実家を大掃除 後編
実家に到着すると、いつもの賑やかな家族の声がない。 庭に出るとトマトがなっている。トマトだけが、いらっしゃいと語りかけてくれる。大掃除のご褒美かのように毎日ひとつ収穫しては、ひと口で食べる。甘い。 大掃除を始めて気づいたことは、この家には世間でいうところの宝物、貴重品が一切ない。あるものは、ただただ大量の写真と手紙と年賀状である。年賀状が毎年400枚くらい来る。母がそろそろやめたいといっても父が聞かない。年賀状を宝物のように保管している。嫌になるほどの量である。旅行写真や親戚との写真、昔のモノクロアルバムがどの部屋にも無造作に置いてある。懐かしく引っ張りだしては眺めてそれきりのようだ。写真や手…
2020/09/04 17:18