日々認知症診療に携わる病院スタッフのブログです。診療の中で学んだ認知症の診断、治療、ケアについて紹介していきます。
昨日から今日にかけて日本列島に台風が接近し、各地に大雨を降らせていますが、皆さんの住む地域は大丈夫でしたでしょうか。 天候が悪いと認知症の方が「爆発」したり、症状が波打つことが少なくありません。 そのため雨の日などは、困ったり心配する家族から病院に「どうしたらいいのでしょうか?」とよく電話がかかってくるのですが、なぜ天候が悪いと認知症の精神症状がひどくなりやすいのか、その原因は分かっていません。 ただ皆さんも天候が悪いと何となく気分が憂鬱になったりするのではないでしょうか。 認知症の症状があって、日常的に「不安な気持ち」と「穏やかな気持ち」の間で気持ちが揺れ動きながら、ぎりぎりの精神状態で何と…
本日レビー小体型認知症(DLB)の初期と診断された患者さんも睡眠に問題のある方でした。 ご主人によると、 「イビキもかくし、すごい寝言を言うんだよ。それで寝室は別にしてる。とてもじゃないけど一緒に寝られない。起きてるんじゃないかと思うほどはっきり言うんだよ」と。 同席された息子さんのお嫁さんも、 「20年程前に一緒に同じ部屋で泊まったことがあるんですが、一緒に寝ていて寝言がすごかった」と。 さらに、 「実は主人も寝言をすごい言うんです」 ということでした。 そしてご本人は、 「(寝言のことは)全然分からない。覚えてない」と。 このようなことは診療の中では日常的なので、特にもう驚かないのですが、…
前回まで認知症を含む様々な神経変性疾患の発症を予防したり、進行を遅らせるには、いかに「良く眠るか」が一つの大きなカギになることをお話ししてきました。 例えば、レム睡眠行動障害やムズムズ脚症候群などの睡眠障害があると、寝ていたとしても「身体も脳も休めていない状態」になってしまうし、また夢をよく見たり(特にあまり内容の良くない夢)、寝言をよく言う場合は、身体は休んでいても「脳が休めていない状態」になります。 そうすると本来は睡眠中に脳から排出されるべきアミロイドβタンパクがうまく排出されずに脳に蓄積してしまい、それによって脳神経が変性・脱落して脳の萎縮をもたらし、アルツハイマー病が発症しやすくなっ…
前回までは、睡眠と認知症の関連性が深いこと、認知症の治療では睡眠障害の治療も優先して行っていくこと、そして代表的な睡眠の病気を4つ挙げ「不眠症」と「睡眠時無呼吸症候群」、「レム睡眠行動障害」までお話しいたしました。 特に前回お話ししたレム睡眠行動障害は、様々な認知症を呈する神経変性疾患の前駆症状として数年~15年位前から現れること、レム睡眠行動障害があると14年後には90%以上の割合でパーキンソン病やレビー小体型認知症、進行性核上性麻痺などの神経変性疾患を発症するという報告があること、そしてレム睡眠行動障害はもちろん睡眠障害をしっかり治療して良質な睡眠習慣を持つことによって、神経変性疾患を「発…
前回は睡眠が不十分だと認知症の発症と進行のリスクが高まること、そのため認知症外来では、まずしっかり睡眠がとれているかを確認し、とれていない場合には認知症の治療と併せて睡眠の治療も優先して行っていくということをお話ししました。 そして代表的な睡眠の病気を4つ挙げ、「不眠症」と「睡眠時無呼吸症候群」について簡単にご紹介いたしました。 今回は3つ目の「レム睡眠行動障害」についてお話ししていきます。 夜によく夢を見るという方がいらっしゃると思います。 私も昔はよく夢を見ましたが、夢を見るのは夜寝てすぐというよりかは、明け方の眠りが浅い時が多いのではないでしょうか。 睡眠には深さがあり、浅いものは「レム…
皆さんはよく眠れていますか? 寝ている時に夢をみますか? 夢を見ている場合、その内容は怖かったり、戦っていたり、嫌な夢だったりしませんか? 寝ている時に身体を動かしたりしていませんか? イビキをかきますか? 寝言をいいますか? 自分の声で起きたりすることがありますか? 寝ぼけて起きて行動することはありませんか? 実はこれらは認知症外来の初診時に問診票で確認する項目です。 「なぜ睡眠のことを聞かれるの?」と思われる方が多いかもしれませんが、認知症の発症と睡眠にはとても密接な関係があるからです。 実際に確認すると、認知症外来の初診患者さんの多くが何かしらの理由で十分な睡眠を取れていません。 昼間ウ…
多発する高齢者の自動車事故。本当に認知症の症状はなかったの?(後)
前回は事故を起こした高齢者に、認知症の症状である「意識の変容」があって覚醒度が落ちていた可能性があるとお話ししましたが今回はその続きです。 デイサービスなどに行くと、うつらうつらしている高齢者の方がとても多いことに驚きます。 「意識の変容」がある方に、覚醒度が落ちる状態になることについて聞くと「眠くなる」と表現する方がほとんどです。 一般には「傾眠」状態でただ眠いだけだと見られがちなので、まさか認知症の症状だとは気づかれにくいのではないでしょうか。 また「意識の変容」は数秒単位から分単位、時間単位、日単位、週単位、長いと月単位でといったように様々なスパンで起こります。 数秒から数分で起こったり…
多発する高齢者の自動車事故。本当に認知症の症状はなかったの?(前)
ここのところ毎日のように高齢者による自動車事故、無謀運転のニュースが報じられています。 幼い子供たちが犠牲になる事故が後を絶たず、子供を持つ同じ親として深い悲しみとともに「何とかならなかったのか」とやるせない憤りを感じざるを得ません。 ただニュース報道では事故を起こした高齢者の年齢に注目がいきがちですが、私としては「果たして認知症の症状はなかったのだろうか?」ということがいつも気になって仕方ありません。 実は認知症の症状の中に「意識の変容」というものがあります。 「意識の変容」といっても、なかなか分かりにくいと思いますが、この症状のよく見られる具体例としては、高齢の方がボーっと一点を見つめて固…
はじめまして。 私は、とある病院にて日々認知症診療とケアに携わっている医療従事者です。 認知症診療については日本は世界のトップランナーですが、認知症医療の現場を見渡すと、認知症の診断や治療、ケアについてはまだまだ医療機関によって大きなバラツキがあり、患者さんやご家族が疑問に感じたり、心配になることも少なくないようです。 私どもの病院に来られる患者さんも当院が初めての受診という方は少なく、他の医療機関で認知症の治療を受けてこられた方がほとんどで、やはりそれまでの診断や治療に不安を感じ、セカンドオピニオンや転医を希望して来られるという方が少なくありません。 そこで、私が認知症患者さんの診療とケアを…
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