★昔、南北戦争は英語で「CIVILWAR」だと習った。今、アメリカでは同名の映画が人気を得ているという。もしアメリカで内乱が起こったらという近未来作品だ。★近年の「分断されたアメリカ」、その空気を読んでの作品らしい。今年の大統領選、果たして結果はどうなるやら。事と次第によっては、ディストピアが現実になるかも。そして、超大国が崩壊し喜ぶのは、もう一方の超大国だ。★日本でも政局が近づいているようだ。岸田政権に展望が見えず。かといって政権交代できる政党もない。近未来のシナリオは、自民党が分裂し政界再編による政権交代か、あるいは自民党が初の女性首相を誕生させ、当面の延命を図るかだろう。★そんな近未来のために映画「総理の夫」を観た。原作者は原田マハさんだ。映画はコミカルなもので少々非現実的ではあるが、政界への皮肉も...小池真理子「死に水」
★一足早く夏がやって来た感じだ。ゴールデンウィーク2日目。衣替えを急いだほうが良いのか迷う。★今日は授業が一コマだけ。高校生が国語の課題を持ってきた。2022年の教科書に三浦しをんさんの「舟を編む」の一場面が採用されているという。★変人と呼ばれるほど真面目で、それでいて場違いな営業の仕事をしている馬締。彼は言語感覚を買われて辞書編纂部へ。先輩の西岡はチャラい現代風の青年。しかし持ち前の人当たりの良さと押しの強さで辞書の編纂を助けていた。ただ彼にとって辞書に関わる必然性はなく、それが彼の葛藤になっていた。★性格が正反対の馬締と西岡はお互いに触発し、西岡もやる気が湧いてきた。そんな折、辞書編纂中止という噂が流れる。それを阻止すべく先走った西岡は経営陣から目をつけられ、彼は辞書編纂を継続する見返りに自らは他部署...森絵都「犬の散歩」
★ゴールデンウィーク初日。来客もなく静かな1日だ。★司馬遼太郎さんの「梟の城」(新潮文庫)を読み終えた。重厚にしてドラマチックな作品だった。毎年多くの作家が生まれ、多くの作品が世に出されるが、長く読み継がれる作品はそれほど多くない。そんな中、漱石、鴎外、太宰、芥川と並んで、司馬遼太郎、松本清張作品はこれからも読まれていくであろう。★「梟の城」、1960年の直木賞受賞作。時代小説の利点は、時を経ても違和感を感じず読めることだ。★時代は、戦国の世が終わり、豊臣秀吉が天下を統一した頃。主人公は伊賀忍者の葛籠重蔵。戦乱の中、伊賀一族は虐殺に遭い、太平の世となればなったで、もはや為政者にとって忍びは脅威でしかなかった。★伊賀忍者の生き残り重蔵は仲間からも一目置かれる上忍。そんな彼が、師匠から秀吉暗殺の指令を受ける。...司馬遼太郎「梟の城」
★季節の変わり目だからだろうか、本を読むとすぐに眠くなる。それに、今年は花粉症がきつい。老いたかな。★さて今日は、椎名麟三さんの「深夜の酒宴」(集英社「日本文学全集」第78巻所収)。★私小説なので主人公は作者本人が投影されている。主人公は戦時中、共産党で活動し、投獄された経験をもつ。物語は、戦後貧民窟のようなアパートで暮らす底辺層の人々を描いている。★何やかんやと言いながらも、今の時代、栄養失調になったり、餓死する人は稀だ。戦後まもなくは、最低限の食べることにも困っているこうした貧困はごく身近だったのだろう。★死は日常の一部で、明日は我が身の出来事だったようだ。★暗い絶望的な状況だが、もはやここに至ってはかえってあっけらかんとしている気さえする。☆いよいよゴールデンウィーク。とはいえ、塾は平常通りの営業。...椎名麟三「深夜の酒宴」
★アニメ「夏目友人帳」を観ている。孤独で、ちょっと変わり者だった祖母には妖怪が見えた。彼女は妖怪と勝負して勝っては彼らから名前を奪った。その名前は「友人帳」に記され、友人帳の持ち主は彼らを従わせることが出来るという。★物語の主人公は彼女の孫。彼もまた妖怪が見える。家族に恵まれず親戚や知人の家を転々とし、見えないモノを見えるというから奇妙がられていた。彼は高校生となり、妖怪たちにうなされる日々が続いた。彼らは祖母が集めた名前を返してもらおうとやってくるのだ。彼はふと出会った妖怪「にゃんこ先生」(本当は上等な妖怪らしい)と共に妖怪と接していく。★怖いだけでも、面白いだけでもなく、切ないエピソードが魅力的だ。★さて、今朝の朝日新聞「天声人語」で、レイ・ブラッドベリの「霧笛」が取り上げられていたので、本棚からその...レイ・ブラッドベリ「霧笛」
★以前、「新説・三億円事件」(1991年)というドラマを見た。実行犯が警察官の息子で、真相を知った警察官の両親が息子を殺害するというもの。警察官役が小林稔侍さん、息子役が織田裕二さんだった。★永瀬隼介さんの「閃光」(角川文庫)を読んだ。この作品も三億円事件をモチーフにしている。★三億円事件は当時の警察が見立てた単独犯ではなく、複数犯であり、生き残った仲間たちのその後が描かれている。そして、その仲間たちが次々と殺されるという事件が起こる。★犯人たちの仲間割れなのか、それとも組織を守るため過去を隠ぺいしようとする警察組織の仕業なのか。★定年前の老刑事と血の気の多い所轄の若い刑事が真相を追う。そして、思いがけない真犯人が登場する。★3億円事件から56年。グリコ森永事件から40年。下山事件に至っては75年が経過し...永瀬隼介「閃光」
★昨夜の雷雨が嘘のような晴模様。春を通り越して初夏がやってきたようだ。★映画「トゥルーマン・ショー」(1998年)を観た。もっとコミカルな映画だと思っていたが、なかなかシリアスなテーマだった。私が「現実だ」と思っているこの世界。実は作り物だとしたら、という内容。深く考えれば哲学的だ。映画「ダークシティー」とも似た感じだ。★北杜夫さんの「夜と霧の隅で」(新潮文庫)から「岩尾根にて」を読んだ。登場するのは2人の人間と1つの遺体。★主人公はロッククライミングの途中、墜落死した遺体を発見する。同時に、1人の男が今まさに岩を登っている光景を目撃する。やがて、岩の上の平らなところで、主人公とその男が語る。★この男はまるで主人公自身のようだ。そして墜落死した遺体はこの男のようだ。時間軸が前後するような奇妙な作品だ。ここ...北杜夫「岩尾根にて」
★好天が続く。洗濯物がよく乾いてありがたい。★さて今日は、尾崎真理子さんの「現代日本の小説」(ちくまプリマー新書)を読んだ。「ちくまプリマー新書」は比較的若い人をターゲットに、時々のテーマに入門、基礎に立ち返ってわかりやすく解説されている。★尾崎真理子さんは読売新聞の文化部で「文芸批評」を担当されたという。第3章までは記者として折に触れて接した作家のエピソードや当時の新聞に掲載された時評が豊富に取り上げられている。★「文化部、文芸部担当記者の仕事とは」という感じだ。そして、1987年以降、よしもとばななの「キッチン」、村上春樹の「ノルウェイの森」以降の文壇の変遷を論じている。★3章までは何となく遠慮が感じられるが、「第4章パソコンから生まれる新感覚」では著者の思いが強く述べられている。★肉筆からワープロ・...尾崎真理子「現代日本の小説」
★新学期が始まって1週間。今年度スタート時の塾生は70人で確定した。例年、これからパラパラと20人ほど増える。★先日、YouTubeで立川談志さんと石原東京都知事(当時)の対談を見た。70代も半ば(収録時)のお二方。「老い慣れしていない」というフレーズが印象的だった。★ということで、今さらながら石原慎太郎さんの「太陽の季節」(新潮文庫)を読んだ。1955年度の「文学界」新人賞、そして翌年「芥川賞」を受賞。戦後10年を経て、自由奔放な青年の生きざまが新鮮だったのであろう。★とにかく、主人公を始め登場人物たちは裕福だ。多分自ら得た富ではなく、親や先祖から受け継いだものだろう。その豊かさの中で、彼らは刹那的に生きている。彼らとて悩みがないわけではないが、それは極めて個人的な問題だ。★主人公の竜哉たちは、街で英子...石原慎太郎「太陽の季節」
★近隣の小学校では昨日が入学式。そして今日は中学校で入学式だ。★さて今日は、眞邊明人さんの「もしも徳川家康が総理大臣になったら」(サンマーク出版)を読んだ。★かつてヒットした「もしドラ(もし高校野球のマネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」や、最近言われだしてきた「もしトラ(もしもトランプ前大統領が再びアメリカ合衆国大統領に返り咲いたら)」という言葉があるから、この作品も略称で呼ばれるようになるかも。★室積光さんの「史上最強の内閣」(小学館文庫)では、国家が危機に瀕したとき、現内閣が京都に隠されていた本物の内閣に政権を譲るという話だった。★「もしも徳川家康が総理大臣になったら」は、新型コロナウイルスにより内閣総理大臣を始め主だった政府高官が病死。後継に困った国会は後継選びを天皇に一任し、その...眞邊明人「もしも徳川家康が総理大臣になったら」
★新学期が始まった。クラス替えがあったり、新しい担任の先生に変わったりと、子どもたちにもストレスがたまる時期だ。スクールカーストなどと嫌な言葉がはびこる時代。最初の1週間が子どもたちにとっても勝負の時期ようだ。★さて今日は、干刈あがたさんの「ウホッホ探検隊」(福武文庫)を読んだ。1987年4月4月に読了の記述があるから読むのは2度目だ。★理由はよくわからないが(たぶん夫の不倫が原因なのだろうが)、夫婦が別れることになった。夫婦には小二人の小学生の息子がいる。母親が二人を引き取ることになったが、微妙な年ごろだから、夫婦の問題をどう伝えるか悩む母親。★子どもたちは、父と母の微妙な空気を感じていら立つこともあるが、子どもながらに親を思いやっている様子。★中盤までは母親が長男に「君」と語る文体で進む。二人称の文体...干刈あがた「ウホッホ探検隊」
★春休み最後の日曜日。今日も好天に恵まれ、桜は満開だ。★福永武彦さんの「草の花」(新潮文庫)を読んだ。物語は終戦からそれほど遠くないある冬から始まる。舞台は郊外のサナトリウムで、主人公(語り手)は他の患者と共に結核の療養をしている。彼はそこで汐見茂思という同じ年頃の男性と出会う。★汐見は病状が重く、友人からの自重を勧める声に迷うこともなく、当時まだ危険であった片肺の全摘手術を希望する。手術は始め順調に進んでいたが、やがて血圧が低下し、亡くなってしまう。★主人公は汐見から2冊のノートを託されていた。それを読みながら、彼の死が術中死なのか、それとも彼が自ら望んでの体の良い自殺だったのか思いを巡らす。★2冊のノートには汐見が経験した2つの失恋が描かれていた。★理知的で純粋であるがゆえに苦悩も大きかったようだ。神...福永武彦「草の花」
★今日は授業が2コマ(2人)しかなく、のんびりした日だった。あまりにのんびりしすぎて呆けてしまうのではと心配になる。★今日の収穫は、川西政明さんの「『死霊』から『キッチン』へ」(講談社現代新書)を読んだこと。「日本文学の戦後50年」と副題にあるように、1945年から1995年までの文学界の変遷を具体的な作家、作品を上げながら解説している。著者の川西政明さんは河出書房新社の編集者から後に文芸評論家になられた方。★戦後直後の作品。戦争でまさに死と直面した作家が描いた世界は凄みがある。武田泰淳の「ひかりごけ」や梅崎春生の「幻花」、椎名麟三の「深夜の酒宴」など読んでみたい。★三島由紀夫の「金閣寺」や遠藤周作の「沈黙」、大江健三郎の「飼育」などはすでに読んでいるので、解説を読んで「なるほどなぁ」と思った。★私が安倍...川西政明「『死霊』から『キッチン』へ」
★数年前、近所にできたパン屋のパンが最近とてもおいしくなった。焼きカレーパンやメロンパンがよく売れているそうだが、私は卵とレタス&ハムのサンドイッチが好きだ。おいしいパンは外皮(パンの耳)までおいしい。いや、食パンなどは外皮が一番おいしい。マーガリンや何もつけずに十分に味わえる。★パンがおいしかったので、何かパンがらみの作品はないかと本棚をあさる。群ようこさんの「パンとスープとネコ日和」(角川春樹事務所)、木皿泉さんの「昨夜のカレー、明日のパン」(河出文庫)が目についたが、どちらもすでに読んでいる。★更に探していると、村上春樹さんの「パン屋再襲撃」(文春文庫)を見つけた。直接パンとは何の関係もないが、その中から「ねじまき鳥と火曜日の女たち」を読んだ。★主人公の男性は法律事務所に勤めていたが、何かしっくりこ...村上春樹「ねじまき鳥と火曜日の女たち」
★2011年の大学入試センター試験に加藤幸子さんの「海辺暮らし」が出題されていた。長年干潟で暮らすおばあさん。工場が流す排水で干潟が汚染され、おばあさんは役所から立ち退きを迫られる話だった。★今日は、加藤幸子さんの「自然連禱」(未知谷)から「雪売り屋」を読んだ。★ある女性、二人の娘と夫の4人暮らしのようだ。彼女がお気に入りの風呂吹き大根を煮ていると、聞き慣れる御用聞きがやって来た。話を聞くと「雪売り屋」だという。日本各地はもとより世界各地の雪を取り揃えているとのこと。★あまりにも怪しいので追い返そうとしたが、次女が興味を持ったらしく、やむなく「サッポロ雪瓶」を買うことに。やがて食卓に飾られた雪瓶。雪は規則正しく溶け、溶けた分だけ空間ができる。さながら雪時計だという。★それにしても怪しい商売。騙されたに違い...加藤幸子「雪売り屋」
★元NHKアナウンサー、鈴木健二さんが老衰のため亡くなられたという。★鈴木さんと言えば「クイズ面白ゼミナール」の司会や「紅白歌合戦」で、引退する都はるみさんにアンコールの交渉をした「私に1分間時間をください。歌えますか」というシーンが思い出深い。★「クイズ面白ゼミナール」は、仮説実験授業の要素を取り入れ、当時人気があった。★今日は、鈴木健二さんの「気配りのすすめ」(講談社文庫)を読み返した。400万部を超える大ベストセラー。(とはいえ、その印税の83%は税務署にお届けした。と「文庫本刊行に当たって」で告白されている)★1982年発行(文庫版は1985年、昭和60年初版)の著書なので、令和の視点から見ると、例えば父親らしさや母親らしさなど少々ステレオタイプであるように感じる。時代は急速に多様化が進んでいる。...鈴木健二「気くばりのすすめ」
★春期講座7日目。残るはあと3日。ここ2日間は晴天が続き、どうやら明日は大荒れになるらしい。これを機会に桜の開花のきっかけになるかも。今年はちょうど入学シーズンに満開になりそうだ。★菊池寛の「マスク」(青空文庫)を読んだ。志賀直哉が「流行感冒」を書いた同じ頃の話か。★主人公の男性、外見は健康そうだが内臓は弱い。特に心肺が弱っているらしく、ちょっと運動をするだけで息切れがする。医者に診てもらったところ、差し当たっての治療は脂肪分が多い食品を避け、あっさりした野菜を食べればよいとのこと。食をこよなく愛する彼には実に過酷なアドバイスだ。★時に流感が大流行。人々がマスクを装着し、彼もまたマスク、手洗い、うがいを励行する。★季節が温かくなり流行が下火になるとマスクをする人々が減ってきた。そうした人々を横目に彼はマス...菊池寛「マスク」
★新年度が始まった。コロナ禍が一段落し、学校では何年かぶりに離任式が行われた。大学や企業では入学式や入社式が行われたようだ。★受験が終わり、この週末は嘘のようにのんびりした。のんびりしすぎて、生活リズムが狂い気味。折込チラシを新聞販売所に持ち込み、映画「キングスマンファースト・エージェント」を観て、あとはだらだらと過ごした。★NHKの「笑わない数学」から「カオス理論」の回を観て、三体問題とはこういうことなのかと思ったりした。★暇になると読書も滞り気味になる。忙しい時の方が読み進めるのが不思議だ。小池真理子さんの「玉虫と十一の掌篇小説」(新潮文庫)から「声」と「いのち滴る」を読んだ。★「声」は、男が、容姿は醜いが美しい声を持つ女を監禁する話。籠の中の鳥のように。★「いのち滴る」は、ある女性の業の深さを感じる...小池真理子「玉虫と十一の掌篇小説」から
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★寒気の影響か肌寒い。それに晴れたかと思えば、雷に驚かされ、ザーとひと雨降ればまた晴れる。落ち着きのない天気だ。★与党か野党か知らないが、選挙目当てかどうかも知らないが、ぶち上げた給付金が予想以上に不評で、次いで、消費税減税をめぐっては、自民党も立憲民主党も党が割れんばかりの混乱だ。★「大山鳴動して鼠一匹」ともいう。結局は所得制限付きの給付金あるいは、マイナポイントでお茶を濁すのか。バラマキがポピュリズムなら、票目当ての党利党略もポピュリズム。気になるのは某国大統領のコロコロ変わる顔色か。★さて今日は、伊藤たかみさんの「八月の路上に捨てる」(文春文庫)から「貝からみる風景」を読んだ。物書きらしい男性が主人公。鮎子という女性と暮らしている。男性は時間的にはゆとりがあるらしく、彼女が仕事から帰るのに合わせて、...伊藤たかみ「貝からみる風景」
★gooブログが閉鎖されるらしい。私のブログは開設しておよそ20年。古参に含まれるのかな。残念だが、時代の趨勢には勝てない。★ホームページからブログへ、ブログからツイッター(現X)、フェイスブック、インスタへと駆け足で時代が過ぎていく。★さて今日は、有栖川有栖さんの「ロシア紅茶の謎」(講談社文庫)から「動物園の暗号」を読んだ。★大阪の動物園のサル山で、飼育員の遺体が発見された。何ものかに鈍器で殴られ、転落死したようだ。警察の依頼を受け、犯罪社会学者・火村英生とその相棒で作家の有栖川有栖が、捜査に協力する。★犯行が行われたのが深夜の動物園ということで、容疑者は限られたが、決定的な物証に欠けた。残されたのは被害者の手に握られていた紙片だけ。それには、動物の名前が羅列してあった。★火村と有栖川はこの暗号の解明に...有栖川有栖「動物園の暗号」
★のんびりとした週末。天気は下り坂で、明日は雨が降るらしい。今年の桜も見納めか。★今日は、彩瀬まるさんの「骨を彩る」(幻冬舎文庫)から「ばらばら」を読んだ。主人公は二児の母親。彼女は今、仙台に向かう長距離バスに乗っている。折しも雪が降りだした。★彼女は4回、姓を変えた。最初は実父の姓。7歳の頃、両親が離婚し、母の旧姓を名乗るようになった。12歳の時、母親が再婚し新しい父親の姓を名乗る。そして、結婚して今の姓になった。★こう見てくると、女性にとって姓とは何なのかと考える。古い「家」制度の名残なのだろうか。★女性は今、7歳の息子との接し方に悩んでいる。意識はしていなかったが、表情が険しくなっていたらしい。「おかあさんがこわい」という息子の言葉はショックだった。彼女は夫と話し合い、夫は彼女に、数日旅することを勧...彩瀬まる「ばらばら」
★行きつけのパン屋さんのご主人と、昨今話題の消費税減税について雑談をした。ご主人曰く、いっそのこと消費税を0にして、それで当然のこと歳出ができなくなるから、そこで国民の判断に委ねればとのこと。★随分と大胆な提案ではあるが、政治家の政争よりかは実感が伴う。中途半端に税率をいじるとレジ一つの修正も大変だ。それも時限付きとなるとどうするのか。政治家が無責任な発言をするほど現実は甘くない。★給付か減税か、給付と減税のセットか、それとも何もせずか。この決断が政権を左右しそうだ。★それはそうと、関税をめぐる米中の対立は、熱い戦争の前哨戦とも思える。困った時代になってきた。★さて今日は、阿刀田高さんの「消えた男」(角川文庫)から「姉弟」、安部公房さんの「R62号の発明鉛の卵」(新潮文庫)から「鍵」を読んだ。★「姉弟」は...安部公房「鍵」
★世界経済は大混乱。原因はトランプ大統領。世の中がおかしくなりつつある気がする。★日本では政府・与党の一部が給付金に前向きとのこと。選挙を目前に、消費税減税の代替案ということか。そもそもが国民の税金。「給付します」と政治家が自慢げに語るのも何か筋違いな気がする。★減税はありがたいが、その前に国民健康保険料を下げて欲しいものだ。★さて今日は、青山文平さんの「つまをめとらば」(文春文庫)から「つゆかせぎ」を読んだ。★江戸時代。旗本の家に勤める下級武士が主人公。彼の父親は、藩と農民の板挟みになって、仕えていたお家を出奔し、何とか今のお家に仕事を得た。目立たず真面目に。父親の生き方を間近に見て、彼もまたそのように生きていた。★そんな彼が、どうしたわけか美貌の誉れ高い女性に見初められ結婚。周囲の羨望の的となったが、...青山文平「つゆかせぎ」
★晴天。近隣の中学校は入学式。制服を着て一段と大人びた子どもたち。一歩一歩人生の階段を昇っていく。★昨夜は、映画「侍タイムスリップ」を観た。最近、タイムスリップモノがよく目につく。「またか」と期待せず観始めたが、想像をはるかに超えて良かった。劇中劇の監督が「命を懸けてるんだ」というセリフを吐く場面があるが、低予算ながらこの作品に懸ける監督を始めスタッフ、キャストの意気込みが感じられた。★看板俳優と宣伝だけの空疎な映画が多い中、低予算ながら骨のある作品だった。監督が宇治市の隣、城陽市の出身だというのにも親しみを感じた。★さて今日は、青山七恵さんの「ひとり日和」(河出文庫)から「出発」を読んだ。地方から上京し、新宿の企業で働いている男性が主人公。28歳になり、何かを変えたくて、会社を辞めようとしている。とはい...青山七恵「出発」
★昨日と一転して株価は高騰。乱高下のマネーゲームの様相だ。今、今年の漢字を選ぶとすれば「米」だろうね。★小中高ともに新学期が始まり、入塾の問い合わせが増えてきた。次の課題は、ゴールデンウィーク対策と中間テスト対策だ。英検の受付も始まる。★今日は、湊かなえさんの「ポイズンドーター・ホーリーマザー」(光文社文庫)から「ポイズンドーター」を読んだ。★今は女優として活躍する主人公。彼女の母親は娘に言わせると「毒親」。友人関係や将来の職業など、娘の生活をすべて支配しようとする。★父親は彼女が3歳の時、交通事故で亡くなり、母親は一人で娘を育てた。その自負と見栄が、そうさせているのかも知れない。★よく言えば娘想いの母親だが、当の娘にとってありがた迷惑。とはいえ、自分で稼げるまでは母親に従わざるを得なかった。進学のため上...湊かなえ「ポーズンドーター」
★週明けの東京株式は大暴落。金融市場が落ち着くまで、企業の設備投資は鈍るかな。このまま景気は冷え込むのか。スタグフレーションの始まりか。★昨夜は映画「殺人の追憶」を観た。1980年代後半、韓国の田舎で起こった連続女性殺人事件をベースにしたもの。拷問など当時の警察の取り調べは残酷だが、それでも犯人は捕まらない。結局、犯人は「普通の人」ということで、刑事(ソン・ガンホさん)のアップで終わる。すっきりしない終わり方だが、それが狙いか。★さて今日は、渡辺淳一さんの「光と影」(文春文庫)から「猿の抵抗」を読んだ。最初、表題から実験動物のことかと思ったが、そうではなかった。★主人公の男性は梅毒で神経が侵されている。生活保護を受けるほど困窮していたが、「学用患者」ということで無料で大学病院に入院している。「学用患者」と...渡辺淳一「猿の抵抗」
★佐久間亜紀さんの「教員不足」(岩波新書)を読んでいる。近い業界だけにかえって敬遠しがちなのだが、昨今の教員不足は深刻で、その原因を探るべく読み始めた。★読み始めて10ページ。深刻な現場のため息を聞いて、あらためてびっくりした。ある小学校は、臨時免許の非正規教員が小学6年生の担任をもたされたという。荒れのあるクラスで正規の教員が担任を敬遠した結果だという。大変な担任業務の上に自らの教採(教員採用試験)対策と涙ぐましい努力が描かれていた。無事に全員卒業にこぎつけたというから、まずは良かった。★またある教員は研究主任を担当していた。本来なら担任を免除されるが、たまたま同僚教員が産休に入ったため担任を兼務することに。さらには心を病んで休職した教務主任の仕事も担う羽目に。「今日がまだ木曜日であることに絶望していま...連城三紀彦「指飾り」
★トランプ関税を受けて、世界中で株安。ニューヨークのダウ平均株価も史上3番目の下げ幅だという。週明け、「ブラックマンデー」の再来となるのか。★日本でも選挙戦を前に、消費税減税の声が高まっている。減税はありがたいが、結局は借金の先送りにならないか。ある専門家が数年後に日本経済が行き詰まると言っていたが、現実になるのか。小惑星が地球に衝突する確率も再び2%台になったとか。まだ今世紀に入って25年というのに、世紀末の様相だ。★国破れて山河在り。世相がどうあれ、春が来れば桜は咲く。楽観的に生きよう。今この時を楽しんで。★さて今日は、横山秀夫さんの「動機」(文春文庫)から「逆転の夏」を読んだ。★あるエリート営業マン。魔が差したのか、思い上がっていたのか、妻が出産のために帰省中、女子高校生と1回きりの肉体関係をもった...横山秀夫「逆転の夏」
★春期講座が終わった。春は新塾生を中心に9日間。それぞれ新学年に向けて復習・予習に頑張った。いよいよ来週から新学期が始まる。子どもたちが学校に行っている間が、塾にとっては一休み。★アメリカ、トランプ大統領の政策で世界経済が大混乱。日本経済新聞の東証の株価を見ているととてもスリリングだ。結局、終値は昨日より1000円弱のマイナスだったが、一時は1500円まで下がった。為替も波乱気味だ。★先の世界大戦も背景には1929年からの世界恐慌がある。大きな世界史的なうねりの中で、一個人に何ができるのか。どのように生き延びればよいのか、考えさせられる。★隣国、韓国も分断が深刻だ。★そんな世相はさておき、今日はほっこりした小説。向田邦子さんの「思い出のトランプ」(新潮文庫)から「男眉」を読んだ。1人の女性を中心に家族模様...向田邦子「男眉」
★大学の入学式だったそうで、塾生のお母さまがラインを送ってくださった。その学校は、私の母校(大学院)でもある。丘のふもとに咲く桜が美しかったが、今日は満開だっただろうか。★2021年に亡くなられた師匠、堀内孜先生の著作集が送られてきた。全4巻。第1巻は公教育論・学校論、第2巻は教育行政論、第3巻は学校経営論、第4巻は教師教育論。生前の先生の著作が網羅されている。刊行委員会の方々のご尽力に感謝申し上げたい。★かつて20代だった私たち教え子も、もはや還暦、古希の歳となる。月日は駆け足で過ぎていく。★さて今日は、宮下奈都さんの「遠くの声に耳を澄ませて」(新潮文庫)から「どこにでも猫がいる」を読んだ。マンションに帰った女性。机の上の葉書には「どこにでも猫がいます」と書かれていた。★女性は20歳の頃、恋人とイタリア...宮下奈都「どこにでも猫がいる」
★春期講座は順調に進み、残りあと2日となった。新年度の授業も少しずつ動きだした。道路わきの桜も一気に花を開いている。★今日は、朱川湊人さんの「花まんま」(文春文庫)から「摩訶不思議」を読んだ。舞台は大阪の下町。通天閣の近く。話し手は小学生の男の子。彼の面倒をよく見てくれた叔父が突然亡くなった。酔っぱらって歩道橋から落ち、打ちどころが悪かったようだ。★葬儀が終わり、火葬場を目前に霊柩車が動かなくなった。その上、男たちが力づくで動かそうとしてもビクともしない。★実は、叔父には3人の彼女がいた。10年ぐらい同棲しているガラモン(ウルトラQ参照)のようなカツ子さん。叔父が行きつけのスナックの、ちあきなおみに似た感じのカオルさん。そして、ダンゴ屋に勤める、まだ20歳そこそこながらグラマーなヤヨイちゃん。★霊柩車が動...朱川湊人「摩訶不思議」
★年度末。何となくバタバタしながら月日が過ぎていく。ふとテレビを見るとコメの話題。「消えた23万トン」だという。投機目的で誰かが抱えているのか。そもそもが農水省が把握している生産量が違っているのか。謎だらけだ。★12年に一度の東京都議選、参院選が行われる年。政府は「強力な物価対策」を行うそうだが、はたしてどれほどものか。トランプ大統領の自動車関税の影響か、東京の株価は大きく値を下げている。トランプ恐慌になってしまうのか。★そんなことを考えながら、東野圭吾さんの「白鳥とコウモリ下巻」(幻冬舎文庫)を読み終えた。この作品も面白かった。特に下巻の中盤からは一気読みの勢いだった。★東京である弁護士が刺殺された。容疑者はすぐに浮かび上がり、自供を得て早々に事件は解決かと思われた。ところが、容疑者の息子と被害者の娘が...東野圭吾「白鳥とコウモリ下」
★春の甲子園が終わった。以前は4月上旬までやっていた気がする。好天にも恵まれたか。いよいよ桜前線が急上昇。新学期、入学式の春が来る。★塾の方は、新年度に備えて時間割の組み換え、教室割、テキストの手配など忙しい。1年が終わるとまた1年。2025年度も頑張らねば。★さて今日は、乃南アサさんの「禁漁区」(新潮文庫)から「免疫力」を読んだ。組対の警察官が懇意にしている組事務所を訪れた。昔気質の組長から姪っ子が白血病で、可愛そうでという話を聞き、ある薬を紹介してやる。★警察官の息子も悪性の病気で、一時期は覚悟を決めたが、ある薬を試したところ回復したと話したからだ。★最初は親切心からだった。組長の姪っ子も徐々に回復に向かっているようで、それはそれで良かったのだが、組長はその薬を他にも紹介してやりたいと言い出した。人助...乃南アサ「免疫力」
★好天の後の寒気。急激な温度差に体が悲鳴を上げそうだ。春期講座4日目。前半戦が終了といったところ。退塾する子、新たに入塾する子。この時期は人の行き交いが多く慌ただしい。★さて今日は、伊坂幸太郎さんの「死神の精度」(文春文庫)から「吹雪に死神」を読んだ。吹雪に埋もれるかのような山荘に集まった人々。ほぼ密室状態で、連続殺人が起こる。★よくあるシチュエーション。名作「オリエント急行殺人事件」へのオマージュともとれる。本作の面白さは、このオーソドックスな物語に死神の視点を入れているところだ。★物語を読んでいくと、死神の方が善人に思えるから不思議だ。本当に恐ろしいのは人の方かも知れない。☆今期のテレビドラマ。「相棒」は別格として、「ホットスポット」と「アイシー」が面白かった。☆「ホットスポット」は、宇宙人、未来人、...伊坂幸太郎「吹雪に死神」
★春期講座2日目。今年は朝9時から12時までの午前中だけ。それでも、夜型の生活から朝型への切り替えは辛い。数日もすれば慣れてしまうだろうが。★ここ数日の陽気は心地よくもあるが、身体が馴染まない。今年は花粉症の症状が厳しい。年のせいだろうか。★さて、なかなか米の価格は下がらず、米に限らず、物価高に閉口する日々だが、終戦直後のことを思えば(実際に経験したわけではないが)、極楽のようなものだろう。★浅田次郎さんの「帰郷」(集英社文庫)から表題作を読んだ。終戦直後、体を売ってその日の暮らしを支えている女性。復員兵らしき男性が彼女に声をかけた。★カネはあるが、邪な気持ちはない。ただ話を聞いて欲しいと男は言う。女性は奇妙な男だと思ったが悪い人ではなさそうだ。宿で男の話を聞いてやることにした。★男は生い立ちから、召集さ...浅田次郎「帰郷」
★近隣の小中学校は今日が終業式。「あゆみ(成績表)」はどうだっただろうか。明日からの春休み、事故なく過ごしてほしいものだ。塾では春期講座が始まる。★さて今日は、柳広司さんの「ジョーカー・ゲーム」(角川文庫)から「幽霊」を読んだ。★日中戦争が泥沼化する昭和15年頃。陸軍参謀本部は、皇紀2600年の記念祝典で爆弾テロが起こるとの情報を得た。どの集団がこの計画を立て、実行しようとしているのか。背後にイギリス総領事の影がちらつき、その真偽を探るため、スパイ組織「D機関」が動き出す。★D機関のエージェントはテーラーに勤める蒲生次郎という人物になりすまし、総領事の公邸に入り込む。総領事は白か黒か。この判断を間違えば、日英間の外交問題、更には戦争にも発展しかねない。★物証を得るため、ある夜、蒲生次郎は領事館に忍び込む。...柳広司「幽霊」
★今日も好天、洗濯日和。朝は早めに起きたのに、ボーっとしている内にもう夕方が迫っている。★今日できたこと。洗濯、風呂のカビ掃除、春期講座の予約表作成、昼食の買い物。これだけかぁ。★これからすべきこと。明日の授業の準備。春期講座の準備。新年度に向けた問題集の入れ替え。今年は中学校の教科書が改訂になったから、すべて入れ替えだ。少しずつ衣替えもしなければ。★今日は、宮本輝さんの「真夏の犬」(文春文庫)から表題作を読んだ。昭和37年の大阪が舞台。主人公は少年。彼の父親は事業を興しては失敗し、借金まみれの日々が続いている。それがどういう風の吹き回しか、父親が大金を持って帰ってきた。★知り合いがカネを出し合い広い敷地を借り、そこに解体のために廃車をプールする仕事を見つけたという。久々に輝く夫に、主人公の母親も幸せそう...宮本輝「真夏の犬」
★トランプ氏暗殺未遂事件。AP通信社の撮ったコブシを上げるトランプ氏の姿が印象的だ。今回の事件、あまりにできすぎているので、陰謀説も飛び交っているとか。★これからの4年間。世界はどう動いていくのやら。★さて京都は祇園祭も終わり、それを契機に、夏が来たようだ。連日35度を超えるような猛暑。スタミナをつけて乗り越えねば。★今日は、立松和平さんの「卵洗い」(講談社文芸文庫)から「白日夢」を読んだ。「卵洗い」は連作短編集。戦後まだ遠くない時期、母親が経営する小さな食料品店に出入りする人々の姿を少年の視線で描いている。★少年の家には良い水が湧く井戸があり、近所の女性が水をもらいに訪れていた。その女性が自ら命を絶った。少年には複雑なことはわからないが、彼女の葬式を巡り、近所の婦人たちが母親と話す姿を描いている。★この...立松和平「白日夢」
★トランプ大統領銃撃事件には驚いた。背後関係はよくわからないが、この事件が今後どのように尾を引くかが気がかりだ。★映画「ロストクライム閃光」(2010年)を観た。永瀬隼介さんの原作を読んでいたので内容は知っていた。「3億円事件」の真相の新解釈。犯人は単独犯ではなかった。迷宮入りの背後には警察の隠ぺい工作があったという。★原作の方が重厚で、映像化に当たって端折っている場面が多い。それはともかく、奥田瑛二さん演じる老刑事と渡辺大さん演じる若手刑事のやりとりは良かった。★読書は短い作品、吉村昭さんの「遠い幻影」(文春文庫)から「夾竹桃」を読んだ。作家らしき男性の家で家事を手伝っていた房子という女性。彼女は父親の存在を知らない。軍関係の仕事をしていたというが、名前も明らかでないので調べようがない。しかし、彼女は執...吉村昭「夾竹桃」
★1学期も終盤。小中学校では授業を昼までにして、三者面談(中学校)やら懇談会(小学校)が開かれている。限られた時間の中で、保護者と教員が何を話すのか。話を聞くと、様々な思惑が飛び交っている様子。★教員はホンネをオブラートで包んだような型通りの「報告」をし、保護者は教員を鋭く評価する。保護者よりも教員が年下なら、厳しい評価もあるとか。教員の覚悟と専門性が試される場面だ。★さて今日は、柚月裕子さんの「蟻の菜園」(角川文庫)を読み終えた。★ある連続不審死事件。結婚詐欺の嫌疑をかけられた女性にはアリバイがあった。この事件に興味を持ったライターが取材を進めると、そこには数十年にもわたる思いもよらない真実が隠されていた。★事件の背後にある児童虐待の実態。犯行を憎みつつも、犯人の境遇には同情を禁じえない。★警察も行政も...柚月裕子「蟻の菜園」
★昨日、7月10日は近くのお寺「円蔵院」の金毘羅祭り。宇治中心部で行われる「あがた祭り」に比べれば相当小規模なものだが、小中学生たちにとってはちょうどよい規模のお祭り。おかげで、昨夜の授業は開店休業。★空いた時間で、映画「JSA」と「大統領の理髪師」を観た。★「JSA」(2000年)は、イ・ビョンホン、ソン・ガンホとその後の韓国映画界のスターが若い頃の作品。★「大統領の理髪師」(2004年)は、「JSA」にも出演したソン・ガンホが主役。コミカルな面を見せながら、政変に翻弄されるある理髪師の家族を描いていた。★「大統領・・・」といえば、「大統領の執事の涙」を思い起こす。歴代のアメリカ大統領に仕えた執事の物語だった。★そういえば、アメリカ大統領選の行方は如何に。高齢のバイデン氏への風当たりは強く、戦っても戦わ...映画「大統領の理髪師」
★7月2日、5年に1度、運転免許証の更新。以前は伏見区の羽束師にある運転免許試験場での更新だったため、半日は手続きにつぶれたが、京都駅までに更新できるようになって便利になった。★最近はめっきり出不精になってしまったので、およそ1年ぶりの京都駅。海外客の多さにびっくりする。★ここ数日は映画「陸軍中野学校」シリーズを観ている。今までも何度か観たが、日本のスパイものはこのシリーズが面白い。作品の魅力は何といっても市川雷蔵さんだ。「眠狂四郎」と合わせて観てみたい。★韓国映画や中国映画でも言えるが、スパイものが描かれる時代は不幸な時代なのだろう。★さて暑さで読書が進まない。★今読んでいるのは、柚月裕子「蟻の菜園」(角川文庫)、角田光代「方舟を燃やす」(新潮社)、垣根涼介「信長の原理」(角川文庫)、荻原浩「噂」(新潮...映画「陸軍中野学校」
★この前はスパイを扱った韓国映画を続けて観たが、昨日から今日にかけて、アクション満載の中国映画を2本観た。★まずは、「崖上のスパイ」。日本が満州を支配していた時代。ソビエトで特殊な訓練を受けた工作員たちが密かに中国に侵入する。ミッションはある「同志」を救出すること。★誰が敵か味方かわからない。腹の探り合いのハラハラ感が見どころだ。拷問シーンは残酷だが、アクションシーンは面白い。★ロシア語で「夜明け」を意味する作戦。その遂行に多くの人が死んでいく。映像の背後に流れる音楽が切ない。★続いてみたのが「ヘリオス赤い諜報戦」。韓国の小型核兵器が謎の犯罪集団「ヘリオス」に奪われる。どうやら彼らはこの兵器を売りに出すようだ。★韓国のエージェント、香港警察、中国の公安がけん制しあいながら、「ヘリオス」と奪われた兵器を追う...映画「崖上のスパイ」
★菅元総理の発言が話題になっている。岸田内閣に引導を渡すのか。★「引導」ということで、今日は水上勉さんの「雁の寺」(「雁の寺・越前竹人形」新潮文庫所収)を読み終えた。★京都洛西の孤峯庵には、画師・岸本南嶽による雁の襖絵がある。その南嶽が死に、彼と馴染みのあった女性・里子を孤峯庵の慈海和尚が引き取るところから物語が始まる。★昭和初期の話とはいいながら、当時の僧侶は戒律を蔑ろにし、飲酒するは、愛人を囲うはと乱れている。慈海もまた酒に溺れ、夜ごと里子との肉欲に溺れていた。★孤峯庵には一人の小僧がいた。名を慈念という。家庭環境に恵まれず、北陸からこの寺にやってきて、中学に通いつつ、僧侶への修行をしながら、寺の雑務を担っている。★和尚とその愛人の女性、そして小僧という不思議な構図で話が進む。★ある日、和尚が失踪する...水上勉「雁の寺」
★去年の夏は「新しい学校のリーダーズ」の首振りダンスが流行り、ちょっと前までは「ビングバングバングボーン」や「カンカンダンス」、そして今は「たんたんふるふる」と若い人たちの流行は目が回るようだ。★若い人相手の仕事なので、時代遅れにならないように努めねば。★さて中学校の期末テストが終わり、次は高校の期末テスト。それが終われば、夏期講座だ。今年も受験勉強が始まる。★今日は短い作品、芥川龍之介の「仙人」(「蜘蛛の糸・杜子春」新潮文庫所収)を読んだ。★大阪を舞台にした話。権助という男が口入れ屋を訪れる。男は仙人になれる奉公を求めているという。呆気にとられた口入れ屋。しかし、「よろず口入れ」という暖簾を嘘にはできない。なんとかならないかと考え、ある医者の家に仕事を見つける。★奉公先を見つけてもらい喜んだ権助。医者の...芥川龍之介「仙人」
★今年は梅雨入りが遅れているという。6月は「水無月」ともいう。旧暦とはいえ「水がない月」とはどういうことか。語源は諸説あるようだが、「無」が当てられている「な」は「の」が転じたものだというのが有力だそうだ。「水無月」は「水の月」だという。★京都では氷を模したういろうに小豆を乗せた和菓子が出回る。じめじめした季節にちょっとした清涼感が漂う。★さて今日は、立松和平さんの「卵洗い」(講談社文芸文庫)から「蛍の熱」を読んだ。昭和20年代の田園地帯には多くのホタルが夜ごとほのかな光を放っていたそうだ。★「卵洗い」は、父親の実家に住む少年の目で当時の暮らしを描いている。母親は食料品店を営み、卵がヒット商品になっている。父親は近所の農家を訪れては、卵を仕入れてくる。★「蛍の熱」は蛍狩りをし、家に持ち帰った家族の静かな就...立松和平「蛍の熱」
★中学校の期末試験対策2日目。今日は来る生徒が少なく、少々期待外れ。★空いた時間を利用して、髙村薫さんの「李歐」(講談社文庫)を読み終えた。★時代に翻弄されるある男性の物語。宿縁とでもいえそうな人々が絡み合い、大阪の町工場からアジア、世界まで大きく広がる物語だった。★父母が仲違いをして東京から大阪に移り住んだ母子。幼子は近所の町工場を遊び場とし成長する。子が成長すると母親は彼を残してある男性と中国に去る。★子は大学生となり、ナイトクラブでボーイとして働く。そこで殺人事件に巻き込まれるとともに、美しい容姿を持つ殺し屋・李歐と出会う。★李歐は再会する約束をして日本を去る。男性は罪を背負って服役する。刑期を終えた男性は町工場を引き継ぎ、李歐との再会の日を待つ。★それから15年。男性は幼なじみの女性と結婚し、子に...髙村薫「李歐」
★中学校の期末テストまで6日。今日と明日はその対策講座に追われる。★社会科はどの学年も「時事問題」が出題される。さて、この2か月はあまり大きなニュースはなかったなぁ。「政治資金規正法」改正とか、「太陽フレア」とか、郵便料金の値上げとか、「定額減税」「合計特殊出生率」が過去最低の1.20に下落したとか、新幹線の点検車「ドクターイエロー」が引退するとか、カメムシが大量発生しているとか、そんなところだろうか。★世界経済フォーラムの世界の男女格差調査で、日本が146か国中118位というのもあった。「ジェンダーギャップ」。★ということで、今なお男性が幅を利かす警察官の社会。横山秀夫さんの「陰の季節」(文春文庫)から「黒い線」を読んだ。★ある県警。わずか48人の女性警察官の適正配置を巡って、女性管理職(いちいち女性と...横山秀夫「黒い線」
★映画「前科者」を途中まで観た。授業が終わったら残りを見よう。先日、滋賀県で保護司が殺害されるという事件があったが、「前科者」では有村架純さんが演じる保護司が活躍する。★保護司とは、仮釈放中の受刑者の更生を支援する非常勤の国家公務員で、ボランティアのため無報酬だという。民生委員もそうだが、無報酬でも社会の役に立とうという人がいることに驚いた。★さて、警察小説つながりで、今日は佐々木譲さんの「廃墟に乞う」(文春文庫)から「博労沢の殺人」を読んだ。★17年前のある殺人事件。被疑者に限りなく近かったが決め手となる物証がなく逮捕に至らなかった牧場主。その人物が何者かに撲殺された。★かつての捜査に新米刑事として関わり、現在は休職中の仙道刑事が事件の真相に迫る。☆いよいよ、中学校の期末テストまであと1週間。久々に忙し...佐々木譲「博労沢の殺人」
★韓国映画は今日も1作。ハ・ジョンウ主演の「哀しき獣」(2010年)を観た。北朝鮮と中国の国境地帯、その朝鮮族居住区でタクシーの運転手をしている男が主人公。多額の借金を抱え、妻は韓国に出稼ぎ。借金を返すために男は仕事を引き受ける。それは韓国である男を殺すというもの。★男は韓国に密入国できたのだが、思わぬバトルに巻き込まれる。★さて、堂場瞬一さんの「検証捜査」(集英社文庫)を読み終えた。連続婦女暴行殺人事件の犯人として逮捕され、公判にかけられた男に無罪の判決が言い渡される。捜査を担当したのは神奈川県警。冤罪事件となったことを受け、捜査に問題はなかったのか、検察庁は各地の警察官を集め検証チームを編成する。★主人公は警視庁に籍を置く神谷警部補。警視庁管内で起こった婦女暴行事件での強引な捜査を責められ、離島の警察...堂場瞬一「検証捜査」
★夏を感じる気候。暑いが、洗濯物が早く乾いてありがたい。明日は下り坂とか。★さて読書の方は、堂場瞬一さんの「検証捜査」(集英社文庫)がもう少しで読み終わる。★この3日間で韓国映画を3本観た。★1本目は、「サスペクト哀しき容疑者」。殺された妻の仇をとるため脱北した元「北」のエリート工作員。復讐の機会をうかがっていたが、ある殺人事件に遭遇し、濡れ衣を着せられ追跡される羽目に。容疑者チ・ドンチョルと彼を追うミン・セフン大佐。これに対北情報局室長の不正が絡んで・・・という話だった。★チ・ドンチョル役のコン・ユが良い感じだ。★2本目は、「ベルリンファイル」。2度目か3度目の視聴。「北」のエージェントと「南」のエージェントがベルリンを舞台に、ある時は対立し、ある時は協力する。事件の背景には「北」の権力争いが絡んでいた...韓国映画
★今日は宇治のあがた祭り。塾生は祭りに興じているらしく、塾は開店休業。★時間が空いたので、垣根亮介さんの「室町無頼」下巻(新潮文庫)を読み終えた。面白かった。★室町時代後期。幕府の権威は落ち、民は支配者たちの重税に窮していた。そんな時代、京に二人の豪傑がいた。1人は稲荷大社を拠点に、弱体化した幕府に変わって町の治安をあずかる無頼の頭、道賢。もう1人は、向日神社を拠点とする無頼の頭、兵衛。立場を異にするも豪傑は相通じるものがあると見えて、お互いの腕と才を認め合う関係だった。★そしてもう1人。家族に恵まれず、幼いころから棒振りで糊口をしのぎ、棒術の際に恵まれやがては土倉の用心棒となる才蔵という男。★道賢の一味が土倉を襲った際、道賢は気まぐれか、あるいは才蔵に何かを感じたのか、彼の命を助ける。そしてその身柄をラ...垣根涼介「室町無頼下」
★曇り空。突然晴れたかと思うと、雷が鳴って激しい雨。こんな日は鬱になる。★昨日は英検。今日は、期末テスト前の静かな1日。静かすぎるのも何か物足りない。★さて、川村元気さんの「百花」(文春文庫)を読み終えた。母親と息子、息子は成長しレコード会社で働いている。同僚との恋が実り結婚。子も授かり出産目前。★そんな折、最愛の母親が認知症になった。日々薄れゆる母の記憶。消えてゆく人格。息子はその母に寄り添いながら、かつて二人が過ごした日々を振り返る。★母親にも辛い時期があったようだ。幼いひとり息子を残して1年間失踪。息子は祖母に救いを求め、過ごす。ふと帰ってきた母親と息子。息子は問い詰めもせず、母も何も語らない。ただそれ以降、母親は息子により一層愛情を注ぐ。★記憶を失い、幼児に戻ったかのような母親を見るのは息子として...川村元気「百花」
★午前10時ごろ大雨警報が発令され、小中学校では生徒たちが授業を切り上げ帰宅。★小学生の中には、家に家族がいない場合も多く、その場合は学校での待機となる。学校待機の児童は午後5時までに保護者が迎えに来ることになっているが、このあたりの確認等が煩雑で、学校は大忙しのようだ。★私の地域では、想定よりも雨が少なく、まずは一安心。塾も平常通りだ。★このシーズンは修学旅行も多く、このことも気をもむ。近隣の中学校では日曜日から今日までが日程で、今日は行事を切り上げての帰宅だったという。★うちの近くには2つの小学校があるが、1校は今週末、もう1校は来週末が日程になっている。仕方ないとはいえ、天候が気がかりだ。★さて、森見登美彦さんの「熱帯」(文春文庫)を駆け足で読んだ。ある人々たちが断片の記憶しかもっていない「熱帯」と...森見登美彦「熱帯」
★定額減税が始まるらしいが、電気代の40%以上(関西電力)も上がるから、結局は相殺かあるいは持ち出しだ。政府与党としては次期総選挙の目玉と位置付けていたようだが、焼け石に水だね。★以前から古物買取(ほとんど押し買い)の電話はたびたびかかってきたが、今日は「総務省」を名乗る不審な電話がかかってきた。「あと数時間であらゆる通信機器が使えなくなるとか」。どう考えても詐欺なので、早々に切断。そもそも奇妙な電話番号からかかってきたから怪しかった。★高齢者を狙った詐欺が頻発しているとかで、先日近隣の交番から注意を喚起する電話があった。しかし、こんな電話も善し悪しだ。今の世の中「警察官」を名乗っても鵜呑みにしてはいけない。詐欺の手口も巧妙になり、まさか自分がという被害も後を絶たないようだ。★さて読書は、長編ばかり読んで...大江健三郎「生きることの習慣」
★今日は天気が悪かったので、家で映画を観る。「エンド・オブ・キングダム」と「エンド・オブ・ステイツ」。どちらも不死身(?)のシークレット・サービスがテロ集団相手に活躍するヒーローもの。★「エンド・オブ・キングダム」の方が面白かった。イギリスの首相が就寝中に急死。その国葬にアメリカ、フランス、ドイツ、イタリア、カナダなど主要国の首脳が参列する。その時、インフラや警察が乗っ取ったテロ集団(ほぼ軍隊組織)が首脳たちを襲撃する。アメリカ大統領を除く首脳はこぞって死亡。ロンドンの街はあちこちが爆破される。★テロの原因は、かつてアメリカが行った作戦で身内を殺害された武器商人の復讐。★アメリカの大統領だけが助かるというのは、アメリカ映画だからか。しかも、この大統領は勇敢で、シークレット・サービスと共に武器を持って戦う。...安東能明「内通者」
★近隣の中学校では1学期の中間テストがない。塾としては対策講座を開かなくてよいので助かるが、しわ寄せが期末テストにきて、やたらテスト範囲が広くなって困る。★それはそうと教員不足が深刻だ。地元の学校での何とか数合わせをしているが、不足分は常勤講師に頼っている。採用1年目で中学2年生を担任する場合もある。★常勤講師は新学期早々生徒からの反発にあい、「授業が分からない」と騒ぐ生徒で学級崩壊寸前のようだ。新任の教員は何とか頑張っているようだが、こちらも「だんだん授業がわからなくなってきた」というのが生徒の談。管理職が手薄なのも心細い。★教育ニーズが多様化、個々への対応が煩雑になるなかで、教員の仕事はますます過酷になっている。教員の権威が低下し、父母や生徒からの直接的な(時には理不尽な)批判にさらされるのも気の毒だ...吉村昭「尾行」