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  • 今村夏子「七月三十一日晴れ」

    ★異常な猛暑も一段落。今日は近隣の小学校の運動会だった。ただ「今」に生きている子どもたちのパワーに圧倒される。頼もしい。★さて今日は、今村夏子さんの「七月三十一日晴れ」(「新潮」2024年10月号所収)を読んだ。★先日、京都新聞文化欄、渡邊英理さんの「いま、文学の場所へ」で紹介されていたので読んでみたくなった。★紀伊水道に面する人口四千人ほどの小さな漁村町。そこにある旅館に住み込みで勤める女性が主人公。彼女はこの町を訪れ、住み込みで働き始めてからすでに30年。かつての新米スタッフも今ではベテラン従業員だ。★この30年。町は大きく変わった。アニメの聖地ということで来訪者も増えた。旅館の名前も随分とハイカラになった。新米スタッフを優しく支えたかつての先輩スタッフは旅館を離れ、今では彼女が新人の面倒を見ている。...今村夏子「七月三十一日晴れ」

  • 映画「シュリ」

    ★アマゾンプライムで韓国映画「シュリ」が配信されていたので、観た。1999年の作品で、ずっと以前に観た覚えがある。★当時観て、初めて韓国映画は面白いなあと思った。それから「JSA」や「猟奇的な彼女」と観るようになった。「シュリ」が公開されて25年。ずっと動画配信されなかったので、どうしたのかと思っていたが、権利関係がややこしかったらしい。★やっとこの度、再上映、配信できるようになったそうだ。それもデジタルリマスターで、画像が美しい。★「北」の工作員が「南」に潜入し、テロ活動を行っている。中でもある女性工作員は数々の暗殺を実行し、「南」の情報機関からマークされていた。★南北は対立を続けながらも、一方で両政府高官による和平・統一の動きも見られた。そんな折、「北」の反政権部隊が「南」での大規模テロを計画する。「...映画「シュリ」

  • 福田和也「甘美な人生」

    ★入試問題に評論文がよく出題されるので、仕方なく読んでいる。★私が大学を受験する際は、川副国基著「現代評論」(学燈文庫)を読んだ。そこには、阿部次郎、安倍能成、、土居光知、小泉信三、和辻哲郎、岡崎義恵、三木清、小林秀雄、唐木順三、桑原武夫、伊藤整、亀井勝一郎、中村光夫、丸山真男、加藤周一といった人の作品が抜粋されている。なかなかの顔ぶれだ。★時代は変わって、最近では、鷲田清一、内田樹、河合隼雄、村上陽一郎、山崎正和、池上哲司、河野哲也、池内了といった人の作品がよく取り上げられているようだ。顔ぶれを見ると、高校の国語教科書の影響がありそうだ。★柄谷行人や吉本隆明、江藤淳や福田和也といった人々の作品も出題されるが、ちょっと癖が強いかな。★今日は、福田和也さんの「甘美な人生」(ちくま学芸文庫)から、巻末の表題作...福田和也「甘美な人生」

  • 村上春樹「かえるくん、東京を救う」

    ★残暑にも程がある。外に出て人に会うたびに「暑いですね」があいさつ言葉になってしまった。★この暑さ、どうやら今週までのようだが、地球がおかしくなってきているのかも知れない。(温暖化のあとに急激な寒冷期、いわゆる氷期が来るなんて説もある。)★不条理ということで、今日は村上春樹さんの「神の子どもたちはみな踊る」(新潮文庫)から「かえるくん、東京を救う」を読んだ。★信用金庫融資管理課に勤める片桐がアパートに帰ると、そこに巨大な「かえる」がいた。状況が呑みこめず、呆然とする片桐。かえるは(「かえるくん」と片桐に呼ばせる)、近々東京直下で地震が起こるという。それは「みみずくん」の仕業で、東京を救うためにみみずくんと一緒に戦ってくれと片桐に依頼する。★腕っぷしが強いわけでもなく、むしろパッとしない片桐はなぜ自分に白羽...村上春樹「かえるくん、東京を救う」

  • 垣根涼介「信長の原理 上」

    ★垣根涼介さんの「信長の原理」上巻(角川文庫)を読み終えた。とても面白い作品だ。★信長の伝記でもなければ、従来からあるような歴史小説でもない。あえて言えば、「経営」の教科書だ。★信長が「パレートの法則」を学んだはずもない。しかし、彼は自然を観察し、合戦を経験する中で、その法則を知ったとしている。★前半、信長の幼少期については、山岡荘八作の「織田信長」(講談社文庫)と同じ道を辿るが、尾張を統一し、桶狭間で今川義元を討ってからは、彼の戦略眼が研ぎ澄まされる。★上杉や武田を観察し、そのカリスマ性や資源の豊かさを分析。自らの欠ける点を自覚し、彼は尾張に人を集める政策を実行する。人を集め、町を栄えさせ、物流を盛んにし、そこから富を得る。富は軍備増強に生かされる。★人物眼も秀でている。出自がどのようなものであれ、実力...垣根涼介「信長の原理上」

  • 坂東眞砂子「隠れ山」

    ★久しぶりに荒井由実(松任谷由実)さんの「雨の街を」を聴く。この曲を聴くと、みつはしちかこさんの「小さな恋のものがたり」が浮かんでくる。何巻だったか確かアジサイの描かれた表紙。★学生時代。今となっては戻ることもできないが、切なくそして良い時代だったと思う。★今日は坂東眞砂子さんの「神祭」(角川文庫)から「隠れ山」を読んだ。実直な公務員の男性がある日失踪した。村の消防団が必死に探したが遂に見つからなかった。★それから数年。村では数々の目撃談が広がる。山で失踪した男性と会ったという話。男性は数々の話をするがそれには実際にあった醜聞を誇張した話も。当事者にとっては叩けばホコリがたつある話だが、迷惑千万。★果たして男性はなぜ失踪したのか。★都市伝説や陰謀論もこのように広がるのかも知れないと思った。★2週連続の三連...坂東眞砂子「隠れ山」

  • 高橋弘希「指の骨」

    ★今年の残暑は酷過ぎる。★さて今日は、高橋弘希さんの「指の骨」(新潮社)を読み終わった。南方の島で負傷しながら戦う一人の兵士の目を通して、戦争を描いた作品。★兵士の視点で戦争を描いた作品としては、大岡昇平さんの「野火」を思い起こす。「指の骨」は戦後30年を経て生まれた作者が描いたところが特徴だ。★「指の骨」とは、戦死(病死も含めて)した兵士の遺骨代わり。★現代の日常にあっても苦しみは身近にある。先の戦争と限定せずとも、極限に生きる人間の有様と捉えれば親しみがわく。高橋弘希「指の骨」

  • 宇能鴻一郎「花魁小桜の足」

    ★宇能鴻一郎傑作短編集「姫君を喰う話」(新潮文庫)から「花魁小桜の足」を読んだ。★孤児として育った小桜は、花魁として長崎・出島で生きている。時代は幕末。小桜はオランダ船の老船長に気にいられ、娘のごとくかわいがられていた。そんな折、船長は国に帰ることに。★再び会えぬことを知り、彼女はある隠れキリシタンから、入信し殉教すれば天国で会えると諭される。★年末の絵踏。そこでキリシタンだと分かれば張り付けられ殉教者となる。彼女は次第に覚悟を決めていくのだが・・・。★最後にはどんでん返しが描かれている。★武家社会の虚構。主君に隷属する武士にとって武士道は都合の良い方便だ。切腹するにも、彼らは「自発的であることでかろうじて自尊心を保」っているという。卑猥な芸能で現世の苦しみからささやかな解放を得る庶民もまた然り。★この作...宇能鴻一郎「花魁小桜の足」

  • 池永陽「シャツのぬくもり」

    ★無性にコーヒーが飲みたくなった。行きつけの喫茶店が臨時休業だったので、仕方なくマクドナルドでアイスコーヒーのイートイン。専門店には及ばないが、ファーストフード店のコーヒーもなかなかうまくなった。★コーヒーを飲みながら本でも読もうとしたのだが、隣の席のご婦人お二人の会話が耳に入って集中できない。声が大きい上に、どうでもよい話を繰り返している、若い人たちが耳につけているワイヤレスイヤホンでも持ってくればよかった。★仕方なく、2ページも読み進めないうちに退散。★コーヒーに未練があったので、今日は池永陽さんの「珈琲屋の人々」(双葉文庫)から「シャツのぬくもり」を読んだ。★ちょっとわけありのマスターが親から引き継いで珈琲屋を営んでいる。そこに日々商店街の人々がやってくる。今回はクリーニング店を営んでいた夫婦が主人...池永陽「シャツのぬくもり」

  • 乃南アサ「福の神」

    ★残暑が厳しい。洗濯物が乾くのはありがたいが。★さて今日は、乃南アサさんの短篇集「不発弾」(講談社文庫)から、「福の神」を読んだ。★もはや還暦に近い女性が経営する小料理屋「茜」。今夜もなじみの客や新規の客でにぎわっている。★客商売をやっていると、好きな客も嫌な客もやってくる。好悪を顔に出さず笑顔で裁くのがプロの技。今、女将が嫌っているのは大手化粧品会社の次長という客。常連で通ってくれるのはありがたいが、酒の飲み方はきれいとはいいがたい。接待なのか、相手によって性格を変えるし、また酒が進むと絡みだす。★そんな嫌な客がいると思えば、最近もう一人、好感の持てるなじみの客が増えた。彼もまた化粧品会社に勤め、どうやら大手会社をスパイしている様子。★物語は小料理屋の風景を描きながら、女将の過去に迫っていく。エンディン...乃南アサ「福の神」

  • 篠田節子「夜のジンファンデル」

    ★朝方は少し涼しくなったが、昼間は相変わらず猛暑だ。そんな中、自宅から一山超えて、「フレンドマートG」市役所前店へと電動自転車を飛ばした。洋酒「アーリータイムズ」を買うために。★篠田節子さんの短篇集「コミュニティ」(集英社文庫)から「夜のジンファンデル」を読んだ。★学生時代から30年来の友人たち。絵美とその夫。百合子とその夫・隆は家族ぐるみの付き合いを続けている。もはや50代を目前に、隆が中東に赴任するというので、送別会を兼ねたホームパーティが隆の家で開かれている。★絵美の夫にねだられ百合子がピアノを弾き、その音色をBGMに絵美と隆は庭に植えられた葡萄を手に取っている。それは、かつて絵美がアメリカを旅していた時、赴任中の隆との間に起こった秘事の名残だ。★それぞれに家庭を持ち、夫婦それぞれに愛し合い、それに...篠田節子「夜のジンファンデル」

  • 東野圭吾「煎餅屋の娘」

    ★午前中に授業準備を済ませ、昼食は超レトロな「福栄食堂」でヒレカツ定食を食べた。この食堂、私が高校に通っていたころから営業されている。かれこれ50年か。今は先代が引退され、息子さんが継がれている様子。★大皿いっぱいのサラダに大きなヒレカツが4枚。それで780円とは、今どき考えられない。★食事のあとは近くの「山村珈琲工房」でおいしいコーヒーを飲む。最近やっとホッとする時間を過ごせるようになった。★コーヒーを飲みながら読み始めたのが、東野圭吾さんの「新参者」(講談社文庫)。今日は、第1章「煎餅屋の娘」を読んだ。★下町の煎餅屋を訪れた加賀刑事。今は日本橋署に籍を置いている。近隣で起きた事件の聞き込みで回っているようだ。とはいえ、本庁の刑事とは別行動で、持ち前の観察眼が冴えている。★テレビのドラマでは阿部寛さんが...東野圭吾「煎餅屋の娘」

  • 小池真理子「妖かし」

    ★昼間はまだ暑いが、朝方は涼しくなってきた。一気に夏バテが襲ってこないように気をつけねば。年を重ねるごとに1年がはやく過ぎ、年を重ねるごとに気候の変化が体にこたえるようになってきた。元気な子どもたちがうらやましい。★さて今日は、小池真理子さんの「玉虫と十一の掌編小説」(新潮文庫)から「妖かし」を読んだ。★主人公の女性は離婚歴のある30代。持ち前の人当たりの良さで、男女を問わずよくモテる。しかし、女性にはある能力があるようだ。彼女に何らかの不快な思いを抱かせたとき、本人の意思に関係なく、相手に不幸が起こるのだ。★女性は、同情にも似た悲しみを感じるのだが、自分の力ではどうにもならない。そして今日も、年末家族とハワイ旅行に行くという不倫相手のところに走っている。何事もなければよいと思いながら。☆コロナ禍で長期に...小池真理子「妖かし」

  • 森絵都「守護神」

    ★森絵都さんの「風に舞いあがるビニールシート」(文春文庫)から「守護神」を読んだ。短い作品だけれど、大いに励まされた。★主人公の男性は、もはや30代。幼いころから文学に魅かれていたが、いろいろあって大学には進学せず就職した。職を転々とし、バイトで入ったホテルの仕事が彼には合っていた。仕事が認められ正社員への道も開かれたが、その時、彼は文学への道をあきらめきれず、大学への進学を決意する。★職場の上司の理解もあり、ホテルでの激務をこなしながら、彼は今、大学の夜間部に通っている。★しかし、現実は厳しい。限られた自由時間に課題のレポートを仕上げるのは至難の業。そんな時、レポートを代筆してくれる「守護神」の噂を耳にする。★「時には弱音を吐ける友達を見つけなさい」「あなたみたいなタイプにはガス抜きが必要だわ」「弱さを...森絵都「守護神」

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