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  • 古代ペルシアの宮殿遺跡ペルセポリス(中編)

    新春(ノウルーズ)の祝祭を催す壮麗な宮殿として建てられた優美なペルセポリスがやがて廃墟と化してしまったのは、アレクサンダーがペルシアに侵攻した際にペルセポリスを焼き討ちしたことに端を発しています。アレクサンダーは、当時アケメネス朝ペルシアの州(サトラピ)のひとつだったギリシアに対して反乱を起こしたマケドニアの司令官で、その後ペルシアにも侵略した歴史があります。 実はアレクサンダーの焼き打ちで廃墟と化したペルセポリスの悲劇は近代になっても繰り返され、欧米の考古学者などが発掘のために押し寄せた際に、壮麗な壁画や彫刻や宮殿の柱や黄金の杯などの秘宝の数々がバラバラに切り取って持ち出さ

  • アケメネス朝ペルシアの宮殿遺跡ペルセポリス(前編)

    ペルシア(イラン)の世界遺産といえば、真っ先に思い浮かぶのが古代アケメネス朝ペルシアの首都ペルセポリスです。西はギリシア、東はインドまでの広大なアケメネス朝ペルシア帝国は20の州(サトラピ)から成る古代初の連邦国家で、2500年前も昔のものとは思われない技巧を凝らしたアスファルトを敷いた「王の道」がこの広大な連邦国家を結んでいたことは、世界史の教科書でもお馴染みですね。この広大なアケメネス朝ペルシアにはシーラーズ近郊のペルセポリスの他にもバビロン、スーサ、エクバタナ、という複数の首都がありました。 アケメネス朝ペルシアの広大さと連邦国家としての性格から、複数の首都があったことはご

  • 世界の半分、サファヴィー朝の古都イスファハーン(中編)

    イスファハーンで数々のペルシア建築に足を運び、壮麗なドーム型建築やアーチ型の回廊の下に佇んでいる時にふと思い出すのが、子供の頃によく通ったプラネタリウムの大きなドームのこと。プラネタリウムに映し出された星座たちを仰いで見とれているうちに、夜空に飛び込んでしまったような浮遊感に包まれて、たった30分ほどの番組が終わって立ち上がると、足がふらふらしてしまったりしたこととか。繊細なタイル細工が一面に施されたペルシア建築のドームはもちろん、プラネタリウムとは比べものにならない壮麗さなのだけれど、例えばシェイフロトフォッラーモスクの黄金色のアラベスク模様に覆われた美しいドームは、きらびやかな星

  • 世界の半分、サファヴィー朝の古都イスファハーン(前編)

    イラン(ペルシア)の見どころとしてたぶん一番と言っていいくらい有名なのは、江戸時代とほぼ同時代に興ったサファヴィー朝ペルシアの首都だったイスファハーン。ヨーロッパから貿易商たちがペルシアの文物を求めて詰めかけ、フランスの旅行家シャルダンも挿絵入りの豪華な旅日記を残し、世界の半分と謳われたサファヴィー朝時代の壮麗な街は、今も当時の美しい面影を残しています。 たとえば、サファヴィー朝の王宮やモスクやマドレセと呼ばれるイスラム神学校や細い裏通りがどこまでも続く大バーザールが立ち並ぶ大複合建築の「王の広場」(ナクシェ•ジャハーン)。壮麗なペルシア建築が立ち並ぶこの大きな広場では当時、

  • ペルシア文学のなかのワインの酒杯(その1 ハーフェズ占い実践編)

    ペルシア文学におけるワインといえばやっぱり、まず思い浮かぶのがハイヤームやハーフェズです。今日はおまちかねのハーフェズをめくって、ちょっと文学的なハーフェズ占いを! 愛の旅人たる長老がそなたに酒を勧める時/「酒を飲み、神の慈悲を待て」と言う/ジャムの如く目に見えぬ秘密に達したくば/来たれ、世を映す酒杯の友となれ/世のことが蕾のごとく閉ざされていても/そなたは春風の如く結び目を解く人となれ (黒柳恒夫訳「ハーフェズ詩集」平凡社) 詩のなかでワインを注いでくれる長老はハーフェズに愛や人生の旅路とは何たるかを教えてくれる神秘主義の長老で、心に困難を抱えたハーフェズに、「さあ

  • 世界最古のワインとビール

    シーラーズのワインの話が出たところで、今日は世界最古のワインとビールについて。 今までに見つかった世界最古のワインの痕跡は、イランのウルミエで出土された7000年前のワイン造りの壺やグルジアで発見された8000年前のワイン製造場跡だそうです。また世界最古のビールについては、イラン西部のザグロス山脈にあるゴディン・テペ遺跡で5000年以上前にビール醸造に使った壺(写真)やビール造りを図解した素焼きレンガ(写真)などが見つかっています。 ウルミエやゴディン・テペの発掘については90年代の当時New York Times やNature などで取り上げられ、ワインやビールをめぐる考

  • 古都シーラーズで薔薇色に染まるモスク(前編)

    今日はペルシアの古都シーラーズから。シーラーズというと聞いたことのない人でも、ワインの銘柄の「シラーズ」はきっとどこかで目にしたことがあるかもしれません。シラーズ(Shiraz)はワインの産地として有名だったシーラーズの葡萄を植えてつくったワインで、知る人ぞ知る手頃で美味しい銘柄ですね。40年前のイラン・イスラム革命でシーア派イスラム色が前面に出てくる前の王政イラン(当時の国名はペルシア)では、昔から伝統のあったシーラーズ産のワインが有名で、この古都の葡萄は今も所を変えて美味しいワインを生み出しているという訳です。 そんな訳でシーラーズは昔からワインの街としても知られて

  • ペルシアのパンの話(中編)

    いつも焼きたてのおいしいパンが欠かせないペルシアの食卓には、キャバーブや煮込み料理とご飯という献立の時でも、ちゃんとパンが並んでいます。 パン好きな人たちがとにかくパンをよく食べることといったら!特にパン好きなことで知られているイラン西北のアゼルバイジャン地方の人たちはスパゲッティやご飯までパンに挟んで食べていたりとか(!)焼きそばパンやラーメンライスのような感覚なのかもしれないけれど、何が出されても、「お腹が一杯になるようにパンと一緒に食べよう」というフレーズをよく聞くし、本当に何でもサンドイッチにして食べるので、ついつい可笑しくなってしまうのです。 サンドイッチとい

  • ペルシアのパンの話(前編)

    ペルシア文化圏の主食はやっぱりナンと呼ばれるパン。九千年とも言われる歴史を持つパン焼きの文化があるペルシアでは、街角のパン屋さんは朝も昼も夜もかまどで焼いた焼きたてのパンを買う人たちの行列でいっぱいです。 もちろん、キャバーブと呼ばれる串焼きや手の込んだ様々な煮込み料理と一緒にご飯もよく食べるのだけれど、主食はやっぱりパンなので、食事時のペルシアの街角はいつも、一抱えもあるパンの山を抱えて家路に急ぐ人たちと、おいしそうなパンの匂いで溢れています。 パンの種類は色々あるけれど、よく出回っているのは、サンギャク、バルバリー、ラヴァーシュ、タフトゥーンという4種類で、サンギ

  • ペルシアの七草粥(後編)

    昨日お届けした、願い事が叶うペルシアの七草粥。でもよく考えてみると、どろっとした見かけも、素朴ながらとっても甘い味わいも、今の日本に伝わる七草粥よりもぜんざいやおしるこのほうに似ているんですよね。 そこでぜんざいのルーツを辿ってみると、出雲に伝わる神在餅(じんざいもち)にあるそうです。十月に日本中の八百万の神々が出雲に集まるので神在と言って、小豆を煮てお餅を少し入れたものをお供えにしたそうです。そんなルーツを持つぜんざいやおしるこは、昔から立春の頃の節分に厄よけを願って頂いたり、また厄よけぜんざいと言って、厄年の人がぜんざいをご近所の人たちに振る舞って厄払いの祈願とする風習も、も

  • ペルシアの七草粥(前編)

    中国から伝わってきた七草粥の風習は、一月六日にうら若き乙女が春先の野に出て七種類の若菜を摘んで七草粥を用意し、一月七日の朝に頂くというものでした。旧暦のお正月は立春の前後だったので、春一番の若草をお粥にしてお正月の食卓に並べるという、農事暦のお祝いだった訳ですね。 さて中国からさらにシルクロードを西にたどって行くと、実は、七草粥の文化は遠くペルシア文化圏まで及んでいます。ペルシアに古くから伝わる七草の風習では、春先に七つの穀物の新芽を育ててお正月のお飾りにし、この新芽をコトコト炊いた七草粥をお正月の食卓に並べていたそう。何故七草かというと、七つの新芽の伸び具合から今年はどの穀物が

  • 世界の半分イスファハーンに佇むアルメニア教会(後編)

    さて、アルメニア地区を散策しながら、点在するアルメニア教会の建築を見ていくと、ドーム型の丸屋根やタイル細工、建物内部の装飾、庭の様式など、ペルシアの伝統建築と似ているように思われる部分がなぜか多いのです。どうやら、外から一見するとドーム型の丸屋根がかぶったモスクのようにも見えるのに、中に入ってみると、東方教会独特のカラフルな色彩に溢れたな装飾で散りばめられていて、教会だとわかる(!)というのがこれらの教会建築の特徴なのです。きっとオスマン朝下で迫害されていたアルメニア教徒たちがイスファハーンに亡命してきた時、少数派の彼らが安心して暮らせる町をつくろうとした建築家たちの仕掛けだったのか

  • 世界の半分イスファハーンに佇むアルメニア教会(前編)

    ペルシアことイランの宗教はイスラムの少数派シーア派一色だと思われがちだけれど、実はシーア派以外にも様々な宗教の人々が住んでいて、それぞれの信仰や風習や言語などをしっかりと保っていることは、あまり知られていないかもしれません。 現在のイランそしてかつての広大なペルシア帝国にイスラムが入ってきたのは、6世紀前半のことですが、文明の十字路と呼ばれたこの一帯には、(たとえば砂漠日記で紹介したルート砂漠に眠る9千年前の文明など) 様々な地域に様々な古代文明が栄え、様々な宗教が行き交ってきた長い歴史があります。たとえば世界最古の宗教とされるミトラ教や、時の神を信じた古代のズルバン教や、世

  • ハーフェズ占い

    前回お約束していたハーフェズ占いについて。 ペルシア文学の古典中の古典、神秘主義詩人ハーフェズの暗示と寓意に満ちた意味深長な詩は無数の解釈と読解が可能な詩体であって、その美しく暗示的で造詣に満ちた独特の詩法で、様々な思いで彼の詩を手にとる人々の心を力強くかつ繊細に癒してくれる。こうして、悩み事や心のわだかまりを抱えた人々が思い思いにハーフェズの詩集を開いて彼の神秘主義詩に水先案内を求めてみるのが、今でもペルシア文化圏で多くの人々に親しまれているハーフェズ占い。多くの家庭の本棚にはコーランと並んで美しい装丁のハーフェズ詩集がそっと置かれていたり、街角のハーフェズ占いでは、鳥かごの小

  • ペルシアの春のお正月(2)

    数千年という歴史を持つ庭園文化が根付いたペルシアの春は、春の訪れとともにまるで天上のような美しさを見せてくれるペルシア庭園の美とともに始まります。それは例えばフィッツジェラルドの英訳で一躍有名になった四行詩人のハイヤームがこんな風に歌った一瞬が永遠に変わるひととき… 菫は衣を色にそめ、薔薇の袂に そよかぜが妙なる楽を奏でるとき、 もし心ある人ならば、玉の乙女と酒をくみ、 その杯を破るだろうよ、石のに。 (オマル・ハイヤーム「ルバイヤート」小川亮作訳、岩波文庫) ペルシアの春がまるで時空を超越したような天上的な美に包まれているのは、春を待ち望み、誰もが一緒になっ

  • ペルシアの春のお正月(1)

    あけましておめでとうございます🌹 お正月とともに大寒が近づいて、これから冬本番!という季節ですが、お正月を迎えると、なぜか気分はもう春に向かっていますよね。それもそのはず。実は冬至から大寒の寒さが増すこの季節には、大地の奥のほうで植物や種が息を吹き返して、春の芽吹きへと向けてひっそりと活動を開始しているから… 明治時代に日本に西暦が入ってくるまで、旧暦の伝統的なお正月はもともと春の訪れを新年のはじまりとした農事暦に基づくもので、お正月を(冬なのに!)初春と呼ぶのも旧暦の倣わし。新年を迎えたとたんに初春の気分が昂揚して、寒空の下でどんなに木枯らしが吹いていても春を想って頑張れ

  • 砂漠の旅日記2 世界一不思議なルート砂漠

    イラン(ペルシア)の小さな砂漠アブー・ゼイド・アーバードへの旅日記の途中なのだけれど、旅日記を続ける前にちょっと寄り道して、この国で最大の砂漠ルート砂漠についての話。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 世界で最も熱くて、最も不思議なルート砂漠 ラクダに引かれた隊商(キャラバン)が行ったり来たり、はたまた盗賊アラジンがキャラバンを襲ったり、開けゴマの呪文で盗賊たちがお宝を隠した洞窟の岩扉が荘厳に開いたり、あるいは、サン・テグジュベリが飛行機で不時着した砂漠で星の王子様に出会った

  • コーヒ占い

    最近、本屋さんでコーヒー占いの本を見つけたのをきっかけに、ちょっとコーヒー占いに凝っている。トルココーヒーを飲んだ後、カップにソーサーを乗せて逆さにしてから数分待って、出し殻がソーサーに落ちてきた時の絵柄で今の運勢を占ってみるというものなのだけれど、特に、神妙な面持ちで結構本気で信じているらしいイラン人の友達と一緒にやってみると、どんな風に絵解きをするんだろう?という好奇心も手伝ってなかなか面白い。 初めてイランに来た時は、ホームステイ先の奥さんがコーヒー占い好きで、来る人来る人にコーヒーを沸かしては占いをしてあげていた。私も何度か占ってもらったのだけれど、「ほら、ここに電話

  • パンの話

    イランではキャバーブやホレシュ(各種煮込み料理)と一緒にご飯をよく食べるけれど、主食は何かというと、やっぱりナンと呼ばれるパンのようだ。テヘランでは、ラバーシュ、サンギャク、バルバリー、タフトゥーンという4種類のパンが普通で、サンギャクならサンギャクを焼くパン屋さんと、それぞれ専門のパン屋さんで売られている。パン屋さん(nanva)では朝、昼、夜の3回にわたってパンを焼き、食事時にはいつも焼きたてのパンを買う人たちの行列が見られる。 テヘランはタブリーズなどアゼルバイジャン系の人が多いせいか、アゼルバイジャン地方の人たちが好むサンギャクやバルバリーのお店が多い。サンギャクもバ

  • 砂漠の旅日記① 砂漠の夜

    先週末にイラン(ペルシア)で人気のエコツアーに参加して、バラで名高いカーシャーンから少し離れた小さな砂漠アブー・ゼイド・アーバードへの旅に行って来たので、数回にわたって旅日記とイランの砂漠の話。 砂漠へのエコツアーが冬場に組まれるのはもちろん、夏場の灼熱の砂漠を避けるためで、冬砂漠の星空に抱かれるロマンチックなエコツアーは女性に大人気でした。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 砂漠の夜 イランについてよくあるイメージのひとつが、イランという国はアラビア半島のような広大な砂漠で、タ

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