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ブログタイトル
短編ギャラリー
ブログURL
https://kunstkeiko18.hatenablog.jp/
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2005年よりドイツ・ミュンヘンに在住。2010年、ひょんな事から日本の現代アートを扱うギャラリーを開く。ギャラリーに訪れる人たちの時にはおかしな、時に悲哀に満ちた一コマを綴る。
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385回 / 365日(平均7.4回/週)

ブログ村参加:2019/08/08

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keikothingsさん
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keikothingsさんの新着記事

1件〜30件

  • 新聞を開いて目に止まったのが、”ドイツは圧倒的に水不足”という記事。 ピンとこない。。。 水不足が広がっている地域を赤で示したドイツ地図がそこ示してあったが、ドイツ北部とアルプス地方以外、その地図は真っ赤に染まっていた。 このままでは砂漠化する恐れすらあるのだそうだ。 ミュンヘンに初めてやってきた時は春だった。 どんよりと曇っていて今にも雨が降りそうな天気で、”これって冬でしょ!”と思ったものだ。 ドイツに向けて飛び立った時に見た東京上空はあちらこちらがほのかに桜色に染まっていて、”東京ってこんなにも桜の木があるんだ!”と妙に感心したのをよく覚えているが、もうじきミュンヘンというドイツ上空は色…

  • 断捨離

    朝起きたら筋肉痛で、昨日の肉体労働が蘇ってくる。 昨日は朝からお天気はいいのに、秋を思わせる涼しさが心地よかった。 ”こんな日に倉庫の掃除をしなくていつやるの?”と心の声が聞こえてきて、延し延しにしていた倉庫の断捨離を決行する事にした。 一人住まいにしてはかなり大きな家で、さらに大きな倉庫が地下と、外に合計3つもあるので、普段からついついとりあえず必要のないものを倉庫に突っ込んでしまう癖がついてしまった。 一人ならばさほど荷物はないはずなのだけれど、実は私の場合、アーティストの作品、ギャラリーの備品、梱包資材など仕事に関するものを全て家の倉庫に納めている。 これが結構な量で3つある倉庫は満杯状…

  • 留学

    ”留学が難しくなった今、実は誰でも簡単に留学ができるって知ってた?” なんだか謎掛けみたいな話をする友人に私は頭を捻った。 彼女は大学で先生をしていて、呼ばれればホイホイと世界中の様々な大学に教えに行ったり、ワークショップを開いたりする活動的な人だ。 そんな彼女だから普段は滅多に会えないのだけれど、コロナ禍のせいで今回久々に会うことができた。 現在大学の授業は全てオンライン化されているそうだ。 課題提出や採点なども全部オンライン上でできるシステムを大学側はあっという間に作り上げたのだそうで、家にいながらにしてなんの問題もなく授業ができるのだという。 彼女曰くオンラインの授業の方がとにかく便利だ…

  • 人を招く方が好き

    お客として招待されるより、招く方が私は好き。 ならば客人をもてなすのが好きなのか、と問われればそれもちょっと違うような気がする。 休みの日くらい一人で何にも構わずに自由にしたい、と思う気持ちもいっぱいあるし、でも同時にお客たちと一緒に食べたり飲んだり、そして何よりゆっくりとおしゃべりするのは言いようがなく楽しいなとも思ったりする。 どのくらいの頻度でお客を呼ぶのが平均的なのかわからないけれど、私は結構頻繁に人を家に招いている方ではないかと思う。 基本的に私は人を呼ぶからといって、さほど気張らないことにしている。 招待される時によくあるのは、料理本と首っ引きで作ったかのようなご馳走が出てくること…

  • 蒸し暑い日には。。。

    ドイツの夏は一様に乾燥していて爽やかな夏と言われている。 湿度が低いので、強い日差しがぐんぐんと気温をあげても木陰にはいれば、スゥッと汗が引いていく、そんな夏だ。 でも蒸し蒸しと暑くて湿気に圧迫されるような、日本の夏を彷彿させる日も時にはある。 今日がそんな日だった。 子供の頃に地域ごとにあった子供会では、お盆近くになると必ず映画会が開催された。 それは毎夏同じ映画だったような気がする。 夏にお馴染みの”怪談話”の映画だ。 毎年見ているわけだから、もう話の内容もそして”次来るよ、来る!”と怖い場面も承知すぎるほどにわかっていたはずなのに、それでも怖くてたまらなかった。 多分今その映画を見たら、…

  • 髪を切る

    髪を短く切れば切るほど、ちょっとその髪が伸びただけで気になってしかたがないのは不思議なことだ。 一年くらい前までは肩に届くほどの髪の長さだった。 その頃は美容院に行くのを忘れてしまうほど、髪の長さに無頓着でいられたのに、外出制限が開けてバッサリと髪を切ったら、1ヶ月も経たない頃から襟足が煩く感じられて仕方がない。 鏡を覗き込んでも相変わらず私にしては短すぎるさっぱりとした髪型のままなのに、でも気がついたらちょっぴり伸びた襟足をいつも気にして触っている自分がいる。 とうとう我慢できなくなって美容院に出かけたら、前切ってもらったよりもさらに短い仕上がりになってしまった。 最近美容院を変えたことも私…

  • 旅にでたい

    一昨日くらいから夏日のミュンヘン。 物凄い快晴が広がっている。 目の覚めるような青空を眺めていたら無性に旅にでたくなった。 ”こんな素晴らしい天気の日に、室内で扇風機をガンガンかけて仕事ばかりしているなんて、私、馬鹿じゃない?”という気になってしまった。 ギャラリーの近所には飲食店がやたら多くてパラソルの下、多くの人たちが手に手に冷たい飲み物を持って、友人たちとおしゃべりに興じている。 そんな光景を横目で見るだけで走り抜ける私は、のんびりと時間を気にせず過ごす彼らが羨ましくて仕方ないのだ。 日本の人からすると暑い夏はクーラーのよく効いた部屋でゆっくりとしていた方がずっと快適で良い、と思われるか…

  • 訪問客

    ここの所の夏は、”これぞミュンヘン!”という爽やかで涼しい、時には肌寒い日々が続いていた。 このまま秋に突入するのかと思いきや、ここにきて太陽はカッと焼けつくように力漲り、その日差しに立ち向かって手で遮るひさしの隙間からも真っ直ぐな光線が容赦無く攻撃してくる。 ”暑いなぁ!” 思わず声が出る。 抜けるような青い空が広がり、気温がぐんぐんと上がるこんな日に誰が好き好んでギャラリーなんかに足を踏み入れるだろうか。。。そう思っていた矢先、一人の小柄な女性がギャラリーのドアを押し開けた。 ”こんにちは”と小声で挨拶をしたその人は、その遠慮がちな態度とは裏腹な力強い美しい目をした人で、私の胸は一瞬どきり…

  • 年老いる

    父が退職してすぐに、とある田舎にある大きな古い家を買い求め、一年がかりで手直しをしてそこに両親は住み始めた。 夏は都会の暑さが嘘のように涼しくて、暑い夏が苦手だった母を喜ばせたし、冬はスキー場が近いこともあり、父にとっては趣味のスキーを楽しむ絶好の場所でもあった。 野菜は新鮮で安く、自分の土地から獲れるお米は格別においしかったはずだ。 でも姉はこの両親の決断に大きな不安を持っていた。 ”今はいいけれど、お父さん、お母さんが年をとってしまったらあんな大きな家、持て余すだけでしょう。 それに病院も遠くて、雪が降り積もってしまったら孤立してしまうあの家で病気にでもなったらどうするの。 娘の私が駆けつ…

  • 手紙

    ”最近メールを書くのをやめたんだ” やってきたお客は私にそう言った。 毎朝メールボックスを開けると大量のメールが来ている。 でもその中で本当に大事なメールは数えるほどしかない、その上早急に返事が必要なものなんて滅多にない。 一日二日返事を待ったところで、世の中がひっくり返るわけでもなく、それならば手紙で十分ではないか、彼はそう考えたらしい。 実はわたしも最近、彼と同じようなことを考えている。 メールを書いて相手に送っても”果たして読んでくれているのだろうか?”と疑問を抱くことがとても多い。 質問事項をわざわざ箇条書きにして、さらにあえて太字にしても、その全ての質問に答えてくれる人はほとんどいな…

  • 薄青の目

    今日、ギャラリーオーナーの昔からの友人で、写真関係の会社を経営している夫婦の元にお邪魔した。 彼らは”カルロス”と名付けられた真っ黒いツヤツヤした長い毛を持つ雑種犬を飼っている。 漆黒の毛がびっしりと覆った顔には薄青のガラス玉のようにまん丸で透き通った美しい目が輝いていて、なんとも愛嬌のある表情にみえる。 実は昨年10月に我が家の秋田犬が亡くなってからというもの、私は意図的に犬を避けてきたようなところがある。 家族であり、同時に親友でもあったこの犬の死は想像以上に私には重すぎてしまって、犬の散歩をしている人たちの様子を眺めるだけでホロリといまだに涙が落ちてしまうのだ。 知り合いの犬、カルロスは…

  • 老いる

    日本へ帰って行った私の友人が和菓子をいくつか送って来てくれた。 それのお礼が言いたいのと久々に声が聞きたくなって、スカイプで彼女に連絡をした。 PC画面上に彼女が映し出されて、私は”あれっ”と思ってしまった。 彼女の表情にも声にも張りがなくて湿っぽさが感じられたからだ。 日本の和菓子ほど季節感を捉えていて、暑い時には涼しげに、寒い時にはほっこりとした温かみを演出するお菓子は世界の中でも珍しいと思う。 確かにここドイツでも、イースターとかクリスマスの時期になるとその時期限定のお菓子が店頭を賑わすのだけれど、日本のように細やかな四季折々の自然を織り込んだ繊細なものはこちらにはない。 美しい和菓子を…

  • 結婚

    先日知り合いから電話をもらった。 夫が不倫をしているという。 彼女は小さな子供を持っているにもかかわらず、夫を監視し、尾行まがいのことまでしてその事実を突き止めたらしい。 その執念たるや、”すごいな!”の一言に尽きるのだが、もちろん彼女にしてみれば、疑いが杞憂に終わると信じて徹底的に夫周辺を洗ったのだろうに、その事実を目の当たりにした時はさぞショックだっただろうと私は彼女の心中を慮った。 しかし。。。 夫が浮気をしている事実を掴んでからの彼女の行動はまさにプロフェッショナル。 悲しいだとか、恨みや辛みのような感情をいったん頭から切り離して離婚に向けて条件を有利にすることのみに徹し、弁護士と現在…

  • 等身大の自分

    ”なんだかどこかが変だな”と入ってきたお客を見て思った。 東洋人特有の黒くでどっしりした重みのある長い髪をしたその人は子供のように華奢で、その見るからに重たげな長い髪と身体が全く調和していない不思議な姿を持った人だった。 10歳くらいの子供にも見えるし、同時に60歳と言われても納得できそうな年齢不詳さも彼女の奇妙さに拍車をかけていた。 彼女はギャラリーのドアを開けると、聞き取れないほど小声でゴニョゴニョと何かを言って入って来た。 私は10年の年月、ドアを押し開けて入ってくるお客たちをを見続けている。 おかげでちらりとその人を見ただけで、おおよそのその人となりを想像できるようになった。 彼女は多…

  • 思い出はワイン

    思い出というものはワインに似ている。 静かに時をおき、熟成させていけばいくほど味がまろやかに、そして深みを増す。 新しい思い出は、それがどんなに特別な出来事であったとしても、誰もが経験したことのないようなものであったとしても、子供の頃のどうでもいいような日常の小さなカケラの思い出には足元にも及ばないのである。 今朝朝食の準備をしながら気づいた。 両親と共に過ごしたのはたったの18年、何とドイツで一人で暮らしてきた年数の方が長くなってしまっている。 ドキンとするほどの驚きだった。 卵焼きを食べたくて、ボールの角に卵をカツンと当てて殻を両開きするようにして割る。 その手つきを自分で見ていて、小さな…

  • 子供フェロモン

    一人のお客が10歳くらいの男の子を連れてギャラリーにやってきた。 お母さんらしきその人は作品を見て回りたいのに、その子は彼女のサマードレスの裾を引っ張って、”早く行こうよ!”と急かしている。 ギャラリーではごくごく普通に見られる光景だ。 こういう時は、若いお母さんやお父さんにもゆっくりとアートを鑑賞する時間をとってもらいたいので、私は率先して子供たちの面倒をみる。 実は。。。 私、どういうわけだか非常に子供受けがいいタイプである。 ”子供フェロモン”ってのがあるのかどうか知らないが、子供たちはいつの間にか私の虜になってくれるのだ。 おもちゃもお菓子も子供向けゲームも必要ない。 日本では学校や塾…

  • 自宅勤務

    ギャラリーは月曜日と火曜日をお客の予約日と決めている。 お客と相談して、その時間に合わせて私は彼らの好みの作品を出しておく。 彼らは自分の都合の良い時間に、自分の好きな作家作品を自由にのんびりと見ることができるとあって、この両日には結構予約がいっぱい入る。 その分私の仕事は大変で、お客の好みに合わせて梱包された作品を出してきたり、また元のように梱包しなおして片付けたり。。。 そして次のお客がやってきて、また違う作品を出したり、しまったり。。。 大型の作品ともなると運び出したりするだけでフウフウいうほどの重労働で、私にとってはこの月曜日と火曜日は、魔の二日間である。 世の中の人々にはギャラリスト…

  • 黄色い毛糸

    子供が両親の遺伝子を受け継ぐのは当たり前のことなのだけれど、私の場合十中八九父の遺伝子でできているような気がする。 外見的に父に似ているのはまだ許せるとして、一番嫌なのはあの自分勝手で傲慢な部分が私の中に脈々と流れてしまっていることなのだ。 ”父のような物の考え方だけはしたくない”と常々思っているのに、知らず知らずのうちに父そっくりの自分が顔を出していて、ゾッとしてしまうこと、たびたびである。 もちろん父にだって良いところはたくさんあったのだけれども、母の性質と比べてしまったら、やはり見劣りしてしまうのだ。(ごめん、お父さん!) 母のように思いやりに溢れた、慈愛に満ちた性格を受け継ぐことができ…

  • BBQ

    気がついたらもう私の周りにはほとんど日本の友人がいなくなってしまった。 ドイツ人の夫を病気で亡くして帰って行った人、ここでの仕事が軌道に乗らず日本で再就職するべく帰っていった人、両親の介護を一身に担うため帰って行った人。。。一人減り、二人減りしてとうとう誰もいなくなった。。。 帰って行ったその友人たちは皆強者揃いだった。 外国人が乗り越えなくてはならない高い壁をバリバリと壊して突き進むような人たちばかり。 その中にあって私が一番頼りなく気持ちが弱かったはずなのに、そんな私がたった一人どういう訳だかここに居残ってしまっているのだから、本当に世の中というのは予測不可能である。 数年前まで私は日本人…

  • 自分らしく

    音楽家だった友人の夫が亡くなって、その膨大なレコードやCDをどうにかしたい、と連絡を受けたのはもう3年も前のことだ。 ギャラリーのオーナーが無類の音楽好きであることから連絡をしてみると、彼はホクホク言って友人からそれらのコレクションを丸ごと全部引き取ったのだのだそうだ。 日本へ帰る友人にとってはそのレコードたちはお荷物でしかなかったようなので、私は未だにその時のことを彼女から感謝されている。 でもオーナーの元へと移動したそのレコードたちがその後どうなったのか、私は彼に尋ねてみたこともなかったが、どうやら彼は3年かかって優に200枚以上あったレコードを全て丁寧に何度も聴いてチェックし、分類をして…

  • 列車の旅

    ちょっと気を許しているうちに、また世の中が怪しくなっているではないか。 この目を疑うほどアメリカのコロナ感染者の数字がニュースで踊っていると思ったら、何と日本もじわじわとコロナに攻め込まれている。 ”ドイツはどうなんだ?”、と問われれば、やはり日本と同じような状況で、私の暮らすバイエルン州(ミュンヘンが州都)でも毎日新規の患者は何十人単位で出ている。 コロナは私たちの生活の中に潜り込んで、”隙あらば!”と攻撃の構えを緩めていない。 私の周囲をぐるりと見渡せば、表向きにはコロナ禍なんてなかったかのようにみんな今この夏を楽しんでいる。 ドイツの夏は美しい。 青々と繁る大木の下には気持ちの良い風が通…

  • 時間制限なし

    若い人はご存じないと思うが、昔の映画館は一度チケットを買い求めたら延々とそこに居座ることができた。 さらに大抵映画は二本立て、話題作ともう一本、低予算で作られたB 級映画が抱き合わせになっていた。 それを二度三度と繰り返し観ようものならば、それはもう1日がかりで、日中の明るい時間に映画館に入ったのに、出てくる時は日がどっぷりと暮れている、ってこともごくごく普通だった。 それをいうならば、カフェでもコーヒーたった一杯で友人たちと喋り倒して半日過ごしても、誰にも非難されることもなかった。 そう。。。昔は時間に対して、あるいは商売に関して人々はもっと鷹揚だった気がする。 ”1時間当たりいくら”、と算…

  • 短冊飾り

    3年前の今日、母は緩和病棟の一室で静かに亡くなった。 ちょうどまる1ヶ月の間、姉と私は緩和病棟で母と共に暮らした。 母と過ごした最後の1ヶ月の日々は、もちろんとても辛くて悲しくて、やるせない日々だったことには違いないのだけれど、でもあの最後の30日間を私はどの日も欠けることなく、しっかりと頭に刻み付けている。 母と私たちが過ごした部屋は、明るい太陽の光が燦々と差し込む気持ちの良い場所だった。 病院のあの独特のベッドさえなければ、看護師さんが忙しなく入ったり出たりしなければ、そしてどこからともなく漂う死の冷気がなければ、もっと私たちは久しぶりの親子水入らずのひとときを楽しめたのかもしれない。 広…

  • ガリ勉

    せっかくマーガレットの大きな鉢植えをギャラリーのお客からもらったのに、一晩ですっかり虫に喰われてしまった。 その姿は痛々しいほどで、”このマーガレットの姿を人間に置き換えるならば、まさに瀕死の状態だよなぁ”と思った途端、胸がぎゅーんっと縮んでしまいそうに苦しくなった。 あの時のことが胸から迫り出すように、溢れ流れるように思い出された。 高校時代の私は友達とのおしゃべりと同じくらい本を読むのが大好きで、学校の行き帰りのバスの中が私の大事な読書タイムだった。 本を読みだすとすぐにグァーンという音が耳元でする感じがして、物語の世界があっという間に私の目の前で開かれ、そこに吸い込まれていく。 私は何度…

  • 飛行機雲

    ホースリールからホースをぐいぐい伸ばして庭の植物に水を撒く。 夏の朝の仕事だ。 ホースから飛び出す水はヒヤッとするほど冷たいけれど、水しぶきがジャンジャン上がるとなんだか気分が高揚する。 私は腕まくりをして豪快に植物たちに水を浴びせかける。 今日は抜けるように青い空が広がっている。 そのときふと、私の庭に切り取られた空を斜めに横切る一本の飛行機雲が目に入った。 ”飛行機、飛んでるんだ。。。” ”どこへ向かっているのだろう?”という思いが浮かぶより先に、私は飛行機が今のこの時に飛んでいること自体に驚いてしまった。 そして。。。そんなことにびっくりしている自分にもまた驚きを感じてしまった。 コロナ…

  • 雨のち晴れ

    昨年末から会っていなかった友人と、久々にカフェで話をしようと決めたその日は、ざんざんぶりの雨だった。 カフェにたどり着いたときには、私はもうすっかり濡れ鼠になっていたし、湿気た空気がカフェを覆ってしまっていて、普段ならばきっととても心地よいはずのその場所も、じっとりとして落ち着かなかった。 私は約束の時間ちょうどに到着したのに、友人の彼の前には大きめのカプチーノのカップがすでにあった。 そのカップのヘリには白と薄茶の泡がこびりついたようにひっついていて、もうすでに半分くらいに減ったカプチーノはすっかりと冷めているみたいだった。 いつから彼はここにいるのだろう。。。 ”久しぶり〜!元気だった?”…

  • 壁のシミ

    気候の良い夏の間に我が家の壁を塗り替えようと思っている。 外出制限だったあの六週間の間に私は玄関口から部屋に至るまでの廊下の塗り替えした。 暗めのブラウンだった廊下をほんの数滴ピンクを垂らしたような白いペンキで塗った。 たったそれだけなのになぜか我が家はザブンザブンと波の音が聞こえ、塩の香りのする海辺の家のような雰囲気になった。 カラスの鳴き声さえカモメのように聞こえてくるのだから、私の想像力も捨てたものじゃない。 本当はこの外出制限の時に、全ての部屋の壁を塗り替えしかったのだ。 ペンキはすでに準備してあったのに、私はどうしてもそれを始めることができなかった。 と言うのは、昨年まで飼っていた秋…

  • 私たちの関係

    ギャラリーオーナーとの付き合いももうかれこれ15年ほどになる。 人様から見ると私たちの関係ほど摩訶不思議な関係はないと見えるようだ。 元々は社長とそこで働く部下の関係だったが、ギャラリーを始めてからはなぜか私たちは対等になり、互いを同志と感じている。 彼がいなければもちろんこのギャラリーは存続できないのだし、私がいなければアート作品を調達することが難しくなる。 持ちつ持たれつで、ギャラリーはそれなりにうまく機能していると思う。 でも。。。 彼と私は性格がものの見事に正反対、長い時間一緒にいると必ず喧嘩になる。 昨日もギャラリーに久々にやってきたオーナーが長々と居座るので嫌な予感はしたが、案の定…

  • 思い出の小石

    私の今までの人生なんて語るほど冒険に満ちていたわけでもないし、ドラマチックな出来事が華やかな色を添えてくれたわけでもない。 退屈そのもの、語るに及ばない私の人生なのだけれど、それでも私にとってはその時々に喜怒哀楽の小さなドラマが繰り広げられてきた。 記憶の引き出しを開くと、様々な形の思い出の小石が詰め込まれている。 そういえば、ここミュンヘンに来てちょっとして、ようやくここの暮らしに慣れてきたかな、という頃に私はひどく塞ぎ込んでいた時期がある。 荒んでいた、という方が当たっているかもしれない。 きっかけは仕事だ。 子供たちに勉強を教えることにしか脳がなかった私なのに、ここドイツに来て初めて会社…

  • 故郷

    ここドイツで暮らしていて面白いなぁと思うのが、言葉だ。 日本に住んでいたらここまで多種多様な言語を聞く機会はなかっただろうと思う。 耳慣れない言葉が通りがかりにスッと私の耳をくすぐるだけで、”どこの国なのだろうか、そこは暖かい国なのだろうか、霧雨が頬を濡らす冷え冷えとしたところなのだろうか”、と私の気持ちは体を離れて勝手に旅に出てしまう。 何もそれは外国語だけではない。 父が転勤族だったので、私たち家族は東へ西へと2年か3年ごとに大移動を繰り返した。 子どの頃から土地土地で違う方言にとても魅せられた。 九州地方の方言はその肥沃な土地の香りのようなほっこりとする温かさを感じたし、雪の多い山陰地方…

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2005年よりドイツ・ミュンヘンに在住。2010年、ひょんな事から日本の現代アートを扱うギャラリーを開く。ギャラリーに訪れる人たちの時にはおかしな、時に悲哀に満ちた一コマを綴る。

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