パスワードについてコメントをいただきましたので、お答えします。二人の誕生日は、誕生年月日ではなく「誕生日」です。それぞれの日の合計で、二桁の数字になります。書きかけのまま停まっているお話を仕上げて更新するつもりです。いつ、とは言えませんが……過去作も順次鍵付きにしていくつもりでしたが、ランキングを抜けたことで気持ちが落ち着いてしまって、なかなか作業が進みません。そろそろ真剣に取り組もうと思っています...
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「ロウン様、今日はお疲れでしょう。早めにおやすみになってください」ユノはそう言いながら、ロウンの身体を支えて寝台にゆっくりと横たえた。自分は寝台の端に腰を下ろし、ロウンの身体に毛布をかける。「ありがとうユノ。大丈夫だよ。今日は本当に気分がよい」ロウンは笑みを浮かべて答え、ユノの手をそっと握った。ユノも両手で包むように握り返す。「とうとうロウン様はやり遂げられましたね。本当に……お疲れさまでした」労う...
季節は巡り、山深いソンサンの街にも春が訪れた。緑濃い松や檜の山々に、所々山桜の淡いピンクが煙り、ロウンの家の裏庭では色鮮やかな八重桜が零れんばかりに咲き誇っていた。ロウンは店の仕事のかたわら、街の伝統産業である家具作りに関わる人々を集め、度々会合を重ねていた。ロウン一族が代々護ってきたソンサンの山林を手放し、街の共有財産として末代まで残すための大切な話し合いだ。それぞれの立場や思惑もあり、なかなか...
「ミンヒョン、ちょっと」ウソン親方に呼ばれて、ミンヒョンは仕事の手を止めて作業室に向かった。「使いをたのむ」そう言ってウソン親方は風呂敷包みを差し出した。「これをロウンに届けてくれ。ロウンかユノに、俺からだと言って手渡すだけでいい」中身は見なくてもわかった。あの夜親方が彫っていた張型が仕上がったのだ。「……わかりました」ミンヒョンは表情も変えずそれだけ答えると、包みを受け取った。「仕上がり、見てみる...
ミンヒョンは彫刻刀を机に置くと、丸まった背中を起こして両腕を上げて大きく伸びをした。工房での仕事の傍ら、夜は連日自室の作業部屋で自分の制作に没頭していた。今は用箪笥と呼ばれる小ぶりの箪笥を作っている。形は単純で同じ幅の抽斗(ひきだし)が三段。化粧道具や裁縫道具などの小物を収納するのに手頃な大きさで、抽斗の前板に浮き彫りを施し金属の引き手を付ける。ミンヒョンが得意とする繊細な彫刻は女性向きだろうという...
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パスワードについてコメントをいただきましたので、お答えします。二人の誕生日は、誕生年月日ではなく「誕生日」です。それぞれの日の合計で、二桁の数字になります。書きかけのまま停まっているお話を仕上げて更新するつもりです。いつ、とは言えませんが……過去作も順次鍵付きにしていくつもりでしたが、ランキングを抜けたことで気持ちが落ち着いてしまって、なかなか作業が進みません。そろそろ真剣に取り組もうと思っています...
おはようございます。気付けば2ヶ月も更新は滞ったままで、わずかでも待っていてくださっている読者様がいらっしゃれば、本当にごめんなさい。これまでも何度か書きましたが、お話を書く、文字をおこす作業になかなか心が向かいません。今連載中のお話「倖せのひと ユノの物語」は、私としては珍しくストーリーの最後まで頭の中では出来上がって、その分筆が進みそうなものですが、私の中で完結してしまっているせいで、頭の中で...
扉の閂が重い音をたてて、ユノは敷布に埋めた顔をゆるゆると上げた。開いた扉の向こうにはゴヌが立って、中を覗いていた。「ジオ、お前は俺が呼ぶまで閂をかけて外で見張ってろ」後ろに控えるジオに言うと、ゴヌは部屋に入り後ろ手で扉を閉めた。ユノは身体を起こして寝台の縁に腰掛けた。ゴヌはゆっくりとユノに近づいてきた。黙ったままユノを見下ろすゴヌは浅黒い顔に気味の悪い笑顔を浮かべていた。「……ユ デヒさんは、私をど...
ユノは再び後ろ手に縛られ、馬車の荷台に乗せられた。今度は若い方の手下のジオが一緒に荷台に乗り込んだ。ユノが逃げないよう見張るためだ。ユ デヒが自分をこのまま帰す気はないことをユノはあらためて悟った。「あの…… お訊きしたいんですが……」馬車が動き出してから、ユノはジオに向かって声をかけた。轍の音に紛れて、ユノの声は表の二人には聞こえないだろう。「ユ デヒさんは、どうして私を一緒に連れていくのでしょうか?...
おはようこざいます。二人の誕生日イベントが無事に終わりましたね。二日間、素敵な動画や写真、コメントで楽しませてもらいました。ツアーも始まって、参戦した方達の興奮と喜びいっぱいの記事を羨ましく思いつつ楽しませていただいています。今回のツアーは、ビギ先行とオフィシャル先行で敗れ、自分の体調等もあって、参戦を諦めました。ドーム追加も発表ありましたが、東京大阪は無理~一回、福岡ドームでもやって欲しい!九州...
僕の幼馴染み、二つ歳上のユノヒョン。男らしくてカッコよくて、スポーツ万能、頭だっていい。でも、少しもそれを鼻にかけたりしないし、誰にでも優しくて思いやりがあって、小さい頃からいつだって、みんなの人気者だった。今になって思い出せば、僕は幼稚園の頃から、いつもユノヒョンの後を付いて回っていた。恥ずかしがりで、自分から人の輪の中に入ってゆくことができなかった僕だったけど、ユノヒョンだけはいつも僕の相手を...
俺は両手いっぱいの荷物に溜め息をつきながら、早足で家へと急いでいた。今日は俺の18回目の誕生日だ。毎年この日を友人達が祝ってくれる。今日も俺のために近くのカラオケボックスでパーティーを企画してくれている。その前にこの荷物をとりあえず家に持って帰り、私服に着替えてから出かける予定だ。パーティーのあと家に戻れば、多分両親と妹がケーキとプレゼントを用意して待っていてくれるはずだ。それはここ数年、恒例行事み...
馬車の荷台を覆う幌の隙間から、外の明かりが射し込んでいる。ユノは薄暗い荷台の床に横向きに寝そべっていた。砂利道を進む馬車の振動が全身に伝わる。九月初頭の昼間、荷台の中は蒸し暑かった。荷台にはロウンの店から運び出された家具や調度品が無造作に積み込まれていた。馬車が揺れるたびにそれがギシギシと擦れ合う。職人達が丹精込めて作った物が粗末に扱われるのがユノには腹立たしく、しかしどうにもできないのが辛かった...
ユ デヒは椅子に深々と腰掛けて、ユノとヨンスクを交互に眺めて薄笑いを浮かべていた。巻き煙草を何度か吸うと、指先で弾いて床に灰を落とした。ヨンスクはそれを見て顔をしかめて声をあげようとしたが、ユノが手を握ってそれを押し留めた。普段は温厚なヨンスクが、今は苦虫を噛み潰したように渋い顔で必死に怒りをこらえている。ユノは片腕にポムをしっかりと抱きしめ、優しく頭を撫でた。ユノはユノで、そうして自分の気持ちを...
ハン ロウンの葬儀は、街を挙げての盛大なものだった。ロウンの家から墓所まで、葬列は一時間ほどかけてゆっくりと街の通りを進んだ。どの商店も店を閉め、街中の人々が葬列に向かって花を手向け手を合わせた。葬列には職人組合の親方衆と林業組合の木こり衆が整然と並んだ。それぞれの総代のウソンとホソクが先頭で棺桶の両脇をかかえ、その後にそれぞれの顔役が続き、ユノは一番後ろでミンヒョンと左右に並んで棺桶を支えた。ソ...
その場に泣き崩れて嗚咽を漏らしていたヨンスクは、暫くして落ち着きを取り戻した。いつまでも泣いているわけにはいかない。これから忙しくなるのだ。ヨンスクは涙を前掛けで拭って、よろよろと立ち上がった。ユノはベッドの上でまだロウンを抱き寄せて、小さな子供にするように髪を撫でつけ、頬に指を滑らせている。すぐ横まで歩み寄ってもヨンスクの姿は目に入らない様子で、穏やかな顔つきでただ一心にロウンを見つめていた。「...
「どうでしたか?」「え、ええ……」ヨンスクの問いかけにユノは小さく答え、差し出された両手に食器を乗せた膳を渡した。食の細くなったロウンのために食べやすく工夫された夕食は、殆ど手付かずのまま残されていた。「じっとしているばかりで腹も減らないと言われて……あ、でも、野菜のスープはお召し上がりになって、とても美味しいと……」「そう、よかった」ヨンスクはほっとしたように目尻を細めて頷いた。少しでもロウンが口にし...
ウソンはロウンの部屋を出て食堂へ向かった。昼食は煮しめだろうか、醤油の煮える甘い匂いが厨房から漏れている。「旨そうな匂いだな」「あ、ウソン親方。ロウン様は?」流し台に向かって昼食の用意をしていたヨンスクが振り向いた。「話し疲れて眠った。昼食ができるまでそっとしておいてくれ」「そうですか。承知しました」ヨンスクはほっとしたように肩の力を抜いた。鍋の火を止めると前掛けで手を拭いて、ウソンのために冷茶を...
ユノとミンヒョンが部屋を出ていってしまうと、部屋の中はしんと静まった。ウソンは旧友の穏やかな顔をじっと見つめ、かける言葉を探す。ロウンの目が見えないことが今は良かったと思う。どんな顔でロウンと向き合えばよいのか、ウソンには冷静でいられる自信がなかった。忙しさに追われて暫く会わなかった間に、ロウンは急激にやつれていた。夏の暑さがこたえたのか、顔色は悪く頬はこけ、半袖の寝間着から覗く痩せた腕は赤黒く浮...
コンコン、と、扉を叩く音に、ロウンは微睡みから引き戻されてた。「ロウン様、起きていらっしゃいますか?」ユノの柔らかな声の方へゆっくりと顔を向けた。風通しを良くするために部屋の入口の扉は開かれたままで、扉の陰から顔を覗かせて微笑むユノを頭の中に思い浮かべる。今日のユノの声は明るく穏やかだった。ユノの小さな声の変化にもロウンは敏感になった。姿が見えないからこその気付きだった。余計なことは話さないユノだ...
「ソルリ様が、ユ デヒへ嫁ぎたいと……自ら御主人様に許しを請われたのです」そう言うと、ヨンスクは気持ちを落ち着かせるようにゆっくりとお茶を啜った。「それは、ソルリ様もユ デヒ様をお好きだったということですよね?誰にも知られないうちに、二人は相思相愛の仲だったのですね……」ユノはソルリとユ デヒの密かな愛を夢想した。美しい深窓の令嬢の恋とは、ユノの好きな小説の中の物語のようだった。「……ソルリ様は、それまで...
「……ユノさんもご存知のように、元はこの辺りの土地のほとんどが代々ハン家の所有地で、今、林業組合と家具職人組合の事務所が建つ場所には、かつてはハン家の立派な御屋敷が建っていました」ヨンスクは湯呑みを食台に戻して、ゆっくりと語り始めた。「ハン家の御主人様……ロウン様のお父様は、ソンサンの街の誰からも尊敬される立派な方でした。奥様はとても穏やかで上品な美しい方でしたが、生まれつきお身体が弱く、しかし御主人...
ユノはロウンの寝室の扉をそっと開けて中に入った。眠っていると思っていたロウンはすぐに顔を動かして、「ユノ?」と、小さく名を呼んだ。「起きてらしたんですか」「ああ。……ん? これは……山梔子(くちなし)か?」「よくおわかりになりましたね」ユノは微笑むとロウンの寝台の横へ進んだ。「先ほど先生をお見送りに下に降りたら、良い香りがして……」裏庭に山梔子の低木があり、白い愛らしい花を咲かせていた。ユノは一枝だけ手折...
ユノとチャンミン ふたりのanother worldへようこそ
「ロウン様、ちょっとよろしいですか?」扉を薄く開いて、ユノは部屋のなかを伺った。ロウンは寝台の上で身体を起こし、背中を背凭れにあずけて座っていた。「ユノか。どうした?」優しい声で答え微笑む。ユノは部屋に入り、ロウンの傍らに立った。「月末ですので今月分の収支をまとめました。間違いがないか眼を通していただけますか?」そう言って厚い帳簿を開いてロウンの布団を掛けた足の上に差し出した。「ああ、もう月末か……...
扉の閂が重い音をたてて、ユノは敷布に埋めた顔をゆるゆると上げた。開いた扉の向こうにはゴヌが立って、中を覗いていた。「ジオ、お前は俺が呼ぶまで閂をかけて外で見張ってろ」後ろに控えるジオに言うと、ゴヌは部屋に入り後ろ手で扉を閉めた。ユノは身体を起こして寝台の縁に腰掛けた。ゴヌはゆっくりとユノに近づいてきた。黙ったままユノを見下ろすゴヌは浅黒い顔に気味の悪い笑顔を浮かべていた。「……ユ デヒさんは、私をど...
ユノは再び後ろ手に縛られ、馬車の荷台に乗せられた。今度は若い方の手下のジオが一緒に荷台に乗り込んだ。ユノが逃げないよう見張るためだ。ユ デヒが自分をこのまま帰す気はないことをユノはあらためて悟った。「あの…… お訊きしたいんですが……」馬車が動き出してから、ユノはジオに向かって声をかけた。轍の音に紛れて、ユノの声は表の二人には聞こえないだろう。「ユ デヒさんは、どうして私を一緒に連れていくのでしょうか?...
おはようこざいます。二人の誕生日イベントが無事に終わりましたね。二日間、素敵な動画や写真、コメントで楽しませてもらいました。ツアーも始まって、参戦した方達の興奮と喜びいっぱいの記事を羨ましく思いつつ楽しませていただいています。今回のツアーは、ビギ先行とオフィシャル先行で敗れ、自分の体調等もあって、参戦を諦めました。ドーム追加も発表ありましたが、東京大阪は無理~一回、福岡ドームでもやって欲しい!九州...
僕の幼馴染み、二つ歳上のユノヒョン。男らしくてカッコよくて、スポーツ万能、頭だっていい。でも、少しもそれを鼻にかけたりしないし、誰にでも優しくて思いやりがあって、小さい頃からいつだって、みんなの人気者だった。今になって思い出せば、僕は幼稚園の頃から、いつもユノヒョンの後を付いて回っていた。恥ずかしがりで、自分から人の輪の中に入ってゆくことができなかった僕だったけど、ユノヒョンだけはいつも僕の相手を...
俺は両手いっぱいの荷物に溜め息をつきながら、早足で家へと急いでいた。今日は俺の18回目の誕生日だ。毎年この日を友人達が祝ってくれる。今日も俺のために近くのカラオケボックスでパーティーを企画してくれている。その前にこの荷物をとりあえず家に持って帰り、私服に着替えてから出かける予定だ。パーティーのあと家に戻れば、多分両親と妹がケーキとプレゼントを用意して待っていてくれるはずだ。それはここ数年、恒例行事み...
馬車の荷台を覆う幌の隙間から、外の明かりが射し込んでいる。ユノは薄暗い荷台の床に横向きに寝そべっていた。砂利道を進む馬車の振動が全身に伝わる。九月初頭の昼間、荷台の中は蒸し暑かった。荷台にはロウンの店から運び出された家具や調度品が無造作に積み込まれていた。馬車が揺れるたびにそれがギシギシと擦れ合う。職人達が丹精込めて作った物が粗末に扱われるのがユノには腹立たしく、しかしどうにもできないのが辛かった...
ユ デヒは椅子に深々と腰掛けて、ユノとヨンスクを交互に眺めて薄笑いを浮かべていた。巻き煙草を何度か吸うと、指先で弾いて床に灰を落とした。ヨンスクはそれを見て顔をしかめて声をあげようとしたが、ユノが手を握ってそれを押し留めた。普段は温厚なヨンスクが、今は苦虫を噛み潰したように渋い顔で必死に怒りをこらえている。ユノは片腕にポムをしっかりと抱きしめ、優しく頭を撫でた。ユノはユノで、そうして自分の気持ちを...
ハン ロウンの葬儀は、街を挙げての盛大なものだった。ロウンの家から墓所まで、葬列は一時間ほどかけてゆっくりと街の通りを進んだ。どの商店も店を閉め、街中の人々が葬列に向かって花を手向け手を合わせた。葬列には職人組合の親方衆と林業組合の木こり衆が整然と並んだ。それぞれの総代のウソンとホソクが先頭で棺桶の両脇をかかえ、その後にそれぞれの顔役が続き、ユノは一番後ろでミンヒョンと左右に並んで棺桶を支えた。ソ...
その場に泣き崩れて嗚咽を漏らしていたヨンスクは、暫くして落ち着きを取り戻した。いつまでも泣いているわけにはいかない。これから忙しくなるのだ。ヨンスクは涙を前掛けで拭って、よろよろと立ち上がった。ユノはベッドの上でまだロウンを抱き寄せて、小さな子供にするように髪を撫でつけ、頬に指を滑らせている。すぐ横まで歩み寄ってもヨンスクの姿は目に入らない様子で、穏やかな顔つきでただ一心にロウンを見つめていた。「...