ここからは見えないところの桜から漂って来た花びら一つここからはみえないところの桜から漂って来た花びら一つ歌う風・・・711千葉甫
ここからは見えないところの桜から漂って来た花びら一つここからはみえないところの桜から漂って来た花びら一つ歌う風・・・711千葉甫
?呼ばれたように覚えて彼は立ち止まり、あたりを見回した。見覚えのない住宅街の通りだった。人影は無い。なぜ、ここを歩いているのだろう?それに、ここへ来た記憶もなかった。再び、声を聞いて振り返った。塀の上に座った猫が彼を見つめていた。見覚えのある猫だった。少年時代に居た飼い猫のトムを思わせた。「トム?」呼んでみた。「あぁ」猫が答えた。そのときドアが開いて出てきた人に眼をやった彼は、衝撃に身が凍りついた。その人は逝ってほぼ三年になる彼の父親と瓜二つだった。その人も、顔に驚きの色を浮かべて、「一夫か!もう、こちら彼岸へ来たのか。えらく早いじゃないか!」掌奇譚Homecoming千葉甫
鳴るたびに近づいていた雷鳴の遠退き始める雨は上がるか鳴るたびに近づいていた雷鳴の遠退き始める雨は上がるか歌う風・・・710千葉甫
薄暗い時間のままに昼が来てまた降り出した雨の聞こえる薄暗い時間のままに昼が来てまた降り出した雨の聞こえる歌う風・・・709千葉甫
過去からの声だったのか未来から来た声だったか呼ばれて覚める過去からの声だったのか未来から来た声だったか呼ばれて覚める歌う風・・・708千葉甫
ポケットを裏返しても出てこない確かに入れた筈だけれどもポケットを裏返しても出てこない確かに入れた筈だけれども歌う風・・・707千葉甫
来る風の躊躇うようにカーテンの静止するとき揺れているとき来る風の躊躇うようにカーテンの静止するとき揺れているとき歌う風・・・706千葉甫
ソリテアの挫折の続く今度こそ今度こそはと向きになりゆくソリテアの挫折の続く今度こそ今度こそはと向きになりゆく歌う風・・・705千葉甫
春の陽の輝く髪を右左揺らして私の前を行く人春の陽の輝く髪を右左揺らして私の前を行く人歌う風・・・704千葉甫
眠れないまま聞いている耳鳴りに加わっている新しい音眠れないまま聞いている耳鳴りに加わっている新しい音歌う風・・・703千葉甫
夢に来てランチを共にした人は十年前まで接していた人夢に来てランチを共にした人は十年前まで接していた人歌う風・・・702千葉甫
行く夜の時間に眼をやりもう一章読みたいところでページを閉ざす行く夜の時間に眼をやりもう一章読みたいところでページを閉ざす歌う風・・・701千葉甫
麗らかな陽ざしであるが会う風は冬の名残の感触を持つ麗らかな陽ざしであるが会う風は冬の名残の感触を持つ歌う風・・・700千葉甫
五年目の来るコンピューター未使用の内蔵ソフトの沢山あって五年目の来るコンピューター未使用の内蔵ソフトの沢山あって歌う風・・・699千葉甫
僅かな間うとうとの来ただけなのに三十分が消え失せている僅かな間うとうとの来ただけなのに三十分が消え失せている歌う風・・・698千葉甫
プログラムされている声に従ってキー押していく今夜は冷えるプログラムされている声に従ってキー押していく今夜は冷える歌う風・・・697千葉甫
相談の相手無いままとつとつとインターネットで答えを探す相談の相手無いままとつとつとインターネットで答えを探す歌う風・・・696千葉甫
ピーという音に続いて伝言は入らずに今日の電話も切れるピーという音に続いて伝言は入らずに今日の電話も切れる歌う風・・・695千葉甫
直進をしようとしたが右折する犬に従い引かれ行く人直進をしようとしたが右折する犬に従い引かれ行く人歌う風・・・674千葉甫
起きるにはまだ早いので眼を閉じて起きる時間に去られてしまう起きるにはまだ早いので眼を閉じて起きる時間に去られてしまう歌う風・・・693千葉甫
購うことを忘れた一つがあったのをふと思い出す半日経って購うことを忘れた一つがあったのをふと思い出す半日経って歌う風・・・531千葉甫
十年間ハンドルネームで親しんだ人のふっつり絶えてそのまま十年間ハンドルネームで親しんだ人のふっつり絶えてそのまま歌う風・・・530千葉甫
過ぎて行く時間静かな昼下がり鏡を覗いている猫の居て過ぎて行く時間静かな昼下がり鏡を覗いている猫の居て歌う風・・・529千葉甫
売られては建て替えられる家々に包囲されつつわが家がある売られては建て替えられる家々に包囲されつつわが家がある歌う風・・・528
ここからは見えぬ夜空でホバリングの音の続いているヘリコプターここからは見えぬ夜空でホバリングの音の続いているヘリコプター歌う風・・・527千葉甫
今日もまた高層ビルの屋上にある反射光同じ時刻に今日もまた高層ビルの屋上にある反射光同じ時刻に歌う風・・・526千葉甫
雨の日は滑りの悪くなる障子私と共に家も老いつつ雨の日は滑りの悪くなる障子私と共に家も老いつつ歌う風・・・525千葉甫
振動をした雷鳴に読んでいたロンドン消えてわが四畳半振動をした雷鳴に読んでいたロンドン消えてわが四畳半歌う風・・・524千葉甫
朝食はパンに牛乳味噌汁の香で覚めた日々遥かになって朝食はパンに牛乳味噌汁の香で覚めた日々遥かになって歌う風・・・523
父母は夢ではいつも健在で今では私のほうが年上父母は夢ではいつも健在で今では私のほうが年上歌う風・・・522千葉甫
クリックと同時に悟るまた同じ誤りをしてしまったことをクリックと同時に悟るまた同じ誤りをしてしまったことを歌う風・・・521千葉甫
カーテンが風にまくられ暮れ際の陽ざしの伸びる部屋の端までカーテンが風にまくられ暮れ際の陽ざしの伸びる部屋の端まで歌う風・・・520千葉甫
真夜中の階段上るワンテンポ遅れて背後の階段軋む真夜中の階段上るワンテンポ遅れて背後の階段軋む歌う風・・・519千葉甫
あと五分瞼閉ざしておく筈が三十分の寝過ごしとなるあと五分瞼閉ざしておく筈が三十分の寝過ごしとなる歌う風・・・518千葉甫
暮れ際の陽の差していて机上には伏せられている一冊の本暮れ際の陽の差していて机上には伏せられている一冊の本歌う風・・・517千葉甫
コンピューターのシャット・ダウンをする前にこの夜も聴くこの人の歌コンピューターのシャット・ダウンをする前にこの夜も聴くこの人の歌歌う風・・・516千葉甫
呼びかける声に返事が来ないのでぼやいているのか鴉呟く呼びかける声に返事が来ないのでぼやいているのか鴉呟く歌う風・・・515千葉甫
眼のように光る灯影の映えていて私を見つめる机上の眼鏡眼のように光る灯影の映えていて私を見つめる机上の眼鏡歌う風・・・514千葉甫
角折れて入ったこの道人影の無くて私とすれ違う風聞き耳を立てれば再び聞こえずに静まっている無人の部屋は鴉らの忙しく交わしている声を聞きつつ覚めて雪の積む朝一片の窓から入ってきた雪の静かに消える雫残してあの頃はラジオで共に楽しんだオールデイズを聴くイアホンで聴いているオールデイズのこの歌も既にこの世に無き人の声雀らはいつも四、五羽で連れ立ってあちらの屋根へこちらの屋根へ夢に来て顕つ面影は晩年のものより常に若き日のもの昼過ぎて一度響いた雷鳴を記して今日の日記を閉じるヘッドホンに満ち満ちていた音楽の終って音無く冷えている夜歌う風抄~すれ違う風~
雲一つ無い青空の下に居る私と知らず見上げるまでは雲一つ無い青空の下に居る私と知らず見上げるまでは歌う風・・・513千葉甫