日本から流れ寄ってきた若者たちとおなじフラット(アパートのこと)の3階に、ルミ子とあたしは大きなトランクを放り込み、とりあえず洋服ダンスに衣服を吊るした。 …
母は警察にしょっ引かれ、取り調べがはじまった。が、刑事はすぐに、ことの次第を見抜いてしまった。おおくの事件を担当してきた刑事の『眼』には、顔を見ただけで、人柄…
わたくしを生んだ母なる人は、警察にしょっぴかれた。タレコミは、どのようにおこなわれたのだろうか?額の禿げかかった伯父は警察署にいって、どんな顔をしてどんな言葉…
なんどもよく来たど!『いなかの従兄』がよく言った。戦後、わたしがもう、高校を卒業したころだった。わたしが祖母に会いに 『いなか』 に行くと、いなかの従兄が、当…
額の禿げかけた、細くくとがった顔立ちの伯母の夫は、どこへどのように、母の姦通を ”タレコミ” に行っただろうか?いちばん近いところは『神田警察』だっただろう。…
ある日‥‥それは何月の何日だっただろうか?どんな季節だっただろうか?その日は晴れていただろうか、それとも?何時ごろのことだっただろう? その日『刑事』 と名乗…
昭和12(1937)年7月7日、盧溝橋事件をきっかけに、日中戦争がはじまった。父は 『赤紙』 で招集されて、戦地へとむかう。そして、まだ一歳のわたしをかかえた…
★昨日まで書いたものの中で、間違いがありました。 昭和12年からはじまった日中戦争は、そのまま太平洋戦争へと突入し、 18年も戦…
弟のところに 『赤紙』 がきた!弟、豊(とよ)は戦地におもむく。父や母や、姉や兄たちは色めき立っただろな。「ねぇちゃん! トヨに赤紙がきたと!」めったに【事件…
父の肖像を描くにあたって、戦争は、はずせないのである。父は明治40(1907)年12月に生まれて、平成13(2001)年6月に没した。戦争の時代と呼ばれる20…
昭和12年3月わたしは生まれた。そして同年7月、【日中戦争】 がはじまった。生まれて半年もたたないうちに、戦争がはじまったのだ。 当時、日本は中国を『支那(シ…
額の禿げ上がった背の高い中年のオトコは、前を行くオンナが歯科医院のドアのなかへ入ったのを見届けて、神田神保町の、呉服屋の店へと帰って行った。あとをつけられてい…
お~い、国会議員サン!コロナが流行りはじめてから、すでに半年!いかがお過ごし、でしょうか?毎月のド高いお給料、いかがお使いでしょうか?アタシたちの切ない税金で…
『父の肖像』、一日パスして、今日は忙中挿話。 30年くらい前? 毎年、夏には東北道をまっしぐら、宮城県石巻市、牡鹿半島の十八成浜(くぐなりはま)へむかった。一…
「お帰りなさい」着物の膝をにじりながら、ふっくらと髪を結いあげた女が言う。「どうだったんですか?」「やっぱり行ったよ。思ったとおりだ。とんでもないことだ」額の…
たぶん、昭和13年だった、のだろう、と思う。当時の本郷界隈はどんな街だったのだろうか?本郷も「かねやす」までは江戸の内といわれるが‥‥、何といっても「東大」が…
父の肖像 ― 本日三回目。 前を行くぽっちゃりとしたオンナは、壱岐坂(いきざか)の途中を左に折れ、かなり急な坂道を登り詰めると、目の前に黒い塀の『本郷館』が現…
オトコは神保町の交差点で、しばらく停まった。絹の布地が光沢をはなつ、質のいいおおしまの袖の腕を組んで、じっと立ち止まっている。前をゆくオンナが、もうすこし遠く…
これから、読んでも読まれなくても! 『父の肖像』 『野いちご』上記2編を、気ままに書きつづってみたいと思っています。 最初に申し上げておくことが…
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日本から流れ寄ってきた若者たちとおなじフラット(アパートのこと)の3階に、ルミ子とあたしは大きなトランクを放り込み、とりあえず洋服ダンスに衣服を吊るした。 …
地下鉄のベーズウォター駅で降り、でっかいトランクを引きずりながら、「ポーチェスターストリート」というところへやってきた! ひとつの通りの右手、手前から終わり…
「ロンドンは安いって言っていたじゃない!」とルミ子が言う。 フ~ン、そうだったかなぁ?「パリは高いし‥‥ねぇ、ロンドンへゆこうよ」とまたルミ子が言う。 それじ…
パリに一週間ぐらい逗留したと思っていた‥‥けれど‥‥ いや、案外2~3日だったかも??? ルミ子とアタシのパリ滞在は‥‥明日からどうするか‥‥わからない間の…
パリの、サンジェルマンの、いちばん安いホテルに泊まった。 部屋には、トイレみたいな【ビデ】がデ~~~ンと在って‥‥多分、多分、あのあたりの安ホテルは‥‥娼婦…
パリ? ルミ子もアタシも、生まれてはじめてだ! でも‥‥少しは知っている! 世界のパリ‥‥小説で読んだ。映画で観た! 多分‥‥日本と違う! でも‥‥何が…
1970年4月5日‥ 初めてのパリは、凱旋門で待ち合わせた友人のスッポカシからはじまった。 待ち合わせた沢田画伯は、一時間待っても、とうとう現れなかった! …
はじめてパリを訪れた日‥‥1970年4月5日でした。 はじめてのパリ、4月5日のパリは、いやぁ、寒かった! 凱旋門で待ち合わせた知人が、約束を裏切ってスッポ…
2023(令和5)年2月20(月)晴れ 暖かくて春の陽射し♪ しごと部屋から見る空は、雲ひとつなく晴れわたっている! 春は「光」から! 春が微笑みながらや…
わぁ、2022(令和3)年 も 終わりがすぐソバになった! 今年一年も、コロナ禍下の、夏の暑さには勝負負け ザマシタ!!! コロナがはびこって以来、毎年、夏は…
ロベルトは戸惑ったようにつったっていたが、やがてテーブルをまえに座ると、うるんだような大きな青緑色の瞳で、何かを訴えるようにわたしを見つめた。しかし、何も…
では! ロベルトと、別れの時がきたのだろうか! くるべき時が迫っているのが、わたしには信じられなかった。この甘美なときが、未来永劫つづくとでも思っていた…
いまわたしの脳裏から、店内の風景は消え去っていた。大柄なオトコたちはいなくなり、頭上にまわる大きな扇風機だけが、わたしの瞳の端っこに奇妙な絵を描いていた…
ふと、ロベルトを連れてホテルを取ろうか、と思った。もしバスが出そうにないなら、暖かいシャワーを浴び、汗と埃でくたくたになった体を洗い流して、ゆっくりとベッ…
どのくらい時が経ったのだろう。ふと思い出して、かたわらのロベルトを見降ろすと、彼もまた呆然と口を開けたまま、驚愕に満ちた眼差しを、ヒシとばかり死者に投げか…
「誰かが死んだンだって・・・・」 予想外な言葉だった。ヘエーッと言ってロベルトを見ると、凍りついたようなロベルトの顔には表情がなく、放心したように唇が半開きに…
そのまま、しばらく時間が過ぎた。張りつめていた緊張が弛緩したように、群衆の輪がゆるんで、うんざりしたようなため息が聞こえてきた。 と、そのうちにまた、ひ…
(三) いったい何分が、いや何時間が経ったのだろうか? 突然、周囲が、どっという喚声でざわめき立った! はっとして我にかえり、わたしはとっさに、…
「ジャポンって、知っている?」「ン、ン」 と少年は、立てた人差し指を横に振った。「あなたが立っている、ちょうどその反対側にあるのよ」 少年は驚いたように、青緑…
もちろんわたしは自分で働き、自分で得た金銭で旅をしている。そのかぎりにおいて、人からとやかく言われる覚えはない。しかし、この少年をこのまま見捨てるのは、人間…
日本から流れ寄ってきた若者たちとおなじフラット(アパートのこと)の3階に、ルミ子とあたしは大きなトランクを放り込み、とりあえず洋服ダンスに衣服を吊るした。 …
地下鉄のベーズウォター駅で降り、でっかいトランクを引きずりながら、「ポーチェスターストリート」というところへやってきた! ひとつの通りの右手、手前から終わり…
「ロンドンは安いって言っていたじゃない!」とルミ子が言う。 フ~ン、そうだったかなぁ?「パリは高いし‥‥ねぇ、ロンドンへゆこうよ」とまたルミ子が言う。 それじ…
パリに一週間ぐらい逗留したと思っていた‥‥けれど‥‥ いや、案外2~3日だったかも??? ルミ子とアタシのパリ滞在は‥‥明日からどうするか‥‥わからない間の…
パリの、サンジェルマンの、いちばん安いホテルに泊まった。 部屋には、トイレみたいな【ビデ】がデ~~~ンと在って‥‥多分、多分、あのあたりの安ホテルは‥‥娼婦…
パリ? ルミ子もアタシも、生まれてはじめてだ! でも‥‥少しは知っている! 世界のパリ‥‥小説で読んだ。映画で観た! 多分‥‥日本と違う! でも‥‥何が…
1970年4月5日‥ 初めてのパリは、凱旋門で待ち合わせた友人のスッポカシからはじまった。 待ち合わせた沢田画伯は、一時間待っても、とうとう現れなかった! …
はじめてパリを訪れた日‥‥1970年4月5日でした。 はじめてのパリ、4月5日のパリは、いやぁ、寒かった! 凱旋門で待ち合わせた知人が、約束を裏切ってスッポ…
2023(令和5)年2月20(月)晴れ 暖かくて春の陽射し♪ しごと部屋から見る空は、雲ひとつなく晴れわたっている! 春は「光」から! 春が微笑みながらや…
わぁ、2022(令和3)年 も 終わりがすぐソバになった! 今年一年も、コロナ禍下の、夏の暑さには勝負負け ザマシタ!!! コロナがはびこって以来、毎年、夏は…
ロベルトは戸惑ったようにつったっていたが、やがてテーブルをまえに座ると、うるんだような大きな青緑色の瞳で、何かを訴えるようにわたしを見つめた。しかし、何も…
では! ロベルトと、別れの時がきたのだろうか! くるべき時が迫っているのが、わたしには信じられなかった。この甘美なときが、未来永劫つづくとでも思っていた…
いまわたしの脳裏から、店内の風景は消え去っていた。大柄なオトコたちはいなくなり、頭上にまわる大きな扇風機だけが、わたしの瞳の端っこに奇妙な絵を描いていた…
ふと、ロベルトを連れてホテルを取ろうか、と思った。もしバスが出そうにないなら、暖かいシャワーを浴び、汗と埃でくたくたになった体を洗い流して、ゆっくりとベッ…
どのくらい時が経ったのだろう。ふと思い出して、かたわらのロベルトを見降ろすと、彼もまた呆然と口を開けたまま、驚愕に満ちた眼差しを、ヒシとばかり死者に投げか…
「誰かが死んだンだって・・・・」 予想外な言葉だった。ヘエーッと言ってロベルトを見ると、凍りついたようなロベルトの顔には表情がなく、放心したように唇が半開きに…
そのまま、しばらく時間が過ぎた。張りつめていた緊張が弛緩したように、群衆の輪がゆるんで、うんざりしたようなため息が聞こえてきた。 と、そのうちにまた、ひ…
(三) いったい何分が、いや何時間が経ったのだろうか? 突然、周囲が、どっという喚声でざわめき立った! はっとして我にかえり、わたしはとっさに、…
「ジャポンって、知っている?」「ン、ン」 と少年は、立てた人差し指を横に振った。「あなたが立っている、ちょうどその反対側にあるのよ」 少年は驚いたように、青緑…
もちろんわたしは自分で働き、自分で得た金銭で旅をしている。そのかぎりにおいて、人からとやかく言われる覚えはない。しかし、この少年をこのまま見捨てるのは、人間…