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組織横断統括部門 機械システム設計推進本部 https://mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com/

元有機化学理論実験系で人工衛星の設計・開発・管理をしていた人が、人工衛星の機械システムを思い出しながら、横道に反れたりして、それっぽい知識を残していく

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2019/11/14

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  • モーダルサーベイと呼ばれる共振周波数/共振点探査/振動応答検査のための試験と分析の基礎

    モーダルサーベイ試験 モーダルサーベイ試験は、試験する物体に対して低レベルでの加速度を振動試験機で負荷させ、得られ加速度応答データから物体の固有値周波数(振動数)や物体の振動による変形(振動モード)を得る試験のことをいいます。全機振動試験/共振点探査/振動応答検査ともいわれます。 試験自体はランダム振動試験や正弦波振動試験の低加速度レベルで試験されます。 モーダルサーベイ試験 モーダルサーベイ試験と宇宙機開発の関係 モーダルサーベイ試験の取得周波数範囲 宇宙機でのモーダルサーベイ試験のデータ取得の目的 モーダルサーベイ試験は正弦波振動試験かランダム振動試験か 共振点探査の共振とモード解析 設計…

  • 宇宙業界用語「宇宙交通管理(STM)」について

    宇宙交通管理こと、STM:Space Traffic Managementとは、宇宙機の打上げ、軌道投入、軌道変更、軌道離脱、地上への落下までの活動を管理することをいいます。 [目次] 宇宙空間の交通事情 宇宙交通管理の簡単な経緯 日本の宇宙交通管理 今後の宇宙機同士の接触事故 参考サイト 宇宙空間の交通事情 宇宙空間の交通は地上と比べると比較的自由です。 信号がなければ、交差点もない、看板や標識もなく、速度制限もありません。 方向転換は難しいですが、地上のように、直進、後退、左折、右折だけではなく、上方向や下方向も可能です。 mechanical-systems-sharing-ph.hat…

  • 日本の森林火災/山火事と宇宙からの監視網

    海外では森林火災に対して人工衛星によって宇宙空間から取得した画像データを活用して、早期発見システムを構築しています。 日本ではあまり表に出ない情報なのか、そもそもの森林火災件数が少ないためなのか、森林火災に対しての人工衛星による監視システムを構築しているのか、少し調べてみました。 日本の森林と山火事 農林水産省によると、日本の国土の67%が森林で、約2500万haが森林面積と言われています。 もっとも森林が少ない都道府県は大阪府で5.7万haで、2位が東京都の7.9万haです。 日本での山火事は、2016年から2020年の消防庁のデータによると平均して年間1300件発生しています。 おおよそ6…

  • 宇宙インフラとは?

    宇宙インフラとは 宇宙インフラとは、地上を離れて宇宙という空間を使用した経済や社会を支える基盤となるサービスのことをいいます。 宇宙空間より得られた情報を使用するもの、宇宙空間より情報を生成するもの、宇宙空間を中継して使用するものがあります。 多くの人が日常的に使用しているものを上げるのであれば、天気予報。 地上遥か3万6000kmの宇宙空間に整備されている宇宙機である静止気象衛星(ひまわり)より得られた情報を利用しています。 気象衛星による日本の気象観測は1970年代後半より始まり40年以上続けられています。 自身の現在位置を知ることができる、GPS(Global Positioning S…

  • H3ロケット試験機2号機での相乗りの可能性が出てきた件

    H3ロケット試験機1号機の打上げが2023年3月7日の行われ、失敗した。 2023年度中ごろに打ち上げ予定(2022年12月23日の宇宙基本計画工程表)であった試験機2号機を次の打上げのために準備している。 H3ロケットは政府関連ミッションを達成するための宇宙空間への輸送システムであり基幹ロケットと呼ばれている。 この基幹ロケットの開発を完了させるべく、試験機1号機の原因究明と試験機2号機の打上げ構成を検討している最中である。 ロケットに関する検討状況は、他の人に任せるとして、今回は問題となっている試験機2号機に小型衛星あるいは超小型衛星を搭載して打ち上げるための検討が始まっている。 試験機2…

  • アンテナやコンテナなどの工作物の風荷重、風圧、風速による設計検討のヒント【構造設計者向け】

    目次 工作物の風荷重は規制がない? 工作物とは 風荷重の設計検討 設計風圧(N):W ピーク風力係数:Cr ピーク内圧係数:Cpi ピーク外圧係数:Cpe 設計用速度圧(N/m2):q 設計用基準風速:V0 平均風速の高さ方向の分布を示す係数:Er ガスト影響係数:Gf 用途係数、重要度係数:I 工作物の設置荷重 機器の荷重:W0 設計風圧Wと機器の荷重W0の比較と検討 最後に 参考情報 工作物の風荷重は規制がない? 風荷重(かぜかじゅう)とは、台風や竜巻、強風にて物体に受ける力のことを指します。 建築物では風荷重の設計が求められますが、工作物には規制(建築基準法による構造計算)がなく、どのよ…

  • 信頼性と品質保証は違う、最近影薄めな信頼性と宇宙機

    [目次] 信頼と信頼性 信頼性と品質保証 参考サイト 宇宙業界は高信頼性であるといわれています。 ただ、高信頼性といっても決して特殊な設計方法をしているのではなく、自動車や家電、パソコンと同じ設計方法を取っています。 宇宙業界で有名なロケットは千を超える部品で構成され、宇宙機(人工衛星、探査機)を地球外に安全に運び出すという機能を持っています。 ロケットに搭載される宇宙機は、数週間から数年も休みなく稼働します。 開発方法は同じですが明確な違いがあります。 それは動き始めたら人間によるメンテナンスができないという点です。 地球からプログラムの書き換えはできるのですが、物理的なメンテナンスがほとん…

  • 宇宙開発の信頼性の設計では何を確認しているのか?

    宇宙業界は高信頼性で成り立っているといわれています。 宇宙業界の高信頼性といわれても特殊な手法を取っているわけではありません。 もちろん、他の製品と比べてグレードが変わることはありますが、手法そのものは高い技術を要するものではありません。 JAXAにて公開されてるJAXA共通技術文書より、信頼性の設計項目について抜粋してみます [目次] 単一故障防止設計 宇宙機の冗長系の設計 参考 宇宙機の信頼性設計で重要度が高いのは、(1)設計余裕の確保及び故障リスクの最小化(単一故障への配慮)、(2)故障許容設計(致命的な状態に至らないようにするために、適切な冗長化、故障の伝搬・波及防止などの対策)の2つ…

  • H3ロケットの点火信号が自動停止し打上げが中止 Lessons Learned

    H3ロケットの点火信号が自動停止し打上げが中止 Lessons Learnedとは、組織(に関わらないですが)において業務を遂行した上で得られた教訓(学んだ教訓)のことを指しています。 今回はH3ロケットの試験機が、打上げ直前までに打上げシーケンスが進んだにもかかわらず、ロケットに点火せずに打ち上げられなかった件についてまとめました。 H3ロケットはその後打ち上げられましたが、搭載していた宇宙機を分離するに至らず原因究明がされています。 本来ならば、今回の処置を実施しロケットが打ち上げられた後に、今回の事象について同じ不具合が発生しないような是正処理(同様の問題の再発防止対策)が行われます。 …

  • ロケットの打上げ延期の時の人工衛星の対応は?

    ロケットの打上げ延期の時の宇宙機(人工衛星など)の対応とは いくつかの場合分けになるとは思いますが、打上げ直前のカウントダウンフェーズの場合、次のようになります。 フェアリングに搭載されたまま、次の打ち上げまで保管 フェアリングから外して、衛星分離機構に結合したまま、次の打ち上げまで保管 フェアリングから外して、衛星分離機構から外して保管 宇宙機由来のトラブルでなければ、基本、衛星分離機構から外すことはありません。 可能性として、ロケット側の致命的なトラブルで、打上げが絶望的となったら外すかもしれません。 そして、これらはリスク回避を基準に判断されます。 フェアリングに搭載されたままのリスクと…

  • 衛星搭載型2波長赤外線センサの紹介

    2波長赤外線センサとは? 赤外線センサといっていますが、いわゆる赤外線カメラのことです。 赤外線は、人間の目に合わせた可視領域外にある光の波長域のことで、可視領域では識別しにくい物体や現象を観測するために用います。 2波長という、それぞれ別の光の波長域を観測することで、通常では見逃してしまったり、疑似的に模造した物体を識別し、本物を当てることができます。 赤外線を用いる技術は多くあり、特に熱を観測できることから熱源探知機としても利用されています。 兵器の視点でいうと、赤外線はミサイルの推進剤が燃焼する熱やCO2などの炭素ガスを検知することができます。通常の可視光では単なる蒸気のような白い雲のよ…

  • フル3Dプリントによる人工衛星はすでに打ち上げられている

    宇宙業界では3Dプリントが注目されています。 注目されているといっても、2022年はややニュース記事としては少なくなっている印象です。 宇宙開発には試験や検証で時間が掛かります。 特に初号機の場合は、小型衛星の場合でも2年以上の期間で開発されます。 逆に、2022年にニュース記事が少なかったのはちょうど検証の期間であった可能性もあります。 今回は人工衛星開発における3Dプリントの現状をまとめていきます。 [目次] すでにフル3Dプリンタ衛星が打ち上げられている 人工衛星の3Dプリンタ事情 その他の情報 参考サイト すでにフル3Dプリンタ衛星が打ち上げられている 2022年にオーストラリアのFl…

  • 宇宙産業の規模を他の業界ランキングと比較【2023年】

    宇宙業界が盛り上がっていると言われることもあり、世界規模では2030年代後半には100兆円の市場規模と言われています。 日本政府目標としては、2030年代までに2倍を目標としています。 [目次] 宇宙業界の規模 日本の業界規模の中での宇宙産業 宇宙業界の規模がそれほど大きくない理由 参考サイト 宇宙業界の規模 そんな宇宙業界ですが、業界内でも市場が7つに分かれています。 ①宇宙機器産業 約3500億円 ②宇宙利用サービス産業 約7700億円 ③宇宙関連民生機器産業 約1億4500億円 ④ユーザー産業 測位分野 約3.2兆円 ⑤ユーザー産業 通信・放送 約2.2兆円 ⑥ユーザー産業 リモートセン…

  • 【エンジニア、技術面における】トレードオフについて

    設計におけるトレードオフの考え方はいくつか存在しています。 今回は比較的に宇宙業界で使用されているトレードオフと称している手法は、いくつか書籍やネットの情報と差異があったので紹介します。 [目次] トレードオフとは トレードオフの検討項目例 最近の宇宙のニュースとトレードオフ:イプシロン6号機 技術面におけるトレードオフのまとめ 参考サイト トレードオフとは トレードオフ(trade-off)は、製品開発では複数の設計アイディアや搭載機器を選択する際に、要求事項に合致することは前提として、選択に関わる要素を洗い出し、要素の優先事項を明確にして適切なリスクを選択する手法です。 新規の製品開発設計…

  • 【就活生のための】宇宙開発業界の業界研究・宇宙就活

    宇宙業界とは 宇宙業界、あるいは宇宙開発ビジネスという括りで考えると、宇宙関連機器の発注者、製造者、運送者、運用者、分析者、利用者に分けられます。 宇宙業界は、宇宙開発初期から延々と関わり続けてきたオールドスペースと、2010年代後半より始まったニュースペースに2つに分けられることが多いです。 [目次] 宇宙業界とは オールドスペース(OLDSPACE) ニュースペース(NEWSPACE) オールドスペースとニュースペースの違い 業界の市場 宇宙業界の魅力 宇宙就活サイト 宇宙就活 宇宙関連事業 マイナビ JAXA新卒採用サイト 転職サイトから実情を調べる 文系で宇宙関係の就職が可能なのか オ…

  • 「マツコの知らない世界」でみる「宇宙の世界」

    「マツコの知らない世界」でみる「宇宙の世界」 明日よる8時57分#マツコの知らない世界 【宇宙の世界】ゲストは・・・▼宇宙についてぶっちゃけにきた宇宙飛行士🚀野口 聡一さん @Astro_Soichi宇宙に3回行った野口さんが気づいた宇宙の真実とは…さらにメタバースで宇宙へ!お楽しみに💖 pic.twitter.com/gsGz5R8RA6 — マツコの知らない世界 1/3(火)21:00〜🎍新春2時間SP🗻 (@tbsmatsukosekai) 2022年12月5日 youtu.be https://youtu.be/t9X5wHmgJEM?t=9 2022年6月にJAXAを退職した宇宙飛行…

  • 宇宙にかかわるテラヘルツ波とは

    テラヘルツ波とは テラヘルツ波は、100GHzから10THzの間の周波数のことで、テラヘルツ帯であることからテラヘルツ周波数あるいはテラヘルツと呼ばれています。 3mmから30μmの波長レンジを有し電磁波を示しています。 周波数帯としては電磁波(電波)と光の間の周波数帯と言われています。 放射線のような物体にぶつかった際に、持っているエネルギーが原子や分子に加わり電子をはじくなどのイオン化とも呼ばれる電離作用を持たず、生物学的に無害であると考えられています。 リモートセンシングによる観測 あらゆる物質は、それぞれ固有の周波数の電磁波を放射します。 外部から電磁波を受けると固有の周波数帯を吸収し…

  • インドの宇宙開発 衛星ナビゲーションシステムNaVIC

    インドのNASA、JAXA版ともいえるインド宇宙研究機関(ISRO)があります。 インドは1975年にISROが初めて人工衛星を打ち上げて以来、通信衛星、地球観測衛星、航法衛星、軍事衛星をはじめ、何十機もの宇宙機を打ち上げています。 世界的にみると、アメリカ、ロシア、中国、日本、欧州に並ぶ宇宙開発国の一つです。 1975年、インドの初の人工衛星はロシアのロケットによって打ち上げられました。 衛星自体は、電力系統の故障によって5日後には通信が途絶えてしまいましたが、その後も継続的に宇宙機を開発し続けています。 また、1980年代後半からロケットを開発し打ち上げるようになり、1993年の初回打上げ…

  • 地球周回衛星の周回数と回帰日数について

    地球周回衛星の周回数とは、地球周回衛星は1日に地球を何周も回っており、1日に何周回っているかを示したものです。 地球周回衛星の多くは地球観測衛星であることが多く、日本の組織が保有している衛星では、JAXAのALOS-2、ALOS、アクセルスペースのGRUS、synspectiveのStriX-1、キヤノン電子のCE-SAT、ソニーが打上げ予定のSTAR SPHEREが該当し、いずれも地球観測衛星です。 アメリカのSpaceXの通信衛星であるStarlinkも地球周回衛星になります。 周回数 周回数(N)は、地球の軌道周期24時間(=86400sec)に対し人工衛星が地球を1周するのに要する時間…

  • 月のFACT/事実

    月は地球唯一の天然の衛星です。 月は地球と同期して自転しているため、常に同じ面を地球に向けています。 ただし、地球から月を観測すると、見かけ上、秤動(ひょうどう)と呼ばれるゆっくりとした振動運動が見られます。 そのため、月の半分ではなく、約59%程度を観測することができます。 1959年にソビエト連邦の月面着陸計画によって無人のミッションが行われました。 その10年後の1969年にアメリカ合衆国のアポロ11号が最初の有人着陸となります。 最初に月面に踏み入れたのはアメリカ人のニール・アームストロングで、1972年のアポロ17号のジーン・サーナンが最後に歩いています。 その後、月には無人機のみの…

  • ロケット打上げ環境がある施設での地上支援装置(GSE)の設計に必要な環境要素 Lessons Learned

    ジョン・F・ケネディ宇宙センター(John F. Kennedy Space Center, KSC)にはロケット発射場があります。 過去、スペースシャトルと呼ばれる宇宙機が現役であった時にもケネディ宇宙センターで製造され、打ち上げられていました。 今回は、ロケット打上げ環境がある施設での地上支援装置並びに施設内の設備で考慮すべき環境条件をまとめました。 目次 射場設備の条件 設備に対する要求仕様 機能試験 施設設備の試験項目の前提条件 特性試験 記録文書 試験方法 電磁妨害 低温 高温 熱衝撃 音響 振動 衝撃 温度 耐水 着氷及び凍結 光照射/太陽光近似日射 真菌 塩霧 砂とほこり 爆発 …

  • 「Lessons learned」とは? プロジェクトマネジメント用語、宇宙業界用語

    Lessons Learnedとは、プロジェクトを実施する中で得られた知識や気づきのことです。知識や気づきには、失敗や不具合を起こした時の対処方法だけではなく、何も失敗や不具合を起こさずに対応した内容も含まれます。また、プロジェクトマネジメントの概念の一つです。 日本語では「学んだ教訓」と称することが多いのですが、とても語呂が悪い表現となっています。個人的には「得られた教訓」の方が良いとは思っています。一般には、教訓やプロジェクト教訓とすることがあります。 表現としては、Lessons learned以外にレッスンズ・ラーンドとする場合があります。 このブログに書かれているLessons Le…

  • システムズエンジニアリングが失敗していると思った時にチラ見する記事

    システムズエンジニアリングを導入してみたがどうも失敗している。 なぜか上手くいかない。 一部の人に負担が偏って効果が見えない。 そんな声とともにやがて過度に増える負担と効果から部分的に効果を見せていても、社内に広まることは無くシステムズエンジニアリングから撤退していっているのではないでしょうか。 最近はMBSE(Model-based systems engineering)が広まるとともに、SysML言語を利用したツールにより一見手軽に扱えるようになったように思えるかもしれませんが、それでも、上記のような意見とともに、うまく扱えず失敗、あるいは失敗と言えずとも効果があったとは言えない状況で終…

  • 航空宇宙光学システムの超精密ダイヤモンド切削・研磨技術 Lessons Learned

    ダイヤモンド切削とは、ダイヤモンド工具を利用して物体を削る技術のことを指します。 ダイヤモンドは炭素により構成される構造であることから高い熱伝導率を持ち、削る対象に対して熱を拡散させながら切削することができます。 切削により発生する物体間の摩擦による熱は、切削対象に熱を蓄積させ、変形させたり、劣化させる可能性があります。 特に高い精度を求められる部品に対しては、切削による熱を調整するために、切削速度を調整することもあります。 ダイヤモンド工具を利用することで、他の工具では歪んでしまう対象も、比較的歪みにくく切削することができるため、有効活用されています。 人工衛星や宇宙探査機、宇宙望遠鏡は、非…

  • 【基礎から知りたい】宇宙の技術は役に立つ!宇宙技術のスピンオフその3

    日本ではアメリカに比べてコストを抑えている方(特に宇宙探査)だが、宇宙開発には多くのコストがかかります。 現在でもそう考えられているのかわかりませんが、宇宙の研究開発に科学的経済的な価値があるのか多くの疑問を投げかけられた時がありました。 今回は宇宙業界で生まれて、現在一般に広まっている技術(スピンオフ)についてまとめました。 これは日本でも現在多くの宇宙関連が起業しているが、将来宇宙業界ではなく技術的に別の分野でも通用する新しい技術を手にする可能性があるとも言えます。 心臓の健康を監視する画像処理ソフトウェア NASAのカルフォルニア州にあるジェット推進研究所の研究員によって、火星探査機オー…

  • 製品と市場シェアに関わるランチェスター理論

    ランチェスターシェア理論、クープマンモデル (クープマンの目標値) マーケティング用語で市場において何%シェアを獲得していれば、市場において安定であるか、どの市場に対して影響があるかをアメリカの数学者B.O.クープマンのランチェスターの戦略方程式を日本の田岡信夫と斧田大公望により算出した指標です。 やみくもにTOPシェアを目指すのではなく、現在の組織規模や市場規模に応じた戦略目標として利用されることが多いです。 ランチェスターシェア理論、クープマンモデル (クープマンの目標値) 独占的市場シェア:73.9% 安定的トップシェア:41.7% 市場影響シェア:26.1% 並列的競争シェア:19.3…

  • 【熱設計者向け】熱伝達率を求めるためのニュートン冷却の法則

    熱解析での入力要素値:熱伝達率 目次 熱解析での入力要素値:熱伝達率 目次 ニュートン冷却の法則から熱伝達率を求める 試験のコンフィギュレーションを考えてみる データ取得後に、ニュートン冷却保存の法則を利用して算出する 参照サイト 式だけ知りたい方は最後だけで問題ないです。 熱シミュレーション(熱解析)の入力要素の中に熱伝達率(Heat transfer coefficient)という係数が存在します。 固体や流体、気体といった相や物資間での熱の伝わりやすさを示す値です。 単純な熱移動だけではなく、時間平均でも考えるため、算出するには時間を考慮に入れることが多い。 単位はW/(m2·K)。単位…

  • 基本宇宙計画の重点事項(2022年5月版)の内容を年表で書き出してみた

    基本宇宙計画とは 基本宇宙計画は、宇宙の大きな可能性と、現在我が国が直面している厳しい状況を認識し、今後20年を見据えた10年間の宇宙政策の基本方針を以下のとおり定め、官民の連携を図りつつ、予算を含む必要な資源を十分に確保し、これを効果的かつ効率的に活用して、政府を挙げて宇宙政策を強化していくものです。 今回参照するのは、令和2年6月30日閣議決定された基本宇宙計画を元に策定された、令和3年12月28日宇宙開発戦略本部決定された基本宇宙計画工程表(令和3年度改定)における、令和4年5月20日宇宙開発戦略本部にて示された宇宙基本計画工程表改訂に向けた重要事項を元にまとめました。 宇宙基本計画工程…

  • 地球軌道上の熱環境 Lessons Learned

    地球軌道上の熱環境 地球軌道上の熱環境というのは、人工衛星の熱解析やデブリ落下解析で使用されます。 宇宙機を製造するにあたり、どんな熱環境を意識する必要があるのかといったことは他に譲るとして、今回は熱解析で利用されるパラメータについてまとまった情報を紹介します。 ドライビングイベント 地球の軌道の熱環境を正確に予測するには、次の要素を考える必要があります。 公差のある季節変動 太陽 アルベド:天体に入射する光に対する反射光の比率 地球の放射エネルギー 太陽定数 まずは太陽定数を考えます。 太陽の定数とは何のことだと思うかもしれませんが、単位面積当たりの単位時間のエネルギー量を示しています。 公…

  • ワイヤーロープアイソレーターの特性:解析モデルでの減衰と剛性の使用 Lessons Learned

    ワイヤーロープアイソレーターの特性:解析モデルでの減衰と剛性の使用 Lessons Learnedとは、組織(に関わらないですが)において業務を遂行した上で得られた教訓(学んだ教訓)のことを指しています。 今回はワイヤーロープアイソレータについてです。 ワイヤーロープアイソレーターとは 防振製品の一つです。 ゴムやばねと同様の性質を利用して振動や衝撃のエネルギーを吸収する製品となります。ゴムやばねはサイズ感の違いがあれど、構造的には同じものです。 伸縮性のある分子構造を持つゴム、金属の伸展性とらせん構造を持つばねは、それぞれ伸縮することで振動や衝撃のエネルギーを熱や運動エネルギーに換えています…

  • システムズエンジニアリングを活用する前にチラ見する記事

    システムズエンジニアリングはNASAの宇宙開発で活用されてきました。 ゆえに、システムズエンジニアリングとは宇宙開発に対して実施するものであるという誤解をしている人がいるかもしれないがそうではありません。 一方でMBSE(Model-based systems engineering)が自動車開発で使われ、広がり始めたため、システムズエンジニアリングという言葉自体が広まっています。 システムズエンジニアリングを活用するにはどんな情報から考えた方がいいのか、宇宙機開発や自動車開発以外にどのように応用していけばいいのか、簡単にまとめてみました。 必要な情報①製品の開発から使うまでの全体の流れを整理…

  • ハーネスが損傷する機械的理由 Lessons Learned

    ハーネスが損傷する機械的理由 Lessons Learnedとは、組織(に関わらないですが)において業務を遂行した上で得られた教訓(学んだ教訓)のことを指しています。 今回はハーネスが損傷する理由です。 抜粋した資料の情報が少ないため、「終わりに」が本題ですね。 ハーネス(ケーブル)は人間でいうところの神経であり、血管です。 神経や血管が切れれば人体に致命的なダメージを受けてしまいます。 当たり前で、認識が抜けやすいのがハーネスです。 この認識が抜けた結果が今回の事例です。 発生状況 電源機器の電気的誤動作、さらにアースへの短絡が発生した結果、メインエンジンとバーニアエンジンのシャットダウンが…

  • 【機械設計者向け】初心者から一歩先へ!宇宙機の振動音響試験の考え方 Lessons Learned

    宇宙開発は難しいことをしていると思っていませんか? 一見難しいように思えますが、理由を知れば、開発者が必要なことをシンプル化して試験をしています。 Lessons Learnedでは宇宙業界という技術力の高いエンジニアである人たちでも盲点となり起きてしまった失敗事例や工夫してうまくいった成功事例を紹介し、宇宙業界関係なく他の製品開発や運用にも応用できそうなものを紹介していきます。 さて、今回記事では機械設計の視点で、どのように開発品に対して機械環境に対する検証を行い、品質を保証していくのかをまとめています。 一言でいうと、音響試験やランダム振動試験の目的ですね。 正弦波振動試験とはまた目的が変…

  • アマゾンの最強の働き方の自分用まとめ 年間計画及び会議、6ページ資料

    「アマゾンの最強の働き方」のまとめを書き出してみました。 アマゾンの最強の働き方 Working Backwards【電子書籍】[ コリン・ブライアー ]価格:2178円 (2022/5/8時点) 楽天で購入 全ての土台となる「年間計画」を考える 全社的に目標を打ち出されたのちに、部門や課、係といった数人規模のチームの自律性を担保するために、各チームの目標を全社の目標と整合させる詳細な目標設計のプロセスが存在します。 目標は1~2週間程度のやっつけではなく、1~2カ月の時間をかけて検討していきます。 全社一斉にこのプロセスに取り掛かり、会社全体の「期待」や「目標」を設定したのちに、各グループは…

  • ロシアの撤退で国際宇宙ステーションに何が起こっていくのか

    credit:NASA https://images.nasa.gov/details-9802668 あまり時事ネタはやらないのですが、浮かんでしまったのでまとめました。 2022年4月30日、以前より、国際宇宙ステーション(ISS)の撤退を表明していたロシアの国営宇宙機関のROSCOSMOS(ロスコスモス)のCEOであるドミトリー・オレゴヴィチ・ロゴージン(ロシアの元副首相)がロシアの国営テレビ(日本でいうNHK)で、1年間の契約義務を果たしたのちに撤退することを話しました。 本当に撤退するかはロシア政府の決定が必要になるため、まだどう転ぶかはわかりません。 この国際宇宙ステーションは、2…

  • 宇宙エンジニアの「失敗する機会」を許容する文化 Lessons Learned

    エンジニアに「失敗する機会」を提供する 宇宙業界は失敗してはいけない文化だと聞いたことはありませんか? 失敗しないように試行錯誤を繰り返すのは事実ですが、それでも失敗はおきます。 Lessons Learnedシリーズでは宇宙業界という技術力の高いエンジニアである人たちでも盲点となり起きてしまった事例を紹介し、宇宙業界関係なく他の製品開発や運用にも応用できそうなものを紹介していきます。 さて、今回記事では実際に開発視点ではなく、現場から離れて管理者視点となったときにどのように宇宙開発のチームをまとめ上げていけば良いかのヒントを示したいと思います。 組織の文化として、失敗したとしても素早く共有で…

  • 代替の経済性(economies of substitution):再設計するコストは新規のシステムを構築するコストを上回る

    代替の経済性(economies of substitution) 代替の経済性(economies of substitution)とは、最初から再利用や交換を考えて設計した製品の開発コストは、製品を再設計するよりコストが低いことを示す概念です。 生産までに時間がかかる製品 人工衛星は、いま世の中に広まっている製品に比べて、一部の例外であるスペースXのスターリンク衛星やOneWebの人工衛星を除いて、それほど製造されてもいません。 人工衛星としていますが、一般に生産までの時間が短縮できない製品やユーザー数が圧倒的に少ない製品と読み替えても問題ありません。 圧倒的に製造数が足りないにもかかわら…

  • 民生品を宇宙機に利用した際に寸法が許容できずに発覚した不具合事例 Lessons Learned、失敗学、事故事例

    民生品を推奨して、人工衛星の価格を下げるというのが小型衛星開発の設計の流れがあります。 しかし、民生品を利用するということはいくつかのリスクを含んでいます。 少し時間がたっている事例ではありますが、民生品を使用した際に発生しうるリスクを簡単に紹介します。 概要 現在国際宇宙ステーションに搭載されているISERV(ISS SERVIR Environmental Research and Visualization System)という、災害監視や地球観測データ取得を行っているCONTS品(Commercial-Off-The-Shelf)の光学機器についてです。 このISERVでの教訓は、適合…

  • なぜ宇宙船は燃料をほとんど使わずに長距離・長時間移動できるのでしょうか?

    credit:NASA https://images.nasa.gov/details-PIA18166 宇宙空間は、地球上にある空気がなく、ほとんど真空である宇宙空間を移動しているため、速度が落ちることはなりません。 高校の物理でいう等速直線運動をしており、ロケットで打ち上げた最初の加速でも、空気などの抵抗がなければどこまでも進んでいくことができます。 といっても、宇宙空間がほぼ真空であるといっても、ほかの減速しないわけではありません。 地球や月、火星、太陽などを含めた太陽系に存在している限り、太陽が持つ引き寄せる力(引力)の影響を受けます。 太陽から遠ざかる際に太陽の引力を受けることから宇…

  • 宇宙機の応用技術!宇宙機のポンプ技術は補助人工心臓である心臓ポンプに応用されている

    credit:NASA https://images.nasa.gov/details-jsc2004e26519 NASAのテクノロジーが命を救う 宇宙機(人工衛星、探査機、宇宙船)の技術は、宇宙だけではなく地上でも使われています。 病気が原因での世界で確認されている最大の死因のひとつに「虚血性心疾患」があります。 虚血性心疾患とありますが、簡単に言うと心臓への血液のめぐりが悪くなったり、詰まったりする障害の総称のことです。 この血流の障害を正すため、スペースシャトルのエンジンポンプに使われている技術が、心臓ポンプ(体内植込み型補助人工心臓)に使用されています。 スペースシャトルの燃料ポンプ…

  • 静電放電(ESD)による人工衛星破壊を最小限にするための設計手法 Lessons Learned

    静電気でパソコンが壊れるという話を聞くことはありますが、あまり人工衛星で壊れるという話は聞いたことがないかもしれません。 人工衛星も電子機器であることから静電気で壊れます。 人工衛星は軌道上に上がると故障の原因を調査することがかなり難しいです。 人工衛星からの信号で故障を分析するのですが、静電気による影響で故障された場合は、想定がかなり難しくなります。 比較的低軌道の場合は大気による空間電荷により静電気による故障を発生する可能性もあるのですが、軌道上の場合ですと放射線による影響で故障する事象が先に上がります。 低軌道の場合は、放射線による電子部品の完全破壊の可能性が「比較的」少ないのですがゼロ…

  • 国際宇宙ステーション日本実験棟"きぼう"開発のすごいところ

    今回は『「きぼう」のつくりかた』から宇宙ステーション日本実験棟"きぼう"の熱制御についてまとめていきます。 「きぼう」のつくりかた 国際宇宙ステーションのプロジェクトマネジメント [ 長谷川 義幸 ] 楽天で購入 日本で国際宇宙ステーション(International Space Station:ISS)のことをいうとき、ISSであったり、日本実験棟「きぼう」であったり、言われます。 国際宇宙ステーションは、アメリカ合衆国・ロシア・日本・カナダおよび欧州宇宙機関が協力して運用している地球の低軌道上に浮かんでいます。 日本で登場する単語としては、ISS、国際宇宙ステーション、日本実験棟、きぼう、…

  • 宇宙業界用語「ホステッド・ペイロード」ってなんですか?

    日本とアメリカは2020年にホステッド・ペイロード協力について合意しました。 ※日本語ではホステッ「ト」ではなく「ド」です。 今回はホステッド・ペイロード協力の中身ではなく、ホステッド・ペイロード(hosted payload)そのものについて述べていきます。 [目次] ホステッド・ペイロード(・サービス)とは ホステッド・ペイロードのメリット ホステッド・ペイロードのデメリット 日本でのホステッド・ペイロード 海外のホステッド・ペイロード 参考資料 ホステッド・ペイロード(・サービス)とは ホステッド・ペイロードは、相乗りともいわれることがあります。 宇宙業界の中で人工衛星に対して相乗りとい…

  • あっさり解ける転倒角の計算方法

    転倒角を計算しよう 最初に言います。転倒角には総重量は関係ありません。 転倒角は地面や床に置いたときに何度傾ければ倒れるかを計算したものです。 床と固定していれば転倒角の計算は必要なく、固定している素材(ネジや接着剤)の強度に依存していきます。 ただ、床ではない少し面積の広い物体に対象を固定した場合は転倒角が関係あります。 そんな転倒角(転倒角度、傾斜角)についてまとめていきます。 [目次] 転倒角を計算しよう 転倒角の計算式 重心を求めよう…? 今日明日レベルの直方体の転倒角の目安値簡易計算方法 転倒角の規格は? トヨタ自動車東日本 安全衛生協力会での構内ルール 道路運送車両法の保安基準第5…

  • 人工衛星が何の役に立つでしょうか?

    人工衛星は何に役立てられているのだろうか? 人工衛星って何なのか? 今回は初心に立ち返り、改めて人工衛星について解説します。 目次 めっちゃ高いところにある人工物、それが人工衛星 身近な人工衛星 人工衛星が止まったらどうなるでしょうか? 参考資料 めっちゃ高いところにある人工物、それが人工衛星 人工衛星は空に浮かぶ雲よりも高く、無重力となる宇宙空間から地球に向かい合っている存在、人工物です。 そもそも衛星とは、地球といった惑星などが発生する引力という引っ張る力で運動している物質のことを言います。 地球では月、木星ではイオやガニメデ、火星ではフォボスなどが該当します。 これらは天体(object…

  • 金属3Dプリンタで使える部品とロケット

    今回は金属3Dプリンタにより製造する部品を使用するうえでの考え方をまとめました。 目次 金属3Dプリンタで許容できないもの それでも金属3Dプリンタ自体の製造公差が発生します。 ロケットと金属3Dプリンタ 3Dプリンタで推進薬タンクを製造する 参考文献 金属3Dプリンタで許容できないもの 公差とは許容誤差のことを言います。 もっというと、2つ以上の部品を組み合わせたときに、ちゃんと組み付けることができる形をしているのかの範囲になります。 許容誤差が0のものは、寸分狂わない正確なものになります。 物体として、機械加工にしろ、人間の手にしろ、正確なものを作るのはとても難しく、デジタルのような0と1…

  • たまに出る宇宙業界用語「高精密度測位補正技術(MADOCA-ppp)」について

    測位システムの高精密度測位補正技術(MADOCA-ppp)を知ろう GPSというと、現在の自分の位置を知る測位システムとして知られています。 ただし、地理情報システム(GIS:Geographic Information System)に関わる人や人工衛星に関わる一部の人はGNSS(Global Navigation Satellite System)と呼んでいる人も多い。 GPSは測位システムの一つで、アメリカの軍事目的で運用されていた測位衛星のシリーズのことです。 アメリカ以外にもいくつかの国で打ち上げられています。 アメリカのGPS(Global Positioning System)-…

  • 『アポロ13』のフライトディレクターのジーン・クランツの残した10か条の教訓

    アポロ計画とジーン・クランツ credit:NASA OFFICIAL EMBLEM - APOLLO 11 - FIRST (1st) SCHEDULED LUNAR LANDING MISSION https://images.nasa.gov/details-S69-34875 1995年に公開された映画「アポロ13」は、1970年に実際にアポロ13号で起きた実話をもとに制作された映画です。 その中で主任フライトディレクター(運用責任者)としてアメリカのヒューストン(ジョンソン宇宙センター)の地上局内にジーン・クランツはいました。 彼は「Failure Is Not An Option(…

  • JAXAの認定品とは

    JAXA認定品とは、人工衛星、宇宙ステーション、ロケットなどの宇宙機に使用可能な品質レベルを満たしていること部品に対して、製造する設備も含めて認定した対象の電気電子機器及び部品のことをいいます。 また、JAXAでは電気電子機器及び部品のことを認定品に関わらず総じて、EEE(Electrical, Electronic, Electromechanical)部品、あるいはトリプルイー部品と呼ぶことがあります。 JAXA認定品は、宇宙機に使用できる部品であるという認識があるのかもしれませんがそれだけではありません。 品質を維持するために、製造設備も含めて審査するのですが、JAXA以外にも公的な認定…

  • SpaceX社の通信衛星コンステレーション(スターリンク)の混信回避方法

    衛星コンステレーションが話題になって幾日、電波が混線する可能性に気づいた方がいるのではないでしょうか。 今回はSpaceX社の打上げている通信衛星であるスターリンクの混線回避方法について調べてみました。 スターリンク衛星の通信が混線する可能性 電波は使用できる波長(周波数)が有限です。 スマホなどの携帯電話も周波数を変えて通信しています。 日本ではドコモやKDDI、ソフトバンクといった通信会社がありますが、これらの通信会社同士の通信が混線しないように使用する周波数が割り当てられます。 しかし電波の周波数は有限であるため、地球各地から様々な電波を使用していると、どこかで重なる可能性があります。 …

  • 中世に生まれた機械工学アストロラーベ、時計、マスドライバー

    中世の機械工学と宇宙につながるもの 中世の機械工学で生まれた技術という記事を見つけたので、宇宙に絡めて紹介しようと思います。 www.engineersjournal.ie 記事によると、中世は機械工学において、大きな技術革命が発生した時期ではないと多くの人にとって考えられているようで 中世は、ローマ帝国崩壊(西暦476年)からルネッサンス前の時期(西暦1300年代)といわれており、多くの戦争を挟んでいたことから発明の記録も少なくなっているそうです。 その中で記事の中では19つの機械工学を上げています。

  • 埋蔵金となる金や銅、鉄鉱、亜鉛や鉛・インジウムを探す。衛星データで鉱物資源を調査する方法【2021年での事業レベルと研究事例】

    鉱物資源のリモートセンシングとは 農業に人工衛星の観測データが使用されてきています。 農業で使用される観測データは、赤外データを使用しているのですが、同様に金属を検出することができます。 赤外観測装置は、物体が反射や放出された光を観測しています。 レンズに赤外領域の波長のみ受光できるフィルターでデータを取得します。 また、赤外データだけではなく、合成開口レーダーデータや標高データによる地形解析などの複合的な解析手段で鉱物資源の探査を行っています。 地表面での調査だけではなく、各地質の特徴・現象を人工衛星のある軌道上から観測できる現象を抽出するような手段で研究・開発が続けられています。 広義的に…

  • SpaceXのStarlink衛星でGPSのように自分の位置の特定をする新しい技術研究

    SpaceXの外部研究者(アメリカのオハイオ州大学)によって、Starlinkによるインターネットサービス衛星によるブロードキャストされた信号を使用してGPSにように地球上の自分の位置を特定する方法を開発しました。 Starlink衛星は、SpaceX社によって軌道に投入され、世界中のあらゆる地域でのブロードキャストによるインターネット接続のサービスを提供しています。 目次 GPS衛星との位置の精度 推定法の考え方 GPS衛星の弱点 位置を推定する時間 今後の展望 参考資料 GPS衛星との位置の精度 Starlink衛星を6つ利用することで8メートル以下の精度で、場所を特定することを可能としま…

  • 宇宙機の電力システムの過電流による障害 Lessons Learned

    宇宙機の電源制御システム障害 放射線による過電流での障害は発生します。 mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com 過電流は、突入電流やインラッシュカレント(インラッシュ電流)と様々な呼び方があります。 今回は放射線による過電流ではなく、回路上で過電流が発生した事例です。 概要 2年間の運用後の国際宇宙ステーション(ISS)に搭載されたマイクロ波による風速測定などの天気予報を行うコンポーネントであるRapidScatが故障しました。 故障の原因は、突然の停電と電圧スパイクに対する設計上の脆弱性が原因である可能性があります。 推奨事項としては、突然の…

  • 未知の環境に対して、高いリスクがある場合は計画変更を視野に入れつつ追加の機能を検討する Lessons Learned

    Lessons Learned、失敗学、事故事例未知の環境に対して、高いリスクがある場合は計画変更を視野に入れつつ追加の機能を検討する 宇宙開発は数年掛かりで開発します。 しかも、打上げロケットや打上げ軌道が決まっている場合は、スケジュールをずらすことが難しいのが現状です。 数年掛かりといえど、かなりタイトなスケジュールを強いることが多いんですね。 そのスケジュールの中で、機能を追加させることは難しいのですが、実際よくあります。 初期検討では検討に入らなかった詳細な部分が実はかなりクリティカルであることもあります。 今回は、機能を追加して、成功した(失敗の確率を低減させた)実例を紹介します。 …

  • 宇宙市場/宇宙機製造に参入するに場合、どうやって製品を出していけばいいのかまとめました

    宇宙業界で活用されていた技術を日常品(宇宙業界では民生品)に活用していくというのが大きな流れでした。 2010年代後半から、逆に民生品の技術を宇宙業界に取り入れるような流れになってきました。 問題は、宇宙品がとても厳しいという話が広がりすぎて、新規参入する組織が少ないということなのです。 今回は、宇宙機に使用する製品。いわゆる宇宙市場に参入するにあたり、どのように宇宙用の製品を製造したり、営業に掛ければいいのかまとめていきます。 まとめ 宇宙機の構成から攻める分野を決めよう 類似技術を利用するにはコンポーネントやパーツの分野で挑戦しよう JAXAに相談してみよう 今は革新的衛星実証プログラムと…

  • コネクタが緩むと高い電気抵抗が発生する Lessons Learned、失敗学、事故事例

    コネクタが緩むと高い電気抵抗が発生する スマホや携帯、PCの電源のコネクタは、取付け・取り外しがし易い形状をしています。 宇宙では逆にコネクタが外れないようにしなければなりません。 一番の理由はロケットで打ち上げた際の振動で、コネクタが緩みます。 軌道上でも、寒暖差が激しいため、コネクタが収縮して緩むことがあります。 宇宙機で姿勢や軌道を変更する際に、人工衛星内でいくらかの振動が発生して緩む可能性があります。 コネクタだけではなく、コネクタが付いているワイヤのテンションが強ければ、もっと緩い振動で外れてしまいます。 宇宙だけではありません。 日常製品でも同じことが言えます。 PCを使用している…

  • ものづくりにおけるリバースエンジニアリングについて

    リバースエンジニアリングは、パーツ、既存のモデル、およびアセンブリを使用することで、3Dデータを生成できるプロセスの一つです。 簡単に言うと、スキャンしたデータを元に製品を再現することができます。 リバースエンジニアリングは、既存の形状から正確なデータ及び設計意図を読み解くために必要な工数を大幅に削減することができます。 リバースエンジニアリングが、ユーザーのニーズに見合う価値があるかどうか判断する前に、どのような要素があり、最終結果として何がどうなるかを理解しておく必要があります。 この記事では、どのような流れで行われ、何がアウトプットされるのかなどの情報を提供し、価値があるのかどうか判断が…

  • 定期メンテナンスの連絡不十分で重要な試験で宇宙向けのサンプルが失われた事例 Lessons Learned、失敗学、事故事例

    定期メンテナンスの連絡不十分で重要な試験で宇宙向けのサンプルが失われた事例 定期メンテナンスは、設備の寿命を効果的に伸ばすことに役立つ。 定期メンテナンスをしないと、設備が突然壊れた時に、最初から致命的になりかねない。 私たちの知らないところで、ビルの管理で定期メンテナンスをしていますし、日本では5月の大型連休、8月のお盆時期、12月の年末年始の人が比較的少ない時期に大規模なメンテナンスを行います。 計画停電やサーバーのシャットダウンなども行われます。 かなり余裕のあるインフラ設備の場合、2系統以上あり、片方を落としてメンテナンスを行っている最中は、もう片方を稼働させるという手法が取られます。…

  • 小型振動試験設備の長期間使用のためのクリティカルなパーツ

    各種環境試験(振動試験、熱試験用真空チャンバー、電波試験、電磁適合性試験)の保守 試験装置の保守メンテナンスは、装置そのものを長期間使用させることと同時に、新たに設備投資をすることなく、一定の成果を出すためにコスト面でも非常に重要な要素となります。 近年、日本各地で人工衛星開発をする企業が出ています。 人工衛星及び人工衛星に搭載される機器の開発には環境試験が付いて回り、衛星機器関連メーカーと試験機は切り離せない存在となっています。 一部の試験装置は、地方自治体の管理する試験装置を使用することで、各機器の評価を行っていますが、各組織で試験装置を保持することも多くなっています。 今回、近年の小型衛…

  • 人工衛星に使用されている太陽光発電はグリーン電力証書を使用できるのか【宇宙ビジネス】

    グリーン電力証書というシステムがある 資源エネルギー庁が打ち出した政策でグリーン電力証書というシステムがあります。 再生可能エネルギーによる電力をエネルギーとしての価値ではなく、環境保全への貢献としての価値(環境価値)を取引可能な証書としたものがグリーン電力証書です。 mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com 人工衛星も、再生可能エネルギーといわれる太陽光発電を使用しているため、グリーン電力証書の対象となるのか、確認してみました。 人工衛星の発電をグリーン電力として設備認定できるのか? グリーン電力証書の中身は、第三者機関の一般財団法人 日本品質…

  • グリーン電力証書について説明します。特に脱炭素やカーボンニュートラルの関係

    グリーン電力証書とは 太陽光や風力などで発電した電力を化石燃料や原子力を利用して発電している電力と区別し、消費することなく永続的に利用できる再生可能エネルギーをグリーン電力としています。 ※太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーは、発電システムの構築やメンテナンスが必要になるため、一度構築しても永久に発電し続けるものではありません。 グリーン電力は脱炭素社会のため貢献しているということが多いのですが、定量的にどのぐらいの電力量(何ワット分)貢献して、同じ電力量を発生させるのに化石燃料や原子力発電ではCO2がどれくらい発生するのか、決めることにしました。 その仕組みがグリーン電力証書システ…

  • サーファーの技術がロケットの問題をどうやって解決したのか

    サーファーの技術が宇宙開発を救った #TIL that engineers had issues with the honeycomb insulation on the #SaturnV second stage, so they ended up hiring local surfers from #SealBeach CA, who had experience in working with the material, to apply it to the vehicle 🚀🏄 @NASAhistory pic.twitter.com/jNkiRWtr5L — Megs H. (@me…

  • 試験前に試験機器の機能の動作を確認しておく Lessons Learned

    試験前に試験機器の機能を確認しておく 試験前の事前確認は重要です。 例えば地上試験装置(GSE)を外注し、外注の検査結果をもって試験に挑んだとしても、データが取れなかったなんて言うことはよくある話です。 出荷時点で問題なかったとしても、試験コンフィギュレーションを組んだ時に、ヒューマンエラーが発生してしまうことがあります。 特に一度しか行われない試験の場合や試験機器のスケジュールがタイトな場合が宇宙機ではよく、本当によくある(あった)のですが、再試験に時間が掛かります。 最悪再試験できないことがあります。今回の事例は、再試験ができない事例でした。 概要 Mars Science Laborat…

  • 【宇宙機開発】白金温度センサー実装の注意点(2003) Lessons Learned

    宇宙環境試験の温度センサー Credits: NASA https://images.nasa.gov/details-MSFC-202100027 画像は熱真空試験を実施するために、人工衛星を熱試験治具で囲んで、チャンバーに入れるところです。 あの黒い物体が熱試験治具になります。これはヒーター方式ですね。 黒色にしているのは熱放射を一定にするためで、安定して熱放射することができます。 今回は熱真空試験に使用される温度センサーのLessons Learnedです。 温度センサーは白金温度センサと呼ばれる種類のセンサが使われます。 金属が温度変化により電気の抵抗が変化する特性を利用して温度センサ…

  • 導電性のある炭素繊維(カーボン)/樹脂複合材でも宇宙空間で空間電荷の影響を受ける Lessons Learned

    導電性のある炭素繊維(カーボン)複合材でも宇宙空間で空間電荷の影響を受ける 宇宙機開発において注意するべきものは、グランドという考え方です。 既製品や一般製品の場合、アースという考え方があり、グランドはアースに似て異なる考え方です。 アースは、地面と接続することで電位を安定させたり、地面との電圧差を防ぎ、電流が流れることを防止します。 一方で、グランドは、機器内の動作の安定やパーツの帯電による電磁波や輻射を防止することが主たる理由となります。 グランドを取っていないと、かつてはラジオやテレビなどの機器では音声や映像に影響が出ていました。 現在ではほとんどなくなっていますので、実体験できる場面が…

  • 鉱物探査のリモートセンシングはまだ発展途中?

    鉱物資源のリモートセンシングとは 農業に人工衛星の観測データが使用されてきています。 農業で使用される観測データは、赤外データを使用しているのですが、同様に金属を検出することができます。 赤外観測装置は、物体が反射や放出された光を観測しています。 レンズに赤外領域の波長のみ受光できるフィルターでデータを取得します。 また、赤外データだけではなく、合成開口レーダーデータや標高データによる地形解析などの複合的な解析手段で鉱物資源の探査を行っています。 地表面での調査だけではなく、各地質の特徴・現象を人工衛星のある軌道上から観測できる現象を抽出するような手段で研究・開発が続けられています。 広義的に…

  • 民間ロケット打上げ企業で、SPAC合併上場で動いているRocket Labの施設公開

    Rocket Labを紐解く Credits: Rocket Lab Roket Lab(ロケットラボ)は、2021年8月時点で、アメリカのカルフォルニア州ロサンゼルスに本社を置き、ニュージーランドにロケット射場設備を持つロケット打上げの企業です。アメリカのバージニア州にも第2の射場設備も有しています。 2006年に創業し、SPAC(特別買収目的会社)により2021年2QにNASDAQに上場予定でです。 業績的には赤字ですが、計画では2024年までにキャッシュフローは黒字となる予定のようです。 Vector Capital、BlackRock、Neuberger Bermanをなどの合計39の…

  • 地上システムのビジネス市場

    宇宙機用の地上システムを分解する まず、地上局というのは、宇宙空間にある人工衛星や探査機などの宇宙機との通信のための地上の無線局です。 そもそも無線局は、無線設備が備え付けられた施設のことをいい、無線設備を操作する対象も含めています。 無線設備は、無線電信や無線電話などの電波を送り、あるいは受け取るための電気的設備のことを言います。 法的な定義は電波法で示されています。 宇宙業界における地上局は、無線局としての機能以外に、宇宙機の操作やデータの取扱い、データ加工やデータ解析を実施する設備を指していることが多いです。 宇宙機の操作は、通信あるいは無線設備を使用するために地上局とは言えるのですが、…

  • 人工衛星のハーネス設計のルーティング(配線)検討のポイント(詳細設計、維持設計編)

    前回は基本設計フェーズぐらいのハーネス設計を淡々と述べていきました。 今回は打ち上げまで行ければよいかと思っています。 それでは、Let’s go! 詳細設計フェーズ移行のハーネス設計 基本設計フェーズまでで、機器配置を含めて、だいたいの設計が終わるのがほとんどでしょう。 基本設計フェーズといえど、すべての組織で同様のフェーズを辿るわけではないので、適度にアレンジしてもらえればと思います。 さて、ハーネスのルーティングが決まっても、すぐさまハーネスを製造することはありません。 なぜか、他の設計が終わっていないため、ハーネスを製造することができないからです。 製造しないのになぜある程度のハーネス…

  • 人工衛星のハーネス設計のルーティング(配線)検討のポイント(概念設計、基本設計編)

    衛星の開発はいくつかのフェーズに分かれています。 概念設計フェーズ 予備設計フェーズ 基本設計フェーズ 詳細設計フェーズ 維持設計フェーズ 各フェーズの定義は、各組織によって違いますが、だいたいハーネス設計は基本設計フェーズから始まります。 基本設計フェーズでは、搭載するミッション機器(通信機器、光学観測機器、レーダー機器など)をはじめ多くの機器が確定しています。 機器が確定してからハーネス設計を開始することができます。 ハーネス設計は構体設計や機器配置設計に大きく関わり、重量配分や製造時のリードタイムにも影響していきます。 今回はハーネス設計のルーティング検討のポイントをまとめていきます。 …

  • 偶に出てくる宇宙業界用語「アンカーテナンシー(契約)」について

    アンカーテナンシー(Anchor tenancy)契約について アンカーテナンシー(Anchor tenancy)という言葉を知っているでしょうか。 あまり使われる機会がないのですが、偶に宇宙業界の文書や記事で出てきます。 政府の方針で注目されている業界や技術を取り扱う企業に対して行われることが多いです。 限られた条件において、政府が企業と契約して商品を継続購入し、企業もしくは業界を存続させるために行うことをいいます。 政府目線でいうと産業基盤の安定のために契約し、事業継続の機会を提供することをいいます。 特にベンチャー、スタートアップ、未上場企業に対して行います。 目次 アンカーテナンシー(…

  • No放射線遮蔽対策!宇宙放射線に冗長設計で挑んだ市販のコンピュータ

    放射線遮蔽対策を真っ向から否定した宇宙用コンピュータ 電子機器が宇宙空間に曝されたときに問題となるのが放射線です。 放射線は電子部品のデジタル信号を狂わせ、運悪く半導体部品に衝突すると使えなくなります。 放射線の種類によっては長時間されされると性能も悪くなります。 多くの宇宙機は放射線対策に多くのリソースを費やしてきました。 リソースの中には、人的コスト、時間的コスト、品質コストが含まれています。 2017年に打上げられたヒューレット・パッカード・エンタープライズ製のSpaceborneComputerは、国際宇宙ステーションで207日間も正常に機能しました。 SpaceborneComput…

  • 在宅ワークで機械設計関係の打ち合わせをするとペンタブが必要になるメモ

    在宅ワークが多くなったこの頃。 資料を事前に配布していたりするのですが、新しいアイディアや仕様・要求を調整する際に結構ペンタブを使用することになったので紹介します。 機械設計にもよるかと思うのですが、新規の提案をするときに図が必要になると強く感じました。 スピード感が足りない マウスで図を描くと、慣れていないせいもあるのですが遅くなってしまいます。 新しいアイディアの提案・確認 お互いに共通する単語を持っていない場合、それぞれ別のものと解釈してしまうことがあります。 その場で検索するにしても、微妙に画像が違うと伝わらないことがあります。 ニュアンスを伝えるのが難しい 同じ業界であればよいのです…

  • JAXAとNASAのギネス世界記録7選

    JAXAとNASAなどの宇宙に関わるギネス記録をまとめました。 [目次] 世界初の小惑星からの物質を持ち帰った探査機はやぶさ 最小の軌道ロケット SS-520 5号機 最も低い地球観測衛星の軌道高度 技術試験機「つばめ」(SLATS) その他の日本の宇宙関係 NASAのギネス記録3選 参考資料 世界初の小惑星からの物質を持ち帰った探査機はやぶさ 2003年5月9日に内之浦宇宙空間観測所から打上げられた探査機はやぶさは、2005年に小惑星イトカワに到達しました。 その約5年後の2010年6月13日に、小惑星イトカワの物質を持ち帰り、いわゆるサンプルリターンを世界で初めて成功させました。 この成果…

  • 海の風を人工衛星で観測する方法

    宇宙機から地上の風を観測できるって知っていますか? 実は宇宙機に搭載した観測機器で測定できます。 といっても地上での観測機器と同一のものが搭載されています。 宇宙/軌道上から観測できる利点は何があるのでしょうかね。 人工衛星の有用な点は、国境を越えることと海上の観測もできるということでしょうか。 人工衛星のデータは、インフラとしても役立っており、国境を越える船舶や航空機への航行に使われています。 気象の解析にも使用され、台風の解析にも使用されています。 このように天気予報を改善するだけでなく、海洋の物理学などの学術的な研究にも生かされています。 最近では、海洋で利用される可能性のある風力エネル…

  • ハニカム構造の7つの利点と7つの欠点、6つのコスト要因

    ハニカム構造の特徴をまとめてみました 以前、ハニカム構造の歴史と実例をまとめました。 mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com まとめたはいいものの、何か特徴があるのか、なぜ使用されているのが具体化していなかったところをまとめました。 ハニカム構造の特徴をまとめてみました ハニカム構造の利点 軽量(低密度) 高強度で優れた剛性 優れた耐衝撃性と振動減衰 遮音と断熱 不燃性(難燃性)および耐湿性 良好な成形性と自在な厚さ 美しい外観とお手入れが容易 ハニカム構…

  • 2021年の上半期の半導体、原材料不足についてのメモ

    2021年初頭から、半導体生産不足という報告がされている。 部品製造に関わる原材料不足は、様々な業界に飛び火し、部品の調達が困難になってきているという話です。 ABFとガラス基板の不足 PCBおよび銅箔不足 シリコンウェハー不足の悪化 参照文献 ABFとガラス基板の不足 味の素グループの味の素ファインテクノが製造している「Ajinomoto Build-up Film」(ABF)は、すべてのコンピューターに搭載されている高性能中央処理装置(Central Processing Unit:PCU)の基板のためのグルタミン酸由来の層間絶縁フィルムである。 基板の集積度を上げ、従来よりも製造コストを…

  • 手順書や取扱説明書に書くべき電気の危険性

    現代の世の中は電気に囲まれて生きている。 電気を制御し、あらゆる機器を動かしているわけだが、それを製造・管理している職業の人たちは、職場での電気の危険性について注意しておく必要がある。 本記事では電気的危険性のある事象をまとめた。 電力機器あるいは電力システムの手順書や取扱説明書、作業前打合せなどで、少なくとも以下の注意点があると、より作業者の危険が減ると願っている。 [目次] 感電 アークフラッシュ アークブラスト 火傷 衝撃のアークフラッシュの動画 参考文献 感電 50Vを越える電圧で。5mAを越える電流が流れる部分に直接接触すると、筋肉を麻痺させ、臓器を壊し、心臓に致命的な影響を及ぼす。…

  • 最先端の人工衛星及びロケットの打上げに所縁のある神社

    日本では八百万の神といわれるように、様々な神様がおり、神社に祀られています。 珍しいものを祀っている一つとして飛行機があります。 飛行機に関わる神社として、羽田神社(東京都大田区)、飛不動尊(東京都台東区)、航空神社(東京都港区)、所澤神明社(埼玉県所沢市)、飛行神社(京都府八幡市)、泉州航空神社(大阪府泉佐野市)と日本各地に存在しています。 飛行機に関わる神社が存在しているのであらば、人工衛星及びロケットの打上げに所縁の多い神社があるでしょうということで、今回の記事をまとめてみました。 【目次】 飛行神社は京都にある JAXA筑波宇宙センターのあるつくば市内の筑波山神社 ロケット射場のある種…

  • 「2025年の崖」と製造業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の関係

    「2025年の崖」 「2025年の崖」を知っているでしょうか? 「2025年の崖」とは既存システム(レガシーシステム)が古くなり、技術格差が追い付けないレベルにまで達する可能性のある予想時期のことである。 この壁を越えた先に何があるのかというと、何も日常生活では起きない。 過去にプログラミングの設定上で誤動作が起きた2000年問題や、宇宙天気上で多くの放射線を受ける太陽コロナ問題、かつてドイツに存在していた物理的なベルリンの壁といったものではない。 2025年を超えると日本は毎年約12兆円の経済損失が発生するというものだ。 毎年約12兆円の経済損失とは、赤字が12兆円ぐらいになるというわけでは…

  • 森林破壊抑制先進国ノルウェー。GoogleEarthの数倍の解像度を持つ無料衛星画像データで森林を監視する。

    森林破壊抑制先進国ノルウェー ノルウェーは、森林破壊につながる製品を使用しないと宣言した世界で最初の国家です。 世界では毎年12万km2から15万km2の森林が失われています。 過去40年で、ヨーロッパ全体に匹敵するサイズの森林が消えています。 森林破壊を最も促進させるものは農業です。 焼き畑式農業や整地により、家畜の放牧地域を作るために森林を伐採していきます。 2000年から2011年の間に、アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、インドネシア、マレーシア、パプアニューギニア、パラぐらいの牛肉、食料パーム油、ろうそくあるいは食用大豆、木製品が世界の40%を占めていました。 これらの製品の購入・輸入…

  • 新人引継ぎ教育3:知識ゼロの人が人工衛星開発に配属したときに戸惑わない教育

    人工衛星が上手くいったことは、ニュースの記事になりにくい 今まで、技術・業務的な引継ぎとしていたが、初めて衛星開発に触れる人が、一般人に対して説明するときの一例を紹介する。 人工衛星はどの段階で成功か、人工衛星に関わり合いのない人からすれば、ロケット打上げ後に無事放出されたこと、という印象を持たれるのではないだろうか。 人工衛星で「わかりやすい」衝撃的な映像は、ロケット打上げである。 むしろ、ロケット打ち上げ後見えないのだからしょうがない。 その中でも衝撃的な映像は、ロケット爆発である。 人工衛星ではないが、スペースシャトルの爆発は、知っている年代からすると衝撃的であった。 普通に打ち上がるよ…

  • 日本の自然災害発生時に画像を公開しているサイト

    6月になり、台風の季節も近づいてきたので、日本における自然災害発生時に画像を公開しているサイトを紹介します。 むしろ自分用な気もしますが。 防災科研クライシスレスポンスサイト http://crs.bosai.go.jp/ 国立研究開発機構防災科学研究所が運用している情報サイトです。 衛星画像を始め、過去の災害情報もまとまっており、過去情報を含めて収集するときにはとても便利です。 光学画像とレーダ画像があり、民間の情報から国保有の情報収集衛星の情報もあり、正直これより整った国内の災害に特化した情報システムは今のところないですね。 民間の情報システムの中で、特定地域を特化させた高解像度画像であっ…

  • 赤の女王仮説ー新しい場所に行きたければ全力の2倍を出しなさい―

    赤の女王仮説を知っていますか? 赤の女王仮説(読み)あかのじょおうかせつ(英語表記)Red Queen hypothesis 生物の種は絶えず進化していなければ絶滅するという仮説。 ルイス・キャロルの小説『鏡の国のアリス』に登場する赤の女王の、「同じ場所にとどまるためには、絶えず全力で走っていなければならない」という言葉にちなむもので、進化生物学者リー・ヴァン・ヴァーレンによる造語。 現状を維持するためには、環境の変化に対応して進化しなければならないこと、例えば、食うもの(捕食者)は、もし食われるもの(被食者)がより素早く逃げる能力を獲得すれば、今まで通りに餌を取るためには、より速く走れるよう…

  • 慣らし運転と人工衛星のコンポーネント

    人工衛星と慣らし運転 慣らし運転を知っていますか? 慣らし運転は、機械部品や電子部品を実装した後に、初期の故障を発見したり、急激な運転をすることでの部品同士の擦れや摩耗を防止することを目的とします。 電子部品も品質誤差があるため、実性能が中央値より低い場合があり、予期しない動作を生じさせたりすることを防ぎます。 機械部品の場合は、急激に力を加えると、応力が集中して機械部品の寿命を減らしてしまいます。 そのため、ある程度の力で動かし、機械部品にいびつな癖や応力を発生させないように、良好な癖をつけます。 最終的には、製品としての寿命を延ばすことにあります。 駆動部品の多い自動車やバイクの新車、スピ…

  • ハイスループット衛星(HTS)とは何か

    high throughput satellite (HTS)? Credits: NASA https://images.nasa.gov/details-KSC-00pp0712 直訳すると高い情報処理能力を持つ人工衛星である。 2022年に打上げられる技術試験衛星9号機(ETS-9)はハイスループット衛星(High Throughput Satellites:HTS)と呼ばれている。 ETS-9は、2006年に打上げられた技術試験衛星8号機(ETS-8)と同じシリーズ衛星ではあるが、搭載ミッションが同じというわけではなく、実証機器を搭載した大型人工衛星である。 実に15年以上も間が空いて…

  • 新人引継ぎ教育2:知識ゼロの人が人工衛星開発に配属したときに戸惑わない教育

    もし人工衛星開発部署に入ってしまったらの参考ケースその2 今回はその2である。 前回は、新人向けに次のことを最初に教えておくとよい、としていた。 システム系統図を教えておく。 状態遷移図で人工衛星の動作を教えておく。 不具合の共有を行う。 ちなみに、ベテラン向けには、検討課題項目と、リスク管理シートを出しておけばよいと、なかなか乱暴な感じであった。 上記の一連の説明は、ロケットの射場から人工衛星の放出と軌道上で動き(初期運用)まで説明することで、まとめて説明することができる。 ついでに、その時に人工衛星が受ける環境も伝えることで、振動試験や電気試験についても説明することができる。 その後、各論…

  • 引継ぎ教育:知識ゼロの人が人工衛星開発に配属したときに戸惑わない教育

    もし人工衛星開発部署に入ってしまったらの参考ケース もう2か月も経っていますが、新年度に入り、日本では多くの人が様々な企業に入社されていることでしょう。 人工衛星の開発プロジェクトは、企業において立ち上がり段階から軌道に乗るまでは、人工衛星でなくとも何かしらの開発経験者が中心となって進めていくことが多いことでしょう。 しかし、すべての企業において、開発経験者を毎年人工衛星の開発プロジェクトに送り込むことはない。 大学で人工衛星の開発をしていたものもいるかもしれないが、毎年、配属できるわけでもない。 スタートアップ企業であれば、早急な結果を出す必要があるため、経験者を取るだろう。 優秀で熱意と、…

  • 地球軌道上の放射線危険地域の南大西洋異常帯(SAA):シングルイベントが発生しやすいかもしれない地域

    地球軌道上の放射線危険地域:南大西洋異常帯 Credits: NASA https://images.nasa.gov/details-PIA14441 さて、前の記事では地球圏の高度における放射線量をまとめています。 これらのデータは、主に電子部品の劣化させていく、トータルドーズ効果Total Ionizing Dose Effect::TID)の原因になります。 現在、低軌道では比較的低いのでTIDの影響を無視する考えもあります。 低軌道の場合、人工衛星が推進機構などの軌道制御機構を持っていなければ、地球の重力に従い、地表面に近づき、大気によって燃焼してしまうほど衛星寿命が長くないのです。…

  • 地球軌道上の放射線危険高度:トータルドーズ効果が発生しやすいかもしれない高度

    宇宙は宇宙放射線に常にさらされている 宇宙環境では多くの電子機器に放射線を受けます。 放射線を受けると、電子部品の性能が劣化します。 また、放射線のエネルギーを受けて、デジタル信号も変化することがあります。 これらは放射線の1つ1つのエネルギーによって起きる現象が変わります。 陽子線(プロトン)や電子線、重イオン/He粒子の高エネルギーの場合は、後者のデジタル信号が変化する「など」の影響が発生します。 そしれこれらは目に見えません。 高品質と宇宙放射線(銀河宇宙線) さて、宇宙のスタートアップ企業が続々と生まれる中、数十年以上の歴史を持つメーカーから宇宙事業に手を出す企業は少ないです。 なぜか…

  • サービス回復のパラドックス

    サービス回復のパラドックス(Service recovery paradox)とは? 本来、製品に対してトラブルが発生した場合、多くのユーザーは不満を募らせ、人によってはクレームを行います。 しかし、発生したトラブルをサービスによって補填、回復、修正を正しくすることで、(すべてではないが)トラブルの発生していない安定したサービスよりもユーザーに対して多くの満足感と信頼感を与えることができます。 言ってしまえば、トラブルはユーザーにさらなる満足感を与えることをサービス回復のパラドックスと呼ばれています。 しかし、残念なことに必ずしも再現性があるというわけではありません。 今回は、このサービス回復…

  • ラッセル・リンカーン・アコフのシステム思考【システムエンジニアリング】

    システムエンジニアリングとはなにか? この質問に回答するのは、とても困難です。 ウィキペディアによると Systems engineering is an interdisciplinary field of engineering and engineering management that focuses on how to design, integrate, and manage complex systems over their life cycles. Systems engineering - Wikipedia 「システムエンジニアリングは、大規模で複雑なシステムを開発及び…

  • 最近のJAXAは年収が分かるらしい

    JAXAの場合簡単に年収が出てきます。 だいたい690万ですって、本当?って感じですが。 案外知られていないようなんですよね、このページ。 いえ、今回はこれだけです。 www.jaxa.jp www.jaxa.jp

  • レーザー加工の誤解と6つ真実【筐体加工】

    レーザー加工の誤解を解く 原文 https://www.engineeredmechanicalsystems.com/truth-behind-laser-cutting-myths/ John Thom レーザーは間違いなく、私たちの知る技術の中でも実用的に進化してきた技術の一つです。光のエネルギーを集約したビームは、矯正眼科手術をはじめ、音の伝達に至るまで利用されています。 レーザー加工は、材料によって事前に加工プログラムを作成し、コンピューター制御によって、強力なレーザーを調整しています。 一般的な例として、カメラ内部に搭載される回路の加工やさまざまな素材で作られた装飾品で使われていま…

  • 宇宙環境試験に供するセラミックコンデンサの注意点 Lessons Learned

    宇宙環境試験に供するセラミックコンデンサの注意点 コンデンサは、充電や放電を行うことで、電圧の変化を吸収したり、電気の通り道で余計なノイズを横道にそらしたり、直流はさえぎり周波数で信号をより分ける機能があります。 セラミックコンデンサは、誘電体に高誘電率のセラミックを用いたコンデンサで、次のような特長があります。 極性がない 高周波特性が良い(ESRが低い) 高耐熱 長寿命 印可電圧によって容量が変化する特性(DCバイアス特性)を持っている。DCバイアス特性は誘電率が大きいものほど顕著に現れる。 温度によって静電容量が大きく変化する 高周波による振動で音鳴りが発生する 温度/機械的衝撃によりク…

  • NASAのDC/DCコンバーターの適用に関するガイダンス(2008年) Lessons Learned

    NASAの選択とDC/DCコンバータの適用に関するガイダンス DC/DCコンバータの不具合は、宇宙機に限らず多くの製品で発生する可能性が高いデバイスです。 現在、市販製品と言われるCOTS品が使用されていますが、DC/DCコンバータの場合はどうでしょうか? 今回は、宇宙品質のDC/DCコンバータの故障の一部を知っていただくことで、宇宙品質のDC/DCコンバータを使用しない場合に気を付けるべき部分として、設計に反映していただければと思います。 概要 ハイブリッド型DC/DCコンバータの入手性、品質、および信頼性の問題により、多くのNASAプロジェクトにおいて、コストとスケジュールに影響を及ぼして…

  • 太陽電池パドルの展開信号の不通 Lessons Learned

    惑星探査人工衛星マゼランのソーラーアレイの展開の兆候 Credits: NASA https://images.nasa.gov/details-s30-72-046 太陽電池が必要な人工衛星は、電力消費が多く、使用頻度の高いミッションを行う場合に搭載されます。 展開パドルが働かなければ、人工衛星の電力が足らずに、緩やかに人工衛星が喪失するか、多くの機能が制限されることになります。 太陽電池パドルで最も心配する点は、展開機構が正常に稼働するのか確認できるのかという点です。 軌道上は、他に観測できるものがないため、展開パドルが駆動するのか、目視することができません。 大型衛星であろうと、地上から…

  • 火星探査用のローバーのタイヤがパンクした事例(火星探査プロジェクトMSL) Lessons Learned

    火星探査プロジェクトであるMSLのローバーホイールの早期摩耗 2021年現在、火星や月をローバーと呼ばれる車両が走行する計画が上がっています。 現在も多くの車両が研究開発されています。 今回の教訓は、想定していた最悪ケース以上のケースが発生し、ローバーの寿命が著しく短くなってしまったところにあります。 概要 マーズサイエンスラボラトリー(Mars Science Laboratory、MSL)は、NASAが火星探査ミッションで用いる宇宙船の名称です。 MSLに使用されるローバーホイールの設計は、火星の特定の種類の地形でパンクしやすいことが証明されています。 ホイールのパンクは、動作の負荷のシミ…

  • 人工衛星などのリモートセンシングによるデータの最近の使用用途100/100選ー天候ー

    リモートセンシングと天候 Credits: NASA https://images.nasa.gov/details-GSFC_20171208_Archive_e002108 ※CGではなく実際の国際宇宙ステーションから撮影された写真 人工衛星のデータは、農業や林業、天気といった様々なことを使用されています。 人工衛星データの中で地球表面を観測装置を用いて、観測することをリモートセンシングと呼びます。リモートセンシングは人工衛星だけではなく、飛行機や気球などで観測することも言います。 リモートセンシングという表現は、そのうちに地球表面に限らず、惑星表面を観測する技術のことを指すことになるかも…

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