※お食事中の方はご遠慮ください。また周囲に気を付けてご覧ください。猛暑日のある日、、、つくしはキョロキョロと周囲を見渡した後、目の前のビルを見上げた。その姿はサングラスをかけ口元はマスクで隠し、つばの大きい帽子を被っている。日除け対策ともとれるが、明らかに挙動不審だ。何故なら炎天下の中、周辺をずっとウロウロと歩き回っている。当然、汗が滴り落ちている。(つ:どうしよう。 やっぱり止めようかな? でも...
クリスマス当日。類と麗は9時に葉山に着いた。「それにしても類君が自分で起きる日が来るなんてね。何時も昼まで寝ていたのにねぇ。」「俺自身ビックリ。 でも寝るより楽しい物を見つけたから。」「ふふっ。 つくしちゃんに感謝ね。」「ん。」家に入るとつくしも既に準備を終えたいた。いつもと違いおめかしし、髪もピンで止めている。もちろん首元には初江に貰ったマフラーを巻いている。「まあ、つくしちゃん。凄く可愛いわぁ...
今年のクリスマスイブは金曜日。大学の講義も4限が休講になり、3限が終わると同時に教室を飛び出した。というのも休講を知った類からメールが入っていたからだ。<母さんが帰国した。 一緒にクリスマスを祝いたいし、お婆さんにも会いたいからって事で一緒に葉山へ行く。14時30分に門を出たところの花屋の前付近で待ってるから一緒に行こう。車のナンバーは330>つくしはダッシュで門を出ると、確かに花屋の前に黒い車が...
司がNYへ旅立った翌日、久しぶりに麗が帰国した。「母さん。」類はびっくりだ。帰国するとは一言も聞いていない。もちろん今まで事前連絡があったことはないのだが。「類君。 久しぶり。 元気にしてた?」「まあ。 それより今回は何の帰国? いつまで?」麗は類の問いに今までとの違いを感じる。邪魔者扱いでさっさと帰って欲しいようだ。もちろんその理由も判る。「正月までの予定よ。 聡さんも数日後に帰国するわ。」「父さ...
つくしは急ぎ足でB棟裏へ向かう。するとそこに類が居た。「牧野。 こっち。」「うん。」つくしは類の後ろを追う形で細い道を歩く。そして高いフェンスに突き当たったが、類は慣れた手つきでフェンス横のボックスに学生証をかざすとカシャンとロックが外れた。そして取っ手を手前に引くとドアが開いた。「すごい!というかこんな場所、初めて知ったんだけど?」類は肩をすぼめる。「普通、高等部へ行くときは警備員のいる通路を使...
ラウンジでは司が三人を前に、昨夜からの事を話していた。その表情は諦めといった感じだ。「昨夜、突然ババァが帰ってきてよぉ。明日の夜にはNYへ行くから準備しろ!と突然言うんだぜ。」「という事は今夜か?」「あぁ。 まあ来年から少しずつ仕事を始めるとは聞いていたが、少し早まった感じだ。」「という事は大学は留学か?」「いや、NYの大学に編入するらしい。」「という事は英徳大卒という肩書じゃなくなるんだな。 なんか...
もうすぐクリスマスという昼休み。つくしはアナウンスで事務室に呼び出された。何だろう?と思いつつ向かうと、事務室の奥に通され更にドアを抜けた先のドアの前で立ち止まる。プレートには<来客室>と書かれている。「少々お待ちください。」とつくしに断りを入れ、事務員がドアをノックした。「牧野つくしさんをお連れしました。」『入ってもらいなさい。』その声に事務員がつくしを促す。何事?と思いつつも、事務員が明けたド...
買い物を終え自宅に戻った類とつくし。早速買ってきた毛糸を祖母に渡したのだが、その時机の上のパンフレットに気が付いた。「これ何?」「あぁ。 二人が買い物へ行った後、信夫が来たのよ。 悪いけど捨てておいて?」「うん。」つくしは信夫に対し腹が立つ。自分に勧めるだけではなく、こうして祖母にも勧めた事実に。「おばあちゃん! ここはおばあちゃんの家なんだから、施設に入る必要なんてないんだからね!」「あぁ、分か...
大型スーパーに着いた類とつくしは、車から降りると再び手を繋ぐ。「なんか恥ずかしいね。」「ん。 でも嬉しいし見せびらかしたい。」「ふふっ。 見せびらかしたいって///。 大丈夫。 類が目立ってるから皆が見てる///。それより早く買い物しよう? おばあちゃんが待ってるから。」「ん。 じゃまず毛糸を買おうか。」二人は手芸屋へ向かうと毛糸を探す。カシミヤの極太といっても数種類ある。その中から二人で相談し、肌触り...
「牧野の気持ちが整うまで待っていようと思ったけど止めた!だってさ、こんなに嫉妬するとは思わなかったから。昨日、牧野に電話しようかメールしようかずっと悩んでたんだけど、それって大人な俺を見せたいというか動じない俺を見せたいというか、とにかくカッコつけたかった。けど本当は全く逆で、何をプレゼントしたのか、なんで家まで行ったのか、何より俺に一言の連絡もないのか?と思っててさ。連絡がない=友達以下なんじゃ...
9時前に葉山へ着いた類はインターホンを押す。『は~い。 開けるね。』カチャンと鍵が開き、類はサッと中に入った。そして駆け足で家へ向かった。「おはようございます!」「早っ! さっき鍵を開けたところだよ? あっ分かった。 寒いから走って来たんでしょ?ほらっ、早くコタツに入って?」「あい。 あっ、これ佳代から持たされた。 うちに来たお歳暮のお裾分け。」類は紙袋をつくしに渡す。「ありがとう。」「薄切り肉ら...
花を生け終えたつくしは、弟子たちの「お茶でも」という申し出を丁重に断る。明日の準備で忙しい中、長いは無用と思ったからだ。だが当初の約束通り、葉山の自宅まで送るという申し出はありがたく受け取った。もちろん総二郎は準備の為家から離れることは出来ず、玄関先でつくしを見送る。「すげぇ助かった。 毎回でもお前に頼みてぇぐれぇだ。」「あははっ、大袈裟だよ。 でも家元夫人が帰宅したら替えてもらってね。茶花は全く...
大学の昼休み。つくしは大島と昼食を食べていた。その時、つくしのスマホがSNSの着信を告げた。表示を見ると総二郎からだ。「ちょっとごめんね。」つくしは大島に断りSNSを開く。「急で悪いんだが、今日時間とれねぇか?」こういうSNSは初めてだ。学園祭以降もたまにSNSが入ったが、どれも茶会で行った先の風景だったリ、お菓子の写真ばかりだった。「ちょっとごめん。 電話してくるね。」「おばあちゃんに何かあった?」「ううん...
12月に入った。大学の講義中に突然スマホが振動を始め、つくしはチラッと画面を見る。すると<門のロックが開錠されました>という表示が目に飛び込む。確かに今日はデイサービスの日だが帰宅はいつも16時頃。だが今は13時。祖母に何かあったのだろうか?と思うが、デイから連絡は来ていない。おかしいと思いながら監視カメラのアプリを起動させる。すると伯父の姿が映った。何で伯父が?おばあちゃんはデイサービスに行ってい...
翌日曜日。昼前に伯父の信夫が葉山の家を訪れた。「お母さん。 英徳の学園祭へ行かれたそうですね。」「幸子から聞いたの? つくしが生け花を披露するという事で行ったのよ。学園祭期間中は、その生け花が見られるそうだから、お前も行くのならぜひ見てきたら?どの作品もかなりの腕前でそれは素晴らしくてね。」「生け花なんてどうでも良いんです。幸子が言うには、お母さんの隣にF4という方達が居たそうですね。」つくしは二人...
葉山に戻った3人。「先に雨戸を開けてくるね。 花沢さん、おばあちゃんを頼んでも良い?」「ん。 良いよ。」つくしはサッと門を潜ると走って家へ向かった。その後ろを類が初江の車いすを押しながらゆっくり門を潜る。「すみません、類さん。 つくしったら良いように類さんを扱って。」「いえ。 これぐらいなんでもないです。 というより嬉しいです。俺に気を遣っていない証拠ですから。」「それに学園祭では特等席を用意して...
ダイニングへ行くと、タマがメイド姿で迎えた。「おはようございます!」「あぁ、おはよう。 早いねぇ。 庭はどうだった?」「もの凄く綺麗でした。 温室も色とりどりで沢山の種類があって感動でした!ねっ、おばあちゃん!」「えぇ。 凄く良かったです。 冥途の土産になりました。 ありがとうタマさん。」「何言ってんだい! 10年は若返ったというもんだろ?」「確かに、、。」初江とタマは笑いあう。そこにF4が眠そうな...
夕食は会席料理を思わせるような和食だった。「ホントにホテルみたい。 毎日こんな料理を食べてるんだ。」「曜日によって和洋中に分かれてんだ。好き嫌いを無くすためと、ある程度の料理名を覚える為にな。仕事を始めるとどうしても食事をとりながら交渉する機会があるんだ。その時、料理の感想などを話すことで場が和むし、交渉もスムーズに運ぶだろ?」「へぇ。 すごいね。」つくしはそういう意味がある事を知らず、単にお金持...
つくしが初江とタマの元へ向かった後、あきらが揶揄うように類に告げる。「それにしても類! お前変わったな。静の時は俺たちの誰かと二人っきりで出かける話をしても何も言わなかっただろ?でも牧野の時はすぐ反論してさ。まあ就職先は一生の物だからかもしれないけどさ。」あきらに続き総二郎も本音を告げる。「揶揄っている事にも気づかなかっただろ?まあ俺としては牧野なら大歓迎。 本当に来てもらいてぇ。」「ん。 変わっ...
タマと初江は昔話から自然に主人との馴れ初めに話は移り、そこからタマは司の幼少期から現在に至るまで、そして初江はつくしの両親の話から今に至るまでを話していた。「坊ちゃんも根は優しい子なんだがねぇ。道明寺という大きな重圧を幼い頃から背負わされ、少しずつ性格が歪んでいったんだろうね。まあ最近は落ち着いているんだが言葉遣いと態度だけは直らないねぇ。」「でもタマさんには優しいし労わってますよね?初めお二人を...
類はここでつくしに確認する。「それで生け花に対しては自信が付いた?」「う~~ん。 微妙? ただ理解してくれる人がいる事が分かったし、その点では嬉しかった。」「そっか。」類は先ほどの説明と今の微妙という答えから、つくしがまだ『好き』の分類を決めかねていると分かる。「まあ今回は選んだ花がそれぞれ違うし、審査する方も難しかったんだろうなぁ。最後に審査員が要望していただろ?」「でも俺はかなりの腕前があった...
つくしの返事は想定内の物。ただ母親が息子の幸せを考えているとは思えない。だが両親を亡くしているつくしなら、そうであって欲しいという願望が込められていても不思議ではない。現に類の許嫁としてつくしを選んだのは類の母親。バックグラウンドも何もないつくしを選んだという前例がある。「分かった。 とりあえず今は振られてやる!」「仕方ねぇ。 とりあえず友人という事にしとくわ! バロメーターが必要だろ?」バロメー...
シーンと張り詰めた空気が漂い、つくしは緊張のあまり喉がカラカラだ。だがきちんと伝えようと口を開く。「えっと、、。今回生け花部門に出ることを決めたのは、従妹が推薦したから。詳しい説明もなく、祖母に生け花を習っているならそれなりの腕前でしょ?と言われて。」「お前の従妹つったら、篠田幸子か!」「そうだけど、、よく知ってるね。」つくしは、司が幸子を知っていた事に驚く。「そりゃあ、類の許嫁は誰だ?となって調...
司の部屋は、大きなソファーセットが設置され、壁には大型テレビがかけられている。それだけで20畳はあるかという広さ。そのソファーセットの下は毛足の長いフカフカのラグが敷かれている。その上を土底のままズカズカと歩き腰を下ろす四人。「えっ、、ちょっと待って! この上を靴で歩くの?」「あぁ。 気にすんなよ。 牧野も好きな所に座れよ。」躊躇うつくしに、あきらが告げる。「昔は無かったんだけど、ちょっと喧嘩した...
道明寺邸を見たつくしは、アングリと口を開ける。「ここが家?」「さようでございます。」花沢邸や美作邸もかなり大きい家だったが、その比ではない。その上、門の先には彫像が見える。それも一体や二体ではない。どこかの美術館のような感じだ。すると門が開きゆっくり車が入っていく。車窓から見る広大な庭は、バラが垣根のように整えられ圧巻だ。その先にホテルのような建物が見える。「もしかして、あれが家ですか?」「さよう...
「牧野? まだどこか他を回る?」「ううん。 あたしはもう良いかな? おばあちゃん、どこか他に見たいところある?」「いや。 特にないわよ?」初江の確認が取れた事で類に向き合う。「もう帰るね。 おばあちゃんも疲れているだろうし。」「良かったら俺ん家に来ない? お婆さんも一緒にさ。明日朝に葉山に帰れば、宅配弁当も受け取れるだろ?」類の申し出に司がすぐ異論を唱える。「だったら俺ん家にしようぜ! タマもいる...
類は隣の佳代に小声で告げる。「先に出る。 牧野が来たらA棟の101へ。」「かしこまりました。」類と総二郎は立ち上がる。それと同時に司とあきらも立ち上がり、四人そろって講堂を後にした。つくしは袖へ下がった後、近くの参加者に頭を下げすぐに裏口から出るとぐるりと周り、入り口から観客席へ向かう。そしてまっすぐ祖母の元へ向かった。「おばあちゃん!」「つくし! よく頑張ったね。」「つくしさん、おめでとう。 凄...
「感謝か。」「あれ俺たちの事じゃね?」司とあきらは、つくしの生け花を見てポツリと呟く。その隣で絵夢と芽夢も興奮気味で夢子に訴えている。「つくしお姉さまのお花凄い!」「クルンとなってる! クルン!」「そうね。 面白い生け花ね。」その夢子にあきらが話しかける。「牧野の作品、どう思う?」「そうねぇ。 あの花の中からこれだけの作品を作るんだから凄いわ!でもルールを無視してるのよ。 その点をどう評価するかよ...
大雨の所為で大規模な災害が起こっています。皆様のお住まいは大丈夫でしょうか?暑い毎日ですし片付けもままらないと思います。私はテレビでその惨状を見る事しかできず申し訳ありません。こうしてお話をアップするのも悩むほどですが、明日は我が身。いつどこで同じような災害が起こるか分かりませんし、アップできるときにしておこうと思っております。暑い日々が続きます。皆様も熱中症には気をつけてください。8月は毎日更新...
机の上に花器を置いた後、つくしは花瓶を見る。沢山花の中から、一番目の師範は主材となる葉のついた枝を数本と、メインの花を二本、そしてあしらいとしてメインとは違う色の花を数本抜き取った。それを持ち、自分のテーブルへ戻るとその花を横に置いた。生けるのは皆が揃ってからという事らしい。次の人も同じように花を抜いていく。参加者は皆、どういう色の花を抜いているのかチェックしているのが分かる。同じ色合い、同じ種類...
司はイライラしていた。「なあ。 これって完全に牧野が不利だよな。入れ物も選ばせてもらえねぇし、花もかよ!」「毎年こういうスタイルらしいな。卒業する四年に花を持たせる趣向なんだろうよ。」あきらは冷静に答える。その冷静さに司は更に苛つく。「お前、知っていたんなら早く言えよ! 俺が何とかしてやったのによぉ!」「だから言わなかったんだよ! お前が介入すれば牧野との関係が疑われるかもしれねぇだろ?それに審査...
暑い毎日ですね。そんな時、一瞬で部屋の気温を下げる方法が、、、、そうおやじギャグです。以前【僕の姉ちゃん by牧野進】の中の14話クックックッでお届けしたことがあるのですが、その第二段です。皆様は笑えますか? それとも室内の気温が一気に下がりますか?ではどうぞ。「こんにちは。」「あっ、類さん。 待ってました。 今日こそは勝ちますから。」「類さん。 こんにちは。 あのさ、数学で分からない問題があって、後...
生け花部門のアナウンスがあり、順にステージに登場する中、つくしは早くも緊張していた。こういう発表会は初めてだし、舞台に上がるのは小学校の卒業式時に卒業証書を貰った時以来だ。だが気持ちは前向きだ。一番は祖母に見てもらう事。二番は実力を認めてもらう事だ。決して優勝を望んでいるのではなく、最下位だとしても上手に生けていると褒めて欲しい一心だ。そうすることで自信に繋がり少しだけ並んで歩いても良いのかな?と...
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※お食事中の方はご遠慮ください。また周囲に気を付けてご覧ください。猛暑日のある日、、、つくしはキョロキョロと周囲を見渡した後、目の前のビルを見上げた。その姿はサングラスをかけ口元はマスクで隠し、つばの大きい帽子を被っている。日除け対策ともとれるが、明らかに挙動不審だ。何故なら炎天下の中、周辺をずっとウロウロと歩き回っている。当然、汗が滴り落ちている。(つ:どうしよう。 やっぱり止めようかな? でも...
※こちらの作品はおちゃめママ様へ献上した作品となります。つくしは苺を洗うとヘタを取り一口大に切る。そして数個の苺は更に小さく切りお子様スプーンも添え皆の待つリビングへ向かった。そこには今か今かと苺の到着を待っている娘の愛がいる。愛は類とつくしの長女で3歳になる。「お待たせ。」「ママ!あたちが恭にあげる。」「分かった。」「ちょっと待って。恭を座らせるから。」恭とは類とつくしの長男で1歳だ。最近すっかり...
我が家のブログにお越しいただきありがとうございました。類君とつくしちゃんを幸せにするお話を、、、と思い、書き始めて約12年になります。まさかこれほど続くとは思いませんでした。皆様の温かなコメントに支えながら何とかやってきたのですが、今は全く妄想が浮かびません。沢山の作品が生まれネタが尽きました。もちろん12年という月日は老いていく事にも繋がり、ここ数年は浮かんだ妄想がなかなか文字として書けなくて(...
一年後の夏。陽向も心陽も、しっかりと歩くようになっていた。最近は10か月ごろから歩く子供もいるというが、未熟児で生まれ3か月も保育器に入っていた為、そこを0か月として発育状況を見るらしく成長に問題はなさそうだ。「順調だね。」「ん。 首も秋ごろには座ったし、そこからすぐに寝がえりを始め、気づいたらズリズリと動き出し、ハイハイを初めてつかまり立ち?」「誕生日を迎えた頃にはしっかりつかまり立ちが出来てた...
4月になり、つくしは入院することにした。というのもこれから何があるか分からないため、万が一の時はすぐ対応できるようにだ。それに28週を過ぎた為、運動は極力避けた方が良いと言われた事も有り、家でジッとしているなら入院した方が安心という事になった。もちろん日中は麗が、仕事終わりに類が毎日来る。「どう? 変わりはない?」「うん。 元気すぎてお腹の中で暴れ回ってる。 二人がそれぞれ動くからお腹が張り裂けそ...
シリウスの元にデイジー村のギルド長から手紙が届いた。 定期的にリチャードに関する報告を貰っている。再びリチャードを王位に据えようとする貴族が接触していないか、本人にその意志がみられないか、リチャードが困っていることは無いかといった物だ。だがシリウスの思惑に反し兄はリカルドとして不便な生活を受け入れ、平民として働いている。せめて少しでも生活がしやすいようにと、魔道具の普及も急いだ。半年ほど前には村娘...
三日後、メアリーから電話があった。予想通り、あの世界へ戻るという返事だった。その為、週末に類と共にアレッタの店へ向かった。「お忙しい中、すみません。」「いいえ。」「いろいろ考えたのですが、アレッタさんにメアリーの姿を見せたくて戻る事を決断しました。」「ご主人はもうこの世界に戻れなくなりますが、それで良いんですね?」「はい。 私はメアリーと共にあの世界に骨を埋めます。 それとお言葉に甘えてこの店と自...
週末、類とつくしは子供服売り場へ向かった。小さな服はとても可愛いが、今はまだどちらが生まれるか分からない。その為、産着のみを数着買った。「男の子二人とか女の子二人なら、お揃いの服も良いな。」「形は同じで色違いとかも良いね。」「男女の双子でも一歳ぐらいまではそれで良いんじゃない?」「うん。 でも可愛いね。」「だな。」それから少し早いがアレッタの店へ向かった。小さな店で看板には漢字とカタカナで『異国料...
翌、月曜日。類の元にあきらがやってきた。「あのよぉ。 牧野さんなんだが美作が経営しているレストランのアルバイトに24歳の牧野さんがいるんだ。 だが髪の毛は茶髪なんだが、髪の色ぐらい変わる物だし会ってみるか?」あの後も裾野を広げて調べてくれていた親友に、嬉しさと申し訳なさが同時に込み上げてくる。そして再会後、バタバタしすぎて親友に報告していなかったことに気づいた。「ごめん。 見つかったんだ。」「えっ...
土曜日、類とつくしは長崎へ向かった。つくしは結婚したい相手を連れて行くと電話で連絡していた。「初めまして。 花沢類と申します。 つくしさんとの結婚をお許しください。」類はつくしの両親を前にすぐに頭を下げる。両親は俳優のような容姿の類に驚きつつも、娘のつくしに自然に目が向かう。どう見ても出産間近だ。「えっと。 つくし? あなた妊娠してるの?」「うん。 順番が逆でごめん。」結婚したい人がいるから会って...
二人っきりになり、類は改めてつくしに向き合うとポケットから小袋を取り出す。異世界で肌身離さず身に着けてた小袋だ。その中身を取り出しながら話す。「無事こうして戻ってきたんだけど、服装はあの時のままだった。 ただ傷は一切なかった。 もちろん服には大きな穴が開いていたし血も付着していた。 そして小袋には魔法陣の消えた紙切れとドラゴンの鱗、シリウスから貰った銀のプレートが入ってた。 枕の下に敷いていた紙も...
佳代は類の声に急いで玄関へ向かう。しかも珍しく「ただいま」という声まで聞こえた。どういう心境の変化だろうか?という気持ちが湧く。すると玄関に類が女性と手を繋いでいる姿が目に飛び込む。類がこうして女性と手を繋いでいる姿を見るのが初めてで動揺が走るが、努めて冷静を装い出迎えた。「お帰りなさいませ。」「佳代。 こちら俺の妻。」「妻!!?」動揺を隠していたが『妻』という言葉に、冷静さを失い驚きの声が出てい...
レストランを出ると類はすぐに花沢の車を呼んだ。「ちょっと待ってて。 20分程で車が来るから。」「うん。 あっ、だったら私の職場に来てくれない?」「あんたどこで働いていたの?」「フリーペーパーの編集部。 と言っても来月号で廃刊で会社は倒産。 あたしは今日付で倒産に伴う解雇になったんだけどね。」(類:フリーペーパー編集部? 確かに俺達のどこにも関連がない会社だよな。 だから見つからなかったんだ。)「社長...
つくしは駅に隣接しているショッピングモールに入った。バレンタインが近づいているという事で、店内は至る所にバレンタインを意識したものとなっており、一部コーナーはチョコ売り場となっている。(つ:社長に最後にチョコを渡せば良かったなぁ。 妊娠が分かってからの社長は物凄く優しくていろいろな物を差し入れしてくれたし。 まあ私が辞めたら社長一人で紙面づくりをしないといけないからってところもあったんだろうけど、...
クリスマス。この日もつくしは仕事をしていた。社内には社長もいる。身重でありながらこのような日にも仕事をしているし、土曜日も出勤しているのを見て察しているがなかなか事情を聞けないでいる。「牧野。 そろそろ帰ったらどうだ?」「はい。 これが終われば帰ります。」「年末年始はどうするんだ?」「家に居ますよ。 実家は九州なので混み合う時期に移動は避けたいので。」「まあそうだよなぁ。 きちんと親には話している...
12月つくしは土曜日も出勤し紙面づくりを行っている。その代わり平日は18時ごろには帰るようにした。そして社長が何かと気を遣ってくれるようになった。取材帰りに果物やジュースなどを買って帰ってくる。「あまり食欲がないだろ? でも何か口に入れろよ。」「ありがとうございます。」街はいつの間にかクリスマス仕様になっている。(つ:類もどこかでこの雰囲気を味わっていると良いなぁ。)そう思いながら自宅へと急いだ。...
つくしは忙しい仕事の合間にコッソリ産婦人科へ行った。休日は無いし、サービス残業の日々なのだからこれぐらい許されるだろうという気持ちだ。検査薬で陽性反応が出ているため間違いは無いだろうが、出産予定日など今後の事を決めたかった。「おめでとうございます。 双子ですね。 8週目で三か月に入ったところです。 予定日は5月25日ごろですね。」「双子?」まさか双子とは思わなかったつくしは、呆けた顔で確認した。その...
類は、ハッと目を開け飛び起きると腹を押さえる。だが、、、血は出ていない。痛みもない。どういう事?そう思いながら周囲を見渡す。「俺の部屋?」自分のベッドの上だ。しかも一人だ。「牧野? 牧野は?」周囲を見るがつくしの姿はない。「夢?」そう思いながらベッドから起き上がり自分の服を見る。それは乗合馬車に乗った時の服で、切られた箇所には穴が開き血が付着している。靴も履いている。だが、、腹に傷はない。もちろん...
それは一瞬の出来事だった。馬上の騎士達、そして乗合馬車から降りた男も崖を覗き込む。確かに二人が落ちていく姿が確認できたが、突然まばゆい光が現れ目を閉じた為、二人の行方が分からなくなった。「まさか、飛び降りるとは。」「聖女様はどうします? 森へ入りますか?」「いや。 この高さから落ちたら生きてはいないだろう。 万が一、生きていたとしても魔物が住む森ではさすがの聖女様でもどうすることも出来ない。」「あ...
翌朝、宿の人にクルクマへ行く乗合馬車を確認しチェックアウトした。時間まで村を散策する。昨日の商人の店の前に来た時に、たまたま店内に居た商人が二人を見て店から出てきた。「今から行かれるんですか?」「はい。」「この先の山を越えるんですけど、片側は断崖絶壁なんですが景色は凄く良いですよ。 半日はかかりますが、途中トイレ休憩しかないので何か食べる物を持っていかれた方が、、、あっ、是非このピーアを持って行っ...
翌日、類は出張から帰ってきた。前回と同じように夕食を持っている。それをダイニングテーブルの上に置き、つくしがお茶を持ってきて食べ始めたところで麗の訪問を告げた。すると類はあからさまに驚いた表情を見せた。「えっ!母親が?」「はい。フランスへ行く前に一度会ってみたかったと言っていました。」類は何も聞いていなかった。「それで他には?気に障る言葉を言われたりしなかった?」「そのような事は何も。庭の野菜を見...
「大胆ですよね。見合いを断るつもりだったのに、自分の方から同棲を申し込んだんですから。」「えぇ。確かに大胆だわ。普通はお付き合いをして欲しいと頼むわよね?」「はい。でも類さんがこの家で一人暮らしをしていると聞いた時、家事をするストレスも感じているのでは?と思ったんです。」「家事をするストレス、、、」麗はハッとする。類は、この家に佳代が通っていた事を敢えて話さなかったのでは?そこには自分はストレスを...
「行ってきます。今夜は早めに戸締りをして早く寝る事。」「分かってます。」「あっ、でも夜に電話するからそれまでは起きてて。」「分かってます。気をつけて行ってらっしゃいませ。」「ん。行ってきます。」類は軽く手を振り、待たせていた花沢の車に乗って出張へ出かけた。今回は北海道。一泊二日の予定だ。つくしは類が出かけた後もいつも通り家事を熟す。掃除、洗濯の後、庭の野菜に水をやり今日は肥料もパラパラと撒いた。そ...
類は23時ごろに自宅に戻ってきた。つくしはすぐに出迎える。「ただいま。」「お帰りなさい。どうでした?」つくしの表情は心配気だ。そんなつくしににっこりと笑いかける。「息子さんの悩みも無事解決した。」それを聞き、つくしはホッとする。「良かった。やっぱり類さんにお任せして良かった。」「ん。これからもどんどん頼ってよ。」「はい。それで、、少し悩みの内容を聞かせてくれても良いですか?」「ん。」「その前にこれ...
衝撃な言葉にあきらと総二郎は固まる。そして頭の中には『同棲中』という言葉と共にアレコレが浮かんでしまう。どう考えても若い男女が一つ屋根の下で何もないとは思えないからだ。その為、二人は意気消沈した。それを見て類は誤解していると分かる。「仕事は家事全般。つまり俺の身の回りの世話をしてもらい対価を払っている。」二人はその言葉に再び固まる。身の回りの世話という部分がどこまでの世話か模索しているようだ。類は...
「俺の場合は、母親のマナースクールに本村さんが通っていた事がきっかけだ。」ここで類はつくしとあきらの接点を知った。お稽古の一つにマナー教室をあげていたが、それはあきらの母親の教室で、母親と妹達と仲良くしていた訳か。もちろん三人も牧野を気に入って家族総出で牧野を落としにかかっている。「あそこには数人の講師がいるんだが母親は月に一度講師をしている。その時は妹達も連れて行き学ばせているんだ。そこで妹達と...
なんとか二人は落ち着いてきた。「ちなみに今日は本村さんは来ねぇぞ。」「えっ?どういう事だ?」総二郎の言葉にあきらは驚く。今日という日を楽しみにしていたし、これに賭けていた。あきらの表情に総二郎は危ない所だったと安堵する。と同時に『息子さん』というのがあきらだと分かった。それに本村さんがこの場に来たならば、あきらの怒涛の攻撃にいつの間にか連絡先交換&お付き合いという関係になった可能性がある。それだけ...
そうしてあっという間に5月17日になった。「じゃあ行ってくる。」「よろしくお願いします。」「ん。とりあえずきちんとアドバイスしてくるから安心してて。」「はい。」こうしてつくしは類を見送った。後は類さんに一任するしかないが特段心配はしていない。いろいろな知識があるし、丁寧にアドバイスをしてくれる。それに前向きな言葉を投げかけてくれ一切嫌な気持ちにならない。だからきっとあきらさんの悩みもすぐ解決するは...
類は社長室を訪れた。「社長。フランスへの異動の件ですが、私はもうしばらく日本で過ごすことにします。」「という事は、ライバルを蹴散らすという事か?」「そのつもりですがまだ他にもライバルがいるみたいです。それに牧野にとってフランスへ行くことが最善な方法なのか分かりません。言葉も通じないだろうし環境も変わります。私も仕事へ行くのでずっとついていられません。それを考えると負担が大きいような気がします。」類...
GWも開け、類は仕事へと向かった。それを見送った後、掃除洗濯を終わらせ花壇の野菜の手入れをする。きゅうりも順調に上へと伸びてきている。ただ重さがありネットからずり落ちそうになっている為、固定するようネットと茎部分をひもで結ぶ。トマトも大きく育ってきており支柱に紐で括り、脇芽を摘み取る。ピーマンとなすびも枝が伸びそこにも支柱を立てる。それぞれ順調に花が咲き、キュウリは一本食べごろに実った。それを収穫す...
残りのGWは自宅で過ごす。庭の野菜の成長を見ては笑い、一緒に買い物へでかけて献立を考えて類も手伝ったり。そんなのんびりとした時間が二人にとっては心地良い。そんな中、つくしはあきらの件をそろそろどうにかしようと考えていた。一度食事をしながら悩み事を聞いて欲しいと言われているが、どういう話かも分からないし深刻な悩みの場合良いアドバイスも思い浮かばない。その点、類さんならば良いアドバイスが出来るのではない...
5月2日類とつくしは予定通り埼玉県秩父の羊山公園へ向かった。GW期間中で多少混んでいるが、それでもまだマシなようでスイスイと進むことが出来た。そして目的地に到着した二人は唖然とした。「芝桜が、、、ほとんど散ってる?」「みたいだな。でも少しは残っているんじゃない?」昨日の大雨により花が散ったようだ。「すみません。まさかこんな事になっているとは、、、」「自然が相手だから仕方ないと思う。でもほらっ、入園料...
「牧野は愛されて生まれて来たと俺は思う。少なくとも牧野を生んだ母親は父親の事を愛していた。でなければ母親が牧野を生むはずがないだろ?好きな人の子供だから生みたかったんだよ。片親になろうとも生まれてくる子供に苦労を掛けるけど、それでも愛する人との子供だから生みたかったんだと思う。だから生まれてこなければ良かったと考えるのは止めたほうが良い。」「ありがとうございます。」「もちろん本妻からすれば疎ましい...
食事をとりながら、つくしはキッチンの上に置いていた物をテーブルに持ってくる。「これ、、類さんへお土産です。」「お土産?どこに行ったの?」類は紙袋を覗くと、日本酒の箱が見える。「茶会です。」「茶会に行ってお土産、、、」類はプッと吹き出すがすぐに「ありがと。」とお礼を述べる。「茶会が開催されたホテルの売店で買いました。本当はデパートで何か買おうと思ったんですけど偶然マナー教室の先生に出会って、GWの特別...
翌日、つくしは午前中に祖母の施設へ向かった。するとそこに義母と誠とその婚約者の緒方真理子がいた。「つくし!元気だったか?」「うん。」つくしは入り口で立ち止まり頭を下げる。誠はすぐに婚約者を伴いつくしの元へ向かう。「つくしさん。突然引っ越しさせてごめんなさいね。」「とんでもないです。リフォームはどうなりましたか?」「順調よ。後一か月程で終わると思うわ。それも含めておばあさまに報告しに来たの。」真理子...
20時を少し回ったころ、つくしは帰宅した。駅から自転車を押して自宅まで帰ったのだが、確かに人通りは少なく外灯も少なく暗い。しかもこんなに遅くなるとは思っておらず、自宅の外灯もつけておらず真っ暗だ。その為、スマホの明かりを頼りに自宅の鍵を開けた。自宅に荷物を置くと直ぐに外に出て洗濯物を取り込む。そして急いで雨戸を閉めた。ここに来てこうして夜中に外に出るのは初めてだ。周囲が山に囲まれのどかな場所だが、...
総二郎は上手い言葉が見つからず、とりあえず料理を食べ終えた事から茶を点てる事にする。「じゃあお茶を点てようか。」「はい。ありがとうございます。」総二郎はスタッフに声をかけると、すぐに弟子が茶道具を持ってきた。お湯は電気ポットの物を持ってきている。「流石にお湯は電気ポットの物だけど、是非飲んでほしい。」「ありがとうございます。」総二郎は畳に座ると茶道具を開き準備をする。つくしもその前に正座するとじっ...
ホテル内の和食レストランの前で待っていると、総二郎が弟子を連れてやってきた。その格好は和装だ。時間はまだ16時30分にも満たない。「ごめん。待たせたか?」「いいえ。私もさっき来たところです。」「じゃあ入ろうか?」「はい。」弟子とは入り口で別れ、総二郎がつくしを伴い中に入った。総二郎の姿に店員がすぐに個室へと案内する。広々とした畳の個室で、テーブルの下は掘り炬燵になっている。「本村さん。ちょっと時間...
先ほどまで総二郎が座っていた席に家元夫人が座り、つくしは背筋を伸ばす。「本村さん。お久しぶりです。おばあさまはお元気?」「はい。今日はお招きいただきありがとうございます。祖母は元気です。」「そう。突然辞められたから驚いたのよ?」「申し訳ありません。引っ越すことになり教室に通えないので辞めさせていただきました。」「そうなんですってね。この後、総二郎と話をされるんですよね?」「はい。何か壁にぶち当たっ...
つくしが茶会の開かれるホテルに到着するとかなりの人がロビーにいた。そのほとんどが着物姿だ。既に13時を回っており受付は長者の列だ。つくしは少し時間を潰すためにトイレへ向かった。そこで身だしなみをチェックしていると茶会に招待されていると思われる女性が入ってきた。つくしはワンピースの為、茶会に出席すると思われていないのか会話は続けられている。「流石西門流のお茶会だけあって凄い人ですね。14時からの部の受...