プロローグ（終）

突如出現した浮遊物の連中は、一秒たりとも同じ場所に留まることなく旋回を続けた。しかも、それぞれが半透明でときには重なり合ったりもするために、その一枚一枚をクリ…

プロローグ③

仕事の関係でミュンヘンに移り住み、一度の中断を挟んで十年。帰国フライトの前日、住み慣れた街での最後の夜を、僕は旅行者たちと同じホテルの屋根の下で過ごしていた。…

プロローグ②

夏至が近いその夜、二十三時を回っているというのに、ミュンヘンの空には藍色の墨を落としたように日中の名残りがまだうっすらと残っている。湿度は低く、日中の暑さが嘘…

プロローグ①

世界最大のビール祭りオクトーバーフェストで知られる、ドイツ南部の国際的文化都市ミュンヘン。そんなミュンヘンの中心、マリエン広場から数百メートルほど東に抜けた場…