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医療、特に緩和ケア・訪問診療・看取りに関する話題。

元ホスピス医、現訪問診療医。ライフワークの緩和ケア、認知症治療、看取りに関する話題です。

baumkuchen2017
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大田区
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2017/04/05

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  • 『「親の死に目に会う」のは親のため?自分のため?』

    お早うございます。ブログを更新しました。親の死に立ち会うということについて。『「親の死に目に会う」のは親のため?自分のため?』https://ribbon-clinic.com/meet_death/

  • 『介護あるある?医者の前では、いつも元気な患者さん』

    こちらのブログで書いた過去の記事のリライトになります。 普段と違う姿を見せてしまう患者さんについての考察です。ribbon-clinic.com

  • プラセボとノセボ。偽薬は誰のための「優しい嘘」?

    クリニックのブログを更新しました。とある介護の仕事をされている方が、睡眠薬だと言い利用者さんに「偽薬」を手渡すことをためらう気持ちをツイートされていました。しばしば「優しい嘘」と表現される偽薬とどう向き合うのが良いのか。個人的な考えを書かせていただきました。よろしければ、ご覧下さい。 ribbon-clinic.com

  • お金を払えば名医になれる?「信頼できる医師」の評判の秘密

    クリニックのブログを更新しました。名医、頼れるドクターなどの多くは、実は広告ですというお話。よろしければ、ご覧下さい。ribbon-clinic.com

  • ブログ移転のお知らせ

    今後は、私のクリニックのブログに統合させて頂こうと思います。 WordPressで作りましたが、結構楽しかったです😊もっと分かりやすいブログを目指しますので今後とも よろしくお願い致します。ribbon-clinic.com

  • 看取りにルーチンに酸素が必要なのか

    久し振りの更新です。昨年Noteを始めたため、 ブログの更新を中止しようと思ったのですが 内容によってはこちらの方が読んでもらいやすい かなと思い、こちらで更新することにしました。表題の件ですが、最近ある看取りを積極的に行う 施設で患者さんを担当することになった時の話です。 患者さんの死期が近づき、SpO2が測定不能、 たまに拾える数字が80%台になった時のこと。「先生、そろそろ酸素入れといてもらえませんか」 と看護師さんに言われ、ちょっと驚きました。 在宅でたくさんの看取りをしている私ですが、 SpO2が低いというだけで酸素を使うという発想が 私にはなかったので。「患者さん、全然苦しそうじゃ…

  • 2020~2021年で最も読まれた記事3つ

    お早うございます。過去の記事で、 多く読んで頂いたものを ピックアップして紹介する シリーズも最終回です。今回は2020年~2021年、 記事が少ないので まとめてご紹介します。私がいくまでもたせて下さい kotaro-kanwa.hateblo.jp 「死に目に会う」と言いますが、 自分が到着するまで 心臓マッサージを行うのは 誰のためでしょうか?意識が戻ることは殆どないにしても もし戻った時にどんな苦痛が待っているか 知っておいて頂いた方が 良いように思います。『だから、もう眠らせて欲しい』 kotaro-kanwa.hateblo.jp緩和ケア医の西先生が ご自身の体験から 安楽死につい…

  • 2019年、最もよく読まれた記事3つ

    ブログを振り返り、 たくさん読んで頂いた記事を まとめています。 今回は2019年の3つ。だいぶ記事が少なくて 全部で30くらいしかありません…。 2週間に一度くらいの 更新だったということですね。「患者の自己決定」の難しさ kotaro-kanwa.hateblo.jp患者さんが治療や生き方を選択することは 何故難しいと言われているのでしょうか。鎮静と安楽死 kotaro-kanwa.hateblo.jpどちらも結果は「患者さんの死」 かもしれません。 しかし、もしそうなら 自殺と 天寿を全うした老衰死は 同じですか?言えない医者、聞けない患者 kotaro-kanwa.hateblo.jp…

  • 2018年最も読まれた記事3つ

    こんにちは。今日は昨日に引き続き、このブログで最も 多くの方に読んで頂いたものをピックアップ してご紹介します。本日は2018年版になります。 記事の出来はともかく 多くの方に知って頂きたい、 考えて頂きたい内容です。在宅看取りと事故物件 kotaro-kanwa.hateblo.jp事故物件、重要事項の定義が曖昧です。 自死や殺人事件はともかく 病死や孤独死はどうなのか。 行き過ぎた対応は 家族への損害賠償請求や 高齢者や健康に問題があると分かると 入居を断られるケースが増えるのでは ないかと思います。心肺停止で救急車を呼び警察沙汰になった話 kotaro-kanwa.hateblo.jp決…

  • 2017年最も読まれた記事4つ

    こんばんは。 いつもブログをご覧頂き、 有難うございます。実は、ブログの引っ越しを 考えておりまして、 約4年続けたこのブログ、 一旦終了にしようと 思っています。その前に、記事が埋もれて しまうのもなんかさみしく、 最も読まれた記事、 反響を頂いた記事を まとめて紹介したいと思います。 まずは、2017年版です😊※本当は3つのつもりでしたが 絞り切れず 4つになってしまいました💦緩和ケア医とDr.キリコ kotaro-kanwa.hateblo.jp緩和ケアは安楽死のような ものではないか、との誤解を よく聞きます。 そうではなく 安楽死を不要にするための アプローチが緩和ケアなのです。最高…

  • 治療の選択における医師の影響力

    先日Twitterで胃瘻に関する話題を 書きました。患者さんも奥さんも 延命はしないと言っていましたが いざ入院し食事が出来なく なった時、ご家族に迷いが生じ、 結局胃瘻をすることになりました。胃瘻について本来はもっと詳しく 話しておきべきでしたが 「しない」と言われているのに 胃瘻の具体的なメリットや デメリットについて話すのも どうかと思い、 それ以上話が来なかったのです。ですので、「これからも奥様と 話し合いを続けていく」と ツイートしました。 すると、私が無理にやめさせると 思ったのでしょうか。「医師に反対されたら それを押し切って治療の判断を するのは難しいのが 分からないのか」とい…

  • 『いのちの停車場』

    5月から上映が始まった、『いのちの停車場』。 訪問診療を題材にした映画です。 残念ながら都内では「緊急事態宣言」延長の ため観ることが出来ません。 俳優陣がとても豪華で良さそうなのですが 他県に行く時間もなく、私は小説を読むこと にしました。いのちの停車場 (幻冬舎文庫)作者:南杏子幻冬舎Amazon注意: 内容は、一番大事なところは伏せますが 一部ネタバレを含みます! これから映画を観る、小説を読む方で 知らずに読みたい、という方はご注意下さい。 ↓ ↓ ↓ さて、作者の南杏子先生は老年医療に熱心な先生で 内容は訪問医の私がみてもしっかりとしています。 もちろん、小説としての面白さが必要なの…

  • 患者さんの「死にたい」という言葉

    今日は、こまち先生のブログを読んで考えたことを書きます。ameblo.jpまずブログがとても良いので是非お読みください。私は訪問診療を行っていますので、がんの終末期の患者さん や、介護を受けている高齢者の患者さんと出会い、話をする ことが多いのですが、患者さんから「死にたい」と言われる ことは割とよくあります。とは言え、多くは 「先生、一服盛ってよ」 「早く逝きたいよ」 と半ば挨拶替わりに、下手をすると笑顔でおっしゃる年配の 患者さんです。このような患者さんは一方で、たとえば胃が 痛い時に「がんではないか」ととても心配したりします。では、このような患者さんは本当には死にたくないんでしょ、 とい…

  • 85歳、フルコース

    患者さんの状態が急変し、心肺停止あるいはそれに近い 状態(バイタルサインが悪化していく状況)にある時、 昇圧剤を使用したり心肺蘇生を含めあらゆる医療行為を 行い回復を目指す時、医療者はよく「フルコース」と いう言い方をします。これに対して蘇生行為を行わず 自然に患者さんの身体が衰弱し呼吸や心臓が止まるに 任せることを文字通り「ナチュラルコース」と呼び ます。医療者でない方は、「何故治療をしないという選択肢 があるのか」と不思議に思うかもしれません。 理由は、一言で言えば心肺蘇生で患者さんの意識が 戻った時、患者さんの状態がとても悪ければいたずら に患者さんを苦しめるだけに終わってしまうからです…

  • 『早川一光の「こんなはずじゃなかった」』

    往診医の大先輩である早川一光先生は、多発性骨髄腫の ため2018年6月にご自宅で亡くなりましたが、この本は 同タイトルで京都新聞に連載していた早川先生の連載を 娘さんがまとめ、介護の様子を加筆して出版された本になります。早川一光の「こんなはずじゃなかった」作者:早川さくら発売日: 2020/02/13メディア: 単行本「診る」側であった早川先生が、「看られる」立場となった時、 先生は「こんなはずじゃなかった」とおっしゃいました。 もちろん、色々な意味がこめられた言葉だと思いますが 「往診中に死んだら本望」という先生も、ご自分が介護を受け、 介護用ベッドで過ごすことになるとは思っておられなかった…

  • 「緩和ケア」の名称をもう一度考える

    Twitterで話題になったので、もう一度「緩和ケア」という 言葉について思っていることをまとめてみたいと思います。何度もお話している通り、本来「緩和ケア」には「終末期」 という意味は全くありません。患者さんの困りごとを助ける、 様々な医療やケアの総称です。個人的には大好きな言葉です。 しかし、実質がんの終末期の患者さんしか利用出来ない 病棟の名称が「緩和ケア病棟」であったり、理解のない 医療者が、これ以上治療を続けることが出来なくなった 患者さんに、「もう、あとは緩和ケアしかないですね」と いった表現をすることから、緩和ケア=終末期という イメージがすっかり出来上がってしましました。 もちろ…

  • 代替医療を否定するだけの医師は「毒親」になっていないか

    代替医療について、これまでもブログで書いて来ました。kotaro-kanwa.hateblo.jpkotaro-kanwa.hateblo.jpパターナリズムという言葉があります。 Wikipediaによれば、 強い立場にある者が、弱い立場にある者の利益のためだとして、 本人の意志は問わずに介入・干渉・支援することをいう。 親が 子供のためによかれと思ってすることから来ている。 日本語 では家族主義、温情主義、父権主義、家父長制、中国語では 家長式領導、溫情主義などと訳される。 医療でパターナリズムと言えば、「父親」である医師が、 知識が少なく正しい判断が難しい患者さんのために正しい 選択(治…

  • 「何処で亡くなるか」より大事なこと

    最終的に自宅で亡くなった患者さんの家族から、 「最後まで家にいさせてあげられて良かったです」 という言葉を頂くことが多いです。 「そうですね」と答えると同時に、在宅医として お役に立てたと嬉しく思う瞬間でもあります。しかし、自宅でなく病院で亡くなった患者さんは 「良かった」とは言えないのでしょうか? 今日はこのことを少し考えてみたいと思います。実は多くのご家族は患者さんを病院で見送ったことを そこまで強く後悔したり残念に思っていないようです。 むしろ「一人で見送る自信がなかった、病院で 良かった」「自宅だと責任を感じ、苦しかった」と おっしゃるご家族すらいらっしゃいます。 もちろん「家で最期を…

  • 『男の孤独死』

    本日は、長尾和宏先生の著書の紹介です。 お断りしておくと新刊ではありません。2017年のちょうど 今頃に出版されたものです。買っておいてすっかり読む のを忘れておりました。 男の孤独死作者:長尾 和宏発売日: 2017/12/21メディア: 単行本(ソフトカバー)『孤独のグルメ』という人気番組があります。 輸入雑貨商を営む井之頭五郎というオジサンがひたすら 美味しそうに料理を食べるだけの番組です。 タイトルは「孤独の~」となっていますが、皆さんは 五郎さんを不幸そうだと思うでしょうか? 「孤独死」という言葉はとてもネガティブなイメージを 含みますが、それが幸せか不幸かと他人がどうこう言う こと…

  • 日本は異様に身体拘束が多い?

    先日、石川県の男性が身体拘束中に肺塞栓を起こし、その後 死亡した件の判決が名古屋高裁でありました。 この件について私は詳しく知りませんのでコメントが難しい のですが、亡くなった患者さんは拘束に至る前に看護師への 暴力行為があり、「人を割けば」拘束をせずとも必要な治療 が出来たとする判断には、どこにその「人」がいるのかという 疑問を感じずにはいられません。さて、以下は12月17日の朝日アピタルの記事から。精神科病院の身体拘束、諸外国の数百倍 「異様に多い」:朝日新聞デジタル記事によると 研究は日本、米国、オーストラリア、ニュージーランドの研究者が、 それぞれの国で公開されている2017年のデータ…

  • 『がんになった緩和ケア医が語る「残り2年」の生き方、考え方』

    この秋に出版された、緩和ケア医 関本 剛先生の著書です。 タイトル通り、肺がん脳転移、治癒は見込めず、 生存期間の中央値は2年と。 少し前に購入してしましたが、同じ世代の緩和ケア医、 開業医であり訪問診療も行っている先生ということもあり なかなか本を開くのにエネルギーが必要でした。がんになった緩和ケア医が語る「残り2年」の生き方、考え方作者:関本剛発売日: 2020/12/03メディア: Kindle版本を開いてみると、考えていたよりも共通点が多く、 もちろん私などよりずっと優秀な先生なのですが、 医師になった歳も一年違い、がんを学びたく消化器内科 に入局したこと、クリスチャンであること、」 …

  • BSC(ベストサポーティブケア)という言葉

    病院の先生からの情報提供書に、「BSCの方針となりました」、 「BSCを選択されました」等という言葉が書かれていることが いつしか増えて来たように思います。BSCはBest Supportive Careの略ですが、抗がん剤や手術などの有効な治療がなく、 「今後患者さんに積極的な治療を行わない」を指すことが多く、 サポーティブケア、つまり苦痛を和らげる治療のみを行って いく、というニュアンスです。「治療を行わない」とは書かず BSC等という言葉を使う辺りがオブラートで包む日本人らしい 表現だと思いますが、しかしどうもこのBSCという言葉、 私には違和感がありました。緩和ケア医としては、「サポー…

  • 安心して死にたいと言える場所

    だから、もう眠らせてほしい 安楽死と緩和ケアを巡る、私たちの物語作者:智弘, 西発売日: 2020/07/14メディア: 単行本『だから、もう眠らせてほしい』 以前私が紹介した西 智弘先生のこの本。 安楽死について緩和ケア医としての考えや葛藤をまとめた 素晴らしい内容です。ちなみに私が以前に紹介した記事は こちらです。kotaro-kanwa.hateblo.jp今回はこの本の中の、8章に当たる、松本 俊彦先生との 対談を取り上げてみたいと思います。松本先生は自殺対策 に取り組んでいる精神科医です。対談の全てが、前半部分 も非常に興味深いのですが、恐らく松本先生が最も伝え たい内容、「安心して…

  • 『死亡直前と看取りのエビデンス』

    今日は久し振りの本の紹介です。全く新刊ではないです。 過去にTwitterでも紹介したように記憶しています。 既に読まれたという方も多いかもしれませんが、まだ の方は是非お勧めしたい本になります。死亡直前と看取りのエビデンス作者:森田 達也発売日: 2015/10/08メディア: 単行本内容は医療者向けですが看取りを考えている御家族の 方も、知識を持つことで色々な備えが出来るのではないか と思います。今の日本は、亡くなる方の殆どが病院であり、 亡くなる過程についての経験・知識が本当に少ないと 感じます。これだけ情報がたくさんある時代でも、 看取りに関しては直接関連のない方にはあまり興味を 持た…

  • 何が「本人の意思」なのか

    終末期の患者さんに、「どのような治療を受けたいか」、 あるいは「受けたくないか」を決めて頂くことは、しば しば難しくなります。意識がはっきりしていない事も 多くありますし、記憶や判断力が落ちた状態での「意思」 を、御本人の本当の意思として捉えて良いのかという 問題もあります。もちろん「出来るだけ本人の望み通り」 と考えている家族が多いと思いますが…。例えば終末期の患者さんがせん妄状態になり、幻視や 妄想が出現している。ずっと自宅で最期まで、という 本人の希望でみんな頑張って来た。しかし、患者さん は「つらいから入院したい」と言い出した…。考え方は大きく分けてふたつあると思います。考えが 変わる…

  • 記憶より感情を

    認知症の患者さんのご家族が患者さん本人に対して、 出来事や約束をどうにか思い出してもらおうと画策する ことがあります。これは当然の心理ですが、相手が認知症 の患者さんである以上、この試みはうまくいきません。 よく見掛けるのは、約束事を書いて壁に貼り付けたり、 「念書」を書かせたり、あるいは写真や動画を撮って後で 見せたり。しかしこれを見て「そうだったわね」と思い 出す方は、そもそもこんな事をしなくても説明だけで思い 出すのではないでしょうか。特にアルツハイマー型認知症では、初期には印象に残る エピソードは覚えていたり、気遣い、取り繕いなど記憶 以外のことはさほど失われていないことも多いので、 …

  • 『安楽死に至るまで』

    この本は、今私がTwitterでフォローさせて頂いている、 くらんけさんが書かれた本です。 くらんけさんは、スイスで安楽死(正確には介助自殺) の権利を得ている方で、この本は「スイスで安楽死の 権利を得るための手順」が書かれています。 安楽死反対の方にはとんでもない本ということになります が、安楽死を切に求めている方にとっては、これだけの 知識をネットや本で集めるのは大変だと思いますので、 とても価値の高い本になると思います。 それだけでなく安楽死そのものの知識・仕組みについても 大切なことが書かれていますので、安楽死の知識を得る にもとても良い本です。安楽死に至るまで: スイスで安楽死の権利…

  • 私が行くまでもたせて下さい

    9月6日にTwitterで私がこのような書き込みをしたところ、 人生の終末期に「心肺蘇生」をして意識が戻った人を 何人かみましたが、肋骨がボキボキになっている痛みは 相当なもののようです。全身状態が非常に悪いので、 食べたり普通に話したり笑ったりはとてもではないですが 出来ません。「受容」は本人ではなく、周りにこそ必要 だと思います。 多くの反応を頂きましたが、その中に遠方にいる家族が 「これから新幹線で向かいますから、それまで母を もたせて下さい」 と言われ、2時間半心臓マッサージを行った、という 経験をお話して下さった方がいらっしゃいました。これ、モヤモヤしますよね。おかしくないですか? …

  • 緩和ケアは安楽死を望む人を救えるのか

    47NEWSの『安楽死を問う』の4回目は、西智弘先生でした。www.47news.jp西先生は、2020年7月に、『だから、もう眠らせてほしい』と いう、安楽死と緩和ケアについての本を出版されました。 私も8月9日のブログでこの西先生の本について感想を書かせて 頂きました。kotaro-kanwa.hateblo.jp私も緩和ケア医としての願いは、緩和ケアによって安楽死が 必要なくなることです。ただ、考えれば考えるほど、そんな ことが出来るのだろうかという疑問が生じます。まず、西先生もおっしゃるように心の問題、精神的な苦しみ には緩和ケアはほぼ無力です。もちろん安定剤や傾聴のスキル を学ぶこと…

  • 偽りの希望は是か非か

    昔、自分が書いたブログを読んでいて、代替療法に ついて書かれた記事を見つけました。blog.livedoor.jp 大部分の患者様は病気を受け入れ、自分が長くない事を ご存知ですし、食品で癌が治らない事も理解されています。 しかし、同時に現実的ではないにせよ『がんが治る』 希望も何処かで持ち続けていたいのではないかと 思います。これは当然の気持ちではないでしょうか。 私のような弱い人間はその気持ちがよく分かります。 気休めを言う事は良い事ではありませんが、かと言って 非現実だから、と希望を全て否定し、貴方は死ぬしかない、 と強調する必要はあるのでしょうか? 私の代替療法についてのスタンスは、こ…

  • 備えること、備えないこと

    今年になり、比較的若く独居のがんの終末期の患者さんを 引き受けることが多くなりました。 昔と比べると、抗がん剤の副作用が軽減し、 ぎりぎりの状態まで抗がん剤治療を行うことが多く、 いよいよ治療が終了し外来通院が出来なくなると残された お時間が1~2か月、ということも稀ではありません。訪問を引き受けた私達は、短い期間で御本人が今後どう 過ごしたいのか、病状の変化があった場合入院を希望 するのか等を確認していかなければなりません。 いわゆる「アドバンス・ケア・プランニング」ですが、 患者さんは「まだ考えたくない」という意思表示をされる ことが結構多いです。 家族がいる場合は、自宅療養もそこまで困難…

  • 『だから、もう眠らせてほしい』

    だから、もう眠らせてほしい 安楽死と緩和ケアを巡る、私たちの物語作者:智弘, 西発売日: 2020/07/14メディア: 単行本緩和ケア医、西智弘先生が「安楽死を受けたい」 と訴える二人の患者さんを通し、安楽死について 考えていく内容。 途中、多発性骨髄腫を発症し闘病中の写真家、 幡野さんや、世界中の安楽死を取材している 宮下さん達との対談も紹介されています。 とても読みやすく、同じ緩和ケア医として興味深く 共感しながらしながらイッキに読みました。緩和ケアとは、安楽死のようなものだと思って いる人もいるかもしれませんが、全く逆で、 あくまでその人が今まで生きて来た生き方を 妨げる苦痛を取り除き…

  • 一体誰と話しているのか

    筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者女性の依頼を受け、 「殺害した疑い」があるとして、7月23日に二人の医師が 逮捕されました。この事件はTwitterでも大勢の人が取り 上げ、またこの事件について書かれた記事も多数、 インターネット上で読みました。識者は「この事件を機に安楽死を語るべきではない」と 言います。言いたいことは分かります。日本において 医師の行為が罪に問われるかどうか、違法性阻却条件と いうものがありますが、そんなものを持ち出さなくても 初めて患者宅を訪れた医師が会って10分で致死量の薬物 を投与した、とするとこれは疑問が沸いて当然です。 まだ裁判も始まっていない事件ですし、分から…

  • 訪問をお断りすること

    今回は日記のような内容になります。開業して、7月1日で7年目を迎えます。 訪問診療の殆どは紹介で成り立っています。 病院の連携室、訪問看護師さん、ケアマネジャーさん が、「この患者さんは虎太郎先生が合っているのでは」 と考えて下さりご紹介を頂くことはただただ感謝しか ありません。しかし一方で、一人開業医、(一年に1回くらいは 連携しているクリニックに助けてもらうことがあり ますが)なのでおのずと担当出来る患者さんには限り があります。私は外来もやっていて看取り間近の患者 さんも常にいるので、月60~70人くらいでも結構 いっぱいいっぱいになってしまいます。 家族にもただでさえ、旅行は無理・夜中…

  • 「在宅ひとり死」に必要なこと

    Yahooに、上野千鶴子さんの「在宅ひとり死」についての 記事がありました。news.yahoo.co.jpよく、おひとり様が在宅死を迎えることが出来るか、と いうことが話題になります。結論を言えば可能ですが いくつか条件があります。まず、ご本人の強い決意と 意思表示があること。これがないとご本人の意思表示が 困難になった時に周囲の人々が迷うことになります。 また、ご本人の想いをかなえようという気持ちを持つ 看護師、介護士、ケアマネといったチーム。 緩和のマインドとスキルを持つ在宅医。特に私は適切な「鎮静」が行える医師が良いと 思います。「在宅では鎮静など不要」と言い切る 在宅のカリスマ医もい…

  • 危険を事前に伝える難しさ

    眠剤に関係すると思われる転倒が、時々起こります。 そもそもあまり処方したい薬ではないし、 最大限注意はしますが、それでも起こります。 特に、がんの終末期では皆さんぎりぎりの状態で トイレまで歩かれるので、転倒の確率は飛躍的に 上がってしまいます。転倒の危険は、私はかなりしっかりと話していますが、 いざ転倒が起こると事前のお話を「聞いていない」と おっしゃるご家族が少数ですがいらっしゃいます。 この時は、 「後遺症の残る怪我もあるので気を付けて下さいと お話しましたよね?」 と具体的な言葉を言うと、「あ…」という表情に なります。ちなみにこの、「後遺症が残る怪我」と いうフレーズは、インパクトが…

  • 認知症介護を取り巻く感情

    認知症のケアで最もやってはいけないことのひとつは、 御本人の記憶違いや出来なかったことに対して厳しく 注意したり叱責することだと思います。 もちろん一生懸命介護をしている家族を責める意図は ありませんし、仕方のないこともあると思います。 ただ、ほぼ確実に「倍返し」があると思った方が良い です。介護は余計に大変になります。 これは認知症以前に、人と人の関係が、「怒り」で 良い方向に向かうことは殆どあり得ず、 ほぼ関係を悪化させることしかないからです。良く言われるように、認知症の方でも感情に基く 記憶は保たれやすく、言われた内容は覚えていなくても、 嫌なことを言う相手に対して怒りや不安等の ネガテ…

  • トラムセットによる食欲低下は意外と多い

    今年に入り、「食欲が落ち、衰弱したため訪問診療を お願いしたい」という患者さんのうち、食欲低下の 原因が「トラムセット」という痛み止めであった方が 偶然とは言え3人続いたため、これは注意喚起した方が 良いのでは、と記事にさせて頂きました。トラムセットは、トラマドールという弱オピオイドと、 アセトアミノフェンという鎮痛剤の合剤で、各種癌の ほか、「慢性疼痛」に適応があります。法律的に 麻薬に分類されていないので使いやすく、なかなか 効果も高い薬です。最近は整形外科領域を中心に、 ロキソニン等のNSAIDsが十分に効かない患者さんや、 NSAIDsの長期使用による副作用が懸念されるケース でよく使…

  • 電話・オンラインによる訪問診療についての提言

    新型コロナウイルスの流行を受けて、厚生省は2月28日から 定期的な外来受診の代わりに、電話・オンラインでの再診を 認め、続いて4月13日より初診も、直接クリニックや病院を 訪れることなく診察を受け、薬を受け取ることが可能と なりました。しかし、4月15日現在、訪問診療は電話・オンラインを定期 訪問に代えることは許されていません。何故なのでしょう。 私は訪問診療こそ、電話・オンラインによる指導・管理が 必要なのではないかと思っています。…何故か。これは4月1日のブログにも書いたのですが、kotaro-kanwa.hateblo.jp訪問診療を行っている開業医は、自らが新型コロナウイルス に感染す…

  • 介護崩壊の足音

    新型コロナウイルス蔓延に伴い、本来必要な医療を提供 出来なくなる『医療崩壊』が懸念されていますが、介護 も結構厳しい状況になっています。www3.nhk.or.jp昨晩のNHKのWEB NEWSの記事ですが、緊急事態宣言の 出ている7都道府県で、なんと234の介護事業所が既に 休業中とのこと。多くはデイサービスですが、ショート を受け入れている施設や介護サービス事業所を含む、と 記事にはあります。もちろんこれらの事業所は休業要請の対象ではありません が、「地域での感染の発生」、「マスクや消毒液など衛生 用品の不足」、「事業所での人手不足」等が理由として 挙げられていました。友人の勤めているデイ…

  • 新型コロナウイルスの流行のなかで

    【追記】 この記事を書いてすぐのタイミングで、大田区の老健の 職員に新型コロナウイルスの患者さんが出ました。 いよいよ、近くま迫って来ました。 ブログ記事の内容が実際に起こりそうです。都内でも新型コロナウイルス陽性の患者さんの報告が 増えて来ました。そんな中、本日のYahooのニュース 記事で訪問診療が取り上げられていました。headlines.yahoo.co.jp記事は北海道のものですが、 現状では、いつ私達の訪問エリアにウイルスが入り込む は分かりません。地域医療は病院や診療所、訪問看護 ステーション、介護事業所、デイサービスなどかなり 密接な繋がりがあり、患者さん・家族・職員の間で 瞬…

  • 「いい在宅医」を探す時に大切なこと

    こんな記事がありました。dot.asahi.com記事は、いい在宅医の条件として以下を挙げています。 1.自宅から近い 2.訪問看護やケアマネジャーと連携がとれている 3.看取りの実績概ね賛同します。 まず、1.ですが非常に大切です。自宅から離れれば一般的に 距離に反比例してサービスの質は下がってしまうでしょう。 患者さんの具合が悪いという連絡があったとして、近い 患者さんであれば医師も余った時間に立ち寄りやすい ですが、往復1時間かかる患者さんの家であればそう簡に 「訪問の合間に対応」が出来ません。物理的な距離は重要 です。2.は当たり前なのですが十分に出来ていないクリニックが 多いです。連…

  • BZ系薬中止の議論の前に

    2月2日の、AERAの記事です。dot.asahi.com高齢者への睡眠薬、安定剤の処方が危険なことは正しいです。 転倒⇒大事な骨を折ってしまうことで取り返しのつかない ことになるかもしれません。きちんと覚醒していない状態で 食事を摂れば誤嚥のリスクも高くなるでしょうし、たった 一度の誤嚥が命取りになることもあるでしょう。 常用量依存の問題や、議論はあるとは言え永続的なに認知 機能の低下に繋がる可能性も否定出来ません…少なくとも 廃用などで間接的に認知症の発症や増悪のリスクはある でしょう。しかし、この手の記事を読んでいつも思うこと。「身体 抑制」等の記事でもそうなのですが、「では、どうすれば…

  • 救急搬送は訪問診療の「失敗」か

    今日は、こんなタイトルにしてみましたが、訪問診療医の 多くは特に看取りを意識して訪問している患者さんの場合、 患者さんが救急搬送になると自分の訪問が「失敗してしまった」 と感じる医師が、あるいは看護師が、割合に多くいるようです。 講演や勉強会でも、「残念ながら入院となってしまいました」 と申し訳なさそうに話すDr.を数多く見て来ました。 かく言う私も、そのように考えることがあります。確かに救急搬送は蘇生⇒延命治療となり易く患者さんの安らか な最期を妨げる可能性が高いとも言えます。在宅では診断能力 治療こそ病院に大きく劣りはしますが、抗生剤治療、輸液、 のほか在宅酸素やオピオイド、鎮静なども行え…

  • 患者さんに『寄り添う』とは

    私が訪問診療医として特に大切に考えていることは 「対話」です。ですので私は一人当たりにかける 時間は数十分、移動を合わせ一時間程度時間がとれる ようにしています。御本人が会話が出来ない方では 御家族と。そしてメールや電話でも殆ど私自身が対応 し話を聞くようにしています。そして極力、患者さんの価値観や考えを大切にしよう と心掛けています。しかし、その考えや価値観が、 医療者である私のそれとは大きくかけ離れている時、 やはり葛藤を感じることがあります。 たとえば、効果が殆ど期待出来ず、逆にリスクの高い 段階での抗癌剤治療、エビデンスのない高価な免疫 療法を患者さんが希望された時。老衰の患者さんに …

  • 酸素投与は緩和ケアにつながるか

    medical.nikkeibp.co.jp本日17日の、日経メディカルの記事です。何か新しい知見でも あるのかと期待してしまいましたが、特に目新しい内容では ありませんでした。上記は会員登録しないと見れませんし、 私の以前書いた記事が我ながらよくまとまっていますので よろしければお読みください。kotaro-kanwa.hateblo.jp言うまでもありませんが、呼吸苦の原因が取り除ける場合であれば 原因を除去するのが先決です。ただ、患者さんが衰弱するに従い、 出来る検査や治療もかなり限られて来ます。特にがんそのものが 直接的な原因であれば、治療出来ない患者さんの場合治療で改善 することは望…

  • 「カウンセリング」から学ぶこと

    私は今、カウンセリングの資格を勉強していますが、 医療とカウンセリング、どちらも「問題の解決」を 目的としながら、考え方が大きく異なることは興味 深いと思います。医療は、具体的な問題の解決策を医師が考えて提案 します。より専門的な知識が必要で、選択の間違い が患者さん本人に、時に大きな不利益が起こる ばかりか、感染症などでは他の人々にも危害が及ぶ 場合すらあります。保険診療という特徴や、多くの 患者さんを短期間で診なければならない医師は、 カウンセラーのように対応出来ないのは当然です。一方でカウンセリングは、カウンセラーが問題の 解決法を提示することは基本的にしません。 クライエントが自分で考…

  • 言えない医者、聞けない患者

    Aさんは、あるかなり進行したがんの患者さんです。 一時期抗癌剤が効いて安定した時間を過ごせていましたが 治療に効果がなくなり、そんな中がんが原因と考えられる 腸閉塞で入院となりました。運よくイレウス管が抜けて 退院出来ましたが、腹水は溜まり食事は流動食に近いもの。 トイレも行けず自宅ではポータブルトイレを使用することに なりました。全身状態は不良でPerformance Statusは3。しかし病院は 新たな抗癌剤を提案しました。理由は、「本人が希望する から」。しかし全身状態を鑑み、抗がん剤は通常の半分の 量となったようです。「私、体調良いのよ。治療でがんを 治すの!」とAさんは笑顔で答えま…

  • 施設系訪問診療の難しさ

    昨日、「施設系訪問診療のピットフォール」という勉強会 に参加させて頂きました。その中でとても共感したことは、 施設の「担当者」、これは主に看護師さんですが時に 施設長さん等も含みますが、要するに「本人」と「家族」 以外の担当者が介在する難しさです。これは病院や、個人 の在宅診療ではあまりない問題です。具体的には、報告をして下さる職員により、同じ事象に 対する報告が異なるのです。これはある意味当然で、 人間は誰しも人生経験や価値観などを基準に物事を判断 し、そこに自らの感情や感想を加えて他者に伝達して います。しかし、担当医としてはどの報告を基準に、 治療を考えたら良いか悩むことがあります。 医…

  • 24時間体制、個人的な考察

    最近、とある訪問看護ステーションが24時間対応の体制を やめたとお聞きしました。長くお付き合いをさせて頂いて いるステーションで、今後も良い関係を続けられたらと 思っていたので残念に思いました。もちろん、考え方の問題であり良い悪いではありません。 対応をしたくても、職員の考えや体調、人員の確保が 困難など色々な理由もあると思います。しかし冒頭で私が「残念」とお書きしました。何故残念に 思ったのか自分なりに分析してみました。 まずは私が重症者や看取りを担当することが多いこと。 一方で24時間体制を敷かないということは恐らく軽症の 患者さんを担当することを意味しますので、単純に物理的 に連携の機会…

  • ACPのポスターに思うこと

    厚生省の発表した、ACP普及のためのポスターに批判が 集まり、自治体へのポスターの発想やPR動画の公開を 中止にしたという記事が出ていました。www.asahi.comこのポスターは厚生省が吉本興行へ作成を依頼していた ものらしく、対象は「ACPは他人事」と思っている若年者 から健康な40~50代を意図しているのは明らかであり、 そうであれば逆に長閑な風景や人々の笑顔のポスターで あれば、全くと言って良いほどインパクトはないでしょう。 吉本興行なら、多くのこれらの人々の気持ちを掴むことが 出来ると思ったのかもしれません。しかし当然のことながら、ポスターは闘病中の患者さんや その御家族の目にもと…

  • 介護サービス導入の不安や抵抗感について

    癌で療養中の患者さんが訪問診療を希望する段階、つまり 病院に通うことが難しい時、その患者さんに残された時間 は2~3か月以内ということが多いです。そしてこの2~3 か月は、これまでの数年に比べてずっと症状の変化が大きい です。私達は多くの患者さんを診ていてそれが分かっている のでつい、患者さんが困る前にあれこれとサービスを整えて しまいがちです。もちろん、背景には「何かあってから」サービスを見直すの では対応が後手にまわり、調整が慌ただしくなり、土日や 祝日等が重なり導入が遅れると患者さんや御家族が大変な 想いをするだろう、ということが一番大きいです。出来る 看護師さんやケアマネさんほど、患者…

  • レスキュー依存?

    がんの突発痛に使用するレスキュー製剤。オプソ、 オキノーム、ナルラピド等ありますが、レスキューの 使用が1日3回を越えるような場合にはベースライン のオピオイド増量を検討する(あるいは異なる 痛み止めを追加する等)ことが多いと思います。ただ、時々レスキューがやたらと多い患者さんに 出会います。1日6回とか、8回とか。効果を確認すると、 そういった方は殆ど「痛くなりそうだから」で 内服していることが分かります。要は、何割かは 「疼痛への不安」がレスキューの使用に繋がっている のです。オピオイドは感情面にも作用し不安が軽減 したり、「こころ」が楽になる面もあります。 この理由でレスキューを使ってい…

  • 「レスキュー」の適正使用について

    ある患者さんの、レスキューで使うオキノームの 使用状況が不適切だったので確認したところ、 誰がどこで説明したのか分からないのですが、 御家族は5分経ったら再度使用して良い、と理解 されていたことが分かりました。オキノームはオピオイドを使用していても起こる 突発痛の際に使用します。1回量はベースのオキシ コンチンの1/4~1/8とされており、通常は 「1時間経過して痛みが強ければ再度内服して良い」 と説明を受けているはずです。 オキノームは15分程度からようやく鎮痛効果が 発揮され、1~2時間で効果がピークになります。 5分はもちろん、15分でも判断が早過ぎることが 分かると思います。「効果が最…

  • 病気と居場所

    前回、野田あすかさんの本から居場所について思ったことを 書いてみました。居場所とは、気持ちの通じる相手がいて、 「このままで、居てもいい」と思える場、そこにいれば 「頑張れる場」のことだと私は思っています。今日はこの 「居場所」を医療の側面からも考えてみようと思います。病気になったからと言って、すぐに居場所がなくなると いうことはありませんが、病気が進行するにつれ、 居場所が少なくなっていくことが多いのではないでしょうか。 身体や気持ちが思うように頑張れなくなると、職場、 コミュニティや社交の場、場合によっては家庭においても 自分の居場所がないように感じる人もいるかもしれません。 実は私は今「…

  • 居場所

    CDブック 発達障害のピアニストからの手紙 どうして、まわりとうまくいかないの?作者: 野田あすか,野田福徳・恭子出版社/メーカー: アスコム発売日: 2015/05/22メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る私は普段殆どテレビを観ないのですが、たまたまついていた テレビで「金スマ」が放送されており、野田あすかさんの 特集でした。発達障害の野田さんは(野田さんがお持ちの 障害は発達障害だけではないのですが)周囲と分かりあう ことが出来ず、否定され続け、非常に苦しんで来られた方 でした。この本、『発達障害のピアニストからの手紙』は 2015年に出版されたものですが、 『どう…

  • 緩和ケアの本質は耳を傾けること

    私は痛いこと、苦しいことが苦手な人間なので、患者さん の苦痛を減らす仕事がしたいと緩和ケアを学びました。 痛み止めの使い方を覚え、セデーションの方法を学び、 ある程度自信を持つまでにはそれ程長い時間はかかり ませんでした。しかし、そんな頃インターネットでこんな患者さんの 言葉を読み、ショックを受けると同時に気付かされたこと があったのです。多くの医療者は苦痛なく死なせることには興味があるが、 苦痛なく生かすことには興味を持たないもう、元の記事は見つけることが出来なくなって しまいましたが、内容はこんな感じでした。当時は緩和ケアは「ターミナルケア」と呼ばれ、終末期の ケアが強調されていた頃でした…

  • 皮下輸液

    在宅でお看取りとなる、多くの方に私はこの皮下輸液という 方法をとります。人は最期のときに近付くと、次第に柔らかい 食べ物しか受け付けなくなり、やがて水分を摂ることも難しく まります。水分なしで人間が生きることが出来るのは多くの 場合数日から長くて1週間くらいです。我が国では、口から栄養が摂れなくなった患者さんに、胃瘻 や経鼻栄養、高カロリー輸液などの方法で栄養と水分を補給 する選択肢があります。これらの治療は数か月から、場合に よっては数年の延命が期待出来る方法です(もちろん、病状 によります)。これらの栄養法を行い、再び口から摂れるか どうか…これも年齢や病状によりますが多くは難しいです。問…

  • 平穏死は良いが誰にでもベストだと言えるだろうか

    Dr.和こと長尾和宏先生が、また鎮静について書いておられました。blog.drnagao.com面識はないですが非常に熱心な良い先生だと思います。 文才もおありなので、在宅医療や平穏死について数多くの本 を書かれ、啓蒙活動にも力を入れておられます。 賛同出来る意見も多く、機会があれば私も書かせて頂こうと 思いますが、例えば20日の在宅医療の制度に関するご意見は 本当にその通りだと思いました。一方で鎮静に関する話題については、私は以前より長尾先生と は考えが合いません。今回もその想いを新たにしただけでした。 ただ、色々な在宅医がいていい、というのが私のスタンスです。 医師の価値観・人生観と、それ…

  • 医療における「7つの習慣」

    皆さんは、「7つの習慣」を御存知ですか?完訳 7つの習慣 人格主義の回復作者: スティーブン・R・コヴィー,フランクリン・コヴィー・ジャパン出版社/メーカー: キングベアー出版発売日: 2013/08/30メディア: ハードカバーこの商品を含むブログ (9件) を見るビジネス書と思われているようですが、人生をより幸福に、 より成功するためのヒントとしても最高です。 最近はティーンエイジャーや児童向けの「7つの習慣」も 売られているようです。オリジナルを読むのが大変、と いう方は、ティーンズ版もなかなか面白くお勧めです。7つの習慣ティーンズ【リニューアル版】作者: ショーン・コヴィー,フランクリ…

  • 人生会議

    『死ぬときぐらい好きにさせてよ』 これは樹木希林さんの『120の遺言』のサブタイトルです。樹木希林 120の遺言 ~死ぬときぐらい好きにさせてよ (上製本)作者: 樹木希林出版社/メーカー: 宝島社発売日: 2019/01/28メディア: 単行本この商品を含むブログを見る(…本の内容の紹介じゃなくて申し訳ありません)治る病気であれば、自立した生活がもう一度送れるのであれば 『我慢』の意味もあるでしょう。あるいはそれが改善し得る 病状ではなかったとしても、自分で決めた目標のためには 人は辛くても頑張れるものかもしれません。 でも、そうでないなら「好きにさせてよ」というのは自然な 想いではないでし…

  • やはり名称を変えた方が良いのかもしれない

    やはり名称を変えた方が良いのかもしれない…「緩和ケア」のこと です。kotaro-kanwa.hateblo.jpこちらにも書いたのですが、我が国ではまず「ターミナルケア」 という言葉が使われるようになりました。がん終末期の苦痛を 軽減させるケアを指しますが、後に苦痛緩和のためのケアは 何も終末期に限ったことではない、苦痛を感じている患者さん 全てに行われるべきだ、という考えから「緩和ケア」という名称 が使われるようになりました。「緩和ケア」という言葉には、終末期という意味は全く含まれて いません。ただ、恐らく非医療者の患者さんや家族はもちろん、 当時の医療者も理解が十分ではなく、「緩和ケアは…

  • 『在宅がん医療総合診療料』の課題(2)

    昨日の続きです。昨日の記事はこちら。kotaro-kanwa.hateblo.jp『在宅がん医療総合診療料』は在宅で療養されている末期がんの 患者さんに行われる在宅医療のひとつのかたちで、「医師と 看護師合わせて週4回以上」の訪問を条件にやや高額の医療費が クリニックに支払われる制度です。詳しくは記事をご覧下さい。この在宅がん医療総合診療料の何が問題になるか、ということ ですが、大きく分けて2つあります。1.頻回の訪問が必要ない段階の患者さんに、用件を満たす 目的で必要以上の訪問が行われる。末期がんというと、一般的には余命半年以下と見込まれて いる患者さんを指しますが、末期がんでも身体症状が殆…

  • 『在宅がん医療総合診療料』の課題(1)

    6月22日の日本経済新聞で、山崎章郎先生が『在宅がん医療総合 診療料の課題』を取り上げられました。私も色々と問題が起こり 得る制度だと思っていましたが、どういう訳かこれまであまり 問題視されることがなかったように思います。www.nikkei.com残念ながら山崎先生の記事は登録が必要なうえに、あまり詳しく 書かれたものではありませんでした。ただ、これは訪問診療を 受ける患者さんは是非知っていた方が良い内容だと思いました (悪用されやすい制度です!)ので少し説明させて頂きます。『在宅がん医療総合診療料』は、在宅で療養している通院困難な 末期がんの患者さんに対して算定されます。診察や検査、治療と…

  • 鎮静で苦痛はとれているのか

    終末期に鎮静を行っていても患者さんは苦しそうだという話 を聞くことがあります。痛い、つらいのに声が出せない、と いった御自身の経験などから「苦しいのに声をあげられない のでは…」と心配する声も聞きます。基本的には、鎮静を開始するよりは楽になっていると思います。 それは、開始した鎮静を中止した経験からの推測です。 単純には言えないかもしれませんが、だいたい鎮静を中止した 時には苦痛が強くなりますし、少なくとも家族からも本人からも もう鎮静をしないでくれという声は聞いた記憶がありません。基本的に苦痛が対え難く、他に軽減する方法がなかったから こそ鎮静が開始になったのであり、鎮静を止めたからと いっ…

  • 鎮静が必要なのは医師の技術が劣っているからか

    興味深いタイトルの記事があるな、と思っていたら、大津 秀一先生 のブログでした。news.yahoo.co.jp色々な緩和ケア医がいますが、大津先生は最も勉強家で、何より とてもバランスのとれた先生の一人だと思います。おこがましい ですがとても私に近いお考えで、今回の記事も本当にその通り だと思いながら読ませて頂きました。前半は鎮静に関する一般的な知識、後半は私も大いに感じている 誤解、思い込みに関する内容でした。少し抜粋させて頂きます。 「提供されている緩和ケアが不十分なので、持続的な深い鎮静が 必要となる。ちゃんとした緩和ケアをすれば、持続的な深い鎮静 など必要ない」拝見していると、在宅医…

  • 緩和ケア医の燃え尽き

    6月24日の、日経メディカルの記事から。medical.nikkeibp.co.jp緩和ケアに携わる若手医師の69%に燃え尽き、30%に心理的 苦痛、というタイトルです。今回の、第24回日本緩和医療学会 学術大会でも発表された内容でした。緩和ケア医療に携わる 229人にMBI(Maslach Burnout Inventory)を用いて解析を行い、 上記結果となりました。心理的苦痛とは気分・不安障害の指標 を用いて判定しており、さらに程度の重い心理的苦痛も14.4% に認めた、とあります。「燃え尽き」って何?分かるようで分からないという人も いるかもしれません。検索するとすぐ出て来る医学書院の…

  • ホスピスはもう、「終の棲家」ではありません

    少し前になりますが、私が問題に感じていたことを西智弘先生が記事 にして下さいました。皆さんの理解とは別に、ホスピスは徐々に 「最期まで過ごす場所」ではなくなって来ています。背景には診療 報酬の変更が大きく関係しています。記事の中でとても詳しく触れて いますので是非一度お読み頂けたらと思います。https://www.buzzfeed.com/jp/tomohironishi/hospice-rentaisekinin欧米では、ホスピスの平均入院期間は一週間程度とお聞きしたこと があります(随分前の話ですから、現状とは違うかもしれません)。 これには保険制度の違いもあると思いますし、もともとホス…

  • beingが苦痛な時は

    新城拓也先生のブログ記事から。drpolan.cocolog-nifty.com新城先生は不器用なほどストイックで真面目に緩和ケア に向き合っている先生、と私は勝手に思っています。お会い したことがないので、あくまでブログの記事などからの想像 ですが。私も同じ道を歩んで来ましたので、共感出来る部分 も多いですし、私にない繊細な視点から気付かされることも 多くあります。さて、上記のブログ記事は、私のこのブログのタイトルでもある、 「Not doing,but being」。「何かをすることではなく、ただ そこに居ること」とでも訳しましょうか。私としては緩和ケアの 真髄に当たる部分だと思っているの…

  • 身体拘束をしない同意書

    樋口直美さんのツイートで、都立松沢病院の身体拘束軽減の 取り組みが特集されていることを知りました。樋口さんも 取り上げておられた、「身体拘束をしない同意書」について なるほどと思いました。同意書自体は事故の免罪符的なもの になってしまう可能性もありますが、拘束のメリットと デメリットを、しないとはどういう事なのかを患者さんの 家族が理解し、考えるうえでは重要な役割になるかもしれません。 「本人の尊厳を守る」ために、失うものがあります。 それは「安全」であり、また時に「効率的で効果的な治療」 であるかもしれません。しかし、「やっぱりな…」というのが、ここ。 家族へ「当院は縛りません」 「そのため…

  • ACPの診療報酬点数化

    エムスリーに、ACP(アドバンストケアプランニング)の普及には 診療報酬化が必要だ、という提案が、全日本病院協会の総会で出た ようですが…正直「またか」という想いで私は大反対です。ACPについて、最近私はこんな記事を書きましたが、 kotaro-kanwa.hateblo.jpまさにACPの『終末期相談支援料』化の予感しかしません。上記の記事でも書いた通り、ACPは『プロセス』が大切ですが、 このような診療報酬によって無理に導かれたACPでは、 一方的な医療者からの説明に対して同意書をとる、という 程度になるのが関の山です。むしろ、形骸化したACPをみて、 「あぁ、こんなものがACPか」 と一…

  • これからの訪問診療制度に望むこと

    CBnewsで、『「医師の高齢化」は在宅医療のブレーキに?』という タイトルを見掛けました。有料記事(月4600円!)なので読めません でしたが、2015~2017年は在宅訪問診療料のレセプト数はそれまでの 増加から横ばいに転じているとのこと。それはそうでしょう。 少なくとも現行の訪問診療制度では。団塊世代が後期高齢者となる2025年。 現在年間110万人程度の「看取り」が160~170万程度に増加する と予想されています。一方、医療費と医療者の不足から、急性期 病院は今後ベッド数を減らしていくことになっており、不足分を 「在宅医療」でカバーしようという考えのようです。にも関わらず、 訪問診療…

  • 「患者の自己決定」の難しさ

    40代の女性が、人工透析を拒否した結果亡くなった、という 話が話題になっています。要点をまとめると、1.透析を止めると2週間くらいで亡くなるという話を聞いたが この時点では強い意思で拒否。同意書にもサインしている。 2.症状が苦しくなり、夫には透析再開しようかな、という気持ち の変化を伝え、外科医も理解していた。 3.しかし、結果として透析は行われず、女性は亡くなった。女性が亡くなる前に、夫に宛てて「たすけて」と書こうとした と思われるメールも公開されています。世の中の反応は、「女性の気持ちが変わったのに透析を しないなんて、なんてひどい医者だ」というものが多い ようです。ただ、私は本当に、「…

  • 「緩和ケア」が敬遠される理由

    当該記事のコメントを見ると「緩和ケアを選ばなくてよかった って言える人生を過ごしてほしい」「緩和ケアは本当に必要 最低限な処置しかしません。治療や心電図をつけたりは一切 しません。家族にとっても本当につらい病棟です」 等とあり、悲しい(個人の批判ではありません)。 これが現実。頑張ります。 堀ちえみさんが手術を受けた記事に付いたコメントを見た、 大津秀一先生のtweetです。未だに日本では、治療or緩和と 二者択一であるかのような誤解が絶えません。原因のひとつは、恐らく緩和ケアを日本に紹介した先人達が まず強烈なインパクトを受けたのが「ホスピス」という病棟 であり、鎮静を含めた「ターミナルケア…

  • 医療連携の難しさ

    昨日は、地域の医療・介護職の集まりに参加しました。 毎回活発な情報・意見交換があるのですが、昨日は 医療連携の難しさについて、でした。在宅をやって8年になりますが、医療連携については一貫して ほぼ全員に共通した悩みだと感じています。たまに悩みが ないという人もいますが、それはきっと周囲がその分悩んで いると思ってほぼ間違いないでしょう。何故難しいか、その難しさを一言で言えば人と人との「相違」 です。医療者同士でも、価値観や信念、仕事に対する考え方 などが大きく違うからです。例えば仕事に対する「情熱」の 温度差。私などは24時間携帯を持ち連絡を受けるのが 当然の生活をしていますし、休みでも時間外…

  • ACPは延命中止を決めることですか?

    本日の、新城拓也先生のツイートの紹介から。 最近あちこちで見かけるアドバンスケアプラニングの弊害は 本当にひどくて、患者の治療を受ける権利を著しく奪って いると思う。延命治療をする・しないも 医療者の側の業務的な連絡事項になっている。 私も普段から同じことを考えていましたので、多いに同意 しました。確かに医療者が「この人は延命しない人」と 決めてしまい、その後は下手をすると延命以外の治療も 提供してもらえなくなりそうな危うさを感じることがあります。しかし、だからと言ってこのブログの内容になると、 ちょっと言い過ぎのような気もします。drpolan.cocolog-nifty.comACP(アド…

  • 鎮静と安楽死

    ここ最近、以前と比べて安楽死の議論がさかんになって来た ように思います。写真家幡野広志さんのブログやTwitterの 影響も少なからずあるのではないかと思います。 緩和ケアには、「鎮静」という治療が以前からありました。 患者さんの苦痛を取り除くために薬を使い、意識を落とす 治療を言います。この鎮静は、ガイドライン等において安楽死と以下の点で 異なると明記されています。 1.目的が違う…鎮静は患者さんの耐え難い痛みを取るのが目的 2.使用する薬剤が異なる…鎮静で用いられるのは睡眠薬や 抗精神病薬・抗痙攣薬であり、患者さんの命を終わらせる 「致死量の毒物」ではない。 3.成功した場合の結果が違う。…

  • 『在宅無限大』

    在宅無限大: 訪問看護師がみた生と死 (シリーズ ケアをひらく)作者: 村上靖彦出版社/メーカー: 医学書院発売日: 2018/12/25メディア: 単行本この商品を含むブログを見る年末年始に読んだ本のひとつでしたが、 なかなか興味深い内容でした。 著者の村上靖彦さんは、基礎精神病理学・精神分析学博士 であり現在の大阪大学大学院人間科学研究科教授という方。 複数の訪問看護師さんへのインタビューが行われ、それを 村上さんが分析し、展開します。最初は少々理屈っぽい本 という印象を持ちましたが、読み進めると看護師さんの 無意識に発した言葉を村上さんが巧みに拾い上げていて、 さすが学者さんだなぁと思い…

  • 幸せの最大公約数

    この「幸せの最大公倍数」という言葉、本日お話する 内容からは大袈裟かもしれませんが、Twitterで褒め られたので、気を良くして記事のタイトルにして みました(笑)。私は訪問診療を始める前からひとつ、 常に意識していることがあります。それは、誰かのために、誰かが犠牲になることは、 なるべく少なくしたいということです。私達医療者、そして介護に携わる皆さんは、サービスを 提供する相手が病気で苦しむ患者さんであり、介護を 要する人々です。すると、私達が「犠牲」となり、 「奉仕」することが美徳という意識が多くの方の中に あるのではないかと思います。私はこれは間違って いるとは思いません。ただ、一方で…

  • 『今日から第二の患者さん』

    最近登録したnoteを見ていて青鹿さんの記事が目にとまり ました。note.muこれ、なんですが。私は医師になってこの方、ずっと疑問視、 問題視していたテーマだったので、漫画もすぐに購入させて 頂きました。「第二の患者さん」は、病気の患者さんの御家族の ことです。漫画にも登場しますが、部外者の「患者さんが一番つらい」という言葉。間違いとは思いませんが、これがどれだけ 家族にプレッシャーを与え、孤立させているのか。 皆さんは考えたことがありますでしょうか。ホスピス時代、パートナーの介護・看取りをした女性が、 自らも病気になりホスピスで療養をしている時に、 「私は『患者の家族』だった時の方がつらか…

  • 医師の信念と患者の気持ち

    とても興味深い対談が連載中です。www.kango-roo.com少し前に御紹介した幡野広志さん(2017年に多発性骨髄腫を 発症。余命宣告を受けているフリーカメラマン)と、市立 井田病院の西先生の対談です。いきなり最初から幡野さんの するどい直球で始まります。 早速ですけど、なんで医師は安楽死に反対するんですかね? 西先生の逃げない姿勢も素晴らしいと思います。 医師はこう考えると思う、という一般論と、 御自分の考えを並べ、誠実に返答されています。 これまでいろんな医師と話してきましたけど、 医師って患者の気持ちよりも自分の信念で動いてる ように思うんです。 幡野さんの感じている疑問はまさにそ…

  • 新しい『鎮静の手引き』について

    今日は2018年9月に出た緩和ケア学会編の『がん患者の 治療抵抗性の苦痛と鎮静に関する基本的な考え方の手引き』、 略して『鎮静の手引き』について。これまでは緩和ケア学会 から、『苦痛緩和のための鎮静に関するガイドライン』 が2010年に刊行されており、実質改訂版になります。 『ガイドライン』と呼ばず『手引き』としたのは、 エビデンスに乏しく議論の中にある事柄について、 ひとまず学会としての立ち位置を明確にし、倫理的な 内容も含め現場で困っている臨床家に役立つ情報を 示そう、という考えによります。まず、緩和ケア学会の立場として、 1.終末期のがん患者さんにはどのような対応を行っても 治療に抵抗性…

  • 『自分らしく』とその限界

    今日は緩和ケアにおいて大切な、患者さんの 「その人らしさ」を尊重するということについて 考えてみたいと思います。「考えてみれば、ケアを提供する私達がそもそも 『自分らしさ』って何か、考えたことがない。」どこで読んだか忘れましたが、こんなことを言う 方がおられました。しかし、私に言わせれば 『自分らしく生きる』とは何かを考えないで済む 人は、既に自分らしく生きられているのだと思います。 『自分らしく』『その人らしく』と言っても、 哲学でも倫理でもなく、特別なケアを言っている わけではないのです。これは、『自分らしくない』とはどういうことか を考えてみるとよく分かります。例えば病院で、 ご自分の意…

  • 「毒」になる「善意」

    9月終わりにPHP onlineに載っていた、幡野広志さん の記事。一人でも多くの人に読んで、考えてもらいたい と思います。shuchi.php.co.jp幡野広志さんは、多発性骨髄腫という病気で30代で 余命3か月の宣告を受けながら、情報を発信し続けて いる、フリーのカメラマンです。がんであることを公言した幡野広志さんがとても困った こととして、周囲やブログを通して寄せられる、「代替 治療」や「宗教」の数々であったようです。幡野広志さんはこのように安易に勧められる根拠のない アドバイスを、「優しい虐待」と表現されました。「何を大袈裟な、無視すれば良いじゃないか」 というのは、心身が健康な人の…

  • 在宅看取りと事故物件

    先日Twitterでお世話になっている方からお聞きし、 考えさせられたことがありましたので、皆さんにも 共有したいと思い記事にさせて頂きます。貸家で殺人事件や自殺があると、そこは事故物件 として扱われ、当然ながら入居希望者が減り、 家賃をかなり下げる必要が出て来ます。これは アパートやマンションを貸す側からすれば大きな 損失です。では、患者さんが病気や自然死で家族に看取られた 場合はどうでしょうか。ここまでは私も以前調べた ことがあり、「事故物件」の定義が曖昧なこと、 しかしサイトによっては「在宅看取りは事故物件 にならない」とはっきり書いてあるものが多く、 私も病死や自然死は事故ではない、当…

  • 「鎮静」という手段を知って下さい

    5年余り訪問診療を行って来て、先日初めて在宅でドルミカム を使った持続的な深い鎮静を行いました。対象は若い患者さん で、身の置き所のなさとせん妄があり、家族も眠れず心を 傷めている状況でした。「眠っても良いから楽にして欲しい」 と御本人もおっしゃり、せん妄に踏み切り、ご自宅で安らか な最期を迎えられました。日本の緩和ケアの歴史のはじまりをどこと考えるのかは異論が あるかもしれませんが、少なく見積もって聖隷三方原病院の 独立型ホスピス開設としても既に我が国には35年以上の緩和 ケアの歴史があることになります。しかし、未だに緩和ケアが 何かということは、下手をすると医療者すらその本質を理解 してい…

  • 「美しい心」と言ってくれた

    Twitterでお世話になっている、海月要さんの書いた小説です。 表題作の『「美しい心」と言ってくれた~地下にある死者の施設』 のほか、4作品が納められた短編集になっています。海月さんは 老人施設の看護師をされていますが、その日常の体験をもとに 描かれた優しい作品集になっています。「美しい心」と言ってくれた ?地下にある死者の施設?作者: 海月要出版社/メーカー: 文芸社発売日: 2018/06/29メディア: Kindle版この商品を含むブログを見るまず、目を引くのは、表紙です。最後のページを見ると タイトルは「巻貝」、これは昔海月さんが昔書かれた絵なのだそうです。 表情や座り方から、寂しさ…

  • 医療者が死にゆく時

    長年大病院で勤務したある看護師さんが退職後 に末期がんを告げられ、いよいよ病状が悪く なった時、自分とはふた回りくらい違う歳の 看護師の前で涙をみせられたそうです。「自分が思い描いていた最期とは違った、 こんなに辛いものだとは思わなかった」この女性は弱音を吐かない人だったようです。 きっとプライドもあり、ひとりで病気と 向き合って来たのではないかと思います。 痛みには、オピオイドが効きました。吐き気や 不眠も、薬でかなり改善することが出来ました。 しかし、トイレに行くことがこれだけ苦しい ものだったとは…その苦しさは薬ではあまり 楽になりませんでした。頑張って通ったトイレ がひとりで行けなくな…

  • 胃瘻を中止にすることは出来ない!?

    ある胃瘻の患者さんの御家族から、 「胃瘻にしていると老衰は出来ないのですか?」 と尋ねられたことがあります。老衰とはこの場合、 老衰死=平穏死のことを指しているのでしょう。老衰死の場合、人は物を摂らなくなりますが、 多くの死をみているとこれは苦しい時間を減らし、 脱水でぼんやり、ウトウトすることで苦しさを減らす 側面がありとても合理的なことだと私は思っています。胃瘻から栄養が入り続けていると、このような最期が とても迎えにくくなるのは確かです。多くは肺炎など の感染症、心不全などの臓器不全等で亡くなります。 中には痰が詰まったり不整脈などが起こったのか、 あまり苦しまずに急に亡くなる方もおられ…

  • フェントスのeラーニングを終えて

    フェントステープは医療用麻薬、フェンタニルのパッチ 製剤です。フェンタニルパッチにはほかにデュロテップ MTパッチ(ワンデュロ)がありますが、個人的に使い 慣れているフェントスでeラーニングを受けました。eラーニングのeはelectronicの頭文字ですが、ある種の 薬剤は医師がインターネットで講習を受けなければ処方 出来ない仕組みを作っています。フェントスを癌性疼痛 に使用する分にはeラーニングはいらないのですが、 『慢性疼痛』に使用するにはこの講習を受け登録する 必要があります。内容はそう多くはありません。テストも車の運転免許 の時に受けた筆記試験を思わせるような、「日本語 の引っかけテス…

  • 心肺停止で救急車を呼び警察沙汰になった話

    訪問診療で看取りを前提にしている場合、もし患者さんが 呼吸をしていないと分かった場合は訪問医(私)にまず 連絡をするように、と伝えています。搬送になると運ばれた先 の病院では診断書が書けないという理由で、警察が呼ばれる のが普通です。呼ばれたからには警察は事件性の有無を確認 しなければならず、多くは御家族が容疑を掛けられているかの ような質問責めにあい、御遺体も服を脱がせられ写真を撮られる ことになります。場合によっては、なんと警察が自宅まで来て 介護をしていた環境を確認するとかで自宅の写真まで撮ります。 患者さんが亡くなったことで非常に悲しい想いをしている ところに、警察の介入はとても堪える…

  • 自費診療は悪か?

    皆さんは自費診療のクリニックを受診されたことは ありますか?我が国は皆保険という制度をとっており、 保険診療によって自己負担額は1~3割となっており、 残りは公費で賄われています。医療はサービス業と 言われることがあります。確かにサービス業的なところ はありますが、決定的に違うのはこの「公費」を有効 かつ公平に使う努力が医療者に求められていること、 保険医には守るべきルールがあるということです。 また患者さんの希望だからと言って患者さんに不利益な 検査や治療を言われるがままに行うわけにもいきません。保険が利かない治療があります。多くは、保険が利かない なりの理由があり、美容などに関するものや、…

  • 地上の星

    中島みゆきさんの地上の星という歌があります。www.youtube.comNHK総合テレビ「プロジェクトX 挑戦者たち」の 主題歌ということで、wikipediaによるとみゆきさん のシングルの中でも1994年発売の「空と君とのあいだに /ファイト」に次ぐ2番目の売れ行きであったそうです。 私は基本暗いので(!)、みゆきさんの歌は好き なんですが、この歌がリリースされた2000年頃 からは特に理由もなく「みゆき離れ」を起こして おり(当時研修医でしたので、それどころではなかった かもしれません)、この「地上の星」も、「あぁ、確かに 売れそうなメロディだな」と思ったくらいで特別 印象には残りませ…

  • 老いと「受容」

    私は患者さんが病気や死を受け入れるか、それ自体はどちら でも良いと考えています。投げやりな意味ではなく、それは 患者さんの価値観や生き方によるからです。過去のエントリーでも、 kotaro-kanwa.hateblo.jpkotaro-kanwa.hateblo.jpこの辺りで書かせて頂きました。実は緩和ケアを始めた頃は、受容は若い人にはきっと難しく、 戦争や長い苦難を生きて来られたご高齢の方は自然に受け入れ られるようなイメージを持っていました。 しかし、実際は逆でした。若い方は、病気と向かい合う、闘う道を選ばれる方も多い のですが、同時に死についてもとてもよく考えておられ、 私たちにもお話…

  • 分子栄養学、その後

    昨年11月のブログで、私の分子栄養学、 『オーソモレキュラー』などと呼ばれる分野について 思うところを書かせて頂きました。 何、それ?という方はお手数ですがこの記事をお読みください。kotaro-kanwa.hateblo.jp新しい栄養学に対して期待をすると共に、 やや医療批判・宗教的になりやすい性格を持っている という自覚を持って学びたいという気持ちを書いています。 この姿勢は今もあまり変わっていないつもりです。しかし、私は学びや経験の中で確かに月経のある女性や成長期 の子供たちの精神症状、例えばうつやパニック発作、発達障害 の「少なくとも一部」には、たんぱく質や鉄・ビタミンB群など を摂…

  • 男の介護と虐待

    過去にこちらのブログで、『迫りくる「息子介護」の時代』 という本の紹介をさせて頂いたことがあります。迫りくる「息子介護」の時代 28人の現場から (光文社新書)作者: 平山亮,解説上野千鶴子出版社/メーカー: 光文社発売日: 2014/02/18メディア: 新書この商品を含むブログ (6件) を見るkotaro-kanwa.hateblo.jp上記のブログでも書きましたが、介護者による虐待の4割が息子さん と言われています。絶対数が相当少ないであろう息子さんが4割 を占めているのです。家事が苦手な男性は慣れない家事は大変 で、ストレスが多いことでしょう。お酒に走り、つい暴力、という ことも実際…

  • 看取りを支える

    長尾和宏先生のブログ記事を紹介させて頂きます。blog.drnagao.comとても大切な内容を取り上げて下さったと思います。 介護施設における看取りの現場で、「体温が上がりました」 「血圧が下がりました」、「酸素の数字が下がりました」と 時間を問わず連絡して来ることに触れ、看取りの在り方や 介護士の「教育」について問題提起をされています。この問題に関して言えば、簡単な解決策は電話を掛けて欲しい バイタル具体的に伝えておけば良いと思います。 「体温38.5℃以上なら電話して」とか、「酸素が92以下なら 連絡下さい」とか。確かにバイタルが全てではありませんが、 それ以上を看取りの経験がない介護士…

  • お医者様と患者様

    こんな記事を読んでの感想です。http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/di/column/kumagai/201807/556919.html登録していないと読めない記事かもしれません。 主治医を「お医者様」と呼び、薬を減らして欲しいと思いながら 言い出せない80代の男性の患者さんが登場します。 「自分は薬のことはよく分からないが、こんなに飲まなくてもいいのではないか と思っている。とりわけ、半年ほど前に痰が絡むと言った時に出されたこの 大きい薬はもう飲まなくてもいいのではないか。先生からは、なかなか減らそう と言ってもらえない」 私はかつて、患者さ…

  • 「異常者」と殺意を生む職場

    大口病院の事件は衝撃的な内容でした。 「信じられない」「許せない」という多くの声の中で、 一部の医療者・介護者はTwitter等で高齢者医療・延命治療 のあり方、医療・介護者の置かれている過酷な環境などを 発信していました。しかし、これに対しては、「異常な 殺人事件を高齢者医療とごちゃごちゃに論じるな」という、 不快感を伴う反応が多かったです。私も、事件に絡めて高齢者医療(特に延命)を論じること、 半ば崩壊しつつある介護の実情を発信したことはあまり良い 方法ではなかったと思います。しかし一方で、普段から 多くの悩み、痛みを抱えながら仕事を続けているであろう 介護職の方々が、「何か言わずにはいら…

  • 介護における「ボディタッチ」の是非

    昨日Twitterで、「介護におけるボディタッチは風俗法に 抵触するのではないか」という意見をお聞きしました。 個人的には結構ショックで、「ついにこういう時代が 来たか…」と思いました。この指摘は、看取り前の がん末期の患者さんに対して、看護師が手を握ったこと が、施設から「不適切な行為」とクレームを受けた エピソードがあり、それに対する意見でした。長い間何も問題視されず普通に行われて来たことが、 「実はこれ、〇〇法に抵触するのではないですか?」 という問題提起が起こる。これは良い場合と悪い場合 があります。この件も「拡大解釈では…」と思いつつも 私は風俗法を知りませんし、ただきっとそんな解釈…

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