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2019/10/29

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  • 360話 学園都市防衛戦2

    360話 学園都市防衛戦2 360話 学園都市防衛戦2 方針が決まり、あとは行動に移すのみ。だがそう単純な話でもない。 「この位置だと魔の森には落とせないな・・・」 「そうですね。背後・・・いえ、せめて左右どちらかへ回り込まなければ難しいかもしれません」 「いや、高さはどうにでもなるけど、正面の敵をオレの背後に撃ち落とすのは失敗する可能性がなぁ・・・」 ルークが自信なさげなのも無理はない。これがドラゴンやワイバーンといった、大型の魔物であれば心配は要らない。防御力は高いだろうが、今回に限っては吹き飛ばすだけで良いのだから。だがグリフォンが相手となればそうもいかない。当然それなりに大きくはあるの…

  • 359話 学園都市防衛戦1

    359話 学園都市防衛戦1 359話 学園都市防衛戦1 ティナが三振りの刀を仕舞って頷いたのを確認し、ルークはティナを連れて学園都市の防壁上へ転移する。 「・・・ルークの言っていた通りの状況ですね」 「いや、もっと悪いかもしれない。あそこを見てみろ」 「あれはっ!?」 ルークが指差す方向へと視線を向けたティナが目を見開く。そこには地面に横たわるドワーフとウサギの獣人らしき者と、それを守るようにして取り囲むエルフ達の姿があった。 「おそらく、ランドルフさんとターニャだろうな。敏捷性に劣るランドルフさんを、俊敏なターニャが庇った。その治療に慌てて駆け付けたのはいいが、敵が邪魔で身動きが取れなくなっ…

  • 358話 戦闘準備

    358話 戦闘準備 358話 戦闘準備 状況と情勢の予測に思考を巡らすティナだが、じっくり考えさせる猶予は無い。まぁこれも予測に過ぎないのだが、いい意味で外れていれば考える時間はある。 「それで、どうする?あまり考えている時間は無いと思うし、今なら送って行けるけど?」 「・・・ではリリエルさんには私からお伝えして来ますので、お願いします」 「あぁ、わかった」 この場所へ魔物が到達するには、まだ時間がある。ルークが離れても問題は無いし、リリエルが居れば少し位の遅れは問題無いだろう。何より力を温存しておきたいティナにしてみれば、ルークが送ってくれるのは有り難い。そう考えたティナは、リリエルに説明す…

  • 357話 事後処理15

    357話 事後処理15 357話 事後処理15 ルークの説明に考え込むティナ。確かに時間は無いが、だからと言って考えなしに行動すれば良いものでもない。 一方のルークもまた、ティナの思考を妨げるような真似はしない。下手に煽るような発言は、ティナを怒らせるだけだと知っているからだ。しかも、出来れば一刻も早くティナには立ち去って欲しいが、迂闊な事を言えば勘繰られる可能性がある。ポーカーフェイスで静観するのが最善なのだ。 しかも、幾らティナを信頼していようと心配が無い訳でもない。さっさと行って欲しいが、出来れば行って欲しくないというジレンマ。複雑な心境なだけに、表に出せない気持ちが大きかった。 1分程…

  • 356話 事後処理14

    356話 事後処理14 356話 事後処理14 ルークに諭され落ち着きを取り戻したティナ。そうは言っても、時間が無い事に変わりはない。そんなティナの気持ちを推し測る形で、ルークは内心で苦笑する。と同時に愕然とした。 (ふっ、焦る気持ちもわか・・・しまった!時間が無いのはオレの方じゃねぇか!!) そうなのだ。仕方ないとは言え、本来ならば何でもかんでも引き受けていられない。急いで止めに行かなければ、ミリエル達がやり過ぎてしまうかもしれないのだ。既に手遅れな気もするが、今なら半分程度の被害で済むかもしれない。仮に100の内90が終わっていたとしても、10を救えるのと救えないのでは大分違う。 ティナは…

  • 355話 事後処理13

    355話 事後処理13 355話 事後処理13 「お2人共、そこまでです!」 「・・・リノア?」 「リノア・・・さん?」 「私達も学園都市に向かいますから!」 「「っ!?」」 突然の宣告に、ルークとティナが揃って息を呑む。2人が驚いたのは、リノア達が付いて来る気なのかと思ったからだ。狙って告げたのなら策士だが、当然リノアにそのような意図は無い。焦って説明が不足しただけの事。 どのようにして向かうつもりなのかを言っていたら、2人がそこまで驚く事は無かった。だが転移するつもりだった2人に同行するとなれば、村の者達を置いて行くことになる。そこはまぁ百歩譲ったとしても、激戦が予想される学園都市にリノア…

  • 354話 事後処理12

    354話 事後処理12 354話 事後処理12 自分達を放って言い争うルークとティナに、戸惑いを隠せないリノア達。唯一冷静なのはリリエルだった。そんなリリエルにリノアが助けを求める。 「リリエルさん!どうすれば良いのでしょう!?」 「う〜ん、放っておけば?夫婦喧嘩はスライムも食わないって言うし」 「ですが、あまり時間が無いのですよね!?」 「それはまぁ、そうだけど・・・」 「止めては頂けませんか?」 「え、無理!」 「何故です!?」 「だって、あんなティナさん見た事無いし・・・怖くない?」 「確かにあそこまで声を張り上げるティナさんも珍しいですが・・・危険は無いと思うんですよ」 どんなに感情的…

  • 353話 事後処理11

    353話 事後処理11 353話 事後処理11 リノア達の件が一先ず片付き、ルークは今後の動きを確認する。 「それじゃあ、ティナはオレと一緒に学園都市へ向かうとして・・・リノア達はどうする?」 「どうする、とは?」 「一旦城へ帰るか、スフィア達の居る獣王国へ行くか、それともここに残るか」 最も安心なのは獣王国で匿って貰う事だが、リリエルが居るため何処に向かっても心配ない。問題なのはこの村の住人達だろう。転移で一緒に連れて行く訳にも行かないし、リノアに一任した以上はルークが勝手に決めるのはまずい。 「えぇと、いずれはここにも魔物が押し寄せるのですよね?」 「どう・・・だろうな?最悪の場合でも結界…

  • 352話 事後処理10

    352話 事後処理10 352話 事後処理10 何とも言えない表情のルークが待っていると、ログハウスから出て来たリノア達が揃って駆け寄る。 「お待たせしました!ティナさんもいらしてたんですね?」 「えぇ。あまり時間がありませんから」 「時間、ですか?」 「・・・・・」 状況を把握出来ていないリノア達が、互いの顔を見つめながら首を傾げる。こういう時、真っ先に事情を説明するべきルークは黙り込んだまま。シリアスをぶち壊された挙げ句、意図せず制限時間を設ける事態を招いた張本人。流石に自分の口からは言い出し難かった。 そんなルークに代わり、ティナが詳しく説明する。事態を飲み込んだリノア達は、ルークへと視…

  • 351話 事後処理9

    351話 事後処理9 351話 事後処理9 ルークは返答に窮する男性から視線を外し、残った者達を順番に観察して行く。すると牽制する形で先に観察していたティナが声を掛けた。 「ルーク、この方達は・・・」 「オッサンの集まりだな」 「・・・・・」 どういう訳か、今目の前に立っているのは50歳前後の男性ばかり。振り返って、先程斬り伏せた者達の顔を良く見る。此方はそれよりも若い者達で構成されている。ここから推察される事の1つを、ルークは思わず口にした。 「故郷を捨てられない年寄りと、都会に憧れて飛び出す若者の対立・・・」 「ルーク?」 「ごめん、冗談だから」 的外れである事はルーク自身もよくわかってい…

  • 350話 事後処理8

    350話 事後処理8 350話 事後処理8 自分の見た物がしっかりと伝わっていない。そう思ったルークは、ティナに詳しく説明を行う。 「事前に渡しておいたログハウスを出してたし、結界もきちんと設置してた。リノア達の姿は見えなかったから、ちゃんと立て籠もってるんだと思う。で、問題なのは・・・それを守るようにして取り囲む者達と、さらにその外側を取り囲む者達の姿があったって事だ」 「二重に包囲していた訳ではなく、ですか?」 「違うだろうな。包囲する者達が互いに武器を構えて向かい合ってたから」 「何故そのような状況に陥ったのかが気になる所ですが・・・リノアさん達を奪い合っているとは考えられませんか?」 …

  • 349話 事後処理7

    349話 事後処理7 349話 事後処理7 ティナを地下通路に残し、ルークは学園都市の外へと転移した。何れは訪れた事の無い場所にも転移出来るようになるのかもしれないが、今はまだ違う。理由は不明だが、転移出来るのは一度訪れた場所に限定される。 地下通路の入り口から、どの方角へどの程度の距離を進んだのか把握している。ならばそこから空を飛んで近付こうというのである。偵察が済んだらティナの待つ場所へ転移すれば良いのだから、何とも簡単な役目である。 ルークとしても、ティナを残しておく事に不安が無かった訳ではない。だがキッパリと断られては、しつこく誘う気にならなかった。ティナも自分の意思で飛び回れるならま…

  • 348話 事後処理6

    348話 事後処理6 348話 事後処理6 ティナの助言により、順調に罠を回避してペースを上げたルーク達。途中で待ち伏せしていた刺客も巻き込んでいる為、一切の無駄が無い。だが変わったのはルークの魔法だけではない。いつの間にか、ティナが先頭を突き進んでいた。 ティナが合流しても、ルークの引きの悪さが改善されるはずもなく。ティナの迫力に負けたルークが要求を受け入れたのだ。ルークとしても、罠の心配が無ければ誰が先頭でも構わない。刺客も魔法で対処出来るし、ティナ自身が先導する形なら遅いと言われる心配も無い。そういった意味では、渡りに船だろうか。 何の心配もいらなくなったルークだが、余裕が生まれた事でこ…

  • 347話 事後処理5

    347話 事後処理5 347話 事後処理5 ティナのお陰で気掛かりが1つ消え、表情が大分明るくなったルーク。そんな彼とは対象的に、ティナの表情はあまり優れない。何故なら会話をした分だけ時間を費やしたからだ。 「ルーク、すみませんが少し急いで頂けますか?皆さんの事が心配ですので・・・」 「ん?そんなに・・・いや、わかった」 そこまで心配せずとも、エリド村の者達であれば2、3日は大丈夫だろう。一瞬そう思ったルークだが、今回ばかりは急いだ方が良いかもしれない。そう考え直し、言い返すのを思い留まった。ミリエル達がやり過ぎないか、未だに心配なのだから。 再び長巻直しを収納し、ティナに目で合図を送ってから…

  • 346話 事後処理4

    346話 事後処理4 346話 事後処理4 「気になる点、ですか?」 「あぁ、道中の敵が使ってた武器なんだけど、なんかしっくり来なくてさ・・・」 「しっくり来ない?それは不自然な点があると言う事ですか?」 「不自然と言うか、何だろうな・・・見慣れてないからそう感じるのかな?」 「?」 珍しくハッキリしないルークの様子に、ティナはただ首を傾げることしか出来ない。 「これなんだけどさ・・・」 「これは・・・?」 ルークがアイテムボックスから取り出した物。それは非常に特徴的な形をした武器だった。 「特徴を見るに刀じゃなくて太刀っぽい気はするんだけど、何だかモヤモヤするんだよ」 「鋩子と横手筋・・・ル…

  • 345話 事後処理3

    345話 事後処理3 345話 事後処理3 時折飛び出す槍や矢を危なげなく躱しながら、ティナは地下通路を急いでいた。慎重に進むルークとは異なり、その速度は少々大胆なようにも見える。だが彼女はかなりの安全マージンをとっている。その理由は、度々現れる岐路での光景を見れば一目瞭然だった。 (左と真ん中の道に罠の跡、ここは右ですね。それにしても・・・) 思わず声に出しそうになるのを堪え、正解の道を選び出す。楽なのは間違い無いが、散乱する罠の残骸に抱いた感情は呆れだった。ここまでに通り過ぎた分岐点は10を超えただろうか。二択もあれば三択もあった。だがその全てに於いて、ティナは1つも間違う事なく正しい道を…

  • 344話 事後処理2

    344話 事後処理2 344話 事後処理2 スフィア達留守番組を獣王国へと送り届けたティナは、次いでナディア達討伐組を学園都市に送り届ける。そしてそのままルークの居るだろうミーニッツ共和国の王都へ向かおうとしたのだが、奇妙な光景に目を奪われ立ち止まる。 「ティナ、どうしたの?」 「あれは・・・何でしょう?」 「あそこ、防壁が無いわね」 「それよりも、そこかしこにある土の山は何かしら?」 「ルークが作ったんじゃないか?」 「それは間違いないでしょうけど、何のためかしら?」 普通では考えられない現象とあって、アスコットが誰の仕業か言い当てる。だがその意図まではわからなかったのか、フィーナが首を傾げ…

  • 343話 事後処理1

    343話 事後処理1 343話 事後処理1 ルークが学園都市で穴を掘る少し前。慌ただしく出撃準備を進めるエリド村に動きがあった。戦力にならないスフィアが戦支度を眺めていると、背後から声が掛けられたのだ。 「ただいま戻りました」 「ティナさん!と・・・ミリエルさん達?」 「やっほ〜」 振り返って現れた者達の名を呼ぶスフィア。だがその声は自信無さ気だった。何故なら、ティナ以外の見た目が全く同じだったからだ。リリエルだけはリノア達と共に居るはず。しかし何処かで入れ替わっていようものなら、瞬時に見分ける自信が無い。今回の場合、リリエルの名を出さなければ不正解は有り得ない。だが別行動の彼女達は予測が出来…

  • 342話 侵攻30

    342話 侵攻30 342話 侵攻30 ルークは一切の躊躇もなく、次々と貴族と思しき者達の首を刎ねて行く。自らが発した言葉通り、誰の声にも耳を貸さず。命乞いにも、罵声にも顔色1つ変える事なく。そんな悪魔の如き所業もやがて、最後の1人を残すところとなる。 「・・・さて、耳を貸さないとは言ったが、仮にも一国の王だ。残される者達への申し送りもあるだろうから、少しだけ待ってやる。今回の一件に加担していない文官達に、簡潔な引き継ぎをするだけの猶予をやろう」 「何故・・・何故だ!?何故ここまでの事をする!?」 「オレに対する問いに答えるつもりはない。時間を無駄にするな」 「貴様!?」 「言い残す事が無いな…

  • 341話 侵攻29

    341話 侵攻29 341話 侵攻29 自分が駆り出される事は防いだが、それが1日続くかはわからない。だからこそルークは予定を繰り上げる事にした。防壁が破壊され、騒然とする王都を駆け抜け王城を目指す。 (まだ結構王都に残ってる者が居るんだな・・・まぁ勧告はした。自分の行為を正当化するつもりは無いが、これ以上は自己責任だろう) 王都に居座る人の多さに驚きつつも、彼らに何が起きても知った事ではない。そんな事を考えながら疾走する。命を奪う事に躊躇いは無いが、それも相手によりけり。自分達に害を為そうとする者に限られる。今回の場合、民には逃げる時間を与えているのだ。生まれ育った街を捨てられない。そう言っ…

  • 340話 侵攻28

    340話 侵攻28 340話 侵攻28 自身の全力を確認し、満足そうに頷くルーク。とは言っても、彼の表情に笑みは無い。何故なら正確な比較対象が無く、それがどの程度の物なのかを測りかねていたのだ。故にその感想はと言うと―― 「まぁこんなもん・・・なのか?考えてみたら、他の神族の実力なんて知らないんだよな。カレンは別にして」 そう。幸か不幸か、他の神族とまともに争った経験が無い。戦闘が全てではないが、手っ取り早く実力差を測るのなら戦ってみるのが一番である。とは言うものの、ルークは別に戦闘狂でもない。食料調達や自衛の為に力を振るう事はあっても、好き好んで自分から殴り掛かるような真似はしない。だからと…

  • 339話 侵攻27

    339話 侵攻27 339話 侵攻27 ルークは自身の魔力に関する確認を終え、次いで神力の確認へと移行する。普段は魔力のみを使っているとあって、神力については保有量すら正確に把握していない。何となくこれ位、という感覚でしかないのだ。 おまけに、力を封じて来なければ、その感覚もそれなりに正しかっただろう。要は全身に取り付けていたギプスを外したものの、その後の確認を後回しにしていたのだ。感覚との齟齬があって当然である。 神力を蔑ろにしているようにも思えるが、一応ちゃんとした理由もある。きちんと教わったのが魔法、つまり魔力の扱いだったのが1つ。まだまだ魔力操作に向上の余地がある為、納得するまで極めよ…

  • 338話 侵攻26

    338話 侵攻26 338話 侵攻26 宣言通りに5割の魔力を放出し、ルークは上空を眺める。だが特に変化が見られなかった事で、魔力を一気に高めて行く。 「・・・60・・・80・・・100%」 たったの数秒で全開に達し、再度上空へと視線を移す。だがまたしても変化は見られない。この時点で検証を止めるべきだったのだが、ルークは半ばムキになっていた。 「へぇ・・・これでもダメか。抑え込むんじゃなくて散らすって言う特性のせいなんだろうけど、良く考えられた魔道具みたいだな。ただその分、燃費は悪そうだけど。しかしこのままだと検証にならないし・・・限界までブーストしてみるか?いや、壊す前にアレを確かめないと・…

  • 337話 侵攻25

    337話 侵攻25 337話 侵攻25 一先ずの答えを導き出し、ルークは王城へと視線を向ける。敵兵を殲滅したのだから、次は王城である。邪魔する者はほぼ居ないだろう。住民や冒険者が立ちはだかる可能性はあるが、それも極一部のはず。普通は単独で軍を滅ぼすようなバケモノに近付いたりはしない。 最早のんびり歩いて向かっても良い程なのだが、ルークが向かう様子は無かった。 「あとは王城を落とすだけなんだが・・・その前に、残っている検証を済ませるとしようか」 残っている検証。それは他でも無い、ルークの魔力を封じている魔道具。更には王都に張り巡らされた結界のようなもの。どちらも滅多にお目にかかれる代物ではなさそ…

  • 336話 侵攻24

    336話 侵攻24 336話 侵攻24 思わぬ展開だったのはルークに限っての事ではない。王城から事態を見守る者達も同様であった。 「今のは一体・・・」 「な、何が起こった・・・」 「魔法、ではないのか・・・」 ルーク以外の全員が倒れ伏す光景に唖然とする国王達。例え気を失っただけにしても、魔法以外の手段が思いつかない。だが彼らが腹を抱えて笑っていたように、ルークの魔力は封じられている。それを画策し、実行させたのは他ならぬこの者達なのだ。だからこそ余計に信じられなかった。 「へ、陛下!如何致しますか!?」 「このままでは何れ此処に来てしまいますぞ!?」 戦う力を持たない宰相達が慌てふためく。彼らは…

  • 335話 侵攻23

    335話 侵攻23 335話 侵攻23 幾ら無防備だったとは言え、鍛え抜かれた人間の頭部のみを蹴り飛ばす。そんな芸当を目の当たりにしても、3人は到底信じられない。一体どれ程の力があれば、そんな事が出来るのだろう。そう思わずにはいられない。だからこそ、彼らは自分達がとんでもない思い違いをしていた事に気付く。 「「「バケモノ・・・」」」 戦慄する彼らを他所に、ルークは美桜へと視線を向ける。放り投げはしたのだが、愛刀である事に変わりはない。敵の武器よりも回収する優先度は高いのだ。そう考え、美桜を回収すべく移動する。何気なくただ移動しただけなのだが、3人の暗殺者にとってそうではなかった。 「「「消え・…

  • 334話 侵攻22

    334話 侵攻22 334話 侵攻22 見ていられないような演技を続ける大根役者。彼は演技をしながら考え込んでいた。そんな事だから下手な演技に拍車が掛かるのだが、この場にそれを気にする者が居ないのは救いだったのだろう。考え事に集中するあまり、顔まで変になっているのだが。 「ウィンドカッター!ウィンドカッター!!ひ○ちカッター!!!」 (しかし、敵が引いた理由がわからないな。向こうの魔法無効化を解除して、遠距離攻撃するつもりか?いや、それだとオレに逃げられるだろ。あと考えられるのは・・・なるほど、そういう事か) 敵兵の中から抜け出し、ルークへ向かって歩み寄る者達の姿。相手が5人とあって、一騎打ち…

  • 333話 侵攻21

    333話 侵攻21 333話 侵攻21 遠距離からの投擲か、乗り込んでの蹂躙か。悩み続ける事十数秒――先に動いたのは敵兵だった。 「っ!?ぜ、全軍突撃!!」 「「「「「うぉぉぉ!」」」」」 指揮官の号令と共に全兵士が一斉に駆け出す。想定外の事態に驚いたルークは、思考を瞬時に切り替えた。 (っ!?罠じゃなかったのか?自分達から魔法無効化の領域外に出るなんて、殺してくれと言ってるような・・・いや、仕掛けて来るならそのタイミングか) 数千、数万の兵士を犠牲にした上での罠。そう考えれば合点がいく。兵士を盾にした上で、何かをするつもりなのだろう。そうなると、自ずと対処は決まってくる。 「酷い事をするもん…

  • 332話 侵攻20

    332話 侵攻20 332話 侵攻20 ティナ達が学園長から情報を引き出そうとしている頃。ミーニッツ共和国の王都へと侵攻していたルークは、攻略法を模索していた。無論考えるだけではなく、同時に行動も起こしている。 「他の属性魔法や魔弾を撃っても効果無し。つまり魔力を掻き消すのは確定。あとは吸収と霧散のどちらかを判断する必要がある、か。乗り込んでみるのが手っ取り早いけど・・・それで身動き取れなくなったらアホだよな。」 突撃してみて魔力を吸われたら吸収。非常にわかり易い検証方法だが、試す事は出来ない。否、王城へと赴く必要がある以上、いずれ試さねばならないのだが、それにはまだ早いというだけの事。ある程…

  • 331話 侵攻19

    331話 侵攻19 331話 侵攻19 視線で制止されたように感じたカレンが問い掛ける。 「止められた気がしたのですが、私の勘違いでしょうか?」 「いいえ、勘違いではありませんよ。」 「では・・・どういうつもりです?」 一刻も早く情報を伝えなければルークが危険かもしれない。だと言うのに、ティナが待ったを掛ける意図がわからない。 「情報伝達は迅速である程効果的ではありますが、不完全では意味がありません。寧ろ逆効果です。」 「不完全とは?」 「仮に魔法や真道具を封じられたとして、兵数で勝っていた旧帝国軍が及び腰だった事の説明になるでしょうか?」 「確かにティナさんの言う通りですね・・・」 ティナの…

  • 330話 侵攻18

    330話 侵攻18 330話 侵攻18 一方その頃―― 政務に励むスフィアの手が止まる。今日は訓練する雰囲気ではなかった為、全員が地下室へと集合していたのだが――何人かがスフィアの様子に気付いて顔を向けた。 「・・・学園長。昨晩、学園都市が魔物の襲撃に遭ったようです。」 「っ!?」 「世界政府が派遣した兵士約2000名の内、死者約100名、負傷者は重軽傷合わせて400名以上との事です。」 「・・・・・。」 「保って今日明日、といった所でしょうか?」 「・・・・・。」 「帝国が地下通路の出入り口を封鎖している為、利用者に混乱が広がり避難に遅れが出ているとか。魔物が学園都市内部に入り込むようであれ…

  • 329話 侵攻17

    329話 侵攻17 329話 侵攻17 翌朝、ルークの姿はエリド村にあった。朝食を終えて一息ついた頃という、少し遅い時間帯。本日の政務が滞るのはマズイという体で、書類がある程度揃うのを待ち全て持参した格好だ。 「――と言う訳で、スフィアには此処で執務をして貰いたい。」 「・・・貴族絡みの案件が大半を占めているのは何故でしょう?」 「・・・偶々、じゃないかな?」 「・・・はぁ。わかりました。」 「・・・よろしく頼むよ。」 何となく事情を察したスフィアは、それ以上追求する事なく了承した。ルークとしても、何を言っても藪を突く事にしかならないと判断し余計な弁解はしない。単に押し付けただけなのだから、弁…

  • 328話 侵攻16

    328話 侵攻16 328話 侵攻16 自重はしないと宣言したものの、考えなしに知識を広めるのは別問題。万が一異世界転移組が文明テロを起こしたとしても、それは面倒を見ているシルフィ達の責任。彼女達が何とかするだろうと思うしかなく、ルークに出来るのはこの場の面々に釘を刺す事だけであった。 「まぁオレ達に言えるのは、迂闊に知識をひけらかすのは控えようって事だけだ。・・・相当脇道に逸れたから話を戻そう。とにかく、オレは今後一切自重しない。だからみんなには後始末を頼みたいんだ。まずは責め滅ぼした後の隣国について、かな。詳しくは事後の相談になると思うけど。」 「その事で聞いておきたい事、伝えておきたい事…

  • 327話 侵攻15

    327話 侵攻15 327話 侵攻15 賑やかな晩餐が終わり、一息ついた所でルークが疑問に思っていた事を口にする。 「それで、カレンがオレを夕食に誘った本当の理由は?」 「え?」 「単にみんなで食事を摂ろうと思ったから、ってだけじゃないよな?」 「・・・それだけですよ?」 「・・・そうか・・・ならいいんだ。」 真っ直ぐな性格だが、別に駆け引きが全くの苦手という訳でもない。カレンも感情を表に出さない程度の誤魔化しなら出来る。言えない、言いたくない内容なのかもしれないと判断し、ルークはそれ以上の追求を諦めた。 これだけのメンツが揃った状況で、やましい秘密を抱え込んでいるとも思えない。いくら夫婦と言…

  • 326話 侵攻14

    326話 侵攻14 326話 侵攻14 ティナから普段のニコニコ微笑む表情が消えた事で、全員が固唾を呑む。視線を集めたティナは、逸していた視線をカレン達へと戻す。 「・・・対応策を相談する前に、済ませておかなければならない事があります。」 「えぇ、時間が掛かりますからね。先にルビアさん達を――」 「昼食の支度をしましょう!」 「「「「「・・・・・」」」」」 議論が白熱した場合、ルビア達がルークと鉢合わせするかもしれない。そう考えたスフィアの提案を遮る形で、ティナが欲望を丸出しにした。本人は至って真面目なのだが、他の者達は呆れて物が言えない。 「どうしました?」 「・・・何でもありません。」 「…

  • 325話 侵攻13

    325話 侵攻13 325話 侵攻13 ほぼ全員が呆気にとられる中、スフィアは思考をフル回転させる。 「(少なく見積もって、とおっしゃいましたね?ルークが何処まで出来るかはその時になってみないとわからないと言う事。ならば今考えるべきは・・・)すみません、カレンさんに質問があります。」 「何です?」 「ルークはどうやって傭兵や冒険者達の命を奪ったのでしょう?」 「・・・・・。」 「カレンさん?」 カレンは上手く言葉を濁して説明を行ったのだが、スフィアの問い掛けに黙り込む。今嘘を吐いた所で、調べればすぐにバレる。どうやっても言葉では勝てない事を再認識し、迷った挙げ句正直に告げる事にした。 「・・・…

  • 324話 侵攻12

    324話 侵攻12 324話 侵攻12 再びエリド村を訪れたカレンだったが、先程の体験を引き摺っていたせいで動き出すことが出来ない。そんなカレンの様子に気付いた者達が慌てて駆け寄る。 「カレンさん!?」 「カレン様、大丈夫ですか!?」 「・・・・・えぇ、すみません。もう大丈夫です。」 心配は要らない――そう告げるカレンだったが、説得力は皆無だった。 「ちょっと!すごい汗じゃない!!」 「何かあったのですか!?」 露出の少ないドレス姿とあって、全身がどのような状態なのかは窺い知る事が出来ない。しかし唯一露出している顔、額は汗でびっしょりだった。 「説明しますので、時間を頂けますか?」 「わ、わか…

  • 323話 侵攻11

    323話 侵攻11 323話 侵攻11 あっさりと防壁を破壊し、学園都市を守る兵達の下へと移動したルーク。彼は生き残った傭兵や冒険者、辺境伯の私兵が集まるのを静かに待っていた。 「・・・ん?」 両腕を組んでいたルークは、不審な気配を察知する。 (随分離れた位置で反応したヤツがいるな。この感覚は・・・カレン?ふ〜ん、気付いたのは流石だけど、その後の行動がダメだな。自分が感じ取れるという事は、当然相手にも気付かれたと考えるべきだ。距離をとるなら全力で後退しないと) 自身の警戒に引っ掛かるも、瞬時に数歩後退ったカレンを称賛する。しかしその後すぐにダメ出しを行った。偵察等の場合、気付かれた時点で失敗な…

  • 322話 侵攻10

    322話 侵攻10 322話 侵攻10 カレンが忍び寄ろうとしている頃、ルークは兵士達が普段立ち入れない場所に居た。 「傭兵達が集まるまでに、さっさと見つけ出すとするか。」 今立っている防壁のすぐ内側は貴族街。恐らくは存在するであろう、秘密の出口を探し出そうというのである。だが当然、何のヒントも無い。目撃者も居ないのだから、まずは目で見るしかない。 「・・・まぁ、衛兵や門番の詰め所みたいな、わかり易い物は無いよな。だが、それに近い物は何処かに無いとおかしいはず。とは言っても・・・」 複数の貴族が関わっているとしても、それぞれが勝手に開閉しているとも思えない。何処かに管理している者達が待機する場…

  • 321話 侵攻9

    321話 侵攻9 321話 侵攻9 スフィアと別れたカレンが向かった先は学園都市――ではなく帝国の城内。ここからルークの大まかな位置を特定して移動する事にした。何故そんな回りくどい事をするのかと言うと、いきなり転移してルークと鉢合わせを避ける為である。 気付かれないように注意しているのだから、当然気配を消している。だが突然視界に入れば誰だって気が付く。ドレス姿のカレンはとにかく目立つのだ。だがカレンが心配しているのはソコではない。 (今後も気付かれない為には、臨戦態勢のルークに察知されない距離を把握しておく必要がありますね。ルークの気配は・・・防壁の辺りですか。森なら絶対に見付かりませんが、近…

  • 320話 侵攻8

    320話 侵攻8 320話 侵攻8 エリド村へと転移したカレンは、再度スフィアを呼んで状況を説明する。 「大体わかりました。そうなると、明日からは首都を攻めるかもしれませんね。」 「学園都市ではなく?」 「辺境伯、つまり領主を討ったのですから、必要以上の攻撃は虐殺となります。まぁ、剣を向けた冒険者達も生かしておかないでしょうが、そちらは処罰ですからね。本日中に済ますでしょう。」 「なるほど。でしたら明日は、首都を遠くから観察しておきます。」 「お手数をお掛けしますが、よろしくお願いしますね。」 カレンとスフィアが話し合って作戦を決めているのには理由がある。1つは、カレンが考えるよりも遥かに効率…

  • 319話 侵攻7

    319話 侵攻7 319話 侵攻7 ―――まえがき――― 今回、残酷かつ不謹慎と言うか無神経な描写があります。最後まで悩んだのですが、カレンやルークの価値観が人族とは違う事を表現するために書きました。苦手な方は読まない事をお勧めします。 ――――――――― ミーニッツ共和国の王都、正確には首都へと転移したルークは現在、上空から城を見下ろしていた。正面から押し入ろうと考えたのだが、生首を掲げて歩くには距離があり過ぎる。なので、首都を飛ばしていきなり城へ向かう事にしたのだ。 「さて、どういう形で届けようかな・・・」 どうするのが最も効果的かを考えつつ、足元の城を見回す。正面切って乗り込むのも良いが…

  • 318話 侵攻6

    318話 侵攻6 318話 侵攻6 蹂躙劇から数分後、防壁の外に立つのはルークだけとなっていた。とは言っても、全員の命を奪った訳ではない。かなりの人数を撃ち漏らしてした。と言うのも、学園都市内に逃げ込まれたのだ。回り込んで逃げ道を塞ぐ事も出来たのだが、敢えてそうしなかった。何故かというと、揺さぶりや恐怖を与える為である。 辺りを見回した後、ずっと見えていた者達の所へと転移する。 「責任者は誰だ?」 「「「「「っ!?」」」」」 突然目の前に現れ、驚きを顕にする兵達。そのせいでルークの問い掛けを理解することが出来なかった。仕方なく同じ質問を繰り返す。 「責任者は誰だ?と聞いている。」 「え・・・」…

  • 317話 侵攻5

    317話 侵攻5 317話 侵攻5 カイル王国を後にしたカレンは、帝国を飛び越えて学園都市近郊へと足を運んだ。とは言っても予定外の行動。本当に何となく来てみただけである。 「あれは・・・」 特大の火球を乱れ撃つルークの後ろ姿を視界に入れ、次いで傍らに呆然と立ち尽くす人物を注視する。特徴的な背格好から断定し、状況を確認すべく歩み寄る。常人であれば、大勢が炎に包まれる光景に思う事は多いのだが、カレンがそれを気にする様子は無い。 「随分と派手にやっていますね?」 「カレンか・・・丁度良かった。学園長を連れて行って貰えないかな?」 「構いませんよ。」 ルークの頼みに即答し、学園長の下へと近付く。学園長…

  • 316話 侵攻4

    316話 侵攻4 316話 侵攻4 ルークによる一方的な蹂躙劇が繰り広げられる少し前。帝国内にカレンの姿は無かった。 「さて、いきなり強襲しては人的被害が出ますか・・・少し様子を見るとしましょう。」 そう呟くカレンの現在地はと言うと、万人の予想に反してカイル王国の帝都から少し離れた場所。街道から外れた所をゆっくりと歩いていた。 人気のないその道を、ドレス姿の美女が1人で歩いている。ハッキリ言って異様な光景であった。当然王都の守りを預かる兵達が気付かぬはずもない。 「お、おい!アレを見ろ!!」 「ん?バケモノでも出たのか?」 人々の往来が消え、監視しか仕事の無い兵の1人が指を指す。座り込んで目を…

  • 315話 侵攻3

    315話 侵攻3 315話 侵攻3 激しく動き回りながらも、火球を間髪入れずに叩き込み続ける皇帝。呆けている暇など無い学園長がその後を追う。彼女が選べる選択肢は2つ。体を張って火球を防ぐか、それを放ち続ける相手を止めるか。どちらにも共通して言える事は、相手の動きに食らいつかねばならないという事。 しかし、今の彼女が勝っている所と言えば人生経験の量くらいだろうか。戦闘経験に於いても勝ってはいるのだが、正確には戦闘回数と表現せざるを得ない。潜り抜けて来た修羅場の数、つまりは敵の強さで言えばルークの圧勝である。 スライムやゴブリンと1万回戦った所で、ドラゴンとのたった1回の戦闘にすら遠く及ばない。そ…

  • 314話 侵攻2

    314話 侵攻2 314話 侵攻2 全員が同時に考え込み、一番最初に答えを導き出したのは学園長だった。とは言え、彼女が教育機関のトップだったからではない。この場に居合わせた者達に、愚かな選択をさせまいとしたからである。 (どうする!?・・・いや、迷っていては無駄な犠牲者が出てしまう!やむを得ん!!) 最も迂闊な行動を起こしそうな辺境伯へと視線を移し、彼女は声を上げる。 「私が話をつけて来る!それまでここで待っておるのじゃ!!」 「が、学園長!?」 防壁から身を乗り出した学園長を制止すべく、副隊長が声を掛ける。だが学園長の行動は素早く、彼女はその場から動けなかった。 十数メートルの高さから飛び降…

  • 313話 侵攻1

    313話 侵攻1 313話 侵攻1 学園都市に起こった異変に、いち早く気付いたのは防壁の上に居た兵士達。 「おい!あれは何だ!?」 「・・・人?」 「どうやって外に出たんだ?」 平野を闊歩する、人らしき者の姿。どの街も門を硬く閉ざしたままの現在、人が歩いているのは奇妙な光景だった。スタンピード直後は周辺の村から逃げ延びた者達で溢れ返ってはいたのだが、今は落ち着いている。冒険者達にも手が負えないとわかると、態々防壁の外へ出ようとする者は居なくなったからだ。 「・・・おい、立ち止まったぞ?」 「ひょっとして、歩き疲れたんじゃないか?」 「とにかく隊長に報告して、誰か向かわせた方がいいんじゃないか?…

  • 312話 侵攻作戦5

    312話 侵攻作戦5 312話 侵攻作戦5 帝国へと戻ったカレンは、着いて早々溜息を漏らす。 「はぁ。全く彼女達は・・・」 「カレン?」 執務室にて支度中だったルークが、不思議に思って声を掛ける。しかしカレンは、ルークと視線を合わせると首を横に振った。 「いいえ、何でもありません。」 「そう?まぁ、カレンがそう言うならいいんだけど・・・。それじゃあ、カレンも戻って来た事だし、そろそろ行くとするか。」 「あ、待って下さい。」 「ん?」 出発しようとしたルークをカレンが呼び止める。特に心当たりの無いルークは、首を傾げるしかなかった。 「留守番の必要はありませんよね?」 「まぁ、そうだな。・・・出掛…

  • 311話 侵攻作戦4

    311話 侵攻作戦4 311話 侵攻作戦4 スフィアの意見を聞き、これからどう行動するべきかを考えるカレン。だがそれには、圧倒的影響力を誇る人物の考えが反映されていない。しかしこの場に居ない以上、カレンとしてはどうする事も出来なかった。 「私の行動方針を決定する為にも、是非彼女にもお話を伺っておきたかったのですが・・・仕方ありませんね。あまり時間もありませんし、そろそろ戻らせて頂きます。」 「彼女って・・・ティナ?」 カレンが思い浮かべる人物の名を、ナディアが口にする。何故カレンがティナの意見を参考にしようと考えたのかと言うと、対立した時に最も厄介な相手となるからだ。加えて、カレンが政治に疎い…

  • 310話 侵攻作戦3

    310話 侵攻作戦3 310話 侵攻作戦3 カレンが向かった先は、村から少し外れた所にある広場。そこにはエリド村の住人以外の姿もあった。 「皆さんの訓練は順調ですか?」 「カレン様・・・見ての通り順調です。」 呼び掛けられたアスコットがカレンを一瞥してから視線を向ける。その先には、汗を流すスフィア達の姿があった。 「張り切っている所をすみませんが、少し時間を頂きたいのです。」 「全員ですか?」 「いいえ、スフィア以外は希望する者だけで構いません。」 「わかりました。では、少しだけ失礼します。」 断りを入れ、エレナの所へと歩き出すアスコット。スフィアの指導を努めているのが彼女であった為、先にエレ…

  • 309話 侵攻作戦2

    309話 侵攻作戦2 309話 侵攻作戦2 とりあえず魔法を使って衣服と髪を乾かし、ルークは気を取り直してカレンと向き合った。本来であれば真っ先にユーナへと質問を投げ掛けるのだが、戻るのに時間の掛かった理由を尋ねておこうと考えたのだ。 「思ってたより遅かったけど、向こうで何かあったのか?」 「皆さんに事情を説明していたのですよ。」 「そうか・・・で、説明したのにスフィアが来ない理由は?」 「来ても力になれないから、との事でした。」 「まぁ、戦争は得意じゃないだろうからな。」 スフィアは戦争を回避する事には長けているが、荒事には疎い。ボードゲームが強いからと言って、実際に戦場で指揮をとっても勝て…

  • 308話 侵攻作戦1

    308話 侵攻作戦1 308話 侵攻作戦1 自身の執務室へと戻ったルークに、帰りを待っていたカレンが声を掛ける。 「おかえりなさい。どうでした?」 「・・・・・。」 「ルーク?」 険しい表情を浮かべて黙り込むルークに、カレンが訝しげに首を傾げる。 「あ、あぁ、ごめん。ちょっとばかり予定変更だ。オレが隣国を滅ぼす。」 「どういう事です?」 「実は――」 カレンに臨時総会でのやり取りを説明し、最後に自身の考察を付け加える。 「――という事があったんだ。」 「そう・・・ですか。」 「で、あいつらの表情を見て思った。あの国の民は、黒幕に辿り着けないかもしれない。」 「え?」 「いや、正確には・・・辿り…

  • 307話 臨時総会2

    307話 臨時総会2 307話 臨時総会2 各国の代表が答える事の出来ぬまま、悪戯に時間ばかりが過ぎ去るかに思われた。しかし沈黙を破ったのは、何かと噛み付いて来るラカムス王。 「巫山戯るな!貴族が平民の為に犠牲となれるはずがないだろう!!寧ろ逆ではないか!」 「・・・平民が貴族の犠牲になれと?」 「そうじゃ!」 「だったらそう国民に言えばいい。解決策も見つかったみたいだし、オレは帰らせて貰うぞ?」 「なっ!?」 話は終わったとばかりに立ち上がったルーク。そのまま出口へ向かって歩き出すのだが、当然各国が納得出来るはずもない。 「待って頂戴!」 「・・・ベルクトの女王。まだ何か?」 「今のは一国の…

  • 306話 臨時総会1

    306話 臨時総会1 306話 臨時総会1 翌日――早朝にも関わらず、各国の代表が一同に介していた。本来ならば昼過ぎに行われる会合なのだが、一刻も早い対応を迫られた者達の思惑によるものである。・・・ある一国を除いて。 「遅い!まだ来んのか!!」 「ラカムス王よ、まだ時間にはなっておらんぞ?」 「・・・チッ!」 未だに姿を見せない国の代表に苛立ちを隠せず、叫んだのはミーニッツ共和国の国王ラカムス。それを窘めたのはカイル国王。ラカムス国王は時刻を確認し、それが事実とわかって舌打ちする以外になかった。 平時であれば、器の大小で片付けられる両者の対応も、今は違って見える。余裕の有る国と無い国。各国の代…

  • 305話 前代未聞

    305話 前代未聞 305話 前代未聞 カレンとの作戦会議を兼ねた昼食の後、ルークは城内に居る役人達を一同に集めた。 「忙しい所、集まって貰った事に感謝する。」 「いえ、陛下が迅速に政務を執り行って下さったお陰で、皆に余裕が出来ましたので。」 感謝を告げたルークに、役人の1人が正直に答える。スフィアも優秀だった為、元々時間に追われている者などいなかったのだが。要はお世辞である。不在がちな皇帝に臍を曲げられては堪らないのだ。 そんな事などルークは百も承知。気にせず話を進める。 「早速本題に入るが、リノア達の行方と犯人の目星については?」 「・・・未だ何の手掛かりも得られておりません。」 全員の視…

  • 304話 次なる一手

    304話 次なる一手 304話 次なる一手 翌日の昼前。執務机に向かって奮闘しているはずのルークは、カレンと共にボーッとしていた。 「・・・平和だな。」 「・・・平和ですね。」 なんのことはない。スフィアを凌ぐスピードで執務を熟し続けた結果、仕事が無くなったのである。スフィアの名誉の為に言っておくが、別に彼女の仕事が遅い訳ではない。寧ろかなり早い部類だろう。彼女が普段から仕事を溜め込まなかったお陰で、今のルークがあるだけの話。 だが日頃から眺めているだけのカレンには、それがわからなかった。 「スフィアは優秀だと伺っていましたが、実はそれ程でもありませんでしたか?」 「ん?かなり優秀だと思うよ?…

  • 303話 種明かし

    303話 種明かし 303話 種明かし 瞬く間に8人の暗殺者を討ち取り、ルークは天井へと視線を移す。その姿にカレンが問い掛ける。 「・・・追いますか?」 カレンは自分が追い掛けるべきか、という意味で尋ねたのだが、ルークの返答は違う意味だった。 「放っておけばいいよ。」 「え?では、一体何の為に逃したのですか!?」 「仲間の所に戻って貰う為だけど?」 「でしたら追い掛ければ良いではありませんか!」 あの程度の実力ならば、気付かれずに尾行する自信がカレンにはあった。そのまま敵の本拠地まで行ければ、リノア達を見付け出して解決するはずである。だがそれをしないルークに不満を抱き、カレンは声を荒げてしまう…

  • 302話 襲撃

    302話 襲撃 302話 襲撃 ティナ達がエリド村へ行ってから3日後の深夜。ルークとカレンは揃って執務室に居た。ルークは政務の続きを、カレンは紅茶を楽しんでいた。 (・・・どうやら来たようだな) ほとんどの者が寝静まり、巡回する兵士達の足音しか聞こえない時刻。ルークは執務室に無音で近付く者達の気配に気が付いた。 「カレン、ちょっといいか?」 「何でしょう?」 事情を知る者達にとっては白々しい演技も、ルークの日常を知らない者達にとっては自然に見えた。ルークの横に回り込み、手にした書類を覗き込むカレン。出来る限り自然に近付いた2人が小声で認識をすり合わせる。 「人数は?」 「天井に4人、廊下の離れ…

  • 301話 真意

    301話 真意 301話 真意 翌朝、ティナ達をエリド村へ送り届けて執務室に戻ったルーク。政務に取り掛かろうとした彼の下をカレンが訪ねて来た。 「少しよろしいですか?」 「カレンか。何?」 「ティナやスフィアだけでなく、エレナ達まで遠ざけたのは何故です?」 「数日の内に、暗殺者が来るからだけど?」 「エレナ達が遅れを取るとは思えないのですが・・・」 暗殺者が来る。もしそれが本当ならば、エレナ達が残っていた方が対処は容易なはず。それなのに実力者揃いの冒険者集団を尽く遠ざけてしまった。そんなルークの考えが読めないカレンが、遠回しに真意を問う。 「何時来るかもわからない相手に労力を割くのは勿体ないだ…

  • 300話 ティナとの駆け引き

    300話 ティナとの駆け引き 300話 ティナとの駆け引き ――コンコン 扉をノックする音に、ルークは次なる刺客を思い浮かべる。 「(来たか。次は多分・・・)どうぞ!」 ――ガチャ 「失礼します。」 「っ!?・・・驚いた。てっきり村の誰かだと思ってたんだけどな。」 「スフィアもそのつもりだったようですよ?お母さんに頼んでましたから。」 「へぇ。となると、ティナが来たのは・・・」 「私の考えです。」 スフィアならばティナに頼むのは最後だろう。そう予想していただけに、ルークは早々に負けを認める。 「やっぱりティナに・・・ユキには適わないな。」 「シュウ君の考えている事はお見通しですから。ですが、流…

  • 299話 暇

    299話 暇 299話 暇 昼食を摂ってから1時間が経過した頃、バタバタと廊下を走る音に気付いたルークが顔を上げる。何事かと思っていると、執務室のドアが勢い良く開け放たれた。 「はぁ、はぁ、はぁ・・・一体どういうつもりですか!」 「スフィア・・・何の話だ?」 ノックも無しに押し入ったスフィアを責めもせず、ルークは淡々と問い掛ける。 「わかっていて聞いているのでしょう!全ての取引を停止した件です!!」 「あぁ、それか。売られた喧嘩を買ったまでだ。」 「売ら・・・子供じゃないのですよ!そんな理由で納得出来るはずがないでしょう!!国の損害、何より、どれだけの民が犠牲になると思っているのですか!?」 …

  • 298話 ルークの本心

    298話 ルークの本心 298話 ルークの本心 翌朝、ルークは執務机に向かっていた。普段はスフィアに任せきりの仕事だが、流石に今日ばかりは自分がやるしかない。彼女は5日も寝ていなかったのだから、そう簡単には目覚めないだろうとの考えからだ。 そんなルークの下に、困り顔のカレンが訪れる。 「ルーク、少しよろしいですか?」 「ん?何?」 驚異的な速度で書類を処理している為、ルークは顔も上げずに聞き返す。 「ルビアさんから迎えに来るよう催促があったのですが・・・」 「ダメだって言っといて。」 「・・・・・。」 ハッキリと拒絶したルークに、カレンは何も言い返さず立ち尽くす。納得していないのだと悟り、ルー…

  • 297話 対策

    297話 対策 297話 対策 自身の執務室に戻ったルークは、食事を続けるフィーナ達の視線を浴びる。何やら険しい表情のルークに誰もが尻込みする中、仕方なく声を掛けたのはティナであった。口いっぱいに料理を詰め込んで。 「んーん、んんんふぁっふぁふぉふぇふふぁ?」 「「「「「はぁ?」」」」」 『ルーク、なにがあったのですか?』そう言ったのだが、当然何を言っているのか理解出来る訳がない。しかしルークは別である。 「・・・リノア達が誘拐されたそうだ。」 「「「「「はぁ!?」」」」」 今度は何を言っているのか聞き取れた。しかし意味がわからない。だからこそ、全員そろって声を上げたのである。そしてルークが説…

  • 296話 誘拐

    296話 誘拐 296話 誘拐 フィーナ達を驚かせたものの、無事に合流を果たしたシュウ達一行。そのままの足でダンジョンを出た後、すぐに帰宅――とはならなかった。エアとの約束を果たす必要があったからだ。 外での食料調達がままならない状況において、ダンジョンが使えないのは由々しき事態。しかしアクアとアースが留まっているせいで、全ての冒険者達がダンジョンから出ようと難易度は変わらない。そうなると、ダンジョンの利用を控えるのは然程問題にならなかった。オマケにダンジョンからはドラゴンが飛び出しているのだ。誰だって近付きたくない。 だがそのままでは獣王国の食料が不足する。事情説明と食料提供を兼ね、シュウ達…

  • 295話 合流

    295話 合流 295話 合流 「ヒィィィ!」 「魔物はまだ復活していませんね・・・」 あまりの速さに悲鳴を上げるナディアと、呑気に周囲を観察するユキ。2人の反応があまりに対局なのは、そのまま各々の実力を表している。瞬間的にならば今のエアと同等かそれ以上の速度を出せるユキ。そして、まだまだ遠く及ばないナディア。 残るシュウはと言うと、周囲の観察は2人に任せて思考に耽っていた。 (・・・やはり竜王達の行動が気になるな。確かに筋は通っているが、オレ達を乗せる必要はない。寧ろ無関係を装うのであれば、乗せるべきじゃないのは明らかだ。正直乗せて貰って助かるけど・・・オレを遠ざけるのが目的だったのかもな)…

  • 294話 帰路へ

    294話 帰路へ 294話 帰路へ シュウ達の会話が一段落したのとほぼ同時。答えの出たエア達が歩み寄る。 「待たせたのぉ。」 「どうするのか決まったか?」 「あぁ。すまぬが、どちらも譲って欲しいのじゃ。」 「わかった。好きにしてくれ。」 そう告げるとシュウはボス部屋の入り口に向かって歩き出す。これには流石の竜王達も面食らう。 「ま、待つのじゃ!」 「何だ?」 エアに呼び止められ、面倒臭そうに振り返るシュウ。 「報酬と言うか、対価はどうするのじゃ!?」 「対価?そんなのはいらん!」 「いらない!?りゅ、竜種の中でもとりわけ貴重な存在なのですよ!?」 「あのな・・・さっきも言ったけど、オレは捨てる…

  • 293話 後始末

    293話 後始末 293話 後始末 誰もが無反応だった事で、シュウは一先ず出来る事を考える。横たわる2頭のクリスタルドラゴンの処理だ。解体をこの場でするか、持ち帰ってするか。その答えはすぐに出る。 「オレのアイテムボックスには入りそうもないな。余裕がありそうなのはユキのアイテムボックスなんだけど、食材にしか使わないからなぁ。・・・そもそもコイツは食えるのか?」 表皮の硬さは他の竜種と同じだが、見た目は大きく異なる。一般的な竜種は全身が鱗で覆われている。だが目の前の竜種は、全身が大小様々なクリスタルで覆われているのだ。表皮が何であろうと、剥がしてしまえば同じかもしれない。だがこの見た目からはそう…

  • 292話 クリスタルドラゴン戦4

    292話 クリスタルドラゴン戦4 292話 クリスタルドラゴン戦4 拳を放つまでの刹那の瞬間、シュウが考え事をしたのかと言えば、答えはノーだ。半ば無意識に最善と思われる選択をする。今回の場合、後々思い返したシュウの考えを解説を交えながら状況に当て嵌めてみよう。 両足に力を込め、右腕は既に動き出している。ユキ達を救わなければならないが、この状態で攻撃をやめる訳にはいかない。だがそれでは到底間に合わない。通常ならば、他に選択肢は無い。しかし、今のシュウにはとっておきの切り札が存在する。 迷っている暇は無い。・・・とでも言えたらカッコいいのだが、実際には考える暇すら無い。何故それを選んだのかと問われ…

  • 291話 クリスタルドラゴン戦3

    291話 クリスタルドラゴン戦3 291話 クリスタルドラゴン戦3 考える事をやめたシュウの行動は早い。クリスタルドラゴンが反撃に打って出ようとした瞬間には追撃を開始する。これまでと違ったのは、魔弾ではなく魔法だった事。わざとらしく息遣いを荒くし、完全に足を止めて風と氷の魔法を次々と繰り出す。 密室で火魔法を使わないのは、先の反省を活かして。威力の調整を間違えれば、ナディア達を巻き込む恐れがある。さらに付け加えるなら、最も視界を妨げるのが炎というのも大きい。そして足止めに効果的と思われる土魔法を使わないのは、恐らく相手の属性と同じだからだ。 地面を鏡面のように凍らせ、強風で相手の巨体を滑らせる…

  • 290話 クリスタルドラゴン戦2

    290話 クリスタルドラゴン戦2 290話 クリスタルドラゴン戦2 ユキ達がナディアの姉の下へと向かった後。シュウはエアの位置を確認してから、ゆっくりクリスタルドラゴンへと歩を進める。討伐が目的であれば一気に攻め立てるのだが、まだ時間を稼がなければならない。 反撃の隙を与えないという方法もあったのだが、今は控える必要がある。死なない程度に手加減するとしても、追い込む事には変わりない。意思の疎通が図れない以上、追い込めばどういう行動に移るか全く予測出来ないのだ。結晶化という不安要素を抱えたまま、考え無しに戦闘する訳にはいかないだろう。 「倒さないように限界まで手加減しつつ、絶対に反撃を許さない。…

  • クリスタルドラゴン戦1

    クリスタルドラゴン戦1 クリスタルドラゴン戦1 全員の準備が整った事を確認し、シュウは扉に両手を突きながら声を掛ける。但し全員に、ではない。最も冷静ではいられないであろう人物へ向けてのものであった。 「扉を開けてもすぐには動くなよ?」 「・・・わかってるわ。」 その人物も、自身に対する忠告なのだと察して返事をする。結晶化しているとは言え、今もその形状を保っているのかわからない。逸る気持ちと押し潰されそうな不安が綯い交ぜとなっている今のナディアには、いくら忠告してもし足りない。 だが―――いや、だからこそ。これ以上押さえ付けるような真似はすべきでない。そう考えたシュウは、さっさと進む事にして両腕…

  • 288話 50階層3

    288話 50階層3 288話 50階層3 黙り込んでしまったユキ達から視線を外し、シュウはゆっくりと歩き出す。少し距離を開ければ気が付くだろうと思っての事。そしてシュウの予想通り、ユキ達は慌ててシュウの後を追った。 数分後、辿り着いたのは見覚えのある扉。目的地であるボス部屋だ。扉に手が届く距離で、シュウが振り向いた。 「じゃあ予定通り、オレがクリスタルドラゴンの相手をする。ナディア達はどうするのか、改めて確認してくれ。」 「えぇ、わかったわ。」 頷くナディアから視線を移すと、竜王達も揃って頷き返す。誰が何をするのか、きちんと話し合っておかなければならない。何がキッカケで不測の事態が起こるかわ…

  • 287話 50階層2

    287話 50階層2 287話 50階層2 出会う魔物全てを一撃で仕留め、危なげなく突き進むシュウ。初めの内は魔弾を見せていたその戦いも、50階層を半ばまで進んだ所で魔拳に切り替える。充分ナディアに披露したのと、自身のウォーミングアップを兼ねての事。 その魔拳についても魔物を一撃、或いは二撃を以て仕留めていた。ユキの「肉!」という視線を受けて、頭部を破壊するに留める為である。全て一撃でない理由は、単純に身長差があっての事。トロール等の魔物は、高身長のシュウよりも遥かに大きい。拳が届かなかったのだ。 足を払ったり、ボディーブローで相手の姿勢を崩す等の工夫を凝らして、相手の頭部を近付けていた。当然…

  • 286話 50階層

    286話 50階層 286話 50階層 翌朝、シュウ達は50階層を進んでいた。前回訪れた時と同様、ガーゴイル、キマイラ、サイクロプス、ゴーレムといった多種多様な魔物が群れをなして襲い掛かる。さらには今回も同様に、シュウ単独で相手をして行く。1つだけ異なるのは、愛刀である『美桜』を使っていない事だろうか。 「これがシュウ君の編み出した魔拳・・・」 「全部軽く1撃ではないか・・・」 「とんでもねぇな・・・」 「しかもナディアに見せる為に限界まで手加減して・・・」 「・・・・・。」 誰もが呆然と眺める中、ナディアだけは動きの全てを食い入るように見つめる。本来であれば、魔物相手に素手で挑むのは愚かな行…

  • 285話 50階層へ3

    285話 50階層へ3 285話 50階層へ3 肩を落としてトボトボと歩くナディアを尻目に、シュウ達は少しだけ移動のペースを落とす。単にナディアを案じてのものではない。先頭を歩くシュウが黙り込んでしまった為だ。そんなシュウの様子が気になったのか、アクアがユキに小声で話し掛ける。 「貴女達の夫は、先程から一体何を悩んでいるのです?」 「・・・わかりません。」 「あの魔道具の後から様子がおかしいようですね。」 「えぇ。おそらく、本来は常時起動する類の物だったのだと思うのですが・・・」 「そうですか・・・。」 ユキならば何か知っているかもしれない。そう思い至っての質問であったが、答えは得られないと知…

  • 284話 50階層へ2

    284話 50階層へ2 284話 50階層へ2 「ゔぁぁぁぁん!ごべんなざぁぁぁい!!」 「泣いてもダメ!」 「許してぇぇぇ!」 「絶対に許しません!!」 仁王立ちするシュウと、その足に縋り付くナディア。何故このような状況に陥っているのかと言うと、シュウが本気でキレた為である。 基本的にシュウは嫁達に寛大である。過去にその怒りを爆発させた相手はスフィアだけとあって、他の嫁達に危機感は無かった。 普段温厚な者程、怒った時は恐ろしい。それはシュウにも言える事。決して女性に手を上げない分、最も効果的な罰となって襲い掛かる。大人の女性であるスフィアは、大人しく受け入れたのだが・・・中身がまだまだ子供の…

  • 283話 50階層へ1

    283話 50階層へ1 283話 50階層へ1 シュウによって放たれた禁呪の炎が消え、辺りは静けさを取り戻す。とは言っても、全くの無音ではない。と言うのもボス部屋の前には現在、人の声が響き渡っていた。だがそれは予想外の人物の声。 「―――お主の旦那も悪いが、お主はもっと悪いのじゃぞ!」 「・・・はい。」 「そもそも何が起きるのかもわからんのじゃ!油断していられる程、お主は強くもなかろう!?」 「・・・ごめんなさい。」 声を荒げているのはエア。その相手であるナディアは現在、地面に正座させられている。何故このような事態となっているのか。それはナディアがシュウに怒りをぶつけた為に起こったのだ。 普通…

  • 282話 シュウの失敗

    282話 シュウの失敗 282話 シュウの失敗 「何とか窒息せずに済みそうだな。」 「ですが、ボス部屋だけは素通りする訳にもいきませんよ?」 「そうだよなぁ・・・仕方ない、サクッと倒して来るか。」 シュウとユキの会話からもわかるように、一行は現在ボス部屋の前に居た。ここまで一切の戦闘も無く、真っ直ぐ上空を突っ切ったのである。ダンジョンを作った者が見たら憤慨しただろうシュウ達の行動だったが、それを咎める者などこの場には居ない。 そしてシュウが言ったように、この階層で苦戦するようなボスは居ないと思われた。と言うのも、シュウは今回も鑑定魔法を使用していたのである。 ある程度ボスの正体を察したシュウは…

  • 281話 ユキの想い

    281話 ユキの想い 281話 ユキの想い 暖を取り何とか復活?を果たしたナディア達。しかし暖まったのは体だけで、外の気温は相変わらず低いまま。このまま外に出れば、同じ事の繰り返しである。 そんな時頼りになるのは、風を自在に操るエア。暖まった部屋の空気をナディア達に纏わせ、一気に抜けてしまおうと考えたのだ。 だが完全に外気と隔離する事は出来ない。いや、正確には容易く出来るのだが、隔離する訳にはいかない。何故なら、呼吸によって酸素を消費してしまうからだ。外気を遮断するという事は、密閉空間を意味する。寒さは我慢出来るかもしれないが、酸欠は我慢出来ない。即ち、空気が入れ替わる前に雪原を抜けなければな…

  • 280話 足踏み

    280話 足踏み 280話 足踏み ダンジョン内の砂漠地帯は暑さを感じなかったが、今シュウ達が立っている雪原は違う。一面が砂で満たされていれば、気温に関係なく砂漠である。例えどれ程の高温や低温であろうと砂が消える事は無い。 だが雪は違う。暖かければ溶けるのだ。その雪が消えずに残っているという事は、気温が低いという事。ここまで軽装だったシュウ達は、時間の経過と共に震えだす。その影響をモロに受けたのが竜王達、ではなくナディアであった。 「どうしてアンタ達は平気なのよ!?」 「雪や氷は水属性ですし・・・」 「風魔法で冷気を遮断出来るしのぉ・・・」 「土の属性竜は温度変化に鈍いからな・・・」 「「・・…

  • 279話 牛さん再び

    279話 牛さん再び 279話 牛さん再び 31階層から変わらず続く草原を、もの凄い速度で突き進むシュウとユキ。現在その姿は35階層にあった。ダンジョンだけあって魔物の数は多いが、見晴らしの良さから討ち漏らす事は無い。 驚異的な視力も大きいが、何より恐ろしいのは移動速度。例え1キロ先であろうと、あっという間に距離を詰めては一刀の下に斬り伏せる。その道程は全く以て危なげないものであったが、その表情は優れない。 「クソッ!もうあんな所まで進んでやがる!!」 「はぁ、はぁ、はぁ・・・もう無理。」 「で、出鱈目なのじゃ!」 シュウ、ナディア、エアが揃って呟く。その視線の先に居るのは、目印であるアクア。…

  • 278話 制約

    278話 制約 278話 制約 「さて。それじゃあ私達は戻るわ。」 「あぁ。これまでの事を考えると特に問題無いと思うけど、気を付けて戻ってくれ。」 「えぇ。家に帰るまでが冒険ですもの。大丈夫よ!」 一夜明けて朝食を摂った一行は、出発の準備を整えていた。そんな中、然程心配していないがフィーナに油断しないよう釘を刺すシュウ。その辺りは充分に心得ているフィーナが笑顔で答える。 「それから母さん。」 「な、何かしら?」 「オレが戻ったら向こう側へ連れて行くから、しっかり準備を整えておいて。」 「「「「「っ!?」」」」」 「わ、わかったわ!」 色々と多忙なシュウが、すぐに自分達へ対応してくれるとは思って…

  • 277話 ケロちゃん!

    277話 ケロちゃん! 277話 ケロちゃん! 30階層のボスが居る部屋。そこに踏み込んだシュウ達は今、映り込む光景に言葉を失っていた。全員が口を開けたままで。 「「「「「・・・・・。」」」」」 目の前の光景は信じられないのだが、それでも経験豊富なエレナとアスコットが言葉を発する。 「・・・ねぇ?」 「・・・何だ?」 「アレもカエルなのかしら?」 「・・・多分?」 「「「「「・・・・・。」」」」」 エレナとアスコットが言うように、目の前に鎮座する生物の特徴はカエルである。ならば何故そのような質問をしたのか。それはとてもカエルとは思えない程のサイズだったからだ。目算で体長20メートルに及ぶカエル…

  • 276話 ケロちゃん?

    276話 ケロちゃん? 276話 ケロちゃん? みんながシフォンケーキをに舌鼓を打っている間、シュウはひたすら夜の仕込みを行っていた。こういう時間を使わなければ、とてもではないがユキが料理を平らげるスピードに間に合わないのだ。だがそれを苦痛だとは思わない。食べてくれる者が居てこその料理人である。愛する妻が相手であれば尚のこと。 それに料理の最中は邪魔が入らないとあって、多少は考え事をする時間もある。 (その辺に現れる魔物に変わった様子は見られなかった。考え過ぎなのかもしれないけど・・・結論はボスを確認してからかな。この調子なら、夕食前には辿り着けるだろ。) ここまでの移動速度から、おおよその時…

  • 275話 おやつ

    275話 おやつ 275話 おやつ 翌朝。朝食を摂り、一休みしてから出発したシュウ達。全ての魔物を狩るつもりなら、全員で手分けした方が早い。しかしシュウ達は然程バラける事なく進んでいた。それは当然ユキを警戒しての事。 「しかし凄えな・・・」 「えぇ。剣閃どころか、体捌きも見えないものね。」 ユキの戦闘を食い入るように見つめていたサラとリューが、思わず称賛の声を挙げる。 「ティナの戦い方じゃなくて、ルークの剣術よね?」 「多分そうだろうな。いつの間に教えたんだ?」 「ん?教えたのはつい先日だけど、ここまで上達してるとは思わなかったよ。」 面倒なのでシュウはそう答えたが、先日教えたのは奥義だけであ…

  • 274話 存在理由

    274話 存在理由 274話 存在理由 ユキと合流した事で急ぐ意味を失くし、ペースを落とした一行。落としたと言うよりは、落とさざるを得なかった。 真っ先に挙げられる理由がユキの狩り。虱潰しに魔物を探すのだから、当然時間が掛かる。まぁこれに関しては、人手が増えた事で寧ろ時間短縮になっている。その分、ユキの提案で解体を行っているのだ。これまで1匹も解体せずに突き進んで来たユキ。彼女の懸案事項がここで解消されたのである。 食べられない部位を取り除く事が出来れば、その分アイテムボックスは空く。容量の限界が近付いていただけに、ユキとしては大助かりだったのだ。 もう1つの理由がシュウの負担増である。良く食…

  • 273話 シュウの仮説

    273話 シュウの仮説 273話 シュウの仮説 作戦会議を終え、警戒しながら出発した一行。警戒とは言うものの、その対象は当然ユキである。そもそもユキが現れたのはシュウ達の先、25階層だ。即ち、25階層の魔物は狩り尽くされている事を意味する。他に警戒する対象がいないという事。総勢26名の注目を浴び、如何にユキと言えども隙を見付けられずにいた。 (流石にこの包囲網を抜けるのは難しいかもしれない・・・) 時折撹乱しようと緩急を付けるも、エリド村の住人達は難なく対応してみせる。決して包囲網を崩さずユキを取り囲むのだ。連携に加われないフィーナやナディア達に関しては、危ないと感じた所のカバーに入る。仮に突…

  • 272話 SSS級クエスト14

    272話 SSS級クエスト14 272話 SSS級クエスト14 シュウとユキが密談から戻ると、既に昼食の後片付けは終わっていた。ナディア達を労おうと考えたシュウだったが、ユキが先に向かった事で行き先を変える。 「みんな、ちょっといいか?」 シュウが呼び掛けた意味を察し、声を掛けられたフィーナ達が揃って移動する。ユキに聞かれないようにとの配慮である。 「今後の予定を確認しておきたい。」 「無事に合流出来た事だし、戻ってもいいという事かしら?」 シュウが間に合った事で、自分達はお役御免なのではないか。そう思ったフィーナが尋ねる。 「いや、悪いけど30階層まで付き合ってくれ。」 「説得出来たんじゃな…

  • 271話 踏み止まるべき一線3

    271話 踏み止まるべき一線3 271話 踏み止まるべき一線3 暫くの間、空を見上げていたユキ。心の整理がついたのだろう。顔を下げてシュウへと向き直る。 「そう言えば、日本刀は見られても大丈夫なの?」 「ん?あぁ、単純な造りの物は大丈夫だと思う。それにアレは、誰にでも使える代物じゃないし。」 「それもそうだね。じゃあ調理器具は?」 「ホイッパーやピーラーで人が殺せるなら秘密にするよ。」 「・・・無理だよね。」 厳密には無理ではない。だがそんな物を使うのなら、ナイフや包丁などの刃物を使った方が確実である。日本刀も似たようなものと言えよう。強力な武器とはなるが、使いこなすには技術を要する。しかしそ…

  • 270話 踏み止まるべき一線2

    270話 踏み止まるべき一線2 270話 踏み止まるべき一線2 振り向きざまにシュウから放たれた弾丸だが、ユキを狙ってのものではない。事実、ユキの顔から20センチ右側に逸れていた。態々反応せずとも良かったのである。しかしユキは反応してみせた。厳密には手を出してしまったのだが・・・。 銃弾を真っ二つに切り裂いたユキは、誇らしげに笑みを浮かべる。だがそれも長くは続かない。何故ならシュウもまた、笑みを浮かべていたのだから。こちらは不敵な笑みと表現するのが適切だろう。そのままユキは数秒見つめ続けるが、シュウの笑みが崩れる事は無い。 この時点で疑念を抱く。自分の対処に問題があったのではないか。斬ってはな…

  • 269話 踏み止まるべき一線1

    269話 踏み止まるべき一線1 269話 踏み止まるべき一線1 かなり予想外ではあったが、何とかユキと合流したシュウ達はホッと胸を撫で下ろし・・・てはいなかった。 「お、おかしいのじゃ・・・」 「あの体の何処に入ってるんだよ・・・」 「20までは数えたのですが・・・」 「「「化物!」」」 「・・・・・。」 尋常ならざるペースで吸い込まれるハンバーグに、竜王達が思わず声を揃える。ユキというかティナ専用に開発された、1つ500グラムの特性ハンバーグ。20個の時点で10キロもの肉塊が、ユキのお腹へと消えている。だと言うのに、ユキの見た目にはそれ程大きな変化が無い。まさに化物。 そんな竜王達のやり取り…

  • 268話 合流

    268話 合流 268話 合流 魔拳の基本と応用を披露し、用は済んだとばかりに移動を再開するシュウ達。本来の予定であれば、アースによる偵察が済んでからのはずであった。しかし見渡す限りに広がる墓場に、その必要性を感じなかったのである。 進む程に強まる腐臭に、全員が耐えかねたというのも大きいだろう。風を自在に操るエアであっても、階層いっぱいに広がる臭いには対処出来ない。クサイ部屋の中で囲いを作った所で、既に手遅れである。 かつてない速度で飛ぶエアのお陰で、あっという間に21階層へと辿り着く一行。 「・・・今度は森じゃな。」 「じゃあ、早速様子を見て来るか。」 「待ってくれ。」 割り当てられた仕事を…

  • 267話 魔力操作の先5

    267話 魔力操作の先5 267話 魔力操作の先5 朝食を済ませ、一気に16階層へと進んだシュウ達。彼らが立ち止まったのは、アースに斥候を任せる為だけでは無かった。 「墓場ね・・・。」 「墓場じゃな・・・。」 眼前いっぱいに広がるのは、不規則に並んだ墓。とても絶景とは呼べないが、これはこれで圧倒されるものがある。 「此処には魔物が居るようですが・・・どうします?」 「ちょっとアクア!私は嫌よ!!」 魔拳の練習をするのか尋ねるアクアに対し、ナディアは当然拒絶する。アクアも出来れば御免被る。そう思っての問い掛けであった。そう、ゾンビやグールの相手は嫌なのだ。臭いのである。 「まぁ、オレも鬼じゃない…

  • 266話 魔力強化の先4

    266話 魔力強化の先4 266話 魔力強化の先4 時間を掛けてゴブリンとコボルトの群れを殲滅し、また新たな群れを探す。それを何度も繰り返しながら進み、ボロボロになったナディアがルーク達の下へと戻って来る。 「お、終わった・・・。」 「お疲れさん。かなり使いこなせるようになったな。じゃあ今日はゆっくり休んで、明日は一気に移動しようか。」 「え?もういいの?」 ルークから告げられた予想外の言葉に、ナディアが思わず聞き返す。その顔が非常に嬉しそうなのは気のせいだろう。 「あぁ。ナディアを待ってる間、アースに先の階層を見て来て貰ったんだ。3〜5階層は追加でサソリとワーム。そして6階層以降は岩石砂漠に…

  • 小説の 引っ越し作業で 思ふ事

    どうも、橘です。 予定外の投稿です。投稿と言うよりも単なる愚痴、簡単なご案内です。 本日より小説の引越し作業を開始したのですが、とにかくめんどくさいorz きっと読んで下さっている方々も、順番がめちゃくちゃで読むのが面倒なのでは?と思います。 というわけでお知らせです。何話か忘れましたが、何処かのあとがきにて呟いたと思います。 小説に関しては、URLで話数を管理しております。 例えば220話なら https://shiningrhapsody.hatenablog.com/entry/recipe220 といった具合に。 最後の数字を変えてもらえれば、比較的簡単に読み進められるのではないでしょ…

  • 220話 ルークの過去1

    220話 ルークの過去1 220話 ルークの過去1 幸之進と静に招かれるまま、アークとエールラは客間へと案内される。床が畳とあってか、慣れないエールラはソワソワと落ち着かない様子だった。 「作法なんざありゃしないよ。好きなように座るといいさ。」「ありがとうございます。」「畳は特にあの子が好きだったもんでな・・・」「あの子とは秀一様の事でしょうか?」「いいや、雪ちゃんだよ。」「雪ちゃん?」 初めて耳にする名に、エールラは首を傾げる。当然アークもそうだろうと思い視線を向けるが、その表情に変化は無かった。 「雪ちゃんの事から説明すんのかい?・・・まぁいいさ。私達もあの子が好きだったからねぇ。」「その…

  • 221話 ルークの過去2

    221話 ルークの過去2 221話 ルークの過去2 幸之進と静の夫婦喧嘩が終わったのは20分程経った頃だろうか。流石に痺れを切らしたアークの登場によって、強制的に終了となった。結果は当然引き分け。 (持久力もだが、瞬発力も老人のソレじゃねぇな。健康の秘訣は夫婦喧嘩か?いや、こんな死と隣り合わせの健康法があってたまるか。それよりも気になるのは・・・) 「婆さん、その剣・・・刀だったか?ソイツは一体何だ?」「はぁはぁ・・・コレかい?中々目の付け所がいいじゃないかい。」「刀がどうかしたのですか?」 武器に関してはサッパリのエールラが首を傾げる。そんなエールラに対し、アークが自らの剣を抜いてエールラの…

  • 222話 ルークの過去3

    222話 ルークの過去3 222話 ルークの過去3 「先生!おはようございます!!」「おはようございます。今日の診察、宜しくお願いしますね。」「はい!」 独身看護師が朝の挨拶をした相手こそ、若き日の秀一である。彼は実家の権力が及ばない、中規模の病院に勤める事にしたのだった。 秀一の才能をもってすれば、大学病院で確固たる地位を築く事も出来ただろう。しかし彼はそれを選ばなかった。理由はただ一つ。毎日定時刻退社する為である。 この病院を選んだのは、祖父母の勧めがあったから。秀一の家庭事情を聞いた上で、快く受け入れたのが院長である。当然、雪の事は院長と看護師長しか知らない。それ故の問題もあったのだが、…

  • 223話 ルークの過去4

    223話 ルークの過去4 223話 ルークの過去4 一通り知りたい事が聞けたアークが立ち上がる。そんなアークに一瞬遅れてエールラも立ち上がる。 「大体知れたし、オレ達もそろそろ・・・いや、エールラ。先に戻っていろ。」「え?な、何故ですか!?」「この後、この2人と模擬戦をする。ここに来た時は相手して貰ってるんだ。」「では私は見学しております。」「あのなぁ・・・いいから帰れ。これは命令だ。」「承服出来ません!」 どういう訳か、全く従おうとしないエールラを不審に思ったアークが首を傾げる。 「一体どうしたって言うんだ?何が気になる?」「・・・アーク様がこの方々に拘る理由が知りたいのです。」「そういう事…

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