「お口に合って本当に良かったです! 日本の方(かた)は繊細な味付けを好むと聞いていますので、とても心配していました」 ルイス君は安堵したように笑みを浮かべている。 この英国貴族の邸宅の趣味の良い主人の私室みたいな空間に居るのがルイス君ではなくて最愛の人だと
創作BL小説を書いています。 ヤフーブログから引っ越して参りました。
ヤフーブログ終了でライブドア様に引越しました。今日の夜中更新分からはこちらがメインです!
足の指から膝の裏まで微細に舌を動かしながら強く吸う動きに焦れたのか、最愛の人は花芯から幹へと水晶の雫を零している場所を紅色の指で示している。「聡がお望みなら……。ただその前に……」 両の足を大きく開く。「少し腰を上げてください……」 祐樹の淫らな唆(そそ
それに目の前には最愛の人が作ってくれた年越し蕎麦がホカホカと幸せそうな湯気を立てている中で他愛のない会話を交わすのが心が弾んでしまう。そして紅白歌合戦を見ながら食べていた蜜柑の香りも懐かしさと爽やかさを二人の親密な空間に彩りを加えるようだった。「324
最愛の人が楽しみにしていた帰省がなくなったわけだし、今年は旅行の予約もしていなかったのでお正月のイベントは皆無になってしまった。そして今から予約を取ろうと試みても人気の有る旅館とかホテルは埋まっているだろうし。「いや、お母さまに会えないのは残念だけれど
「掛けても良いですか?」 一応許可を取って通話をタップした。『聡さん本当に申し訳ないと思っています』 最愛の人のライン通話で掛かって来たのだから祐樹が電話したとは思っていなかったのだろう。何だか凄く申し訳なさそうな声が聞こえてきた。「母さん、重大な話って
最愛の人が愛の交歓の余韻を微かに残した薄紅色の首を優雅に縦に振っている。どうやら合っていたようで何となく嬉しい。「銀行保有分が5%と佳世さんは言っていたけれど、担保として株を持っているだけで株主総会の議決権は付与されていないのが普通だな。万が一付与され
予めイメージしていた執刀の手順――こういうイメージトレーニングが重要だと教えてくれたのは言うまでもなく最愛の人だ――よりもスムーズに手術(オペ)は終了した。「お疲れ様です。皆様がお気づきの点が有りましたら是非ともお教え下さい」 第一助手から順番に表情を見
「謝って欲しいわけでは全くないです。貴方の笑顔を拝見するだけで一晩の疲労など吹っ飛んでしまいます。それに私が好きでしていることなので……。それはそうと、夫婦で共有出来ない類いの問題は愛人の西ケ花桃子さん関係でしょうか?」 仮の話として祐樹の浮気を出したこ
弾んだ声と表情で聞いて来る最愛の人を惚れ惚れと見詰めてしまった。「いえ、京都ではこんな雪は体験出来ないでしょうから、お連れしただけですよ。愛の交歓で身体が温まったとはいえ、急に冷やし過ぎるのも風邪の元だと思います。もう人が居ない時間だと思われますので一
「祐樹!雪が降っている……!!」 最愛の人のフルートグラスを持った薄紅色の指に祐樹が見惚れていると弾んだ声が空気を金色に染める感じで知らせてくれる。「え?本当ですか?」 祐樹もガラスに目を遣ると確かに牡丹雪が風に舞っている。しかもこのクラブラウンジは高層
「私は祐樹とこういう行為をするのが至上の悦びなので……、祐樹が憂さ晴らしの積りでいてもそれは構わないのだけれど。野上さんは二年前、長楽寺氏に普段以上に関係を強いられたと言っていただろう?あれがずっと引っ掛かっていて。祐樹が太田夫人から受けたストレスは多分
最愛の人の下半身はパレオ状態にしたスカーフで隠されていて、しどけなく開いているであろう花園の門すら見えない。 見えないからこそ余計に想像力が増して良いが。「あっ……」 最愛の人の小さくそして淫らな声がペルシャ絨毯の上に零れたかと思うと先端部分を一気に迎
祐樹の気持ち、いや欲望を見抜いたように甘く蕩けた言葉を紡いでくれた。「聡の口とか喉『も』絶品ですからね。是非お願いします……」 リビングのソファーに身を横たえながら言った。こんなことならベッドで……とも思ったが窮屈(きゅうくつ)な分だけ密着感も味わえるし
「私自身が……綺麗かどうかは……分からない……。けれど、スカーフと、そして、祐樹に……愛されている身体だと……思うと……とても愛おしくて……嬉しいとは……思う……」 面食いだと自他共に認める祐樹が一目惚れした最愛の人だし、誰が見ても恵まれた容姿だと思うだ
「取り敢えず、今日分かったことを整理してみますね。貴方も隣に座って下さい。その方(ほう)がノートも見やすいでしょうから」 最愛の人手作りの食事を済ませて薫り高いコーヒーを一口飲んでノートを広げる。「そうだな……。それはそうと長楽寺佳世さんが淹れてくれた紅茶
少なくとも10枚以上のシルクのスカーフが入っていた。 しかも赤い薔薇模様が大きく描かれているスカーフが圧倒的に多い。「祐樹のリクエストに応えてみた……。ただ、どうやって身に纏えば良いのか分からないので、その点は任せるけれども……」 最愛の人は祐樹の首に
パティシエさんがラム酒と思しきモノを掛けると青い炎がぼわっと上がる。そしてクレープの表面には「メリークリスマス」の英文が濃いキツネ色で浮かび上がった。 どういう仕組みになっているのかサッパリからないけれど。「まさにクリスマススペシャルですね……」祐樹が
「うん!美味しい……!!」 最愛の人がフォークとナイフを器用かつ優雅に使ってサーモンを切り分けて薄紅色の唇に収めると弾んだ声で言った。 重厚でシックな部屋の空気も二人の醸し出す親密な空気でクリスマスカラーに染まっているような感じだった。「美味しいですね。
電話でアポイントメントを取るよりも佳世さんからの紹介の方が良いような気がした。それに直哉氏だって母親を苦しめた愛人と相続額が同じというのは納得し難いモノがあるに違いないし。「分かりました。少し失礼して……」 眼鏡を――おそらく老眼鏡だろう――ケースから
ベルベッドと思しき箱を開けるとプラチナのシンプルな指輪が入っていた。 小さいが極上の煌めきを放つダイヤが一つと控えめなブランドの頭文字が金色で刻印されている点がアクセントになって指輪の高級感を増しているような感じだった。「嬉しいですし是非身に着けたいと
「これは紅茶のリキュールが入っているのか……。美味しいし身体が温まるな……。祐樹有難う」 満足そうな笑みの花が唇から零れている。「リキュールと言っても紅茶と変わらない味だとお店の人が言っていましたが、ちなみにこれもリキュールです。それほど好みではないので
「二年前ですか?有りましたわ。瑠璃子さんが待望の赤ちゃんを授かったのですが、残念ながら流産してしまって……」 直哉さんの妻の瑠璃子さんは現在34歳だと森技官から貰った記録にあった。 ということは32歳の年の出来事だ。「それは……お察し致しますとしか申し上
「長岡先生曰(いわ)く『普段はお高くとまっているディスプレイもクリスマスカラーの天鵞絨(ビロード)とかリボンに飾られることによって客に媚びを売っているように見えてとても面白い』と。そういう着眼点は全くなかったので……」 最愛の人は祐樹を見上げるようにして話し
「お待たせ致しまして申し訳ありません」 最愛の人が応接室の扉をノックした後に開けて深々とお辞儀をしている。家族性高脂血症持ちの佳世さんにとっては――今のところは血液検査でも正常値の範囲内らしいが――最愛の人の手技のお世話になる可能性が他の人よりも高いので
「それでしたら、このホテルから大阪駅に向かう道の途中も綺麗です。更に大規模なのは阪急梅田駅の近くの阪急インターナショナルホテル近辺も見応えが有りますね」 最愛の人はバリバリの京都弁ではないものの大阪の人のアクセントとは若干異なるので――東京の人には区別が
「祐樹、珍しく荷物が多いな……」 クリスマスイブの土曜日の前日は救急救命室に搬送される患者さんの数もキャパオーバーではないかとここの勤務に慣れている祐樹なども思ってしまうほどの大混雑だった。 忘年会とか学生の飲み会などは不況にも関わらず――いや不景気だか
経済的に恵まれた生活を粉砕された上に望まない関係までを強いられて野上さんが故長楽寺氏に恨みを抱いていた可能性は捨てきれない。 コレステロールの高い食べ物などは調べれば直ぐに分かるだろうからそういう物を作って食べさせていたとしたら殺意までは抱かなくても、
「どうやら男性同士が……こういうコトをしている場面だったみたいで……。大きなルビーを中央にセットしたダイヤモンドのネックレスを……そのう……」 そういう類いの本が女性向けに売られていることは知っていた。そして性的な描写が有ることも。そして最愛の人が言いた
野上さんの場合、他の支払いがなければ丸々25万円が好きに使える身分だ。 彼女は相当裕福な家庭に生まれたようなので本人的には不満だらけなのかも知れないが。だから佳世さんへの細(ささ)やかな当てつけとしてハリーウィンスト〇の指輪が買えたのかも知れない。 まあ
「いつもながらとても感じた……」 祐樹の胸元に紅色の頬を寄せて最愛の人が咲き切った花のような満足げな声がした。 祐樹は愛の交歓の余韻ですっかり湿った髪にチュッとキスした後に汗の雫を纏った若干華奢な肩を抱き締める。「愛しています、聡。堪能したのは肢体だけで
野上さんは最愛の人の言葉が進むにつれて大粒の涙から、滝のように流れる涙へと変わっていって最後は肩を震わせながらの大号泣といった感じだ。 幾らこの屋敷が広いとはいえ、佳世夫人の耳に入ったら大変なことになると判断してドアを固く締めた上に祐樹の身体で防音の役
「是非参りましょう。ただ、こういう場所は気軽に行けないですよね……。停年後ということになりますが……」 最愛の人が潤んだ眼差しで祐樹と視線を合わせている。「その歳になった場合、貴方への愛は変わらないと約束出来ますが、身体では聡を満足させられるかどうか分か
「そうよっ!!奥様には絶対内緒という口止め料も兼ねてね。お金だけじゃ足りない時はあのアクセサリーを貰ったわ。長楽寺の先代のお嫁さんの遺品で……。奥様はアクセサリーとか宝石に興味のない人だから先代が亡くなった時に『要らない』って言って放置されていたモノをリ
「言葉では上手く表現出来ないな……。この世の物とは思えないほど綺麗な青い色と白い塩の結晶がどこまでも広がる世界なのだけれども……」 そんな場所が有るなら是非行ってみたい、もちろん最愛の人と一緒に。「ドキュメンタリー番組を録画してあるのだけれど、デザートを
「これらは何ですか?」 最愛の人の細く長い指が野上さんの手首を掴んでいる。しなやかな指だが世界的な認知度を誇る心臓外科医だけあって握力は人並み以上だ。 造花が引き抜かれた大きな花瓶が転がっていて、その中にはダイヤやルビーなどの指輪やネックレス、そして一万
「自宅に送って頂くか紙袋はこの百貨店のものに変えられませんか?」 ブランドに興味の有る人が見れば一目瞭然の紙袋を持って歩くのは避けたい。何だかこんな嵩(かさ)高いオレンジの紙袋を持って歩くのはチンドン屋並みに目立ってしまうだろうし、ナースなどに見られたら病
「あれは直哉が瑠璃子さんとの結婚が決まってからです。瑠璃子さんのことを大変に気に入ったあの人が『うちにお嫁に来るからには相応の家を建てないと』と珍しく張り切りまして……。瑠璃子さんに相応しい瀟洒(しょうしゃ)かつ豪華な家にしたいと……。元々あそこはあの人の
ただ、内心の葛藤を表情に出すのは祐樹自身の矜持が許さないので、周囲の席に視線を転じた。「あの、このスケジュール帳の来年の分はまだ有りますか?」 心配そうに割と大振りの革の手帳をバッグから出している女性が居た。外側はそのままで一年ごとに中身を入れ替えるこ
「……ただ一つだけ心当たりがあると申しますか……、杞憂かも知れないのですけれど」 佳代さんが言いにくそうな感じで口を開いていたので視線を転じた。野上さんの不審な点は後で聞こうと気持ちを切り替えた。「あの人と直哉さんの間で確執(かくしつ)が有ったのは事実です
扉の外で並んで店内の様子を見ている時にはスタッフが名刺を出している場面は一切見なかった。 それなのに名刺入れから完璧なビジネスマナーで出して恭しく差し出されると祐樹も出さないといけないのかと真剣に悩んでしまった。Aiセンター長になってから医療機器メーカー
「心臓に負荷が掛かるような出来事が最近ありましたか?」 祐樹が唇に手を持っていく時にはどういう心境かを知悉している最愛の人が怜悧な口調で尋ねている。「会社を経営していると色々な厄介ごとは日常茶飯事ですけれど……。私(わたくし)が連帯保証人になることで銀行か
なんだかワクワクしている感じと恐怖みたいな表情を浮かべた女性が店員さんに話し掛けると、店員さんはバックヤードと思しき所に消えていく。そして直ぐに戻って来たかと思うと申し訳なさそうな表情でその女性に何かを告げている。お礼を言ったと思しき女性は落胆めいた、
「あれは確か五年前だったと思います。私(わたくし)の記憶だけでは心もとないので野上さんを呼びますわ……」 佳代さんが銀のベルを優雅に振った。こういう点がこの豪壮なお屋敷に相応しい。最愛の人にだけ読めるように念のため英語の筆記体で書いた「彼女の装身具に注意し
柏木先生は――今の奥さんとの結婚式と披露宴で判明したが――良家の子弟だ。だから色々な観光地を訪れているに違いない。そういう人が言うのだから説得力はある。停年後の楽しみとして取っておく方(ほう)が良いのかも知れない。一か月もの休みを取ることは今のところ不可
眉間の皺(しわ)がより深くなった。存在すらも許せない愛人に湯水のようにお金を使われたとか、それ以上に遺産相続の権利を与えた故長楽寺氏が許せないのだろう、多分。「納得出来るわけがないでしょう……。ただ、弁護士と税理士の先生方も遺言書がなければどうしようもな
「はい。お言葉有難うございます。香川教授もお健やかに。お先に失礼します。田中先生も相変わらずお元気そうで何よりです」 そう言って足早に去って行く中村先生は何か急ぐ用事とか仕事があるのだろう。「よ、ご両人。相変わらず仲が良いな」 聞き覚えが有り過ぎる声が背
「あの人は割と大雑把な人でしたの。会社の住所が記されたクレジットカードの明細書兼請求書を他の書類に紛れ込んでいたのを気付かずに家に持ち帰ったのです。そして瑠璃子さん――長男の嫁ですが、当時から別居しておりました――名義の家族カードの明細には信じられない額
「愛する祐樹とイブの時間を過ごせれば良いので、部屋は特にこだわりがないな……」 健気な言葉を紡ぐ最愛の人に口づけを落とした、クリスマスプレゼントは何が良いだろうなと思いながら。最愛の人の場合は金額の多寡(たか)などではなくて、そしてブランドなども関係なく、
「ざっくり言うと時給計算だ。一時間5千円を支払っているが、スタッフさんにはどの程度の時給が支払われるのかは分からない。ただ、秘密厳守だし、部屋にある貴重品が――といってもウチにはそんなに値が張るものも置いていないが――無くなるようなことは一切ないとの折り
すみません!!リアル生活(仕事)多忙で先ほど帰宅しました。今から原稿を書きますので、更新は二時間後になります。お待たせして申し訳ありませんが何卒ご容赦頂くようにお願い致します。 こうやま みか拝にほんブログ村小説(BL)ランキング
「玄関のクリスマスリース、お作りになったのですか?」 ホクホクと甘いカボチャのポタージュスープとか目にも鮮やかなサラダやこんがりと焼けたトーストの上にバターが黄金色に溶けていく様子を目と口で楽しみながら聞いてみた。 野戦病院さながらの救急救命室勤務が終
「いえ、あの日は私と野上さんが――先ほど挨拶した家政婦ですが――キッチンで三時のお茶を嗜んでいる時に書斎で物が倒れるような大きな音がしまして駆け付けましたの。来客が居ないのも確認していますし、キッチンからは全て見える家の構造ですからこっそり呼んでも直ぐに
「お早うございます」 実際のところ30分程度早く目覚めて祐樹の胸に頬を預けた格好で満足そうな笑みを浮かべて寝入っている人を飽かずに眺めていたのだが、昨夜の愛の交歓の余韻の残る薄紅色の目蓋(まぶた)が動いたのでそう告げた。「祐樹……お早う……」 昨夜の行為が
最愛の人と祐樹にこんな無茶振りをしてきた森技官の恋人の呉先生は優秀な精神科医で親しい友人の一人だが――もしかしたら類は友を呼ぶ的なモノかも知れない――血を見るのが苦手で学生の頃には嘔吐したという黒歴史を持っている。 祐樹がメンタルを病むことは多分ないだ
「相変わらず素敵でした……。いや私が愛する聡の極上の花園に丹精を込める度に開花をどんどん無垢かつ淫らになって咲き誇って行くようです……」 息が収まると、紅色の唇や首筋そして耳朶(じだ)にキスの雨を降らせた。後の戯(たわむ)れも愛の交歓の愉しみの一つだったので
「え?」 長楽寺佳世さんは唐突な質問に少女のような感じで目を見開いている。眉間の深い皺(しわ)さえなかったら、筋肉質っぽいスリムな体形と溌溂とした動作で実年齢よりも遥かに低く見積もられる印象なだけに、尚更(なおさら)そういう印象が強くなる。 昨夜会った西ケ花
「ゆ……祐樹っ……悦(い)っいっ」 甘く蕩けたやや高い声が紅色の唇から零れて部屋の湿度を高めていく。 二つの尖りを根本から先端まで強く弾くと花園の凝った蕾がより強度を増して祐樹の最も敏感な部分に当たっている。人体の仕組みは当然良く知っているが、最愛の人との
最愛の人の淹れてくれるコーヒーは世界一だと思っているが、祐樹は断然コーヒー党なので紅茶はそれほど飲まないのを知っている最愛の人は家でも紅茶は淹れない。だから思わず言ってしまったのは本音だった。最愛の人も美味しそうに嗜んでいるし。「お口に合って本当に良か
申し訳ありません。それでなくとも更新時間がまちまちになって読者様には要らない手間をかけ続けているというのに、土曜日更新は全然出来ておりません。リアル生活でバタバタしており、その上寒暖差に身体が付いて行かずで……発熱(37℃8ですけれど、平熱が35℃程度なので
「初めまして。K大附属病院の香川と申します。夜分にお邪魔致しまして誠に申し訳ありません」 門を開け放ったので、敷地内の様子がハッキリと分かる。邸宅と呼ぶのに相応しい洋館が同じ敷地に二軒も建っていて、植木屋さんを頻繁に入れているのだろう、イングリッシュガー
最愛の人の極上の花園は祐樹の丹精込めた愛の交歓を重ねたせいで魔性を秘めた場所に変化している。 祐樹も一晩きりとか数か月程度の「職業・住所を明かさない」恋人は居た。しかし、そういう人に「放出するのが早い」と言われたことは皆無だった。 最愛の人の極上の花園
「西ケ花さんのキッチンの棚にはウエッジウッ〇のピーターラビットのマグカップとかがセットで置いてあった。マイセンは小花模様のモノしかなかったな……。彼女が使っていた灰皿も小花模様だった。付け加えるほどの情報かどうかは祐樹が判断して欲しいのだが……」 幾分あ
部屋に入って二人きりになるや否やキスを交わしながら帯(おび)を解(ほど)いて床に落とした。 紅色の素肌に紅葉の赤が映えてとても綺麗だった。それに普段よりも更に紅さを増して尖った二つの尖りが蠱惑的なルビーの煌めきを放っているのも最高にそそられる。「ベッドで良
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「お口に合って本当に良かったです! 日本の方(かた)は繊細な味付けを好むと聞いていますので、とても心配していました」 ルイス君は安堵したように笑みを浮かべている。 この英国貴族の邸宅の趣味の良い主人の私室みたいな空間に居るのがルイス君ではなくて最愛の人だと
「見事な借景(しゃっけい)になっている、な……」 愛の交歓の甘い残り香と余韻を余すところなく纏った薄紅色の肢体に純白のシルクが映える最愛の人も祐樹の傍らに立って潤んだ目を瞠っている。「そうですね。見事な日本式のお庭の灯篭の間に『五山送り火』の一つの『大』の
「では、フロントにいらしてください」 以前はホテルに入ると内線電話は繋がったし、何なら外からでも通話出来たのだけれども、個人情報漏洩とかそういう観点から見直されたのかも知れない。「はい、宜しくお願いします」 別に疚しいこともないのでボーイさんに付いて行っ
そうだ、黒木准教授に手術の成功と、何だか物凄く思い入れの有りそうなオクスフォード大学のアカデミックガウン姿のルイス君の画像を送ろうとスマホを操作した。 LINEに大学関係者からの連絡がないのは時差の関係もあるだろうが、皆が遠慮しているのだろう。 そう言
呉先生が北教授に続いて海外の学会に何度も招聘されるとなれば、それでなくとも呉先生を買っている斎藤病院長覚えがますます目出度くなるだろう。 北教授も救急救命室の責任者だが、災害医療の第一人者として病院に居ないことの方(ほう)が多い。大規模災害が起これば現地
「勿論です。ね、スタンリー先生も是非京都にいらして下さい。『チーム・セイブ』の一員ですから」 やっと無事に国際公開手術の術者を務め上げたという実感がわいてきて、肩の荷が下りた爽快な気分だった。 最愛の人と肩を並べることが出来る外科医に一歩近付けたという胸
「人工心肺は貴方みたいに手技の劣る外科医御用達のモノだということをご存知ないのですか?それに脳梗塞や腎不全などの合併症を引き起こしやすいというのは常識ですよ。 この会場でそんな馬鹿なことを言っている暇があるならアメリカの南部の田舎町に帰って手技を磨くこと
質問者の顔は見えないがアメリカ英語の彼は絶対に額に青筋を立てているか顔を真っ赤にしている語気の荒さだ。尤もそんな顔は見たくもないし、見る時間も勿体ない。「人間の手というのは不思議なものなのです。ホチキス(ステープラー)も広義では機械ですよね?狭義では道具
チケットを見て自分が乗るべき車両を見ると赤色だった。 ロンドン行がその色で統一されているのか偶々(たまたま)なのかまでは調べていなかったが、自分が惹かれて止まない祐樹の太陽のオーラは赤色と黄色だ。 そして日本の百貨店で祐樹にと選んだバーバリーのスーツに合
「その通りです。これ以上肥大が進行しないためにも壁を作る必要が有るのです。 肥大を防ぐために網目状(あみめじょう)に編んだフィラメント糸を被せる術式も有りますが……?」 依然として祐樹の目は周りのあらゆるものがゆっくりと進行していくように見える。そして、何
シャルルドゴール空港の近未来的な建物は流石「芸術の都パリ」の玄関口に相応しいと感心してしまう。 一部分しか見ていないしさほど興味が有るわけでもなかったが、日本だと反対意見も多く出て結局無難な建物になるのは想像に難くない。 テレビで観たルーブル美術館もガ
「メス」 バーキング看護師が鶺鴒(せきれい)のように渡してくれた。 手に馴染んだ大きさではないものの、先程から必死に見ていたし、イメージトレーニンはミラー先生の助太刀のお蔭で充分過ぎるほど補完出来たので違和感は抱かなかった。 祐樹の脳裏に患者さんの心臓を撮
いくらファーストクラスのスーツケースが優先されるとしても、時間はもっと掛かると踏んでいたし、入国審査も多めに見積もっていた。 故に時間はたっぷり残されている。 コウシケとやらは殿下に関係するらしい……となると、皇嗣家のことだろうか……? そして皿婆……
「そろそろ種明かしをしてくれても良いだろう?この患者さんにどういう術式で臨むんだい?」 何だか祐樹を囲む全てが遅くなったように感じる。 そして自分の手術(オペ)が今までイメージしてきたよりも簡単に出来るような感覚を抱いた。 ミラー先生とバーキング看護師の連
食事を終えてコーヒーを飲む。 祐樹は誤解しているようだが、自分が飲むコーヒーはインスタントでも全く構わない。 インスタントコーヒーの粉に単に熱湯を注ぐよりも、2割の湯を注いで粉を入れてスプーンで100回混ぜた方(ほう)が美味になると聞いてから実行している
……といっても、この国賓とか王族などが報道陣の前に姿を現すまでの休憩所とか、マスコミに漏れてはいけない国際問題について密談を交わすために設えられた場所のようだ。 先ほどのある(・・)一定の年齢の女性が運んで来てくれた、自分がずっと祐樹のために作りたいと思
ミラー先生とバーキング看護師が時間を稼いでくれていたお蔭でようやく祐樹にも道具類の微細な差が手と脳にインプット出来た。 国際公開手術の第一助手に選ばれるだけの力量の持ち主のミラー先生は祐樹も非の打ち所がない手技の冴えを見せてくれていた。 きっと数年後に
「ラウンジから軽食をお持ち致しました」 パリ大学で講演会の講師を務める呉先生に自宅マンションで教えていた通りのフランス語訛(なま)りの英語を紡いでいたのはフランス語で言うところのある(・・)一定の年齢の女性だ。 自分も呉先生に同じような発音で呉先生の原稿で、
……スタンリー先生が操作している注射針のサイズは祐樹が普段馴染んでいる物とはサイズがミリ単位であるが異なっている。 この太さは飛行機の中でドクターコールに応えた時に点滴で見たモノと同じだろう。 ということはメスや血管を挟んで仮に止血するペアン鉗子(かんし
「長旅でさぞお疲れでしょう。どうぞ、お部屋でお寛ぎ下さい」 特に疲れてはいなかった。何しろ長いフライトの80%以上は呉先生から貰った薬で寝ていた。 自分はインターネットカフェなるものに行ったことはなかったものの、テレビで紹介されていた。寝泊りする人も多い
「この映画だけは、家のテレビではなくて大きなスクリーンで観たかったので大満足だ。それに何より祐樹と二人で鑑賞することが出来たのもとても嬉しいし……」 仄かな笑みを浮かべて細く長い形の良い指を宙にかざしている。指の付け根部分の肌が紅色に染まっているのは祐樹
「それと、患者さんからの頂き物の焼き菓子が有るのですけれど、甘い物は苦手でしたよね? でしたら出さない方が良いですよね?香川教授にお土産に持って帰って貰いたいですけれども」 空になったコーヒーカップをトレーに載せている呉先生の表情は食べたいなというニュア
いよいよ恋人達が海に落ちるとなった時には、最愛の人と指の付け根まで繋いだ手をギュッと握りしめてしまった。同時に白く長い指にも力がこもっていて痛いぐらいだった。 祐樹が賛美して已まない細くて形の良い指の持ち主だけれども、職業柄力は強いので。 扉のような物
森技官なら5個以上の理由を列挙しても祐樹は驚かないだろう。重ねて言うが性格は難アリではあるものの、頭脳も口も良く回る人間なのは確かなのだから。「二点で終わりでした……。家に置いていると何だか悍(おぞ)ましいオーラが漂って来るようで嫌ですし、此処(ここ)に置
ダイヤモンド盗難の濡れ衣を着せられた恋人を救おうとヒロインが浸水しているフロアに入って行くところは圧巻だった。 ただ、出会いの切っ掛けになった身投げしようとしたヒロインを説得する時に海水の温度が0℃であることや、そんな水に入ったら体中に激痛が走ることを
「厚労省は労働者の権利も守るためのお役所でもあるのはご存知ですよね。 実際は勝手に良く効く薬を廃止して、在宅で通院しても良かった患者さんに入院を余儀なくさせやがるとんでもないことも仕出かしてくれますが!!」 医師は厚労省に対してネガティブなイメージが強い
古くからの読者様はご存知かもですけれども(いらっしゃるのか?)私は阪神大震災では震度5強の場所に住んでいました。その当時は猫を三匹飼っていまして、家中で最も温かい(電気代は負担していました)私の個室で寝ているのが常でした。(地震が起こったのは1月17日)夜
「すみません……。つい欲情してしまって……。本来ならばこんな場所でこういうことをすべきではないのも分かっている積りだったのですが」 祐樹が舌で湿らせた場所に囁き声で告げると、白く長い指を薄紅色の唇に噛ませていた最愛の人が艶やかな眼差しで祐樹を見降ろしてい
「仕事関係だったら、何故ここにこんな物を置く必要が有るのでしょうか?」 久米先生だったら泣いて喜ぶかもしれないけれど、祐樹的には原色のけばけばしさとナイロン製と思しき下着のペラペラ感じと下品な意匠にうんざりしながら聞いてみた。 呉先生は薫り高いコーヒーを
「爵位って継げないのですか?あのヒロインとかが……?」 キャラメルポップコーンを嬉しそうに口に運んでいる最愛の人に囁き声で聞いた。「イギリスでは男性しか爵位は継げない決まりだな。女性しか後継ぎがいない場合、爵位は返上することになる。ちなみに、王様とか皇帝
「ああ、室内着的な……所謂(いわゆる)ユニセックスのような感じなのですか?透け透けのとか、Тバックとか呼ばれているのとかそういうのではなくて?」 久米先生が大好きそうな下着を呉先生が心の底からうんざりしている感じで言っている。 久米先生は実際にТバックとか
スクリーンでは「キャビアは嫌い」と言い切ったヒーローの言葉にキスを中断した。 それほどまでにほとほと感心してしまったので。 祐樹も外科医として集中力は何分割も出来るので仄かなキャラメルの甘く苦い味のする接吻に酔いしれながらもスクリーンから流れる英語は聞
「これは呉先生、新館にいらっしゃるなんて珍しいですね……」 森技官の恋人でもある不定愁訴外来のブランチ長が――と言っても医師は呉先生一人で看護師も一人というこじんまりした外来の――満開のスミレの花の風情で笑いかけて来た。「ええ、万が一真殿教授と鉢合わせし
上流階級の――特に爵位を持ったヨーロッパの人やアメリカ人でも成金と呼ばれていない人――選民意識は物凄く高かったのだなと思い知らされた。 フランスから乗り込んで来た成金の女性は他の女性から思いっきり避けられていたし。 そんな細かいことを気に病む女性(ひと)
「ああ、彼女は可憐なピンク色なのですね、乳首……」 カマをかけただけだし、久米先生のように岡田看護師が現れるまでは年齢イコール彼女居ない歴だった人が色素沈着をしてしまったソコを見ると、今までの二次元の彼女(マイフェアレディ)達は皆が綺麗なピンク色だっただけ
「確か1901年から1904年までだったと思う、あまり自信がないけれども」 祐樹の指からポップコーンを口に入れた最愛の人が花よりも綺麗な笑みと弾んだ囁き声で教えてくれる。 ただ、最愛の人が「あまり自信がない」と紡いだ言葉は額面通りに受け取られない。という
「お返しにさ……。高級シルクのランジェリーなどはどうだ?ナイトウエアでも良いけれども。ほらデートもままならない寂しい田中先生はさ、ZOOMとかで会話しているのだろう?絶世の美女でスタイル抜群な彼女さんにさ『セクシー』なランジェリーを贈って着てもらったのを
例えばクリスマスの樅ノ木(もみのき)と赤いリボンはとても良く合う。 最愛の人と行く第二の愛の巣というべきホテルでなくとも、各病棟に飾ってある100均ショップの――何しろ事務局長が「経費削減」と二言目には言うので経費内で買うならその店限定だ――品物でも素材
それにしても最後尾の座席、しかも前列に観客なしという状況はかなり美味しい状況なのではないだろうかと思ってしまう。 映画上映中に後ろを向く観客など普通は居ないし――余程のマナー違反、それこそスマホで話すとか今しているような囁き声ではなくて普通の音量で会話
最近の原作付きのドラマ・アニメは忠実に描く方向に舵を切ってくれたのは誠に喜ばしいです。アニメ・ドラマオリジナルも原作愛に満ちていて良きです。 「没日録」を吉宗が読んだ時点で御右筆の村瀬が老衰のために死亡したのがドラマでは変死だった上に9話では忘れ去られた