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葵むらさき言語凝塊展示室 http://aomra.jugem.jp/

大人のためのお伽噺を書いています。

毎週火曜日WEB連載、毎週土曜日メールマガジン発行、毎日ツイッター小説配信中。

葵むらさき
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2019/04/27

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  • どうぶつたちのキャンプ 第7話

    JUGEMテーマ:小説/詩   サバンナゾウといったか。この動物はあまり眠らない。常に草木を探し、食んでいる。「食べ続けていないとだめな気がするんだ」 以前、なぜそんなに食べ続けるのかと問いかけた時、そういう答えが返って

  • どうぶつたちのキャンプ 第6話

    JUGEMテーマ:小説/詩   意識が朧げに構築されていく。レイヴンは少しずつ、ほんの僅かずつ我を取り戻していった。「こんにちは」声がした。 レイヴンは振り返った。 そこに、死んだような表情の巨大な浮遊物がいた。「うわあ

  • どうぶつたちのキャンプ 第5話

    JUGEMテーマ:小説/詩   月が一つ見える。まん丸に近い形で光っている。活動するなら今のうちだ。 ネコ科動物たちに嗅ぎつけられないよう注意を払いつつ、砂漠を移動する。ネコ科は素早い。あ、こいつこのぼくを仕留めようとし

  • どうぶつたちのキャンプ 第4話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「探しに来てくれて、見つけてくれたのは嬉しい。ありがとう、レイヴン」 コスは収容籠の中に大人しく──あるいは諦めを抱いて──入った後で、そういった意味の声で啼いた。「どういたしまして。心細か

  • どうぶつたちのキャンプ 第3話

    JUGEMテーマ:小説/詩   へいいいいいん 「うわっ」 突如耳を襲った大怪音に、レイヴンは思わず身をすくませた。 ぱうあああああ ぽほおおおおお えわわわわわん 怪音はなおも続いた。どこから聞えてくるのか—

  • どうぶつたちのキャンプ 第2話

    JUGEMテーマ:小説/詩  感受帯角質に正式な辞令が届いたのは、その日の夜だった。『レイヴン=ガスファルト 上記の者を地球方面行方不明動物捜索捕獲係に任命し、地球への出動を命ずる』すべての準備を終えてから、レイヴンはふう、と息を

  • どうぶつたちのキャンプ 第2話

    JUGEMテーマ:小説/詩   感受帯角質に正式な辞令が届いたのは、その日の夜だった。『レイヴン=ガスファルト 上記の者を地球方面行方不明動物捜索捕獲係に任命し、地球への出動を命ずる』すべての準備を終えてから、レイヴンは

  • どうぶつたちのキャンプ 第1話

    JUGEMテーマ:小説/詩   レイヴンは窓外の超高速雲流を眺めるともなく見遣りながら、ハヤミ総司令の待つオフィスへと浮揚推進していた。 呼び出しを受けたのは、昨日の夜だった。「明日の朝、私のオフィスに来てくれたまえ」

  • 重家族 第35話(了)

    JUGEMテーマ:小説/詩  「松村彩夏、さん」初めて見る男の人が私の名を呼んだ。「はい」私は返事をした。「──」男は手許のタブレットに視線を下ろし、しばらく無言でいた。 私も椅子に座った状態で行動をしなかった。「橿原圭

  • 重家族 第34話

    JUGEMテーマ:小説/詩   施設からの迎えが来る日の朝、定時刻に電源がオンになると同時にスピリットの呟きが検知された。  あんたの娘になんか、生まれて来なきゃよかった。 泉は俺の女だ。俺がどうしようが俺の勝

  • 重家族 第33話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「命令?」翔は戦慄の声を挙げた。「何、それってどういうフィードバックの?」「よくわからないけど……翔くんも見る? この映像」「──法的に問題なければ」「大丈夫、担

  • 重家族 第32話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「何」櫃原圭輔は眉をしかめ私に向かい言った。「命令するのか? ロボットが人間に?」 その時私には、今私の発した言語は人間とのコミュニケーションにおいて選択されるべきものではないという認識があ

  • 重家族 第31話

    JUGEMテーマ:小説/詩   葬儀は恙無く執り行われた。 通夜には親戚が集まり、読経と焼香の後皆で食事をし、その晩は線香を灯し続けなければならないと誰かが言った、 圭輔も棺の傍に座っていたが、どの位経った頃かに叔母が「

  • 重家族 第31話

    JUGEMテーマ:小説/詩   葬儀は恙無く執り行われた。 通夜には親戚が集まり、読経と焼香の後皆で食事をし、その晩は線香を灯し続けなければならないと誰かが言った、 圭輔も棺の傍に座っていたが、どの位経った頃かに叔母が「

  • #当社では死んでもそのような事は申し上げません

    JUGEMテーマ:日記・一般JUGEMテーマ:小説全般   変なメールというものが、まあ毎日々々勤勉に送られて来ますよね。 曰く『あなたのアカウントに不審なログインがされました』『あなたのアカウントが停止されます』『今す

  • 重家族 第30話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「──」慶子はやはりすぐに返事の言葉を探すことができなかった。「また、後日」圭輔は搾りだすような声で続けた。「父と一緒に、お詫びのためお伺いしたいと思います」「いいえ」慶子は自分でも驚くほど

  • #初詣

    JUGEMテーマ:日記・一般JUGEMテーマ:小説全般   行って参りました。初詣。 今年は海辺の神社にて参拝いたしました。 「一礼二拍手二礼だっけ?」「二礼二拍手一礼じゃない?」等と思い出しつつ考えつつ復唱し

  • 重家族30の執筆&配信予約

    JUGEMテーマ:日記・一般JUGEMテーマ:小説全般  もう30話か〜……400字詰換算で、29話めまでの所378枚となっています。 多分最終話までで、450〜500枚ぐらいになるのかな〜、と。あと書

  • ショート2編微々たる進捗

    JUGEMテーマ:日記・一般JUGEMテーマ:小説全般  大晦日から元旦にかけてTVをつけていなかった私なのですが、今朝今年初でつけた所大地震のニュースを初めて知ったのでした……TVつけずとも時事ニュー

  • #明けましておめでとうございます☆

    JUGEMテーマ:日記・一般  うむ。 今年こそは、日記を、毎日、一日一記事ずつ、己の命の証として、今ここに私はいるということの魂の叫びを、こつこつと、かちかちと、誤変換満載で、全世界に恥しげもなく送信していってやるぅ! 

  • 重家族 第29話

    JUGEMテーマ:小説/詩   病院の廊下には少し暗めの蛍光灯の光が当たり、しんみりとした灰色を呈していた。 受付で教えられた病室の位置を目指し、早足で歩く。 だが行先はすぐに見つかった。 廊下の片隅で、どこかに電話をし

  • 重家族 第28話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「スピリット──」一夫も声もなく繰り返した。 それはそうだ。当然のことだ。クローノイドの専門家であれば、彩夏の状態を把握していないわけがない。技師たちは、知っているのだ。 スピリットの彩夏の

  • 重家族 第27話

    JUGEMテーマ:小説/詩   弁護士及びクローノイド技師、及び保険会社の担当社員との面談後、私と母は田代の運転する車に乗り自宅へ帰った。  そうか。 私がロボットになったんじゃないんだ。 そうなんじゃなくて、

  • 重家族 第26話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「よろしく、お願いします……」慶子は若干圧倒されつつも頭を下げ、改めて依頼した。「わかりました」石野崎美知留は頷き「では今後、橿原圭輔及びその母親との会話を記録し

  • 重家族 第25話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「どうしてなのかは、現時点で我々にもわかっていません」椎木は瞼を伏せながら話した。「ですがこの現象について、我々としてはできるだけ早い段階で解明する必要があると考えています」「──け」慶子は

  • 重家族 第24話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「はい。私は今でも、ニューロンの呟きを無視しています」彩夏は石野崎に対して答えた。「──そうか」石野崎はクローノイドの顔を見ながらゆっくりと頷いた。 ニューロンの呟き──その言葉に対して質問

  • 重家族 第23話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「松村慶子さんから、面談の際には良星家族保険株式会社の営業担当、田代さんを同席させて欲しいとの申し入れがあったわ」石野崎美知留は両手を組んで机の上に置き、そう言った。 そこは彼女の運営する弁

  • 重家族 第22話

    JUGEMテーマ:小説/詩   田代には『スピリット』のことについては言わなかった。 差し向きクローノイドが話をしなくなった、というトラブルについてだけ報告し、対処を依頼した。 恐らく保険会社からクローノイド製作業者に連

  • 重家族 第21話

    JUGEMテーマ:小説/詩   彩夏の取得情報データ及び発話生成ログから、AIによりクローノイド彩夏が人間たちと交わしたと思われる会話内容が生成される。 石野崎は、オフィスに来てもらった椎木と並んで椅子に座り、彩夏の声で

  • 重家族 第20話

    JUGEMテーマ:小説/詩   彩夏が遺した、最後の日記。 一夫は一心に、一度も目を逸らすことなくそれを読み続けた。 だが読み続ける内、その手は細かく震え出し、呼吸は穏やかなものではなくなってきた。やがてその唇からは、「

  • 重家族 第19話

    JUGEMテーマ:小説/詩   彩夏の遺したメモには、右上隅に数字の羅列──年月日が、これもまた小さな字で記入されていた。 日記の内容はその後も、夫である圭輔から理不尽に禁止されたこと、改善を命じられたこと、強制されたこ

  • 重家族 第18話

    JUGEMテーマ:小説/詩   慶子は気が遠くなるほどの震えを感じながら、手許の紙束から輪ゴムを外し、メモを開いた。 なるほど確かに、大層細かい字で紙面全体にびっしりと書かれてある。慶子は両眼を精一杯すがめたが、それでも

  • 重家族 第17話

    JUGEMテーマ:小説/詩   姫奈は、圭輔さんのことが好きなのかな。 圭輔さんと、結婚したいと思っているのかな。 でも圭輔さんのこと『あいつ』って、呼んでたよね。 私がロボットになったとしても、きっと攻撃してくるって。

  • 重家族 第16話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「彩夏……?」慶子はクローノイドを見て呼びかけた。 それはしかし、クローノイドに対する呼びかけではなく、その中に『いる』と今し方聞いた、彩夏の──娘の『魂』に対す

  • 重家族 第15話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「もしもし、彩夏? どうしたの?」母が電話に出てそう言った。「お母さん、彩夏です」私は通信機構を稼働させた状態で母に発話生成した。 私の傍に立つ姫奈にも対話の内容を聞かせる方が良いと判断され

  • 重家族 第14話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「うーわ」石野崎は目を見張った。「こりゃあ……すげえなまた」 松村彩夏のCPUから送られてきた取得環境情報および生成モーションのフィードバックデータだ。 ざっくり

  • 重家族 第13話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「ああ」警官は残念そうな表情をした。「まあでもそれが、DVを受けてるんじゃないかって最初に気づいたきっかけだったんですね」「ええ……でもあの子、結婚前からたまに、

  • 重家族 第12話

    JUGEMテーマ:小説/詩   どうすればいいのだろう。 慶子は自分の全身が震え続けていることを感じ取りながら、その場に立ち尽くしていた。 自分は何をすればよいのか。 誰かに助けを求める? 誰に? どこに連絡する? 最初

  • 重家族 第10話

    JUGEMテーマ:小説/詩   玄関ドアを開けると、そこには二人の人間が立っていた。 慶子は一瞬言葉を忘れ、目を見開いた。 橿原圭輔だ。 彩夏の夫 だった 男だ。 半袖のポロシャツにチノパンという、ラフな出立をしている。

  • 「昔のアニメ」と言われて思いつくのは?

    JUGEMテーマ:日記・一般  今日、娘が「YouTubeで昔のアニメやってるけど、観る?」と訊いてきました。 私はそれに対して「昔のアニメ?」と問い返し、続けて 「マジンガーZとか?」 と訊きました。 娘は「

  • 『多重人格の急須 2 〜肉じゃがは時空を超えて〜』発売のお知らせ

    JUGEMテーマ:小説全般   四人の人格が入った魔法の急須の主である女子高生、春日舞子は、ある朝目覚めた途端に羽の生えた天使から「規定値以上の反重力操作を施しここ以外のいずれかの時空に移動しようと企む何者かの犯罪を、未

  • 短編集『カウントアップが始まる』発売のお知らせ

    JUGEMテーマ:小説全般   ある日少女に問われた「今まで何回『ありがとう』を言いましたか?」 そして世界は激変した── 表題作ほか15編のショート小説集。『カウントアップが始まる』 ¥300(Twitter拡

  • 重家族 第9話

    JUGEMテーマ:小説/詩   慶子は洗濯機を始動させた後、バスルームの掃除に取りかかった。 シャワーでバスタブに水をかけながらふと、昨日ショッピングモールで出会った姫奈の姿を思い出す。 ──姫奈ちゃん…&

  • 重家族 第8話

    JUGEMテーマ:小説/詩   朝の仕事のルーティンが片付いたところで、石野崎はコーヒーを一口すすってから、再度データファイルを開いた。 彩夏から送られて来た外界センサによる取得情報のすべてだ。 モニタの黒画面に久遠の文

  • 重家族 第7話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「ちょっと、あなたそんな服着るの?」 母の声が聞こえた。「やだ、なんかおばさんっぽいわよ。どういう趣味なのよ」 正確には外界センサ──耳から取得した音声情報ではなく、彩夏の記憶から検出された

  • 重家族 第6話

    JUGEMテーマ:小説/詩   馬鹿にしてた  ニューロンの呟きは、急に大人しくなった。 母に再会した後続いていた高いトーンの、興奮を帯びたものはなりをひそめ、うって変わって暗く沈んだ、どんよりとした雰囲気のも

  • 重家族 第5話

    JUGEMテーマ:小説/詩   私は非言語様式を駆動して微笑んだ。 その表情は、彩夏の再生記憶より検知されたものだ。 といっても、それは発話機能の検索起動により見つけられたものではない。『記憶』の方から自発的に現れ出た、

  • 重家族 第4話

    JUGEMテーマ:小説/詩   私はそこで、母に向かい「こちらこそ、よろしくお願いいたします」と言葉を返さなければならなかった。本来なら、アルゴリズムに従いそのようにするはずだったが、結局それは実行できなかった。&nbs

  • 重家族 第3話

    JUGEMテーマ:小説/詩   電源がオンになる。 良星家族保険の小会議室内部の画像が捉えられ、また私の正面には昨日初めて知り合いとなった田代が存在していた。「おはよう、彩夏さん」田代はそう言って微笑んだ。「おはようござ

  • そうだお詫びします(不実)

    JUGEMテーマ:日記・一般  あのー、前に、ホラーファンタジー略してホラファンタ、書いてます書いてますハイ書けました6月頃から配信します乞うご期待! ってな事をいけしゃあしゃあとのたまっときながら、いざ実際6月になったらばしれっ

  • 重家族 第2話

    JUGEMテーマ:小説/詩  「ああどうも、遅くなりまして」橿原は黒いスーツに身を包み、長身の体を縮こまらせて深々と会釈した。「いえ、お忙しい中ありがとうございます」慶子は橿原の肩にも届かぬ程の身長だが背筋を伸ばし、少し

  • 重家族 第1話

    JUGEMテーマ:小説/詩   目醒めたら私はロボットになっていた。  ねえ、お母さん。 お母さんはなんで、私に冷たかったの? なんで私に優しくしてくれなかったの? 私はお母さんに、甘えたかったんだ。 それとも

  • RENT оr BUY? 第17話(了)

    JUGEMテーマ:小説/詩  「ただーいまぁ」 そこに立っていたのは、少し恥らうような微笑みを浮かべた、ともりゅんその人だった。 ドアを閉めるなり、強く抱き締める。「あいちろくん」ともりゅんの声が右の鎖骨の辺りで甘えた風

  • RENT оr BUY? 第16話(全17話)

    JUGEMテーマ:小説全般   罪に、問われるのだ。 それがわかったのは自宅に、裁判所から出頭命令の通知が届けられた時だった。 二週間後、家庭裁判所にて調停を行うと書かれてある。 婚約破棄と慰謝料請求、この二点の内容にな

  • RENT оr BUY? 第15話(全17話)

    JUGEMテーマ:小説/詩   端末が赤い光を放っているのを見つけたのは、平日、自宅の風呂から上がって来た時だった。 『亜一郎さん こんにちは 何かお困りの事はございませんか?』  見慣れた、ご用伺い

  • RENT оr BUY? 第15話(全17話)

    JUGEMテーマ:小説/詩   端末が赤い光を放っているのを見つけたのは、平日、自宅の風呂から上がって来た時だった。 『亜一郎さん こんにちは 何かお困りの事はございませんか?』  見慣れた、ご用伺い

  • RENT оr BUY? 第14話(全17話)

    JUGEMテーマ:小説/詩   その笑顔のせいなのかどうかわからないが、気づけば二件目で飲み直し、そこを出た後の帰り道で、どういう経緯でか手をつないで歩いていた。 そうしながらも相変わらず、話すのは色気のない馬鹿話ばかり

  • RENT оr BUY? 第13話(全17話)

    JUGEMテーマ:小説/詩   その夜、実家で過ごす最後の晩に、布団に入る前もう一度端末を見ると、緑色のライトがゆっくりと点滅していた。 催促だ。 すぐに察した。 果たしてファイナルパートナーからの「ご用伺い」のメッセー

  • RENT оr BUY? 第12話(全17話)

    JUGEMテーマ:小説/詩   ——何だ……? 近づいてみる。「——」茫然とした。 そこには、ビニル製の水切り袋に包んで捨てられた、食肉や野菜——どれも色が茶色く変わっている——たちが大量に捨

  • 『聡明鬼 下』販売開始のお知らせ

    JUGEMテーマ:小説全般   神鬼たちが閻羅王の統治の下に人間界の土地を統べる世界。地獄の王に唯一人追従しない鬼がいた。名はリューシュン。通称は聡明鬼。森羅殿の営みを揺るがす力を、彼は持っていた。その力を与えたのは、上

  • RENT оr BUY? 第11話(全17話)

    JUGEMテーマ:小説/詩  「一人で来たの?」亜一郎は訊いた。「寺井さんの車で送って来てもらいました」大崎は答えた。 亜一郎の同期の寺井が、ここまで乗せて来たということだ。「寺井は?」また訊く。「お帰りになりました」大

  • RENT оr BUY? 第10話(全17話)

    JUGEMテーマ:小説/詩  「——」ともりゅんは目を丸くして二秒ほど絶句していたが、少し俯いてから「はい」と頷いた。「あ」通じた、という想いが亜一郎を包み、天井から神々しい光が刺すような錯覚に捕らわれた。「あの、でも」

  • RENT оr BUY? 第9話(全17話)

    JUGEMテーマ:小説/詩  問題は夜だ。 ランチで外食したので夜の飲みはさすがに「また今度」で帰宅の途に着いたが、帰って来たマンションの部屋は、当然ながら無人で暗く、寒いのだった。 それはいつものことなので、今更驚くようなことで

  • #米津玄師 Kenshi Yonezu - LADY

    JUGEMテーマ:邦楽の新曲   もう今は、これがずっと体内を流れている。 米津さんもまた中毒性最強の曲を作ったもんだなあ。 そしてこれを初めて聴いた時、涙が出そうになった。 何でかというと、米津さんだからだよね。&nb

  • RENT оr BUY? 第8話(全17話)

    JUGEMテーマ:小説/詩  「おはようございます」 エレベータの前で声をかけられる。大崎有奈だ。「おはよう」亜一郎は返事した。「何かあったんですか?」訊かれる。「え、別に」答える。「なんで?」「なんか、落ちぶれてるから

  • #桜の冒険

    JUGEMテーマ:日記・一般   桜は、いつも城に見下ろされていた。 城は丈が高いので、それは当然のことであるのだが、それでも桜は常に口惜しい想いを抱いていた。 自分は、城に見下されている。 そんな風に思われて仕方がない

  • RENT оr BUY? 第7話(全17話)

    JUGEMテーマ:小説/詩  「田坂さん」坂本はマスクの下で呟くように亜一郎を呼んだ。「お疲れです……見舞いに来て下さったんですか」「あ、うん」亜一郎は取り敢えず笑顔で片手を挙げた。「具合はど

  • RENT оr BUY? 第6話(全17話)

    JUGEMテーマ:小説/詩  「先輩お疲れっす」後輩の仁科が声をかけてきた。「ここ、いいですか?」ベンチに座ってコンビニ弁当をつつく亜一郎の隣を指差す。 そこは会社のすぐ近くにある公園で、仁科もコンビニの袋を提げていた。

  • #日記を書くタイミング

    JUGEMテーマ:日記・一般  そう。 私は 気づいたのだ。   日記は、眠くなる前に書くべし。と。   何故なら、日記といえども文章を書く作業というのは、どうもどうしても、時間がかかる。

  • #侍ジャパンの余韻(個人の感想です)

    JUGEMテーマ:日記・一般  今日はなんと。 朝、アラームが鳴る前にスキッ!! と、起床した!! スキッ!! と!!  そう、いつもなら朝目が醒めたとしても「ぅ〜……起きたくねぇぇ」「仕事行

  • RENT оr BUY? 第5話(全17話)

    JUGEMテーマ:小説/詩  会社に向かいながら、亜一郎はいまだともりゅんのこと——その本質、その行動、その結果、その笑顔——について、考えを巡らせ続けていた。 ——そうか。彼女は、“ロボット”では、ないん

  • RENT оr BUY? 第4話(全17話)

    JUGEMテーマ:小説/詩   翌朝も端末は、ゆっくりと緑色のランプを点滅させていた。 まだ完全に開いていない目で、画面を見下ろす。『おはようございます 何かご用はありますか?』という表示が出ている。「おはよう」亜一郎は

  • RENT оr BUY? 第3話(全17話)

    JUGEMテーマ:小説/詩  「あはははは」バーチャル嫁ともりゅんは間髪を入れずに爆笑した。「なにその、何か企んでそうな呼び方は」「ええ?」亜一郎はつられて笑いながらも軽い混乱に陥った。「ええと、あはは、と、ともりゅん」

  • RENT оr BUY? 第2話(全17話)

    JUGEMテーマ:小説/詩   ははは、まさか。 いくらともりゅんだからって、あのともりゅんそのものが来るわけないだろう。 大体アニメのともりゅんは、中学生だったんだ。 今から来るのは、嫁だぞ。立派な大人に決まっている。

  • 数式図鑑 楽しく、美しく、役に立つ科学の宝石箱 (ブルーバックス)

    JUGEMテーマ:自分が読んだ本JUGEMテーマ:新書   学校時代はちむぷむかむぷむだったものが、数十年の時を経て今「あー、そういうことやったんか」と理解できたりする感動の書。 正直、実際に開くまでいーさーさーかー抵抗

  • RENT оr BUY? 第1話(全17話)

    JUGEMテーマ:小説/詩  「入金を確認致しました。ありがとうございます。本日十五時ゼロ分ゼロ秒よりサービスをご利用頂けます。」というメールが届いた。「よし」 亜一郎は呟いてメールを閉じ、代わりに、すでに設定済みのアプ

  • DV幽霊 第20話(了)

    JUGEMテーマ:小説/詩 「終わりましたよー」 熱田氏の声で、私は目を開けた。 のろのろと起き上がると、最初に、玉の汗を浮かべて今にも気絶しそうに茫然としている森下氏の顔が目に入った。 そんなに、体力を使ったのか。 私には意外に

  • おばあさん、はい、缶パンよ。

    JUGEMテーマ:日記・一般  勤務先でですね、もう数箇月前になりますが、災害対策保存用缶パンが私葵含め全職員に支給されたのです。 一人一缶。「ただし保存期限は2023年5月某日です」との注釈付きで。  あれ、ほんの半年

  • 花粉が一粒、花粉が二粒、花粉が三粒……ひと粒足りないぃぃ……

    JUGEMテーマ:日記・一般  はい。そんなわけで。 花粉です。 まあ、痒いです。 目が? 鼻が? 耳が? いいえ。   もはや人生のすべてが痒い。   わぐゃおぉごヴぉがぼぐお゛ぎを゛−−

  • DV幽霊 第19話(全20話)

    JUGEMテーマ:小説/詩 「それで私にも森下君にも、見えなかった」熱田氏は続ける。「こういうのは、初めてだわ。こんなやり方をする霊には、初めて遭った」「——」私はまた小さくうなずいた。 なるほど、霊にも霊それぞれのやり方がある、

  • DV幽霊 第18話(全20話)

    JUGEMテーマ:小説/詩 「あっくんは」熱田氏は質問を続けた。「今も、あなたを傷つけ続けているの?」「……」森下氏は、また顔をくしゃっとしかめた。 あたかも、今まさにあっくんに殴られたかのような表情だ

  • DV幽霊 第17話(全20話)

    JUGEMテーマ:小説全般 「やめて……痛いよ」かすれた声で、彼——つまり森下氏——は続けた。 これが、足の声、なのか? 私は内心でそう問うた直後に、違う、と内心で答えを出した。 これは、あの女性の声だ

  • #DV幽霊 第16話(全20話)

    JUGEMテーマ:小説/詩 「どうしたの?」 熱田氏の声が聞える。「……いました」 森下氏が、消え入りそうな声で、かろうじてという感じで答える。「いた? 何が?」 熱田氏が、被せるように再度訊く。 やは

  • 女たちのキャラづけ

    JUGEMテーマ:日記・一般  ホラーファンタジーことホラファンタ、亀のように書き進める日々でございまする。 女が四人出てきてそれぞれ独白していく形式なんだけども、この四人の関係性を当初の設定よりもう少し複雑化させようかなあと目論

  • DV幽霊 第15話(全20話)

    JUGEMテーマ:小説/詩  その理不尽さ加減は、どういうことなのだろう。 私がそのことに気づいたのは、熱田氏から「どうして、逃げなかったの?」と質問された時だった。 そうだ。 言われてみれば、確かにそうだ。 熱田氏ご指摘の通りだ

  • DV幽霊 第14話(全20話)

    JUGEMテーマ:小説/詩  次回の“セッション”の予約を取り付けた後、熱田氏は帰っていった。 一人残された部屋で、私は自分の内部に緊張が高まりゆくのをひしひしと感じた。 足は、今夜も出るのか。 それとも、

  • #DV幽霊 第13話(全20話)

    JUGEMテーマ:小説/詩  熱田氏は、私の部屋の壁をゆっくりと見回し、天井を見上げ、床を見下ろした。 私はそれを眺めながら、昔バイトしていたコンビニの店長を思い出していた。 清潔好きな女性で、店内の清掃や整理整頓、棚上の商品の並

  • #DV幽霊 第12話(全20話)

    JUGEMテーマ:小説/詩  熱田氏は、私の居場所を訊ねて来、直接御札を届けると言ってくれた。「下手にそこから動くと、危ないかも知れないから」というのが、彼女の意見だった。 まるでSPだな。 私はそのメールを見ながら少し吹いた。

  • DV幽霊 第11話(全20話)

    JUGEMテーマ:小説/詩  翌朝、洗面所の鏡を覗くと、やはり私の顔は無傷のままだった。 一体、どういうしくみなのだろう。 私の中に、ある意味“興味”と呼べるものさえ生まれた。 間違いなく痛いのに、間違いな

  • DV幽霊 第10話(全20話)

    JUGEMテーマ:小説/詩  翌朝目覚めてからも、首筋や後頭部、そして顔面全体に、痛みが残っていた。 私が意識を失った後も、足は私を踏みつけ続けていたのだろうか。 さぞや顔面痣だらけになっている事だろう—— そう思いつつ覗いた洗面

  • DV幽霊 第9話(全20話)

    JUGEMテーマ:小説/詩  熱田氏は別れ際、また電話で連絡をすると言った。 私は咄嗟に、電話ではなくメールで連絡するようにと依頼した。 依頼しながら、たとえメールが届いたとしても恐らく返信しないだろうと思った。 ことによると読み

  • #DV幽霊 第8話(全20話)

    JUGEMテーマ:小説/詩  私が呆然と熱田氏を見つめている間、熱田氏は「機嫌好き無表情」とでも表現し得るような顔で、ただ私を見つめ返していた。 ニヤニヤしてもいなければニコニコもしていない、さりとて怒りや悲嘆の感情を浮かべている

  • DV幽霊 第7話(全20話)

    JUGEMテーマ:小説/詩  結論から言うと、そのサイトの主への連絡先は、見つからなかった。 だがそのサイトが相互リンクしている他のサイトの中に、主が運営(というのか)している浄霊施設(というのか)への連絡先メールアドレスの表記が

  • DV幽霊 第6話(全20話)

    JUGEMテーマ:小説/詩  出てきた検索結果には、さまざまなジャンルのWEBページが並んでいた。 武道、サッカー、ゲーム、そして。「霊の足に蹴られた」という記事も、そこにはあった。 私はそれらを——つまり「足の霊に蹴られた」もと

  • DV幽霊 第5話(全20話)

    JUGEMテーマ:小説/詩  そういえば、これも理不尽の一種ではある。 何がかというと、靴下だ。 その日は休日で、私は洗濯をしそれを干し、乾いた後取り込んで畳んでいた。 一人暮らしの身であるため、洗濯物がどうにも溜まりやすい。 と

  • DV幽霊 第4話(全20話)

    JUGEMテーマ:小説/詩  この理不尽さ加減は——と、嘆いてばかりいても勿論はじまらない。 私は思った。 足と『対話』をすべきではないのかと。 線香を焚いたとき、それは『仏との対話』になるのだと、仏壇店の店員に私は教わった。 そ

  • #DV幽霊 第3話(全20話)

    JUGEMテーマ:小説/詩  実際この理不尽さ加減というのはどうなのだろう。 例えば、天気だ。 古代の人は、雷が落ちたとか、日照りが続く、逆に異様な降水量だ等といった「穏やかならざる天候」を、神の、自然のスピリットのようなものの怒

  • DV幽霊 第2話(全20話)

    JUGEMテーマ:小説/詩  この理不尽さ加減はどうだろう。 前述の、その暴挙の中で、私の脳裡にまた別の想いが生まれたのだった。 ——こいつは、俺に“供養”をして欲しいのではないのか? そう。 この足は、私

  • DV幽霊 第1話(全20話)

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