清(きよし)ひかるといいます。古希を超えたじいさんです。元気ですと言いたいのですが、フレイルじいさんです。持病で失語症がありリハビリを兼ねて短歌、俳句などを懸命に作っています。
釣り人よ知れ、魚にも痛みあり死の恐怖あり血潮あることを
君の顔、吾の記憶も薄れたり。たった一枚残る写真よ
誰もみな仮面の顔で降りる駅、改札通るとおや?ヒトの顔
妻の出るファッションショーの会場はスーパー。観客は近所のおばさん
妻の出るファッションショーの会場はスーパー。観客は近所のおばさん
リビングで共に暮らしたベンジャミン四半世紀も何も応えず
腰下ろしゴミ置き場見る黒猫は今何思う、次どう動く?
カマキリの視線に一つの隙もなし季語 カマキリ→秋
崖っぷちすれすれたどる古希の秋※季語 秋
野菜にも可憐な花咲く秋の畑(はた) ※季語 秋
雪降れど雨降れど犬散歩する※季語 雪→冬
斑(はん)猫(みょう)よ吾はどちらに行くべきか季語 斑猫(はんみょう)→夏
蚊帳で遊び寝(い)ねし従兄弟たち今何処に季語 蚊帳→夏※寝(い)ぬ ナ行下二段活用 連用形 「ね」+助動詞(連用形に接続の過去の意「き」の連体形「し」)※やや字余り
花咲かぬ杏子(あんず)選べばただ苦労※季語 あんず(杏)→夏、花を言うときは杏子→春
雨に負け風にも負けたグラジオラス※グラジオラスは、風、雨に弱い花だが、今年は猛烈な暑さにも負けていた。※季語 グラジオラス→夏
あぢさゐは身近で見れば雑な色
気が付けば出窓に映る月天心季語 月→秋
あちこちに蜘蛛の囲ごとく病やまい出でぬ季語 蜘蛛の囲→夏
ゆらゆらと蔦伸ばす先空と梅※季語 蔦(つた)→三秋※ただ見る。即物的に、無機質的に。
草の花 犬が太れば 主ぬしも太る
人恋し叶わぬ時に金魚飼う※季語 金魚→夏
さよならも言わずに別れそれっきり※どこかで見たようなフレーズだが、言葉のリズムと流れはいいと思った。季語もないので作る意味がなかったかもしれない。
植えもせぬてっぽうゆりがあちこちに
夏空へ縺(もつ)れ、飛ぶかなアゲハ二羽
遠からず子を産む尻が連なりて通る女子高の正門を見つ※暗喩形で作った。
住み付いて仲良くなりぬハエ取りグモふと気がつけばスリッパで圧死
住み付いて仲良くなりぬハエ取りグモふと気がつけばスリッパで圧死
おしゃべりなこすずめたちが今無言。バードバスにてひとっ風呂
検査終え無言で座る病院の命向き合う待合室よ
懐かしき手帳開けば貼られたる 付箋紙剥がれ床に落ちたり
虹色に照らす行灯(あんどん)よ、迷うペスに我が家への道教えておくれ ※ペスは首輪を外して脱走するのが得意な奴だった。逃げると数日、戻って来ない放蕩息子だった。時には近くに戻っているくせに私が声をかけると、一目散にまた逃げ出すということもあった。それを
あんな貸家でおまえと出会ったのは奇遇としか言えない。あの朝、あの時、僕が雨戸を開けなかったら、あるいはおまえが数分早く庭を通り過ぎていたら、出会うことはなかった。一緒に暮らすことにもならなかった。出会いって不思議なものだ。 独りぼっちのおまえと僕
見知らぬ女性が連れている柴犬にいきなりまつわり付かれた。怒って吠えられたわけではない。懐かしい以前の飼い主と路上で偶然出会ったように。飼い主の女性も驚いて犬を私から引き離して、謝りながら去っていった。いつまでも柴犬はこちらを見つめ続けている。
ぺスは寄り道が大好きで、うっかり首輪が外れでもしたら、逃げ出していつまでたっても帰ってこなかったものだ。だから、生まれ変わってくるときは、僕の家を間違えずに訪ねて来い、とあれだけ言っておいたのに、どうして訪ねてこないのか。もっと住みやすいところで、いい
居酒屋の喧騒のなか、つと目覚めぐずる少女のふたへまぶたかな ※「つと」=急に、突然に ※まだ仕事をしていたころのことだ。それ、仕事納め会だ、忘年会、新年会などと事あるごとに飲み会が催された時代のことだ。その催しに子連れで出席する女性がいた。共働
ひぢえくぼいくつも並び降(お)り下(くだ)る真夏の夜の駅(えき)階段かな ※「ひじえくぼ」とは男でも女性でも年を隠せられない部分だ。後ろ姿全体に油断は禁物だが、意外に気が緩むのが夏の「ひじえくぼ」だと、私は思う。
ここがふるさと?我が庭ではためき、飛ぶアゲハ蝶二羽手を捧げると、突然真夏の空の中へ消えて行ってしまった
ここがふるさと?我が庭ではためき、飛ぶアゲハ蝶二羽手を捧げると、突然真夏の空の中へ消えて行ってしまった ※私の前を飛ぶアゲハは、我が家に立つ柚子(ゆず)の葉の裏で生まれた。庭の中の樹木も草も花も、彼にとっては幼虫の頃から知り尽くした遊び場だ
おじさん、と声、喉まできて手を降ろす。まぼろしがまた過ぎ通り過ぎてゆく
おじさん、と声、喉まできて手を降ろす。まぼろしがまた過ぎ通り過ぎてゆく ※道を歩いていたら、バイクで後ろから追い抜いて行った人がいた。エンジン音に聞き覚えがあった。Tおじさんのバイクだ。後ろから目で追うと、低い座席と作業着の後ろ姿。間違いない。「お
雷鳴で笑った後に死ぬ男 季語 雷鳴→夏 ※今年の梅雨前線の影響で私の地域に落雷があった。地響きが起こるほどの衝撃だった。落雷自体で被害者が出ることはなかったが、近所で救急車が来る騒ぎがあった。音にびっくりして老人が気分が悪くなったらしい。現実には
ほおずきのようにむくれるガキの頬(ほお透明のガラス風鈴揺らす風 季語 ほおずき、風鈴→夏 ※東京を離れてからは浅草寺を訪ねる機会は激減したが、それでも正月だけはお札をもらいに母と一緒に出かけていたものだ。それも母が亡くなってからは本当に足が遠くな
プールではボンレスハムになる娘(こ)たち ※季語 プール→夏※これは、暗喩法。直喩ではないので注意
夢想家は不眠症にて夢見えず ※季語がないから俳句でなくて川柳か。川柳としてもキレが悪くてヒザポンはもらえそうもない。※話は違うが、デイドリーム(白昼夢)という言葉があるが、私もだいぶ年を取ってきて、昼間、起きているときに夢ばかり追っている、俄か夢想家に
川岸に咲くカンナ数本。暴風にあおられようとも倒れずに立つ ※カンナは遠目で見るときれいな花だ。近づくと葉も花も繊細な風情が見られない。ガサツな花だ。そのせいか、あまり家庭の庭では見られない気がする。田畑の畦道とか川や海の岸辺にごそっとまとまって咲く
水際で吾(われ)のあしあと消えるまで見続けていた夏休みの日々※季節構わず波打ち際をペタペタ裸足で歩くのが好きだった、子供のころ。あのヒヤッとした感触が好きだったのだ。
どうしてもこれぐらいしか浮かばない。我が人生のエピソードなど
どうしてもこれぐらいしか浮かばない。我が人生のエピソードなどやり直しはいつでも出来ると言うけれど古希越えれば 糊しろわずか真実の心を隠し続け半世紀。あとはただ消えてゆくのみ※私のこの種の歌にはいつも鬱が漂っている。前向きに生きて詠もうとは心掛けているのだ
夏の日に風呂場に紛れ込んだ蜘蛛。何日も食えず今朝ついに餓死※我が家には時々侵入者が入ってくる。多いのが「おおぐも(アシダカグモ)」、「ゴキブリ」、「ムカデ」、「蚊」など。これらが入れば、すぐに戦争が始まる。これらに対して居住を許される者たちがいる。「ハエ
土砂降りの大雨の中マラソンの練習するや約二三人※よりによって暴風雨の日に皇居の周りでジョギングする人がいる。これは一種の強迫観念か。
居酒屋で食う焼き茄子の甘にがさ季語 茄子→夏※仕事帰りに同僚と入る店は新橋のあの居酒屋と決まっていた。酒が苦手な私もこの店で出される料理はうまかったので断らなかった。特に魚系、冷ややっこ、厚揚げなど絶品だった。もう食えないのかなあ。
しっとりと海苔が張り付くおにぎりが好き。と言う君の唇に海苔※そういえば母の作るおにぎりは、たいがい海苔がぴったりと張り付いたのか、塩にぎりだったな。具はどっちも梅干しの簡単なもの。運動会の時も海水浴に行った時もそうだった。でも妙にうまかった記憶がある。
白牡丹てんとむしの描かく赤と黒※季語 てんとむし→夏 中七字余り※私の家には牡丹の木が3本ある。花の色は赤、黄と白の3色。特に白は八重でも花びらの重なりが少なくて一枚一枚を広げて上品に咲いてくれる。まさに無垢の白いキャンバスを開くようだ。そのキャンバスにい
首揺らし媚びを売るなよ鹿の子ユリ季語 ユリ→夏※実は近所にこのユリを道路際に何本も咲かせる大きな家があるんです。風が強いときは揺れて身体に触りそうになるんです。ユリって結構花粉が付くんですよね。色が派手なピンクなので、鹿の子ユリに間違いないと思います。そ
ひなたぼこ猫がまどろむ窓辺かな季語 ひなたぼこ→冬※昔は何匹も猫を飼っていた。子どものころから一人ぼっちの私にとって、猫たちは数少ない心を許せる友達だった。もうみんな逝ってしまって誰もいない。出窓の陽だまりを見ると、私の記憶の中にだけ生きている猫たちが映
背中からのけ反ってから次緩ゆるむ。わが猫の寝る前のルーチン※猫とはよく寝る動物だ。しかし、残念ながら飼い猫の場合と注釈しなければならない。我が家で飼っていた猫たちもこのルーチンを経て、眠りだしたものだった。
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