どんなに自分が考えているように思えても自分のものじゃない社会の中で生きるうち 外側から植え付けられた方法論 「他人のお喋り」を聞いているようなもの 参考にすらならないことがほとんど振り回されないで

  • 黄金の部屋

    陽だまりで、愛犬のネルと戯れていた。南の空低く太陽が横切り、ガラス越しに長い影が伸びている。板張りの床の上、影が踊るのを見つめる。ポメラニアンのネルはベージュ色の毛色だったけれど、陽光に細くふわふわした毛の一本一本が煌めいて、黄金でできた極細の糸のようだった。 黒曜石のような瞳が見つめている。マミー、何か忘れていませんか? そんな訴えが意識に直接聞こえてくる。そうだった、ご飯を出すのを長い間忘れていた。どれほど長い間忘れていたんだろう。納戸部屋に入り、奥の方からドッグフードの袋を引っ張り出した。かつてネルが愛用していた、懐かしいステンレスの器にフードを出してやると、喜んで顔を突っ込んだ。夢中で…

  • 壮大な人体実験

    山崎製パンが競合他社を告発するような声明を出したことがあった。他社はイーストフードなど添加物を不使用と謳いながら、実際は原材料表記をしなくても済むような他の方法で添加物を加え、事実上はイーストフードを加えているのと同じようなものであるのに、無添加と大々的に表記して売り出すのは顧客を騙しているのと同じだ──というような内容だった。 それを聞いて、他の人はどう感じたかわからないけれど、私はなおさらヤマザキの姿勢に疑問を持った。他社は確かに不使用と謳いながらうまくすり抜ける術を見つけて、イーストフードと明記しなくていい方法を編み出したのかもしれないし、それは確かに良いことではないと思う。けれど、顧客…

  • 深夜の壁掛け時計とブルーベリー

    突然、母に起こされる。3時半だよ! 遠慮のない大声に目が醒める。幼い子供のような、思慮の痕跡が全く感じられない率直な声だった。母からそんな声が聞かれることは初めてのような気がした。深夜の3時半。外界は静かな闇に覆われている。引き替えに部屋の中は、母の賑やか過ぎる振る舞いで、いつものLEDライトの光量が二割増しに感じられた。冬の夜中に窓をガラガラと開け、縁側へと出て、なぜか母は爪を切り始めた。突然ケタケタと笑い出す。正気を失ってしまったとしか思えない。私は表情を失ったままで凍りつき、母の様子をただ見つめていることしかできなかった。 壁の時計を見る。本当に3時30分を指しているだろうか。これはきっ…

  • 本物のスピリチュアル

    夢見がちにふわふわした理想を追い醜いものから目を逸らし 無かったことにしてアセンション後の美しい世界を待ち侘びるのがスピリチュアルなんじゃなくて 現実の泥にまみれて闇を直視しながら同じだけの光を心に留めることそれが本当のスピリチュアルな在り方なのだと思う そう思ってはいてもふわふわした世界に逃げ隠れたくなるそれもまた ありのまま認めよう

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