このたび、 ファンタジー系のAIイラスト集 『ファンタジア Fantasia』 をアマゾン独占で新発売いたしました! 幻想、神仏、 怪物、悪魔、 幽霊、天使 の6つの章からなる140ページ超えの1冊です。 アマゾン独占販売なので、 キンドル アンリミテッドの方は無料でご覧になれます。 ホラーやオカルト、RPGやファンタジー系がお好きな方に 楽しんでいただけるかと思います(*^-^*) どうぞよ…
どうでもいいこと、ペット、エンタメ全般、不思議な話、思ったことを言ってます。
普段は電子書籍で「すきま怪談」シリーズなどを書いていますが、ブログでは,どなたにも気軽に楽しんでもらえるブログを目指しています。
ファンタジー系 AIイラスト集 『 ファンタジア Fantasia 』 新発売しました!
このたび、 ファンタジー系のAIイラスト集 『ファンタジア Fantasia』 をアマゾン独占で新発売いたしました! 幻想、神仏、 怪物、悪魔、 幽霊、天使 の6つの章からなる140ページ超えの1冊です。 アマゾン独占販売なので、 キンドル アンリミテッドの方は無料でご覧になれます。 ホラーやオカルト、RPGやファンタジー系がお好きな方に 楽しんでいただけるかと思います(*^-^*) どうぞよ…
先日 『私はネコが嫌いだ』 という絵本を購入しました。
ネコの惑星 PLANET OF THE CATS ~ゆめみるネコたち AIイラスト集
このたびアマゾン独占で 『ネコの惑星 PLANET OF THE CATS ~ゆめみるネコたち』 というAIイラスト集を販売いたしました! かわいいネコやゆかいなネコ 人間みたいなネコやちょっと怖いネコなど ネコ好きはもちろん、他の動物が好きな方にも楽しんでいただけると思います。 140ページ超で、 Kindle Unlimitedの方は無料です! ご興味のある方はどうぞごらんください(*'ω'*)
十代のころ 女友だちから聞いた、 体調悪くて寝込んでると 枕もとで 大きい箱の中から すこし小さい箱をだして その箱からまた すこし小さい箱を出していって 一番小さい箱が出ると こんどは順序を逆にして 大きな箱に入れていく 知らないおばあさんが座ってる夢を見るんだよ って話、 聞かせてくれた相手の顔はもう思いださないのに 古いタンスがある せま…
2023年が 関東大震災から100年らしいけど あのとき 朝鮮人虐殺事件ってあったの知ってる? メディアではほとんどあつかわないけど、 地震のあと井戸に毒を入れたとか 地震を起こしたのは朝鮮人だ っていう トンデモ説を信じた人たちが起こした事件。 昔ね、ひいばあちゃんが 早朝に表を掃いてたら 知らない男の人が来て 「助けてください」 って言うんだっ…
古書店でみつけた 10年ほど前の本ですが 幽霊画などが掲載されているので 購入してみました。 それでは内容…
先日、ポケモンカード151をゲットしました! ダメもとで抽選販売に登録したのが当選したんです!
このたび、電子書籍で 「結界病棟」 を新発売いたしました! 世界は呪いであふれているーー。 さまざまな呪いに悩む患者たちが 専門医・円了慎吾のもとに今日もやってくる。 有名怪談、都市伝説をベースに 呪われた運命を切り拓く、長編ホラー小説です。 退屈なとき、 眠れない夜、 ポイント消化にどうぞ(*'ω'*)
このたび、 令和鬼談 シリーズの第3巻、白を新発売いたしました! とあるバイク事故の原因 「桜の花が咲くころ」。 いじめられっ子を救う 「かみさま」。 恋人どうしの通話中に起きた怪異 「そっちとこっち」。 ほか、 「カナシイノオハカ」 「顔」 「闇堕ち」 など、 あなたの日常にねじ込む、怪談集です。 退屈なとき、 眠れない夜、 ポイ…
このたび、 『ネコいぬ怪談』を販売開始しました! 人間よりもするどい感覚をもつといわれる動物。 その中でも人のすぐそばによりそいくらしているネコやイヌたち。 そんな彼らに、身のまわりでおきた怪異についてはなしを聞かせてもらった―― ――という、変わり種の怪談集です。 もともとは『わんにゃん怪談』というタイトルでしたが、 電子書籍化する際に 『ネコいぬ怪談』に変更い…
ごらんになってわかるように、わたしには右目がありません。 生まれつき、なかったんです。 それに、体毛の色がきれいではありません。 ふぞろいのまだらで、清潔感のない毛柄をしています。 そのせいか母親にも愛されず、兄弟たちにもうとまれて、家族の輪からすこしはなれた場所にいて、いつもひとりでいました。 ある日、わたしたち家族は人間たちに施設に連れていかれ、保護ネコとしてくらすこ…
パグ犬のすずちゃんが住んでいるのは、地方都市の一軒家だ。 すずちゃんをかわいがってくれる60代の旦那さんと奥さんは、これまで自営業をしていたが、年齢的なこともあり息子にあとをつがせた。 そして自分たちは悠々自適な老後をすごすつもりでいた。 そんなすずちゃんの家の敷地内には、アパートが一棟建っていた。 築年数もそうとうで、耐震化もしていないボロボロのアパートなので、最後の住人の…
ネコのみぃちゃんから話をうかがった。 「保護ネコだったわたしを引きとってくれたママさんはね、子供のころからふしぎな能力があるそうなんですよ。ほら、死んだ人が見える、霊能力ってやつ」 そんなママさんが、とある夏の日、近所に住んでるミヨさんとかき氷を食べに行った。 すると、二十代前半くらいの若い女の子がひとりで座っていたという。 店のすみで、うつむいて、さみしそうにかき氷食べて…
東海地方のとある町に住む、ノラネコのセナくんにこんな話を聞いた。 「オレの縄張りの中にな、ゴミ屋敷があったんだよ」 そこには七十歳をすぎた男性がひとりで住んでいたという。 どこかからもち帰った空き缶や粗大ゴミが室内や庭にあふれかえっていて、悪臭や害虫、ネズミなどが多く発生する原因になっていた。 さらにはそのゴミが敷地の外にもはみでていて、通行人の邪魔になっている。 近く…
北関東に住む柴犬のハッピーくんにうかがった話だ。 ハッピーくんのご主人であるK田さんは40代の終わりに脱サラし、数年の修行のあと、県道沿いで日本ソバ屋を経営しはじめた。 オープンはじめのころは勝手がわからず、とまどいながら四苦八苦した。 だが家族の協力もあり、今ではなんとか軌道に乗り、他県からの客もおとずれるようになった。 そんなK田さんがハッピーくんの散歩がてら、店で使う山菜…
座敷犬のタロウくんは、50代の夫婦といっしょにくらしている。 畳に座る旦那さんの左側がタロウくんの定位置だ。 そこでごろりと寝ころがり、旦那さんにあまえる。 なぜ旦那さんの左側なのか。 それにはこんな理由があった。 ある日、旦那さんが取引先にむかう途中、駅前でタクシーに乗った。 ロータリーをでたあたりで、足もとに茶封筒が落ちているのに気づいた。 そっとひろいあげ、…
ある日の早朝。 マンションでくらしているヨークシャーテリアのテリーくんが自分のベッドで丸くなって眠っていると、ママさんが青い顔でかけこんできた。 そして、 「――あなたッ! ねぇ、あなたッ!」 荒い呼吸でパパさんをゆりおこしている。 「なんだよぉ、どうしたんだよ」 まだ眠いようで、ぼんやりしたまま、むにゃむにゃと返事をする。 この日、ママさんは早い時間から用…
新宿でノラ猫をしている、シロくんにうかがった。 「あれは年末のころでね、だんだん夜が冷えてきたころだったよ。人間たちがボーネンカイとかいう集まりをよくしてたな」 路地裏の屋根の上にいて、人の往来をながめていたのだという。 「マタタビでも決めてんのか? っていう感じのサラリーマンの男がフラフラ歩いてきたんだよ。立ちションでもしようとしてたみたいなんだけどさ」 すると路地の…
とある地方都市で座敷犬としてくらしている、トイプードルのケイちゃんに聞いた。 ケイちゃんの飼い主である四十代のY美さんは、体調を崩した義父のために、介護ベッドをレンタルした。 やってきたのは最高級のフランス製ベッドだった。 義父も大変よろこんでくれた。 しかし翌朝、 「もうこんなベッドには寝たくないッ!」 といいだした。 理由を聞くと、 「夜のあいだ、誰か…
飼い猫のライくんが聞かせてくれた話である。 ライくんの飼い主は二十代後半の男性で、ものしずかなサラリーマンだ。 大のネコ好きであったから、念願のペット可のアパートに住んだのを機会に、保護ネコとしてライくんをむかえいれた。 男性は昼間、仕事で部屋をあけていて退屈なのだが、帰宅するとグリングリン頭をこすりつけ、これでもかというくらい飼い主に甘える。 そんなある日のことだった。 …
これは、東京都の北区に住む、地域ネコのハナちゃんに聞いた話だ。 「あれはね、夏の終わりが近づいてきたころだったわね」 昼間はまだ暑かったが、朝晩には涼しい風が吹き、ずいぶんすごしやすくなってきた。 そんなある夜のこと、ハナちゃんはブロック塀の上で香箱座りして目を閉じていた。 すると駅の方から、二十代と思われる人間のオスが歩いてきたのに気づいた。 「スマホとかってやつの…
人間よりもするどい感覚をもつといわれる動物。 その中でも人のすぐそばによりそいくらしている飼い犬、飼い猫、地域猫たち。 そんなワンちゃん、ネコちゃんに取材し、身のまわりでおきた怪異について聞かせてもらった。 変わり種の怪談集、どうぞご笑納ください。 〓
語らせ怪談#2 『ごいっしょに』 をアップしました! 女性の独白で、 「想像してほしい」 としゃべりかけてきます。 みじかい怪談ですので、 すぐにご覧ください ⇓ 語らせ怪談#2 『ごいっしょに』 また新作をアップしますので …
ずーっとほったらかしていた YouTubeチャンネルに、 数年ぶりにあたらしい動画をアップしました! その名も、 「語らせ怪談」です。 語るんじゃなく、語らせ? どゆこと? ってなりますよね。 この動画、じつはぜんぶ 「VOICEVOX」っていう音声ソフトで朗読してるんです。 つまり、人工音声に語らせるから、 「語らせ怪談」なんですね。 じゃあいったい どういう内容なのか…
深夜に片づけものしてたら HIDEの写真集 「無言激」 が出てきました。 ひさしぶりに見て、 才能とセンスのすごさに あらためて…
ユーチューブにチャンネルあっても 登録者&再生数がアップしない人を 地獄ユーチューバーって言ったりするけど もれなくボクもその地獄にいるんです。 それでも再生リストくらいないと 見づらいだろうと作ってみました。 https://youtube.com/playlist?list=PL2ZfOEv_WfVQcAjvtFAwpCVbw6oyLnGCD 「すきま怪談」というショート怪談が 40本ひとまとめです。 おヒマつぶしの一助になればさい…
最近話題のNFTに興味があったんですが 手数料が高くってふんぎりがつかなくて…。 でも、オープンシーというサイトで ポリゴンなる通貨?にして 値段設定すると 出品まで無料でできるらしく いろいろ調べて… …なんと出品できちゃいました! ややこしかったけど やればできるじゃん~ と自分で自分をほめまくりです。 テーマに沿って みっつのコレクションに分けてみました お…
あたりには夕闇が迫っている。 だがやはり、以前のような不気味さはなかった。 円了はカズミの背中をささえ、車の助手席に乗せた。 そして気分が落ちつくのを待つ。 ふしぎなもので、この場所でならふつうの人と変わらないコミュニケーションがとれる。 話すことはもちろん、ふれることもできる。 目の前のカズミが生霊であることを忘れてしまう。 円了はスマホを手にし、結衣に電話した。 「あ。…
ひと月後。 円了は茨城県にある、あの廃墟をながめていた。 入り口には立ち入り禁止のテープがはられている。 警察が現場確保のためにほどこしたものだろう。 よく晴れた正午であったが、冬の風が冷たかった。 遠くで鳥が鳴いている。 ここにはもう、まがまがしさや不気味な雰囲気は感じられなかった。 人身御供による結界が壊れたせいだろうか。 仁志潟親子の魂がいないせいだろうか。 それは…
室内に聞こえた声。 それが峰岸結衣のものだとすぐにわかった。 しかし円了は首をしめられていて返事ができない。 だが、すぐに結衣が仕切りカーテンの向こうから顔をだし、この現状を理解したようだった。 結衣のうしろからは、三人の男性看護師も飛びこんでくる。 そのうちの誰かが、 「引き離せッ!」 といい、三人同時に事務局長に飛びつく。 四人はそのまま、雪崩のようにベッドの下に落…
ぐらぐらと、はげしく体をゆさぶられている。 なんどもなんどもゆさぶられている。 同時に、 「――先生ッ! 先生ッ! しっかりしてくださいッ!」 と大声で呼びかけられているのにも気づいた。 円了がぼんやりしたまま目を開けると、見知った顔がこちらをのぞきこんでいる。 「じ、事務局長……?」 つぶやくように問いかける。 「だ、だいじょうぶですか?」 そうたずねられなが…
それはさっき、敏夫が円了との話に夢中になっているときだった。 兄の幸一がカズミに顔をよせ、 「……しっかりしろ」 ちいさな声で語りかけてきた。 とっさに兄を見る。 兄もこちらをじっと見ていた。 その目を見てカズミは安堵した。 容姿は粘土細工のようにすっかり変わってしまっている。 端正な面影はまったく残っていない。 だが、そのふたつの目は以前の兄の幸一そのものだった。 …
敏夫は円了の両目から、ズルズルと指を引きぬきながら、 「さぁ、先生。これでわれわれの事情もわかったでしょう……?」 とほほえみながら話しかけてくる。 指先には血液や粘液のようなものがからみ、ドロリと長い糸をひいている。 眼球と脳をグチャグチャいじられたダメージはあまりに大きかった。 そのため円了の意識は混濁していて、震えながらちいさくうなずくのがせいいっぱいだった。 「うぅ…
警察は、意識のない事故被害者の身元をたしかめたい、と一枚の写真を見せてきた。 それは頭部から血を流しているカズミの写真だった。 だが数年会っていないから顔がわからない、というふりをし、なんどか首をかしげたあと、急におもいだした演技をした。 それで教祖家族が、妻の入院の前に親子水入らずで食事をする計画をたてていた、と説明した。 自分も招待されたが、遠慮したのだ、とつけくわえた。 警察…
甘沖の目の前で、カズミは車にはねられた。 逃げることに夢中になって、左右を確認せずに、国道に飛びだしたせいだ。 ビクンビクンとはげしく痙攣し、頭部からは大量の血が流れている。 カズミをはねた運転手の男性と、助手席に乗っていた女性がおりてきてカズミに声をかけている。 だが、なんの反応もないことから男性がケータイを耳に当て、救急車を要請している。 周囲には何台もの車が停車し、ちょっとし…
カズミは口をおさえながら、 「ま、まって、ほんとうに気分が悪いのッ! すぐにもどるから、まっててッ!」 トイレにかけこむ。 どうやら食べすぎてしまったことと、独特なワインのニオイが影響したのだろう。 個室に入ってげぇげぇと嘔吐していると、トイレの入り口にいた父が、 「――ちッ! すぐにもどってこいよッ! 最後の夜なんだからなッ!」 きびしい口調でいいすてた。 ああ。 …
カズミは、かつて病院だった建物の前に立っていた。 今は蓮華転輪教の宗教施設になっている。 以前くらしていた一軒家は、父が医者から宗教家に転身したときに売りはらった。 そのタイミングで家族全員、この施設に引っ越してきたのだ。 カズミにあたえられた部屋は三階にある部屋で、以前は入院部屋だった。 たしかに部屋の広さはもうしぶんないが、ここで患者たちが入院生活を送っていたのかとおもうとなん…
高校を卒業後、カズミはすぐに上京した。 別れを惜しみ、引きとめる友人は誰もいなかった。 病院が診断ミスでつぶれ、宗教団体に鞍替(くらが)えしたころから、気もち悪がってまわりに誰もいなくなったのだ。 それに加え、卒業するまでずっと無視される、という毎日に耐え続けた。 だからこそ何の未練もなく上京することができたのだ。 居心地の悪い実家を離れ、住みづらい地元を捨て、西東京市で安いアパー…
病院からすこしはなれた住宅街に、仁志潟家の家はあった。 二階にはカズミの自室もある。 まるでしあわせを具現化したような空間だった。 父のことが好きだった。 大好きだった。 白衣を着、病気で苦しんでいる人たちを治療する父を尊敬していた。 母もやさしく、料理上手だった。 兄はいつも宿題を手伝ってくれた。 中学校でもともだちができてたのしかった。 満たされていた。 すごく満たさ…
転魂法。 まったく聞いたことのない言葉だった。 「まぁ……、かんたんに説明すれば、いらなくなった肉体を捨てて、あたらしい体を手に入れる秘法だ」 「な、なに?」 「死とは肉体の終わりであって、魂の終わりではない。つまり、死の影に捕まりそうになったとき、転魂法をつかって若く健康な体に乗りかえればいいらしい」 「そ、そんなことができるか……?」 甘沖がうなずく。 「さっき…
今から三十年ほど前。 茨城県のとある町に病院ができることになった。 大病院ではないが、診察はもちろん入院もできる。 地域住民は大変よろこんだ。 今まで大きな病院にいくにはバスに乗って、一時間ほどゆられなければいけなかったからだ。 フットワークのかるい若者はいいが、頻繁に出向かなければならない高齢者にとって通院することはひと苦労だ。 そんなこともあり、病院はオープンしたその日からに…
ここは――。 ここはまさか――。 ノボルが話していた、灰色の世界なのか――? 円了は周囲を見まわしながら、言葉をうしなっている。 古びた車イスに四肢を縛られ、いっさいの身動きがとれない。 どうして? どうしてここにいるんだ? たしか駐車場でトモアキとアヤカに襲われて。 そして気をうしなって――。 頭の中を整理するが、ここまで連れてこられた記憶はない。 そもそもここは現実…
かつて眠り姫と呼ばれ、意識がないまま寝たきりだった峰岸の母がいないのだという。 「さっき院内がバタバタしはじめてから、わたし、母が気になって見にいったんですッ」 「う、うん」 「そしたら、病室にいなくって」 「どこかべつな部屋に移動したとか、処置室にいってるとか」 「もちろん、ナースセンターで母がいないことを伝えて、確認しました。でも、そんなことないって。じゃあどこにいっ…
コトリバコ。 それは昔、島根県のとある地域に伝わったとされる呪法である。 特殊な箱の中に動物のメスの血と、水子や赤んぼうの体の一部を入れ、呪い殺したい人物の身近な場所に置くのだという。 そうして呪われた者の内臓はすこしずつねじれ、やがてちぎれてしまい、大量の血ヘドを吐いて死んでしまうらしい。 コトリバコは、子供や妊娠可能な女対し絶大な効果があるとされることから「子取り箱」が由来だとも…
円了は帰路についていた。 都内の自宅マンションではなく、御茶ノ水にむかっている。 もちろん、黄天堂大学病院に、だ。 さっき、廃墟に着く寸前で、警備員がふたり死んだという連絡があった。 さらに、第五病棟をかこむ生け垣のヒイラギとナンテンもすべて枯れた、ともいっていた。 気になってその後の情報を事務局長に確認した。 警備員の死因は重度の脳出血だった。 中高年の男性なら、そういった…
結界とは、なにかを守るためのものである。 では四つの人骨でつくった結界が、いったいなにを守るためのものだったのか。 それがどうしても知りたい。 しかし、すでに午後五時をすぎ、陽はすっかり暗くなっている。 車に残したカズミが気になる。 だが、たしかめずにはいられない。 円了はもういちど廃墟の中に入り、小走りで一階最奥の部屋に向かった。 地下室への入り口があったあの部屋である。 …
ハンゴウもどきの中からは、割れた頭蓋骨以外にも人骨とわかるものがいくつもでてきた。 おそらく大人ひとりぶんの量はある。 つまり、これは骨壺だったのだ。 骨壺が廃墟の敷地に埋めてあったのだ。 予想はつく。 この場所を教団施設としてつかっていた宗教団体がやったのだろう。 だとしたら、この骨が殉教した人物のものなのだろうか。 コックリさんでノボルたちが呼びだしたのはこの骨のもちぬしな…
赤くさびた鉄の扉。 こんなものがあったなんて、ノボルはいってなかった。 昨日きたばかりのカズミにもおぼえがないという。 コンクリートの床には、たおれたロッカーを引きずってできたような傷あとがある。 まだあたらしい傷のようだ。 さらに扉を封印していたとおもわれる太く大きな南京錠がはずされ、部屋のすみにころがっている。 頑丈そうな南京錠であるから、不法侵入者がこじあけるの無理だろう。…
カズミが指さした先に落ちていた一枚の紙。 それがノボルたちがコックリさんをやったシートであるとすぐにわかった。 部屋に足をふみいれたカズミも、五十音が書かれていることからそれがなにか気づいたようで、 「えッ? ウソでしょッ! こんなとこでコックリさんやった人がいるのッ? 信じらんないッ……!」 顔を引きつらせていった。 円了がそのシートをひろいあげようとすると、 「やめなよ…
午後からも重要な用事がなかった円了は、予定をすべてキャンセルして茨城県の廃墟にむかった。 病院をでてくるとき、峰岸にひとこと断ってから出発しようとおもったが、体調を崩し、点滴をうって寝ているという。 しかたなく診察室のデスクの上に行き先だけメモ書きして残してきた。 途中のコンビニでおにぎりやお茶を買い、車内でかんたんな昼食をすませた。 そのさい、目的地の廃墟についてスマホで検索してい…
円了が病室にくる前に会った男性看護師は、ノボルが「狙われている」と口にしていたことを報告してくれた。 その真意を知りたくて、 「じゃあ、ノボルさんを狙っている、というのは……」 とたずねると、 「――そうッ! そうですッ! あいつらですよッ!」 なんどもなんどもうなずいて肯定した。 行方不明になっているトモアキとアヤカ。 そのふたりが施錠してあったノボルの自宅に無断侵入…
ノボルはなんどもドアをたたき、古民家の住人に呼びかける。 「すみませーん! こんばんはー!」 だが誰もでてこない。 家の中にはたしかに光源があり、それがちらちら動いていたりする。 やはり人がいるようだ。 居留守か? いやがられているのか? 真意はわからないが、とにかくたすけてもらわなければならない。 それでもう一度呼びかけようとしたとき、不意にサッシのドアが開いた。 …
西の空に、太陽の残りカスのような光があるだけで、あたりはすでに暗くなっている。 真っ暗闇になればアヤカの捜索もむずかしくなるだろう。 「な、なぁ、通報したほうがよくないか?」 ノボルが提案した。 ほんとうは政治家の父がいる手前、警察沙汰になるのは避けたい。 だが今は、急を要する。 トモアキにしたって、親に知られれば肩身がせまいのはおなじだろうが、 「そ、そうだな。そのほう…
コックリさんという降霊(あるいは交霊)遊びは有名である。 かつてあまりに流行したために、コックリさんを禁止した小学校もあるほどだ。 エンジェル様、などというものも広まったが、基本的にはコックリさんとなんらかわりはない。 コックリ、を、狐狗狸、と書くことから日本で誕生したものだとかんちがいしている人も多いが、もともとは一五〇〇年ごろにヨーロッパで広まったテーブル・ターニングというものがはじ…
御茶ノ水にある黄天堂大学病院には、五つの病棟がある。 第一病棟から第四病棟まではそれぞれ東西南北の方向に位置し、第五病棟はそれらの中央に建っている。 上空から見ると、漢数字の十のような配置だ。 この五つの病棟の位置も、結界を意味するとされていて、第五病棟に入院する患者たちを守護するための設計なのだそうだ。 そのため、第一から第四までの病棟は最上階に四神(ししん)をまつっている。 四神…
急患に対応するため、円了は診察室をでていった。 峰岸は診察を終えたミチルをつれ、第五病棟の廊下を出口にむかって歩いている。 あいかわらず看護師以外の誰とも会わない。 入院患者も診察にきている人もいるのだろうが、その気配すらない。 「基本的に受診もお見舞いもぜんぶ予約制になっていて、他人と会わないように配慮されてるんですよ」 キョロキョロしているミチルに、峰岸がいった。 「け…
これで犯人がわかった。 やはりリンカだったのだ。 しかもあの彼氏も共犯であった。 しかしここで疑問がわいた。 髪の毛の入ったゴミの袋にはわたし以外のものも入っていたはずだ。 他人の髪とわたしの髪とわざわざよりわけたのだろうか。 そのことを円了にたずねると、 「ちょっとこの写真も見てください」 と、さきほどとは別な一枚を手渡してきた。 クマの裂かれた体内をアップで写してあ…
翌朝、リンカが目を覚ますとコウちゃんは横で寝ていた。 赤く見えていた顔はもとどおりになっていた。 右手のひとさし指と中指にばんそうこうがまかれている。 頭に数本、見なれない毛がついている。 人間のものではなく、ネコかイヌのもののようだ。 だがきっと美容院からもってきた髪の一部だろうとおもいなおし、トイレにむかった。 そのとき、キッチンの流し台に置いてあったはずのクマのぬいぐるみが…
しばらく待っていると、作業着姿のコウちゃんが息を切らしてやってきた。 両手をひろげてむかえたリンカは、コウちゃんにしがみつきながら、もう一度おなじ説明をした。 するとコウちゃんは眉間にシワをよせ、 「……で、その女、どの店からでてきた?」 イラついた口調で聞いてきた。 そういわれてもわからない。 ただミチルらしき女が歩いてきた方向をおしえた。 その方向には、美容院が二軒あっ…
リンカは歩道にたおれたまま、なにが起きたのかわからなかった。 両目と口を大きく開けたまま、走り去るミチルの背中を見ていた。 リンカに気づいた通行人たち数人が歩みより、 「だいじょうぶですか?」 「救急車呼びましょうか?」 と声をかけてくる。 だが、リンカはまばたきもせずミチルが消え去ったほうをにらみつけていた。 ただならぬ雰囲気に、心配していた通行人たちが距離をとる。 …
リンカの顔や体を見て確信した。 彼女はいまだに、ドラッグから抜けられていないのだ。 ミチルはなんだか気の毒になった。 高校一年生のときのたのしかった日々が脳裏をかすめるが、目の前でへらへらと笑っているリンカはおぼえているのだろうか。 悪い男と出会って、リンカは堕ちた。 住む世界が変わった。 その運命にリンカはあらがわなかったのか。 受けいれたのか。 ならば誰のせいだろう。 …
ミチルは耳をうたがいながら、 「し……、心臓ッ? 心臓ですかッ……?」 聞きかえす。 「さきほど、通常のひとりかくれんぼではぬいぐるみの腹部に本人の爪など、体の一部とお米を入れると説明しましたが」 ミチルがうなずく。 「さらに呪いの濃度を高めるために入れるものがあるんです」 「ま……、まさかそれが――」 「心臓です」 「ッ!」 「ネズミや鳥などの小動物の心…
いわれてみればそのとおりだ。 呪いだの、呪障(じゅしょう)だの、ふつうの病院ででてくることばではない。 いままでの流れでここに座っているが、なぜ気づかなかったのだろう。 「もしかして、木の棒とかわたされませんでした?」 峰岸がたずねてくる。 「あ、はい。白くて、いいニオイの」 ミチルがうなずく。 「ああいうものは、ふつうのお医者さんはつかわないですよ」 「で、ですよ…
ひとりかくれんぼ……? いつだったか、耳にしたことがある。 たしか、こわい遊びのことだったとおもう。 「ごぞんじですか?」 円了がそう聞いてきたので、 「ええ、名前だけは……」 ミチルが自信なさげにうなずく。 「じゃあ、かんたんに説明しますね」 そういって教えてくれた。 ひとりかくれんぼ。 あるいは、ひとり鬼ごっこともよばれるそれは、有名な都市伝説のひとつで…
検査結果はすべて良好で、どこにも異常はなかった。 「後遺症などもあらわれないでしょう」 円了がにこやかにうなずく。 お墨つきをもらい、とりあえずミチルは安心した。 すこしでも遅れれば、命を落としていたかもしれない。 仮にたすかったとしても、後遺症をかかえてしまったかもしれない。 そうおもうと、あの場に円了がいてほんとうによかった。 ミチルは涙ぐみ、 「先生のおかげです。…
御茶ノ水駅で降り、聖橋を渡った先に黄天堂大学病院はある。 ほとんどの国民が知っているほど日本屈指の大病院なのはいうまでもない。 そのため、紹介状をもった患者たちが日本中からはるばる受診にくる。 VIP用の個室もあり、会社重役や著名人はもちろんのこと、政治家もお忍びで来院する。 外国の富豪や王族たちだって自家用ジェットでやってくるほどだ。 ミチルも当然、知っている。 ニュースなどでよ…
十日ほど前から誰かがささやく。 死ね死ね死ね死ね。 死んでしまえ。 そう、耳鳴りのように誰かがささやいてくる。 そのせいだろうか。 とある水曜の朝。 ミチルはなぜだか死にたくなった。 毎朝乗る、おなじ通勤電車。 その駅のホームで急に死にたくなったのだ。 すぐに会社に電話し、体調が悪いと告げて休暇をもらった。 それでも帰宅する気にはなれず、反対方向に進む電車に乗ってみようと…
ギュキイィ、ギュキキイィィ、という耳ざわりな音で気がついた。 目の前すべてが灰色だった。 空も、地面も、すべて灰色だった。 ここはどこだろう……? 見まわしながらそうおもった。 同時に、自分の両手両足が縛られているとわかった。 浴衣のような白い着物姿で車イスに乗せられている。 古びた車イス。 ところどころ汚れやサビ、キズがある。 車輪のゆがみのせいか、乗り心地が悪い。 …
『結界病棟』 世界は呪いであふれている――。 誰もが毎日吐きだす負の感情。 そんなマイナスのエネルギーに毒された者たちが 治療を受ける場所、 通称『結界病棟』 医師・円了真悟の診察が今日もはじまる…。
電子書籍 『きつねの窓』 販売しました! ――ある朝目覚めると、 自分が死んでいたことを思い出す――。 呪い、首なし、校内放送。 水死、バケモノ、肉のかたまり。 記憶のない二年間、女子高生イチカは この世ならざるものたちの きずなを結んでいたのだった…。 某サイトに発表したものに 大幅修正 & 新エピソード追加してます。 楽天、 アマゾン、 ブックウォーカー…
山端は頭をゆっくりあげ、トンネルの南口に目をやる。 奈々未が声の主だった。 青ざめた顔でトンネル内をきょろきょろと見回している。 凌羽を目で探しているのだろう。 だが、トンネル内部を確認することなどさほど時間はかからない。 その場に凌羽がいないことをすぐに察したようだった。 「ざぁーんねんだったなぁ。死に目に会えなくてよぉ。ふかかかか」 よろよろと立ちあがりながら、山端は…
魔人化した山端は強かった。 このままではジリ貧になるのは目に見えている。 なにか勝機につながることはないだろうか。 そう凌羽が思案していたときだった。 山端が鼻血をたらした。 両方の鼻の穴から、粘度のたかいドロドロの血がゆっくりと口へと伝っていく。 「……おん?」 口に入った血の味に気づいたようだ。 山端も意外そうな顔をした。 よく見れば、山端の上半身が紅潮し、五つの…
右足をうしなった山端にあせりはなかった。 そのようすに、どんな根拠があるのかと凌羽は観察する。 そのとき、足の切断面から、大腿骨(だいたいこつ)がしゅるしゅるとのびた。 切り落とされずに残存していた骨の一部が変形し、地面にむかってのびていくのだ。 そして骨の先端が鋭利になる。 「あ」 その変化を見た凌羽はピンときた。 山端の爪がのびて剣化したときと酷似しているのだ。 案の…
巨大ムカデの胴体の幅は百五十センチほどある。 その両脇からは無数の足がのびていて、かしゃかしゃと音を立ててうごめいている。 頭部ではふたつの目が光をはなち、するどいい牙をむきだしにしていた。 「で、でかい……!」 恐怖より、UMA的なめずしいものを見た、という気もちが先行する。 ムカデの半身が地中に埋まっているために全長はわからない。 が、かなりの長さだと容易に想像できる。 …
天井の電燈が、トンネル内部をくっきりと浮かびあがらせていた。 ほぼ中央には黒いセダンが乗り捨てられている。 特事のスタッフがここまで乗ってきた車だ。 そのむこうに、ずんぐりむっくりした人影があった。 山端だ。 車にはねられトンネルの外に飛び出したはずだが、もどってきたのだろう。 山端は猫背になって、路面に視線を落としている。 剣化した右手からは、赤い液体がぽたぽたとしたたって…
凌羽の顔を見て、奈々未は安心した。 このまま山端に敗れ、もう二度と会えないかもしれないとおもっていたからだ。 凌羽が降車してくる。 特事の車に同乗し、スタッフにここまで送りとどけてもらったようだ。 凌羽はかけよりながら、冷静に奈々未のダメージを確認する。 まず最初に目がいったのは、右足の義足だった。 切断されている。 だが奈々未に痛がっているようすはない。 次に目がいっ…
「ぐぬわわァッッ!」 山端は、自分の身に何がおきたのかわからなかった。 左腕に激痛が走る。 血しぶきもあがっている。 すぐに痛みの原因を確認する。 左腕が無い。 肩のすぐ下から無くなっていた。 五つの目があわてて左腕を探す。 数メートルはなれたところに落ちている。 その過程で、みけんの目が奈々未を見た。 やはり右足はない。 右足の切断面を隠すように、切れたレギンス…
山端は、さっきからずっとニヤニヤしている。 「さて。どうすんだ? この状況からどうやってあがいてくれるんだ、おん?」 すべて別々に動く、五つの目。 その目玉たちの前に、奈々未がいる。 神剣〈不退転〉を、両手にひとふりずつにぎっている。 ツバのかわりに、翼の形の飾りがついている一対の美しい神剣だ。 「おら、じょうちゃん。攻めてこいよ。おらおら」 山端がいやらしい口調で挑…
凌羽は体にのしかかる疲労を感じながらも、全力で走っていた。 一分でもいい。 一秒でもいい。 とにかくはやく前に進みたかった。 奈々未と山端が戦っている新トンネルから二百メートルほどはなれたところに、特事のスタッフが待機している。 そのスタッフのもとにいき、体力が回復するサプリメントをもらわなければならない。 それを摂取したらすぐに奈々未のもとにとってかえすのだ。 奈々未をひ…
奈々未の顔色が悪くなった。 手にしているケータイが、急に正常な動きをしなくなったからだ。 神威を発動するときのエネルギーが、精密機器の動きを狂わす性質をもつからである。 だが凌羽も奈々未も今、チカラを使っていない。 ということはつまり、ふたり以外の者が神威を発動させた、ということになる。 「まさか――!」 奈々未は直感した。 「あのおじさんッ?」 「えッ?」 …
山端の夢は、まだつづいていた。 全身の骨という骨は粉々にくだけ、臓器もいくつかは破裂している。 筋肉は断裂し、神経もちぎれた。 眼球もつぶれ、鼓膜も破れ、嗅覚も感じない。 ただの肉のかたまり。 だが。 なぜか意識がある。 死にいたる気がしない。 マガタマの所持者だからだろうか。 神威を発動していたからだろうか。 それでももうじき命がつきて、あの世にいくことになるのだろ…
新トンネルの南側出口から二百メートルほどはなれると、ゆるやかなカーブが見えてくる。 そのさきに救急車と二台の黒いセダンが止まっていた。 黒いスーツを着た十人ほどの特事のスタッフが一列に並んでいる。 そのうしろに救急隊員が待っていた。 もしも山端が襲ってきた場合、特事のスタッフたちが身を挺して救急隊員たちを守るための配置である。 そんな一同が奈々未たちの姿を認めたようだった。 …
凌羽の攻撃によって、全身の骨がボキボキくだけていく。 臓器がパンパン破裂していく。 もう立っていられない。 「おっさんもこうして、罪のない人間をなぶったんだろ?」 地べたにはいつくばったまま、凌羽の声を聞く。 「ならアンタもいたぶられて、おなじ痛みと恐怖を知るべきだよな?」 圧倒的だった。 人間相手に無敵をほこった自分の能力が、神威を発動した凌羽にはなにひとつ通用しな…
山端は、めくらめっぽうに両手の刀をふりまわす。 「くそッ! くそッ! じゃまだッ、じゃまだッ!」 視界をふさぐ白い羽の壁が一枚ずつ消えていく。 すこしずつ羽の渦を切り崩し、トンネル内部が見えはじめたときだった。 こちらになにかが飛びこんできた。 「ぬぅッ!」 気づいた山端は、いきおいよく右手の刀でふりはらう。 飛来したものがふたつに両断される。 地面に落ちて、ギャラ…
何がおこったのか、山端にはまったくわからなかった。 突然、脇腹に衝撃が走ったのだ。 軽トラックにでもはねられたのだとおもった。 が、どうやらそうではないらしい。 いったいなんだったんだ? 自分が吹っ飛ばされたさきをたしかめようと顔をあげる。 そこに、センスの悪いジャージを着た青年が見えた。 「あいつは……ッ!」 凌羽だ。 車にはねられたんじゃない。 凌羽がしかけてき…
山端がむかったのは、新トンネルの南側出口だった。 タイミングよく、乗用車が一台こちらへ走ってくる。 その目の前に山端が飛びだした。 運転手は人影を認め、ハンドルを切る。 そのせいで車体の左前がガードレールに突っこんでしまった。 車には、二十代の夫婦と、保育園帰りの幼女が乗っていた。 となり町の大型ショッピングセンターへむかう途中だった。 「お、おいッ! おいッ! 香苗ッ! …
「ほら凌羽、これも飲んで」 奈々未は背おっていたオレンジ色のリュックから、錠剤の入ったプラスチックのボトルをとりだしてわたす。 「あ、どうも」 ボトルを受けとると、凌羽は手のひらにジャラジャラと数錠だし、口へ入れて噛みくだいた。 つづけてスポーツドリンクを口につけ、錠剤を流しこむように、あっというまに飲みほした。 凌羽が飲みこんだのは、一錠で点滴一回分の栄養補給ができると…
心霊スポットとウワサされる古いトンネル内には、三人の人間がいた。 ひとりは刑事の皮をかぶった殺人鬼。 ひとりはショートヘアの女子高生。 そしてもうひとりは、痛々しいまでにやせほそった全裸の男子高校生。 そこからトンネル中央にむかった十数メートル先に、一体の惨殺死体が転がっていた。 すこし前までは警察官だったそれ。 その眼球が、まるで三人をながめているようだった。 「……で、…
ぱん、ぱん――。 二礼二拍手一礼。 毎月一回はかならず、時間を見つけて氏神様に手をあわせる。 それが彼女の習慣になっていた。 境内にはきよらかな空気が満ち、心を落ちつかせてくれる。 どうか凌羽が無事でいますように。 おみちびきください。 心の中で、そう祈った。 凌羽が行方不明になってからもう、数日がたっている。 内閣情報調査室、特殊事案課。 通称〈特事〉から依頼され…
凌羽の不自然な行動は、容疑者を細部まで観察するのにたけている、刑事の目に看破されたようだ。 「なあ。そぉこぉにぃ~、なぁにぃかぁ~、あ~るぅのぉかぁ~って聞いてんだよぉ~?」 一音ずつ区切るように山端がいう。 凌羽はあせる表情を読みとられないように、うつむきかげんになった。 「どうしてだまる? やはり、オレにかくしていることがあるようだな、おん……?」 山端の声色がすこし…
かしゃん、けしょん、こしょ。 かしゃん、けしょん、こしょ。 それはさびついた古い自転車だった。 たるんだチェーンのせいだろう、若い警察官が必死にペダルをこぐたびに騒音をまき散らす。 廃トンネルに全裸の変質者が出没したとの一報を受け、現場に一番近い派出所から急いできたのだ。 彼は警察官になりたいという子供のころからの夢を叶え、いつもやる気と情熱に燃えていた。 そんなおもいがせかせ…
全裸男の正体がわかり、山端はよろりとあとずさる。 「ど、どうして……。まさか……幽霊かッ?」 うろたえる山端に、 「いえ……。い、生きてます、……何とか……ね……」 全身はゆらゆらとゆれ、まさに風前のともしびのようである。 だがその目には力があり、しっかりとした視線を送ってくる。 「バ、バカな……ッ、たしかに刻んでやったはずだろ……ッ?」 「え、ええ……たしかに……
凌羽が姿を消してから、十日ほどたった。 家畜殺しの犯人も、ホームレス殺しの犯人も判明してはいない。 当然である。 その真犯人、山端が捜査本部にいるのだ。 証拠隠滅はもちろん、ミスリードもしほうだいだった。 その点はうまくいっている。 だがひとつ、不可解なことがあった。 あの凌羽とかいう若造のことを誰も探しにこないということだ。 内閣情報調査室、通称、内調に所属していながら…
「し、死界の女神、イザナミッ?」 山端は青ざめた表情で聞きかえす。 「ええ。瀕死の人の夢にあらわれるそうで、彼女に会うと、翌日にはどんな病状も全回復するといいます……。山端さんの例と合致しますよね……?」 「……ッ!」 言葉がだせない。 「でも、それだけじゃないんですよね、山端さん?」 「な、なに……?」 「だって、イザナミからもらったんでしょう? アレを……」…
勝山なかよし公園は不気味な静けさにつつまれていた。 ライトアップされた木々が妖しく、そして美しく、闇に浮かんでいる。 時刻はすでに深夜の十二時をまわっていた。 今朝、惨殺事件のあった現場にこのんでくる者などいるはずもない。 公園内の不吉な空気感に、ホームレスたちさえ立ち去ったようだ。 あるいは犯人がホームレスを狙った意図があるなら、自分も被害をこうむるかもしれないという恐れを感…
凌羽が公園からでて、農業高校にむかおうとしたときだった。 「……おいッ、おいアンちゃんッ!」 誰かに呼び止められた。 声のした方向に目をやると、街路樹のかげに六十代くらいの男がいた。 ボサボサの髪。 日に焼けて茶色くなった顔。 無精ヒゲや頭髪には、大量の白髪がまじっている。 服装は数年前に若者のあいだで流行したものを着ていた。 男は、一見してホームレスと判断できた。 …
殺人事件の現場である、勝山なかよし公園。 そこは、農業高校から二キロほどはなれている大きな公園だった。 東京のベッドタウンにあるこの場所は、あらたに整備されたばかりで、犬の散歩やウォーキングなどで毎日たくさんの人たちがおとずれている。 いわば地域住民のいこいの場であった。 そんな平和を具現化したような公園内に、立ち入り禁止の黄色いテープがはりめぐらされ、不穏な雰囲気が満ちている。 …
夜、赤信号で立ち止まったら となりにタクシーが止まって 後ろのドアが開いたから お客さんが おりてくるのかな~ と思ったんだけど ドアの下あたりから 髪の長い 女性の顔だけが にゅう~ って出てきたんです。 それですごい ビックリしたんだけど すぐに その女の顔が めろめろめろ~ って おげろ様を お戻しになって ウギャってなった。
あんまりひとけのない 夜の公園で どうしてもガマンできなくて トイレにはいったら 便器に って書いてあったもんだから なんだか急に 背後が怖…
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このたび、 ファンタジー系のAIイラスト集 『ファンタジア Fantasia』 をアマゾン独占で新発売いたしました! 幻想、神仏、 怪物、悪魔、 幽霊、天使 の6つの章からなる140ページ超えの1冊です。 アマゾン独占販売なので、 キンドル アンリミテッドの方は無料でご覧になれます。 ホラーやオカルト、RPGやファンタジー系がお好きな方に 楽しんでいただけるかと思います(*^-^*) どうぞよ…
先日 『私はネコが嫌いだ』 という絵本を購入しました。
このたびアマゾン独占で 『ネコの惑星 PLANET OF THE CATS ~ゆめみるネコたち』 というAIイラスト集を販売いたしました! かわいいネコやゆかいなネコ 人間みたいなネコやちょっと怖いネコなど ネコ好きはもちろん、他の動物が好きな方にも楽しんでいただけると思います。 140ページ超で、 Kindle Unlimitedの方は無料です! ご興味のある方はどうぞごらんください(*'ω'*)
十代のころ 女友だちから聞いた、 体調悪くて寝込んでると 枕もとで 大きい箱の中から すこし小さい箱をだして その箱からまた すこし小さい箱を出していって 一番小さい箱が出ると こんどは順序を逆にして 大きな箱に入れていく 知らないおばあさんが座ってる夢を見るんだよ って話、 聞かせてくれた相手の顔はもう思いださないのに 古いタンスがある せま…
2023年が 関東大震災から100年らしいけど あのとき 朝鮮人虐殺事件ってあったの知ってる? メディアではほとんどあつかわないけど、 地震のあと井戸に毒を入れたとか 地震を起こしたのは朝鮮人だ っていう トンデモ説を信じた人たちが起こした事件。 昔ね、ひいばあちゃんが 早朝に表を掃いてたら 知らない男の人が来て 「助けてください」 って言うんだっ…
古書店でみつけた 10年ほど前の本ですが 幽霊画などが掲載されているので 購入してみました。 それでは内容…
先日、ポケモンカード151をゲットしました! ダメもとで抽選販売に登録したのが当選したんです!
このたび、電子書籍で 「結界病棟」 を新発売いたしました! 世界は呪いであふれているーー。 さまざまな呪いに悩む患者たちが 専門医・円了慎吾のもとに今日もやってくる。 有名怪談、都市伝説をベースに 呪われた運命を切り拓く、長編ホラー小説です。 退屈なとき、 眠れない夜、 ポイント消化にどうぞ(*'ω'*)
このたび、 令和鬼談 シリーズの第3巻、白を新発売いたしました! とあるバイク事故の原因 「桜の花が咲くころ」。 いじめられっ子を救う 「かみさま」。 恋人どうしの通話中に起きた怪異 「そっちとこっち」。 ほか、 「カナシイノオハカ」 「顔」 「闇堕ち」 など、 あなたの日常にねじ込む、怪談集です。 退屈なとき、 眠れない夜、 ポイ…
このたび、 『ネコいぬ怪談』を販売開始しました! 人間よりもするどい感覚をもつといわれる動物。 その中でも人のすぐそばによりそいくらしているネコやイヌたち。 そんな彼らに、身のまわりでおきた怪異についてはなしを聞かせてもらった―― ――という、変わり種の怪談集です。 もともとは『わんにゃん怪談』というタイトルでしたが、 電子書籍化する際に 『ネコいぬ怪談』に変更い…
ごらんになってわかるように、わたしには右目がありません。 生まれつき、なかったんです。 それに、体毛の色がきれいではありません。 ふぞろいのまだらで、清潔感のない毛柄をしています。 そのせいか母親にも愛されず、兄弟たちにもうとまれて、家族の輪からすこしはなれた場所にいて、いつもひとりでいました。 ある日、わたしたち家族は人間たちに施設に連れていかれ、保護ネコとしてくらすこ…
パグ犬のすずちゃんが住んでいるのは、地方都市の一軒家だ。 すずちゃんをかわいがってくれる60代の旦那さんと奥さんは、これまで自営業をしていたが、年齢的なこともあり息子にあとをつがせた。 そして自分たちは悠々自適な老後をすごすつもりでいた。 そんなすずちゃんの家の敷地内には、アパートが一棟建っていた。 築年数もそうとうで、耐震化もしていないボロボロのアパートなので、最後の住人の…
ネコのみぃちゃんから話をうかがった。 「保護ネコだったわたしを引きとってくれたママさんはね、子供のころからふしぎな能力があるそうなんですよ。ほら、死んだ人が見える、霊能力ってやつ」 そんなママさんが、とある夏の日、近所に住んでるミヨさんとかき氷を食べに行った。 すると、二十代前半くらいの若い女の子がひとりで座っていたという。 店のすみで、うつむいて、さみしそうにかき氷食べて…
東海地方のとある町に住む、ノラネコのセナくんにこんな話を聞いた。 「オレの縄張りの中にな、ゴミ屋敷があったんだよ」 そこには七十歳をすぎた男性がひとりで住んでいたという。 どこかからもち帰った空き缶や粗大ゴミが室内や庭にあふれかえっていて、悪臭や害虫、ネズミなどが多く発生する原因になっていた。 さらにはそのゴミが敷地の外にもはみでていて、通行人の邪魔になっている。 近く…
北関東に住む柴犬のハッピーくんにうかがった話だ。 ハッピーくんのご主人であるK田さんは40代の終わりに脱サラし、数年の修行のあと、県道沿いで日本ソバ屋を経営しはじめた。 オープンはじめのころは勝手がわからず、とまどいながら四苦八苦した。 だが家族の協力もあり、今ではなんとか軌道に乗り、他県からの客もおとずれるようになった。 そんなK田さんがハッピーくんの散歩がてら、店で使う山菜…
座敷犬のタロウくんは、50代の夫婦といっしょにくらしている。 畳に座る旦那さんの左側がタロウくんの定位置だ。 そこでごろりと寝ころがり、旦那さんにあまえる。 なぜ旦那さんの左側なのか。 それにはこんな理由があった。 ある日、旦那さんが取引先にむかう途中、駅前でタクシーに乗った。 ロータリーをでたあたりで、足もとに茶封筒が落ちているのに気づいた。 そっとひろいあげ、…
ある日の早朝。 マンションでくらしているヨークシャーテリアのテリーくんが自分のベッドで丸くなって眠っていると、ママさんが青い顔でかけこんできた。 そして、 「――あなたッ! ねぇ、あなたッ!」 荒い呼吸でパパさんをゆりおこしている。 「なんだよぉ、どうしたんだよ」 まだ眠いようで、ぼんやりしたまま、むにゃむにゃと返事をする。 この日、ママさんは早い時間から用…
新宿でノラ猫をしている、シロくんにうかがった。 「あれは年末のころでね、だんだん夜が冷えてきたころだったよ。人間たちがボーネンカイとかいう集まりをよくしてたな」 路地裏の屋根の上にいて、人の往来をながめていたのだという。 「マタタビでも決めてんのか? っていう感じのサラリーマンの男がフラフラ歩いてきたんだよ。立ちションでもしようとしてたみたいなんだけどさ」 すると路地の…
とある地方都市で座敷犬としてくらしている、トイプードルのケイちゃんに聞いた。 ケイちゃんの飼い主である四十代のY美さんは、体調を崩した義父のために、介護ベッドをレンタルした。 やってきたのは最高級のフランス製ベッドだった。 義父も大変よろこんでくれた。 しかし翌朝、 「もうこんなベッドには寝たくないッ!」 といいだした。 理由を聞くと、 「夜のあいだ、誰か…
飼い猫のライくんが聞かせてくれた話である。 ライくんの飼い主は二十代後半の男性で、ものしずかなサラリーマンだ。 大のネコ好きであったから、念願のペット可のアパートに住んだのを機会に、保護ネコとしてライくんをむかえいれた。 男性は昼間、仕事で部屋をあけていて退屈なのだが、帰宅するとグリングリン頭をこすりつけ、これでもかというくらい飼い主に甘える。 そんなある日のことだった。 …
このたび、 『ネコいぬ怪談』を販売開始しました! 人間よりもするどい感覚をもつといわれる動物。 その中でも人のすぐそばによりそいくらしているネコやイヌたち。 そんな彼らに、身のまわりでおきた怪異についてはなしを聞かせてもらった―― ――という、変わり種の怪談集です。 もともとは『わんにゃん怪談』というタイトルでしたが、 電子書籍化する際に 『ネコいぬ怪談』に変更い…