1894年7月29日、父は種々の苦しみ試しに遭い、完徳に達して後遂に主に呼び招かれました。その死ぬる前の二年の間中風が全身に及びましたが、その間叔父はこの難病に罹った老人を、手厚く介抱してくれました。病気のために痩せ衰えた父は、その病中ただ一度修院の客室に来られて私に会われましたが、この時は実に何とも言えない悲しい面会でした。別れに臨んだ時私は父に「さようなら……」と申しますと、父は静かに眼を天に向け指で天を示し、自分の思いを言い表そうとして涙にむせびながら、ただ一言「天国に於いて……」と。父は美しい天国に入られてから後、彼の慰めであったセリナが世間に繋いであった縁が切れてしまいました。しかし……天使たちはこの世界に残るためではなく、その使命を果たすと直ぐに天主様の法に帰るので、このために皆羽翼が付いてい...小さき花-第8章~9