久しぶりの母とのキッチン、夕飯の支度。宿のおかみとして働く母はいつも忙しく、こうした二人の時間も久しぶり。 「おかあさんあのね、今更だけ…
久しぶりの母とのキッチン、夕飯の支度。宿のおかみとして働く母はいつも忙しく、こうした二人の時間も久しぶり。 「おかあさんあのね、今更だけ…
試験の前だったり、いやなレクリエーションの日だったり。良かれ悪かれ「特別な日」というのは、なんとなく予感がする。 普段通りの登校、「おはよ」…
気まずさが飽和してるタクシーの車内。バンパーも出遅れる横殴りの雨。 膝に手を置いて、煙る窓の外を見ている山口さんの横顔。 大雨で帰れなく…
「夕方から夜にかけて、今年最後で最大の台風が伊勢湾を渡って上陸する模様です。」 お店のテレビニュースを見て、事務室の窓から外を見下ろした。…
私がビクトリアで働くことになったのは、去年の夏休み明けだった。 コロナ渦も落ち着いて、学校がスタートした2年生の7月。授業中に貧血で…
お店近くのファミマで、菓子パンと紙パックの野菜ジュースを買った。バイトの日、事務室での朝食のローテーション。大通り沿いの雑居ビルの3F。カバ…
大倉山の輪郭が縁どられる夜明け。 朝5時半のヘッドライトが、バス停で待つ私を照らした。小型トランクとメンズリュックサック。ちょっと重装備な…
知られたくないから、私は発信しない。 そんな私は多分、すっからかんのカラッポな人間だ。 「私はこういう人間です」とか。「私の友達はこんなに素…
「到着まであと5分です。」 機械の声が機内に流れ、クレムトたちは着陸準備に。 慌ただしくなる機内。テーブル上のホログラフに映し出されたのは…
今日が多分、スージーと過ごす最後の夜。 明日はきっと、迎えの飛行船が来る。私はセレクシオとしてパラディソへ。 再びここへ戻って来れたとしても、…
「。。一体、どういうことだ・・?」 私のポケットの中で鳴り続ける着信音。繋がるはずのないスマホの音を耳に、唖然としたクリムトが呟いた。…
波の高い今朝の海岸。風に煽られるマスクを直すと、ケイトは灰色の空を見上げている。 そこは待ち合わせの場所。大雑把な指定だったが、他に人…
スージーは最近元気がない。食事の量も減って夜通しせき込む声が聞こえる時もある。 心配する私に「私ももう歳だしね。」と、小さく笑う。…
「今日は。。。ないんだね?」 よく聞こえなかったけど、頭を撫でるサクラの仕草でわかった。 枕元に置いたスマホが震えてるのに気づいて目が覚めた…
夏の涼しい夜明け前、私はスージーを起こさないようこっそりと家を出た。 アパートの下、薄暗い路上に用意された2台の自転車。そこにはケイトが待って…
「深海に住む。。いのち・・?」 頭が理解しようとしないのはケイトも同じ。小さく聞こえたその答えに、ただ戸惑うばかり。 真っ暗な…
私とスージーが暮らすアパート。その1階に、一人で暮らす女の子がいる。 彼女はケイト。小さなころからの私の友達。 ケイトのお母さんはちょ…
私たちが暮らす深い海の底。光のないこの世界を、ほのかに照らす蒼い朧げな光。 私たちが「ヴィーダ」と呼ぶ、その光る石。 その石に…
かつての都会、高層ビル街。戦火に焼け落ちたのは100年前、いまだに崩れたままの瓦礫の山。 まだ朝早いせいか人の姿はない。それでも誰に見られる…
その場所は 太陽の光も届かない 深い深い海の底 そもそも「太陽」という存在も知らず 生きている命がある 朧な碧を放ち発光する石 その暉(ひかり…
「せかい」っていうものは、多分どこにでもあって それはちっぽけなものであって 時に誰の目にも見えなくて きっと想像もつかない色をしていたりして 私…
またね 黄色い屋根の自動車整備の工場は、去年卒業した先輩の実家。こっそりと、私の好きだった人。 傾いた西日が黄色い屋根をくぐって、その向こうの茜…
さらば剣崎! ここは港区芝浦.,通りの街灯が点る夕方。ななこさんの暮らすマンション。時間は17時、そろそろ夕飯の支度ですか? おやおや?…
ん? ここは・・・、どこ? あれ?わたし。。。 ??? ここ、・・。。恵比寿駅だ。。。 ん? なんで…
よりこちゃんも もうじき8つときこゆ いわけなしとしはすぎ まもなくわれのすがたもみえず げにかなしき おさなきわがすがた おとなにはみえず…
ななこの予想は見事に的中した。あれほど逸れると予測されていた台風は、勢力を強めて日本列島に上陸。 ひっきりなしの緊急警報でwebニュースが…
賑やかで大騒ぎが大好き、根っからのパリピのななこ。それでいてツンデレなとこあるから素直には喜ばなかったけど、私にはわかるんだな…
今日の私の仕事は、朝早くからの納戸の片づけ。 ななこは珍しく帽子をかぶって、屋根の修理に精を出している。指先を使う大工仕事は、人の手のほうが…
2020年9月。 賑やかさを取り戻しつつある渋谷。スクランブル交差点を行き交うマスクの人々。 マスク同様に慣れつつあるのは、今日の…
みなさん、こんにちは、東京のGoToトラベルを強く望むcrollです。 9月26日より連載スタートいたします! 好評いただいている「かっぱのななこ」…
僕らの会話は、LINEそのまんま。 講釈は省かれ、ただ簡潔で。大概は忘れちゃうくらい、どうでもいい話。 傾く日差しがカーテンの…
いつもネット小説「works」をご覧いただきありがとうございます、作者のcrollです。今回はYouTube作品を掲載します。タイトルは「わたしのいない あ…
あいみょんになりたかったのに、なに私ベース買ってんだ? 最終話
きっかけはなんだったっけ? あぁ、そうだ。あいみょん歌って、お姉ちゃんに褒めてもらいたかったんだ、私。 それすら今じゃ忘れてしまってんだから…
あいみょんになりたかったのに、なに私ベース買ってんだ? 5話
「だからぁ!AメロのリフからBメロ行く時のフィルが違うんだって!」 「だからぁ!もっと分かりやすく言って!リフ?フィル?何よそれ?」 「だからぁ!…
あいみょんになりたかったのに、なに私ベース買ってんだ? 4話
今時CDーRで渡された、村上遥からの莫大なベース課題曲。古い洋楽中心なのは、おそらく彼女の趣味。 見かけによらず渋い音楽ばっかだな。。…
あいみょんになりたかったのに、なに私ベース買ってんだ? 3話
村上遥の家はすぐに分かった。 海沿いのこの町がまるっと見渡せる丘。そこにポツンと建つ、昔からの誰かの別荘跡。 もう10年くらい前か…
あいみょんになりたかったのに、なに私ベース買ってんだ? 2話
バスに乗る前に、お店に戻ることもできたはず。 「実は私、ギター買いに来たんです」と、ペコリ謝って。 そこに悪い印象なんか持たれることもない…
あいみょんになりたかったのに、なに私ベース買ってんだ? 1話
6月。 夏日が続く中、ようやくの夏服。・・にも関わらず、容赦ない雨降りって・・なんで? しらんけど。。 今朝の気温は15℃。一体せかい…
今度の土曜、5月30日より小説「あいみょんになりたかったのに、なに私ベース買ってんだ?」を連載いたしますm(__)m。お姉ちゃんが大好き!16歳のシスコン美咲…
連載終わって今更ですが(笑)、かっぱのななこのFacebookファンページがございます。https://www.facebook.com/nanakokapp…
雨が似合う雨が似合うね とあなたが言ったそれは私のこと?私 ばかだからその意味がわからなくて「あ、はい」 だって(笑) そんな 間抜けな答えはあなたに聞こえな…
いとでんわきみの家のポストの上にこっそり 置いていくよ風に飛ばされる前に 気づいてくれるかな? もしもし 聞こえますか わかってくれるかな? 耳…
「かっぱのななこリターンズ」、お付き合いいただきありがとうなのだ。「終わって残念」っていう応援ももらって、私も嬉しいのだ。本当は目黒川のこの写真、今の時期なら…
せっちゃん。 けっこうご無沙汰してしまったのだ。まずは近況からだな。 もえはトニーとイタリアへ行ったのだ。新婚旅行を兼ねて、向こうの家に…
WELCOME! 奈々未と二人して、クレヨンで作ったプラカード。長テーブルの前に貼り付けて飾った。 7月の晴れた日曜日、来客を待つ私…
野郎ラーメン恵比寿西口店。 場違いな女子二人が並んだカウンター席での報告会。 私は「豚野郎ラーメン」。奈々未は「豚骨豚カレー」。 ブヒブヒ話し…
恵比寿から代官山へ向かう、緩い坂の途中。 4件並んだテナントの一つ。とっくに閉店した店に、忘れ物のような灯りが灯る。 レディースの古着…
「もえさん、素敵な方ですね~。ダメですよ、ななこさん!家出してあんなに優しい人を困らせちゃ!」 キッチンで食器を洗うオーナーのなんてことない…
去年より早い開花予想の発表。目黒川沿いの桜並木、そのつぼみが膨らみ始める2月の終わり。 「Pizzaカッパリ」開店30分前。トニーは恨めしそ…
某大学の研究室。 ステンレスのテーブルに、ずらりと並べられた試験管、シャーレ、ビーカー。グラフと共にコンピューターの画面に不規則に並ぶ、AとC…
もう18年前。 通り過ぎた台風の余波なのか、見下ろす海はまだ騒がしかった。 丘の上の家。結界のように囲う白と黒の鯨幕が、強い風にバサバ…
「そう、よかったぁ、ただの貧血で。・・うんうん、お店?大丈夫!今は心配しないでゆっくりしなさい。」 ほんと真面目ちゃん!長くなりそうな電話を…
「なんかさ・・、重いんだよね。もう別れよ。」 それはおとといのこと。 恵比寿アトレ3F神戸屋キッチンで、2カ月付き合った彼氏にばっさり…
みなさま、覚えてらっしゃいますでしょうか? 私の名前は山田誠、52歳。 そうです。 一話後半にてちょっと登場しさせていただいた、剣崎…
「えっ!ななこがバイト!?」 もえはえらく驚いて、箸につまんでいた鳥の唐揚げを床に落とした。今日は我ながら、カリッ&ジュワーと上手…
Oh,My God!! 慌ただしい開店準備の最中、ただならぬオニーの声が響いた。 バイト初日。続々届くお店の荷物を解いては並べと…
Felice Anno Nuovo!! にほんのみなさ~ん、あけましておめでとうございます! 私の名前は「トニー・ムッシーノ…
うす!!! あっ、さーせん!声、でかかったすか?さーせん! 自分はぁ! T大学4年! 相撲部主将! 吉田卓三!! 実…
「2020 TOKYO」 世界的イベントの開催を、誇らしげに貼り付けた黒いタクシー。カウントダウンされた年の瀬。 東京都文京区本郷。春日通り…
12月21日より「かっぱのななこ」の第3章、「かっぱのななこリターンズ」を連載します。 舞台は2020年の東京。河童の女の子「ななこ」と、その周りの仲間、友…
最終話にて、パプアンが新しい命につけた名前。 「」の中が空白になっていますが、決して書き忘れとかではありません。 他にも「」の中が書かれてい…
白いサンゴの墓場、ピアノの音色。 サオラ姉さんが奏でるサティの「ジュ・トゥ・ヴ」。 「かわいいなぁ。。。」 砂に寝っ転がったパプ…
墜落した戦闘機が、海の底へ沈んでいく。抱いていた泡と油を吐き出しながら。 コックピットのガラスが、ひび割れて砕ける。両翼に括られた爆弾が、水…
下駄箱に靴がなかったので、上履きで帰った木曜日。もうすぐ降り出しそうに垂れた灰色の空。 女子野球部がグラウンドで練習してる。フェンスを超…
ヴィーダの光が、緩やかな影を揺らす。長い髪の影で、それがサオラ姉さんだとすぐに分かる。 「コルパタ、どうしたの?怪我でもしたの?」 気づ…
サオラ姉さんにはお気に入りの場所がある。 そこは、白く枯れ果てたサンゴの墓場。 とっくに崩れ落ちた白い粉が、深く積もっただけの彩りのない…
まんまるのヴィーダの石。 それは、闇を照らす淡い光。 私達のひっそり暮らす岩影で、ぼんやりとした銀色の灯を常に燈している。 どこかから…
だれかの願いが …
新作書きました。4月20日より毎週土曜0時公開、全7話となります。深海に住む3人の女の子のお話。3人を簡単に紹介いたします。コルパタ末っ子の怖がり。この物語の…
ほんとのこと いうはずないじゃない たとえば 一時間後 この町は沈みます だなんて ほんとのこと いうはずないじゃない 混乱なく …
もえの故郷、神奈川県の海辺の町。東京とは違う、ピリピリした深い潮の匂いが運ばれる。 葬儀場に隣接する、小さな池のある公園。 庭石…
イチョウの木陰。真上から降る木漏れ日の日だまり。 「とおりゃんせ」でひとしきり、いろんなジャンルの汗をかいた私達。剣崎も眼鏡を直し、人の姿に…
とおりゃんせ とおりゃんせ ここはどこの ほそみちじゃてんじんさまの ほそみちじゃ ちっととおして くだしゃんせごようのないもの とおしゃせぬ…
温かなイチョウのやまぶき色。 そして 燃え盛るモミジの紅。 混ぜられて色づいた秋の並木道。まだ尖っている朝の光が、木洩れ日となって私達に降り指…
肌寒い霧雨が、皇居のお堀に無数の波紋を作ってる。 日比谷通りは傘を持つ人、持たぬ人が半々に行き交う。 東京メトロ日比谷駅。B6出口前の小さなフラワ…
空に浮かんだ2本のレールが、なめらかな孤を描いている。雲一つない秋晴れの空を渡る、東京臨海新交通臨海線「ゆりかもめ」。 新橋駅から乗った私達。空色のシー…
なぜか今、我が家のリビングに剣崎が座ってるのだ。 そしてなぜか私は、キッチンで挽肉をこねているのだ。 冷凍うどんの予定だった晩御飯が、急遽ハン…
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久しぶりの母とのキッチン、夕飯の支度。宿のおかみとして働く母はいつも忙しく、こうした二人の時間も久しぶり。 「おかあさんあのね、今更だけ…
試験の前だったり、いやなレクリエーションの日だったり。良かれ悪かれ「特別な日」というのは、なんとなく予感がする。 普段通りの登校、「おはよ」…
気まずさが飽和してるタクシーの車内。バンパーも出遅れる横殴りの雨。 膝に手を置いて、煙る窓の外を見ている山口さんの横顔。 大雨で帰れなく…
「夕方から夜にかけて、今年最後で最大の台風が伊勢湾を渡って上陸する模様です。」 お店のテレビニュースを見て、事務室の窓から外を見下ろした。…
私がビクトリアで働くことになったのは、去年の夏休み明けだった。 コロナ渦も落ち着いて、学校がスタートした2年生の7月。授業中に貧血で…
お店近くのファミマで、菓子パンと紙パックの野菜ジュースを買った。バイトの日、事務室での朝食のローテーション。大通り沿いの雑居ビルの3F。カバ…
大倉山の輪郭が縁どられる夜明け。 朝5時半のヘッドライトが、バス停で待つ私を照らした。小型トランクとメンズリュックサック。ちょっと重装備な…
知られたくないから、私は発信しない。 そんな私は多分、すっからかんのカラッポな人間だ。 「私はこういう人間です」とか。「私の友達はこんなに素…
「到着まであと5分です。」 機械の声が機内に流れ、クレムトたちは着陸準備に。 慌ただしくなる機内。テーブル上のホログラフに映し出されたのは…
今日が多分、スージーと過ごす最後の夜。 明日はきっと、迎えの飛行船が来る。私はセレクシオとしてパラディソへ。 再びここへ戻って来れたとしても、…
「。。一体、どういうことだ・・?」 私のポケットの中で鳴り続ける着信音。繋がるはずのないスマホの音を耳に、唖然としたクリムトが呟いた。…
波の高い今朝の海岸。風に煽られるマスクを直すと、ケイトは灰色の空を見上げている。 そこは待ち合わせの場所。大雑把な指定だったが、他に人…
スージーは最近元気がない。食事の量も減って夜通しせき込む声が聞こえる時もある。 心配する私に「私ももう歳だしね。」と、小さく笑う。…
「今日は。。。ないんだね?」 よく聞こえなかったけど、頭を撫でるサクラの仕草でわかった。 枕元に置いたスマホが震えてるのに気づいて目が覚めた…
夏の涼しい夜明け前、私はスージーを起こさないようこっそりと家を出た。 アパートの下、薄暗い路上に用意された2台の自転車。そこにはケイトが待って…
「深海に住む。。いのち・・?」 頭が理解しようとしないのはケイトも同じ。小さく聞こえたその答えに、ただ戸惑うばかり。 真っ暗な…
私とスージーが暮らすアパート。その1階に、一人で暮らす女の子がいる。 彼女はケイト。小さなころからの私の友達。 ケイトのお母さんはちょ…
私たちが暮らす深い海の底。光のないこの世界を、ほのかに照らす蒼い朧げな光。 私たちが「ヴィーダ」と呼ぶ、その光る石。 その石に…
かつての都会、高層ビル街。戦火に焼け落ちたのは100年前、いまだに崩れたままの瓦礫の山。 まだ朝早いせいか人の姿はない。それでも誰に見られる…
その場所は 太陽の光も届かない 深い深い海の底 そもそも「太陽」という存在も知らず 生きている命がある 朧な碧を放ち発光する石 その暉(ひかり…