「俺がソファーで寝るから、ルルはベッドで寝たらえぇよ。」 静かに言って、彼はソファーに横になった。 雪が彼に寄り添うように丸くなっている。 雪まで私の味方になってくれない。 考えてみたら、私は好きな人に自分のイヤな所をあまり見せない。 嫉妬心もそうだ。 嫌われるようなことは...
雪を迎えに行った。 ニャアニャア鳴きながら足元にすり寄って来るのが可愛くて、キャリーには入れずに抱っこして帰って来た。 もうかなり大きく成長しているけれど、まだまだ子供だ。 部屋に帰るとホッとした。 スーツケースを開けて洗濯物を取り出す。 クリーニングに出さなければいけない...
キスをしながらスーツのズボンを脱いで貰う。汚してしまうと申し訳ない。 昨日タクシーを呼んでくれた高身長のボーイが冷えたシャンパンをサイドテーブルに置いて行く。 志賀さんはそれを口移しで私の舌の上に流し込んでくる。 もう少し酔いたい・・・そう思っていたら朱莉さんが桃のお酒を持...
朱莉さんのショップには500着近いドレスが並んでいた。 志賀さんは胸元が開いていない露出の少ないドレスを選んでいく。 昨日買って貰ったドレスは黒だった。 他の色を選びたい。 シャンパンゴールドのレースのが可愛いかったけれど、彼はロイヤルブルーのドレスを気に入っていた。 志賀...
待ち合わせ場所のロビーに早めに降りた。 朱莉さんはもう来ていた。 手をヒラヒラと振って知らせて来たのが可愛かった。 A「こんにちは。昨日は大丈夫だった?」 R「こんにちは。大丈夫でした。」 S「大丈夫ちゃうわ。」 A「あら?吐いてしまったん?」 R「それは大丈夫でした。でも...
私はすぐに周りの事が気にならなくなった。 お酒の力は偉大である。 あと若さは偉大。欲望が理性に勝つ。 「ちょっと~。帰ってやりなはれ。」 振り向くと朱莉さんが立っていた。 「さすがに従弟のセックスは見たないわ~。」 と苦笑いだ。 私は顔が熱くなった。 「せっかく私が気に入る...
朱莉さんも同行してくれた。 私が 「本当にすみません。」 と謝ると 「あの桃のリキュール80度なんだよね。だから、酔って当然やねん。」 と笑った。 志賀さんがムッとしたのが分かった。 「それは先に言わんとあかんやろ。」 と怒っていた。 2階の喫茶は不思議な空間だった。 蚊帳...
志賀さんはお母様が通っているという美容室に私を連れていった。 髪を夜会巻きにしてお化粧してもらう。 その間に志賀さんはホテルを予約し、誰かに電話を掛けていた。 本当に行き当たりバッタリの旅だ。 何処に行くつもりなのだろうか。 不安になる。 私が着ていたタンクワンピースには、...
志賀さんは私に 「ここに居ればいい。」 それだけ言って何も言わなかった。 私の母をどう思ったのだろう。 ただ、良い印象なんて持てないことだけは分かっていた。 私のことだけなら、まだいい。 でも、彼の家族のことまでひどく言った母を私は許せなかった。 彼に何を話せばいいのか分か...
月曜日の朝、志賀さんと部屋を出た。 彼は私に合鍵を渡してくれた。 付き合い始めた頃に渡してくれようとしたけれど、私は受け取らなかった。 付き合ってはいても、勝手に部屋入れる状態には抵抗があった。 その時も 「変わってるな。」 と言われたことを思い出した。 私は歩いて職場に向...
9月になっても母は私を無視し続けた。 話し合いなんて程遠い。 お見合いに関しては、仕方なく一度だけ会って断る私に対して彼女は半狂乱で責め立てて来た。 最終的に勝手に良い返事をして、私はデートする羽目になっていた。 悪い人達では無かったのかも知れない。 でも、噛み合わない会話...
私は志賀さんにお見合いのことを話した。 彼は黙って聞いていた。 母親が吐いた暴言に近い言葉は伏せた。 話終えると 「挨拶に行くわ。ご両親のご予定を聞いておいて。」 と言ってくれた。 「その前にうちの親父に会ってくれへん?」 とも言われた。 私は頷いた。 8月最初の水曜日に私...
私とタクオは3日に1度くらいの頻度で話していた。 他愛もない話だったり、テレフォンセックスしたり・・・だった。 私の性欲は強いのか?問題に関しては特定の人にだけ強いという結論を出した。 私と志賀さんの関係には 「うまくいってるならそれが一番だよ。」 と言っていた。 志賀さん...
志賀さんの部屋で雪と遊んで過ごした。 汚してしまったシーツを洗って干す。 気持ちのいい風がベランダから入って来る。 雪を抱っこして外を見ていた。 「なぁ。結婚せぇへんか?」 志賀さんが言って来た。 「一年経ったら考えようって言ったじゃん。」 私が言うと S「せやけど・・・俺...
雪をケージに入れる。 十分に遊んであげていたせいか、ベッドで丸くなって寝ようとしていた。 私をベッドの前に立たせると志賀さんがバスタオルを外す。 キスをしながら、彼の膝の上に座った。 「綺麗や。」 と言われて顔が熱くなる。 抱き合って長いキスをする。 濡れ始めたのが分かる。...
シャワーで身体を濡らすと 「身体洗ってやるよ。」 と言って来た。 自分で洗うと言うと、次は 「洗わせて下さい。」 と言う。 笑ってしまう。 私の身体の隅々までを泡のついた掌が撫でていく。 段々指先での刺激に変えて行こうとする志賀さんに 「ちゃんと洗って。」 と笑いながら言っ...
私達は付き合い始めた。 付き合い始めたけれど、それまでと変わらなかい付き合い方だった。 変わったことと言えば、志賀さんの部屋で過ごすことが増えたくらいだ。 志賀さんはまたオッドアイの白い猫を飼い始めた。 ミー子が通っていた動物病院の先生から保護した捨て猫の中にオッドアイの子...
志賀さんの車に乗ると 「どうする?」 と聞いてきた。 「ドライブしたい。」 と言うと頷いてくれた。 S「出来てなくて嬉しかった?」 R「嬉しかった・・・って言うより、ホッとした。」 S「俺はガッカリした・・・」 R「・・・」 S「やっぱり、俺のものにはならへんねんや・・・卑...
次の日、志賀さんは仕事に復帰していた。 いつものように窓口に来て、通帳にメモを挟んでカルトンに乗せる。 「食事に行こう」 と書いてあった。 私は頷いた。 きちんと話さなければいけない。 いつもの駐車場で待ち合わせた。 志賀さんはいつも通りだった。 私もいつも通りを装った。 ...
タクオの電話は今日も三回鳴った。 私はタクオのことを想った。 そろそろ引っ越しする頃だ。 いつもより一時間早く家を出た。 志賀さんの部屋に寄る。 熱は38度まで下がっていて、少し元気になっていた。 2食分のお粥を炊きながら、洗濯して干す。朝食を整えると私は仕事に向かった。 ...
志賀さんが目を覚ましたのは21時過ぎだった。 門限を過ぎてしまったが、言い訳は考えていた。 熱を計ると38.5度まで下がっていた。 スエットと下着を脱がして着替えさせた。 身体はまだまだ熱かった。 「合鍵があったら貸して」 とお願いした。 明日出勤前に寄ることを伝えると嬉し...
私は23時を待てずに眠ってしまった。 タクオからの電話が遠くに聞こえていたけれど、出ることが出来なかった。 相変わらずの日々だった。 あっという間に三月に入った。 仕事場と家の往復。 変わったことと言えば、ジョウさんが県外の支店に転勤になったことでテニスを教えてくれる人がい...
運転しながら、タクオと話したことを考えていた。 タクオは志賀さんに嫉妬していた。 人に対して警戒心が強い私が、彼とは食事に行くことや助けて貰うことがあることに対して、私の気持ちが彼に向き始めるのではないか?と感じていたらしかった。 タクオがそんなふうに思っていたことに驚いた...
昨日のアレのせいで、全身筋肉痛だった。 筋肉痛だったけれど、私達はまたセックスした。 黒とシャンパンベージュの色合わせの下着をつけていると 「その下着、めちゃくちゃいいね。」 と言ってキスしてきた。 タクオは下着フェチなのかもしれない。 下着を着けたまま、姿見鏡の前で後ろか...
タクオは涼しい顔だった。 私だけが動けない状況に腹立たしさが生まれていた。 「めっちゃひどい・・・」 私が呟くとタクオが笑う。 「可愛いなぁ。」 顔を覗き込んで髪を撫でてくれても、嬉しさは半分だ。 蝶の大人のおもちゃは海外旅行に行った友達のお土産だと言っていた。 私に使わな...
帰りの車の運転中、私の恥骨はずっと震えていた。 モゾモゾと内腿を動かしてしまう。 運転に集中しようとするのに、信号待ちになると振動が途端に強くなる。 気が変になりそうだった。 ホテルの駐車場に車を停めると、恥骨の蝶が強く震え始めた。 呼吸が乱れてしまう。 「鍵はルルが貰って...
まだしたかった。 でも、夕食は海鮮が美味しいお店を予約していた。 一時間ほどで出掛けなければならない。 ベッドに寝転がってタクオの顔に指先を滑らせる。 タクオの中性的でスッキリした顔立ちが私は好きだ。 目が奥二重で大きいのに涼しげなところが特に好きだった。 唇を使って顎のラ...
部屋が広いオーシャンビューのホテルを予約し、お風呂から海が見える4階の部屋をお願いした。 部屋に入るとタクオはベランダまで一直線だった。 瀬戸内海の静かな海が広がり、船が行き交う。 潮風はまだまだ冷たかったけれど、手を繋いで海を眺めた。 さすがに寒さに耐えきれなくなった私が...
週末、私は有給を使って休みを取った。 支店なら新人の私が有給を使うことは勇気がいる行為だが、本店では消化するように言われていた。 タクオと約束した次の日、志賀さんに 「週末、日帰りでどこか行かないか?」 と誘われた。 「短大の友達が来るから。」 と私はその誘いを断った。 母...
待ち合わせで使っている駐車場に送って貰う。 車の中で 「ルルはいつもあぁいうセックスしてんの?」 と聞かれた。 R「あぁいうセックスって何?」 S「いや、悪い意味じゃなくて・・・エロいと言うか・・・貪欲と言うか・・・」 R「私、あんまり濡れないから。普通は胸揉まれてクリトリ...
待ち合わせで使っている駐車場に送って貰う。 車の中で 「ルルはいつもあぁいうセックスしてんの?」 と聞かれた。 R「あぁいうセックスって何?」 S「いや、悪い意味じゃなくて・・・エロいと言うか・・・貪欲と言うか・・・」 R「私、あんまり濡れないから。普通は胸揉まれてクリトリ...
タクオの電話に出て、声が聞きたかった。 でも、出られなかった。 私は安定剤を飲んで眠った。 志賀さんが怖かった訳じゃない。 その状況が怖かっただけだ。 申し訳ないことをしてしまった。 志賀さんは窓口にやって来て 「昨日はごめん。大丈夫か?」 と言ってくれたけれど、彼は何も悪...
私はタクオの電話に出なかった。 膝を抱えて呼び出し音を聞いていた。 今日のセックスは宿題の為じゃなかった。 私は普通に濡れた。 タクオに話すことが憚られた。 志賀さんのことが好きな訳じゃない。 でもなぜか後ろめたかった。 あれ以来、志賀さんは私の前で大きな声で話さなくなった...
年が明けても、志賀さんとは相変わらずだった。 志賀さんには、他の人とデートすることを勧めていた。 実際、私の同期の女の子は志賀さんとデートしたがっていた。 誘ってもうまくはぐらかされる・・・と話しているのを聞くと、後ろめたかった。 窓口で話をしている私の背中に集中する視線が...
志賀さんの口は固かったし、きちんとしていた。 デートのことは勿論、初めてのデートでセックスをOKするような私を「ヤリマン」扱いもしなかった。 仕事場で会っても、今までどおり。 誰も私達がセックスした仲だとは思わなかっただろう。 ただ、肌を重ねると心の距離は近くなる。 年末に...
私は志賀さんに会った。 志賀さんは車で来ていた。 白いBMWのオープンカーだった。 似合い過ぎて笑ってしまう。 食事をして、ドライブした。 ほとんど志賀さん一人が喋っていた。 ドライブ中に手を握ってくる。 嫌ではなかった。むしろ、手の温もりや質感が気持ち良かった。 ただ、や...
十二月に入り、仕事が忙しくなっていた。 そんな中、関連会社の営業マンが出入りしていて、会話を交わすようになっていた。 私より5つ年上の26歳。 志賀 圭一郎さん。 身長は175cmくらいで標準体型。 お洒落で話が面白く、ハンサム。 本店に限らず、志賀さんに好意を寄せている女...
23時に電話が鳴った。 急いで出る。 「早いね。」 とタクオが笑っていた。 私も笑う。 「した?」 タクオが聞いてくる。 「うん。」 と答える。 耳許で聞こえるタクオの声をずっと聞いていたい。 今日のセックスの話をした。 タクオは静かに聞いていた。 「クリでイッた時に何を考...
私はジャスミンに電話を掛けた。 0時を回っていたけれど、多分起きているはずだった。 コールしてもなかなか出ない。 切ろうとした時に、ジャスミンが出た。 「もしもし。夜分にごめんね。」 そう言うとジャスミンは笑った。 「お風呂から出たとこだったんだよーっ。取るのが遅くなってご...
トキとの次はない。 そう思っていた。 23時のタクオからの電話に私はコール2回で出た。 R「もしもし。」 T「ルル?元気?」 R「元気だよ。元気?」 T「元気だよ・・・電話に出たってことは何かあった?宿題?」 R「うん・・・」 T「話してみて。」 大好きなタクオの声だった。...
マジマジとトキの顔を見つめる。 高校時代にあんなにモテていたけれど、顔自体はハンサムでも何でもなかった。 腫れぼったい目はめちゃくちゃ小さい。 鼻先が丸くて、全体的にチャウチャウ犬のような顔だった。 ただ、唇の形は魅力的だ。 口角がキュッとしていて、ポッテリとした下唇が色っ...
本店に移動になって1ヶ月が過ぎた。 小さな支店とは違って、本店は人間関係がドライだった。 私にはそれが有り難く、それなりに快適だった。 私の担当は窓口業務だ。 窓口には切れ間なくお客様がやってくる。 カルトンを出して通帳を受けとる作業を淡々とこなさなければならない。 「おい...
東京駅で待ち合わせしたジャスミンとタクオに見送られて、私は新幹線に乗り込んだ。 帰りたくなかった。 でも、そんなわけにはいかなかった。 私はずっとタクオの宿題について考えていた。 考えてはみるものの、私とセックスしてくれるような男子は周りにいなかった。 身近な男性なんて職場...
身体の力が入らなくなる程、私は何度もイカされた。 汗と涙で濡れた頬をタクオの舌が撫でていく。 後ろから突かれると内腿がプルプルと震えて、背中が粟立つ。 乳房を揉みし抱かれ、白い波に拐われるような感覚がする。 「愛してる。」 耳許で囁かれて、私の子宮がペニスを締め付けた。 シ...
下着を着けようとした私に 「そのままでいいよ。」 とタクオが言う。 寝室で抱き寄せられると、タクオの右手が私の頬を包む。 「まだ痛いよね。」 口角の傷に指先で触れながら、タクオが聞いてくる。 頷くと、舌先で傷に触れてから唇を舐められた。 「ルルは綺麗だよ。大丈夫。」 と言わ...
ジャスミンが泡風呂が作れるボディソープを用意してくれていた。 浴槽にソープを垂らしてシャワーを当てるとモコモコとした泡が発生する。 ストロベリーの甘い香りは駄菓子のフーセンガムの香りを思い出させた。 ぬるめのお湯に浸かり、身体を泡で撫でる。 タクオが手を伸ばして私の乳房をま...
日本製では合うサイズがなくて、私はインポートの下着を着けていた。 学生の時は70Eで何とか凌いでいたが、つけ心地は悪かった。胸が潰れるし、アンダーを大きくすると不意にホックが外れることもあった。 65F。 身体に合ったサイズの下着をつけた時は感動した。動いても、身体の動きに...
電話が鳴る音で目が覚めた。 タクオに声を掛けると、反動をつけて起き上がり電話に出た。 ジャスミンからだった。 時計を見ると22時。 どれくらい眠っていたんだろう。 寝返りをうつと、筋肉痛のような痛さを感じた。 よくよく考えてみると5ヶ月ぶりのセックスだ。 ゆっくりと身体を起...
しつこく耳に舌を這わせてくる。 セックスのスイッチが入るように、膣が熱くなる。 滲み出すようにじんわりとヴァギナが濡れてくるのが分かった。 タクオのぺニスが固くなって太股にあたる。 手を伸ばしてソッと撫でた。 「入れたい。」 タクオが囁く。 私を横向きにすると、後ろから抱い...
ジャスミンに連絡を取って、部屋を整えると私達は部屋を出た。 明日のお昼にはまた戻ってくる約束をした。 タクオはギンガムチェックのボタンダウンシャツに黒のチノパンツを合わせ、ハイカットの黒コンバース、黒のリュックだった。 タクオはいつもオシャレだ。 私はタクオに合わせて黒のテ...
元々私は濡れにくいのだと思う。 シロさんとする時も濡れなかったり、濡れてもすぐに渇いてしまうことが少なからずあった。 渇き始めると痛かったが、シロさんに悪くて途中で止めて欲しいと言えなかった。 「濡れにくい体質かもね。」 とよく言われていた。 でも、何回かに一回はビショビシ...
目が覚めると隣でタクオが寝息を立てていた。 頭が痛くて、ほんのり気持ち悪かった。 昨日のワインのせいだろう。 「これが二日酔いというやつか。」 そんなふうに考えながら、目を閉じた。 次に目が覚めると6時過ぎだった。 タクオはもう起きていた。 「おはよう」 そう言ってソファー...
テーブルの上を片付けようと立ち上がろうとして、バランスを崩した。 タクオに抱き止められた。 どちらかと言うと私はお酒が強い。 呑んでも、自分で歩けなくなるようなことはそれまでなかった。 「ストローでワイン呑むとほんまに酔っぱらうんやね。」 と言うとタクオが小さく笑ったのが分...
私は東京行きの航空チケットを片道分購入した。 夕方のチケットが取れてホッした。 母親には 「体調不良の先輩の代わりに三泊四日で東京研修に出ることになった。」 と嘘をついた。 「そんな顔で行くの?」 と当然のことを言われたが、マスクしてれば分からない、と交わした。 電話の呼び...
当日は支店長も参加していた。 地元の方々に混じってお祭りに参加した。 お祭りの場所は銀行の真裏だったので、更衣室で浴衣に着替えた。 マリさんは大胆な花柄の藍色の浴衣ですごく色っぽかった。 私は白地に藍色の切り替えが入ったシンプルな浴衣だった。 盆踊りは20時からだが、それぞ...
相変わらずの先輩女子の対応だったが、優しく接してくれるパートさんもいたから何とか頑張れた。 マリさんとマリさんの彼氏のジョウさん。 私の前年に入行した男性行員さんちゃん(彼女なし) と四人でカラオケに行ったり、食事することが増えていて一人じゃない気持ちにもなってきていた。 ...
3月の末から、私は働き始めた。 地元の銀行に就職した。 30人程の支店に配属となり、普通預金を担当した。 仕事内容に適正があるとは到底思えなかったが、お給料を頂く以上はちゃんと働かなければならない。 後から知ったことだが、私はコネで入行したらしい。母親がお偉いさんに頼んだと...
案の定、母親にはこってりと絞られた。 気持ちが落ちるようなヒステリーだったが、無視されるよりはマシだと自分に言い聞かせて乗りきった。 「タクオは無事に帰れただろうか。」 そのことが気になった。 子供ではないし、旅慣れているから大丈夫だと理解していても気になる。 タクオの電話...
夜行バスはすごく狭かった。 でも、その狭さが私達にはありがたかった。手を繋いで寄り添うように小さくなってウトウトと眠った。 5時半過ぎに岡山についた。 ここでタクオは新幹線で東京に向かって帰り、私は実家に向かう電車に乗る約束だった。 実家のある町まで送ると言ってくれたけれど...
私は困った顔をしていたと思う。 タクオは涼しい顔をして隣に座ると私のスーツケースを自分の膝の間に引き寄せて、私の手に自分の手を重ねた。 手を繋いで電車に乗り込んだ。 流れて行く外の景色を黙って見ていた。 私は幸せだった。 今出来る精一杯のことをしてくれることが嬉しかった。 ...
濡れた私のお腹と内腿等をティッシュで拭き取ると腕枕をしてくれた。 タクオの身体に自分の身体を寄せて胸に顔を埋めた。 泣きたくないのに、涙が止まらなくなる。 タクオを困らせたくはなかった。 「愛してる。」 タクオは私の髪にキスをしながら、何度も言ってくれた。 顔を上げて唇を重...
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