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2018/07/28

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  • 抑え方と取られ方 2-4

    「はい」 「営業時間だったでしょうか?」 「いいえ、帰るところです」 「午前に店を飛び出した人物の身元が判明したので、一応お伝えしようと思い、連絡を入れました」 「それはご丁寧に」 「従業員が狙われた事件とは無関係と私は判断します」 「アリバイがあったのですね」 「はい。駐車禁止の取り締まりに言いがかりをつけるトラブルが起こす様子を防犯カメラが捉え、最寄りの警察の確認も取れてます。また襲撃については、カフェの店員によれば、彼女の座り位置が壁際のテーブルから数えて二つ目であったことが、発見が遅れた要因ではないかと推察されます。彼女の背後の席にお客が座ってからしばらく時間が経過したのちに、お客から…

  • 抑え方と取られ方 2-3

    「嫌なのに付き合うの?」 「それは、だって、友達ですから。今後の付き合いや私の趣味を押し付ける時にだって相手は丸々同意をしてくれているとは思ってません」 電話のベルが鳴る。厨房の子機を小川が取る。館山が倉庫の在庫を確かめてピックアップ、足りない食材が書かれた紙をカウンター越しに受け取る。 「はい、もしもし。そうです。はい。店長ですか?はい、少々お待ちください」 「店長、お電話です。ええっつと、種田さんという、……たぶん、女性の方です」語尾に含みを持たせる小川の言い回しに店主は動じない。紙を指に挟んだ手で子機を受け取ると通話ボタンを押した。 「はい」 「営業時間だったでしょうか?」 「いいえ、帰…

  • 抑え方と取られ方 2-2

    「小川さん、休憩」 「わはっつ」膝が折れて、がぐんと体が片側に沈み込む。「寝てませんよ、瞑想です。こう集中力を高めるのって、ほらお坊さんがやっているじゃないですか、肩をぱちんと、ほら、しゃもじみたいな、これとは違うな、材質は同じ板で叩くでしょう。私は、集中していたんですよ」 「苦しい言い訳」レジで聞いていた国見が一言。 店主は反省の色が見えようと、そうでなかろうと、特段気にも留めない。僕は彼女ではないのだ。従業員、特に厨房の二人は疲労の色が濃く、動きにも緩慢さが見て取れた。 疲れを引きずって、平日の込み具合のディナーが終わった。 後片付け、明日のランチを頭に入れつつ、発注する商品を選ぶ厨房。 …

  • 抑え方と取られ方 2-1

    今回は時間の許す限り、つまり午後二時までを制限としたランチを提供した。 ハンバーガーがとうもろこしパンに常に優勢をみせて、先に売り切れとなった。ただし、とうもろこしパンもその場で一口食べたお客の感想を皮切りに注文数は次第に増えて、ハンバーガーと競ったメニューではもっとも僅差の個数をたたき出した。具材のひき肉と鶏ひき肉は開店一時間に品切れを予測、店主は慌てて餡作りに取り掛かかりるものの、ハンバーガーはブーランルージュのバンズを使用したため、個数に限りが生じてしまったのだ。本来ならば、ハンバーガーが売れ続けたかもしれない、しかし、それはまた実験をしてみなくては、店主は次の課題を見つけた。 午後に照…

  • 抑え方と取られ方1-12

    「メニューに取り入れてはもらえませんかね、とうもろこしの粉を」男は座りなおして、切り出した。店主は釜で焼く効率性とフライパンの正確な形を天秤にかける。 「……何か言いましたか?」 「とうもろこしの粉を使った料理をランチといわず、メニューにのせる案をどうかご検討してくださいませんかね?」男の顔に赤みが差す。 「お約束はできかねます」 「では、試しに粉を置いていきますので、お好きなように使ってください」 「また反応を聞きに店を訪れるのですか?」 「お邪魔ですか?」 「頂いた粉はまだ残されています、偶然にも今日のランチでとうもろこしの粉を使う予定です」 「ほう、それはまた、なんと。いやあ、いい日に足…

  • 抑え方と取られ方1-11

    「通常の、これまでの取引とは異なる、大掛かりな契約ですか?」店主がそっけなくきいた。 「さすがに話が早い」コーヒーが運ばれる、小川が引き下がって、男は話を続けた。「米の需要が飛躍的な伸びを計上しているのは、ご存知のはずですが、小麦も価格の高騰が止まらない。さらに、米、小麦に代わる穀物の価格をも全体的な底上げの傾向が見え始めた。我々は最近の情勢をある程予測を立て、ある商品をあらかじめ大量にそして正当な価格に流通を見込んだ。それがこれです」 足元のバッグから引き出されたのは、見覚えのある文字。イラストはポップにデフォルメされた海外の浅黒い人が微笑んでいる。その手には、とうもろこしが天を貫く伝説の剣…

  • 抑え方と取られ方1-10

    一人前を炒めて、とうもろこしのパンに挟み、味を確かめているときに、開店前に三度目の来客が姿を見せた。 「どうも、ご無沙汰しております」四角い顔に頬のふくらみが特徴的な男性がにこやかに店に足を踏み入れる。微笑をたたえれば、入店は許可されたものと解釈している業者の男の考えが読み取れる。歳を重ねるにつれてずうずうしくなるのは、経験に裏打ちされた行動の決定なのだろう。しかし、その経験もかなりの頻度で修正が加えられている、つまりプラスに働き心理的に思い返しても傷を追わないような配慮が行き届いた経験。相手は受け入れる、謝った見方だ。僕は信用しない。相手に抱く心理も、変化の猶予をもたせている。なので、相手と…

  • 抑え方と取られ方1-9

    そして従業員が各自の仕事に取り掛かる。 ランチメニューの一つはハンバーガーに決めていたので、昨夜に直接、アーケード街のパン屋、ブーランルージュにハンバーガーのパンズを注文していた、これを小川に店まで受け取るようにお願いする。館山には、裏口に配達されたひき肉を半解凍の状態で味付けを施して、混ぜてもらう。国見は、店の清掃を行う。 ハンバーガーはどのメニューと組み合わせても数では同等か、圧倒的な勝利を収める。しかし、夏場や秋の屋外でも食べられる気候での結果である。冬季間のデータはまだ観測していない。また、雪が降ってからはテイクアウトもまだ数えるほどしか行っていない、そのため店内での飲食の要望も計測す…

  • 抑え方と取られ方1-8

    「現実が見えていないともいえる」国見が反対の意見を述べる。 「見えてますぅ」小川が反論。「あえて見ないようにしてるだけ。本当は知ってますよ、並ばされているんだってね。でも、私はまだましな方ですけど、飲食に携わっていてもいなくても、周りが見えていない振りで愉しむんです、みんなそうしてます」 「表向きの情報ばかり、その場しのぎ、現実逃避、誰かの将来なんて語りたくないけどね、雑誌で取り上げられるために作る料理に価値は無い」館山は言い切って、奥に消える。 「リルカさんは絶対に結婚できない」館山の後を追うように小川は席を立って、ロッカーへと歩く。国見が一人、カウンターに立って取り残されている。いいや、何…

  • 抑え方と取られ方1-7

    「却下します」 「……」 「おっはよううございますです」小川安佐が陽気に引いたドアで仰け反る。「わあお、人だ。うん、ああ刑事さん、朝からまた、どうしたんで……」ドン、逸れた種田の視線が男に向き直る間に、入り口の小川に体当たり、男は逃走を図った。 「痛いなあ、もう。大事な手首を折ったらどうしてくれんのよ!」小川は種田に手を引かれ立ち上がったようだ、店主からは死角、ドアの外枠に小川のコートがちらりと見えていた。 「逃げられた」種田は独り言をつぶやく。振り返り、店主に報告する。「彼女は送り届けましたので」そういって種田のコートがひらめくと、開け放たれたドアを抜け、小走りで男を追いかけた。 「あれこそ…

  • 抑え方と取られ方1-6

    彼はこちらを見つめて笑う、同調の意味を知っているようだが、不敵な笑みの効果は知らないらしい。 「本日のランチは、決まっているのでしょうか?」 「あなたの相手をしていると一生作れない」 「返しがお上手」 「私が置かれる明確な現状です。お願いですから、お帰りを」 「それは難しい、私はお嬢様の言いつけを受けて、こちらを訪問した。店を出るのは、了解の取り付けをいただかないと、報告がままならない。私の言う報告はライスの提供再開のみ」 「おはようございます」国見が出勤してきた、彼女に続いてもう一人女性が姿を見せる。国見の見張りを頼んだO署の種田という刑事であった。短い髪の毛と高身長は、登場では目を引く、と…

  • 抑え方と取られ方1-5

    「何も無い所から得られた利益に興味はない。どうかお引き取りを、ドアはあなたの左手、ノブを捻って、引きあけると外に出られます」店主は右手を開いて方向を指す。「どうぞ、お帰りを」 「はあ。頑固ってのは、私がもっとも苦手な人種。お嬢様があなたの店を嫌いと口にした、数時間後に店はすっかり姿を変えている。言っている意味がわかりますか、店長さん?」顔を突き出した口調は、人を小バカにし、いやらしく、回りくどく、ねっとりしている。この人物、またはお嬢様と形容された雇い主とは法外な力を持つ団体のことか、それとも表向きの搾取が大手を振って歩く大企業だろうか。 「日本語は一応、話せますので」本心を聞き出す。 「………

  • 抑え方と取られ方1-4

    厨房に入って間もなく、店のドアが開いた。見知らぬ人物は堂々と店内に踏み、ホール内をじっくり観察。名前を覚えない店主であるが、人の顔は割合覚えている。相手との間柄で、その関係性を把握している。 「こちらの店で、ライスの注文を断っている。そう、風の噂でみみにしました。これは事実でしょうか?」膝を隠すロングコート、紺色に、皮の手袋、飾り用なのかマフラーを首から提げる男性は、突然の訪問に店主が受け入れる時間をまったく考慮してない風である。 「提供を一時的に中止しているのです。断りとはニュアンスが違います」 「失礼、あなたが店長さん?」 「はい」 「間違いなく?」 「ええ」 「もう一度お尋ねします?あな…

  • 抑え方と取られ方1-3

    実験によって、教授が実際に公園でブランコに乗る模様がスクリーンに映し出された。講義の主張や説明は、異なる重さの物質を同じ高さから落とすと、重力の影響により重いほうが先に地面に到達する。だが、重力が地球の六分の一の月での実験では、重さが異なるものもほぼ同時に地面に落ちた。重力が落下物に与える影響が軽減されるのだ。 そこで同じ高さ、重量で同じ往復回数を数える間に要する時間を計れば、重力の物質への影響を説明する理論はこれで証明されると画面の中の教授は言っていた。ただ、そこには誤差を含ませていた。つまり、不正確な実験であると言うことを盛り込んでおいたのだ。そして、実験を複数回繰り返し、それらを回数で割…

  • 抑え方と取られ方1-2

    ランチのメニューは以前に取り入れた組み合わせを再び提供する試作を行った。メニューの誤差に対するお客の反応を確かめる。お客のランチを並んでまで手に入れる期待感が気温や気候、季節によってどのようにずれが生じるのかを見極めたい、というのが今日の狙い。 これから一週間の期間でデータを取得する。決めたのは、物理学者の講演。最寄りの大学で市民講座を見に行った。休日、たまたま通りかかった散歩に、筆で書く意味が見出せない縦長の用紙に墨の文字、しげしげと見つめる姿は、犬を連れた構内を歩く男性たちに目を引かれたかもしれない。市民への開放と銘打った題字だったため、噛み砕いた内容なのだろうかと、興味が沸いて見学したの…

  • 抑え方と取られ方1-1

    週の真ん中、脅迫事件の翌々日は、雲ひとつなく晴れ渡る大仰な快晴。関東や本州の太平洋岸は、大雪に見舞われている。地下鉄の改札から望める大型ビジョンに早朝に傘を差して歩く人にインタビューを求め、欲しがる、天候に対する悲観的な感想を聞き出したいだけ。 店主は目に入った映像を改札から地下通路までの三十秒ほど眺めた、端末に目を落とすビジョン近くの女性にすらその画面の情報は見逃されていた。一つ目を左折、地上へ上がる急勾配の階段を上って、記憶した映像を再生、そして綺麗さっぱり消し去る。 微風。警察の警護が効力を発揮したのか、目的達成がはたされたのかはとにかくとして、国見蘭への被害は休憩時間の本人も気がつかな…

  • 予期せぬ昼食は受け入れられるか?7-2

    「疲れてる?」 「体力には自信があります、精神的な疲労ですね」国見はやり過ごす車を追うように、一歩前に出て、路地の右を指す。 「大豆の地位って、そんなに低くはないですけど、高いとも言い切れない。それが不満だったのかな」彼女は、マフラーに顔をうずめて話した。 「主食の米と小麦を耕す土地で目一杯、余った土地は期待できないだろう。大規模農家なら複数の穀物の適正な市場動向に応じた生産がある程度は可能だが、小作人は確実に金銭や交換の象徴でもあったお米を躍起になって作ろうとする。当然だよね、だって大豆はしょうゆや味噌の原料にはなるけれど、そこからまたいくつかの工程と時間と手を加え、製造には専用の施設も必要…

  • 予期せぬ昼食は受け入れられるか?7-1

    二人が先に店を出る。国見と店主はそれから五分の時間を待って店を出た。 「良かったんでしょうか、二人にとてつもない勘違いをさせてます」地下街に下りる階段で国見が、踊り場で振り返る。階段を上る通行人をやり過ごして、彼女は続けて話す。「言っても良かったですよ、傷のこと」 「国見さんが自分で処理してからの方が、多分妥当な選択だ。小川さんには悪いけど、こっちは命に関わるかもしれない」 圧力のかかるドア引き、通過。人の通りが増えた地下通路に降り立ち、改札に向かう。床の清掃が大掛かりな機械で遊園地の遊具を操る、蛍光の制服姿の清掃員が通路の片側を占領、黄色いランプが危険を撒き散らしては、道を譲るように指示を与…

  • 予期せぬ昼食は受け入れられるか?6-7

    間髪いれずに回答。「してない」 「……倉庫で怪しい会話をしてたじゃないですか、あ、あれはどう説明するんです」小川は長身の館山に隠れて顔を脇から覗かせて、午後に見たやりとりを指摘する。 「僕の口からはなんとも、その件に関しては話せない。だけど、二人に面接で言った事項は破ってはいない、ということは断言するよ」 「蘭さん、答えてください」小川は涙声で言う。女性はところ構わず涙を流すか、僕はどうだろうか。 「応えなくていいよ、国見さん」 「店長!やっぱりそうなんですね?」 「だから、違うよ。思い違いだ」 「なら、はっきり訂正なり、告白なりを言葉で示してもらわない、私にだって、その、なんていうか、気持ち…

  • 予期せぬ昼食は受け入れられるか?6-6

    油にまみれたステンレスに光る、反射の板を洗剤で埋め尽くすと、大胆に水を流しかける。店主は、白米の重要性について、考察を重ねた。あの母親にとってはお米は生き抜くための必需品だった。何故、他の食品で代用を試みなかったのかは今でも疑問が残る彼女の行動である。植物性のたんぱく質ならば、話題で持ちきりの大豆を利用するべきではなかったのか。もちろん、学校で、生徒に見られるという懸念材料があるにしても、彼女は命を第一に掲げていた、あくまでも三回目の接触においてである。中傷を受ける覚悟を彼女がそもそも持ち合わせていかった、という可能性もある。つまり、なるべく、お米を持たせて、子供から家庭、それを作る母親に向か…

  • 予期せぬ昼食は受け入れられるか?6-5

    「報道は真実とは違うって体感しましたよ。言い訳に聞こえるから、あの両親も反論しなかったんですね。それに子どもがこっそり死んでしまうかもしれない食べ物を自分の意識で口に運んでいただなんて。……子供が誰よりも大人だったって、ことですよね」小川がスポンジを握り締めて、呆けたように斜め上を見上げる。 「親だからって大人とはいえない」 「いつかは親になるのか、私には想像ができないぁ。店長は子供の頃どんなでした?」 「今と変らないよ」 「お米の価格上昇は、今後も続くんですかね」厨房の床をデッキブラシでこする館山が呟いた。 「先輩、私が店長に質問しているんです、待ってくださいよ順番です」 「順番を待っていた…

  • 予期せぬ昼食は受け入れられるか?6-4

    「吐き出しなさい!すいません、お手洗いを!」母親は手を挙げる。 「大丈夫、いつも食べてるから、平気」 「息もできなくなって、死んでしまうの。全部出しなさい」 「もう、遅いよ」 「救急病院ね、胃洗浄だわ」 「慌てないで。僕は大丈夫。ずっと前からちょっとずつ、食べていたんだ」 「許しませんよ」母親の平手が飛ぶ。「あなただけの体ではありません。私を一人にするつもり?どんな思いで、産んだと思っているの?大変だったんだから」 「もう言ってもいいかなって、僕、思ったんだ」子供はぽつりと口を開いた。「二人とも、パパを責めるママもだけど、自分のことが大事なんだよね。それが悪いなんていってない。やっぱり、自分が…

  • 予期せぬ昼食は受け入れられるか?6-3

    「すいません」カウンター越し、父親が店主に問いかけてきた。 「はい」 彼は立ち上がる。「お米は本当にありませんか、貸し倉庫のような場所に保管しているのではないですか?」 「いいえ、店の裏手のことをおっしゃっているのなら、見当違いです。明日の朝に回収されるゴミの回収箱しか置いていません」 「そうですかぁ」父親は力なく、空気が抜けた風船のごとく、座る。かと思えば、機敏に目線の高さを合わせる。「実を言うと、勤め先に匿名の文書が届いて、息子の健康状態に関する克明な病状を同僚や上司の知ることとなりました。表向き、会社は一般的な企業となんら変わりがないように見えるのですが、採用時点で各家庭の資産や経済状況…

  • 予期せぬ昼食は受け入れられるか?6-2

    「ご注文がお決まりになりましたら、お呼びください」間に挟んだ子供を見つめる母親、子供は高い声で物珍しいメニュー表にか細い歓声を上げている、迷惑という意識は備わっているらしい。国見は両親がむき出した敵意と攻撃性の低下を読み取る、引きつった口元は適度な力加減で結ばれ、声かけの最後には左右に引かれた。 メニューに加わった焼きカレーが追加で注文された。ホールから戻る小川が伝票を手に、厨房に軽々姿を見せる。彼女はホールの業務も受け持つ。手のひらを見せて聞き取った注文の合図を送る。 店主は鍋に移したルーに火をかける。オーブンに入れるのは仕上げの直前、上に乗せるチーズの焦げをオーブンの熱で作り上げたいのだ。…

  • 予期せぬ昼食は受け入れられるか?6-1

    核心を避ける小川と館山のよそよそしい遠巻きからこちらを横目で窺う態度は、精神的な圧力を感じる。しかし、感じているのは自分なのだから、視線と態度から予測を切り離せば事は足りて、体の拘束具ははずれてしまう。視線の威力は自らが強めている場合が多分にあるのか、人ごみで交錯する一瞬のコンタクトが体をすり減らしていたのだと、店主は圧迫の正体が掴めた気がした。無関係な事例が紐解くきっかけ。ポークカツを揚げる口元が自然に引きあがる。 昼間の日差しに反発するように、午後は急激に冷え込みを迎え、それでも店外で順番にお腹を満たすべく、お客の足は絶えない。列は夕方近くから、午後九時前まで続いただろうか。ホール係の国見…

  • 予期せぬ昼食は受け入れられるか?5-4

    「落ち着いてますね」 「そうかな。いつもだと思うけど」 「もう少し、慌ててくれても良かったんですよね、私としては……」蚊の鳴くような声で国見が言う。 「何か言ったかい?」 「いいえ。何でもありません。私がきっちり弁解します」 「お願いするよ。僕ちょっと、ここで休ませてもらう。煙草を吸いたいんでね」倉庫を出かけた国見が足を止める。 「タバコ、吸われるんですか?」 「言ってなかったかな」 「私の前では一度も吸っていません。二人は知ってます?」 「どうだろうか、聞かれたら答えていると思うけど」 「知らないことばかりです」側面、彼女は首が前に傾斜。 店主は、タバコに火をつけた。明り取りの窓、開かずの、…

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