chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
arrow_drop_down
  • 総動員

    不要な葦たちの錆びきった拘束具が外される 暴動化する情緒の鳴動には気にも留めず 砲弾をきっちりと死亡診断書の無人機となるため義勇の中に誤魔化し規則的に提出ばかりを求められる猿轡の心の臓はとどめを刺されても気付かず動き続けている 余りにも美しかったこの土地の地政学的な恋愛模様のみが 見えない境の赤い線を引き何人の許可も得ず別離が成立していく 相続は血に流れる独立心の沙汰と確認行為を日頃から怠らずよくよく流れる川の河口で彼らは障壁障害を乗り越えた 寒冷な夜をやさしくはない伴とした狼の遠吠えに戦々恐々とする叫び聲を正しく顰める じっとじっとじっとじっと眠る艶肌を伝うことで持ち切りの刃物の先に映る毒素…

  • 真実

    ヒステリー種族 融通の利かない試薬を何錠も掛け合わせ堆く硬質な壁を築いているこの大きな肯定は余剰人員を抱えることを排他的にしながら長らく生きたという理由で濛々たる絶縁体を脊髄に打ち込み深くはあり得なくなる感情を浮遊させながらその非理性を出来るだけ有効的に苦しまずに傷つかずに否認をせずに支離滅裂になる口語体を吹き出しのように音声にもならないまま虚無主義と失神しようとしている首長へ黒タイツを被せ歩行可能な外付け小型大規模収斂記憶装置になり見えない磁力で廻される度に己が成長の速度と捉えたがるかつての犬公方取りで下着の下までもめかしこんでいる未だけがらわしい真皮を電通する我が身の広告を嘔吐することがど…

  • 孫をみつける

    新大久保の路上を昼間から指を絡ませ歩いている 初夏の気持ち良い空に抜ける鳥の捩れる舌は 曹達割りの檸檬が半月となる薄汚い居酒屋の陰影で 細かに震えている中身は未だ少女のままかもしれない 娼婦はわざとらしく朱にまみれ覗く前歯の沁みで淫行へ導く 体を売ればもう商品目へ分類されるのであり 体を買えば旅行用鞄に自分を入れた密輸業者と成る 暖色多湿の内腑に吞み込まれ昇降機の中で耳を舐め合う番 硬い陰毛より堅い男根を直に握らせる盛り 紳士面の心理に心裏を隠せない場所で 増強剤のような噴霧器の音を耳で甘受し 皺を伸ばしながら何台か盗撮用機器を正確に設置する 寝台横に置いた避妊具の下に 細い糸のように加工した…

  • 抽象化

    引き金は微弱な温度の変化で引かれた 意識を残したら生者ではいることができない 奪ったその反動の渦中で奪われていく巡りたち 針は進められるが 時間そのものをチクタクと産み出せはしない 後から決める人類史は簡単な人工物でしかなく ことわりのない権力のアンソロジーにすぎない まばゆい光であろうとする太陽と名乗りたい者は 月光を知らないまま 引力の魅力を知りたがらないまま 食前酒に滅ぼした町の名を冠して愉しむ 潮時に多くの命が曳かれていく 空所に引っ張られていく音の群れが ほのかに甘かった性を生として老い果てる 激しい肉体の音源を辿れば何度も所在不明になり 産まれたその瞬間から世界との通信は過去形で …

  • 広告費国庫負担

    眩しいほどの熱気が上空で回戦を繰り返し 命を命でないものにして揚力を倍加する 空が自らを強姦し、もう同じ姿には戻れない 「歴史」は史実や体験とは別の媒体で 誰もが売り渡されてきた輸血の痕跡 それでも、私達は卓上に置かれてしまう 鵜呑みにして良いのか、迷って欲しいのか 普遍や確かさは、グローバリズムに畏まって 「価値」以外の何者でもないと気付いた 暑すぎる夏に「彼ら」は新しいエアコンを 部落者のように集合させ 表計算ソフトで結合させていく 《配送料は無料です》と謳い文句を添えて クレジットカードの数字が一斉に 人格を持ち始め、 借財を求め、 アイデンティティーを要求する 言葉はシステムに奪い取ら…

  • 表決

    「罪には罰を」と書き記した白票を投じ 鬱屈した温室で育った記憶のばらばらが 列車内で自らを噴霧した 自分の将来の右胸を貫く ジョーカー気取りの地を這う毒虫 握り潰された無名と知られたくなくて握った 刃渡り三十センチの柄を失った血みどろの鉾 陪審員の悲鳴がその頭蓋で共鳴したものの 望みは一滴も降り注がなかった お前の恐怖も 勝手な強行も この世界では君臨できない 嘆きにもなれなかった天蓋は漆黒に堅いまま TVは与党の優勢を伝える選挙速報に なみなみとその財力を結合させ お前は鼻垂れた細長く青白いテロップと同列 模倣は検索によって高度化されていくが その恐怖体験は水のように薄まっていく 昨日、私た…

  • 独居

    萎れた女を看取った朝日が、やけに眩しく感じる 人であろうとした最後の自由を叫ぶ痛みが 砂を被ったガラス戸を突き抜けて、皮膚を直接刺している 檸檬の棘が皮下から突き出すあの感覚 一月だというのに室内は暑く、額に大量の汗をかいている 指先から滴り落ちるほど、内包する熱の暴発が生じ 残酷だと呼ばれていた死が、何故か白色の救いに見える つい、一時間前まで呻いていた口は、固く閉ざされ 何もかもを内側へ固めていく無人性が逆光を儚くし 青い唇は、さらに変色していく どんなことも共有できるものと思い込んでいた、若い頃 背を向け始めた中年期。そして、子どもたちの死。 速い流れに捉えられ、川で同時に二人が溺れ、 …

  • ジャーナリストの彼女が目の前で死んだ

    それがどんな風に起こった出来事であるのか 詳細まで説明させようとするヘッド・シュリンカー 怪しい友人という名を被った執行人 「破裂」という言葉を使わないでくれ、と頼んでも 逃げていると背中に向かってなじる、蹴る、行儀人 私の目の前で彼女の眼球が虚空に飛び出し、 もげた頭が別れの口づけをし、私の手の中へ落ちた あの花束だらけの結婚式でした誓いのように 銃口を頭にあてがわれながら永遠をもう一度、誓う私 本当の狭間で――。夜を見上げても美しい星はもうない この世界で起きている終幕はそんな風に始まっていると、 誰が伝えられる? 毎日、古代アラム語で まともな震えない勝利があると信じる源泉は、 何処から…

  • 今、この時に生きていることについて感じなければ、貴方は生きていけるのか?

    現代史には仇が常に必要で その歴史的真実は翻訳ソフトを使用しても伝わらない 斬殺する側にも出血する無言が存在し 逆流するヘモグロビンが今でも 朝刊から溢れた情報をせっせと運んでいる もう止血剤の効かない心たちが、何人もの人を殺める 安息日の祈りはすべて戦慄に塗り替えられ 「時代だと」わからないことがわからないまま 高速化していく駄言が促す、脳細胞の破壊 姿見の中へ向かう救急車に搬送され いくつものプラスチックの手で、時に助けられ 時に諦められる、感情を排し無気力になっていく命の現場 そこにいるのは誰なのか? 答えられる者はいない どのような青写真も立てられなくなってしまった 生々しい、何センチ…

  • 仮説

    昨日と今日の瀬戸際に唾をつけてめくる 無の涌く湖のように渇いた一ページ それが私の日々を模していく、贋作の日々 溺れずにいる魔法を失った物語の途上が 湖底に突き刺さり、わずかに湧き出てきた 名前のつけようもない同一性を掬う かつて、絶対的に守られている自由を求めた 初めて酔ったシュプレヒコール 蒼穹の夜を、薫風が爽やかに首をふりながら群生していた ある日、裏切りを見た。くっきりと見てしまった あれはいくらで売られているのか、 貴方は知っていますか? あれは美しい無料コンテンツです 反射的に悪寒をすべて吐き出し、 自分の墓を楔のように脊髄に打ちつける そんな類の美食家です 三食、否定でしかできて…

  • それでも、人間が好きだと

    世界の底辺が、 フィクションになり、崩壊していく音を ただ聴いていた 震える耳で聴いていた 語彙をすべて質入れした氷河期時代の末裔は 音の出ない王冠を額にして 自分という幽閉先から一心に自分を鳴らしている 言霊が滅びていくことを知らせるため 淘汰されるべきものがあるという事実 これから起きうる不透明な百年は孤独ではない 大きくしすぎた社会の、できたての骸たちの山 白骨化したアラームがキチガイのごとく鳴いている さあ、また後悔の時間だ 腐りかけた血や肉が踊っている終焉の祝祭 《最初の場所へ貴方は戻れ もう、救済のドームは焼け落ちた 風よりも、コンマ一秒早く走る悪い噂 遠くまで聞こえてしまう砂漠化…

  • WHO

    特権となった情報だけを所有するヒエラルキーの現場で虚数に まみれた躰を起こし目覚める不穏な予言 支配者達は身の危険を感じ、己の手をはじめて見た #拡散希望、を収束することにかかっているその震え 天使の町からアノミーが降雪する 人は、自分の物語を隠しはじめる 生きている眼が、幻視だった目と交換される 様々な方法で世界中に放擲される墓あらしとして 眠りについて久しい、あの作家たちを起こしに行くのだ 没落しない楽観主義者の頸部を、掻き切る役目を 書き忘れたままになっているから、と 何度目かの歴史的集合体が花開いた その実がなす本当の役割を、貧困が割った 病だらけの情報の洪水。それは新たな普遍性の、 …

  • 性善説の裏側で

    斬首された心の中心で死に場所を探していない日はない川の柳は流れない。炭化した瞳それは、とても、明らかに、殺人者のものだ自己の中で、低い鐘の音がする人の血を舐めたことのある、たぎる血 帰省してきた「息子」相手にとっくみあいこの世の仇を見つけたとばかりに何度も脇腹を刺す茨の性欲のように刺す死体が蘇えるほどに刺す水道の蛇口から出る真っ赤な水の源流世の中はそのように潤っている 「私は暴力を認めない日は一日としてない」 「鋭利」が性善説の裏側で次々と懐妊していく産まれてきたくなかった、とおぎゃあおぎゃあと泣いているそれは漆黒に輝くライフルの弾丸母親の頭を撃ち抜く鬱の弾丸 大罪が凝固した地面を這いつくばっ…

  • メフィストフェレスの自殺

    老婆を叩き潰したその内省は解脱した 見開いた、 壊れた瞳孔で見たのだろう 彼だけの真実を 彼だけの前を通り過ぎた せむしの様なメフィストフェレスの姿を 現代でも惨劇は、 慈悲や救済という名に匿われ 壊れた人の上を白昼堂々歩いている 善人が悪人になるのはもはや自明の理で 修辞がこんなにも無味乾燥している 今、メフィストフェレスは待っている 街路樹の古い切り株のようにじっと 何を? 清く輝くこと、ではない 箝口令のしかれた暗闇、でもない どこかを彷徨っている混沌を 彼はそこでしか安息を得ることができない 疲れたと言っても有給休暇はなく、 次から次へと どこの馬の骨だかわからない人間の後を、 ついて…

  • 即興死す

    枯れ果てた早朝の空気の中。過呼吸の怒りに頼って、アンガーのハンマーで叩き潰そうとした貴方の目が止めた、「私」という肥大した主語の塊。毎晩、射精した血で黒すぎる経血のような精液の残り香が貴方に生を贈っていた。晩冬の風が寄せて引く波を夜の港に降ろす怒りを錆びだらけの鉄の錨に交換した。沈んでいく無駄な即興死の群れ。バイバイ、GO BY。貴方の好んだうしおは血の味しか含んでないこと、そのことがまことの意味性のありようで、時ばかり渦巻くだけで、尖ってはならない。貴方は毎晩、稲妻の驕るしじまに落ちることを恐れていた。気圧で一人、ただ狂うことさえ捨てなければならず、きっかり、午前一時から始まる発作は海底の砂…

  • ラヴ

    どうか笑い続けて どうか息をし続けて 君と家に帰るために 中古で買った、よく走る黄色いビートル 今があるという繰り返しは絶対ではなく 時代はいつだってゴーストかもしれなく けれど、この古いレコードで Let it beで 逝く前に振り返って 失うものを失わないように ときどき、記憶を抱きしめるから ときどき、幻覚として抱きしめるから あの日光の下で、そよ風を知り 父親にしてくれた腕の中の体温を、知った それが二人の仕事だった 語彙の量など必要としない ただ、わかること 何ひとつ遠慮はいらない 僕は強くつかむ 直喩でも隠喩でもないぬくもりを ポケットに入っている記録の確かさに託して 花にして、種…

  • 目が沸騰している

    外では、激しく憂鬱が降っている声を伴わない孤立をはらんで、窓辺をたたく壁紙は剥げ、黒い黴の臭いに満たされた部屋自分が自分とぶつぶつ話しているそうしていないと盗まれるのだ思考も、思想も、地獄でさえも彼はいよいよ四十歳をむかえてしまいもはや自分の名前すら書けず自作のパソコンに向かってキーボードを弾くことが蜘蛛の巣に囚われた、彼の発する「声」なのだ 毎日、何らかの督促状が届き彼は鍋で煮て、それを食べるもう、自我を保つ家賃は払えず少しずつ沈没していくほかなく既に、カーテンの向こうはこの世じゃない無限に更新されるもうひとつの世界だ内省が内側から鍵をかけた清算された、完全なる逃避への片道切符自分で自分を演…

  • 天秤

    母国語のような命綱が、切れそうな時死ぬほど苦しい、白黒の言葉を吐き出せちらつくテレビジョンを見る苦しい生活その白黒の言葉を吐き出せ手遅れを、手遅れにしないための方法論は、人の溜息を食すケモノに飲み込まれ、消えたサスペンスはない、人生のサスペンデッド「明日も今日が続くのか」という、汚染された絶望感が、黒々とアスファルトに染みて、大量のマジックリンでも、こそぎ落とせない むせ返る黒い球体となった蠅の群れが、生き物の内臓まで侵食する不毛の土地聖書の一節に挿入すべき厄災は、我々自身か?殺虫剤で殺されていく、アフォリズムの群れ文明が信仰を飛び越えた道のりは、もう人間の閾を出たのか? あの場所に向かい、石…

  • 何枚でも刷れるコピー機で印刷した傷

    きっちりと採寸し自分だけの服を一着、つくろうと思うそれは毎夜遅くまで働く私であり間男のいる妻に怒ることもできない、やけ酒をする私であり大切にしてきた切ない思い出のつまった私の肉体心の肉体 通勤するたくさんの悲哀罅だらけの現代史は、彼らの習慣によってかろうじて保たれている他人になるため仮面をつけ、萎びた挨拶を交わす徹夜をしたエンジニアがソファーで烏賊になっているあぶられているのは人間も同様で二日、三日と経過すれば、食べる頃合いだ私も、喰われた一人だ 充血した瞳をしぼり第三関節まで喉に指を突っ込んで吐くことが、ここでは出世への近道で、罵倒された傷はいつも輝いており、キーボードを打つ音は見事な短調で…

  • 佇立する人

    老いて忘れられていく、埋没という居場所狭くなっていく自分の行動縄張りは夏でも冬でも炬燵の中で床ずれができてしまうほど大量のワンカップで自らを失った 痛みはない乱れてもいない何度ナイフで樽を刺しても感受性は既に死んでおり黒ひげが飛び立つはずもない 故郷へ帰るのか? その身体で家族は粛清されたというのにこころが老いたあなた時に人は自分で死なねばならないほど生きねばならない時があるそんな姿や形が、確かに必要なのだ美しくもない、正しくもない中性の優しさが消える何時だって後悔が、揺れている あなたの故郷では壊れた北風が吹くだろうか凍てつく黒い壁をよじ登っては落ち登っては落ちあの浜へ辿り着いたときに思うだ…

  • 埋葬式

    形あるものはいかなる理力によって燃えるのか熱は時に心を温め、何故、憎悪に変化するのかささやかな芸術として刻まれたあなたの命は、呼ばれることなく灰燼に帰す 身体に残る障害こころに残る障害あなたは何分同情し、何分で忘れたろう?記憶も記録も劣化してしまう追いつくには難しい速度で世界を創ってしまった構築され瓦解しまた構築されるバビロンの塔をつくったのは石ではない言語化できない傲慢さだ 言葉が酔っ払って勝手に喋っている最初にエピローグが酔いつぶれ、プロローグは浴びるようにジンライムを飲んでいるエピグラムは白い家に直談判しに行ったが、帰ってこないきっと人買いだろう 贋作ばかりを描いてきた人間にとって、正し…

  • 大人たちよ

    大人たちよ、子どもを外に出せ泥まみれにして手足に擦過傷をつけよう君が大人になっても虫とり網を捨てないでくださいあちこち縫い合わせた八月の風景を忘れないで欲しい棚田を駆け下り、里芋の葉を傘にし、夕立に降られ、どんな悔恨も葬られた、一面の自然に消える永久の夏

  • 開錠/施錠

    言いたかった泣きながら言ってやりたかった何も言うことがないのに、震えながら沈黙を罵倒したかった大切な人がより一層大切になる時、私たちは初めて心から祈りを知った大切なものが、どれほど大切であるかを 噂がコンマ何秒で世界をつくり変えていく矛盾を支えている何者かが人の愛憎のドアの鍵を簡単に開ける凍っていて開かない秘密の扉を懐から、燃え上がる盗人の鍵を取り出し因果応報のもと、開錠する灼熱としてこの世へ 炎の痛みは、開かれた肉体は、いつだって拒絶できない人が創り出した神に、姦通された破壊は善であると教えられた鳥が飛ぶほど、善とされた「自由」というシュプレヒコール行進する人々よその先に何があるのか、教えて…

  • 極地にて

    明日の朝がなければ今日が成立する論理はその意味を失うおわかりになりますか? 今日という概念はただの箱である、と透明な手が梱包しあちこちの支店を経由して家のドアを無益に叩く凍りついた私に届けられる警鐘の愛 それは心臓という名で一日に七〇〇〇リットルの更新を血まみれで続けている数えなくとも、私を生かし続ける自分の耳で自分の心音を聴くことはできない 明日が成立し、今日の終わらせ方を知る神話の世界のように世界中を飛ぶ火の龍洗礼を受け目覚めた私の裏側に隠れていた破壊の波今生の別れのように、くるぶしをひいていく沸騰した波 それでも顔をあげれば瞳孔が働く耳が起きる唇が求める一杯のスタウトをください一日のため…

  • 新しい思想(加筆修正)

    国民の義務だと謳って他人の紅い汗を舐めながら、働くことばかり強制され眠くなれば、二階から轡を点眼される前回休んだのは、いつ転生した時だろう?どの時代も一緒だったふたつ、みっつと死んだ数だけ影が増える 《スキャンダルに追われ、自分の放った矢に撃たれる溺れているあの愚か者は誰だ? どの星の元首か?》 恥も外聞もない。乗り心地の良いデバイスに担がれ、様々な認証とパスワードを打ち続けるのが貴方の仕事機械と言えばその通りだが、功名心が人間の証明だ貴方が命懸けでした仕事を、歴史に残したいだけ貴方の嗜好品の中で、命は道具となり下がった いつでもキレやすいように研がれ白昼劇の悲しみを製造している、ひび割れた世…

  • 飛ばなかったイカロスに価値はあるか?

    時間をかけ、にがい記憶を自分で沈黙させたのに、ふとした瞬間、ぱっくりとその縫い目は裂け、鮮血が再び弾ける焦がしてしまった自意識をおもわず飲み込んで一人、生き急ぐように演じてきた舞台の上で強迫的な幕がやっと下りる 擦過傷でも大なり小なりトラウマを抱えているそうやって生きてくしかない人隠しながら生きてきた人生存者の数より死者の数が誉れ高い弾幕密林の中に落とした、人が勲章になる姿を表現する言葉はまだ見つかっていない 壁に並ばせて、メロディーのように一斉に射殺してもその穴から二一グラムの煙幕が立ち上り明日も同じことが繰り返される人の崖からぬっと伸びる、手何処でもない場所へ、引きずり込もうとする死の手わ…

  • 新しい思想

    国民の義務だと謳って他人の紅い汗を舐めながら、働くことばかり強制され眠くなれば、二階から轡を点眼される前回休んだのは、いつ転生した時だろう?どの時代も一緒だったふたつ、みっつと死んだ数だけ影が増える 《スキャンダルに追われ、自分の放った矢に撃たれる溺れているあの愚か者は誰だ? どの星の元首か?》 恥も外聞もない。乗り心地の良いデバイスに担がれ、様々な認証とパスワードを打ち続けるのが貴方の仕事機械と言えばその通りだが、功名心が人間の証明貴方が命懸けでした仕事を、歴史に残したいだけ貴方の嗜好品の中で、命は道具となり下がった いつでもキレやすいように研がれ白昼劇の悲しみを製造している、ひび割れた世界…

  • 『嘘の天ぷら』佐々木貴子 詩集 感想

    飼育 「僕は鬼を飼っていた」冒頭から、負の自分と対峙していく詩人の覚悟がある。「鬼」は三角みづ紀さんの「オウバアキル」にもあるが、佐々木貴子の鬼はもっと感情豊かだ。それは「鬼の成長が僕の唯一の楽しみだ」にも見られる。 詩の後半の畳みかけるような展開で、「僕の死に顔。」で詩集をスタートさせている。後半の畳みかけは、詩集全体がショートショート的で、難解ではなく、肩の力を抜いて読むこともできるし、よりハードに読むこともできる。ショートショート的なので、詩の中のフェーズの移行や、二転三転する筋を詩人は自在に使っている。 「鬼の成長が僕の唯一の楽しみだ」。ペットとは淋しさとの同期で、成長期の二面性。鬼と…

  • 馬を殺す

    大切に育てた馬を殺処分した真冬の、夜明け前馬は自分の運命を知りながら、熱い息で私の頬を舐めてくるここへきて、まだ甘えているのだ私は抑えるものを抑えられないまま、獣医のする仕事から目をそむけてしまう 銀行に騙され、弄ばれた奈落の底赤く染まった月だけが見ている私は自らの手で信じることを失った手放してわかる、婉曲のない手がしていた、詩的な仕事。 錠剤をいくら飲んでももう、眠り方がわからない。馬の瞳に映った自分の瞳が忘れられない それから見るようになった壁に投影される裸体の男が、「信じろ!」と言う汝の魂のある肉体を「信じろ!」と言う私は割れた鏡に鏡を映して自分を見るが、ばらばらの複眼が、血液の上を滑っ…

  • パンデミック

    中庸が失われていくという自覚はあるか? 原罪の開花に負けていく、まっさらな鳥が鳴く 警鐘は快楽を前に斬首され、帰らぬ人となった もはや、透明性のない神の手では 安眠できる場所を検索することはできない 聖櫃が埋まっているという、使い切った荒地を彷徨えば 人を喰らう略奪者に屠られる 猛毒の指がさしたその先に乱反射する太陽 ほら、あれがこの世の正体です 言葉以外で記憶しておきなさい 苦悶の色を忘却し、仮想空間に沈没する頭の膨らんだ男たち 逃げ込んだ圧倒的自堕落の世界が限りなく広がる 彼らは既に宇宙を創造している 空っぽにした彼らの頭蓋骨こそ産みやすい、新たな子宮なのだ 穢れに浸かった、高密度の時間を…

  • 挿入歌

    私は歳だけをとり、 眠れない自分の中へ 少年を幽閉した 月明りだけで伸びる身長 何の満足にもならない、 マスターベーションのくり返し 白昼夢の中に入って、逝ったお前の死は あまりにも響いた 走ることしかできなくなった鳥 心の傷というものは、 やすやすと、ふさがることはない 巨大な食虫植物として ねっとりとした紅色の口を開け、 私自身を捕縛する準備をしている 私もまた、何かが起きるのを空想の中で待っている 偶然という弾を込めて リボルバーをまわし、 こめかみを撃つ、 うつ病患者 叫びたかった ただ叫びの中に入って泣き喚きたかった 空砲の真夜中にはインスピレーションという、 音符のゴーストが詰まっ…

  • 鯨の詩

    虚しさで腹を膨らませて、貪るのは夢の死骸君がもがき苦しんで書いたその言葉は、海に沈んで、僕には届かなかった生きる理由をさがしていた君は、結局それを見付けることができたのか?メタファーを地図にして、海の砂漠を渡りきれたか?点々と続く無人島に漂着し、一時の暖をとる時に、君は、その炎にのみ安らぎを感じるようになるもはや冒険を必要としなくなった君そのノスタルジーさえも忘れつつあった宝物も、それを探しに出た人々のことも、忘れてしまった遠い時間の彼方に破れたマストに叙述された、手紙とも、日記ともつかない、長い長いメッセージ僕には届かなかった深い深い海の底で、時間をかけて濾しとられ、溶けて行った広い広い海の…

  • シャッター街

    かすかに瞬いているアーケードの光 鈍色の月が示す 追憶とはわずかな破壊であり 安穏とは常に不安に挟まれてきた 死にそこない 誰も使わない公衆トイレの便器に頭を入れて 溺れ死んだ、クリーニング屋の店主 私はその財布を盗んだ タマゴをひとつ買い求めるために 貨幣経済を信用するのは何故だろう? いつ教わったのか、身につけたのか 答えが出るまで、 考える時間はそれほど残されていない 締め切った、昔の洗濯板のようなシャッター それが転移していく 一度滅んだ電飾はそれきりだ 路上詩人が真夜中に吠えている ランボーの詩集を広げ きっとつぶれた古本屋で 三十円で売られていた 何度も嫁に行った 何度、縁を切られ…

  • 気づかれないように、死なないように、幸福であるように

    夜の横断歩道を駆けて渡る 声を出す間もなく視界から消えた猫の様な手 ありふれたアスファルトが、トリミングされ 大手を振ってやってくる一人分の空白 右折する車に巻き込まれないよう エアバッグを備えるべきは、 歩行者の方なのかもしれない 罵るのはいつも広げすぎた自由の方で 曲がりきれないカーブで横転した 森の中に逃亡した何者でもない顔の集合体 そこに祈る相手などいないだろう 懺悔にも圏外がある 若い男が青白い言い訳を持って出頭した 死にきれなかった、と大抵は言う 怒りがないかと問われれば、 傷だらけの嘘になる 淋しくないかと訊かれたら、 宙に浮いたままになる 死なないように、笑ってきた ずっとずっ…

  • もしも死にたくなってしまったら

    もしも死にたくなってしまったら、僕を起こしにおいで。深い夜や、盲のような霧の時、サイレント映画について長いお話をしよう。暖炉のある部屋で、掌で影を作って再現しよう。短編小説家の、ひと時の寸劇。誰も死なず、誰も損なわれない物語を、毛布のように君の肩に掛ける。すぐには暖まらないかもしれない。君を暖めるのは君自身の体温だから。膝を抱えてごらん。長く息を吸って、吐いて。スペアミントを入れた熱いミルクを一口飲んでごらん。サウンドトラックが必要なら、書棚を調べてみて。少ないけれど、同じような思いがそこには込められているから。オルガンと雪の降る音で作られた小節。胸に手をあてて、そっと呼吸を合わせてみて。もし…

  • お父さん

    立ち飲み屋でお父さんは死んだんだ お母さんが「お父さん、お父さん」と叫んで 僕と妹も「お父さん、お父さん」と叫んだ 僕たちはお父さんの足を引っ張って家まで連れて行き、 合掌してから、その身体をすべて平らげた 「これが供養なんだよ」とお母さんは鼻水も一緒に、 たまっていた精液さえ飲み干したのだ。

  • あなたの耳に届きますように

    これは自殺ではありませんただの出来事廃棄物を処理しただけそれを燃やして、海にまいてください私は地球の羊水に還っていくだけですもう、余計な心配はいらないしもう、余計な病名は必要ない望まれて生まれ、望まれて死んでいく矛盾が、楽しげに踊りながら底へ底へと沈んでいくそれが名を捨て去った私の、生来の姿です つぼみが少しずつ開花する風の便りそれが私です温暖な季節に釣れる魚それが私です爆ぜる栗に、年甲斐もなくはしゃぐそれが私です肌切れる冬の、鱈の鍋を私の知っている人たちと食べてくださいその夜は、愛し合ってくださいただ、ただ、たがいの身体を温めるためにその夜は、愛し合ってくださいあらゆる比喩が理由のない鳴き声…

  • 空想癖の終焉で

    生きていくことに妥協を覚えた心臓は時々、握りつぶされたような眠りに、落ちる最初は一秒、次は二秒影は助走のように長くなるどこまで跳ぶのか、行くのか自死の発作が自らの中で目覚め、息ができないと叫ぶ 歩んだ足跡たちはどこへ消えたのだろう未来は救済でない、といつ知ったろう正しさだけでは生きてこれなかった読み書きができない私は、国益のため何度でも捨てられていくそして何かを拾うように、空巣を繰り返した憧れという疎ましさを頭の中で、何度も殺したつり橋で踏み外した失敗は、頑なまでに人生の失敗となる 今、床を磨くことを仕事にしている品川のビルで夜九時から、朝の五時まであなたの革靴の裏側が、反射するほどの拘りを持…

  • セルフィー

    父親が十七歳で初体験したフィヨルドは、この世のものだったのだろうか?心の中で固くなったパドルを握り、その美しい迷路に、ゆっくりと燕下するように入っていった古くから伝えられてきた聖別された熱量で共有する互いの痛みと悦楽ふっ、と漏れる水の声がしん、と響く明け方の精霊に時が来たことを教えられた そして、産まれたつるんと滑り落ちた豆が尻を叩かれおぎゃあ、と泣いた幸福と不幸のバランスを悟っていたかのようにおぎゃあ、と泣いた よく晴れた春の草原で、屈折した体を抱擁し、ゆっくりと、ゆっくりと、揺すってくれる父あの子は片端だという噂話を背中で守り、あてられた紙くずを折り曲げて、一羽の鶴にした羽ばたきが、色彩の…

  • 逆光

    八月の凍てつく光が今日も人を酷暑にする人間の温暖化は着実に進んでおり、いつ発火してもおかしくない状況で、侮辱ほど簡単な起爆装置はない 自ら地雷を踏んだジャーナリストが身を賭して叫んでいる子どもたちに民の種を託せるのか立ち尽くす以外に、道はないのか 人間の凋落それはもう始まっていて鎖を外された者は早速、金色のピスをするその姿、犬そのものだ倫理の潔白は蒸発し続け、上空へ立ち昇っていく大量の漂白剤が、季節はずれの雪となって有色人種に降る 人々は疑心暗鬼に疲れ果てた怒号が地鳴りになって、大きな家が揺れている 斬首された寛容さが足元にころんと転がりスプリンクラーのように鮮血を噴射する三歩、歩いたという骸…

  • 第一回よるもく舎■合評企画 佐々木漣『漂泊の虎』

    〇よるもく相互合評会とは?? 詩舎夜の目撃者(通称よるもく舎)で、詩を相互に発表しあう場を作ろうというもの。毎回作品を相互に批評、感想を出して発表しちゃおうと勝手に考えた、「魚野真美 詩舎 夜の目撃者」における企画です。今回は私の作品『漂泊の虎』です。 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 漂泊の虎 佐々木漣 すっかり朽ちた森の中で、独り彷徨う昨日の太陽はもう昇ってはこない永遠のような冬、欠けた月風が枝を切り、剣山のような凍土が下から体温をつらぬく探しても探しても、勝者の痕跡は見つからない戦い、敗れ、失った火炎のような瞳を金色の縄張りを残ったのは骸のような私…

  • よるもく相互合評会 魚野真美 太陽の親子

    〇よるもく相互合評会とは??詩舎 夜の目撃者(通称よるもく舎)内で、不定期でゲストと相互に発表しあう場を作ろうというもの。作品を相互に批評、感想を出して発表しちゃおうと勝手に考えた魚野真美さんのブログ、「魚野真美 詩舎 夜の目撃者」における企画です。 今回は、私、佐々木漣が、批評/感想を書かせていただきました。 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 太陽の親子魚野真美 夜明け前いつかあなたと走った道路に寝そべりあなたの冷たさと同じくらいに身体は硬直して冷たくなっていくのがわかる 空が白む頃誰もいなかった道の上に太陽の子が走った横たわる私を踏むことなく太陽の子は西の方角へ走った やが…

  • お引越し

    新年度に入り、ブログをお引越ししました。 自作の詩や、様々な感想を弱い電波でビビビビと発信していきます。 不慣れなので、最初からトラブっていますがよろしくお願いします。

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、佐々木漣さんをフォローしませんか?

ハンドル名
佐々木漣さん
ブログタイトル
佐々木漣 ブログ 漣の残響
フォロー
佐々木漣 ブログ 漣の残響

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用