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  • 思い込み

    いつものホームに立ち、家路への電車を待つ。ホームに入ってきた電車に乗り、スマホで読みかけのe-bookに目を通した。ふと、目をあげて窓から見える風景にあっと頭の中で驚きが広がる。この電車は急行だった。いつものホームに臨時の車両、臨時の急行。ホームにも車内にもアナウンスがあったはずなのに、各駅停車の車両が来ると思い込んでいると耳に入る音も何も脳内に入っていかない。意味のある音としては脳は反応しない。ジタバタは出来ない。急行だから、終点まで止まらない。時間は意味あるものとして流れている。この軌道修正で意味ある未来が訪れる。終点に着き、車両から降り下りホームに向かうとそこには思い込み

  • 見知らぬ街

    久しぶりに降り立った駅改札を抜け、待ち合わせの場所に続く交差点で信号待ちしているふと視線をビルの上に向けた小さな雨粒が顔に落ちたそこはすっかり様変わりしていた待ち合わせの場所までの景色もすっかり変わっていた最後に来たのはいつだったのだろうと、余りの変わりように半信半疑になったまるで初めて来た街のようだった見慣れたガード下の景色も変わっていた子供の頃に母と一緒に来ていた映画館もとうになくなり、まるで思い出が全て消えてしまったような錯覚に襲われるこの騒ついた気持ちはなんだろう見慣れた風景が風と共に粉微塵になったように今いる現実さえも幻のように夢の中のように感じた見知らぬ街

  • 髪の毛

    メイクのため、鏡を覗き込むと目に髪の毛入っていた先端をそっと指先でつまむ慎重に目を傷つけないように引き出すと続くまだまだ切れることなく続くそっと引っ張り出す続くそして引っ張り出す続くえーっ続くもう手は思い切り前に伸ばしている続くようやく取り終えた25センチはあっただろうかどうやってこの長さ、入ってたんだろうよかった裏側で視神系に絡まらなくてよかった取り出す時目玉切り裂かなくてよかった、よかった髪の毛

  • ゆっこのおみみ

    ゆっこのおみみがさがさいうのおへやがくらくなったのに、がさがさいうのだからないちゃったパパがみてくれたけどくらくてみえなかったのでもパパがそばにいてくれたら。。。そのままねちゃったあかるくなったのでママといっしょにおいしゃさんのところへいきましたママとおはなししてるときもゆっこのおみみのなかはがさがさおいしゃさんがゆっこのおみみのなかのぞいたらおいしゃさんがおおきなこえでたいへんだ!おいしゃさんがゆっこちゃんうごかないでねっていうからママにつかまっていましたあっがさがさもうきこえないおいしゃさんがほらっとりだしたものママにみせたのギャッーピンセットの先には大きな蝿がいましたゆっこのおみみ

  • 空を見上げて

    空を見上げて妻がつぶやく。「ねえ、あの飛行機いつも同じ時間に飛んでない?」新聞を見ていた夫が空を見上げて。「当たり前だろ、そうでなけりゃまずいだろ。」妻たずねる。「えっ、なんで。」青空には太陽の光を反射させた飛行機が雲の帯をひいて飛んでいた。空を見上げて

  • 逆転 八章

    恵美子と潤一が離婚して1年が過ぎていた。那美はニューオータニのガーデンラウンジで由紀子が来るのを待っていた。ぼんやりと外を眺めていると背後から恵美子の声が聞こえた。「お待たせ」那美が振り返ると、恵美子が立っていた。那美は椅子を引いてその場に立ち上がった。「お久しぶりです。あらっ」そういうと、那美は恵美子のふっくらした腹部に目をやった。「まあ、座って」恵美子は席に座ると、「待たせちゃったかしら」「いえ、わたしもさっき来たばかりです。恵美子さん、おめでたですか」恵美子は微笑むと右手で自分の腹部を擦った。「そう、もうすぐ8ヶ月」「そうですか。おめでとうございます」「ありがとう。あなたもご結婚おめでとう。ヨーロッパ旅行いかがでした?」「堪能しました。美術館で買ってきた本なんですけど、ちょっと重いから郵送しますね」と、那...逆転八章

  • 逆転 七章

    当面の服や荷物を旅行カバンに詰めると、潤一に何も告げず、いつもより早く恵美子は家を出た。駅前のカフェで朝食を軽く取って勤めている中学校に向かった。その夜、恵美子は浩二のマンションに向かった。浩二は帰宅が8時頃になるということで恵美子は浩二のために軽食を作り、マンションを出るとき持ち出したパソコンをカバンから取り出した。恵美子と浩二は出会ったのは、半年前のことだった。奈良京都の建築の写真展が上野で開かれたが同時に講演会があり、それを聴講した際、席が隣になったのが知り合うきっかけだった。初対面で何も言葉を交わさなくても自分に宿る前世の魂が相手に出会ったことを喜ぶ瞬間がある。そのときの恵美子と浩二はまさにそんな瞬間を感じたのだった。目と目が合ったとき、恵美子と浩二はまるで懐かしい人に出会ったような気持ちになった。どち...逆転七章

  • 逆転 六章

    恵美子が家に戻ると、潤一が既に帰っていた。恵美子がキッチンでグラスに水を注ぎ飲んでいると、潤一が自分の書斎から出てきた。「きょうは、どうしたの?」と、潤一がリビングから恵美子に尋ねた。「高校時代の友達と食事してきたの」「そう」と、潤一は相手が誰なのを確認することもなく、リビングを出てトイレに入っていった。恵美子は書斎に戻り、スーツを脱ぐと、着替えの下着を持ってバスルームに行った。下着を脱ぐと恵美子はバスルームに入りシャワーを浴びた。バスルームから出てくると、恵美子はシンクの下の扉を開けビネガーのビンを取り出した。グラスの底にうっすら酢を注ぎ込むとシンクの下の元の場所にビンを戻した。グラスに水を注いで、グラスを手に冷蔵庫までいくとアイスボックスから氷を取り出しグラスに入れた。グラスを持ったまま、恵美子は書斎に入っ...逆転六章

  • 逆転 五章

    翌日、恵美子と那美は「有楽町イトシア」の1階エントランスで7時に待ち合わせた。先に来たのは、恵美子だった。目印として、雑誌「フィガロ」の表紙を見えるように胸元に抱えて、エントランスに向いて立っていた。恵美子が来てから、10分遅れで那美がやってきた。辺りを見回し、恵美子が持っている雑誌を目にすると、軽く咳払いをして恵美子に近づいてきた。恵美子もすぐにそれが那美であるとわかった。那美は髪を肩まで伸ばして、毛先を軽く外巻きにしていた。薄いグレーのスーツを着て、首には紺地に金色の模様のはいったスカーフを巻いていた。那美は恵美子の前まで来ると、会釈をして、「初めまして、安藤です」と、恵美子の目を見て挨拶をした。恵美子も、軽く会釈をして、かばんを持っている右手に雑誌を持ち替えて、「はじめまして、円山恵美子です」「・・・・」...逆転五章

  • 逆転 四章

    半年前のこと。恵美子が自分の書斎で調べ物をしているとリビングの電話のベルが鳴るのが聞こえた。時計を見るともう11時を過ぎていた。最近では携帯でのやり取りがほとんどでめったに固定電話にかかってくることがなかった。しばらく、恵美子はコール音を聞いていたが、鳴り止まないので書斎を出て、リビングの電話の前まで行くと「03xxxxxxxx」と番号が表示されていた。恵美子は受話器を取り「もしもし」「夜分恐れ入ります。円山さんのお宅でしょうか」「はい、そうです。どなたでしょう」若そうな女性の声だった。「わたくし、安藤那美と申します。アシスタントとしてご主人の部署で働いております。」「は、はい、主人に何かあったんでしょうか」恵美子は潤一に事故でも起きたのではないかと、鼓動が早鳴りしていくのを感じた。「いいえ、そうではありません...逆転四章

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