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  • 「日本史を暴く」 古文書発見記

    「日本史を暴く」(磯田道史著2022年11月中公新書)を読みました。怖い顔をした磯田さん(テレビでお馴染みなので、つい言ってしまう)裏、闇、暴くというほどではありません。新聞連載をまとめた軽い一冊。どの章にも〇〇で古文書を発見読んでみたら…とある。新聞を読むような速さで古文書が読めるという磯田さんでなくてはこんなに発見できないだろう。磯田さんは子どもの頃台風で大雨が降ると20km余りの道を自転車をこいで高松城のあたりが水浸しになっているのを見に行って秀吉による備中高松城の水攻めの情景を想像したという。磯田さんはよしながふみの「大奥」も読んでいて「社会の構成員の声をまんべんなく反映させるにはリーダーや会議メンバーに女性・若者が含まれていてその発言が尊重されていなければおかしい。でなければ、その集団は衰退する...「日本史を暴く」古文書発見記

  • 「編めば編むほどわたしはわたしになっていった」

    東日本の震災のあと出来た「気仙沼ニッティング」の製品(地域の人による手編みのセーターを販売)のデザインを担当したニットデザイナーの三國万里子さんのエッセー「編めば編むほどわたしはわたしになっていった」(三國万里子著2022年9月新潮社刊)を読みました。三國万里子という存在が好きです。表紙は最近人形の服作りに凝っているという三國さん作のセーターを着たロシアの作家の人形(ロシアは人形制作がさかんです)中学生のころ学校になじめずに外階段で時間を過ごしたりしょっちゅう早退したりしていたこと。息子さんはなかなか言葉を言わずひらがな積み木で意思表示をしていた。その後母音だけを発音するようになりずいぶん経って子音も言うようになったこと。(今では日本語ペラペラ)大学を卒業して仕事に馴染めずに秋田の山奥の温泉旅館で働いた日...「編めば編むほどわたしはわたしになっていった」

  • 「死に方がわからない」 現代終活事情

    「死に方がわからない」(門賀美央子著2022年9月双葉社刊)を読みました。物騒な題名ですが世に言う「終活」について調べたレポートです。著者は50才過ぎ配偶者、子どもはなく兄弟もいない。郷里にお母さんがひとりで暮らしている。親類ともあまり交流はない。フリーライターなので職場というものもない。そんな著者が(お母さん亡き後)自分のイメージした最後を実現すべく調べに調べたのがこの一冊。問いを立てその解をそれぞれ3つ以上。ここがすごい。人は、1つ解を得たらつい安心してしまうものなのに。問いは◯自宅でひとりで死んでいた場合、どうした早く発見されるか◯どうしたら希望しない(過剰な)治療をしないで死ねるか◯死後の住居やモノの整理はどうしたらいいか◯葬儀や埋葬はどうしたらいいかなどなど死んでしまったら仕方がないという丸投げ...「死に方がわからない」現代終活事情

  • 「小さなことばたちの辞書」 辞書編纂の物語

    まだ初雪は降っていません。「小さなことばたちの辞書」(ウィリアムズ著2022年10月小学館刊)を読みました。。幼くして母を亡くしたエズメは父が仕事をしている辞典の編纂室スクリプトリウムの大きな机の下で過ごすのが常だった。室長のマレー博士(実在の人物)はここで「オックスフォード英語大辞典」を編纂していた。壁には仕切りのある棚がありたくさんのカードが置かれている。国内のあちこちに住む協力者から送られて来たものも多かった。辞典にはことばの語釈だけでなく用例も記載される。その用例を集めることに協力者が必要なのだ。エズメを「育てている」のは父ばかりではない。マレー家の女中のリジー辞典編纂の協力者ディータ(実在の人物)父の仕事仲間の多くもエズメにやさしく接してくれていた。やがてエズメはスクリプトリウムで仕事をするよう...「小さなことばたちの辞書」辞書編纂の物語

  • 「川のほとりに立つ者は」 寺地はるなの新作

    昨日は霰が降りました。「川のほとりに立つ者は」(寺地はるな著2022年10月双葉社刊)を読みました。直立二足歩行の本を読んだばかりなのでこの本を読んでヒトの脳はなぜこれほど多様なのだろうと考えた。縄文時代も江戸時代もヒトの脳は多様だったのだろうか……カフェの雇われ店長をしている清瀬に登録していない番号から電話がかかって来る。恋人の松木が階段から落ちて意識不明の状態で病院に運ばれたという。一緒にいたのは松木の幼い頃からの友人樹(いつき)樹もまた意識不明だった。松木の部屋に行ってみるとホワイトボードや文字を練習したノートなどがあった。手紙の下書きもあった。天音という人に宛てた手紙だ。松木は誰に文字を教えていたのか?なぜそれを清瀬に隠していたのか……登場人物たちの脳の多様さが意識される。ディスレクシア(文字が書...「川のほとりに立つ者は」寺地はるなの新作

  • 「直立二足歩行の人類史」 人類を生き残らせた出来の悪い足

    「直立二足歩行の人類史人類を生き残らせた出来の悪い足」(デシルヴァ著2022年8月文藝春秋社刊)を読みました。立って歩くようになって手が自由に使えるようになったからヒトはここにいると言うけれどそう単純じゃないんだよと著者は言う。著者は考古学者で特に足の化石(足跡の化石も)を研究している。二足歩行をする生物は他にもいる。鳥恐竜の一部カンガルーだって立っている。ヒトは樹上から地上に降りて二足歩行になったという説があるけれどそうだろうか?木の上で既に立っていたかもしれないのだ。(立っている方がより高い枝の実を採れる?)問題は地上に降り立って時々は立っていたヒトがその時々から「常時」になったのはなぜかということなのだ。その答えはまだない。はっきりしているのは類人猿が手の甲をついて歩くナックルウォークから徐々に立ち...「直立二足歩行の人類史」人類を生き残らせた出来の悪い足

  • ザリガニの鳴くところ

    家にいる時間が長いので少し歯ごたえのあるものを読みたいと思って「ザリガニの鳴くところ」(オーエンズ著2020年3月早川書房刊)を読みました。と書いたのは2020年4月この作品が映画化されました。みるかどうか迷います。心を奪われた作品だったので自分の中にある「像」を壊したくない気持ち。みたい気もするけど……迷います、ほんとに。1969年の世界と1952年の世界が交互に語られ始める。1969年の方はミステリ。町でも人気者の青年・チェイスの死体が町外れの火の見櫓の下で発見される。事故なのか、殺人なのか……1952年の世界の主人公はカイア町の人々からは浮浪者の住む世界のように言われている沼地に住んでいる。縦横に川が流れ海に近く森にも近いたくさんの生き物たちが住むところ。ザリガニの鳴き声も聞こえるほど静かなところだ...ザリガニの鳴くところ

  • 「目の見えない白鳥さんとアートを見にいく」 本屋大賞ノンフィクション本大賞

    「目の見えない白鳥さんとアートを見にいく」(川内有緒著2021年9月集英社インターナショナル刊)本屋大賞ノンフィクション本大賞受賞!目が見えない白鳥さんは何か視覚障害者らしくないことをしたいと考えていた。大学生時代、ガールフレンドに誘われて美術館に行ったらとても楽しかったのでそれから方々の美術館に電話をして「視覚障害者なのだけれど、サポートの人をつけてもらえないか」と依頼してきた。初めは断られていたけれどだんだんに受け入れいてくれるところも増えて白鳥さんの趣味は美術鑑賞になった。そして今では美術鑑賞家になっている。視覚障害者なら手に職をと言われて資格を取ってマッサージ師をしていたけれど辞めて美術鑑賞家として立っている。「白鳥さんと作品を見ると、ほんとに楽しいよ」と友人のマイティに誘われて著者は白鳥さんと一...「目の見えない白鳥さんとアートを見にいく」本屋大賞ノンフィクション本大賞

  • 「マーダー・ミステリ・ブッククラブ」 手がかりが多すぎるミステリ

    この秋はミステリが豊作らしい。「マーダー・ミステリ・ブッククラブ」(ラーマー著2022年8月創元推理文庫)を読みました。お固いブッククラブにうんざりしたアリシアは同居する妹リネットの勧めで自分でブッククラブを立ち上げることにする。ミステリを読む読書会だ。新聞広告のメンバー募集に応募して来たのは古着店を営むクレア開業医のアンダース博物館の学芸員のペリー図書館員のミッシー専業主婦と名乗るバーバラところが2回目の読書会にバーバラが現れない。家族に問い合わせるとバーバラの行方が知れないという。ブッククラブのメンバーたちは読書そっちのけでにわか探偵をはじめることになる。それにしても手がかりが多すぎる。バーバラの家のキッチンの冷蔵庫に貼ってあったシェルターの電話番号乗り捨てられたバーバラの車車の中にあったアガサ・クリ...「マーダー・ミステリ・ブッククラブ」手がかりが多すぎるミステリ

  • 「喫茶の効用」 自宅喫茶も

    ぱらぱらととめくったら「お会計時に「いつもありがとうございます」などと言われてしまった日には……」と書いてあるではないか。そうそう、そうなんです(常連客扱いが苦手)ということで「喫茶の効用」(飯塚めり著2021年11月晶文社刊)を読んでみました。著者は喫茶店観察家。◯雨の日に気分を明るくしたい◯都会の真ん中で旅気分を味わいたい◯とにかくひとりになりたい◯朝から気分が上がりません◯悩みごとをちっぽけにしたい◯どっぷり読書につかりたいなどの項目で、喫茶店を紹介している。(イラストも著者)読めば東京に旅に出て喫茶店でひと休みした気分が味わえる。(旅本の効用と同じ)◯巣ごもり期間も心を動かしたいの項目ではコロナの中で、喫茶店を控えていた時に考え出したことが書かれている。家の中にカフェスペースを作って喫茶店からテイ...「喫茶の効用」自宅喫茶も

  • 「物語の役割」

    「物語の役割」(小川洋子著2007年2月ちくまプリマー新書)を読みました。講演を一冊にしたものです。語りでさえも静かだなぁ、この人は。取り上げられているのは「博士の愛した数式」と「リンデンバウム通りの双子」作品の発想が少しずつ広がっていく過程を語っている。「博士の愛した数式」ではさまざまの数学の本を読んで「友愛数」について知った著者の脳裏に「数学者が新聞広告の裏か何かに鉛筆で一所懸命それらの数字を書いて「君の誕生日と僕の腕時計に刻まれている文字は友愛の契りを結んだ特別な数なんだよ」と、家政婦さんに教える場面が浮かんできたのです」↓「そうすると、もう自然にその人物の声の感じとか立ち居振る舞いとか二人の関係が見えてくるわけです」のようにある一場面がまず浮かび上がってきてそこからいろいろなものが見えてくるという...「物語の役割」

  • 「窓辺の愛書家」 ミステリ

    ようやく庭の秋仕舞いを終えました。「窓辺の愛書家」(グリフィス著2022年8月創元推理文庫)を読みました。原題はThePostscriptMurdersPSは手紙に追伸と書くあれ窓から道を見下ろして通行人の記録をとる老婦人ペギー・スミスのイニシャルでもあるから「追伸殺人事件」でもあるし「ペギー・スミス殺人事件」でもある。(表紙にある)高齢者向け住宅・シービュー・コートに住む90代のペギーは窓辺の椅子に座ったまま死んでいた。部屋にはたくさんの本(ミステリ)が残されその多くにペギーへの献辞が記されていた。ペギーは何人ものミステリ作家に殺人のアイデアを提供していたのだ……ストーリが進むにつれて被害者は増え容疑者も増えていく。名前のある人物の中に犯人がいるという法則なのだからと思っても、覚えきれないほどに。(何度...「窓辺の愛書家」ミステリ

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