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  • 小池真理子「死に水」

    ★昔、南北戦争は英語で「CIVILWAR」だと習った。今、アメリカでは同名の映画が人気を得ているという。もしアメリカで内乱が起こったらという近未来作品だ。★近年の「分断されたアメリカ」、その空気を読んでの作品らしい。今年の大統領選、果たして結果はどうなるやら。事と次第によっては、ディストピアが現実になるかも。そして、超大国が崩壊し喜ぶのは、もう一方の超大国だ。★日本でも政局が近づいているようだ。岸田政権に展望が見えず。かといって政権交代できる政党もない。近未来のシナリオは、自民党が分裂し政界再編による政権交代か、あるいは自民党が初の女性首相を誕生させ、当面の延命を図るかだろう。★そんな近未来のために映画「総理の夫」を観た。原作者は原田マハさんだ。映画はコミカルなもので少々非現実的ではあるが、政界への皮肉も...小池真理子「死に水」

  • 森絵都「犬の散歩」

    ★一足早く夏がやって来た感じだ。ゴールデンウィーク2日目。衣替えを急いだほうが良いのか迷う。★今日は授業が一コマだけ。高校生が国語の課題を持ってきた。2022年の教科書に三浦しをんさんの「舟を編む」の一場面が採用されているという。★変人と呼ばれるほど真面目で、それでいて場違いな営業の仕事をしている馬締。彼は言語感覚を買われて辞書編纂部へ。先輩の西岡はチャラい現代風の青年。しかし持ち前の人当たりの良さと押しの強さで辞書の編纂を助けていた。ただ彼にとって辞書に関わる必然性はなく、それが彼の葛藤になっていた。★性格が正反対の馬締と西岡はお互いに触発し、西岡もやる気が湧いてきた。そんな折、辞書編纂中止という噂が流れる。それを阻止すべく先走った西岡は経営陣から目をつけられ、彼は辞書編纂を継続する見返りに自らは他部署...森絵都「犬の散歩」

  • 司馬遼太郎「梟の城」

    ★ゴールデンウィーク初日。来客もなく静かな1日だ。★司馬遼太郎さんの「梟の城」(新潮文庫)を読み終えた。重厚にしてドラマチックな作品だった。毎年多くの作家が生まれ、多くの作品が世に出されるが、長く読み継がれる作品はそれほど多くない。そんな中、漱石、鴎外、太宰、芥川と並んで、司馬遼太郎、松本清張作品はこれからも読まれていくであろう。★「梟の城」、1960年の直木賞受賞作。時代小説の利点は、時を経ても違和感を感じず読めることだ。★時代は、戦国の世が終わり、豊臣秀吉が天下を統一した頃。主人公は伊賀忍者の葛籠重蔵。戦乱の中、伊賀一族は虐殺に遭い、太平の世となればなったで、もはや為政者にとって忍びは脅威でしかなかった。★伊賀忍者の生き残り重蔵は仲間からも一目置かれる上忍。そんな彼が、師匠から秀吉暗殺の指令を受ける。...司馬遼太郎「梟の城」

  • 椎名麟三「深夜の酒宴」

    ★季節の変わり目だからだろうか、本を読むとすぐに眠くなる。それに、今年は花粉症がきつい。老いたかな。★さて今日は、椎名麟三さんの「深夜の酒宴」(集英社「日本文学全集」第78巻所収)。★私小説なので主人公は作者本人が投影されている。主人公は戦時中、共産党で活動し、投獄された経験をもつ。物語は、戦後貧民窟のようなアパートで暮らす底辺層の人々を描いている。★何やかんやと言いながらも、今の時代、栄養失調になったり、餓死する人は稀だ。戦後まもなくは、最低限の食べることにも困っているこうした貧困はごく身近だったのだろう。★死は日常の一部で、明日は我が身の出来事だったようだ。★暗い絶望的な状況だが、もはやここに至ってはかえってあっけらかんとしている気さえする。☆いよいよゴールデンウィーク。とはいえ、塾は平常通りの営業。...椎名麟三「深夜の酒宴」

  • レイ・ブラッドベリ「霧笛」

    ★アニメ「夏目友人帳」を観ている。孤独で、ちょっと変わり者だった祖母には妖怪が見えた。彼女は妖怪と勝負して勝っては彼らから名前を奪った。その名前は「友人帳」に記され、友人帳の持ち主は彼らを従わせることが出来るという。★物語の主人公は彼女の孫。彼もまた妖怪が見える。家族に恵まれず親戚や知人の家を転々とし、見えないモノを見えるというから奇妙がられていた。彼は高校生となり、妖怪たちにうなされる日々が続いた。彼らは祖母が集めた名前を返してもらおうとやってくるのだ。彼はふと出会った妖怪「にゃんこ先生」(本当は上等な妖怪らしい)と共に妖怪と接していく。★怖いだけでも、面白いだけでもなく、切ないエピソードが魅力的だ。★さて、今朝の朝日新聞「天声人語」で、レイ・ブラッドベリの「霧笛」が取り上げられていたので、本棚からその...レイ・ブラッドベリ「霧笛」

  • 永瀬隼介「閃光」

    ★以前、「新説・三億円事件」(1991年)というドラマを見た。実行犯が警察官の息子で、真相を知った警察官の両親が息子を殺害するというもの。警察官役が小林稔侍さん、息子役が織田裕二さんだった。★永瀬隼介さんの「閃光」(角川文庫)を読んだ。この作品も三億円事件をモチーフにしている。★三億円事件は当時の警察が見立てた単独犯ではなく、複数犯であり、生き残った仲間たちのその後が描かれている。そして、その仲間たちが次々と殺されるという事件が起こる。★犯人たちの仲間割れなのか、それとも組織を守るため過去を隠ぺいしようとする警察組織の仕業なのか。★定年前の老刑事と血の気の多い所轄の若い刑事が真相を追う。そして、思いがけない真犯人が登場する。★3億円事件から56年。グリコ森永事件から40年。下山事件に至っては75年が経過し...永瀬隼介「閃光」

  • 北杜夫「岩尾根にて」

    ★昨夜の雷雨が嘘のような晴模様。春を通り越して初夏がやってきたようだ。★映画「トゥルーマン・ショー」(1998年)を観た。もっとコミカルな映画だと思っていたが、なかなかシリアスなテーマだった。私が「現実だ」と思っているこの世界。実は作り物だとしたら、という内容。深く考えれば哲学的だ。映画「ダークシティー」とも似た感じだ。★北杜夫さんの「夜と霧の隅で」(新潮文庫)から「岩尾根にて」を読んだ。登場するのは2人の人間と1つの遺体。★主人公はロッククライミングの途中、墜落死した遺体を発見する。同時に、1人の男が今まさに岩を登っている光景を目撃する。やがて、岩の上の平らなところで、主人公とその男が語る。★この男はまるで主人公自身のようだ。そして墜落死した遺体はこの男のようだ。時間軸が前後するような奇妙な作品だ。ここ...北杜夫「岩尾根にて」

  • 尾崎真理子「現代日本の小説」

    ★好天が続く。洗濯物がよく乾いてありがたい。★さて今日は、尾崎真理子さんの「現代日本の小説」(ちくまプリマー新書)を読んだ。「ちくまプリマー新書」は比較的若い人をターゲットに、時々のテーマに入門、基礎に立ち返ってわかりやすく解説されている。★尾崎真理子さんは読売新聞の文化部で「文芸批評」を担当されたという。第3章までは記者として折に触れて接した作家のエピソードや当時の新聞に掲載された時評が豊富に取り上げられている。★「文化部、文芸部担当記者の仕事とは」という感じだ。そして、1987年以降、よしもとばななの「キッチン」、村上春樹の「ノルウェイの森」以降の文壇の変遷を論じている。★3章までは何となく遠慮が感じられるが、「第4章パソコンから生まれる新感覚」では著者の思いが強く述べられている。★肉筆からワープロ・...尾崎真理子「現代日本の小説」

  • 石原慎太郎「太陽の季節」

    ★新学期が始まって1週間。今年度スタート時の塾生は70人で確定した。例年、これからパラパラと20人ほど増える。★先日、YouTubeで立川談志さんと石原東京都知事(当時)の対談を見た。70代も半ば(収録時)のお二方。「老い慣れしていない」というフレーズが印象的だった。★ということで、今さらながら石原慎太郎さんの「太陽の季節」(新潮文庫)を読んだ。1955年度の「文学界」新人賞、そして翌年「芥川賞」を受賞。戦後10年を経て、自由奔放な青年の生きざまが新鮮だったのであろう。★とにかく、主人公を始め登場人物たちは裕福だ。多分自ら得た富ではなく、親や先祖から受け継いだものだろう。その豊かさの中で、彼らは刹那的に生きている。彼らとて悩みがないわけではないが、それは極めて個人的な問題だ。★主人公の竜哉たちは、街で英子...石原慎太郎「太陽の季節」

  • 眞邊明人「もしも徳川家康が総理大臣になったら」

    ★近隣の小学校では昨日が入学式。そして今日は中学校で入学式だ。★さて今日は、眞邊明人さんの「もしも徳川家康が総理大臣になったら」(サンマーク出版)を読んだ。★かつてヒットした「もしドラ(もし高校野球のマネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」や、最近言われだしてきた「もしトラ(もしもトランプ前大統領が再びアメリカ合衆国大統領に返り咲いたら)」という言葉があるから、この作品も略称で呼ばれるようになるかも。★室積光さんの「史上最強の内閣」(小学館文庫)では、国家が危機に瀕したとき、現内閣が京都に隠されていた本物の内閣に政権を譲るという話だった。★「もしも徳川家康が総理大臣になったら」は、新型コロナウイルスにより内閣総理大臣を始め主だった政府高官が病死。後継に困った国会は後継選びを天皇に一任し、その...眞邊明人「もしも徳川家康が総理大臣になったら」

  • 干刈あがた「ウホッホ探検隊」

    ★新学期が始まった。クラス替えがあったり、新しい担任の先生に変わったりと、子どもたちにもストレスがたまる時期だ。スクールカーストなどと嫌な言葉がはびこる時代。最初の1週間が子どもたちにとっても勝負の時期ようだ。★さて今日は、干刈あがたさんの「ウホッホ探検隊」(福武文庫)を読んだ。1987年4月4月に読了の記述があるから読むのは2度目だ。★理由はよくわからないが(たぶん夫の不倫が原因なのだろうが)、夫婦が別れることになった。夫婦には小二人の小学生の息子がいる。母親が二人を引き取ることになったが、微妙な年ごろだから、夫婦の問題をどう伝えるか悩む母親。★子どもたちは、父と母の微妙な空気を感じていら立つこともあるが、子どもながらに親を思いやっている様子。★中盤までは母親が長男に「君」と語る文体で進む。二人称の文体...干刈あがた「ウホッホ探検隊」

  • 福永武彦「草の花」

    ★春休み最後の日曜日。今日も好天に恵まれ、桜は満開だ。★福永武彦さんの「草の花」(新潮文庫)を読んだ。物語は終戦からそれほど遠くないある冬から始まる。舞台は郊外のサナトリウムで、主人公(語り手)は他の患者と共に結核の療養をしている。彼はそこで汐見茂思という同じ年頃の男性と出会う。★汐見は病状が重く、友人からの自重を勧める声に迷うこともなく、当時まだ危険であった片肺の全摘手術を希望する。手術は始め順調に進んでいたが、やがて血圧が低下し、亡くなってしまう。★主人公は汐見から2冊のノートを託されていた。それを読みながら、彼の死が術中死なのか、それとも彼が自ら望んでの体の良い自殺だったのか思いを巡らす。★2冊のノートには汐見が経験した2つの失恋が描かれていた。★理知的で純粋であるがゆえに苦悩も大きかったようだ。神...福永武彦「草の花」

  • 川西政明「『死霊』から『キッチン』へ」

    ★今日は授業が2コマ(2人)しかなく、のんびりした日だった。あまりにのんびりしすぎて呆けてしまうのではと心配になる。★今日の収穫は、川西政明さんの「『死霊』から『キッチン』へ」(講談社現代新書)を読んだこと。「日本文学の戦後50年」と副題にあるように、1945年から1995年までの文学界の変遷を具体的な作家、作品を上げながら解説している。著者の川西政明さんは河出書房新社の編集者から後に文芸評論家になられた方。★戦後直後の作品。戦争でまさに死と直面した作家が描いた世界は凄みがある。武田泰淳の「ひかりごけ」や梅崎春生の「幻花」、椎名麟三の「深夜の酒宴」など読んでみたい。★三島由紀夫の「金閣寺」や遠藤周作の「沈黙」、大江健三郎の「飼育」などはすでに読んでいるので、解説を読んで「なるほどなぁ」と思った。★私が安倍...川西政明「『死霊』から『キッチン』へ」

  • 村上春樹「ねじまき鳥と火曜日の女たち」

    ★数年前、近所にできたパン屋のパンが最近とてもおいしくなった。焼きカレーパンやメロンパンがよく売れているそうだが、私は卵とレタス&ハムのサンドイッチが好きだ。おいしいパンは外皮(パンの耳)までおいしい。いや、食パンなどは外皮が一番おいしい。マーガリンや何もつけずに十分に味わえる。★パンがおいしかったので、何かパンがらみの作品はないかと本棚をあさる。群ようこさんの「パンとスープとネコ日和」(角川春樹事務所)、木皿泉さんの「昨夜のカレー、明日のパン」(河出文庫)が目についたが、どちらもすでに読んでいる。★更に探していると、村上春樹さんの「パン屋再襲撃」(文春文庫)を見つけた。直接パンとは何の関係もないが、その中から「ねじまき鳥と火曜日の女たち」を読んだ。★主人公の男性は法律事務所に勤めていたが、何かしっくりこ...村上春樹「ねじまき鳥と火曜日の女たち」

  • 加藤幸子「雪売り屋」

    ★2011年の大学入試センター試験に加藤幸子さんの「海辺暮らし」が出題されていた。長年干潟で暮らすおばあさん。工場が流す排水で干潟が汚染され、おばあさんは役所から立ち退きを迫られる話だった。★今日は、加藤幸子さんの「自然連禱」(未知谷)から「雪売り屋」を読んだ。★ある女性、二人の娘と夫の4人暮らしのようだ。彼女がお気に入りの風呂吹き大根を煮ていると、聞き慣れる御用聞きがやって来た。話を聞くと「雪売り屋」だという。日本各地はもとより世界各地の雪を取り揃えているとのこと。★あまりにも怪しいので追い返そうとしたが、次女が興味を持ったらしく、やむなく「サッポロ雪瓶」を買うことに。やがて食卓に飾られた雪瓶。雪は規則正しく溶け、溶けた分だけ空間ができる。さながら雪時計だという。★それにしても怪しい商売。騙されたに違い...加藤幸子「雪売り屋」

  • 鈴木健二「気くばりのすすめ」

    ★元NHKアナウンサー、鈴木健二さんが老衰のため亡くなられたという。★鈴木さんと言えば「クイズ面白ゼミナール」の司会や「紅白歌合戦」で、引退する都はるみさんにアンコールの交渉をした「私に1分間時間をください。歌えますか」というシーンが思い出深い。★「クイズ面白ゼミナール」は、仮説実験授業の要素を取り入れ、当時人気があった。★今日は、鈴木健二さんの「気配りのすすめ」(講談社文庫)を読み返した。400万部を超える大ベストセラー。(とはいえ、その印税の83%は税務署にお届けした。と「文庫本刊行に当たって」で告白されている)★1982年発行(文庫版は1985年、昭和60年初版)の著書なので、令和の視点から見ると、例えば父親らしさや母親らしさなど少々ステレオタイプであるように感じる。時代は急速に多様化が進んでいる。...鈴木健二「気くばりのすすめ」

  • 菊池寛「マスク」

    ★春期講座7日目。残るはあと3日。ここ2日間は晴天が続き、どうやら明日は大荒れになるらしい。これを機会に桜の開花のきっかけになるかも。今年はちょうど入学シーズンに満開になりそうだ。★菊池寛の「マスク」(青空文庫)を読んだ。志賀直哉が「流行感冒」を書いた同じ頃の話か。★主人公の男性、外見は健康そうだが内臓は弱い。特に心肺が弱っているらしく、ちょっと運動をするだけで息切れがする。医者に診てもらったところ、差し当たっての治療は脂肪分が多い食品を避け、あっさりした野菜を食べればよいとのこと。食をこよなく愛する彼には実に過酷なアドバイスだ。★時に流感が大流行。人々がマスクを装着し、彼もまたマスク、手洗い、うがいを励行する。★季節が温かくなり流行が下火になるとマスクをする人々が減ってきた。そうした人々を横目に彼はマス...菊池寛「マスク」

  • 小池真理子「玉虫と十一の掌篇小説」から

    ★新年度が始まった。コロナ禍が一段落し、学校では何年かぶりに離任式が行われた。大学や企業では入学式や入社式が行われたようだ。★受験が終わり、この週末は嘘のようにのんびりした。のんびりしすぎて、生活リズムが狂い気味。折込チラシを新聞販売所に持ち込み、映画「キングスマンファースト・エージェント」を観て、あとはだらだらと過ごした。★NHKの「笑わない数学」から「カオス理論」の回を観て、三体問題とはこういうことなのかと思ったりした。★暇になると読書も滞り気味になる。忙しい時の方が読み進めるのが不思議だ。小池真理子さんの「玉虫と十一の掌篇小説」(新潮文庫)から「声」と「いのち滴る」を読んだ。★「声」は、男が、容姿は醜いが美しい声を持つ女を監禁する話。籠の中の鳥のように。★「いのち滴る」は、ある女性の業の深さを感じる...小池真理子「玉虫と十一の掌篇小説」から

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