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かぐらんち~妖浪漫倶楽部~ http://kagulunch.tokyo/

アジアンテイストの怪しい雑貨の販売等で活動中の原作者、croe氏の世界「アジアンゴシック」を題材とした小説を公開するブログです。

ハナツキマナ
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2019/08/15

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  • 1章 巫山之夢《22》

    桜人で賑わう上野公園。 散り始めの桜が宙に舞い、天も地もどこをみても桜色で、息苦しいくらいだ。 木々の合間に見える青空が唯一息ができる場所のようにも見える。 榊が行きつけの眼鏡屋からひな子を伴い帰宅するなり花見に行こうと言い出し、屋台で弁

  • 1章 巫山之夢《21》

    廊下を歩く榊がふと振り返る。「ひな子さん、晶墨からこの家について何か聞いたかい?」 少し緊張した面持ちの榊に、ひな子は柔らかく微笑んだ。「少し。視ればわかると言ってました。朱いほうには何も言わないで欲しいと。でも、私もあんな仕事してました

  • 1章 巫山之夢《20》

    「薬師の、偉い方だったんですね」 花模様の平べったい巾着袋を両手で大事そうに抱えた娘が晶墨に視線を送る。「何をもってして偉いかは如何とも言いがたいが、階級はそれなりだ」 風呂敷包みを小脇に抱えながら、晶墨は少し居心地悪そうに娘から視線をそら

  • 1章 巫山之夢《19》

    夢の世界から戻った根夢は、道具の片付けもそこそこに、あさきを伴い中川の家へ急いだ。 少し疲労の色が見えたアズキには、しっかり施錠をして留守番するよう言いつけてある。 二人が中川の家に着くと、玄関先で晶墨が険しい顔で出迎えた。「晶墨さん、ど

  • 1章 巫山之夢《18》

    あぁ、やっと死ねる。 そんな事を思うなど、忍びとしては失格なのだろう。 だがもういい。 こんな赤錆色の色羽織なんか着せられている時点で、忍びでもなんでもない。 里はとうの昔に焼かれ、お頭も死んだ。跡取の息子たちは何とか逃がしたが、色街に買

  • 1章 巫山之夢《17》

    静まり切った部屋に、突然シュッと布が擦れるような音が鳴る。 黙ったままじっとしていたあさきは、怪訝そうに一瞬眉をひそめた。しかし、瞬時に何かを察し根夢の布団を捲る。 すると根夢の左肩から血が流れ出していた。 布団はじんわりと赤く染まって

  • 1章 巫山之夢《16》

    薄く開けた窓から差し込む月明りが、行灯の柔らかな灯りに溶け込む。 浴衣姿で布団の上に座り、猫の姿で膝に乗っているアズキの背中を、寛いだ様子で撫でていた。「根夢、ちゃんと寝られそうか?」「ええ、いつも通りお香も催眠作用入りで作ってありますし

  • 1章 巫山之夢《15》

    「あの……に、似合っては……いますよ」「慰めになってないよ根夢君」「す、すみません」 背中に金糸で大きな鯉の刺繍が入った黒い着物を纏い、普段は上げている前髪を半分だけ下ろした姿で晶墨が肩を落とす。 年齢的にゴロツキの下っ端などという設定には

  • 1章 巫山之夢《14》

    中川の家に着くと、玄関先では妖物を見る為のものであろう眼鏡を掛けた晶墨が、難しい顔で中川の家を見上げていた。 榊達を見つけるや、小走りで近づいて来る。「先輩、何があったんです? 根夢君は……」「ああ、少々切迫した状況になってしまったのでね

  • あけましておめでとうございます!

    2020年になりましたね!昨年は大変お世話になり、ありがとうございました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。実は昨年末、マナさんギックリ腰をやり地獄のような痛みで会社を休み、やっとの思いで仕事納めをしたのですが……。その後インフルエンザ

  • 1章 巫山之夢《10》

    余所行きの笑顔を張り付けたまま戻ってきたたまもは、抱えてきた黒猫を部屋に置き去りにして、再び部屋を出ていってしまった。 その黒猫はようやく子猫を抜け出したばかりくらいの年頃で、初めて見る根夢と榊に驚いたのか剥きたての銀杏の実のような目を見

  • 1章 巫山之夢《9》

    「根夢君、夜鷹(よたか)って判るかしら」「えーと、認可が下りていない、言わば違法の遊女ですよね」「違法、そうね……一口で言ってしまえばそうなるわね」 根夢の言葉に、たまもは少し寂し気に笑って見せた。「すみません、他に良い言葉が見つからなくて

  • 1章 巫山之夢《8》

    「玉藻前……え、本物ですか?」「さあ……どうだろうね?」 目を丸くし身体を離す素振りを見せた根夢にしな垂れかかり、たまもは五本の尾をわざとらしく散らしながら揺らす。 その尾を見つめながら根夢は数えるようにして首を動かしていた。「……あれ?」

  • 1章 巫山之夢《7》

    言わず語らず我が心 乱れし髪の乱るゝも つれなきは唯うつり気な どうでも男は悪性者(あくしょうもの)さくらさくらとうたわれて いうて袂(たもと)のわけ二つ 勤めさえただうかうかと どうでも女子(おなご)は悪性者都育ちは蓮葉(はすは)なものじ

  • 1章 巫山之夢《6》

    「おはようございます、眞竹(さなたけ)ですが――」 三人が自宅に戻り再度の外出に向けて荷物整理をしていると、玄関の戸が叩かれ、来客を告げる声が続いた。「おや……」 榊はいそいそと玄関へ向かい、戸を開ける。 そこには榊と同じくらいの年恰好だが

  • 1章 巫山之夢《5》

    翌朝、さして広くもない居間で、寝夢、あさき、中川の三人はちゃぶ台を囲む。 開け放たれたままの障子の向こう、台所からは食欲をそそる味噌汁の香りが漂い、程なくして榊が鍋を抱えて戻ってくる。「すみませんね中川さん、台所お借りしてしまって」「いや

  • 推し妖怪の話

    一生の趣味を決定づけた本棚完全に親の趣味だなのだが、幼少期を過ごした家の共有本棚は母親の管轄ゾーンには、歌舞伎や日本舞踊に関する本の中に、稲川淳二の怪談本やら、笑ウセールスマンやら、なんとも怪しい本がたくさん並んでいた。ちなみに父親の本棚に

  • 1章 巫山之夢《4》

    縁側に座り込んだあさきは、雲一つない夜空に浮かんだ真ん丸な月を見上げる。 本の山をかき分け、どうにか二人分の布団を敷きおえた根夢があさきの隣に座った。「火傷、見せてください」「大丈夫だ、鬼の手なめんなよ」「そうかもしれませんけど、なんとも

  • 1章 巫山之夢《3》

    昼の間四人が膝を付け合わせていた居間に、今は根夢が横たわり、月の光が瞼を照らす。 枕元ではあさきが胡坐をかき、左手中指には赤く細い紐が結び付けられている。その先は根夢の右手中指に繋がっていた。 部屋に充満する甘い匂いの中に、たんぱく質の焼

  • デザフェス49お疲れ様でした!

    5月滑り込み更新!たまには小説以外の記事も残しておきたいマナさんです。すごく今更ですが、デザフェス49両日参戦してました。程々に見て回った所で力尽きたので、半分以上の時間をcroeさんのブースで売り子の様な顔して立ってました……が。(ちゃん

  • 1章 巫山之夢《2》

    刀を受け取った後、三人は「酒が駄目ならせめて好きな物を食べさせろ」というあさきの主張を受け入れる形で「葱屋」という変わった看板を掲げる料理屋へ足を運んだ。 文字通り葱料理が中心の店で、東京では珍しく京都が原産の九条葱を扱っている。 九条葱

  • 1章 巫山之夢《1》

    出会いは桃の木の下だった。――いや、正確にはまだ出会っていないのかもしれない。 紅白に咲き分けた花が満開になった枝を大きく枝垂れさせ、源平しだれ桃は風に揺れる。 その根元では、燃えるような朱色の長い長い髪を携えた青年が、死んだように眠って

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