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小野寺工業のチャレンジ https://business-drama.hatenablog.com/

親会社の後ろ盾を失った小野寺工業は新事業を立ち上げます。 しかし、変革の道は容易ではありません。 コンサルタントの浦田慎二は変革請負人として起用されたます。

うらまさき
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2019/03/25

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  • 【 最終回 】[ 総まとめ ] オファリングモデルを活かした事業運営(5/5)

    ● 結局、定着のカギを握るのは現場の当事者意識だ オファリングモデルの導入は事業運営方法の刷新を意味する。これはまさに組織を上げての大仕事なわけで、ガバナンスに難のある日本企業がこれをトップダウンで実現するのは難しい。つまり、組織の観点と現場の観点、このバランスが成功のカギを握ることになる。 そこで問題になるのが現場の意識だ。 オファリングモデルの導入に限らず、定着のカギは現場の意識にある。 オファリングモデル導入の準備段階、それは現場にとって他人事でしかなかった。ところがオファリングモデルベースの事業運営が開始されると現場は大きな変化に見舞われ、これまでは無関心だったひとりひとりが新たな行動…

  • [ 総まとめ ] オファリングモデルを活かした事業運営(4/5)

    l オファリングモデルを支える事業運営の仕組みを整備する オファリングモデルをうまく導入できたとしても、これを支える事業運営の仕組みが整わないままでは大きな効果は期待できない。導入手順の説明では「⑥ でき上がったすべてのオファリングモデルを重ね合わせて事業をマネジメントする」と説明したが、これは事業運営の仕組みがあってこその話だ。 オファリングモデルの成果を高めるには以下のような仕組みの整備が欠かせない。 a 事業計画の立て方、取りまとめ方 b 事業マネジメント(投資判断や計数管理など)の仕組み c 営業スタイル、営業部と事業部のフォーメーション d キャパシティマネジメント、リソースマネジメ…

  • [ 総まとめ ] オファリングモデルを活かした事業運営(3/5)

    l オファリングモデルの導入にはさまざまなキーワードが存在する オファリングモデルの導入手順を足早に説明してきたが、これにビジネス上のキーワードを重ね合わせてみよう。小野寺工業の新事業立上げストーリーにはさまざまなキーワードを盛り込んだが、ほかにもキーワードはある。 簡単に説明しておこう。 市場成長率 / 規模 「魅力的な市場」とはどんな市場なのか。それを効果的に評価するには「成長率」と「規模」の2軸でポートフォリオを組むといい。「成長率」は意外に見過ごされやすい。 ブルーオーシャン / レッドオーシャン 青い海を意味するブルーオーシャンは競争相手がいない、もしくは競争のない市場を指し、赤い海…

  • [ 総まとめ ] オファリングモデルを活かした事業運営(2/5)

    l マトリックス型事業運営の悩みをオファリングモデルが解決する オファリングモデルは事業運営の基礎をなす。 意志薄弱な行動を繰り返してきた事業運営は、オファリングモデルの採用により大きな第一歩を踏み出すこととなる。オファリングモデルという背骨を獲得し、しっかりとした歩行が可能となるのだ。 複雑なマトリックス型の事業運営を行う組織ならなおさらだ。オファリングモデルは、マトリックス型で混乱する事業を救う手段となりうる。 事業環境が複雑化する中で、多様化する市場の要求に応えるべき多くの組織がマトリックス型の事業運営に舵を切った。ところが、これが容易ではなかった。 マトリックス型の事業運営の難しさは、…

  • [ 総まとめ ] オファリングモデルを活かした事業運営(1/5)

    l オファリングモデルは単なるセット販売ではない オファリングモデルの説明をすると「うちでも似たようなことはやっています」という反応が返ってくることがある。詳しく聞くと、そこには「オファリングモデル≒セット販売」という勘違いがあった。 はっきりと言っておこう。オファリングモデルは単なるセット販売ではない。 セット販売とは、これまでバラバラで販売していたものをひとまとめのセットにしたに過ぎない。ひとつひとつ悩みながら構成要素を選ばなくてもいいという点、組み合わせの相性を気にする必要がない点などが顧客側のメリットだ。提供側のメリットは、他社に邪魔されることなくすべての構成品を自分たちが受注できる点…

  • 社長就任演説「皆さんの言葉でチャレンジを語ってください」

    翌年、大島は異例の人事で代表取締役社長に就任した。高齢の前社長の交代は陰で囁かれていたが、後釜に大島を予想した者はほとんど誰もいなかった。 早朝、大島は幹部を集めて社長就任の挨拶をしたが、それは社員を叱咤し、更なる変革と成長の必要性を訴えかける内容だった。 大島は言った。 「4年前、私たちは危機的な状況に直面していました。ご存知でしたか」 参加者の多くは呆気に取られていた。自分たちが危機的な状況にあったという認識が無かったからだ。 「自分たちの会社は順調に成長してきた」というのが彼らの思いだった。 大島は続けた。 ========================================…

  • コンサルタントは潤滑油であり、改革を成功に導いたのは「会社への深い愛情」と「不退転の覚悟」だった

    笠間たちのアプローチは功を奏した。一時は低迷した海外事業はかつての活気を取り戻し、プラス成長へと転じた。 大島は、笠間と浦田を銀座の小さなイタリアンレストランに招待した。オーナーシェフとその家族で経営するこの店は、大島の30年来の行きつけだった。常務となった今でも飾り気のないこの店を選ぶ大島の人柄に対し、笠間は安心を感じた。 「やっとこの日が来たね…長かったような、短かったような。二人ともよく頑張ってくれた。お疲れ様でした」 ワイングラスが交わる柔らかな音がテーブルに響いた。 大島が浦田と知り合うきっかけになったプロジェクトの話に始まり、今回の件で浦田に声を掛けたときの思いなどが大島の口から語…

  • 属人性を排除するにはガバナンスをシステムとして捉え、ガバナンスに関わる機能を総点検し、機能不全な箇所に手を打て

    海外事業に属人性がはびこる最大の原因は、宿命的ともいえる事業の煩雑さにあった。煩雑さを解消するのも大変な上に、煩雑さを解消すれば問題が解決するかといえば、事態はそれほど単純ではなかった。 海外事業はガバナンスという点からも、手を打てる状況にはなかった。事業運営が現場任せになっており、組織としてうまくコントロールできる状況になかったからだ。全権を委任された現場で属人性がはびこるのは当たり前で、組織が気付かないところでさまざまな問題を巻き起こしていた。 特殊工作機の分野は特に深刻だった。特殊工作機は、事業の特性上、ベース機を準備してカスタマイズ対応するわけにはいかない。個別開発の比率が極端に高い分…

  • 煩雑さはそのままにそこに無理やり秩序を被せたところで、効率の悪さに現場は反発し、結果的に業務は回らなくなる

    変革活動がスタートしてから2年が過ぎようとしていた。 すべてが順調なわけではなかったが、それでも海外事業は右肩上がりの成長を続け、低迷する国内事業を支えていた。しかし、この1年は成長が鈍化し、社内での不協和音も聞こえ始めていた。 「次なる改革に手を付けるときが来た」 笠間はそう思っていた。 そんな折、笠間は大島からの電話をとった。大島は1年前に常務に昇格していた。 翌日の予定を聞かれ、笠間は9時に常務室に伺うことになった。 大島は予想通りの言葉を口にした。海外事業を再編成し、かつての成長力を回復せよとの指示だった。 二人の会話で真っ先に取り上げられたのが「属人性」だった。 急成長したこともあり…

  • リーンスタートアップで、顧客の体験に基づいた反応をタイムリーに手に入れる

    戦略的パートナーへの第一歩がスタートした。アポロマシナリー側のプロダクトマネジメントチームとの議論は順調に回り始めた。 ところが、ここにきて足を引っ張る存在が現れた。それは小野寺工業の社内にいた。ベース機開発を担っていた事業部だ。 笠間たちは一刻も早く、アポロマシナリーに対して、開発中の新型加工制御装置を見てもらいたかった。開発の早い段階にアポロマシナリーの反応を確認したかったからだ。ところが、ベース機のプロジェクトマネージャは「無茶を言わないでください、恥ずかしくない状態にして見てもらうには、あと半年はかかりますよ」と声を荒げた。 「中途半端な状態で軽はずみに実機を見せても、期待するような反…

  • レイヤ・バイ・レイヤの関係が失注リスクを格段に低下させる

    OBFコアメンバーと営業メンバーたちは、浦田の指導の下、アポロマシナリー向けのディスカッションマテリアルの作成に取り掛かった。 今回のディスカッションマテリアルは、アポロマシナリーのプロダクトマネジメントチームとの間で予定されている4度にわたる議論を想定してのものだった。このプロダクトマネジメントチームは、アポロマシナリーの中でも主力の大型工作機の担当だった。 ディスカッションマテリアル作成の流れはこうだった。 まずはエンドユーザー分析に着手する。その後、大型工作機市場の将来予測を行い、その流れで大型工作機の将来像を固める。最終的には、この将来像を実現するために、アポロマシナリーと小野寺工業、…

  • お客様との議論はディスカッションマテリアルで盛り上げる

    笠間たちはアポロマシナリー対応をしている営業担当者を呼び出した。 夕方から始まった会議は深夜まで続いた。 笠間は「戦略的パートナー」の話を興奮気味に説明した後、顧客との関係構築の必要性を熱く語った。「ディスカッションマテリアル」という言葉が、笠間の口から何度も発せられた。実はこの話は浦田からの受け売りだったが、この話を聞いたとき、笠間はいたく感銘を受けたのだった。 浦田から戦略的パートナーの説明を受けたとき、笠間は、その言葉の意味をおおよそ理解できた。しかし、どうやってその関係を作り上げればいいのかは全く見当がつかなかった。笠間の不安げな表情を読み取った浦田の口から「ディスカッションマテリアル…

  • 「顧客の顧客」が抱える潜在的な課題をつかみ、顧客にとっての戦略的パートナーを目指す

    アポロマシナリーへの顧客開拓活動がスタートしたのはこの直後だった。 アポロマシナリーからは以前に引き合いがあり、加工制御ソフトウェアを提供した実績があった。関係者の話ではその後も細々と関係は続いているようだったが、それを裏付ける情報は見つからなかった。そこでソフトウェア事業部の当時の担当者に連絡をとったところ、話を聞くことができた。この引き合いの後も何度かRFPをもらったが、いずれも受注には至っていないということだった。 笠間たちOBFコアメンバーは、浦田のアドバイスに従い、アポロマシナリーがどんな課題を抱えているのかと想像を巡らせた。 アポロマシナリーの戦略的パートナーを目指そうにも単発の面…

  • 顧客との間で戦略的パートナーの関係を築き、RFPの前に自分たちの強み(=選ばれる理由)を刷り込め

    季節は夏に近づいていた。新体制が発足してすでに3ヶ月が経過していた。 笠間たちOBFコアチームの活動は、計画から計画の実行に移り、そろそろ実績につながるきっかけくらいは出てきてほしい時期に差し掛かっていた。 新組織が発足する少し前あたり、事業計画作成で盛り上がっていた時期に、笠間は事業部長たちに集まってもらい、顧客開拓の重要性を伝えていた。かくしてこの時期には、OBFコアチームは、事業部と兼務で参加しているOBFメンバーたちと共に顧客開拓のための活動を開始していた。 ドイツのフランクフルトで開催された工作機の展示会に出展した折には、ブースに来訪した2社の工作機メーカーからRFP(提案依頼)を獲…

  • 投資には「ポジティブ」と「ネガティブ」があり、ポジティブな投資は、将来に引き継ぐ価値を生み出すことで次の戦略を支える

    「今日は投資についてお話させてください」 浦田は笠間たちOBFコアチームを前にしてこう切り出した。 岡を中心に進めている市場分析は順調に完成に近づいており、そろそろ投資計画を具体化しなければいけない時期だった。 「投資には、ポジティブな投資とネガティブな投資があります」 浦田の話はこうだった。 ひと言で「戦略」と言ってもその内容は様々だが、シンプルにとらえると、戦略とは経営資源配分を決定することに他ならない。 戦略は実行に移されてこそ意味を持つが、それには資金が欠かせない。言い換えれば、何にどれほど投資するかは戦略そのものと言える。投資のあり方が事業の将来を決めると言っても過言ではないわけだ。…

  • 目標はトップダウンで決めるものであり、それを達成するための手段は、達成の見込みが立つまでボトムアップで積み上げる

    浦田と笠間が連れ立って飲みに行くのは、これが3度目だった。1度目は、浦田が変革活動に参加して間がないころ、2度目は組織改革の方針を社長が承認したとき、そして今回が3度目だった。 「今回のような目標設定のやり方は当社では初めてです。現場に落とし込んだときには相当な反発が予想されます。特に、スロースタートを主張していた海外営業部の反発は相当なものでしょう」 笠間は声を潜めてそう言った。 新体制では、数名の体制でまわしてきた海外営業部はテコ入れさ、それなりに規模になることが決まっていた。それゆえ彼らの発言力は強まってはいたが、営業本位に偏った彼らの声は、オファリングベースで事業計画を作成する過程で徐…

  • 事業部ごとにバラバラだった事業運営を、オファリングモデルの概念がひとつにまとめ上げる

    新体制が承認されてからしばらく経ったある日、浦田は久しぶりにソフトウェア本部長の大島のもとを尋ねた。大島は、今回の変革活動に浦田を招き入れた人物であった。たまにメールで状況を報告してはいたが、この日は直接に会って説明しようと考えた。 大島は大きな笑い声で「社長はそういう人だよ」と言った。 1時間ほど話したあと、大島の口から、浦田とのコンサル契約をあと半年は継続したいと告げられた。それゆえ腰を落ち着けて活動に当たってほしいというひと言も付け加えられた。 この日の午後から、笠間たちコアチームメンバーと浦田は事業計画に着手した。 大型工作機を主力としている小野寺工業は、ハードウェア本部に3つのハード…

  • スポンサーシップなくして変革なし! 大組織のイナーシャは大きいが、意思決定のシナリオとスポンサーシップがあれば動き出す

    海外事業の立ち上げが実行に移されようとしていたころ、笠間は変革活動に明け暮れたこれまでの半年間を振り返り、その成果を経営陣に報告した。 経営陣の支持を得られたことで、笠間たちOBFコアメンバーには落ち着いて考える時間がほんの少しだけ戻ってきた。笠間たちと浦田は2か月後に差し迫った組織改革に向け、新しい組織体制の設計に取り掛かっていた。 当初は、現在の組織をできるだけそのまま残すという方針が出ていた。変革がスタートして間がないころ、一部の経営陣が性急すぎる変化を警戒たからだった。 しかし、今はそんなことはない。現場は、予想をはるかに上回るペースで変化を受け入れていった。せっかくここまで盛り上げて…

  • 表面的な部分にばかり目を奪われていると、せっかくの変革施策は定着せずに終わってしまう 大切なのは、意識改革のような基礎工事にあたる部分だ

    笠間たちの目の前には課題の山が広がっていた。 消極的スタートの汎用工作機事業は後回しにするとして、欧米の大型工作機メーカー向け加工制御装置事業だけをとっても以下の課題が残っていた。 加工制御装置ベースシステムの商品企画 コスト競争力の強化 大型工作機メーカーの開拓、関係構築 大型工作機メーカーに対する提案力強化と提案機会の発掘 加工制御装置ベースシステムを開発するための先行投資の獲得 量産能力の確保 課題を再認識した笠間たちは、事業立ち上げシナリオをステップ・バイ・ステップで描き出すことにした。 その手始めに、まずは変革テーマを洗い出した。 競争力のあるベースシステムを企画・開発するには商品企…

  • 事業立ち上げには情報が欠かせないが、これがネックとなることは多い まずはクイックに動き、情報収集のための予算を獲得しよう

    役員会では投資に対する議論が交わされた。 東南アジア向けの汎用工作機の開発、東南アジアにおける汎用工作機メーカーの買収、大型工作機メーカー向けの加工制御装置ベースシステムの開発にはまとまった金額の投資が必要となる。小野寺工業にとっては、どれも大きな投資だった。 投資の議論に絡み、近畿工作機の競争相手に当たる海外の大型工作機メーカーに、心臓部とも言える加工制御装置を提供することへの懸念の声も上がった。 これに対し、笠間はビシッと言い放った。 「今のままでは、いずれは近畿工作機からも完全に切られてしまいます。そもそも、私たちが加工制御装置を提供したくらいで海外勢に負けてしまうような近畿工作機だとし…

  • 他社のベストプラクティスを安易に真似するだけでは、組織はバランスを失い、取り返しのつかない結果を招く

    行きつ戻りつの議論の末、海外事業の事業モデルは以下の2つに絞り込まれた。 ① 東南アジア向けの汎用工作機事業モデル ② 欧米の大型工作機メーカー向けの加工制御装置事業モデル その内容はこうであった。 ① 東南アジア向けの汎用工作機事業モデル 機械化が十分ではないアジア諸国をターゲットに汎用工作機を販売する。 アジアの汎用工作機メーカーに加工制御装置を販売する、いわゆる「装置メーカー」モデルも考えたが、工作機メーカーにノウハウを盗まれて最終的に切り捨てられたり、加工制御装置分野で小野寺工業のライバルになられたりしたのでは都合が悪い。敵に塩を送ることになってしまう。 そこで、東南アジア向けに関して…

  • 新しい事業を立ち上げるには既存顧客を狙っていたのではダメ! マーケットセグメンテーションから始めてターゲットを絞り込もう

    笠間たちは海外の情報を収集し、大型工作機メーカー、装置メーカー、構成機器メーカーといった大型工作機の提供側とそれを購入する側にどんなプレイヤがいるのかを調査した。笠間と浦田は、以前に大雑把な議論をしたことはあったが、情報収集するのはこれが初めてだった。 ただし、時間をかけるわけにはいかなかった。時間がかかればかかるほど、チャレンジの重大さや難しさに疎い幹部たちが黙ってはいない。 一番多くの情報を持っていたのは、海外汎用工作機メーカーに加工制御ソフトウェアを提供している汎用ソフトウェア事業部だった。ここは大島の古巣なこともあり協力的で、情報収集はスムースに進んだ。 彼らから、工作機市場に詳しい米…

  • なぜ選ばれるのか? 誰に選ばれるのか? 企業にはこの問い掛けが特に大切だ

    ソリューション型を目指すことは決まった。 しかし、これは「どうやって海外事業を立ち上げるのか」の答えにはなっていない。 自分たちの競合相手になるのは、マーケットインのソリューション型で戦ってきている強敵たちだ。世界的には風変わりでしかない、小野寺工業の「御用聞き」手法が通用するわけない。 これを機会にソリューション型に切り替えることができたとしても、それはスタート地点に立てただけのこと。並みいる競合の中で勝利を勝ち取るためには、小野寺工業ならばこその手法を見つけ出さなければいけない。 浦田はコアチームのメンバーを相手に「私たちは、なぜ選ばれるのでしょうか?」と尋ねた。 浦田は外部のコンサルタン…

  • 御用聞きでは世界に通用しない! 顧客を観察し、顧客の要求を射止めたソリューションで勝負する

    「どうやって海外事業を立ち上げるのか」 笠間たちコアチームのメンバーは、この難題に正面から向き合うことを決めた。 その手始めに、事業方針をざっくりと固めることになった。 小野寺工業の社員たちは顧客の要求に応えるリアクティブな活動に慣れ切っていた。ところが海外事業はそうはいかない。近畿工作機のように、競合他社に声を掛けるようなこともせず、自分たちの欲しいものを機能レベルで要求してくれる顧客は海外にはいない。海外で勝ち残るには、競合相手を打ち負かさなければならないのだ。 浦田は、ビジネスの仕組みの再構築はもとより意識改革が欠かせないことを笠間たちに伝えた。 顧客からの引き合いを待つのではなく、プロ…

  • よくできたディスカッションマテリアルは、発散しがちな「I(アイ)型人間」たちの議論を効果的で効率的なものに変える

    小野寺工業は、ハードウェア本部、ソフトウェア本部、サービスビジネス本部という3つの本部で成り立っていた。 笠間の依頼で、各本部から2名ずつのOBF(Our bright future:小野寺工業のチャレンジを担う変革チーム)メンバーが選出されていた。浦田がコンサルタントとして関わるずっと前の話だ。彼らは本業を持ちながら、兼務でOBFに参加していた。このころから、笠間たち3名はOBFコアチーム、各本部からの6名を加えたメンバーをOBFチームと呼ぶようになった。 この活動は、体制面や権限移譲の面で課題を抱えており、すぐに頓挫した。浦田が参加したのはちょうどそのタイミングで、新生OBFチームのキック…

  • 最初に大切なのは、状況を大きくとらえて事業のイメージを固めることだ

    笠間は事業立ち上げに着手したが、それは雲をつかむような話だった。Push型、Pull型の話も内容としては理解できたが、それを実現しようとするとイメージがわいてこなかった。 浦田は笠間からの相談を受け、彼なりの事業立ち上げイメージを説明した。根底には、かつてハイテクメーカーで同じような事業立ち上げに関わった際の気付きや反省があった。 先ず、海外市場の情報を収集し、業界プレイヤを調査する。ただし、時間はかけない。次に、自分たちの商材(加工制御装置、加工制御ソフトウェア、機器など)や技術を棚卸しし、事業方針をざっくりと固める。この時点で経営陣に中間報告し、組織の承認をとる。 市場分析の結果からマーケ…

  • 組織変更は手段のひとつでしかない! 「まずは組織変更」は日本企業の悪い癖だ

    笠間の組織構想を練り始めた。それは、海外事業推進部を社長直下に立ち上げ、各事業部内に海外専任チームを置くというものであった。海外事業の全体責任は海外事業推進部が持つが、具体的なやり方は各事業部長に任せるという。 このやり方では、海外事業への力の入れ方は、国内事業しかやったことのない事業部長に委ねられることになってしまう。 笠間は「事業部長たちには、時間をかけて理解してもらうしかない」と言うが、たやすいことではない。 事業部長たちには危機感が欠如していた。頭ではわかっていたが、一歩踏み出すのはハードルが高い。 変化を嫌い現状にしがみつくこのような行動の理由を「過去の栄光を忘れられないからだ」とか…

  • 事業運営のスタイルをPull型からPush型に切り替え、攻めに転じる

    大島は、こんなこともあろうかと予備予算を確保していた。浦田は、この予算でOBFの支援を引き受けることになった。 コンサルタントが顧客に受け入れられるのは簡単ではない。特に日本の製造業はよそ者には閉鎖的だ。いきなり「ああしろ、こうしろ」とやったら、それこそ修復不能な亀裂が生じかねない。 こういう時は、OBFの生い立ちやこれまでの活動内容、その結果わかったことなど、先方が話しやすい内容をテーマにするに限る。今回もこの手を使った。浦田は、OBFを代表して説明してくれる笠間の話に黙って耳を傾けた。手元のパソコンでは、浦田の口から出たキーワードだけでなく、疑問点やアイディアを器用に書き込んだ。笠間の説明…

  • 系列崩壊の時代に日本企業はどう動くべきか

    近畿工作機は生き残りを賭け、系列会社の切り捨てに手を付けた。 これまでのように無条件に系列会社に発注することはなくなり、系列外の装置メーカーや海外メーカーにまでRFPを出し、提案を求めるようになった。小野寺工業が近畿工作機の案件をはじめて失注した時、社内に衝撃が走った。受注したのは英国のメーカーだった。 小野寺工業は業績が悪化し始めてやっと、自分たちの置かれた状況に気付いた。 近畿工作機だけを頼みにしていたのでは、近い将来、事業は成り立たなくなる。実際、この年の事業運営は赤字転落の危機を迎えていた。かろうじて黒字を維持できていたのは、その他の2つの事業があったからだった。 1つは、とあるきっか…

  • Good enough(今のままで十分だ)の時代がやってきた

    近畿工作機をはじめ国内の大型工作機メーカーは当初、海外からやってきたこれらの汎用工作機メーカーの動きを完全に無視していた。 「所詮、汎用工作機のできることなんて知れているさ」「日本の大型工作機は極めて優秀なので、海外の汎用工作機ごときがこれに置き換われるはずがない」「大型工作機の市場と小型の汎用工作機の市場はまったくの別物で、お互いに重なり合うことなどありえない」。 ところが、大型工作機の市場は変化しつつあった。 これまで大金をはたいて大型工作機を購入してきた国内の精密機メーカーや重機メーカーでさえ、近年は海外勢との激しい消耗戦で疲弊しつつあった。 彼らにとっては、費用対効果が一番の関心の的に…

  • 逆風の中で何を思うのか

    小野寺工業は大型工作機の国内最大手である近畿工作機を主な取引先としていた。 大型工作機の場合、顧客ごとにさまざまな仕様で発注される。近畿工作機は顧客の要望に応じて大型工作機を開発する際、小野寺工業に加工制御装置の基本仕様を渡し、開発を指示していた。加工制御装置とは工作機の頭脳に当たる部分で、マン・マシン・インタフェースとしての操作画面を備えた箱型の装置である。小野寺工業と近畿工作機には資本関係こそ無かったが、小野寺工業は事実上、近畿工作機の系列会社の位置付けだ。 両者の関係は、小野寺工業の創立当時までさかのぼる。 小野寺工業は世間的に名の通った企業だが、これまでは、自主事業と呼べるものではなか…

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