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平熱通信 https://hints.hatenablog.com/

日々の生活の役には立たないけれど、ふと思いついた、「あ、ちょっと面白いかも」というようなことを書いています。

平川水鳥
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2019/08/24

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  • 空気吸うだけ。

    今年の1月2日が実は振替休日だということを知ったのは、1月4日水曜日のいわゆる仕事始めの日であった。 仕事机に置いてあるカレンダーにそのように記載されているのを見て、なんとも不憫な気持ちになったのである。 こんなにもかわいそうなことがあるのか、と。 こんなにも、誰にも喜ばれなさそうな振替休日、他にあるのだろうか、と。 1月2日にしても3日にしても、カレンダー上は平日であるにもかかわらず、暗黙の了解、というか、なし崩し式に、というか、一般的な認識としては、「ま、休日ということで」みたいに扱われることが多いのではあるまいか。 1月2日(そして3日)は休日扱いされる度にこう思っていたはずだ。 「本当…

  • コズミック・ベロシティ。

    今日はわりと過ごしやすい。 暑くもなく風もあり、窓を開けていればいい具合の風も入ってくる。小さい音で音楽を鳴らし、床に寝転がり、うだうだとどうでもいいことばかり考えて過ごしてやった。 考え事の合間には、最近、最新刊を買った『ダンジョン飯』の古い巻をぺらぺらとめくり、それに飽きるとうだうだと考え事をした。考え事の中身は、想像であり空想であり夢想である。赤面するような希望に満ちた想像もあれば赤面するほどまっすぐな空想もあれば赤面するようないかがわしい夢想もある。 もやもやと頭の中に浮かんだものを材料に、テキストファイルを作ることもある。もやもやしたものをもやもやしたままテキストにするとワケがわから…

  • ひみつ作戦決行日。

    トイレを出たところで気を失い、そのまま倒れて壁に顔面をぶち当てて唇から出血しながら崩れ落ちるという、なかなかドラマチックな体験をしてしまった。 家族の話では、目を覚ました後、「トイレちゃんと流したっけ」と言い残し再度気を失ったらしい。その後目を覚ますことができて本当によかったと思う。もしもそのままだったら、辞世の言葉が、 「トイレちゃんと流したっけ」 になるところだった。 転倒時に頭を打った可能性があるし、顔面にやや痛みが残っていたので、近所の総合病院でCTスキャンをやってもらった。人生初CTスキャンである。 装置のおおげさなデザインといい、寝そべった寝台が微動しながら動く様子といい、低くうな…

  • 胸部にまつわる10年史。

    仕事が一区切りつき、ぬるいコーヒーを飲みながら東ハトのハーベストをかじっていた時のことである。 仕事部屋(兼寝室)のドアが少し開き、室内の僕が休憩していることを確認するくらいの間が開いた後、娘が「ちょっといい?」と言いながら入ってきて、僕のお菓子置き場から勝手にハーベストを出しつつ、こんなことを言ったのであった。 「お父さん、私、このままだとペチャパイ人生かもしれないや」 そう言い終わると同時に娘はハーベストをざくざくと食べ始めたのだが、その瞳からは、試練を受け入れる者が発する鈍い光が感じ取れた。親子とはそういうものだ。 仕事の合間の休憩時間に聞く「ペチャパイ」という単語はなんとも耳に新鮮で、…

  • 歯医者さんにはかなわない。

    何日か前のことだ。仕事中に突然、口の中で「めき」というような音がしたのである。舌で確認すると、奥歯がよろよろと揺れているような感触があった。口の中に指を突っ込んで、軽く触れてみると「ぐら」という感じでたやすく動く。 あわてて歯医者の予約を取り、昨日、処置をしてもらったのである。 処置といっても歯医者に「あー、こりゃもうダメですねえ」などと言われつつ口の中に何か器具を突っ込まれ、麻酔もしないでそのまま抜かれただけだ。多少、歯茎あたりが引っ張られているな、という感触はあったものの痛みはまったくなかった。本当に今日まで歯茎にしがみついていたのか、というくらいの無抵抗主義である。 歯医者から「持って帰…

  • 夏の扉。

    髪を切った。 自慢ではないが、僕の「髪を切った」は、そんじょそこらの「髪を切った」と同じにされたら困っちまうぜ、というくらいの「髪を切った」なのである。 つまり、本当に「髪を切った」だけなのだ。 そこには、頭髪の量を調節し、形を整え、最終的には見栄えを向上させようというような意図や野心はなく、単に、余分なものを切る、という作業でしかない。この作業に一番近いものは、(この例えがどれだけの人に伝わるのかよくわからないが)プラモデルを作る時の「バリ取り」だ。 なんというか、店員さんにしてみたら、かなりやりがいのない作業なんだろうなあ、と思う。 ちなみに、頭髪の切り具合を注文をする時に店員さんに言うセ…

  • そんなことよりナッツトゥユー。

    仕事で使っているメガネが見えにくくなってきたので、近所の大型スーパーに入っているメガネ屋に行くことにした。まあ、メガネの調子が悪くてメガネ屋に行くのだから、これ以上ないくらい当たり前の話だ。 これが、「仕事で使っているメガネが見えにくくなってきたので、近所の大型スーパーに入っている鮮魚店で思い切ってウナギを買ってみた。旬だし」だとずいぶんな変化球になってくる。もしかしたら、ウナギに含まれるなんらかの栄養に視力を改善する効果があり、長期的な視野で見れば僕のメガネ問題とウナギがつながってくる可能性もなくはないが、視力が改善するまでウナギを食べ続けるよりも、安いメガネを一本買ったほうがコスパが良いよ…

  • トイレ道。

    ついさっきのことだ。 リビングにあるパソコンをいじっている時に、娘に、「トイレ入ってたよね。ウンチ目的で」と聞かれたのであった。 それはたしかにその通りだったので、そのように返事をしたところ、娘は、 「やはり、正解率100パーセントだ……」 とつぶやきつつ、ニヤリと笑ったのであった。 娘は、家族の誰かが(大きい方の用事で)トイレを使った後、その残り香で、それが誰の使用後なのかわかるらしい。 それを聞かされてたいそう驚いた様子の僕を見て、娘はたいそうご満悦のようだ。自分の鋭敏な嗅覚に、父親が驚愕していると思ったのだろう。 たしかに、そういう意味でもすげえな、とは思ったのだが、それよりもなによりも…

  • 4月ですから。

    先月末のことだ。 リビングの壁に貼ってあるカレンダーを見ながら、「そろそろ4月だねえ」とつぶやいたところ、それを聞いた娘に、 「おそろしいことを言うなっ!」 ……と、一喝されたのであった。 4月になれば新学期がはじまり、新しい授業新しい先生新しい学友新しい授業システムに慣れなければならない。「新しい授業システム」というのがなんとも今風というか、すべての授業の中で、オンライン授業がどれくらいの割合なのか、オンライン授業の中で、どの授業でZOOMを使い、どの授業が動画視聴のみなのか、去年とはいろいろと変わっているらしい。コロナ渦の影響で昨年突然はじまったオンライン授業なので、学校側も試行錯誤をして…

  • 手のひらに鼓動。

    自宅にいる時間が長くなり、その上、ベッドに横たわっている時間が増えるにつれて、犬と一緒にいる時間もどんどんと増えている。 在宅勤務になって、自宅であるにも関わらず、今までわかっていなかったことにいくつも気づいたものだが、その中のひとつは、「犬はけっこう寝てばかりいる」という事実だ。 昼も夜もスーイスーイという寝息を立てて実によく寝ている。その音量はけっこう大きく、仕事をしている最中などは「昼間っからスイスイと寝てられるなんざァうらやましいご身分ですなァ」などと思いつつ心底うらやましくなるのだが、音色そのものは聞いていて心地いいものだ。なんというか、でこぼこした気持ちを平らにならしてくれるような…

  • 省エネ大賞個人部門。

    ああ、はい。そうです。たしかに受賞しました。 いや、たしかにね、僕も意外だなあとは思ったんです。あれって、なんというか、人間がもらう賞だと思ってなかったんで。 でもね、先週、現に電話がかかってきて、担当の方が、「おめでとうございます! あなたが、今年の省エネ大賞に選ばれました!」なんて言うもんだから、こちらとしても思わず、「ありがとうございました!」なんて即答しちゃって。ええ。 まあ、省エネ大賞って賞があるのは知ってたし。あれって人間を対象として賞だっけ、みたいな疑問はなくもなかったんだけど、このご時世ですからね。もらえるものはもらっとけ、みたいなことも考えちゃったんですよね(笑)。 もちろん…

  • 静物。

    久々に髪を切りに行く。 その後、近くのショッピングモールに入っている本屋で西村ツチカの『北極百貨店のコンシェルジュさん』2巻を買う。 帰宅してから少しづつ読み、読み終わった時には夜になっていた。それほど厚い本でもないのだけれど、休憩をはさみつつ少しずつ読んでいたら半日がかりになってしまった。 医師から薦められて新しい薬を飲み始めてから2か月ほど経った。 2か月前のあの日、医師は「飲み始めてから、薬が体になじむまで、副作用が出ることがあります。吐き気とか、悪寒とか」と、早口で説明して、その後、「ま、全員が全員、副作用が出る、というわけではありませんから」と付け加えた。 薬を飲み始めた日にわかった…

  • スキカキらいかデイウト。

    「好きか嫌いかで言うと」 そう彼女が言ったような気がした。 いや、正確には、 「貴方のことを、好きか嫌いかで言うと」 と言ったような気がしたのだ。 僕はおおいに驚いて、画面の向こうの彼女に、その旨を確認した。 今、僕のことを、好きか嫌いかで言うと、という切り口でジャッジしようとしたのではあるまいか、と。 画面上の彼女は眉間にシワを寄せ、少し小首をかしげて考える顔になった後、「お」と何かに気づいた顔になった。そして、画面の外からノートを取り出してボールペンでさらさらと何か書き、それを僕に見せてくれた。 「鋤牡蠣ライカでいうと」 そこには、こう書かれていた。 「さっき私が言ったのは、すき、かき、ラ…

  • 彼女が本当は欲しかったもの(ケンタッキー・フライドチキンにて)。

    朝、自宅を出る時は肌寒かったのに、診察が終わって病院を出た時にはすっかり暖かくなっていて、自宅の最寄り駅に着くころには少し汗ばんでいた。 さっき寄り道したある商業施設のエレベーターよりも、昨日行った会社のエレベーターよりも、病院のエレベーターが「密」な状態だった。商業施設や会社のエレベーターの床に描かれていた、ソーシャルなディスタンスをキープするための立ち位置を示した足跡マークも病院のエレベーターにはなかった。「病院なのに、ねえ」という、「いかがなものか」感を抱かなくもないものの、各エレベーターの底面積や使用状況を考えると仕方のないところなのかもしれない。 そもそも、僕が通っている病院はそれな…

  • 夕焼け小焼けを聞きながら。

    10月になって少し残念に思うのは、毎日夕方になるとどこからか聞こえてくるチャイムの時間が変わったことだ。 『夕焼け小焼け』のメロディにのせて、外で遊んでいる子供たちにはやく帰ることをうながすそのチャイムは、9月までは5時半に流れていたのだ。それはつまり、僕にとっては『夕焼け小焼け』が聞こえてくれば仕事を終わらせてよい、ということを意味するので、在宅勤務をするようになって以来、『夕焼け小焼け』を心待ちにしながら仕事をするようになってしまった。 その、僕にとっては終業のチャイムであった『夕焼け小焼け』が、10月からは4時半に流れるようになったのだ。秋になり、外が暗くなるのがはやくなってきたから、と…

  • 大いなる愚者の小さな作戦。

    ……だから、さっき仕掛けておいた例の装置がそろそろ動きだす頃だろう。そうしたら連中、きっとあの大きな門に殺到すると思うのさ。そうなれば我々としては、がらんどうになった大広間にずらり並べられたごちそうの数々を、端からぺろりと味見させていただく、とまあそういう作戦さ。 僕が中学生の頃だから、けっこう昔の話になってしまうのだけれど、二年生の国語の教科書に載っていた小説の一節だ。暗記したものを書いているのでもしかするとどこか間違えているところがあるかもしれないが、内容はおおむね合っているはずだ。 僕はそれほど記憶力が優れているというわけではないのだが、とにかく国語の教師がこのくだりを気に入っていて、何…

  • 彼女が好きなナンバー8。

    どこかの家の中から、テレビの音が聞こえてくる。 おそらくそれはニュース番組で、明瞭な男性の声が、 「感染の拡大が続く東京で……」 と言っている。 僕は犬(女子)と朝の散歩中で、思わず彼女に「映画かなんかシーンみたいだね」と言ってみる。 まだ七時前だというのにけっこう暑い。しかしそのかわりよく晴れている。 ありふれた夏の朝に、聞こえてくる不穏なアナウンサーのコメント。 これはアレだ、まさにSF映画の冒頭部分だ、などとつい思ってしまいつつ、いやもうこういうのずっと続いてるじゃないの、と、我に返る。 彼女はといえば、アスファルトの上でひっくり返っているセミの死骸に興味津々で、僕の発言など聞こえていな…

  • 雨の中、トイプードルが仁王立ち。

    夜中にふと目が覚めて、はてなんでまた今このタイミングで目が覚めたのだろうなどと思う間もなく、寝室がびりびりと震えるほどの轟音である。 その後、カーテン越しでもしっかりわかるほど空が光り、その数秒後に轟音、という組み合わせが3セットほど続き、なんだかものすごい勢いで落雷が続いているということがわかった。雷の音ばかりに気を取られていて気付かなかったが、雨の音もかなり騒々しいことになっている。 なるほどそういうわけで目が覚めたのか、と納得しつつスマートフォンを見ると、防災速報アプリから何件か通知が来ていた。この雨で、僕が住んでいる町の一部が警戒レベル3に指定されたらしい。台風のシーズンになると時々見…

  • あなたがいるなら。

    ふと気づくとまるまる五日ほど外に出ていないということに気づき、たまたま雨がやんでいたので散歩をしてみた。時刻はだいたい19時くらい。またいつ雨が降ってきてもおかしくない空模様だったけど、傘は持たずにウチを出た。もしも雨が降ってきたら小走りで帰ればいい。雨に濡れる被害を最小限にとどめるには全力疾走が望ましいのだろうが、今の自分の性能を考えると、そんなことをしたらすっころぶか足をぐねるに違いない。 特に目的地があるわけでもなく、なんとなく近所を徘徊する。 曲がり角が訪れる度に適当に曲がり、日常的な行動範囲から少し外れたあたり、つまり、帰り道がわからなくなることはないけれど、何回か試行錯誤はしなくて…

  • あなたがいるなら。

    ふと気づくとまるまる五日ほど外に出ていないということに気づき、たまたま雨がやんでいたので散歩をしてみた。時刻はだいたい19時くらい。またいつ雨が降ってきてもおかしくない空模様だったけど、傘は持たずにウチを出た。もしも雨が降ってきたら小走りで帰ればいい。雨に濡れる被害を最小限にとどめるには全力疾走が望ましいのだろうが、今の自分の性能を考えると、そんなことをしたらすっころぶか足をぐねるに違いない。 特に目的地があるわけでもなく、なんとなく近所を徘徊する。 曲がり角が訪れる度に適当に曲がり、日常的な行動範囲から少し外れたあたり、つまり、帰り道がわからなくなることはないけれど、何回か試行錯誤はしなくて…

  • 僕はいろいろ言葉にできない。もしくは、ゾンビがいないというだけで。あるいは『デッド・ドント・ダイ』。

    いや、もう前売り券を買ってあったから、今回はしょうがない。 ……とかなんとか自分に言い訳をしつつ、映画を観に行く。 会社から、外での飲酒や映画館、イベント会場へ近づくことを自粛するよう言われているのだ。もちろんそれは強制ではなく、自粛するよう言われている、といっても面と向かって偉い人にすごまれたわけではない。社内一斉メールでそういう通知が来ただけなのだが、「映画館には行かないように」などと注意されたのは大人になって以来はじめてだったものだからすっかり驚いてしまい、それなりに心に残っている。 ところで映画館の席数は約100で、それに対して観客数は4であった。ちょっとお客さんが少なすぎやしないかと…

  • 眠れぬ夜のために。

    なんだかよく理由はわからないけれど、どういうわけか眠れない夜がある。 眠れないとはいえ体にはまだ前日の疲れが残っている。だからたとえばむくりと起き上がって本を読むとかパソコンのスイッチを入れるとか、そういう気力はまだチャージされていない。それどころか、スマートフォンを見ることすら面倒くさい。 そういう時は、暗闇の中ただじっとして、ぼんやりと過ごすことになる。 とりとめもない考え事をして、でもそれをまとめる気力はなく、ただただ流れる時間の水底に横たわる。深刻な不眠症、というわけではないような気はするけど、朝になったら会社に行かなければならないような時にはけっこうやっかいなクセ(クセ?)だ。 最近…

  • 「あーあ」(もしくは、感染してもしなくても)

    この時期の繁華街を見ておきたい。 新しいウイルスのことを意識して、それに触れぬよう静かに息をひそめて生活しているというのが今の生活であり、これは間違いなく僕のささやかな人生の中でははじめての経験だ。この状況がいつまで続くのかわからないけれど、今のうちに静かな街を見ておきたいと思ったのだ。 それはもう純度100パーセントの知的好奇心が思わせたことではあるのだが、それは不要不急の外出ではないのかと問われれば「そうかもしれません」などとうつむきながら答えてしまいそうになる。繁華街に出ればそれなりに用事はある。あるのだが、それが今どうしてもこなさないといけないものなのかと言われればそうでもない。 それ…

  • 不要不急の頭髪だけど。もしくは、緊急事態宣言下で髪を切る僕の方法。

    そろそろ髪を切ったほうがいいかもしれぬ、などと思いつつ、ついついだらだらと過ごしていたら緊急事態宣言が発表され、「不要不急の外出」と「ぼっさぼさになった頭髪の手入れ」がイコールで結ばれてしまうものなのかどうか思案しているうちに五月になってしまった。 もちろん、僕は髪を切るという行為自体を軽んじているわけではない。髪を切るということはなかなかの重大事で、奥さんがほんのちょっぴり頭髪のどこかを切ったにも関わらずそれに気づかない場合その後の家庭内の平和はかなりあやういことになるし、娘が自分で前髪を切るという行為は、ちょっとしたイベントになる。 先ほどから洗面所方面が騒々しいことになっているななどと思…

  • 翼をください。

    先月から続いていた自宅待機状態がやや緩和され、週何日か出勤することになった。ざっくり計算すると、自宅待機率八割減だ。 ふりかえってみると、ゴールデンウィークをはさんでいるとはいえ、この一か月の間に二日しか出勤していない。これは間違いなく社会人になってからはじめてのことだ。 どうせ待機するのならということで、とある資格を取るための勉強などはじめてみたのだが、あまり順調にはいかなかった。机に向かっている時間は長いのだが、参考書の内容が一向に頭に入らないのである。これはまあ、人によって違う話なんだろうけど、僕個人の現状としては、加齢によって予想以上に頭が固くなっていた、ということなのだろう。参考書に…

  • マリー・アントワネット作戦。

    もしかしたら、源氏パイとチップスターがあれば生きていけるのではないか。 緊急事態宣言が発表され、自宅待機生活に突入してしばらく経った頃、僕はそんなことを考えていたのだ。 それはつまり、近所のスーパーから米やらパスタやらパンが消えていた時期である。幸いにもそういう時期は長くは続かなかったが、その後も、スーパーではレギュラー格であるはずの食料品がいつも何か売り切れているという状況が(少なくとも我が町では)続いている。 平時には容易に手に入ったものが店頭からきれいに消えているという光景はそれなりにインパクトがあるものだが、それで心身を乱されるのも面白くないので、我が家ではその分お菓子を多めに買って、…

  • #トイレットペーパー買い占めました。

    「#トイレットペーパー買い占めました。」 ……というコメントを読んだ私はどう反応すりゃいいのさ、と娘に言われたのは何週間前のことだっただろうか。 ここのところどうも時間の把握がうまくできなくなっているような気がする。時々、つい最近の出来事がやたらと昔の事のように思えたりする。自宅待機という変わり映えのない生活が続いているせいかもしれないなあなどと思ったりもするのだが、とはいえ普通に出勤していた日々とてそれほど彩りにあふれていたわけでもなかったしなあ、とも思う。あるいは「それほど彩りにあふれていたわけでもない」日々ですら、今よりは多少色味が濃かったのかもしれない。 それはそれとして、上記の「#ト…

  • 待機と雄たけび。

    朝の5時から7時台に犬の散歩をする為に外出する。時間にばらつきがあるのは天気や犬の機嫌によって出発時刻を変えるからだ。今、僕が外出するのは基本的にこの時間帯だけになっている。 ただ、週に一度くらい、夕方の買い出しを手伝うことはある。重たいものを買う時に荷物持ちとしてお呼びがかかり、米だの大袋入りのドッグフードだのをえっちらおっちらと運ぶのだ。本来なら生活必需品の買い出しは一家族ひとりというのが理想なのだろうが、我が家の場合、荷物の運搬に使える車両がママチャリ一台しかないので、このような作戦をとっている。 8時ごろから机に向かう。 会社に通っていた頃の定時である7時50分から(昼休みをはさんで)…

  • 緊急事態と赤い月。

    朝、会社に行こうと自宅を出て、しばらく歩いてからマスクをしていないことに気付く。 時間にそれほど余裕はなく、マスクを取りに帰ったらそこそこ本気で走らないといつもの電車に乗ることはできない。いつもの電車に乗れないということは始業時刻に遅れる可能性が高くなる。ちなみにこれは朝の6時を少し過ぎた時点での話だ。 コロナウイルス感染リスクを避ける為にいわゆるオフピーク通勤をすることになり、始業時刻が7時台になった。 もともとそれくらいの時間帯に出社はしていたのだが、「混んでいる電車に乗るのが嫌で早く出社している(そして出社後は休憩所でぼんやりと本を読んでいたりする)」というこれまでの状況と違い、その時間…

  • カメラとトーク。‐そしてすべてわかるはずさ‐

    今、通勤している現場では、三年に一度、入館証の更新を行う。 入館証には氏名会社名が印刷されそのそばには顔写真が添えられている。写真は更新の度に新たに用意するのだが、事前に申し込めば先着数十名は管理課の職員が撮影してくれる。それを逃すとスピード写真なり写真屋なりで自分で調達しなくてはならないので、当然のように申し込む。もちろん、この「当然のように」は僕に撮っての「当然のように」であり、万人に対応する法則ではない。他の社員が見ていないところで、気のすむまでじっくりと撮影したい人もそれなりにいるという噂を聞いたことがある。男子よりは女子、中年層よりは若年層に、じっくり派は多いそうだ。 まあ、気のすむ…

  • 腰痛にトイプードル。

    ある平日の朝、目が覚めた僕は、「これは大変なことになったぞ」と思ったのであった。 まずは体が動かない。いや、動かそうと思えば動かせないこともないのだが腰から激痛が走る。前の日の午後、仕事中に突然腰が痛くなり、一晩経過し朝がきて、僕の身体は起き上がるのも困難な状況になっていたのだ。 仕事中に「あれ、ちょっと腰が痛いかも」と思った時点ではまだ歩行にそれほどの支障はなく、痛む腰をかばうことで若干ギクシャクした動きにはなるものの、C3POくらいの姿勢や動作で移動することができたのだ。ところが退社時刻になる頃には人類前夜というか、お猿さんのような前かがみの姿勢以外では腰が痛むようになっていた。 よくよく…

  • 朝寝朝酒朝湯が大好きで。

    日曜の朝、たまーに近所の銭湯に行くことがある。 病気持ちになって以来、安価(ここ重要)で手軽(これも重要)にできる心身の疲労回復法を探っている……というほど熱心でもないのだが、なんとなく「そういや近所に銭湯があったな」というようなことを思いつき、時々通うようになった。 先日の通院で主治医と相談した結果、主治医に紹介状を書いてもらって他の病院に相談に行くことになった。病気持ち歴もそこそこ長くなってきたことだし、今後の治療の方針を考えていくにあたって、ま、ここらでひとつ、他のお医者さんの話も聞いてみようか、という、いわゆるセカンド・オピニオンというやつだ。 大きな浴槽でジェット水流を腰にあてたりし…

  • 常連さんにはならないで。

    薬をもらいに病院に行く。 そこは自宅近くの総合病院で、飲んでいる薬がなくなりそうになると行くことにしている。特に予約はしないが、診察開始時刻の9時に行けば診察と調剤の待ち時間を含めても9時半には帰ることができる。 内科の待合スペースでぼんやりと名前を呼ばれるのを待っていると、「あらー、来たなら声かけてくださいよー、冷たいじゃないですかー」という少し大きめの声が聞こえてきた。反射的に声のしたほうとその声が届いたであろうほうを確認すると、若い女性の看護師がおじいさんに声をかけている。 「入院してたときはあんなに仲良くしてたのに、退院したとたんに冷たいじゃないですかー。来たなら声かけてくださいよー」…

  • 寒い朝にベイマックス。

    寒い朝を過ごすため、とりあえず着れるだけ着ておけばいいや、というあまり知性的ではない発想で身体の保温を試みたところ、その着ぶくれた様子がベイマックスのようになってしまった。 そういう体型でせまい我が家をのし歩くものだから、拡張され幅の広がった体のはじっこが気付かないうちになにかに衝突していたりする。体の拡張された部分はおおむね布なので神経などあるわけもなく、だから衝突したなにかが倒れた音などが聞こえたきた段階でようやく事態に気付くことになる。 そう考えると、この寒さ対策もなかなか危険が多い。 ついさっき、テーブルの上に置いておいたステンレス製のタンブラーをひっくり返してしまったのだが、それがフ…

  • 通勤電車はいろいろ満載。

    毎日毎日(僕らは鉄板の)、どこかから聞こえてくるのが新型ウイルスの件なのである。 僕の住む町内では、もうすっかりとマスクが姿を消してしまった。会社近くのドラッグストアでは、マスクが少数入荷するという噂がどこからか流れたそうで、その日は店の外までつながる大行列ができたそうだ。 なんだかもう、大変な話なのである。 それにしても、日々、都内有数の乗降客の多さで知られる電車に乗っていると、しみじみと思うのが乗り込むお客さんの国籍の幅広さだ。特に夜の通勤電車には、アジアの人もアメリカの人もヨーロッパの人もアフリカの人もみんないる(ように見える)。もちろんそれは東京という日本を代表する大都市ならではの特徴…

  • ウイルスとかについて。

    毎日毎日世の中はウイルスの話で持ちきりだ。 ところで、「毎日毎日」という言葉を思い浮かべると、ついつい「僕らは鉄板の」というフレーズを思い出してしまうのをなんとかしたいなあ、と思っている。ちなみにこのフレーズには「上で焼かれていやになっちゃうよ」という続きがあり、ここだけ取り出してみるとなかなかおそろしい状況ではある。 大昔、こんな歌詞の歌がTVの子供番組で放送されていて、その当時、幼き僕は、この歌をちょっと面白いコミックソングくらいに思っていたような記憶がある。毎日鉄板で焼かれていた主人公は、最終的には食べられてしまい、その時点でこの歌は終わる。後日談もエピローグも、それどころか食べられる時…

  • 地震速報の鳴った夜。

    未明に緊急地震速報が鳴り響き、さすがに家族全員が飛び起きた。 僕が住んでいるところは大きく揺れることはなく、しばらくゆらゆらと床下が動く気配があったものの、すぐに静かになった。 それはそれでほっとしたものの、飛び起きた時の勢いが思いのほか強かったからかその後うまく寝付くことができなくなったようで、僕が寝ている部屋に娘がやってきた。あきらかに落ち着かない様子で僕にぴったりと寄り添っている犬の様子を見に来たらしい。ちなみに奥さんはとっくに眠っている。人としての器の違いのようなものをふと思う。 娘の姿を見ると犬は小さく「ぐるる」とうなり、タイ米くらいの小さな歯をちらりと見せて威嚇した。これを日本語訳…

  • 世界にやばみがあふれてる。

    会社からの帰り道、電車の中で見かけた三人の女の子たちの話である。 彼女たちはおそろいの制服を着ていて、おそろいの通学カバンを持っていた。背格好や表情などから総合的に判断すると、おそらく高校生なのだろう。ただし、僕はこの手の見立てが大変下手なので、もしかしたら大人びた中学生という可能性もなくはない。 三人は横並びに座り、楽しそうに会話をしている。 聞き耳をたてていたわけではないのだが、けっこう大きな声で話しているので話のあらすじくらいはなんとなく伝わってくる。内容はどうやら教師の悪口、部活の先輩のランク付け、共通の友人の色恋沙汰という三つの話題を混ぜ合わせたものを基本としていて、そこから話はあち…

  • 「とりま」の「ま」。

    「とりま」という言葉が「とりあえず、まあ」の略だということは知っていたけど、その言葉に出会うのは文章の上ばかりで、音声で聞いたことは今までなかったのかもしれない。 そう思ったのは、仕事中に、僕の席のそばにあるミーティングスペースから、「とりま、なるはやでやっつけちゃいましょう」というセリフが聞こえてきたときに、「とりま」の部分で耳が新鮮な違和感を感じたからだ。 はじめて聞く「とりま」という言葉から反射的に僕が思い浮かべたのは「鶏肉とねぎが交互に刺してある焼き鳥」であった。時間帯が夕方だったこともありお腹が鳴りそうになったのだが、この連想は(言うまでもなく)間違っている。「鶏肉とねぎが交互に刺し…

  • できごころや、ワイセツや。

    先日知った、近所での「全裸発生」騒ぎ以来、ちょこちょことご当地ニュースを確認するようになった。 hints.hatenablog.com 全国区のニュースにはならないような、登場する地名から現場の場所がだいたい想像できるような、比較的近所を舞台としたそういう記事を読んでいてわかったことは、この界隈でけっこうな数の「公然わいせつ」系の事件が起きている、ということだ。 「公然わいせつ」について少し調べてみると、おおざっぱにいえば、「下半身の出してはならぬところを露出したり、なにか性的で不適切な発言をすることで、一般的な意味合いにおいて相手に嫌な思いや恥ずかしい思いをさせるであろう行為」ということに…

  • 全裸発生。

    僕の住む町で、事件があったようだ。 これは、スマートフォンに入っているニュースアプリを眺めていて知ったことだ。このアプリでは、自分の住所を登録しておくと、ご当地ニュースを見ることができるのだ。久々にアプリを起動して、僕の目に入った、今年はじめてのニュースはこのようなものだ。 路上で若い男性による全裸が発生しました(特徴:全裸、水泳用キャップ帽、水泳用ゴーグル、スニーカー)。 同じ記事に記されていた事件の発生場所を見ると、我が家からけっこう近いことがわかる。徒歩20分圏内というところだろうか。たとえば休日に、ちょっと長めの散歩をしたときに足が向くことがあるあたりだ。なんとなくぶらぶらと散歩をして…

  • 初詣で本当に気にしないといけないこと。

    録画したまま溜まっていた落語の番組をぼんやりと観て、図書館から借りてきた本をぱらぱらとめくり、実家に呼び出されてパソコンとスマートフォンの不調をなんとなく解決し、今年の正月は終わろうとしている。 ちなみに、僕は特段、パソコンやらスマートフォンについて詳しいというわけではない。この手の案件で呼ばれた場合、事象をヒアリングし、Googleさんのお世話になってなんとか解決しているだけだ。両親としては、「なんか、急にネットが見れなくなって」とか、「なんか、変なメッセージが出たんだけど、無視してもいい?」くらいのざっくりとした説明で問題が解決するので、それなりに重宝しているのだろう。 正月といえば。 元…

  • (今年も)いいたいことはすこしだけ。

    僕の住む町では二時間ほど前から「え、台風?」などと思ってしまうような強風が吹き荒れています。ついつい「なんとも荒れた年の瀬だゼ」などとひとりごちてしまい、そういえば「ひとりごちる」なんて言い回し、久しぶりに使ったなあ、などとどうでもいいことを考えている大晦日です。 大晦日、というか、年末年始について、これといって気合も覚悟もないまま今日まできてしまいました。我が家、という意味で言えば、そばや鏡餅くらいは用意しているのでしょうが、個人的に、この時期ならではの「やっておかなければならないこと」として行ったことは……、 ・『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』を観る。 ・図書館に予約していた…

  • 僕が叫びを叫ぶとき。

    都内有数の大きな駅の構内で、大声で発言しながら歩いている女の人がいた。 年齢は20代といったところだろうか。ひとりで歩きながら、真正面に向かって叫んでいる。僕から見える範囲での判断では、彼女の視線の先に、そのメッセージを伝えたい相手が具体的にいるわけではない、ように見える。 周囲の人たちは、驚いたり、うっすらと笑ったりしながら彼女を見て、なるべく彼女と距離を開けようと工夫している。少し離れたところでスマートフォンを構えている男の人がふたりいる。動画でも撮っているのかもしれない。 たとえばこの状況を目撃した誰かが、それを人に説明する場合、「駅で若い女がわけのわからないことを言いながら歩いてた」と…

  • ドアをノックするのは誰だ。

    まだ暗い路地をとぼとぼと歩き、駅に向かう。 風が冷たい。鼻とか耳とか、頭部の突出したパーツが少し痛み、きっとほのかなピンク色になっているんだろうなあ、と思う。 とあるマンションのそばを通り過ぎたとき、そのマンションのゴミ回収スペースに、張り紙がしてあることに気付く。その貼り紙は、回収スペースを歩道と区切るための柵に付けられたドアに貼られていた。 貼り紙にはこう書いてあった。 そっと開けてください。 こわれます。 「さあさあそこのダンナ、このドアを開けてみてくださいよ。おーっと、そうはいっても、普通に開けてもらっちゃ困りますぜ、そーっと開けてもらわないと。いかにも頑丈そうなこのドア、普通に開けて…

  • 朝6時台のシーソーゲーム。

    それがいわゆる平日であれば、毎日同じような時刻に自宅を出て、駅のホームの同じような場所で電車を待ち、同じような座席に座り会社に向かう。 朝6時台の通勤電車に乗り込むのは同じような境遇の人が多いようで、いかにも会社員、という風体のメンバーばかりだ。たとえば休日の昼下がり、どこかの路上で偶然であったとしても絶対に気付かないとは思うけど、この電車の中にいれば、「ああ、いつものあの人」くらいには認識できるくらいの「おなじみのメンバー」である。何日か見かけなかったら、「風邪でもひいたのかしらん」くらいのことは思ったりもする。 最近この「おなじみのメンバー」に加わった若い男性がいる。いつもスーツを着ている…

  • おんぼろホログラム。

    夢の中に、友人が登場した。 彼の顔を見るのは十数年ぶりのことだったので、それはそれは驚いた。 その昔、僕と彼はたいそう仲が良く、毎晩のようにインターネット上でチャットをしていた。会話の内容はほとんどが雑談だ。お互いの住んでいる場所は遠く、就いている仕事の業種も異なり、年齢も少し離れていた。あまり共通点がない分、縦横無尽に、純度の高い雑談をしていたと思う。 そういえば、いつものようにチャットをしていたある夜、彼に「チューしたい」と言われたことがある。 深夜の雑談が彼にとってとても大事な時間になっていて、その相手であるところの僕に対しての謝意を表明するための発言が「チューしたい」だったらしい。彼に…

  • 全体的にムダ話。

    どうしてそういうことになったのかよく覚えてはいないのだが、ふと娘に「CDってなんの略称だか知ってる?」と聞いてみたところ、 「お、大喜利か?」 と張り切りはじめた。どうしてそういうことになるのだろう。 とりあえず僕の回答は、 「違います」 ……だ。 しばし考えた後、娘の出した答えは、 「CD-ROM」 ……であった。 どうしてそういうことになるのだろう。 そして、この答えに対して、父親としてどう向き合ったらいいのだろう。 クイズの答えとして考えれば明らかな誤答ではある。会話をキャッチボールに例えるなら、ほぼ暴投の返球ではあるのだが、略称の語源を問われているにもかかわらず、略称をふたつ内蔵した言…

  • いつものトイレは16番。

    寒い朝は、駅のトイレが混む。 大きな駅のそれなりに大規模なトイレから行列がはみ出している光景を見ると、ああ、偉そうにしているけど、人間も結局のところ動物なんだな、という気持ちになる。 通勤で使うある大きな駅で用を足す時に使用するトイレがだいたいいつも同じであるということにふと気づく。そのトイレには便器ひとつひとつの脇にナンバープレートが付いていて、僕が使うのは圧倒的に16番だ。 人の出入りが激しく落ち着かない出入り口付近から距離があり、あまり混んでいないのが便器ナンバー16番付近なのだ。何度も利用しているうちにいつの間にかそこに落ち着いたのだろうが、我ながらいかにも僕が選びそうな場所だと思う。…

  • 一昨昨日に起きたなんらかの事件。

    なんだかどんどん気温が下がってきて、いつの間にかふつーに薄いコートなどを羽織って外出するようになった。ほんの一昨昨日くらいまで、まだTシャツだけでもいけるんじゃね、などと思っていたような気がするのだけれど。 ちなみに「一昨昨日」という単語は「さきおととい」と読むわけだが、生まれてはじめて書いたような気がする。まあ、どうでもいい話だ。 こういう日はフトンとの相性がかなりいい感じになっていて、いわゆる「ベッドから出るのがツラい」という状況になる。朝はなんとか(それこそ決死の覚悟で)起きたとしても、その後ふと気がゆるみ、ベッドにごろりと横になって文庫本を読んでいたはずが、いつの間にやらしっかりとフト…

  • 流れて行く言葉。固定した思い出。

    「新語・流行語大賞」の候補が発表され、「えーこんな言葉使ったことあるかなあ」などと思いつつ、自分がいかに流行に疎いか実感する、というのがこの時期のささやかな恒例行事になっている。 今年ノミネートされた言葉たちは、例年に比べるとまだなじみのあるものが多く、まったく初対面のものはほとんどなかったような気はする。とはいえ、僕にとって身近なものは「サブスク」、「タピる」、「ドラクエウォーク」くらいだろうか。 「タピる」という言葉に関していうと、僕自身が「仕事帰りにいっちょタピっていくか」というようなことはないのだが、時々娘が買ってくるタピオカ入り飲料を自宅で飲むくらいのことはする。 この場合、外出先の…

  • 命名コロビクビク。

    駅の階段で久々にすっ転ぶ。 ホームから降りる階段の、最後の段を踏み外したのだ。 ここで、そこそこ長いこと生きていれば時には階段を踏み外すこともあるよな、と思えればいいのだが、ついつい持病の進行状況との関連について思いをはせてしまうのである。 まあ、病気のせいで人より「転びリスク」がやや高いのは本当のことなので、すっ転んだ時に、自分に対する注意喚起をするのは悪いことではないと思うのだが、やっかいなのは、こういう場合にどうしても、気分が落ち込んでしまうのだ。それは一時的なもので、一時的なものであれば落ち込まなければいいようなものなのだが、どうやらそうもいかないらしい。 ちなみに今回の落ち込み度は「…

  • 重要参考トイプードル。

    夕方、ベランダにいた家族が悲鳴を上げながら僕を呼んだ。 何事かとおもい駆けつける……というほど広くないので数歩移動すると、ベランダの床に虫の死骸がある。家族は虫が大の苦手なので、こういう機会があるととりあえず僕が招集されるのだ。 家族はいつも通りそれの撤去を僕に命じ、ティッシュとコンビニ袋(小サイズ)が支給された。僕は自分の任務を忠実に遂行し、撤去された死骸をテッシュ+コンビニ袋(小サイズ)+コンビニ袋(小サイズ)という三重構造で梱包し、我が家のゴミ箱に埋葬した。 この体制ももうずいぶん長いので今さら改革をしようという気にはならないのだが、僕だって虫はかなり苦手なのだ。それでもこういう事態にな…

  • ゆずこしょうの呼称問題。

    ゆずこしょうという調味料にコショウが含まれないことをかねがね不思議に思っていた。 それはつまり、「海ぶどうという食べ物にブドウが入っていなかったり、イヌノフグリという花に犬のふぐりが入っていないのと同じようなものなのか」などと、我ながらわかったようなわからないような推測をしていたのだが、どうやらそういうことではないらしい。 その答えは国語辞書に書いてあったのだが、ゆず胡椒という言葉を辞書で調べるきっかけがよく思い出せない。最初は何か違う言葉を調べようと思って辞書を手に取ってはみたものの、「そういえばあの言葉の意味もよくわからなかったんだよな」というように突発的に他の言葉が気になってしまい、辞書…

  • 雨の中、大声で笑う。

    せっかく、棚からぼたもち的な休日(といういい方はあまりよくないのかもしれないけど)を手に入れたのに、どうにも天気が悪い。昨夜から降りはじめた雨は朝まで続き、手元の天気予報アプリによれば昼くらいまでやまないらしい。 こういう日は、犬の散歩(朝編)をいつするのか、なかなか頭を悩ませることになる。刻々と変わる天気予報を確認しつつ、なるべく降雨量の少ないタイミングを見計らう。散歩は基本的に朝と夕方に行われる。ウチの犬は散歩の時にしかトイレをしないので、雨が降っても中止にはならない。野外イベントの開催要項風にいえば、「雨天決行、荒天中止」というやつだ。 散歩のついでにトイレしてくれるということは、自宅に…

  • 君の名は。

    ラグビーで有名なリーチマイケルさんという人の「リーチマイケル」が、「リーチマイケル」というひとつの言葉なのか、それとも「リーチ」と「マイケル」というふたつの言葉なのか、そこのところがよくわからなかったのである。 これはもしかすると、ラグビー熱が盛り上がっている今、もっとも口にするのに勇気がいる類の疑問かもしれない。 ちなみに、テレビなどで耳にした印象では、「リーチマイケル」はひとつの言葉のように発音されているような気がする。ただまあ、「リーチマイケル」が「リーチ」と「マイケル」というふたつの言葉であったとしても、氏名の場合は区切りなくひとつの言葉のようにつなげて発音するものなんだよ……と言われ…

  • おそいしはやいしこわがってるし。

    図書館というところの何がやっかいかって、あそこには、本がたくさんあるのである。 世の中に存在する本の大半を僕は知らない。大きな書店とか図書館に行くとそれがよくわかる。世界には、僕の知らないことがたくさんあるし、知らない言葉もたくさんある。その事実は、どういうわけか僕を安心させる。 本がたくさんあるところを歩いていると、面白そうな本があちらこちらに出没する。なにせここにある本のほとんどを僕は知らないのだ。まだ見ぬ素敵な本に出合う確率は相当高い。 であるからこそ、やっとの思いで読み終えた分厚い本を期限ぎりぎりに返却し、「ここしばらくは他にやらねばならぬこともあるので、本を借りるのはやめておこう」な…

  • ありえない世界は意外と近く。

    ある日、歳の離れた同僚がこんなことを言ったのである。 「さすがにいい歳して、ジーパンにTシャツで外出とかありえないですよね」 9月とはいえまだ暑さの残る、そんな日のことであった。その時は会社からの帰り道で、駅に向かって歩いていたところである。お互いに上着は着ておらず、ワイシャツにノーネクタイという出で立ちだ。 僕の夏の過ごし方を真っ正面から全否定するような彼の発言にしばらく言葉が出てこなかった。そうか。20代男子の中では、Tシャツとジーンズでふらふらと外を歩いているような状態は「ありえない」世界のことになるのか。 僕の驚いた様子から何かを察した彼は、早口で「いやまあこういうのは世代が違えば見解…

  • 朝、新しい消費税についてまず思ったこと。

    ふと気がつけば月が変わり、今日から消費税は10パーセントになる。 ここ最近の、「増税前の今! まとめ買いのチャンス!」的な盛り上がりにすっかり乗り遅れたまま10月を迎えてしまった。まあ、あまりお金に縁のない生活をしているので、乗り遅れるも乗り遅れないもないのではないか、という話もある。 とはいえ、まったく「まとめ買い」的なことをしなかったかというとそうでもなく、先週末に目薬をまとめて買ったりはした。ドラッグストアがセールをやっていて、まとめて買うとぐっとお得だったのである。目薬は日常的にじゃぶじゃぶ使うのだが、使用期限のあるものなので、とりあえずふたつだけ買っておいた。期限内に使えば品質に問題…

  • 夢みるように眠りたい。

    日付が変わるその近辺、僕は会社でキーボードを叩いていた。 金曜夕方に出社して、土曜深夜に仕事が終わる。そういう時間帯でしかできない作業というものが時々あり、会社員ゆえにやれと言われればやるしかないのだが、いつも眠っている時間帯に仕事をするのはとても眠い。作業が終わるのはいわゆる丑三つ時あたりで、電車はもう動いていないからタクシーで帰る。タクシー代は会社に請求できるからあまり気にしなくてもいいことなのかもしれないが、深夜、タクシーで帰宅するとなかなかものすごい交通費になる。僕の日給よりも高いのではないだろうか。 結論からいうと、今回の作業はうまくいかなかった。深夜作業組の手際に問題はなかったのだ…

  • 柴犬兄弟。

    とぼとぼと伏し目がちに歩いていたら、五つ子と思われる柴犬の兄弟と目が合った。 兄弟はマンホールの上にいて、興味津々といった風にこちらを見ている。 こちらに話しかけたそうにうずうずしている兄弟にあいさつをして、うつむいて歩くのも悪くはない、と思うことにした。

  • ダリンダリンダ。

    とあるマンションのそばに、ワンボックスカーが止めてあり、そのマンションから出てきた男がふたり、車の中に荷物を運びこんでいる。僕は、男たちが運び込んでいるものの名前が思い出せず、あれ、なんだったっけな、と考える。 車の中にはすでに別の物が置かれている。便器だ。車の脇を通り過ぎる時にちらりと見ただけではあるが、あの白さ、あの光沢、あのカーブはそうそう見間違えるものではないだろう。 車の側面に書かれていた会社名とキャッチコピーから察すると、貸し倉庫のサービスを利用して、荷物を取りにきてもらっているようだ。車に積み込まれた荷物たちは、どこかにある貸し倉庫に収納されるのだろう。 車の脇を通り過ぎ、そろそ…

  • 白い眼鏡。

    比較的高い年齢層のメンバーの中で仕事をしているということもあって、世の中の流行り廃りみたいなところが疎くなっている……という風に書いてしまうのも問題があるのかもしれないが、少なくともまあ、職場の僕のまわりの状況はそんな感じなのである。 もちろん、中年だろうが老年だろうが流行に敏感で、自分のライフスタイルを常にアップデートしている人もたくさんいるのだろうけど、僕のまわりにはそういう人はあまりいない、ということだ。 ということで。 いまだに近距離で見たことがないのが白いフレームの眼鏡なのである。 職場の他のチームとか他のフロアではちらほら見ることもあるし、外を歩けばそれなりに見る機会のある白いフレ…

  • 眠れぬ夜のために。

    どうしても眠れない夜、というものがたまにある。頻度としては年に数回。子供の頃から延々と続く、困った不定期イベントだ。どこかが痛かったり苦しかったりするわけではないのだが、ただただ眠れない。 眠れないなら起きているしかないのだが、一日分の疲れのたまった体も頭もどんよりと重く、眠くなるまで何かしよう、という気分にはなれない。やっかいなことにこういう時は音楽を聴いてもテレビを付けてみてもなんだかうっとうしく感じてしまうので、暗闇の中でじっと考え事でもしているしかない。といっても、どんよりしている脳ではそれほど難しいことは考えられず、その時の僕はなぜか夢について考えていた。 眠っているときに見る方の夢…

  • 海を見にいく。

    海岸沿いを、海を見ながら歩きたい。 ふとそんなことを思い、電車に乗って海を目指す。 海に向かう電車はあまり混んでいない。この電車はいくつかの都内の代表的な大型駅に停車するので、観光目的の乗客以外に、普通に通勤で使う人も乗っている。一応、通勤ラッシュの時間帯は避けてみたけれど、通勤途中の会社員っぽいは何人かいるようだ。もちろんこれは、見た感じでそう思っているだけで、本人にそう確認したわけではない。白いワイシャツ、濃い色のパンツ、黒の革靴をセットで着用している人をそういう風に決めつけているだけだ。そういう意味では、くたびれたTシャツ、くたびれたジーンズ、くたびれたスニーカーを着用している僕は他の人…

  • 夏のピークは自宅の火災。

    夕方が終わり、そろそろ夜になりますよ、という時間帯に、突然、火災報知器の音が聞こえてきた。まあ、「突然」とは書いたものの、事前に予告してから鳴る火災報知器というものもないような気はする。 僕の住む地域は、小さなマンションやら一戸建ての住宅やらがひしめきあっていて、ごくたまに、どこかで火災報知器が鳴ることがある。その後大騒ぎになることはほとんどないので、大半が誤動作、というか、火事以外の煙に反応して鳴る、という事象のようだ。 火災報知器のやっかいなところは、そこそこ大きな音で鳴り、それもどこか耳障りな音色であるにも関わらず、どこで鳴っているのかよくわからないという点にある。僕の耳が悪いのか、もし…

  • まるで物語のような。

    僕の住む町から一番近い繁華街に新しくできた映画館に行ってみる。 なんでも国内最大級のスクリーンが自慢なのだそうだ。この映画が観たい、というより、その映画館の巨大スクリーンを見てみたい、という動機で上映スケジュールを確認してみると、たまたまそのスクリーンで公開される作品がちょっと興味のあるものだったので、それを観ることにする。 劇場の入り口のところで、係のお姉さんからポスターをもらう。来場者特典というやつなのだろうが、そういう特典があることを知らなかったのでちょっと得した気分になる。映画を観終わった時にはじめて、2時間半を超えるけっこうな長編であることを知ったような有様なのである。突然手渡された…

  • 夏度数はこれくらい。

    夜になると犬がベッドに上がってきて、先に横になっている僕に寄り添うように眠るようになった。季節は秋に移りつつあるということなのだろう。ただ、しばらくすると「まだくっついて寝るには暑いわん」とかなんとか言いながらベッドを下り、床の上に移動して「はふん」とため息をつきながら寝たりする。つまり、そのくらいは残暑、ということだ。 外を歩いていると、そこここにセミの亡骸を見つけることになり、ああやはり夏は終わりなのね、という気分がさらに高まるものの、その気分が、「終わるもなにも、そもそも今年の夏って存在したんだっけ」という気分で上書きされてしまうのは、僕がまだ夏休みを取っていないからかもしれない。今年は…

  • 起きなかった惨劇と僕のささやかな敗北感。

    テレビのニュースから聞こえてきた「店員をオカズに……」というアナウンサーの声に、宮沢賢治の『注文の多い料理店』をふと思い出し、なにやらとても猟奇的な事件が起きたのではないかとドキドキする。その時、頭の中に流れていたセリフは、 「おい店長。あそこにいる店員、あれはなかなか肉付きもよく、こんがりと焼けばさぞかし美味かろう。あれを持ってまいれ」 ……である。 結局のところそのニュースは、深夜に店員なしでの営業を試みているコンビニがある、というもので、「店員をオカズに」は「店員を置かずに」なのであった。 なんともまぎらわしい、誤解をまねきやすいニュースである。僕と同じように、猟奇殺人事件だと思ってしま…

  • 『天気の子』の最後の部分について。

    スタッフロールとかエンドクレジットとかいわれる例のあれ、映画が終わる時にスタッフやキャストの名前が流れるように表示されるあの時間帯の最後には、その映画の監督の名前が表示されることが多い。 スクリーン下方から監督の名前が登場する時に、「そのまま監督の名前が流れ去る」場合と、「監督の名前のみスクリーン上に静止する」場合があって、個人的には流れ去る版のほうが好きなのだ。 映画に関する好みということでいえば、その作品のタイトルが表示されるタイミングや演出についてもわりと気にするほうかもしれない。 ちょうどいいタイミングでちょうどでいい大きさのタイトルがちょうどいい音響や音楽の中ちょうどいいくらいのキレ…

  • 中年サラリーマンが足を触られるとはどういうことなのか。

    会社からの帰り道、通勤電車の中で、隣に座っていたおじいさんに足を触られる。 もう少し詳しく書くと、それまでずっとうつらうつらと眠っていたおじいさんがふと目を覚まし、突然、僕の足を触ったのである。その電車に僕が乗ったとき、おじいさんはロングシートの端で既に眠っていて、その隣が空いていたのでそこに座ったのだ。なにせ隣なので、おじいさんが寝ているのか起きたのかくらいは気配でわかる。ちなみに僕はおじいさんの右隣に座っていたので、おじいさんが触った足は僕の左足になる。 おじいさんは、まず僕のひざ頭をぽんぽんと二回ほど軽く叩き、続けて太ももをひざ上10センチ分くらいすりすりと撫でて、それから手を離し、自分…

  • 臀部キミのせいだ。

    よく言われるところの「ウォシュレット」は商品名で、機械としての名称は温水洗浄便座というらしい。 温水洗浄便座。 まあまあのネーミングだなあとは思うものの、その実態を知らない人が「温水洗浄便座」などと言われたら、「温水で洗浄された便座」と思うかもしれない。 これがたとえば、「温水臀部洗浄便座」という名称ならよりその機能が具体的に伝わるような気もするし、印象もかなり良くなるのではないだろうか。ただこれは僕が個人的に「臀部」という言葉を気に入っているからこそそう思い込んでしまっているのではないかという気もしなくもない。だって、なんか響きがかわいくないですか、「臀部」。臀部、その実態もかわいいし。 我…

  • 通勤経路が危険地帯。

    暑かろうがなんだろうが、サラリーマンなので会社には行かねばならぬ。 それはしょうがない。それはそういうものだ。 「なんか暑いので今日は休みます」 ……なんとなく、一度くらいは言ってみたいような気持ちにならなくもないが、そこはそれぐっとがまんして出社するのである。 それはしょうがない。それはそういうものだ。 会社近くの公園そばの舗道でミミズが大量死していた。大量と言っても、見渡す限りみっちりというほどではなく、舗道全体の面積から言えばまばらというのが適当なのだろうが、それでもその光景を見たらびっくりするくらいの数ではある。 これは、土の中の熱さに耐えかねて地上に出たらさらに暑く、あちこちうろうろ…

  • 夏の散歩にビスケット。

    いやしかし暑い。 外を歩いていると、熱せられた空気のかたまりが体にぼうんぼうんと体当たりをかましてくるような、まさに猛暑本番! という暑さである。 この暑さは地上に住む者に平等にダメージを与え……いや、そんなに大げさな話でもないのだけれど、この暑さにしんどい思いをしているのはもちろん我々人類だけではなく、我が家の愛犬もなかなかにしんどそうだ。 なにせ犬は全裸とはいえ全身が毛皮なのである。おまけに裸足。 朝晩の散歩の時間をずらし、なるべく太陽の力の影響を受けないように工夫はしているものの、こうも毎日暑いとなかなかアスファルトも冷めないようだ。そこから発する熱を犬は人間よりも近くで受けることを考え…

  • 夏のせい。

    ここのところの急な暑さにすっかりとやられてしまい、朝、通勤するだけでもうふらふらである。 出社後、汗がたらたら流れる後頭部をタオルでぬぐいながら水を飲む。もう一日の体力をほとんど使い切ってしまったのではないか、という恐れのようなものを感じ、気持ちを落ち着かせるためにガムを口の中に放り込む。 その後いつものようにガムを噛んだのだが、どういうわけかガムといっしょに唇の端を噛みしめてしまう。 そういうことは今までもないわけではなかったが、たとえばそれは、「一回目は唇も噛んでしまったけれど、二回目以降は大丈夫でした」というもので、今回のように、「口に入れたガムを噛んだ回数だけ唇も噛んでしまう」というの…

  • すばやくなりたい。

    「こころ」と入力した文字を漢字に変換しようとしたところ、その変換候補の筆頭に「ココロ」というカタカナが表示されてなんか照れる。 ここに表示されるということは、過去に「こころ」を「ココロ」に変換したことがあり、それを覚えていた我がiPhoneが「わかっておりますよ旦那様。「こころ」はカタカナに変換するのがお好みでございますよね」と気を利かせてくれたということなのだろう。 最近そんな変換したかなあ、と思い返してみる。 たとえば、 「自分の心に正直になるべきだ。それは勇気のいる事だとは思うが、僕も微力ながら尽力しよう」 ……と書けばいいものを、 「自分のココロに正直になるべきなんじゃないかな。さあ、…

  • その笑顔の行き先は。

    通勤途中のとある路地に、小さなアパートがある。そこはたしか女子専用で、外観はいかにも昭和のアパートっぽいのだが、小洒落たカタカナの名前が付いている。 僕がそのアパートのわきを通ったとき、ちょうどその建物から女の子が飛び出してきた。彼女はしばらく小走りをして駅の方向、つまり僕と同じ方向に向かっていたのだが、ふと立ち止まると振り返り、アパートのほうに向かって手を振った。その体の向きから想像すると、彼女の部屋は2階にあるのだろう。 彼女は誰に手を振ったのだろうか。 外観と時々見かける住人たちを見る限り、比較的若い単身者向けのアパートのように思われるので、遊びに来た家族とか友達、もしかしたらこっそり忍…

  • 手足のおもり、恋するおもい。

    公園の中を、颯爽と走り抜けていった男の人の両手には小さな鉄アレイが握られていたのであった。そうやって走ることでより効率的な筋力アップが望めるということなのだろうか。鉄アレイを除いたスタイルはジョギングする人そのものなので、僕がひいふう言いながら通勤しているこの時間帯を、体を鍛えることに使っているということなのだろう。 えらい。えらすぎる(十万石まんじゅう)。 なんにせよそれは、太陽は僕の敵、とばかりに朝の光に顔をしかめつつ同じ公園を通り過ぎる僕には、とてもまぶしい光景に見えたのであった。 ……という話と似ているようで似ていないエピソードをふと思い出した。 かつて同じ現場で仕事をしていた人(以下…

  • わたしのことがわからない。

    最近はどういうわけか落語ばかり聞いている。 朝起きると録画しておいたテレビ番組の落語を観て、通勤の時もスマートフォンで落語を聞く。寝る前だって同じことで、落語を聞きながら眠るのである。 落語を聞くのはもともと好きなのだが、最近はその量が尋常ではない(当社比)。どうやら僕には何かを過剰に摂取してしまう時期のようなものがあるようで、すぐに思い出せるものだけでも、「とある作家のある文庫本を繰り返し繰り返し読んでいた」とか「平常時はそれほど聴くわけでもないテクノをひたすら聴いていた」とか「朝も昼も夜も安いウイスキーをちびちびちびちびと飲んでいた」とか、非常に稀なことではあるのだが、そういうことをしてし…

  • ピョン吉以外の平面ガエル。

    昨夜からの雨が降り続くようなこんな朝は、いつもより少しはやく玄関を出ることにしている。 傘をさすと晴れている日よりもはやく歩けないということもあるのだけれど、それよりもなによりも、カエルを警戒しないとならぬのだ。 僕の住む町には、雨が降るとカエルが出没する。 僕が住む場所は、いわゆる東京23区といわれるエリアではあるもののその北の端みたいなところにあり、都会っぽい繁華街とはほど遠いようなところになる。とはいえ、「いやあ、東京と言ってもひとたび都心を離れるとこんなに自然が残っているんですね。ほら、あそこには野鳥、足もとには蛇の通り道が」というほど緑あふれるところではなく、地面のほとんどはアスファ…

  • 太っててもやせてても。

    朝から内科に行く。 服用している薬がなくなったのでもらいに行ったのだ。 医師と短い会話をして、「じゃあ、シャツをめくってください」という指示に従いTシャツをめくる。 聴診器を耳にセットした医師は僕の体をじっと見てはいるのだが、なかなかその先端部を僕の胸にあてようとしない。沈黙の中、シャツをめくって裸体を人にさらすというのはおそらくはじめての経験だと思う。前半分とはいえ、裸の体を人前に露出して、それを中年男性に見つめられる。それも無言で。なんだかものすごく恥ずかしいひとときであった。 しばらく後、医師は静かにこう言ったのであった。 「先月よりも、少しですが太られましたね。ちょっと気に留めておいて…

  • 最終的にはクライベイビー。

    会社に行く途中、歩きながら聞いていた落語がなかなかいい話で、不覚にも少し涙が出てしまった。 ぽろぽろとこぼれてくる、というような量でもなかったので、そのままほったらかして歩いていたのだが、僕は涙を流すと顔が大げさに赤くなる傾向があるので、付近を歩く通勤中の人々には、目尻に涙をためて赤い顔をして会社に向かっている中年男、に見えているはずだ。 「朝、泣きながら出勤している人がいた」 もしかしたら、たまたま目撃してしまったどこかの誰かびっくりしていたかもしれない。 「泣きながら出社する会社とは?」 そしてこのように、モヤモヤした疑問を抱いたまま一日を過ごしているかもしれない。もしもそんなことがあった…

  • トイレの中の名セリフ。

    会社のトイレの個室に貼られた「ボタンは長押し」という注意書きについて、何かひっかかるものを感じていたのだ。 その「ひっかかるもの」は、注意の内容についてのものではない。 ビルの高層階にあるトイレの場合、水を流すためのボタンを長めに押さないと充分な水量を得ることができないらしい。だから「このボタンはゆっくりじっくりと押してくださいよ」という内容の注意書きを見ることは時々ある。少なくとも、それについて珍しいとか違和感がある、ということはない。 僕が感じたひっかかりは、この注意書きの、もっと他のところから発せられている気がしていて、ずっと気になっていた。僕の中のトレンドワード・ランキングで、常に20…

  • 対決モスキート。

    部屋の中に蚊が出没するようになり、僕の睡眠を妨げるようになった。 この部屋に住むようになってかなりの年月を過ごしてきたが、蚊が出たのは今シーズンが初めてかもしれない。 明日も仕事だ、そろそろ寝なくてはならない、という頃合いに聞こえてくるあの羽音。 年齢的にかなり疎くなっているモスキート音ではあるものの、耳元で鳴らされるともう眠ることができない。空しい蚊との攻防が行われ、時間はどんどん過ぎていく。 「蚊が気になって眠れなかったので、今日は休みます」 ……というような理由で会社は休めるものなのだろうか。いや、上司にLINEで「休む」と宣言すれば休むことはできるのだろうが、問題は翌日のような気がする…

  • やぶけたジーンズ穿き続けていいのか問題。

    犬と散歩をしている途中、履いていたジーンズがやぶけた。 我が愛犬にとって散歩時の必須最優先ミッションであるところの排泄行為が終わり、「本日の作品(朝の部)」をピックアップしようとしゃがんだはずみで、左の膝部分がびりりと裂けたのである。もう何年も穿いているものなので、まあ仕方ないとは思う。 その時まず思ったのが、裂けたのが膝でよかった、ということで、これが別の部分であったらやや面倒くさいことになっていただろう。 ところで、パンツ……といっても下着ではないほうのパンツというものは意外と股が裂けやすいような気がするのだ。 日頃、股に負荷をかけるような生活をしているわけではないと思っているのだが、それ…

  • おおむね気分はライトグレー。

    インターネットをふらふらとさまよっていると、さまざまな人が書いたさまざまな言葉に出会うことになり、それらを読んでいると、世の中には、うまいことを言いたい人がとても多いんだなあ、ということをしみじみと思う。 ……いや、うまいことを言いたい、というのは少し違うのかもしれない。「自分の気分がよくなることを言いたい」というほうが近いだろうか。上手なたとえ話や言い回しを考案することを楽しむ人もいれば、ひたすらゆるい雰囲気を醸す人もいるし、誰かをやっつけるための強い言葉を追求する人もいたりして、とにかくまあ、世の中には、「こういう風に書ければいいな」と思いながら言葉を発している人がわりとたくさんいるような…

  • 人類未満。

    「簡単に手で切れます」と書かれた詰め替え用ボディソープの容器において、液体の注ぎ口が簡単に手で切れなった時、少しがっかりした気持ちになってしまった。 メーカーが「簡単に切れるんだよ」と明言しているものを簡単に切れない。 商品に書かれたこういうコメントは、かなりハードルを下げて書いてあると思われるのだ。器用さレベルがまちまちの消費者に「簡単だよ」と宣言するのであれば、器用さレベルがかなり低い人でも開けられるような注ぎ口にする必要があるだろう。そしてそれが簡単に開けられなかった僕は、メーカーとしては「想定外の器用さレベル」ということになる。 事件は入浴中に発生し、ボディソープが開かないのはけっこう…

  • 白黒はっきりできない話。

    「フィルム」という言葉から何を連想するかと問われれば、僕などは、写真を撮るためにカメラにセットして使うアレを思い出すのだが、今現在の日本の常識、というか平均値はどのようなことになっているのだろう。 「フィルム……あ、スマートフォンの画面に貼る、保護用の?」 ……みたいな感じだったりするのだろうか。いやいやもしかすると、いまやスマートフォンに貼るもののスタンダードはガラスになってしまっているのかもしれない。まあ、個人的にはどちらでもいい話ではある。 まあともかく。 僕が今ここでいうところの「フィルム」とは、写真を撮る用のフィルムのことなのである。 今どき、という言い方をしてはいけないのかもしれな…

  • よくも悪くもルーティンワーク。

    今日に限って、乗った電車がふたつともまったく遅れたり止まったりしなかった。朝の時間帯は乗降客が多いこともあり、電車の走行に影響するようなアクシデントが起きる確率が高い。なのでいつものように、ちょっとはやめに自宅を出たところ、検査予定時刻よりも20分近く前に病院に到着してしまった。 待合室でぼんやりしていると、これまた今日に限って予定時刻よりもはやく検査をしてくれるという。はやく検査がはじまればはやく検査が終わり、その結果いつもよりはやく帰宅できる可能性もある。これはいわゆる「早起きは三文の徳」というやつなのかもしれない。それはそれとして、三文とは今の金銭感覚でいうといくらくらいなのだろう。 ……

  • タフでハードな一大事。

    会社のトイレで用を足していた時のことである。 僕の立つ位置の背面にある個室から、ずっといびきが聞こえていたのだ。その音量はそれなりに大きく、狭い個室から発せられているからか低く響いていた。 僕は、それについて、「会社のトイレでよく眠れるものだな」とは思わない者だ。 人はけっこうどこででも眠れるものだ。大事な人の葬式の最中とか、走行中のバイクの後部座席とか、看護師から手術の説明を受けている最中とか、「お、そこで寝ちゃうのかい?」というような局面でも、意外と眠れてしまうのが人間という生き物なのである。ちなみに、葬式とバイクは個人的な経験、手術の説明時のやつは、数年前に僕が手術を受けた時に家族がやら…

  • Signage! Signage!! Signage!!!(英単語を3回くり返して書くとカッコよくなると信じている世代)

    通勤途中の乗り換え駅で、突然聞こえてきた若い女性の泣き声は、早朝の構内に響きわたったのであった。 その声は、基本的に知らない人に積極的に声をかけられない僕のような人間ですら心配になってくるような悲しそうなものであった。そう思うのは僕だけではないようで、人影のまばらな構内で、あちこちを見回している人が何人かいた。 結局のところ、その声は構内にある太い柱から発せられたもので、映像や音声が流れる電子的な看板、いわゆるデジタルサイネージというやつが柱に設置されていて、そこで流されていた映画の予告編の中で、ヒロインが泣いていたのだ。 その泣き声に朝からドキドキと心配になってしまったわけで、とりあえずそう…

  • 量販店のリップル・レーザー。

    午前2時に目が覚めて、そのままなんとなく寝付けないまま朝を迎えてしまった。体は重く、頭もハッキリしない。要は心身ともに睡眠を求めている状態のはずなのだがどういうわけか眠れない。 基本的には「できることなら眠りたい」と思い続けているので、その(眠れないでいる)間は、特に何もせずぼんやりとしている。そして朝になって、「なんだかずいぶんと贅沢な時間の使い方をしちまったぜ」などと舌打ちをする。 原因はよくわからないけどそういうことはたまにあり、そういう日は一日ぼんやりと過ごすことになる。つまりは寝不足だからだ。 午後、奥さんに誘われて買い物に付き合うことにする。ヒマなら荷物持ちとして来てくれまいかとい…

  • 雨音と早起きとビスケット。

    夜中と早朝の間くらいの時刻に目が覚めて、もうすこし眠ろうかいっそ起きてしまおうかなどと考えている時に、それまで静かに降っていた雨が本降りになった。 いきなり大きくなる「さあああああ」という雨音。時々、まとわりつく雨ごと走る自動車の走行音が聞こえる。 ベッドの端、僕の足先のあるあたりで犬が仁王立ちをしている。四本足ですっくと立つその姿を「仁王立ち」といっていいのかどうかよくわからないが、窓の外を見つめるそのまなざしがきりりと男前だったので今回は「仁王立ち」でいこうと思う。ちなみに我が愛犬は女の子だ。 仁王立ちをしている彼女は、さきほどからずっと窓の外を見ている。突然大きくなった雨の音と、むわりと…

  • 禁断の果実。

    この春から服用するようになった薬には注意事項があり、なんとこれを服用している間はグレープフルーツを食べてはいけないらしい。 服用する期間は未定っちゃ未定なのだが、最低数か月、長ければ一生規模になるようだ。服用しないと体調が大変なことになるのだからこの薬を拒否するという選択肢はないものの、数か月(もしくは死ぬまで)グレープフルーツが食べられないというのはなんともさみしいことである。僕は、グレープフルーツが好きなのだ。 そもそもなぜグレープフルーツを食べてはいけないのか。 当然、それについては医師に確認しているのだが、その理由は、 「グレープフルーツを食べると、薬が効きすぎちゃうから」 ……という…

  • 裸一貫毛皮一枚。

    この文章を書いているのはいわゆる早朝という時間帯で、どうやら気温は15度くらいらしい。窓を開けると「涼しい」というより「肌寒い」風が入ってくる。 そのくせ予想最高気温は32度だか33度になるようで、アナウンサーは「服装でうまく調節してくださいね」というようなアドバイスをくれるのだが、あいにくそういう細やかなコントロールができるほど様々な装備は持ち合わせていない。せいぜい「たびびとの服」あたりが関の山で、ややかしこまったところに行くような場合に「てつのよろい」を装備するくらいのバリエーションしか所持していないのだ。だから、肌寒い思いをする未来と暑い思いをする未来のどちらかを選んで、せいぜい工夫し…

  • ないないづくしの99ブルース。

    ヒゲを剃る時に使うジェルがなくなってしまった。 これは今日中に買わないといかんなあ、などと思いつつ顔を洗い、化粧水のボトルに手を伸ばしたらこれまた空であった。 実はさきほど、コーヒー豆をきらしていたことに気付き、財布の中に紙幣が一枚もないことも確認済だ。今日はなんだかいろいろとない日のようだ。注意深く用心してやるべきことを忘れずに行動しないと細々と困ったことになりそうだ。まずはどこかでお金を下ろさなければならない。会社に行くコースの途中のどこかにATMはあったはずだ。記憶をたぐり、その場所を思い出す。 ATM立ち寄りの件以外にも、ハガキを投函する用事があったので、いつもより5分ほどはやく自宅を…

  • タブレット未使用世代認定。

    会社で僕の隣に座っている後輩とは、お互いに年齢の公表をしたことはないものの、20歳以上の差があるはずだ。 彼(後輩は男の子なのだ)は最近Androidタブレットを購入したそうで、数年ぶりに買い換えたそれはとてもキビキビと快適に動作して、もう便利で便利でしょうがない、というような話をしてくれた。 それについて僕は「それはいい買い物をしたねえ」というようなコメントをして、会話はつつがなく進行した。新しいタブレット端末がもたらす「便利な感じ」は、僕にも容易に想像できる。 その会話の最後を、彼はこんなセリフで締めくくったのであった。 「タブレット、便利ですよ。機会があったら使ってみるといいですよ」 僕…

  • トイレからごりごりと音がする。

    朝、ぼんやりと考え事をしながらコーヒー豆をミルに入れ、ごりごりと挽いているときに突然トイレに行きたくなり、ふと気づくとミルを持ったまま便座に座りコーヒー豆を挽いている、ということがある。一応書いておくがそうしょっちゅう起きることではない。記録を取っているわけではないから確実なことはいえないが、体感的には半年に一度くらいの頻度ではないだろうか。 早朝にトイレ内でコーヒー豆を挽くという状況を何回か体験して、わかったことがある。 それがどういう原因なのか解明してはいないのだが、コーヒー豆を挽くという活動と、トイレで本来行うべき行動がうまく並行して行える時とそうでもない時があるのである。 そもそも、「…

  • よい迷子になるために。

    先週の金曜日だろうか、朝の情報番組かなんかでアナウンサーの女の人が「10連休中の疲れの出る一週間でした。明日からの週末で体を休めてくださいね」というようなことを言っていた。 なかなか含蓄のあるコメントだなあ、と思う。含蓄という言葉のチョイスがこの場合に適当なのかどうかよくわからないが、ちょっと大人っぽい雰囲気が出るのではないかと思い使用してみた。背伸びをしたいお年頃なのである。背伸びも何も、年齢的には充分に大人ではあるのだが、戸籍上の年齢と実際の成熟度がキレイにシンクロしないタイプの人間というのも少なからず存在するのだ。おそらくあまりいい意味ではないほうで。 過ぎ去った10連休について感想のよ…

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