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  • 『カモン カモン』 マイク・ミルズ

    試写会で『カモン カモン』を鑑賞。監督はマイク・ミルズ。『20センチュリー・ウーマン』の監督。あの映画も親子の映画。母と息子、というテーマはこの映画にも重なる。 www.youtube.com 何も考えずに見るともっさりした映画だが、なかなか巧妙に描かれた人間ドラマだ。要するに親や大人は子供のことがわからない、というテーマ。 姉の息子ジェシを預かることになったジャーナリストのジョニー。ジョニーとジェシの話。この二人の噛み合わない関係こそ、世界の分断を意識させる。お互いは何もわからない。 ではその答えはどこにあるかというと「聞くこと」だ。ホアキン・フェニックス演じる主人公は子どもたちにインタビュ…

  • The Windshield Wiper アルベルト・ミエルゴ

    今年のアカデミー短編アニメ賞に輝いた、スペイン系アメリカ人のアルベルト・ミエルゴ監督作品The Windshield WiperをYouTubeで見ることができた。15分の短編。 ”愛する”という甘い言葉とは裏腹に、愛という形の現代の在り方をたった15分で奥深くまで掘り下げようとするドラマ。はっきり言って恐怖映画だ。 ミエルゴ監督はインタビューで丁寧にそのことを説明されている。 Hollywood films are full of accidental encounters, but nowadays because of technology and changing societal c…

  • 表現の不自由展④ マネキンフラッシュモブ

    そろそろ最後にしよう。「もう終わりにしよう」 フラッシュモブの話題で終わる。 彼らのパフォーマンスは笑わない(バスター・キートンのようだ)、動かない、しゃべらない。海老名駅の自由通路で行われたパフォーマンスを行政が違法だと主張するので、彼らは裁判で勝訴し、行政側を突き倒した。彼ら行政も見えないものは違反だと思い込む。見たことも聞いたこともないものやことに対応できない。 「平和の少女像」 やTPP問題などについても同じ活動をしていて興味をそそる。 こうした彼らの活動もまた、権利を守ることに通じている。そしてありとあらゆる表現があって、対立意見であっても認め合うという文化や国民性を築き上げないと、…

  • 表現の不自由展③ 小泉明郎

    まだ続く、「表現の不自由展」。実は相当頭に血が上っている状態である。 ここで自分の意見を展開するつもりはないが、自分はこの国を猛烈に愛している。正月の一般参賀にも行くし、皇室の話題があればそれに目を向けて微笑んでいる。だからといって天皇制を批判する意見に聞く耳を持たないというわけでもない。それは個々の考えであり思想だ。愛国者であってもアンチな意見に興味はある。少なくとも自由表現まで弾圧されることがあってはならない。憲法にも保障されている行為。かつて大島渚が『愛のコリーダ』で戦ったことも同じ文脈にある。あの映画にも戦争の影が見える。 その意味で前山忠の反戦シリーズが過激な作品ではあると思う。 皇…

  • 表現の不自由② 大橋藍ほか

    表現が閉ざされた作品は「平和の少女像」だけではない。たまたまあいちトリエンナーレで注目度が上がっただけだ。逆説的にいうと、この状態を世間に知らしめる役割をあのあほんだらの市長は担ってくれたのかもしれない。◯◯となんとかは使いようだ。 この小さな展示ホールの中でお腹いっぱいになるほどの情報が掲げられているのだが、過去の検問年表(検問という言葉事態も前時代的だが・・・)を見ると、戦後1950年から始まっている。 そしてその矛先は、学生の卒業制作にまで及んでいるらしい。大橋藍さんの「アルバイト先の香港式中華料理屋の社長から「オレ、中国のもの食わないから。」と言われて頂いた、厨房で働く香港出身のKさん…

  • 表現の不自由展① 平和の少女像

    期間限定で開催された『表現の不自由展』はものものしい厳戒態勢で催された。 일본우익 협박 속 '평화의 소녀상' 7년 만에 도쿄에서 선보여 日本右翼脅迫の中で「平和の少女像」7年ぶりに東京で披露)Yonhapnews 早めに場所を確認するために開催場所に赴いたが、驚くことに複数の装甲車やパトカーが動員され、いたるところに警察官が立っている。美術展でこんなことがあっていいのか?ここはいったいどこの国か?と感じる。穏やかではない。 こういうことを政治的に利用する者がいる。ツイッターなど書き込みを見ると大半が批判的だ。日本はそういう国なんだ、ということを感じ背筋が凍る。もはや大戦前の社会のようだ…

  • 大島渚賞 絞死刑

    三回目となる大島渚賞のトークイベントに参加することができた。会場は東京駅前、丸ビルホール。この建物に入ったのは初めてだと思う。 ところで、この記事も長いので読まないほうがいい。しょうもない記事だ。 エスカレーターで7階まで上ると目的のホールがある。 今年で3回めとなるこの賞は、ぴあの企画だそうだ。生前の大島渚監督のメッセージが流される。「言論から情報への変化」いつ頃の映像かわからないが大島渚はぴあに寄せてこのようなことを述べていた。大島渚が生きた時代は”言論”の時代だったのだ。今年の受賞作『海辺の彼女たち』の上映があって、その後黒沢清監督と大島新監督を交えて三人のトークショーがあったが、劇場を…

  • 浜辺の彼女たち 藤元明緒

    大島渚賞を受賞した藤元明緒監督の『浜辺の彼女たち』を鑑賞。技能実習生という名の奴隷のような生活から逃げ出す三人の若いベトナム女性の暗い話。 www.youtube.com 映画や読書には連鎖反応が起きるときがある。この映画はたまたま先日鑑賞した『牛久』に向かう。不法滞在と不法労働は刑務所の中か外かの違いはあるが、同じ外国人である。社会の隅に追い立てられた外国人が見る日本、というテーマで一致点がある。あるいは『17歳の瞳に映る世界』も重なって見える。 映画は技能実数生の実態を浮き彫りにしようという社会的なドラマとしては描かれていない。それはある種の現象であって、祖国を捨てて逃げてきた三人の女性の…

  • 聖書 ジョージ秋山

    まさかいまさらなにかの宗教を支持しようとかそういう意思はない。たまたま手に入れた「聖書」は、あの「浮浪雲」のジョージ秋山さんが書かれた本である。2005年に幻冬舎から出版されている。 ギリシャ神話もそうだが、聖書もまともに順序立てて読んだことはない。部分的なエピソードは映画や小説でも時々紹介されているが、そうしたバラバラの記憶が1本に繋がった。 例えばジェフリー・アーチャーの「ケインとアベル」これはまさに聖書でいうアダムとエバの息子で、人類史上最初の殺人事件とも言われている。 チャールトン・ヘストンが出ている『天地創造』や『十戒』などはスペクタクル映画として鑑賞した。 メル・ギブソンの『パッシ…

  • 英雄の証明 アスガー・ファルハディ

    シネスイッチ銀座でアスガー・ファルハディの『英雄の証明』を鑑賞。初日の夜の会。ちょっと長いよ。 www.youtube.com 黒澤明監督の『羅生門』をベースとした映画を作り続けるアスガー・ファルハディの新作。世界の大御所監督となった彼の彼らしい映画といえる。このところ祖国を離れて映画と撮ってきたハルファディが久しぶりに祖国イランを舞台に撮った大傑作。カンヌでグランプリを獲得している。 まず、 ハルファディの映画は片時も目をそらしてはいけない。小さなシーン、あるいは意味不明なシーンも必ずどこかで重要な意味をもたらす。冒頭で主人公のワヒムが刑務所から出てきてバスに乗り遅れる、というシーンも重要。…

  • ゆず さいたまスーパーアリーナ

    YUZU ARENA TOUR 2022 PEOPLE - ALWAYS wirh you www.youtube.com この映像は去年の武道館ライブの短い映像です。二人の弾き語り。声を出せないライブって彼らにとっては辛いでしょ。45歳になった二人が送るライブ。名古屋ドーム以来の参加となった。ゆずのみ〜拍手喝采以来。 PEOPLE ALWAYS with you 2階席の角、ステージは遠いが悪い席でもない。16時開園前の会場は満員。グッズ売り場は長蛇の列。 開演前に一緒に踊る練習映像が流されたりして盛り上げる。盛り上げるのだが、まだコロナ禍ということもあって、かつてのような狂気的な盛り上がり…

  • 牛久 トーマス・アッシュ

    シアターイメージフォーラムで『牛久』を鑑賞。 たまたま監督のトーマス・アッシュ氏が挨拶に来られていた。 空席が目立つ平日の夜だったが、彼は熱心に少ない観客にメッセージを贈る。 この人道的にも問題のある制度とその施設で行われている暴力行為。映画の中に出てくるおぞましいシーンは目を覆いたくなる。 彼が手に持っているペーパーはこれだ。 これを見ると、いかに政治、特に与党がこの問題を無視しているかがよくわかる。名古屋税関で亡くなったスリランカ人のウィシュマさんの事件もさることながら、少なくともここで繰り広げられている行為は人間の行為ではない。 アッシュ監督は最後に印象的な言葉を残した。「何もできなくて…

  • ナイトメア・アリー ギレルモ・デル・トロ

    『ナイトメア・アリー』を鑑賞。キネノートのレビューはこちら『ナイトメア・アリー』 www.youtube.com まずこの映画の登場人物、キャスティングに驚く。製作にも関与しているブラッドリー・クーパーはもちろんだが、共演の多いケイト・ブランシェットとルーニー・マーラのほか、デル・トロ監督作品の常連や意外な人物がここに並ぶ。前作『シェイプ・オブ・ウォーター』でアカデミー賞を獲得した効果と言えるかもしれないが、それにしても見世物小屋の物語にこれだけ大勢のスターが集うことがすごいと思う。 原作は1946年にウィリアム・リンゼイ・グレシャムが発表し、同名の映画が翌年タイロン・パワー主演で映画化されて…

  • 黒澤明のライフワーク 河村光彦氏

    黒澤明監督のライフワーク『乱』のメイキング映像を編集したドキュメンタリーが世界で評価されている。作者は河村光彦氏。膨大な量のメイキング映像が残されていたことが驚きだが、それを再現したことは奇跡だ。 黒澤明作品について書き出すとスペースがいくらあっても足りないので、ここでは『乱』にまつわる自分の記憶の、そのまたごく一部を紹介しつつ、この作品と関係者の方のメッセージなどを最後に紹介したいと思う。 話は『影武者』に遡る。 1976年『デルス・ウザーラ』を撮り終えた黒澤明は、次に『乱』の脚本を書き上げるが、スケールが大きすぎて金が集まらず、『影武者』を製作すると発表。主役交代劇から始まって、撮影中のエ…

  • 第94回アカデミー賞

    昨日のアカデミー賞の主役は良くも悪くもウィル・スミスだった。 このニュースが独り歩きして色々言われているが、とにかく異例のことだったね。 第94回アカデミー賞は、終わってみればほぼ予想通りだとも言える。 まだ見ていないが『DUNE』が最多6部門、特に技術系の賞を獲得したのは、むかしむかしその昔、『スター・ウォーズ』が思い出される。第50回アカデミー賞。作品賞はウディ・アレンの『アニー・ホール』。そしてあの年もヴァネッサ・レッドグレイヴの問題発言で会場に不穏な空気が漂った。 今年の作品賞『コーダ』をひとことで説明できない。この受賞を心から祝福したい。この映画の勝利はジョニ・ミッチェルだと思う。B…

  • まれびとと祝祭

    同じ高島屋でこういう展示もあった。 「まれびとと祝祭」。8月までやっているらしいので、まだ見ていない方はぜひご覧いただきたい。安藤礼二さんが監修されている。”まれびと”とは霊的な神のようなもの。 サブタイトル―祈りの神秘、芸術の力―とされていて、ここでも芸術というキーワードが示される。芸術などに価値はない、とか書いておいて矛盾するが、そこに”祈り”というキーワードをなぞらえることで、全く違った文化が醸し出される。 例えば沖縄の石垣島にはミルク様という微笑ましい神様がいる。しかしこれ、なんと弥勒菩薩をイメージしているらしい。未来に救いをもたらす弥勒。光瀬龍の『百億の昼と千億の夜』でも極めて重要な…

  • 春風亭柳之助 「春分の会」 お江戸日本橋亭

    もう何度落語を聞きにいったろうか? ここお江戸日本橋亭は、柳之助師匠の会にいく日にちを間違えたら、たまたま小遊三師匠のお話を聞かせてもらったりした因縁(?)の場所。 そして去年の4月に友人を介して初めて春風亭龍柳之助師匠の噺を聞かせてもらった。 遊馬師匠と二人会だった。 その後も何度か寄席に行ったり、一緒に飲んだりした関係もあって思い入れが深い。 そして念願の独演会がこの日開かれた。 小さな日本橋亭だが、それでもこの日は盛況で、大勢のお客さんが集まった。噺家も大勢のお客さんの拍手や笑いが彼らのモチベーションだ。 女性の前座さん こと馬さんの「真田小僧」から始まり、二つ目の三遊亭花金さんの「大安…

  • 愛すべき夫妻の秘密 アーロン・ソーキン

    『愛すべき夫婦の秘密』原題”Being the Ricardos” 驚くことに、ニコール・キッドマンがルシル・ボールを演じている。夫役はバビエル・バルデム。キッドマンはアカデミー賞にノミネートされている。確かに驚くべき演技だ。ルシル・ボールについてはこれまでほとんど知らなかったが、たしかに自分が子供の頃テレビでよく見かけた。ドラマにお客の笑い声が重なる、という構成はその後「奥様は魔女」などにつながる。そういえばあれもニコール・キッドマンがサマンサを演じていた。偉大な女優だ。 この『愛すべき夫婦の秘密』は、ルシル・ボール主演のライブテレビで、毎週驚異的な視聴率を得ていたらしい。ルシル・ボールがも…

  • メゾン・エ・オブジェ パリ点 デザイン・ダイアローグ

    高島屋日本橋展で催されている『メゾン・エ・オブジェ パリ展』に向かう。 デザイン・ダイアローグとは、その名のとおりデザインとの対話だ。 日常の身の回りにある家具は何も語らないし、語りかけることもしない。しかし、そのファニチャーをデザインしたつくり手の主張やメッセージはどこかに隠されている。建築や芸術も同じだ。そしてそれらにはもともとなんの価値もない。価値のほとんどは本来あとから生まれるものだ。 例えばこの椅子と電気スタンド。デザイン性としては確かに奇抜なイメージだ。 しかしよく目を凝らして見ると、電気スタンドの支柱が拳銃になっている。作者のフィリップ・スタルクはフランス人で、実は日本にも馴染み…

  • SING シング:ネクストステージ ガース・ジェニングス

    偉大なるブライアン・イーノがプロデュースした多くの偉大なアーチストの中にU2がいる。ちなみにブライアン・イーノというとその幅広い活躍ぶりはあまり知られていないかもしれないが、彼の専門は環境音楽だ。美術館とかに行くと彼の音楽が流れたりしている。音と音楽の境界線を研究する姿勢は日本の偉大なる音楽家武満徹の活動を連想する。イーノが初期に組んだアーチストにはロバート・フィリップやデビッド・ボウイがいる。 そしてイーノが1980年代中盤からプロデュースしたU2が残した偉大な痕跡は、祖国アイルランドを中心に世界中に影響しリスペクトされている。そのU2の数ある楽曲の中でも極めて重要な曲のひとつが、今回見た『…

  • アンネ・フランクと旅する日記 アリ・フォルマン

    『アンネ・フランクと旅する日記』原題は”Where Is Anne Frank” 筋書きに合わせて言うなら”Where Is Anne Frank's dialy”だ。映画の後半で”Where is dialy"という文字が踊る。『戦場でワルツを』のアリ・フォルマン監督作品。 キネノートの『アンネ・フランクと旅する日記』はこちら。少し長いが。 www.youtube.com この映画の主人公はアンネ・フランクではない。アンネ・フランクがオランダの隠れ家で毎日書いた日記。その日記で彼女はイマジナリーフレンドであるキティという赤毛の少女を想像する。このキティが映画の主人公である。『ジョジョ・ラビッ…

  • ウィンター・オン・ファイヤー ウクライナ、自由への闘い エフゲニー・アフィネフスキー

    ちょっと奇をてらうような話だが、いまだからこそ見る映画だ。 www.youtube.com まず、 大変不謹慎なことを書くようだが、この映画の感動は映像にある。目を覆うような残酷なシーンや国家と市民が対立する戦闘シーンなど、心が折れそうになるシーンの連続だ。 しかし、しかしである、 ウクライナの首都に集まる人々がどんどん数を重ねて大勢の人々がそこに集結してからのシーンの美しさ。群集劇というにはあまりにも美しすぎるこの光景が逆に胸を打つのだ。 大晦日に新年を祝うために集う市民がウクライナ国家を怒号のように合唱するシーンの感動。実写映画でこれほどの演出を施すのは不可能だ。どんな映画も現実を超越でき…

  • アダム&アダム ショーン・レヴィ

    原題は”The Adam Project” Netflix映画『アダム&アダム』鑑賞。 www.youtube.com 高額ギャラランキングでドウェイン・ジョンソンと上位を争うライアン・レイノルズが『フリー・ガイ』に続いてジョーン・レヴィ監督とタッグを組んで作ったSF映画。ハルクのマーク・ラファロが父親役で登場する。正月に鑑賞した『ダーク・ウォーターズ』とは全く異なるキャラで好演。子役のウォーカー・スコーベルがとにかく美しくて演技も上手で舌を巻く。 www.youtube.com いわゆるタイムリープものだ。 冒頭、とてつもない宇宙船の迫力ありシーンから始まるこの映画は、これまでのタイムリープ…

  • THE BATMAN ザ・バットマン マット・リーヴス

    『THE BATMAN ザ・バットマン』を高円寺に行く前、西新井で鑑賞。 www.youtube.com 思えばティム・バートンが1989年に復活させたバットマンシリーズはまさにティム・バートンワールドで、技術的な表現に加えてジャック・ニコルソン演じるジョーカーというキャラクターで成り立った。あの映画のおかげで、その後のシリーズで活躍(?)する悪役を多くのスターが演じる道筋を作ったと思う。 そして2005年にノーランが再び復活させたバットマンもまた、『ダークナイト』でヒース・レジャーが演じたジョーカーが頂点となり、2019年にホアキン・フェニックス演じたトッド・フィリップスの『ジョーカー』で一…

  • 木内一裕監督作品特集上映 シアターバッカス

    過日、高円寺のシアターバッカスで特集された木内一裕監督の全作品を、同級生と一緒に鑑賞した。同級生に映画監督がいるということがまず驚きだったが、年に1度の忘年会ぐらいでしか会うことがなかった彼のこの20年の軌跡をたどる時間を共有したのはうれしかった。 短編映画の自主作品なので、メジャーで見る機会もないし、映画レビューサイトにも出てこないのだが、鑑賞した映画はいずれもクオリティが高く、何よりつくり手である木内氏の姿勢、生涯をかけて取り組もうとしてる姿勢が明確に示されていて心を打った。 この日は、この『Sun Flower向日葵』に出演され齋藤朱海さんが進行役で、会場に中野誠也さん(なんともうじき9…

  • ロスト・ドーター マギー・ジレンホール

    ちょっと長いですよ。しょうもないブログで、いつもすいません。 イタリアの匿名作家エレナ・フェッランテの『ナポリの物語』を原作とする長編からマギー・ジレンホール(ジェイクの姉)がメガホンを取った母性のドラマ。オリビア・コールマン、ダコタ・ジョンソン、ジェシー・バックリーらの名優による素晴らしい演技が衝突(まさに衝突)する。おだやかなギリシャの舞台とは裏腹に、内面に抱えた母性あるいは親としての本能を喪失した女性たちの切実な叫びが聞こえる。ひりひりするような痛み、もやもやした不安が常に親(特に母親)には秘められている。『ロスト・ドーター』 www.youtube.com たまたまだが、ジョージ秋山さ…

  • 令和4年2月下席 浅草演芸ホール

    浅草演芸ホールの2月下席に赴く。 狙いは春風亭柳之助師匠だが、同じ日に神田伯山が出てくるというので、早めに移動。 昼席は朝から小さな列ができるぐらいの入り。窓口で木戸銭を払うとき、ドラ猫が愛想を振りまいてくれる。 しょっぱなは桂伸治師匠のお弟子さんの桂伸都さんの「まんじゅうこわい」からスタート。初めての高座だそうだ。声の通りもいいしスジはいいのではないか。素人がこういうと失礼かもしれないが。前日の夜『しゃべれどもしゃべれども』を鑑賞したあとなので、前座や二つ目のことを察しながら聞かせてもらった。 同じ桂伸治門下の桂伸しんさんやナオユキさんで盛り上がる。 周りを見渡すと客席は6割か7割の入りにな…

  • ナイル殺人事件 ケネス・ブラナー

    『ナイル殺人事件』 www.youtube.com クリスティー原作の映画というと、どうしても1974年版シドニー・ルメットの『オリエント急行殺人事件』。アルバート・フィニーのポワロがどうしても原点。ジョン・ギラーミン『ナイル殺人事件』ピーター・ユスチノフも同じイメージで演じていたが、その優雅でのったりした雰囲気が印象深い。と、言いながら、実は1978年は映画館で見ていない。 ケネス・ブラナーが自らポワロに扮して2本も大作を撮る意味はなにか?と考える。それが今回の作品の冒頭に見事に綴られている。ベルギー軍でドイツ戦に従軍したポワロが自軍の窮地を救いながら上官の爆死に巻き込まれ、顔の半分に深い傷…

  • 100万円で家を買い 週3日働く 三浦展

    100万円で家を買い 週3日働く 三浦展 光文社新書 2018/10/30 たまたま家に置いてあった本をチラリと読んだらそこそこ面白いので記録することにした。先に本音を言うと、この本の全てが面白いとかためになるという類のものではない。ビジネス書的なものは所詮作者の自慢話だ。そして同じことを何度も繰り返してページを増やしている。世の中で本当に必要な本などそれほど多くはない。 日本の住宅事情の在り方が大きく変化を求められているような気がする。そのことを考える一助にはなる。一助にはなるが、実行するかどうかは別だ。何度もいうようだが、賛同できるところとできないところがあって、特に自慢げな表現が時々でて…

  • ドリームプラン レイナルド・マーカス・グリーン

    公開初日に『ドリームプラン』を鑑賞。 www.youtube.com ビーナスとセリーナ・ウィリアムズ姉妹を育て上げた父親”リチャード”・ウィリアムズの話し。テニスウェアをずっと来たままのウィル・スミスが熱演している。原題はKing Richard。 とにかく娘たちを徹底して命がけで育てる父親が描かれる。なぜ彼が娘たちをそれほどまでに厳しくし、命がけで彼女たちを守り続けるのか?という部分が強調されるべき映画だ。もちろん黒人である、面もあるがそれだけではない。リチャードたちが住む地域で起こる日常から開放されようと必死に努力した結果がセリーナ姉妹の業績と名誉に繋がっていたのだ。 しかも、単に厳しい…

  • TYM344

    TYM344の作品がパルコの2階で紹介されているとうので覗きに行った。 OILの狭い空間をインスタレートする作品は、小さいながら大きさを感じさせる。 「絵を描くこととは、決定された画像をつくること」として、道路標識から秩父連山まであらゆる不動物を手本にして、二値化された非・動画的な絵画を目指す。 HPより この小さな空間が刺激的だ。 作家の未来も楽しみ。 ★ 貼りました。みつけてみてくださいね。 ブログサークルブログにフォーカスしたコミュニティーサービス(SNS)。同じ趣味の仲間とつながろう! こんなブログもやってます(=^・^=) KINENOTE Filmarks Muragon sees…

  • 映画には「動機」がある 町山智浩

    少し前に『それでも映画は「格差」を描く』のひとつ前の最前線の映画を読むシリーズVol2だ。『映画には「動機」がある』12章からなる本は、それぞれの映画に出てくる不思議なシーンに着目し、その理由を掘り下げている。例えば「なぜストリックランドは手を洗わないのか?」このタイトルを読んでどんな映画のことを言っているのかわかる人はすごい。細かいことをここで紹介することは避けるが、この映画の監督がアカデミー監督賞を受賞したときのコメントが泣かせる。映画人としてどうあるべきか、ということを述べている。「映画がする最高の仕事は砂で書かれた境界線を消すことだ。世界が境界線を作って人々を隔てようとするとき、私達は…

  • ■ - dalichoko

  • ニッポン国 おかんアート村

    渋谷公演ギャラリーで展開するアール・ブリュット、すなわちチープなアートの新しい展示があったので飛び込んだ。無料というところがいい。渋谷はお金がなくてもアートを堪能できるのだ。 このコンセプトでいうと、ほとんど資本を伴わない消費、という意味で画期的な展示といえる。日本のおかあさんが昔から当たり前に作り上げる楽しいもの。 この中には家に何かを持ち合わせている方もいるだろう。どこか懐かしささえ感じさせる。 ひとつは、都市化が進み核家族化するまでは、どの家も三世代、四世代の家があり、親から子や孫へと何かしらの伝承があった。こうした美しい工芸品のような作品群も、このような場所で展示されるものではなく、各…

  • バンクシー展 ディズマランド

    バンクシーにかかると文化や倫理も崩壊する。 中でも驚いたのはディズニーランドではなくディズマランド。 子供が行きたくなくなる遊園地というコンセプトはまさにコロナ禍のデストピア。平和とはほどとおい世界。 この世の中をデストピアと位置づけする作品はほかにもあって、バンクシーの多くの作品に連鎖する。 ほかにも様々な空間が提示される。 この日、土曜日にかかわらず大勢のお客さんが集う。 バンクシーの作品には一定の解説がないとわかりにくいものもあるが、スマホで解説を呼んだり聞いたりすることができる。 熱気むんむんの展示会であった。 (=^・^=) ★ 貼りました。みつけてみてくださいね。 ブログサークルブ…

  • バンクシー展 政治

    バンクシーがかねてからターゲットにしているのは政治だ。その先には戦争がある。政治と戦争は常に背中合わせで紙一重の緊張が常に付きまとう。最後は力でねじ伏せる、というのが常套手段だ。 この「ボム・ラブ」という作品の皮肉。この少女が果たして戦争から世界を救うのか、という恐怖だ。バンクシーは「世界をよりよい場所にしたがる人間ほど、危険なものはない。」と発言したこともあり、権力の恐ろしさをも示すものだ。 バンクシーの初期作品の傑作「ターフ・ウォー」は思わず吹き出してしまうような作品だ。このチャーチルを皮肉った作品はターフを「芝生」ではなく「領土」という意味で示すものだ。このパンクロッカーのようなチャーチ…

  • バンクシー展 天才か反逆者か

    昨年の夏に寺田倉庫で体験したバンクシーとはまた異なる視点の展覧会であった。面白かった。 バンクシーがテーマとする様々な作品の中でも、特に過激な分野をチョイスしている。政治、文化、倫理、戦争。これに加えて個人的に最も興味をそそられるのが経済だ。彼は資本主義を真っ向から否定している。 例えば「消費」という作品や、「セール・エンズ」という作品などにその露骨な反資本主義、反消費社会というメッセージが詰め込まれている。 「フェスティバル」という作品のサブタイトルは”デストロイ・キャピタリズム”だ。 行列の先でTシャツが売られていて、そこにはDestroy Capitarismの文字。まだある。 この犬が…

  • ブラックボックス 砂川文次

    第166回芥川賞受賞作『ブラックボックス』を文藝春秋で読む。著者は砂川文次氏。 極めて細やかで胸が痛くなるような表現。 主人公のサクマはメッセンジャー。自転車で運ぶシーンから始まる。雨の交差点に突っ込んでゆく主人公の近くを白いベンツが交差し転倒する。肉体的な心理状態を丁寧に描く。この表現に惹きつけられる。 著者の砂川文次さん31歳は元自衛官で公務員。受賞インタビューから天才でありながら相当な努力をされている方なのが伝わる。言葉の端々に怒りと強さがある。自衛官という「あちら側」の立場にありながら、その”むかつき”はこの国がこのドラマの主人公の本当の生活や感覚に寄り添えていないことを主張する。 メ…

  • 与太郎戦記 春風亭柳昇

    お弟子さんの春風亭柳之助師匠とお近づきにさせて頂いた時、当時の柳昇師匠のことを教えて頂いた。柳之助師匠が初めて吉祥寺の(今はなき)バウスシアターで柳昇師匠の落語を聞いて衝撃を受けた、というお話からいろいろ尾ひれがついて、たまたま銀ブラならぬ神ブラ(神保町をぶらぶら)していてこの本を三省堂で見つける。1,100円。当時1987年に発売された値段と一緒。 本を読みながらこれほど笑ったり泣いたりしたことがあっただろうか。とにかく面白かった。 よくよく調べてみると、与太郎戦記には続編もあって、しかもフランキー堺を主演にして映画化までされている。 本の中にも出てくるが、柳昇師匠は戦争で指を失っている。そ…

  • ビッグバグ ジャン・ピエール・ジュネ

    まさかのジャン・ピエール・ジュネ新作。Netflix映画『ビッグバグ』 www.youtube.com とんでもない映画だった。見終わってからジャン・ピエール・ジュネの作品だと気づくのだが、彼の発想の転換には誰も追いつけない。『アメリ』がそうであったように、とにかく美的センスが突出している。2045年の未来を描く映画だが、ポップアートを楽しむような映画だ。 出てくるキャラがとにかく面白い。ロボコップをイメージさせるアンドロイドが独裁者のように社会を支配する。離婚寸前の夫婦がそれぞれ別の異性とその子供まで連れてこの家の集まり、そこに隣近所の女性などもからんで話しはどんどん混乱してゆく。そして突然…

  • トールガール2 エミリー・ティン

    きっかけはサブリナ・カーペンターだったと思う。彼女の『Wok It!輝けわたし』という映画が素晴らしくて、彼女が出ている『トールガール』をついつい見てしまい、その勢いでこの続編まで鑑賞してしまった。 『トールガール2』Netflix映画だ。 www.youtube.com 監督は前作と代わって台湾出身のエミリー・ティンだが、キャスティングは全く一緒だったと思う。背の高い女の子、というビハインドを跳ね返す素晴らしい映画だ。 ここでは背が高いことをビハインドにしているが、人には誰にでも引け目があるものだ。その対比的な存在がサブリナ・カーペンター演じる主人公ジョディの姉ハーパー。姉の身長が152cm…

  • ルーフトップ・コンサート ピーター・ジャクソン

    さすがはピーター・ジャクソンだ。恐れ入った。彼もまた別の意味で最近有名人になってしまったが、ドキュメンタリーフィルムの再編集活動は素晴らしい。 『ザ・ビートルズ Get Back:ルーフトップ・コンサート』に心から感動した。 www.youtube.com いまさら「ゲット・バック」の意味をここで解説するつもりはないが、ピーター・ジャクソンはこの映画の冒頭で、なぜ彼らがライブ活動を突然中止したのか?を一気に示す。この数分のシーンだけでも見応え十分。なにしろビートルズはたったの7年で世界を変えたのだ。 ロンドンのアップルスタジオの前に人だかりができて、大勢の人がビートルズの楽曲を聞き入る。ここは…

  • ゴヤの名画と優しい泥棒 ロジャー・ミッシェル

    『ゴヤの名画と優しい泥棒』 東洋経済新報社に応募したらオンライン試写会が当たった。嬉しかった。そして心から感動した。素晴らしい映画だった。 www.youtube.com 原題は”The Duke”で公爵という意味だ。 ゴヤの「ウェリントン公爵」という作品のタイトルが映画のタイトルになっている。14万ポンド(約2,000万円)もする絵画。この公爵の目がうまく使われていて面白い。そしてこの絵画が盗まれるという話しなのだが、最後の最後まで本当のことはわからない。とにかく映画は社会に適合しない老人とその老人を支える妻の話しだ。ヘレン・ミレンはすごいね。彼女は女王も演じるしこの映画のようにお手伝いさん…

  • ゴーストバスターズ アフターライフ ジェイソン・ライトマン

    『ゴーストバスターズ アフターライフ』を鑑賞。 www.youtube.com ”Ghostbusters: Afterlife” もともとこれまでの『ゴーストバスターズ』シリーズには全く興味もなかったし、感動もなかった自分にとって、これは全く異なる認識の映画だった。 その理由の多くは、あの『ギフテッド』、当時まだ6歳だったマッケンナ・グレイスの活躍に集約される。そして1984年版などで活躍したスペングラー博士を演じたハロルド・ライミスはもうこの世にいない。そのスペングラー博士の孫であるフィービー役を演じた彼女の映画だった。心の底から感動した。 ここまで書くともうネタバレになってしまうかもしれ…

  • ウェスト・サイド・ストーリー スティーブン・スピルバーグ

    『ウェスト・サイド・ストーリー』劇場鑑賞。新宿ピカデリーにて。 www.youtube.com スティーブン・スピルバーグがインディ・ジョーンズの最新作を途中で投げ出してまで作り上げたかったあの歴史に残る傑作『ウェストサイド物語』のリメイク。実は1961年版をまだ見ていない。見ていないが、どうもほぼ同じようにリメイクされたようだ。 この映画を見て思うのは1961年版がいかにヘイズ・コードぎりぎりで作られた挑戦的な映画か、ということだと思う。見ていないし、当時生まれてもいないので断言しにくいが、シェークスピアの原作をなぜアメリカの貧しいウェストサイドを舞台に映画にしなければならなかったのか。それ…

  • サタンタンゴ タル・ベーラ

    生涯最高の映画体験。『サタンタンゴ』をシアターイメージフォーラムで鑑賞。 www.youtube.com まずはこの映画を劇場公開に導いたビターズ・エンドの挑戦に敬意を表したい。内外の必ずしもマーケットに乗らないであろう名画を積極的に配給する姿勢に感謝。『サタンタンゴ』のように7時間以上もある長尺の映画は映画館にかかりにくい。その意味で配給会社と映画館の理解があってこその映画体験である。余談だが、岩波ホールが7月でなくなることに心を痛める。ミニシアターの先駆者とも言える日本の宝を失う。 朝10時半から始まったこの映画だが、祝日ということもあって劇場は満席札止め。気づいてネット予約したときは最前…

  • ダムネーション/天罰 タル・ベーラ

    『ダムネーション/天罰』を雪の降る表参道イメージフォーラムで鑑賞。 www.youtube.com 手に負えなかった。 これをどう説明していいかわからない。わからないのでめったに買わないプログラムを買ったが、それでもよくわからない。 少なからず、この映画は物語を追う映画ではない。そこにあるのは至高の芸術。冒頭のシーン、ケーブルカーのある風景からカメラが引いて、人物の背中を映す。その間、ケーブルカーが回る音と不思議な重低音が迫ってくる。人物は後ろ姿のままタバコを吸う。ここまで何分かかったかわからないが、とにかくたったこれだけのシーンをワンカットで仕上げている。 こうした映像と、人物の表情やハイト…

  • さがす 片山慎三

    『さがす』レイトショーで鑑賞。 www.youtube.com 平日の夜、新宿まで移動してレイトショーを鑑賞。 会場は遅い時間にもかかわらずほぼ満席。熱気ムンムンだ。 事前き聞いていたとおり、この映画の感想など、なにひとつ書くことができない。書いた瞬間からネタバレになってしまいそうだ。 ひとことだけ書くと、ポン・ジュノの助監督を務めた片山慎三監督だけに、ポン・ジュノワールドが展開される。犯罪、貧困、スラムなど・・・あらゆる映像がポン・ジュノである。本人は真似しないようにしたというが、自身に染み付いた感覚は拭えないのだろう。 この映画のポスターがとても意味深だ。主人公の佐藤二朗さんを中心に据え、…

  • 日本アカデミー賞廃止論

    かねてからと同じ主張だ。 濱口竜介監督が『ドライブ・マイ・カー』で本場ハリウッドのアカデミー監督賞にノミネートされた。日本人としては36年ぶり、黒澤明監督が『乱』でノミネートされて以来の快挙。ノミネートだけでもすごいことだが、もし受賞となると停滞する日本映画界にとっては大きな励みとなる。低予算で高品質の映画を撮るのは大変なことだ。『ドライブ・マイ・カー』ももちろん内容が評価されてのノミネートだが、限られた予算で作られた点をもっと評価してあげたい。かたや潤沢な予算で作られた映画会社とテレビ局のタイアップ映画は目を覆いたくなるような作品ばかりで辟易する。 黒澤明監督がノミネートされた第58回アカデ…

  • ロイヤル・トリートメント リック・ジェイコブソン

    Netflix映画『ロイヤル・トリートメント』 www.youtube.com 若き監督のリック・ジェイコブソンはTVシリーズなどの演出を経て、この映画を演出したらしい。なかなか愛らしい映画。単なるラブコメでもない。 美しいローラ・マラノ演じる主人公はニューヨークの下町で家族や友人と美容院を営むが必ずしも安定していない。そこに間違ってラバニアという架空の国の王子と縁が生まれる。王子役は『アラジン』で好演したメナ・マスード。彼はエジプト系カナダ人で、エジプト系というとラミ・マレックが連想される。美容院のあるマンハッタンは、『イン・ザ・ハイツ』が重なる。 ローラ・マラノ演じるリジーが、たまたの縁で…

  • ホーム・チーム チャールズ&ダニエル・キナン

    ケヴィン・ジェームズ主演の『ホームチーム』Netflix配信映画だ。 www.youtube.com こういう映画をみると、瞬時に『がんばれ!ベアーズ』が思い出される。ウォルター・マッソーとテイタム・オニール。なんとヴィック・モローも出ている映画で、シリーズ化されて、日本遠征版というのも公開されたようだ。 今思うと子供向けの映画だが、当時我々の世代からするとテイタム・オニールは大スターで『ペーパー・ムーン』でアカデミー賞を受賞した彼女に憧れたものだ。そしてこの映画を演出したマイケル・リッチーが手掛けたのがバート・レイノルズとクリス・クリストファーソンの『タッチダウン』。なんとこれまた憧れのジル…

  • 屋根裏の散歩者 江戸川乱歩

    江戸川乱歩の「屋根裏の散歩者」をなぜかダーリンが買ってきた。 ほかにも「人間豹」「押絵と旅する男」「恐ろしき錯誤」の4編が収められている。解説は高木彬光。 『屋根裏の散歩者』は、ある学生が主人公。何度かドラマ化もされているようだ。 何をやってもやる気が出ない学生は親からの仕送りで生活しているが、ある日引越したばかりの下宿の屋根裏を徘徊しはじめて、充実感を味わうようになる。そして同じ下宿で生活する性に合わない人物を殺害することに・・・ こういう語り口は江戸川乱歩独特の世界だ。 この本で最もページ数があるのが『人間豹』 神谷という社会人になりたての若い男が主人公だが、ある時彼が付き合うダンサーの女…

  • キネマ旬報ベストテン 2021年度

    2016年度 2017年度、2017年度 2018年度 2019年度、2019年度 そして2021年度が先ごろ発表になった。表彰式をまったりと堪能してしまった。 www.youtube.com 何度か表彰式に参加させてもらった頃がとても懐かしい。 今村昌平監督の『黒い雨』が最も古く、周防正行監督の『しこふんじゃった』や崔洋一監督の『月はどっちに出ている』、黒木和雄監督の『美しい夏キリシマ』などが思い起こされる。『黒い雨』の年、田中好子さんをロビーでお見掛けして、あまりの美しさに圧倒された。当たり前だが映画のイメージとは全く違う田中好子はとておきれいだった。 途中ご病気でお休みされた時期を除いて…

  • ふくらはぎをもみなさい 鬼木豊・槙孝子

    かねてから冷え性だった自分は、時々ジョギングをして筋力をあげようとしたらふくらはぎが痛くなった。そこことをポロッと義母に話したら過剰反応を示して「ふくらはぎは第ニの心臓だ。」などと大げさなことを言う。 そのうち義母からこの本が届く。『長生きしたけりゃ ふくらはぎをもみなさい』 長生きしたけりゃふくらはぎをもみなさい (健康プレミアムシリーズ) [ 槇孝子 ]価格: 1210 円楽天で詳細を見る だまされた思いで読んでみたら、思い当たるふしがたくさんあって一気読みしてしまった。2013年に出された本だ。 とにかく温めてよくもむ。ウソのような話しだが、1日試しただけで足の冷えが少し治まり、2日続け…

  • ドストエフスキー入門 佐藤優 悪霊・未成年・カラマーゾフの兄弟

    第三章 悪霊 まず、高橋和巳の『日本の悪霊』について紹介される。逃げる政治犯と特攻帰りの刑事、1950年の日本共産党分裂が背景にあるらしい。連想したのは黒澤明監督の『野良犬』だ。(こんど読んでみよう。) 『悪霊』にはルカとマタイの福音書が出てくる。ドストエフスキーは反革命的な立場でアナーキズムを批判した。佐藤優さんは、この作品の経緯を踏まえ、現代の新自由主義経済も悪霊のせいではないか、と語っている。 ネチャーエフ事件をベースにしたと言われるこの作品は、革命で破壊しておいてあとは次の世代に委ねるというものであり、ひいてはフォイエルバッハ論まで繋げて解説している。 第四章 未成年 主人公のドルゴル…

  • 生き抜くためのドストエフスキー入門 佐藤優 罪と罰・白痴

    2021年がドストエフスキー生誕200年ということと、コロナという未曾有の感染症が世界を蔓延する中で、ロシアの文豪が見直されてる。手始めに亀山郁夫先生の著書「ドストエフスキー黒い言葉」に触れてはみたものの、あまりにも敷居が高すぎて苦戦した。もとはといえばブレッソンの『やさしい女』を軽々しく見てしまったことでドストエフスキーのスイッチがONになってしまったのだが、いまもってドストエフスキーの重さに圧迫死してしまいそうだ。それは黒澤明監督が『白痴』の制作過程で背負ったこととことによると似ているかもしれない。(いうまでもなくレベルは雲と地の隔たりがあるが・・・) そこで同じ頃購入した佐藤優さんのこの…

  • フレンチ・ディスパッチ ウェス・アンダーソン

    またしてもウェス・アンダーソンがやってくれた。『フレンチ・ディスパッチ』 www.youtube.com 前作『犬ヶ島』にもやられたが、今回もぶちのめされた気がする。もうウェス・アンダーソンにはとてもじゃないがかなわない。彼の頭の中はとてつもなく寛大だ。 もうこの際ストーリーはどうでもよい。4つの物語を混ぜ合わせたオムニバス風の作りだが、内容はひとつにまとめられる。しかしそのあまりにも膨大な情報量を見る側は消化しきれいないと思う。ウェス・アンダーソンの世界にどっぷりと身を委ねるしかないのだ。考えてはいけない。 ただ、ウェス・アンダーソンが何も考えずにこの映画を作ったか?というともちろんそうでは…

  • 激動 日本左翼史 池上彰・佐藤優 過激化する新左翼

    お二人のお話の中で、思想的な書物を扱う書店についての紹介があったのも面白い。 そして本書は最終章に進む。 70年代に入ると敗北を認めたくない左翼思想集団はさらに暴徒化する。これは自分も子供の頃漠然とテレビのニュースなどで見ていた記憶がある。 佐藤栄作とニクソンは、日本の繊維対米輸出と引き換えに沖縄返還に合意する。川本三郎氏の『マイ・バック・ページ』でこの頃の赤衛軍について触れている。 www.youtube.com さらに滝田栄のパルチザン思想などを受けて組織化される左翼だが、このとき三島由紀夫事件が起きる。国家のために自決した三島を眼前にして、左翼には三島ほど体を張る人間がいないという敗北感…

  • 激動 日本左翼史 池上彰・佐藤優 新左翼の理論化たち

    ここで新左翼の理論化たちをお二人は紹介している。 講座派 対米従属 労農派 独立帝国主義 というふたつの左翼運動の中で池上彰さんは大学入学を決める。 そして当時の理論的に軸となる人物にマルクス経済学者の宇野弘蔵がいて大いに新左翼へ影響した。他にも黒田寛一や姫岡玲治こと青木昌彦など偉人であり天才であった理論家の紹介をする過程で、彼らの思想がどうして暴徒化したのか?自分の命を投げ出し人を殺す、という発想に至ったかを正してゆく。 その理由のひとつが日本共産党に対する絶望があるという。お二人の対談を読む限りだが、反米思想をあまりにも強く押し出したとき、一時的にでもスターリンを支持したことがしこりとなっ…

  • 激動 日本左翼史 池上彰・佐藤優 「学生運動の高揚」

    第2章は学生運動の高揚。1965〜1969年の4年間のことが書かれている。戦後左翼史の中でも凝縮された時期と言えよう。 アカシアの雨がやむとき という歌がある。水木かおるさんが歌詞を書いた歌。 www.youtube.com これこそ何をやっても無駄だった、という学生運動の敗北と虚無感を描いた名曲だ。 この頃、ベトナム戦争が始まる。当時、日本にもベトナム戦争の野戦病院が日本にもあったそうだ。 ところでこの時代の学生運動は大きく東大と日大の運動が暴徒化する。運動の対象は東大が医学部生の無給労働、日大が使途不明金をめぐる対立などで激化する。 www.youtube.com www.youtube.…

  • 激動 日本左翼史 池上彰・佐藤優 「60年安保」

    『真説 日本左翼史』の知られざる内容を学んで、続編を迷わず購入。この後第3巻が予定されているらしい。このシリーズの大前提が「来たるべき左翼の時代」とある以上、歴史に学ばなければ明日はない。共産主義に向かうメカニズムとして、原始、奴隷、封建、資本、社会と並び、これらはいずれも成熟した状態で次の時代へと移り変わる。未来を予想するために、過去に学ぶこの本を数回にわたって紹介する。 1、60年安保 社会・共産の対立 まず60年安保は岸信介が強引にアイゼンハワーを来日させたくて強行採決したことが引き金だったようだ。安保条約の内容そのものは国論を二分するようなものではなかった。共産党は「アメリカを追い出す…

  • コーダ あいのうた シアン・ヘダー

    え? これあのフランス映画のリメイクなの?『エール!』の??見たはずなのに覚えていない。記録を確認すると2016年にこの映画を見ているが、全く覚えていなかった。しかし今回リメイクされた『コーダ あいのうた』を鑑賞後再度『エール!』を見直したら全く違う映画の印象だった。 www.youtube.com ということで、今回はこの予告編にすべてが詰められてる。従ってドラマの筋書きも何もここで補足することはするまい。とにかく美しくて愛らしくて感動的な家族のお話である。感動で何度もこみ上げてくる映画なのに変わりはない。 www.youtube.com しかし細かい点はともかく、大きく違う点をひとつだけ指…

  • クライ・マッチョ クリント・イーストウッド

    まだまだ現役、90歳を超えてもまだ映画作りに意欲を見せるクリント・イーストウッドの最新作。昨年の東京国際映画祭でオープニング上映された映画『クライ・マッチョ』を鑑賞。 www.youtube.com ウィキペディアを読むとかなり昔から企画はあったそうで、なんとロバート・ミッチャムが候補だったと聞いて驚く。1980年代後半のことのようだ。ロバート・ミッチャムが80歳近くで亡くなったのが1990年代だから、おそらくこの原作のイメージは70歳ぐらいだったのではないか。その後シュワルツェネッガーで2010年頃本決まりになりかけたが、彼のスキャンダルなどで再延期となってさらに10年。なんと30年以上の時…

  • 嵐の中で オリオル・パウロ

    なかなか複雑な構造の映画だ。スペイン映画の『嵐の中で』Netflix映画。 英語タイトルのMIRAGEは蜃気楼。 1989年のある日、ビデオを撮りながら演奏するニコ少年が隣家の騒ぎを聞いて表に出る。このシーンがいきなり衝撃的だ。そして時代は変わって現代。ある幸せな家庭の女性が小さな娘とベッドで過ごしている。この2つの時代が並行して描かれる。そしてこの2つの時代と二人の人物が嵐の中で不思議な現象で交差する、という話し。 サスペンスとラブストーリーを織り交ぜ、巧妙に描かれたディテールがすごい。 詳細はこちらのブログがおすすめするが、とにかく細かい伏線がうまく最後に結びついていて驚く。 裏施の超絶☆…

  • 一宮入魂! 一之輔・宮治

    昨日笑点がありましたね。 寄席で時々お見掛けする春風亭一之輔と、いまや笑点への大抜擢で話題の桂宮治の二人会。大爆笑で始まり、大爆笑で終わった。 初めて入るよみうりホールは、1,100人も入る大きなホールだが、流線型を用いたデザインが美しい。古いけれども美しいホールだった。去年行った日生劇場もそうだったが、昨今のホールの単調なデザインではない優雅さがある。 たまたま同じ建物にある角川シネマで映画を見たら、たまたまこのポスターを見かけて、即座にチケットを購入した。一之輔さんは寄席で何度か聞いているが、宮治さんはこれが初めて。 幕が上がるとまず一之輔が出てきて、そこに宮治が絡み合い、いきなり大爆笑。…

  • 世界で一番美しい少年 クリスティアン・ペトリ

    『世界で一番美しい少年』 まずはこの映画を監督したクリスティアン・ペトリのインタビューが紹介されている。ここでペトリは正直にすべてのことを解説している。 www.youtube.com ペトリはとても知的で冷静にこの映画についていくつかのインタビューで語っていて、ひとことでこの映画を「美への強迫観念」とくくっている。ヴィスコンティがもらしたタイトルの言葉だけが独り歩きして、一人の少年の人生をとてつもなく高みに押し上げ転落させる。名声が極めて危険なもので、その破壊のメカニズムをこの映画で示しているのだ。また、『ミッドサマー』で”崖から飛び降りる老人”を演じたのは偶然ではなく、名声を得て死ぬほど苦…

  • ハウス・オブ・グッチ リドリー・スコット

    老いてなお創作意欲の衰えないリドリー・スコットの作り出す家族の崩壊を映す映画。その貪欲な姿勢が凄まじい『ハウス・オブ・グッチ』は広い意味で資本についての映画だ。資本主義の当然の顛末。 www.youtube.com なによりもこの映画はレディー・ガガで成り立っている。『アリー/スター誕生』で俳優としての才能を見事に開花させた彼女を、このドラマのテーマである”欲望”の中心に据えたキャスティングがこの映画の勝因だろう。とにかく素晴らしかった。彼女の繊細で大胆な演技はこの映画全体を支配する。 そして大スターである彼女だからこそ演じられるパトリシアは、大スターレディー・ガガだから成功した。ブランドもの…

  • 新聞記者 Netflix 藤井道人

    映画とこのNetflixシリーズは重なっている。映画で描ききれなかった部分をこのシリーズで細かく補おうとしている姿勢がいい。Netflix版『新聞記者』全6話。映画同様藤井道人監督が河村光庸氏の企画を受け入れて作ったようだ。 www.youtube.com 物語の詳細はこの際どうでもいいことで、映画『新聞記者』をこのテレビシリーズは何をどのように発展させたのか?ということに意味があると思う。ぐいぐい進む圧倒的なドライブ感のある素晴らしいドラマだった。 『新聞記者』が軸のドラマだが、今回最もシンパシーを感じたのは新聞配達員のシーンだ。奨学金で大学に通う二人、横浜流星さんと小野花梨さんと、新聞配達…

  • 梅沢富美男、泉ピン子 特別公演 明治座

    いやー、素晴らしかった。梅沢富美男さんの公演は二度目なのだが、本当に感動する。 www.youtube.com 明治座は自分を含めた高齢者で満席だ。 明治座やこの類の舞台の醍醐味は、ステージだけでなくその周辺にもある。豪華なお土産屋さんが並んでいて、30分ほどの長い休憩時間ごとにごった返すのだ。 そもそも開演の1時間以上前に開場となる理由は、この休憩時間に食事ができるため、食事の予約で並ぶ目的のようだ。知らなかった。ステージに食事にお土産にと、様々な楽しみが詰まった劇場が明治座なのだろう。東銀座の歌舞伎座も同じだし、思えば名古屋の御園座もそうだった。このシステムを落語でもうまく使えばいいと思う…

  • サンダーバード55 GOGO

    『日本語劇場版 サンダーバード55 GOGO』 新宿ピカデリーで鑑賞。 www.youtube.com 朝一番の回になんとな間に合って、ピカデリーに入ると、サンダーバードのレプリカが並んでいた。 考えることは皆同じ。 みうらじゅんさんが公式HPでサンダーバードの基地は格差の象徴だったと言っていた。 ピンクのロールスロイスはさすがに見たことがない。 劇場は満席。公開二日目ということもあってこの満席なのだが、隣の席がなぜかいくつか空いている。と、思ったら溢れそうな大きなポップコーンと飲み物を一人ひとり持ち抱えた家族連れと思しき方が隣の席に座る。そして予告編の間、ずーーーーーーっtpポップコーンをむ…

  • スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム ジョン・ワッツ

    『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』を鑑賞。実は『ファー・フロム・ホーム』を見ていないことに前日気がついて慌てて鑑賞。 www.youtube.com 昨年の世界公開、今年の日本公開とずっと高い評価をされてきた話題の映画なので、ここでなにかを示すのは愚の骨頂というものだ。どうでもいい。要するにそういう映画だ。いいとかわるいとか、好きとか嫌いとかを無視して、とにかく見てもらうしかない。 いずれにしても、この映画に出てくるドクター・ストレンジを見れば明らかな通り、スパイダーマンがアベンジャーズになった、というのが大きな転換になっている。(映画のセリフとして出てくる)つまりもう何でもできる。『イ…

  • さらば! 2021年 ジャック・クラフ

    このブログでかつて紹介した『Death to 2020』という映画があったが、これはその続編である。その名も『Death To 2021』。出演メンバーもヒュー・グラントなど同じ俳優を使っている。 そして完全に見る側と世の中をコケにする。バカにしている。世の中は狂っている、ということがこの映画の前提条件だ。約1時間のこの映画は、小気味よく辛辣に社会を罵っている。 www.youtube.com 世界の2021年をたったの1時間で振り返るのだが、その内容は極めて的を居ている。 バイデン政権誕生から始まり、前作同様ジョージ・フロイド事件のその後も追いかける。異常気象による洪水、森林火災などが環境問…

  • ライトニング・ムラリ バジル・ジョセフ

    長い映画だったが、これはヒーローものというよりも、トッド・フィリップスの『ジョーカー』だった。いや、ことによると『スパイダーマン』シリーズや、ほかのヒーローものの原点にあるべき重要なことがこの映画には描かれているような気がする。 www.youtube.com とにかくこの映画の悪役は極めて絶望的だ。シブという見かけのさえない男は、思いを寄せる女性が結婚し子供が生まれ、それでもこのウシャという女性を追いかける。ウシャの夫がいなくなってチャンス到来と思いきや、彼女の兄に妨害され、永遠にシブのウシャに対する思いは伝えられない。シブが雷を直撃して超能力を得た最後の最後にウシャはやっとシブの気持ちを理…

  • 時給はいつも最低賃金 和田静香著

    「時給はいつも最低賃金 これって私のせいですか?」 どこまでが本当のタイトルかわからないが、とにかく長いタイトルの本だ。 実は大島新監督の『香川1区』を鑑賞してたら、『選挙活動、ビラ配りからやってみた。「香川1区」密着日記』というエッセイが同時発売されていて、去る10月の衆議院選挙で和田さん自身が小川純也さんの選挙事務所で働くという体当たり取材をしたときのことが書かれた本を先に読んだことがきっかけだ。先の本はあっという間に読めて、一気読みしてしまったので、勢いでこちらの本を購入したのだが、そう簡単ではなかった。『選挙活動〜』は映画と概ね重なる部分があるが、こちらは小川淳也さんと和田さんのガチ対…

  • パーフェクト・ケア J・ブレイクソン

    『パーフェクト・ケア』を角川シネマ有楽町で鑑賞。この映画館は初めてだったと思う。かなり大きなシアターだった。 www.youtube.com "I care a lot”がオリジナルタイトルだ。「看病しまくるぜ」みたいなニュアンスか。 ひとことで言うとぶっ飛んだ映画だ。 後見人事業というのがあって、高齢者の財産を立場を利用して自分の利益にするというビジネス。ロザムンド・パイク演じる主人公がとにかくかっこいい。丸いサングラスや原色がまばゆいワンピースを見にまというこの女性は、弁も達者で判事からの信頼も厚い。時々吸うたばこの煙を鼻から吐くような女性。すごくかっこいい。 そして・・・ ダイアン・ウィ…

  • レイジング・ファイア ベニー・チャン

    ベニー・チャン監督の遺作となった『レイジング・ファイア』を鑑賞。驚くべき傑作だった。 www.youtube.com 正義を貫き、出世からも遠ざかり、汚職を徹底的に嫌う清廉潔白な刑事(ドニー・イェン)が主人公の映画なのだが、この映画は間違いなく敵役のニコラス・ツェーを軸とした映画だ。この敵役は、元同僚だったドニー・イェン演じるボン刑事の証言で、刑務所送りとなる元刑事ンゴ。ンゴが警察組織全体を敵にまわし徹底的に攻撃し、悪の限りを尽くす。元刑事という立場を利用して、徹底的な悪役に徹する。 しかしこの悪役には理由がある。彼は国家権力と権力を支持する財界(巨大企業)の罠にはめられたのだ。このあたりの表…

  • ドライブ・マイ・カー 濱口竜介

    濱口竜介監督の作品をこの年末年始に3本ほど鑑賞した。濱口監督は東大卒で芸大でも学び、英語は喋れるし、いかにも国際派として注目されるべきキャリアを持つ。この『ドライブ・マイ・カー』を含め、濱口監督が関わった作品が世界の国際映画祭で注目され、昨年の東京国際映画祭でも特集が組まれるなど、いま最もホットな存在と言えるかもしれない。 www.youtube.com あらすじなどは省略するが、濱口監督がなぜこれほど注目されているかを色々な媒体で読んだり聞いたりしてみると、そのひとつが演出方法にあるようだ。この映画の中で示される劇中劇。主人公の演出家(兼俳優)がワークショップを通じて集めた俳優たちに向けて演…

  • ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男

    『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』を2022年最初の劇場映画として鑑賞。 www.youtube.com 超人ハルクのマーク・ラファロが『キャロル』のトッド・ヘインズ監督とともに自ら権利を獲得して作った映画。アン・ハサウェイが妻役として華を添え、主人公の上司役としてティム・ロビンスがいい演技をしている。 企業側の弁護士が企業を相手に訴訟するというドラマだ。このロブ・ビロットという実在の弁護士に光を当てた点が注目に値する。(本人がカメオ出演している) この映画が伝えようとするのは、社会の矛盾だ。社会構造に問題があるので、この問題は解決できない。テフロンの毒性で地域の牧畜に影響を及ぼすこ…

  • 天井の葦 太田愛著

    おかしな借金だらけの探偵のところに、匿名の依頼が来る。ある老人が渋谷のスクランブルのど真ん中で空を指さして息絶える。探偵への依頼はこの老人が指さした空が何かを明らかにすること。たったこれだけのドラマがとんでもない展開になってゆく。想像を絶する。そして制御不能。 老人が元医師で、施設で暮らしていたことがわかってくる。そしてそこに公安の捜査官が訪れて死んだ老人と会話していることが明らかになってくる。これがあるジャーナリストが始めようとする番組とそれを阻止しようとする国家権力との間で揺れる。 物語は、死んだ老人が瀬戸内海にある島にいるある人物、暗号名「白狐」へ託したメッセージをめぐり混迷してゆく。探…

  • ただ悪より救いたまえ

    www.youtube.com こりゃすごい、すごすぎる。『ただ悪より救いたまえ』 日本を舞台にして始まるこの映画。日本のヤクザを殺しに来た殺し屋が、ヤクザの弟分の殺し屋に追いかけられるという物語。まぁとにかくすごい。細かい物語のディテールなどどうでもいい。とにかくすごい。 ファン・ジョンミンはもちろんだが、殺し屋として対決する相手役が、あの『イカゲーム』の主人公、イ・ジョンジェだ。全く『イカゲーム』とは全く違うキャラ。おどおどして借金まみれの行きあたりばったりな主人公だった彼が、今回は壮絶な殺し屋。 日本から韓国、そしてタイを舞台にした格闘のドラマは、まさにフィルム・ノワール。そして最後の二…

  • 偶然と想像

    滝口竜介監督の作品に初めて触れる。 『偶然と想像』 www.youtube.com 3つの短編で構成される作品にはそれぞれの偶然と理屈っぽいセリフが重ねられる。そしていずれも黒沢清監督の影響もあるのかほとんど演技しない。棒読みのセリフ。そして映像とセリフの単調な焼増しのストレスをある偶然が開放してくれるというもの。この手法は小津安二郎を意識しているようで、結論はまるで違う。それぞれに印象深いシーンを重ね合わせる。もともと7つの短編を予定していたが、未完成のまま映画祭に出した作品だという。 第一話「魔法(よりもっと不確か)」 タクシーの女性同士の会話が延々と繋がる。何が偶然か?はここに書くことは…

  • ドストエフスキー 黒い言葉

    亀山郁夫氏の著書に触れる。 なぜこの本に接することにしたのか記憶がないのだが、結論から言うと苦しかった。かつてドストエフスキーを何冊か読んだ苦しさとは別の苦しさ。ロシア文学に対峙するために、彼の国の歴史なども踏まえて理解する必要があったことをあらためて認識することになる。 亀山氏はこの本を現代社会に照らそうとしている。序文の印象な言葉として「AIとコロナの二重支配」というのがあるが、この苦しみをドストエフスキーの行きた時代になぞらえて、現代の貧困や格差は資本主義社会の矛盾などをえぐるような話に展開してゆく。しかし何しろ難解で、ベーシックな知識がないと辛い。 ドストエフスキーが『賭博者』の中で主…

  • 香川1区 大島新監督

    www.youtube.com 大島新監督の『香川1区』を鑑賞。 ・・・ ちょっと言葉が出ないぐらいの感動で嗚咽。前作『なぜ君は総理大臣になれないのか』へのアンチテーゼです。あちらは敗北でこちらは勝利。しかしながら、この映画が終わりではないというところが非常に難しい問題だ。立憲民主党の総裁選で落選した結果報告で終わらせるこの映画だが、北野武監督の『キッズリターン』からセリフを借りれば、 「おれたち、もう終わっちゃったのかな?」 「まだ始まっちゃいねえよ。」 負け犬のドラマの感動的なラストシーンは、この映画にも重なる。北野武が大島新監督の父大島渚監督の『御法度』で切り落とした桜の意味もまた思い越…

  • ミックステープ 伝えられずにいたこと Netflix

    『ミックステープ』をNetflix鑑賞。小気味よく惹きつけて幅広い鑑賞者を呼び起こす見事な映画だった。 www.youtube.com 孤独な少女、日本だと小学6年生ぐらいの少女は祖母と二人暮らし。ある日亡くなった自分の母が残したカセットテープを聞いて様々なことの目覚めてゆくというお話。そしてそのミックステープの中身に驚くべき秘密が隠されていた、という物語。少女がどんどん成長してゆく可愛らしい姿が描かれる。 ときは1990年代も終わる頃、2000年問題といって忘れてしまった方も多いかもしれないが、年代が代わることどコンピューターが全て麻痺するのではないか?という懸念が今思うと都市伝説のように広…

  • モスラ 1961年

    正直言うと、この偉大な映画をこのクオリティで劇場鑑賞できるとは思わなかった。『モスラ』は素晴らしかった。こんな映画だとは思わなかった。 1分ほど、映画の始まる前に音楽が流れるのだが、昔の映画はよくそういうことがあったようだ。今のようにネットで指定席を取れる時代ではないので、回の間で入れ替わるとき、座席につくまでの時間を確保する目的だったと思われる。『2001年宇宙の旅』や『風と共に去りぬ』あるいは『ベン・ハー』などもそうだったのではないか。ちなみに『モスラ』の音楽は伊福部昭さんではなく古関裕而さんが担当されている。ザ・ピーナッツが出演するからだったのだろう。古関裕而さんというと、夏に一人で東北…

  • GUNDA/グンダ

    新宿武蔵野館の系列映画館、すぐ近くにあるシネマカリテで『GUNDA/グンダ』を鑑賞する。『悪なき殺人』鑑賞後すぎ移動する。綱渡り。この映画館はブレッソンの『田舎司祭の日記』以来。 どこかでこの映画の予告編とチラシを見て、必ず見ようと思っていた。広告宣伝とはいえ多くの著名な映画監督がこの映画を絶賛している。ポール・トーマス・アンダーソン、アルフォンソ・キュアロン、アリ・アスター、ガス・ヴァン・サントらが絶賛のコメントを寄せており、ホアキン・フェニックスがプロデューサーとして参加している、という映画だ。これを見ないわけにはいかないだろう。 簡単に説明するなら、この2分ほどの予告編を見れば必ず見たく…

  • パワー・オブ・ザ・ドッグ Netflix

    ニュージーランド人のジェーン・カンピオン監督が作り上げた『パワー・オブ・ザ・ドッグ』をNetflixで鑑賞。『ピアノ・レッスン』で世界にその名を轟かせたカンピオン監督がまさに”作り上げた”というのに相応しい苦労をされて出来上がった傑作だ。コロカ渦で4ヶ月の撮影中断をはさみ、映画そのものがお蔵入りする懸念の中で、スタッフやキャストが撮影地のニュージーランドに残って撮影を続行したという。そうした苦労を映画の中に見出すことはできないが、冷静で冷徹ともいえる徹底した美へのこだわりを感じさせる。 www.youtube.com 1925年頃のモンタナが舞台。主人公はカンバーパッチが演じるカウボーイ。この…

  • 悪なき殺人 EULES LES BÊTES

    英語タイトル”Only the animals"が生きている。 www.youtube.com 『悪なき殺人』という邦題もまた間違いではないし、そのとおりなのだが、この映画でいうアニマルとはなんだろう?と思う。実際に出てくる動物は飼い犬ぐらいだ。そしてこの犬の存在は極めて重要。しかし問題はこの犬ではなく人という動物の恐ろしくおぞましい欲望、欲求、嫉妬、羨望などが複雑に交錯する。次から次へと繋がる物語の集結は驚くようなものだ。人種、偏見、格差、貧困などもこのラストシーンに込められている。つくり手の才能と現代に突きつける強いメッセージが示される。 ここに出てくる人物たちは、だれもお互いを愛さない。…

  • ラスト・ナイト・イン・ソーホー

    『ラスト・ナイト・イン・ソーホー』エドガー・ライト監督の新作。彼の映画だと『スコット・ピルグリム VS.邪悪な元カレ軍団』というおバカ映画がすごい。いや、あれはおバカ映画ではない。4ビットの任天堂ゲームをステージとする陳腐な映画に思わせて、実は『地獄の黙示録』なども意識させるすごいエンディングが待ち受ける哲学的な映画だった。そしてこの日見た、『ラスト・ナイト・イン・ソーホー』もまた、あのおバカ映画で言わんとしたことが重なっている。 www.youtube.com ホラー映画なのだが、青春ドラマだ。しかしひとことでこの映画を片付けるのは難しい。1960年代のソーホーに遡及することの意味などを考え…

  • エッシャー通りの赤いポスト

    『エッシャー通りの赤いポスト』は園子温監督の新作だった。試写会で鑑賞。 www.youtube.com こんな映画がまだ作れるのかと感動した。園子温監督の群像劇。ほとんど無名の俳優を集結させて、極めて政治的なドラマとして突きつけている。 いわゆるループものだ。『仮面』という映画のオーディションで役を狙う多くの市井の人々の群像劇。タイトルの意味などを推測すると、エッシャーは騙し絵で、赤いポストは目立つことの意味。誰にも知られない無名の人々が自分の存在を世間に示して目立ちたい、主役になりたいという意思の代名詞だ。そして『仮面』。これはベルイマンの映画『仮面ペルソナ』を連想させる。その後の多くの映画…

  • 嫌われた監督 鈴木忠平著 文藝春秋

    日刊スポーツのドラゴンズ担当記者の著者が書いた、落合博満氏がドラゴンズの監督だった8年間を事細かく書き上げた感動の大作だ。 この本は落合さんの本でありながら、著者の成長を物語る一人称の作品とも言える。そしてここに書かれる落合さんの言葉は、これまで報道などで聞いてきたものとはまるで感じ方の変わるものだった。 「恥をかけ」という落合さんの言葉が冒頭に書かれる。この言葉は記者である著者の成長を助けるひとことだ。 懐かしいメンバーのストーリーが重ねられていて、どの話も涙なくしては読むことができない。名古屋には仕事で住んでいたが、それほどドラゴンズに思い入れのない自分でも、いくつかのエピソードは涙を誘う…

  • キャッスル・クリスマス Netflix

    いやびっくり!あのブルック・シールズが映画に出てた!驚いたね。すごね。 『キャッスル・クリスマス』(A Castle for Christmas) www.youtube.com この映画の話の前に、ブルック・シールズについて説明すると、彼女は1978年、つまり40年以上前に、ロリータ美少女としてデビューしました。言わずとしれた『プリティ・ベビー』。ロリータというとキューブリック監督の同名タイトルが連想されますが、あちらはモノクロで、こちらはカラー。『死刑台のエレベーター』のルイ・マルが監督でアメリカ進出第一作だったんです。それはそれは衝撃でした。でも・・・私まだこの映画見ていません。とにかく…

  • 令和三年十二月上席 浅草演芸ホール

    柳之助師匠の落語をお目当てに、一人で浅草演芸ホールに向かった。 東武線の終点浅草駅の進行方向最後尾の階段を降りて改札を出て左に向かい、伝法院通りを突き進むと、ちょうど六区通りに出る。この日は日曜日だったので、朝10時前でも仲見世は大賑わいで、伝法院通りから進んだ道と交差するあたりはもう大混雑。 11時の開場には少し早いので、カフェで読書しながら時間をつぶす。マンション管理員の本が実に面白い。とてもうまく構成されている。 11時少し前に木戸銭売り場に並ぶ。ホールは喚起を意識しているようだ。いいことだ。 中に入ると、どうやら常連のお客さんで前の席は占領されている。和服のご婦人は寄席が初めてなのか始…

  • コドモなオトナの人生レッスン Netflix

    原題はPourris gâtés”で「甘やかされて育った腐ったもの」という内容ですね。 笑えません、自分のことのようでそうでないようで。 甘えという言葉は日本独特ですが、どうもフランス語にも”gâtés”という甘えに近い言葉があるようです。 www.youtube.com 短い映画ですけど、とてもおもしろいです。そして美しい映画。 モナコのゴージャスな風景からマルセイユの貧しい農地へと転落する家族の話です。 詳細は見てのお楽しみですが、この映画には圧倒的な映像の美しさがあります。素晴らしいです。特にマルセイユの田園風景がとにかく美しい。都会の喧騒を避けて、この美しい風景の中で、超リッチな家庭で…

  • 6アンダーグラウンド Netflix

    ハリウッドで最も高額のギャラを得るライアン・レイノルズと壊し屋のマイケル・ベイがタッグを組んだ超大作がNetflixでリリースされた。すさまじい映画だった。『6アンダーグラウンド』 www.youtube.com むちゃっくちゃな映画である。冒頭のカーチェイスシーンから声が出てしまう。映画全体で「ああああ!」の連続。こんな映画に150億円もかけることができるNetflixの偉大さが伝わる傑作だった。 主人公のライアン・レイノルズはともかく共演者も見どころ満載だ。まずは美しきメラニー・ロラン。 衝撃の『イングロリアス・バスターズ』から10年。まだまだこのボディラインである。不死身の女性スナイパー…

  • アーミー・オブ・ザ・デッド

    アーミー・オブ・ザ・デッドをNetflixで鑑賞。圧倒的なゾンビ映画だった。疲れた。 www.youtube.com 『ジャスティス・リーグ』のザック・スナイダー監督による圧倒的な世界。 主人公はプロレスラーのデイヴ・バウティスタ。ドゥウェイン・ジョンソンと同じキャリアのようだ。圧倒的な存在感でこの映画をリードする。 物語はゾンビに占領されたラスベガスに原爆が投下される前までに、金庫にある大金を運び出す、というミッションを受けた荒くれ者のアーミーというはなし。この計画をサジェストするのが真田広之演じるタナカという人物だったりする。 真田さんがハリウッドで活躍しているのを見るのはうれしい。この役…

  • 水俣曼荼羅 原一男監督

    今週のお題「最近あったちょっといいこと」 いつもしょうもないブログですけど、今週はいい映画にたくさんめぐり合えて、うれしくて記事にしてしまいました。「最近あったちょっといいこと」それはこの映画を見ることが出来たことです。 原一男監督の『水俣曼荼羅』をシアターイメージフォーラムで鑑賞。 6時間12分と長尺。 www.youtube.com 渋谷ではなく原宿から表参道を上がって青山通りに向かう。いい天気だ。東京はすっかりコロナを忘れてしまったようだ。しかし忘れてはならないこともある。この日見る映画はそういう映画だ。 昼頃、青山通りのシアター・イメージフォーラムに着く。 いつもだと早めに行って行列に…

  • 令和三年十一月下席 新宿末廣亭

    先日の午後休みをとって新宿末廣亭に赴く。コロナ禍で長い間閑散としていた寄席はかなり活気を取り戻していて、昼の部が終わる頃は満席で立ち見がでるほど盛況だった。 ナオユキさんの漫談で爆笑し。 三遊亭遊吉 三遊亭茶楽の『紙入れ』 三遊亭遊三の『高砂や』 瀧川鯉昇の『粗忽の釘 ロザリオ版』。これは笑ったなぁ・・・ 股間から釘が・・・ 東 京太、ゆめ子の漫談。 最近よくおみかけする三遊亭とん馬の『他行(たぎょう)』 浅草演芸ホールの失敗談とかっぽれもいいですね。盛り上がります。 春風亭柳橋の『代書屋』。権太楼師匠の『代書屋』以来。 桧山うめ吉。 そしてトリは春風亭柳之助。なんと『芝浜』でした。寄席の短い…

  • 森洋史、松井えり葉 GINZA SIX

    銀座に来たら、どうしても寄りたいGINZA SIX。一日いても飽きない。 その理由は色々あるが、まずはギャラリーとしての魅力。 この日はフロアの中央で森洋史 氏の個展が開かれていた。幾何学的なキューピー。 なかなか見応えのある作品が並ぶ。ポップであってそれを拒絶するような冷たさも感じさせる。そしてカフェの中では松井えり葉さんの個展も併設される。こちらも目を奪われる。個性的な作品ばかり。 二次元のキャンパスに立体的な積み上げをして、その中にさらにひと味加えている作品群はいずれも魅力的だ。アートは推理小説に似ている。その作品の意味を掘り下げて、少しでも一致点があると満足感が高まる。回答はもちろんひ…

  • 逆境の資本主義 コロナと資本主義

    コロナのようなパンデミックの襲来は、過去にもあったことなのに、いざ想定外の事態となったときの備えはあるのだろうか。これまでのようにROE経営を最上の状態として位置づけていいのだろうか。そのあたりをウィリアム・ラゾニック氏は労働者の立場から理論づけしている。労働者の意欲を高めて好循環を維持することで中間層を押し上げる。株主至上主義は資本主義を腐らせたとまで断言する。マネーの暴走がそれを示す。何も考えない取り引きが膨張する。これを「短期志向の罠」と表現している。これは地球という環境に対しても同じだろう。 もともと大航海時代の会社は、航海が終わるたびに解散していたが、オランダの東インド会社から会社が…

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