chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
arrow_drop_down
  • トンネル

    男はただひたすらに歩いていた。いったいどれだけの時間歩いているのだろう。彼は時計さえ持っていないが、おそらくは千年ほどと感じているのかもしれないし、万年と感じているのかもしれない。しかし、彼が望む場所へたどり着けないことを私は知っている。 * * * 私はただひたすらに歩いている。いったいどれだけの時間歩いてきたのだろう。私は時計さえ持っていないが、おそらくは千年か、いや万年は歩いている。しかし、もう少しであの光の見える場所にたどり着けることを私は確信している。 * * * 1984年夏、医者であるグレイは目の前の男に言った。 「あなたはもう長くありません。末期の肺がんです。」 男はその言葉を…

  • 腎不全

    私は昔から人に馴染むことができなかった。高校ではいつも教室の片隅を陣取り、早く今日が終わらないかと祈っていた。スカートを短くしてみても、髪型を変えてみても、話しかけてくる人はなく、クラスのみんなにとっては、私がいつも一人でいることなど全く無関係であることを実感した。ずいぶん前に、目立たない女子が話しかけてきたが、そこには同情の色があり、私は彼女を冷たく突き放した。先生だって同類だ。英語の授業では毎回、グループワークのためクラスを四人一組みのグループに分けなければいけない。初めは、好きな人と組んでも良かったが、毎回私が余ることに気づいた先生は、次の授業から席を使った分け方に変更した。今のような昼…

  • トーラス

    彼は大学で数学を学んでいる。やけに長い名前の分野を勉強しているらしい。非線形楕円なんとか。何が何だか僕には全くわからない。 「佐山はどうして数学なんか勉強してんのさ?もっと面白いことあるだろ、他に。」 彼にそう訊ねる。すると彼は、 「だって知ることに勝る喜びはないし、考えることに勝る暇つぶしもないでしょ?だから数学がいいんだよ。まず、さっき、知ることに勝る喜びはないって言ったけど、例えば松葉が恋人と付き合ったと仮定するね。その時、あなたは彼女のことを…」 佐山は一度話し出すと長い。僕は、彼の話を適当に流しながら、時折、相槌を打つための単語を拾いながら歩いていた。横に流れる小川を眺め、僕は僕で、…

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、モンブランさんをフォローしませんか?

ハンドル名
モンブランさん
ブログタイトル
モンブラン
フォロー
モンブラン

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用