タロベエの疾走
タロベエは、あぜ道をひた走っている。その顔はぶんむくれていて「オイラは今、カンカンになって怒っているんだい!」という明確な意思表示をしている。なぜタロベエがそこまで怒っているのかはわからないし、そもそもの話、なぜ走っているのかもわからない。人の感情や行動の一々に対して、理由を求めるのは野暮だ。だが、それでもなお探りたくなるのが人間の性である。 しかしながら、現今のタロベエは疾走と憤怒に専心しているので、理由を探ることは叶わない。探求するためのよすががないのだ。「物には時節」ということわざを持ち出すまでもなく、今はそのときではない。タロベエが歩みを完全に止めて、怒りの感情を存分に発散した後に、理…
2023/07/02 01:30