日々認知症診療に携わる病院スタッフのブログです。診療の中で学んだ認知症の診断、治療、ケアについて紹介していきます。
認知症になると多くの方が甘いものを好んで食べるようになります。 甘いものなど食べなかった方が急に食べるようになったり、元々甘いものが好きだった方は輪をかけて食べるようになったりしますので、当院の初診時にチェックしていただく認知症の症状リストにも「甘いものが好き」かどうかを確認する項目があるほどです。 実際に「甘いものをテーブルの上に置いておくと、いつの間にか全部食べてしまう」「甘いものを抱え込んで食べている」「砂糖や甘いものを隠しておいてこっそり食べているようだ」などというのはよく聞くエピソードです。 ではなぜ認知症になると甘いものを好んで食べるようになるのでしょうか。 1つは認知症の進行によ…
今回は「脳と腸の密接な関係」について非常に興味深いマウスの実験報告がありましたのでご紹介いたします。 これは九州大学大学院医学研究院の須藤信行教授による「腸脳相関」に関する研究報告になりますが、概要を以下にまとめます。 ・腸内細菌を持たない無菌マウスは、外界からの各種刺激・ストレスに対して過敏でアレルギーを抑制する力も弱いが、細菌を植え付けると次第にアレルギー反応が抑えられる。無菌マウスの免疫系は腸内細菌という外的要因に曝されることで成熟し、十分な機能を持つことでアレルギーの抑制力が高まる。 ・生後の環境要因も影響し、母マウスが幼少の子マウスを舐めたりさすったりする「母性行動」の強さと成長した…
「人間の身体は食べた物からできている」 これは10年以上前、妻と2人で不妊治療を専門とする漢方薬局を訪ねた時に、担当してくれた薬剤師さんから言われたことです。 確かに自分の身体は100%自分で食べた物からできています。 これはとても「当たり前」のことですが、当時の私にとっては「驚き」でした。 「人間の身体を畑に例えるとすれば、菓子パンばっかり食べている人の畑で赤ちゃんはできやすいと思いますか?」 と言われてさらに納得。 「これは本当かもしれない」と何となく予感めいたものを感じたのを覚えています。 それから妻は処方された漢方を煎じて飲み始めるとともに、指導された食事療法も始めました。 しかし夫婦…
前回は人と腸内細菌は共生しており、腸内細菌にとってもおいしい食事を摂ることが「善玉菌」を増やすことにつながり、腸内フローラが調和してくると認知症の方に多い「便秘」も改善されるので、身体的・精神的症状も落ち着いてくるし、認知症の予防にもなるというお話をいたしました。 今回も腸内フローラを活性化させる「腸活」のお話の続きをしたいと思います。 腸内を「腐敗」ではなく「発酵」させて健康になろうというお話です。 まず前回「善玉菌」を増やすことが「腸内フローラ」を整えるカギとなりますので「善玉菌」が好んで食べるの「食物繊維」や「オリゴ糖」を積極的に摂るようにすると良いでしょうというお話をしました。 実は「…
前回は「便秘」になると認知症の症状が悪化してしまうこと、「腸内が調和」すなわち「腸和」してくると体調も心も穏やかになり、認知症の症状も落ち着いてくるというお話をいたしました。 今回は「腸内フローラ(=様々な菌によって形成される腸内の生態系のこと)」を整えるために、腸内細菌にとって「おいしい」エサ・食事はどんなものなのかについてお話しいたします。 腸は食べ物を消化吸収して排泄する機能だけしかないと思われがちですが、前回もお話ししましたように、腸は腸内細菌が生成するホルモンなどの神経伝達物質を介して人間の動きはもちろん感情や創造性さえも左右していると言えます。 そして「第二の脳」と呼ばれ、脳に匹敵…
認知症患者さんでは「便秘」によって精神症状・身体症状ともに悪化することがたびたびあります。 以前「認知症の症状が急激に出現・悪化する時は」でお話しした通り、腸と脳にはとても深い関連性があり、腸は「第二の脳」とも言われているほどです。 そもそも「便秘」とは、日本内科学会の定義によると「3日以上でない状態、または毎日排便があっても残便感がある状態」とされています。 実際、認知症を伴う神経変性疾患のほとんどの方に「便秘」があるといっても過言ではなく、もう1週間も便通がないという方も珍しくありません。 そういった方が毎日もしくは少なくとも2日に1度程度、お通じが出るようになって「便秘」が解消されると、…
前回は、認知症治療に使われる薬には様々な副作用があるため、適切に使用しないと「認知症薬が症状を悪化させることがある」ということをお話ししました。 今回も認知症治療のための投薬調整についてお話ししたします。 認知症を伴う神経変性疾患で現れる精神症状や身体症状に対しては、多彩な症状に合わせて様々な薬が使用されます。 ただ認知症治療で薬を用いる際に皆さんに覚えておいてほしいことがあります。 それは全般的に「精神症状を抑える薬を使うと身体の動きが悪くなり、身体症状を改善させる薬を使うと精神症状が悪くなる傾向がある」ということです。 うちの先生はよく「認知症治療に用いる薬の『薬効』は、精神症状と身体症状…
皆さんは「認知症薬が症状を悪化させることがある」と聞いて驚くでしょうか。 認知症薬は確かに認知症の症状を改善させるものではありますが、やはり「薬」なのでどうしても「副作用」があります。 そのため本来であれば薬の「効能」と「副作用」を見極めながら、注意深く投薬の是非を判断したり投薬量を調節していかなくてはなりません。 それなのに「認知症だから」「もの忘れの症状が出てきたから」などと、「診断」や「投薬の目的」がはっきりしないまま患者さんは「先生に出された薬だから」と内服し続けた結果、薬の「効能」よりも「副作用」の方が大きく出きてしまったり、特定の認知症薬だけ長年ずっと内服していたが「症状が悪くなっ…
前回まで、認知症の症状が急激に出現したり悪化する要因として「薬」の影響や「脱水症」、「感染症」、「持病の悪化」などがあるとお話ししました。 今回はその他の要因についてお話しいたします。 「便秘」も認知症の症状を悪化させます。 認知症を伴う神経変性疾患では、パーキンソン症状を合併して自律神経障害を起こしやすいのですが、腸の動きが悪くなって「便秘」になりやすく、実は疾患を発症する前から便秘だったとか、若い時から便秘だったという方がとても多いのです。 もともと神経変性疾患になりやすい「器質・気質」で、疾患発症の前駆症状としてすでに自律神経障害を呈していたとも考えられますが、便秘になるとなぜ悪いのかと…
前回は急激に認知症の症状が出現・悪化した場合の要因として、まず「薬」を使用している場合は、薬剤性の可能性があることについて触れ、さらに認知症薬や向精神薬、抗パーキンソン病薬などを自己判断で調節・中止することは「悪性症候群」を引き起こす危険性があるので決して行わないようにしてほしいというお話をいたしました。 今回はその他の要因についていくつかお話しいたします。 うちの先生はよく「急に何かの症状が起こった時には、必ず何かしらの原因がある」と言っています。 認知症疾患の進行によって、急激に症状が出現したり悪化するということはあまりないからです。 ではどんな原因があるかというと、前回お話しした「薬」の…
今年は本格的な梅雨となり、各地で大雨の被害が心配されています。 以前もお話ししましたが、認知症の方は天候や気圧、潮の満ち引きなどにも影響を受けやすいため、今年のように天候不順が続くと、認知症の方の症状も不順になりやすいので、きっと苦労されている方も多いのではないでしょうか。 認知症の症状に影響を与えるものとしては「天候・気圧」の他に、「干潮・満潮(新月・満月)」、「便通の有無」、「睡眠の状態」などもあり、それによって症状が「波打つ」ということを以前お話ししました。 今回は、上記のような要因で認知症の症状が「波打つ」のではなく、認知症の症状が急激に出現したり悪化したりして、それが「ずっと続く」よ…
前回は「相手のできないことや間違いを指摘して怒る」と認知症を悪化させるので、その逆である「相手の良い点を見つけてほめる」ことが認知症の症状を落ち着かせる「良いケア」であること、また「相手の良い点を見つけてほめる」ことは意外に難しいけれども、それに努めることが自分自身の成長にもつながり、自分が落ち着いて対応できるようになると相手も落ち着いてくるというお話をいたしました。 今回は「認知症にとって好ましいケア」についての続きと、家族がそのようなケアをすることが難しい場合の対応などについてお話しいたします。 これまでお話ししてきたように、認知症の方に対してはできるだけ「不安」や「不快」の気持ちを煽るよ…
前回は「認知症の方に対する好ましいケア」を行うには、まず「認知症を悪くさせる方法」を知ることが手っ取り早く、その逆を行えば良いということをお話しいたしました。 今回は「本人ができないことや間違いを指摘して怒る」という「悪いケア」をしないためには、まずは介護をしている家族の方が変わらなければいけない、というお話の続きをします。 人というのはどうしても他人の悪いところばかりが目についてしまうものですが、認知症の方に対してもやはり同じなのかもしれません。 いつまでも昔の健康だった時と比べて、本人が出来なくなったことや悪くなったことばかりに目がいってしまい、それをついつい指摘してしまう。 しかし実際は…
皆さんは「認知症になったら悪くなるばっかりで、良くなることなんかない!人生の終わりだ!」などと思っていないでしょうか。 私もかつてはそう思っていました。 しかし日々の診療を通じて、実際に認知症の症状が改善していく方を何人も経験していくうちに、私自身「認知症は決して良くならない病気ではないし、予防もできる」と思うに至りました。 そして実際に認知症が良くなる例を何人も経験できたことによって、やっぱりこういう対応が良くて、こういうやり方は悪いのだということを改めて確認することができました。 前回、認知症医療にとって投薬治療とケアは両輪であり、どちらが欠けてもうまくいかないということをお話しいたしまし…
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