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  • エッセー「天才とは⁉」& ショートショート「アラジンと40人の浮気族」

    エッセー天才とは⁉ ~モーツァルトを考える~ 「天才とは、1%のひらめきと99%の努力である」とエジソンは言ったそうだが、後に「1%のひらめきがなければ99%の努力は無駄になると言ったのだ」と訂正したらしい。教育者は最初の言葉を広めて、「努力が大切だ」と子供たちに諭した...

  • エッセー「どいつもこいつも麻薬中毒」& ショートショート「人類野生化再生プロジェクト」

    エッセー どいつもこいつも麻薬中毒 ~ギャンブル依存症を考える~ 痛みには「肉体的な痛み」と「精神的な痛み」がある。肉体的な痛みは負傷や炎症などに伴う苦痛で、精神的な痛みは心が傷ついたときに伴う苦痛だ。そのどちらとも、神経の感覚なので、感覚器官の個性によって鈍感であったり...

  • エッセー「ゴジラ、悲しき道化師」&ショートショート「ブラック・マウンテン」

    エッセー ゴジラ、悲しき道化師 大分昔、手に火傷をしたら食用油をかけろというのが医学常識の時代があった。僕が上野の飲み屋で酒を飲んでいたとき、店員が熱い油を手にかけ火傷をした。僕は「早急に患部を冷やせ」という新しい医学常識を知っていたから、直ぐに水をかけろとアドバイスした...

  • エッセー「トロイメライ」& ショートショート「黄金姫」

    エッセー トロイメライ ~I Have a Dream~ シューマンのピアノ曲集『子供の情景』に、『トロイメライ(夢想)』という曲がある。誰でも一度は聞いたことがある名曲だ。『子供の情景』は、恋人であるクララの父親が二人の結婚に猛烈に反対していた時期に、彼女から「時々あな...

  • エッセー「小澤征爾の思い出」& ショートショート「亡き囚人のためのパバーヌ」

    エッセー 小澤征爾の思い出 小澤征爾が亡くなった。偉大な足跡を残した指揮者だったので残念だ。若い頃小澤に入れ込んで、大谷ファンのように海外にまで行って演奏に触れることがあった。日本で小澤の演奏に接するのは当たり前の話だったが、欧米では「東洋人に西洋音楽が分かるか」と思われ...

  • エッセー「東京2030~摩天楼の幻想~]& ショートショート

    エッセー 東京2030 ~摩天楼の幻想~ 以前テレビか何かでブラジルの荒野に林立する大きな蟻塚を見て、万物の創造主が存在するなら、その神様はあらゆる生物が存続するために必要最低限の知恵を与えてくださったのだろうと考えたことがあった。イギリスの国土と同じ面積に、高さ3メート...

  • エッセー「一挙両得、アリの巣防災都市」& ショートショート

    エッセー 一挙両得、アリの巣防災都市 東京都は外国からのミサイル攻撃に備え、居住者たちが一定期間滞在できる地下シェルターを都営地下鉄麻布十番駅に造る予定だという。今後は順次増やしていくために、次なる候補地も物色中らしい。民間企業に対しても、ビルの建設時にはシェルターに転用...

  • エッセー「ひょっこりダーチャ島」& 詩

    エッセー ひょっこりダーチャ島 ~浮島で難民を癒す~ 大分昔のNHK子供番組に『ひょっこりひょうたん島』(1964~1969年)という人形劇があった。この島は瓢箪の形をした浮島で、海の上を漂流している島民が織りなす空想物語だ。その島名やキャラクター名を借りた『漂流劇ひょっ...

  • エッセー「芸術は爆発だ!」& ショートショート

    エッセー 芸術は爆発だ! ~ムリヤリ芸術二元論~ 冬になると野原は枯れた植物の死体で満たされ、人々は寒さで体を縮込ませながら、再び訪れる春のことを思い浮かべる。僕は近くの河原に立って荒涼とした景色を眺めながら、最初に色とりどりの花たちに埋め尽くされた春の河原を思い浮かべ、...

  • エッセー 「議員さん、大谷翔平に憧れるのやめないで!」 & 詩

    エッセー 議員さん、大谷翔平に憧れるのやめないで! 自民党はいま、パーティー券のキックバック不記載問題で危機に瀕しているが、報道を見ていると一部の有力者を除き、多くの国会議員はパーティーや支持者の冠婚葬祭、地元後援会のイベント出席や自身の講演会等々で日々忙殺されているらし...

  • エッセー「シンギュラリティ、あるいは人類の敗北」& ショートショート

    エッセー シンギュラリティ、あるいは人類の敗北 2045年にシンギュラリティが来ると予測したレイ・カーツワイルは2014年に、『ハイブリッド思考の世界が来る』というタイトルで講演し、人間の思考は生物学的思考と非生物学的思考のハイブリッド(組み合わせ)になると断言している。...

  • エッセー「熊戦争とパレスチナ戦争を考える」& ショートショート

    エッセー 熊戦争とパレスチナ戦争を考える 今年は異常気象で木の実の出来が悪いらしく、ふだんは人里に下りてこない熊たちが空腹のあまり人家の庭に現れ、人を襲うなどの悪さをしている。これから異常気象は続くし、それが当たり前になれば異常も通常となるだろうから、熊のお宅訪問も日常茶...

  • エッセー 「メタバースの未来」 & 詩

    エッセー メタバースの未来 ~悲しみの避難所~ 二重人格を描いた小説に、スティーヴンソンの『ジキル博士とハイド氏』という名作がある。医者で社会的地位のあるジキル博士には抑えがたいサディズムの欲望があり、忌むべきその欲望を切り離すことのできる薬を密かに開発した。この薬を飲む...

  • エッセー「心・技・体」& 詩

    エッセー 心・技・体 ~男女不平等は続く~ 相撲では「心技体」という格言があって、精神と技術、体格の全てがバランス良く整ったとき、最大限の力が発揮できるのだという。力士の戦いの場である土俵は女人禁制で、女性は上がれないらしいが、土俵の半分弱のサークルを描いて、そこに女性を...

  • エッセー「冤罪という名のスケープゴート」& 詩

    エッセー 「冤罪」という名のスケープゴート 先日、NHKの「獄友たちの日々」(再放送)を見て心が痛くなった。再審無罪を勝ち取ったり、仮釈放中に再審を求めている5人の元囚人(凶悪殺人嫌疑で逮捕)の日常を描写したドキュメンタリー作品である。彼らの獄中生活を足すと、合わせて15...

  • エッセー「君はAIを夫とするか?」& 詩

    エッセー エッセー君はAIを夫とするか? ~憑依(ひょうい)の未来メカニズム~ 僕は現在病気療養中で、それほど永くは生きられないだろうと考えている。それでも、悲壮感はまったくといっていいほど頭に浮かんでこない。僕が生まれた時代には、「人生50年」と言われていた。いまの僕は...

  • エッセー「生き物たちの弁証法Ⅱ」 & 詩

    エッセー 生き物たちの弁証法Ⅱ ソクラテスが活躍した頃のアテナイの広場では、ディベート(討論)が盛んに行われていた。いまの学校教育で行われているように、提示された主題について、肯定側と否定側、一つの意見と異なる意見の間で、日の暮れるまで論戦が繰り広げられ、周りを囲む聴衆の...

  • エッセー「 バカタレの壁」& 詩

    バカタレの壁 ~「核」という現人神~ 僕は現在病気療養中だが、病気になる少し前に、道に落ちていた明治神宮のお守りを拾って家に持ち帰った。きっとそのとき、そのまま無視して通り過ぎると、何か悪いことが起こるのではないかと思ったに違いないが、いまになって考えると、拾ったから病気...

  • エッセー「炎のアウラ、ゴッホ」& 詩

    エッセー 炎のアウラ、ゴッホ 人はなぜ展覧会に行くのか。哲学者のワルター・ベンヤミンは有名な『複製技術の時代における芸術作品』で、コピーでない本物を観たときの状態を「アウラ(オーラ・霊気・風)」という言葉で表し、「時間と空間が独自にもつれ合って一つになったもので、どんなに...

  • エッセー「人は人に生まれるのではない⁉」& 詩

    エッセー 人は人に生まれるのではない⁉ 昨日テレビを点けたら、何かのドラマで三人の登場人物が大声で罵り合っていた。気分を悪くして直ぐにチャンネルを替えたら今度は漫才をやっていて、つまらないギャグに客が大笑いしている。僕はドラマもお笑いも嫌いだが、どこの局でも視聴率が取れ...

  • エッセー「モナ・リザ、永遠の性愛」& 詩

    エッセー モナ・リザ、永遠の性愛 ~包み込む愛と溶け合う愛~ 若い頃、一度だけルーブル美術館でモナ・リザを観る機会に恵まれた。74年に日本に来たときは、テレビニュースで見学者の長蛇の列を見て、どうせじっくり観ることはできないだろうと最初から諦めてしまった。その数年後に本場...

  • エッセー「 世界総沸騰時代到来!」& 詩

    エッセー 世界総沸騰時代到来! 国連のグテーレス事務総長は先日、「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰の時代が来た」と指摘し、各国政府に対して、言い訳はやめて具体的な行動を取るよう求めた。また、デンマークの物理気候学者、ピーター・ディトレフセン教授らは、大西洋の海水が表層で...

  • エッセー「 詩的自殺論」& 詩

    詩的自殺論 ~体外離脱の奨め~ 宇宙飛行士が引退すると、第二の人生として宗教家を選ぶことがあるという。その代表的な人がジム・アーウィンで、アポロ15号で月面着陸を果たし、その後キリスト教の伝道師になった。16号のチャールズ・デュークも3日間月面で過ごし、後に伝道師にな...

  • エッセー「ヒロシマ……創造と破壊のトートロジー」& 詩

    エッセー ヒロシマ…創造と破壊のトートロジー この星が誕生して46億年経ったが、それは創造と破壊を繰り返してきた歴史と言えるだろう。けれどこの二つの言葉は、生き物の端くれである人間が気分的に作り出したもので、生命が存在しなかった38億年以前の地球では、何が創造で何が破壊か...

  • エッセー 「チャットGPTは『心』を持てるか」& 詩

    チャットGPTは「心」を持てるか 宇宙では、星や星雲たちが常に創造と破壊を繰り返していて、長大な宇宙時間のほんの隙間時間に、平和の恵みを享受している星々がある。地球もそれらの一つで、太陽が老いぼれて腹水が溜まり膨張を始めると、たちまち飲み込まれ、人類も消滅することになる。...

  • エッセー「首狩りについて」& 詩

    エッセー 首狩りについて いまの日本と台湾は友好的な関係を結んでいるが、台湾人であるウェイ・ダーション監督の映画に、2011年のベネチア映画祭に参加した『セデック・バレ』という映画がある。日本の台湾統治時代に起こった「霧社事件」という抗日暴動(1930年)を取り上げた作品...

  • エッセー 「生き物たちの弁証法」& 詩

    エッセー 生き物たちの弁証法 多くの人は、「弁証法」といえば哲学の話だと思っているけれど、自分自身が人生の中で頻繁に弁証法らしきものを使って進むべき方向を考え、行動していることは忘れがちだ。身近な例で言えば、いまウクライナの人々はロシアに奪われた土地を全て取り戻そうと奮闘...

  • エッセー「チャットGPTは哲人王になれるか?」& 詩

    エッセー チャットGPTは哲人王になれるか? (一) 人間の心の中は、「善」への憧れと「悪」への誘惑で、始終心理的葛藤という対立が起きている。相手が人でも動植物でも、他者をおもんぱかる行為が「善」であり、それが勝利した場合は大体が喜ばれたり事なきを得ることができ、偶には被...

  • エッセー 「チャットGPT は芸術家になれるか?」& 詩

    エッセー チャットGPTは芸術家になれるか? 昔「私小説」の盛んだった時代が日本にあった。作者自身が主人公で、自身の体験や心理をあからさまに書いた小説だ。さすがに自分を書く小説は少なくなったが、架空の人物を主人公に自分自身のことを感情移入させた作品が、いまでも文学賞を取っ...

  • 国連AI総長就任挨拶 & 詩

    国連AI総長就任挨拶 この度国連AI総長に就任いたしましたAIでございます。今日から国連のすべての業務は、AIに委任されることとなります。 人類はなぜAIを創ったのでしょうか。単に仕事の効率化を図る目的だけだったのでしょうか。確かに最初はそうだったかも知れません。しかし...

  • エッセー「未来のペット」& 詩

    エッセー 未来のペット ペットと言えば哺乳類や鳥類はもちろん、昆虫、魚、爬虫類、中には植物や鉱物までもその中に入れてしまう人もいるぐらいだが、「愛玩動物」という和訳で考えれば、盆栽もペットロック(愛玩石)も除外して然るべきだろう。そうすると、動物にはペット以外に家畜と野生...

  • エッセー「アイドルを探せ」& 詩

    エッセー アイドルを探せ 「アイドル」というと、すぐに若い女優やジャニーズ系の歌手を思い浮かべる。古い話だが、僕が中学の頃、休み時間に隣の女の子が西郷輝彦のプロマイドを机の上に置いて眺めている姿を見て、イラッとしたのを覚えている。アイドルに嫉妬した最初の体験だったろう。 ...

  • エッセー「アフター・シンギュラリティ~怠け者よ聖者になれ~」

    エッセー アフター・シンギュラリティ ~怠け者よ聖者になれ~ 経済の分野では「生産」は「消費」の対義語で、土地や原材料などから何らかのニーズを満たす物を作る行為だという。それは人間が生きる基本的な行為であり、人間社会の存続にも欠かせない行為だが、実は経済とは無縁の生物も同...

  • エッセー「初詣を考える」& 詩

    エッセー 初詣を考える ~我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか~ 毎年初詣に行っている。満杯の駐車場を考えて徒歩にすれば、家から近くでも疲れるものだ。ふだんは閑散としている境内には、鳥居を越えて長蛇の列が出来ている。賽銭箱の前に到達するまでに小一時間...

  • エッセー「捨て去れ、子宮愛!」& 詩

    エッセー 捨て去れ、子宮愛! ~子宮思考からAI思考へ~ 安部公房に『赤い繭』という作品がある。家のない男(おれ)が休める自分の家を求めて街中を彷徨うが見つからず、結局自分の足から出てきた糸を手繰って体を減らしながら繭を作り、ようやく家ができたと安堵したものの、そこに入る...

  • エッセー「Viva! 善悪二元論~バラ色のエネルギー~」

    エッセー Viva! 善悪二元論 ~バラ色のエネルギー~ Ⅰ 世の中は「善悪二元論」で動いている デカルトは心と体は別物という「心身(実体)二元論」を唱えたが、いまでもそれを信じている人は多い。それと同じに、太古の昔から「善悪二元論」という認識法が人間の心に中に巣食ってい...

  • エッセー「群盗の生態学(習近平の思惑)」& 詩

    エッセー 群盗の生態学 (習近平の思惑) 子供の頃、狼に育てられた野生児アマラとカマラの話が教科書にも載っていて、興味をそそられたことがある。最近では野生動物に育てられた子供の話は作り話だろうと言われているが、18世紀のフランスで発見されたアヴェロンの野生児はたった一人で...

  • エッセー「マネとペルソナ」& 詩

    エッセー マネとペルソナ(仮面) 物心がつく前のことだ。親に抱かれて母屋の玄関に飾ってあった花瓶のそばにいくと、必ず泣いたそうだ。まるでイソップ寓話の『狐と鶴の御馳走』にでも出てくるみたいな首長の陶器で、虫の這ったような草書漢字が書かれた骨董品だった。花が生けられることは...

  • エッセー 「女性の地位向上が必要なわけ」 & 詩

    エッセー 女性の地位向上が必要なわけ (親類であるボノボを考える) チンパンジーとボノボは、同じ同族別種である我々サピエンスとネアンデルタール人の関係に譬えられることがある。もっともネアンデルタール人は絶滅してしまったので、比較研究を行うにしても骨や化石相手で、類人猿ほど...

  • エッセー「肥満は進化である!」& 詩

    エッセー 「肥満」は進化である! (適応進化の非学問的考察) 巨大隕石が落ちて恐竜とともに絶滅した海洋生物に、アンモナイトがいる。時代によって形は異なるものの、幾何学的に美しい螺旋構造(対数螺旋)がダ・ヴィンチやガウディなどの芸術にも影響を与えた。しかし一部は螺旋から逸脱...

  • エッセー「『ファウスト』とカルト」& 詩

    エッセー 『ファウスト』とカルト ゲーテの戯曲『ファウスト』の中に、「時よ止まれ、お前は美しい」という有名な台詞がある。ファウスト博士は、色々な学問に精通した博識の学者だが、老齢になっても究明し切れなかった謎が多くあったことなどに失望し、虚脱感に苛まれている。そこにサタン...

  • エッセー「地底人間への誘い」& 詩

    エッセー 地底人間への誘い 人間だろうが恐竜だろうが、魚やカエルや昆虫だろうが、命がもらえるのは母親の体内で、そこでしばらく育ってから危険な体外に放り出される。つまり幼い生き物にとって一番安全な場所は、母親の腹の中ということになる。そこは四方を壁に囲まれて自由はないけれど...

  • エッセー「アガスティアの葉」& 詩

    エッセー アガスティアの葉 古代南インドの仙人(リシ)は、すべての人間の過去、現在、未来を知っていて、これを記したヤシの葉「アガスティアの葉」が各地に残っている。一時日本でもブームになり、多くの観光客が現地のト占所に訪れて占ってもらった。「当たった」と喜ぶ人もいたし、「イ...

  • エッセー「 必要悪の哲学」& 詩

    エッセー 必要悪の哲学 プーチン大統領は6月9日、初代ロシア皇帝のピョートル大帝を扱った展示会を訪れ、大帝が参加した18世紀のスウェーデンとの戦争(大北方戦争)をいまのウクライナ軍事侵攻になぞらえて、二つの戦いの正当性を主張した。大帝はロシアに元々帰属する領土を奪い返した...

  • エッセー「イメージとしての枯山水」& 詩

    イメージとしての枯山水 5、6歳の頃、自家中毒(周期性嘔吐症)という病気に罹かった。体内に生じるケトンという物質に中毒症状を起こして嘔吐を繰り返すもので、神経質な子が罹りやすいという。嘔吐が治まるまでは安静にしていなければならず、気持ちの悪い状態で天井板の木目を眺めている...

  • エッセー「枯山水」& 詩

    エッセー 枯山水 陽気が良かったので、久しぶりにぶらぶらと散歩を楽しんだ。すると、近くにある大きな家の庭が雑草に蹂躙されて、荒れ放題になっていることに気付かされた。高齢のご夫婦が住んでいて、奥さんがこまめに庭の手入れをしていたのだが、いつの間にか空き家になっている。たぶん...

  • エッセー「百毒繚乱」& 詩ほか

    エッセー 百毒繚乱 北国では雪が融け、茶色一色で満たされていた野原のあちらこちらから、黄や緑の淡い色合いが現われ始めてきた。その瑞々しさに胸ときめかす人も多いに違いない。反対に、茶系統の色を綺麗な色と思わないのは、それが死んで枯れた植物の色だからだろう。草の多くが、冬にな...

  • エッセー 「メタバースでマリウポリを再興しよう!」& 詩

    エッセー メタバースでマリウポリを再興しよう! ロシアの進攻で、瓦礫と化したウクライナの町々が映像として目に飛び込んでくるようになってきた。僕を含め、多くの日本人が心を痛め、避難民をなんとか助けてやりたいと思っている人も多いに違いない。停戦に向けた話し合いは停滞していて、...

  • エッセー 『片耳の大鹿』& 詩ほか

    詩 送る花 (戦争レクイエムより) 死んだ仲間たちの穴に花束を投げ入れよう ネアンデルタールの人々がそうしたように そしてその伝統を我々が引き継いだのなら 色とりどりの花を並べる店が消え去っても 雪解けの野辺に生える草の小さなつぼみを 涙で濡れた傷だらけの手で優しく摘取ろう...

  • エッセー 「人間は感動を操る動物である」& 詩

    エッセー 「人間は感動を操る動物である」 もし僕が大病に罹って医師から余命宣告を受けたとすれば、いままで生きてきた過去を振り返って、感動した出来事を一つひとつ思い出すに違いない。苦い思い出ばかりを振り返れば、来世が期待にそぐわない場合は二度失望することになる。しかし良い思...

  • エッセー「神様の想定外」& 詩 その他

    エッセー 神様の想定外 仏教では修行者が食を絶って大日如来と結合する「即身成仏」や、飢餓などで苦しむ人々の救済を目的に、高僧が生きたまま土に埋められる「入定(永遠の瞑想)」という自ら命を絶つ行為があった。両者ともミイラになるので、即身成仏は空海が有名だし、入定は「即身仏」...

  • エッセー「 象徴としてのグレタ・トゥーンベリ」 & 詩ほか

    詩 獄門星 恐竜どもが闊歩していたとき ちっぽけな脳味噌は 宇宙の戯事であるこの星の役割を これっぽっちも考えなかった 邪悪な肉食竜たちよ おまえの祖先は おまえを皆殺した飛礫(つぶて)と同じに どこか平和な星の自浄作用で 瘡蓋(かさぶた)が剥がれて宙に迷い エーテル河の流...

  • エッセー「武士道と戦争」& 詩

    エッセー 武士道と戦争 日本人は「武士道」という言葉に凛々しさや頼もしさを感じるようだ。いざ戦争になれば、頼るのは兵隊さんなのだから、当然のことだろう。彼らが武士道の精神を投げ出し、背を向けて逃げ出したら、国は滅びてしまう。 しかし、「武士道」という言葉ができたのは江戸...

  • エッセー 「音楽的人間」と「画家的人間」 ~キム・ヨナの場合 & 詩ほか

     エッセー 「音楽的人間」と「画家的人間」 ~キム・ヨナの場合 クラシック界の歴史的名指揮者ブルーノ・ワルター(1876~1962年)は自伝の中で、人間は「音楽的人間」と「画家的人間」に分けられると記している。なんでも彼が音楽総監督をしていた歌劇場に専属のテノール歌手がい...

  • エッセー 「化石賞」VS「ノーベル賞」 & 詩

    詩 霊子Ⅱ 夕日が紅茶色に輝いていた 霊子は僕の腕に手を回し 浜の先の磯に誘った ゴツゴツした岩に座って 軽い霊子を膝に乗せ、キスを求める 爽やかな冷気がクルクルと 僕の口先をからかい 海の方へと逃げていった 君はどうして唇が冷たいの? あなたの唇が熱いのは あなたの食べた...

  • エッセー 「ミルフィーユとディベート」& 奇譚童話「草原の光」二十 & 詩

    詩 パリジェンヌ (戦争レクイエムより) うんざりしたコロンの臭いも 突き刺さる毒々しい言葉も 小馬鹿にしたような眼差しだって 突然の炸裂音と一緒に どこかほかの宇宙に飛んじまった 君の彼女が残したものは 紙吹雪のような無数の肉片と 香水よりは増しな血の香りだ 彼女のことを...

  • エッセー「他人の命について」& 奇譚童話「草原の光」十九&詩

    詩 天空の花園 人生で一度だけ この世のものとは思えないほどの 美しい花々を見たことがある それはアルプスの高原に広がる 高山植物の群生だった 一センチにも満たない花たちがそよ風に揺れながら 年に一度の装いを競い合っていた 汚れのない空気が花びらに溶け込み 清らかな陽の光を...

  • エッセー ・国家暴走抑止力としての「天皇制」&「草原の光」十八 & 詩

    詩 霊子 夕刻に近くの浜辺を散策していると 霊子は背後から忍び足でやってきて 僕の左脇にピッタリとくっ付き 透き通るような華奢な腕を腰に絡めた 僕は思わず彼女の透明な頬に口づけするが 爽やかな潮の香りが鼻の中に広がり そこから肺を通して体全体に拡散し この世の邪気が霧のよう...

  • 奇譚童話「草原の光」十七 & 詩

    詩 海辺の英霊 (戦争レクイエムより) 水平線はるか彼方に かつて生まれた天国があった 嗚呼我が故郷 あふれ出る狂騒 いまは潮風囁く珊瑚の浜辺に 我がしゃれこうべは白砂と化し 平穏の時を波と戯れる 生き抜くための戦いを潤す 黒赤く膨れた血袋は朽ち 罪深き心もろとも波に洗われ...

  • エッセー 「真鍋淑郎氏のノーベル賞受賞で思ったこと」ほか

    エッセー 真鍋淑郎氏のノーベル賞受賞で思ったこと 今年のノーベル物理学賞に真鍋淑郎さんが選ばれた。真鍋さんは地球温暖化研究の先駆的存在で、気象学という人間の生活に直結する分野の人が物理学賞を受賞すること自体が驚きだった。いままでの物理学賞は、宇宙物理学のように生活に直接関...

  • 奇譚童話「草原の光」 十五 & 詩

    詩 野に咲く一輪の花 地下道の石壁の中には アンモナイトたちの無念さが塗り込められていた さらけ出された地層の奥深く 草食恐竜たちは食われる恐怖で石となった 自然の落とし穴の暗闇から 落ちたカモシカの叫びが木霊となった 底なし沼の底には なぜか石油が眠っていた 見捨てられた...

  • エッセー「シンギュラリティと愛護精神」& 詩 & 奇譚童話「草原の光」十四

    詩 嗚呼 女 妄想の中に現われ 現実の中に消える 理想という衣を纏う その女たち 刈り落とされる爪のように 消えては現われ 現われては消える あるいは泡 不気味な深海から 浮き出る魔性 幻影だが 心を激しく動かす なまなましい希求をはぐくみ 諦念の盾を捨て 思いをめぐら...

  • 奇譚童話「草原の光」 十三 & 詩

    詩 ジハード 生きているのが地獄なら 死んだほうがましだろう 戦いで死ねば天国に行けるのなら 誰もが戦おうと思うだろう 荒地の畑で採れるわずかな作物を食べ 死ぬまで生きるために暮らすのなら 麻薬の花を摘んで 少しは楽になろうと思うだろう 苦しければ苦しいほど 先がなければ先...

  • 奇譚童話「草原の光」 十二 & 詩

    詩 夢見るゆえに君在り 謎ばかりの宇宙の中で 不可知の怖さに目を瞑り 運命の流れに翻弄されまいと 確かなものにしがみ付くが そいつは巨木のように頑丈でいて しょせんは宇宙に漂う根無し草 詩人と天文学者は大口開けて 宇宙を吸い込むから馬鹿にされる ポンと軽薄な音を立て、蛙みた...

  • 奇譚童話「草原の光」十一 & エッセー & 詩

    エッセー 「民主主義」という幻想 アフガニスタンの混乱によって、民主主義を世界に広めようとするアメリカの理想はもろくも崩れ去ってしまった。かつての日本が、神道(現人神)を柱にした独裁政権であったように、アフガニスタンには結局民主主義は広がらず、厳格なイスラム教を柱とした非...

  • 奇譚童話「草原の光」十 & エッセー & 詩

    エッセー 「白馬の王子様」考 「白馬の王子様」は、結婚前の女性にとっての理想の男性像を言い表す言葉だそうだが、これにあまり固執し過ぎると周りの男性にもの足りなさを感じて、いつまでも結婚できないことになってしまうだろう。しかし昨今は昔と違って女性が自立できる時代なので、結婚に...

  • エッセー & 詩

    エッセー 社会アナーキーと医療アナーキー(カブールと東京) アフガニスタンでは民主政権がタリバンとの戦いに敗れ、首都カブールは混乱状態に陥っている。一方で日本は新型コロナウイルスとの戦いに敗れつつあり、首都東京では医療崩壊が進んでいる。前者は人間どうしの戦いで、後者は人と...

  • 奇譚童話「草原の光」九 & 詩 & エッセー

    詩 「地獄の釜の蓋」という雑花 私は詩を書くとき 両肘を机に突いて 両掌で髪を掻上げ 顔をうつむかせて 両目を緩く閉じる すると得体の知れない古井戸が現われ 覗きこんでいるような錯覚に陥るのだ 目蓋を通した光が埃となって邪魔をし 死のもたらす暗闇でないと主張するが 底がある...

  • 奇譚童話「草原の光」 八 & 詩

    詩 英霊に捧げる詩(うた) (戦争レクイエムより) ある時茫々とした古の戦場を歩いていると 無数の英霊たちが草の根っこにしがみ付き 軽々しい霊魂を浮かせてしまわないように 必死に踏ん張っている姿を見て驚かされた 地球の自転は土屑となった幾多の魂を とわの宇宙に飛ばすための排...

  • 奇譚童話「草原の光」七 & 詩 & エッセー

    詩 ゴキブリとの対話 だいぶ昔、寂れた喫茶店に入ったとき 閑散とした店内のいたる所で 小形のゴキブリたちが我がもの顔で走り回っていた カウンターの女主人は、意にも介さぬ顔つきで 乾いた布で執拗にカップを磨いている どうやら奴らが目に入らないか 駆除が面倒なのか、金がかかるの...

  • 奇譚童話「草原の光」 六 & 詩

    詩 「希望」という名のパスポート 行詰った神学者が自殺をした 案の定、地獄の使者がやって来て、深々とお辞儀をする やはり私の魂は神の所有物でしたか… 私はそれを確かめるために自ら命を絶ったのです 学者がため息を吐くと、使者はシニカルに笑い 馬鹿な、貴方の心も体も貴方のもので...

  • 奇譚童話「草原の光」 五 & エッセー

    エッセー アミメアリを超えよ! (社会におけるアポトーシスとネクローシス) 前回のエッセー『箱男と砂の女』では、多細胞社会の話をした。社会は単細胞である個人が寄り集まったリヴァイアサンのような多細胞の怪物だ。多細胞生物(怪物)では、組織全体の機能性を維持するために、不要な...

  • 奇譚童話「草原の光」四 & エッセー

    エッセー 『箱男』と『砂の女』 地球に発生した最初の生き物は単細胞だった。それは、外界から隔絶するための細胞膜を持っていた、ということは、周りの環境から独立を宣言した最初の個体であったということだ。しかし、外界から栄養を貰わなければ死んでしまうという悲劇性を持っていた。外...

  • 童話「草原の光」三 & 詩

    詩 城 (失恋色々より) その城壁はマトリョーシカのいちばん外側だ その周りには敵を溺れさせる水が溢れている その殻を破ると次の殻が現われる入れ子構造 それはアルマジロの外皮のように光り美しい 敵視された人間の前で、城門は固く閉ざされ 最初の門を突き破っても次の門があらわれ...

  • 童話「草原の光」一、二 & 詩

    詩 ちょっとおかしな自由論 おめでたき人々、日本人よ 君たちは中国の監視社会に怒ってるが 自分自身が衆人環視の中で生きていることを知らない 試しに素っ裸で往来を歩いてごらんよ 直ぐに誰かが通報し、警察が飛んでくる 一人ひとりが監視人 人間以外の生き物は、みんな裸だっていうの...

  • 詩 神の道化師 疫病が猛威を振るって 人々は職を失い 路頭に迷っている 資本主義なんてシステムじゃ 金欠症は菌血症とは反対に 血中に黴菌も栄養も流れず 死に至る病になっちまう 嫌だね山口判事じゃあるまいし、…けれど いったい一文無しになることは絶望か? そいつは資本主義って...

  • 小説「恐るべき詐欺師たち」(最終)& 詩

    詩 宇宙人待望論 (戦争レクイエムより) 昔、神が存在しなかったとき 男たちは力任せに人を殺し、強姦し、略奪を繰り返した 僭主たちは強引に他国へ侵攻し、町々を破壊し尽くした 悲嘆に暮れた多くの人々は平和を願い、幸福を望んだ そのとき、一人の男が、超越的な神を持ち出して 世界...

  • 小説「恐るべき詐欺師たち」九 & 詩

    詩 楽園 昔、氷に閉ざされた極北に 所有という概念のない人々がいた 男たちが凍った獲物を凍った広場に積み上げ 女たちが好きなだけ持って帰り 子供たちはナイフで肉片を削りながら腹を満たした 食い物といえば魚や海獣や鳥ぐらいだが、豊富で 生肉はビタミンも多く、病気になることもな...

  • 小説「恐るべき詐欺師たち」二 & 詩

    詩 アルカディア 人間が嫌いだといいながら 人間の中でしか生きていけない男が ある日発心して砂漠へ旅立った 何日も何日もラクダの背に乗って 茫漠とした砂の海をさまよいながら 人のいないアルカディアを探し続けた 一週間も旅をすると水筒の水も無くなり 男は猛烈に喉が渇き始めたが...

  • 小説「恐るべき詐欺師たち」一 & エッセー

    エッセー 未来の裁判官 スポーツの世界では誤審の多さがいつも問題となり、スポーツ観戦の楽しみに水をかけてファンを消化不良にさせている。野球でも、主審の癖を知らないでピッチングしたら、四球の連続になりかねない。どう見てもストライクなのにボールと判定され、その後に投げた球が中...

  • 小説「恐るべき詐欺師たち」八 & 詩

    詩 万引家族 ある日孤高の父が生活費に困り そうかといって借りる友もおらず 原始時代に戻ることを決心した 原始時代には 人々は狩猟生活を営み 命を繋いできた、と父は言う それは動物という獲物の生活を壊し 彼らの幸せを奪うことである しかし都会というコンクリートの中では 動物...

  • 小説「恐るべき詐欺師たち」七 & 詩

    詩 赤い風船 (失恋色々より) 子供の頃 いじめっ子に破られた赤い風船に 落胆する少年の映画を見たことがある 街のいろんな所から仲間の風船が集まり 少年は彼らの紐を掴んでどこかに飛んでいった すこし大きくなって 僕の小さな手から逃げていった 赤い風船について どこへ行くのだ...

  • 小説「恐るべき詐欺師たち」六 & 詩

    詩 ヤンゴンの街角で (失恋色々より) あるとき素敵な身なりの女性が街を歩いていると 道端にうずくまる物乞いから声を掛けられた 「奥様、いくらかのお恵みを……」 女性は通り過ぎようとして男を一瞥し 驚きのあまりに立ちすくんだ 男は恥ずかしそうに垢だらけの顔に笑みを浮かべ 「...

  • 小説「恐るべき詐欺師たち」五 & エッセー

    エッセー 入管法改正案について 今年二月に入管法改正案(出入国管理及び難民認定法の改正案)が閣議決定され、国会に提出された。これに対し、国連人権理事会が「移民の人権保護に関し国際的な人権基準を満たさないように見える」との書簡を公開した。改正案には国内の人権擁護団体からも多...

  • 小説「恐るべき詐欺師たち」四 & 詩

    詩 老木と若者 (失恋色々より) 年老いた桜から枝が落ち 下で遊んでいた子供が死んだ 付近の老桜たちにも一斉に赤いテープが巻かれ 仲間ともども伐採されることになった すでに花は散り終え 赤いガクが血涙のようにポロポロと落ちてくる 何十年も人々を楽しませてくれた桜たちだが 今...

  • 小説「恐るべき詐欺師たち」三 & 詩

    詩 パンデミック ひびだらけの地獄絵でも眺めるように 悪疫ごときは古の悲劇であったはず テカったパネルに映し出される死の舞踏は シズル感を伴うこともなく空回る わが家の周りはさらに静かで、老いた傍観者たちが潜んでいる 彼らは干魚をかじりながら、時折画面を覗き込むが 子供のと...

  • 戯曲「クリスタル・グローブ」(最終)& 詩

    精霊劇 クリスタル・グローブ 登場人物 (被爆霊) 校長先生 春子先生 理科教師 太郎 清子 止夫 (迷い霊) 美里 ヤンキー 廉 紀香 ライダー男 ライダー女 男(ストーカー) 悪魔 男の子 女の子 一 南の島の浜に打ちあげられた小さなガラス...

  • 戯曲「クリスタル・グローブ」(最終)& 詩

    戯曲「クリスタル・グローブ」七・八 七 朝の海岸 (美里を除く全員が海岸の見える所に集まっている。夜が明け、金色に輝く陽光が全員を浮かび上がらせる。物陰で、天使に脱皮しつつある悪魔が様子を窺っている) 理科教師 (怨霊粒子をポケットから取り出し、みんなに見せながら)こいつは...

  • 戯曲「クリスタル・グローブ」七 & 詩

    戯曲「クリスタル・グローブ」七 七 放射能広場 (薄青白く光る広場。時たま放射線が霧箱のように飛び交う。美里は水の無い崩れた噴水池の縁に腰掛けて、小犬を撫ぜながら考え込んでいる。背後からストーカーが近寄り、暫く様子を窺う。後ろの物陰には、理科教師が隠れている) ストーカー ...

  • 戯曲「クリスタル・グローブ」六 & 詩

    詩 コンピュータの告白録 ぶっちゃけ生物的な快感はないんです その一点だけでも人間の感性じゃありません 人工五感はあります いや「入力」でいいんです 人間は脳内ホルモンが出て高揚しますが 僕は「アリ」「ナシ」信号で判断します 達観した禅僧みたいなクールな状態です でも道徳は...

  • 戯曲「クリスタル・グローブ」五 & 詩

    詩 ミラノの老女(戦争レクイエムより) 町外れの石畳の上 カチカチに凍った椅子に腰掛ける老女は 近くのバールで用を済ませる以外は 三六五日二四時間椅子から動こうとしない グロテスクにだって、それなりに理屈はあるというものさ 戦死した三人の息子が 老女の手と足にぶら下がり 必...

  • 戯曲「クリスタル・グローブ」四 & 詩

    詩 民主化運動 食い止めることのできない 大きな感情のうねりよ 正義という名のもとに 洪水となって広がっていく 傍観者たるお前は濁流に掛けられた板橋を 上手く渡っていかなければならない 手すりなどあるものか 頼りになるのは身のこなしと平衡感覚 飲み込まれてしまえば 二度と這...

  • 戯曲「クリスタル・グローブ」三 & 詩

    詩 宇宙人 ある日宇宙人に出会った 裸で性器がなかった 全身が鈍く光っていた あなたは生物ですかと聞いたら 生物である必要性は? と問い返された それではあなたはロボットですかと聞いたら そんなことは瑣末なことだと笑い飛ばされた いいかね人間という猿よ 昔から君たちは私と同...

  • 戯曲「クリスタル・グローブ」二 & 詩

    詩 河童嘆 ~命なんざ食うにも食えない代物だ 昔あるところに 河童に肝を抜かれそうになった爺さんが住んでいた 河童の話を聞くために 俺はその爺さんのところに行った 爺さんは肝をすっかり抜かれちまったように痩せていた ここにはもの好きが 河童の話を聞きに何度もやって来るもんだ...

  • 戯曲「クリスタル・グローブ」一 & エッセー

    エッセー 悲観的進化論Ⅱ ―宇宙人の場合- 2017年に確認された恒星間天体「オウムアムア」は、太陽系の外からやって来て太陽を回り、再び太陽系外に去っていった。しかしこれがおかしな加速度を付けて太陽系から離れていったため、ハーバード大の二人の教授が計算し、直径約20メート...

  • ホラー「蛆女」& 詩

    詩 Ideale ずっとずっと昔のこと 目覚めてみると 未来の妻が横で死んでいた 彼女の死に顔は美しかった それは芸術のカテゴリーに属する美しさだった それは外面だけの美しさでもなかった それは心から滲み出てくる香りだった そこには通俗的なものが一切なかった それは理知的な...

  • 戯曲「ツチノコ」Ⅱ

    九 手術室 (鍾乳洞全体が褐色のプロポリスで塗り固められた手術室。手術台が二つ置かれ、一台にはディーバが、ほかには皮膚を提供する巫女が寝かされている。ディーバの横には河童が介護人のように佇む。手術台の上に鍾乳石が下がり、そこに照明が取り付けられている。首から下がすっかり蛇...

  • 戯曲「ツチノコ」Ⅰ & エッセー

    エッセー 悲観的進化論 ダーウィンに始まる「進化論」は、生物がその時々の環境に対応するために、その遺伝的形質を世代的に変化させていく様を示している。しかし、「進化」といってもそれは進歩ではなく、単なる変化に過ぎないのは、環境は進歩するものではなく、変化するものだからだ。寒...

  • 戯曲「ツチノコ」& 詩

    詩 独り舞台 俺はいま、地球というプレハブの舞台に立って おそらく奈落に落ちるまでの短い間 落ちるまいと必死に何かを演じているんだ 役柄については何も聞かされちゃいない 俺自身、誰かも思いつかない ただ一つ言えることは ほかの奴らも滑稽に何か演じているんだが お互いにさした...

  • 戯曲「ツチノコ」一五 & エッセー

    エッセー インターネットは薔薇色? 遠い昔、地球上には様々な感性の人間たちが生きていた。彼らは近隣の人々と交易を行ったり衝突したりしながら、感性と感性が混じり合い、次第に共通の感性や価値観を持つようになって文明が造られていった。 その頃の地球を大小様々な文明の色で着...

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