地方の古い団地には、夜になると独特の静けさがある。 一戸建ての住宅街とは少し違う。 人がいる気配はあるのに、生活音だけが遠い。 ベランダの物干し竿とか、階段の蛍光灯とか、そういうものだけが夜の中に浮いて見える。 仕事帰り、近道をする時だけその団地の横を通る。 川沿いに建っている、少し古い団地だった。 四階建てで、外壁はところどころ色が剥げている。 昼間は普通だ。 小さい子供が走っていたり、洗濯物が揺れていたりする。 でも、夜になると急に別の場所みたいになる。 あの日も帰りが遅かった。 月曜だったと思う。 雨は降っていなかったけれど、昼間の湿気が残っていて、空気が少し重かった。 団地の前を歩いて…