春の海春の海過去よりできるだけ遠く春光や瞳の中の風車ヘアピンを全部はずして春の月ある日やっと夜の家事を終えてベランダへ出ると、ふくよかな紺色の闇に春の三日月が浮いていた。それが正真正銘春の月だということは、きっと誰にでもわかるだろう。浮いていたというのがぴったりな軽さ儚さで、まだまだ気温は持ち上がらないのに、何故月だけがこうも先駆けて春の様子に変わっているのかが、如何にも不思議だと思った。冬の三日...
駆け足で過ぎてしまう毎日に俳句の足跡を付けてきました。浮遊している思いを短文にし音楽も少々コラボ。
60代・主婦兼グラフィックデザイナー。在宅ワーカーです。 趣味は俳句・デザイン・音楽・手織り。
「ブログリーダー」を活用して、ネコヤナギさんをフォローしませんか?
春の海春の海過去よりできるだけ遠く春光や瞳の中の風車ヘアピンを全部はずして春の月ある日やっと夜の家事を終えてベランダへ出ると、ふくよかな紺色の闇に春の三日月が浮いていた。それが正真正銘春の月だということは、きっと誰にでもわかるだろう。浮いていたというのがぴったりな軽さ儚さで、まだまだ気温は持ち上がらないのに、何故月だけがこうも先駆けて春の様子に変わっているのかが、如何にも不思議だと思った。冬の三日...
鬼やらい本日の1曲・Bill Evans - B Minor Waltz (Official Audio)声しばし闇にとどまる鬼やらい長年不思議に思っていることがある。節分の豆撒きのことである。コンビニやスーパーに売っている節分用の豆は、当日の深夜にもなれば、もうどこにも無い。すっからかんに売り尽くしている状態だ。となれば当然、かなりのパーセンテージで、節分の豆撒きが各家庭で正々堂々と行われているのだと考えていいだろう。しかし、私は生まれて...
初夢初夢にごった返すや過去未来実南天昇りつめたる赤なりしかなしみに続いてをりぬ初御空今年の初空は、大きな悲しみに染まってしまった。年末には身を粉にして働いて整えた家で、心づくしのお節料理も用意して、久しぶりに会える子供や孫たちと和んでいたであろう時間。その大切な時間を襲った地震。晴れやかな一日のはずが、一転して大きな恐怖と悲しみのひと日となってしまった。同じ被害といっても、この寒さである。被災地の...
山茶花山茶花の風振りほどく月日かな寒月やしだいに闇に隙間無く冬に入るひとの睡りの集まりて冬になると・・・。人の睡りは一気に重さが増すような気がする。どんよりと肉厚な長い夢。相変わらず荒唐無稽な筋書き。夜中にトイレに起きると、体中が痛くてまるで難破船のようであるし、朝、起床後も家事をして体を慣らしていくのに、えらくまた時間がかかる。冬の眠りは重い。けれども、冬の眠りは生きるものにとって、必要不可欠な...
初紅葉吉報は突然来たり初紅葉車の後部座席の窓からぼんやりと外を見ていたら、いきなり何か晴れ晴れとしたものを通り過ぎた。余りにも一瞬の出来事だったので、あたかも晴れ晴れとした自分の気持ちの方が先に来て、一体何故そうなったのか良くわからなかったような気がしたのだが、すぐに同じことが繰り返されたので、なるほどと思った。それは車道の縁の並木の、紅葉の鮮やかさだった。次から次へと同じ木を繰り返し通り過ぎて、...
秋夕暮本日の1曲・Feels Like Home - Edwina Hayes物音の底まで落ちる秋夕暮がっくんがっくん、と階段を二段跳びか三段跳びするような具合で、いきなりの秋となった。半袖から、七分袖を通り越していきなり長袖になる、そんな妙な季節の進行である。クローゼットを開けると、やはり着るチャンスの無かった服が色々と眼に着き、あら、この服を飛ばしてこっちに行っちゃうの、と何か納得いかない気持ちである。確実にひと月ほどの初...
明月本日の1曲・Definitely Maybe・Jeff Beck明月のひかりの水の如きかな深夜ベランダへ出たら、おやまあ、という凄みのある月だったので、しばしの間我を忘れて見とれていた。その光は遮るもの無く晴れ晴れと、それでも決してかしましいところ無く、あくまでも静かに、透徹とした光で、周囲の闇を洗っている。一瞬で日常の色々な芥のようなものも、洗われるようだ。コロナは相変わらず猛威を振るっていて、ついに息子も感染してし...
踊り本日の1曲・STAND BY ME. (Ultimate Mix, 2020) - John Lennon 回りつつ地球も溶ける踊りかなただ事ではない暑さである。しかしこんな日がやって来るのはわかっていたことだし、恐ろしいのは年々もっとエスカレートしていくであろうということだ。一体何をどうすればいいのか。日が落ちてもムンムンと蒸し暑い中を家へ向かっていると、いきなりの大音響に腰を抜かしそうになる。「月がぁ―出た出た、月が出たぁ」ああ、あ...
炎天本日の1曲・Dana Winner - One Moment In Time live炎天に我と我が影ひとつづつ汗拭いて笑顔も拭いてしまゐたり問ふてみる我の背丈の向日葵ににほんブログ村七夕の交差点にひとは行き交ふ近い記憶遠い記憶も夏帽子持ち歩くハンカチほどの不安かな万緑や洗濯物も盛大ににほんブログ村白粉花に夕風の巾広くなり洗い物終われば窓に涼しき灯爪伸びて髪伸びて凌霄花咲きぬにほんブログ村言葉みな洗い晒しに夏の海やっと体調が良くな...
明け易し本日の1曲・Firefly / Hiromi Uehara閉じた目のその中までも明け易し 夜が明けるのが早くなってきた。最近寝るのは、大抵午前三時半ころであるが、ちょっと眠れずに四時過ぎになってしまうと、もう空の色が青々としてくるので、慌てる。その後次第次第に淡く透明になって来る未明の空の色を見てしまうと、それは白々とした意識そのもののように眼裏に棲みついてしまって、容易には取れなくなってしまう。そしてこわごわと...
新緑本日の1曲・The Beatles - Instrumental新緑の風を着ているひと日かなちょっと昼間外出しなかったら、見慣れた街の街路樹達も、眩いばかりの新緑の噴水と化していて、公園の中の大木などは今が盛りと、燃えるような若草色を惜しみなく氾濫させている。しかし今年の春は風が強い。気温はさほどでもなくても、風が冷たくて強いために、まったりした「春」という感じの日が、あまり無かった。まあ、昨今の異常気象はどうにもなら...
桜本日の1曲・David Fray and Esa-Pekka Salonen - Ravel, Piano Concerto in G Major抜けて来し風の湿りて桜かなひとの背を見ているひとや花冷えぬ夜桜に幾千万の瞳のありぬ桜というものは、なにか巨きなものに、繋がっている。それが何なのか、一口にいう事は難しいのだけれども、巨きな静謐、巨きな溜息、巨きな安らぎ、巨きな悲しみ、巨きな歓び、それは一人の溜息ではない。それは一人の安らぎではない。それは一人の悲しみで...
紅梅紅梅にひかり一喜一憂す新しき水彩絵の具春立ちぬ春が立つとはまさによく言ったもので、晴れた日の陽の光が、日に日に立ち上がってくる感じがある。実際に太陽の通り道の高度が上がるのだから、当然と言えば当然なのだろうけれども、風や気温はまだ冬と大差ない日であっても、光だけが勢いを得て、背丈が増してくる。それからこの後、段々と風が暴れ出すようになってくると、いよいよ春が頭角を現し始める。それはまだ、...
寒オリオン本日の1曲・Dana Winner - When You Say Nothing At All 眉間より我を洗へば寒オリオン我が家には新年は来たけれども、正月はまだ来ていない。何故と言って、まだ雑煮を食べていないからだ。先月25日にケーキを買いに行った主人が、帰ってくるとひどく咳き込んだ。そのケーキ屋は、この辺では知る人ぞ知る安くて美味しいケーキを、変わり者のぶっきらぼうな店主が一人で作って売っている店で、そこのケーキはボリュ...
冬銀河本日の一曲・Lauren Daigle - Winter Wonderland (Deluxe Edition)秒針のすみやかに行く冬銀河眉を濃く描き過ぎてゐる寒さかな寒月が夜の肋骨組み立てるにほんブログ村頼まれて断れなくて山茶花咲く昔にもそのまた昔山眠るさめざめと泣けば流れるシクラメンにほんブログ村語るべきことひとつ無く冬木立寒燈やたまに口紅引いてみるクリスマスいつかどこかにあるリボン「そんなに言う事を聞かないなら、今年のクリスマスは皆プ...
十一月の無限本日の1曲・Dana Winner - Fields Of Gold 十一月のどこにでもある無限そんなつもりはなかったのに・・・人はいつの間にか十一月に深入りしてしまう。それは十一月というものの通低音が「無限」でできているのだから、当然と言えば当然の話である。一年を通して賑やかだった日々の舞台の、様々な大道具、小道具も、いつの間にかどこかへ片付けられていて、カメラの超広角レンズを覗いた時のように、風景は一瞬に...
鱗雲少しづつ始動している鱗雲何かを始めると、ついつい早くその結果を出したくなる。特に自分は、せっかちな方だと思う。サプリメントを呑み始めてまだ3日目だというのに、なにか喜ばしい変化はないものかしらと自己観察するし、花の種を植えて1,2日で芽が出るわけもないのに、ただ真っ黒な土の表面を見ては、そこに何の兆しも無いことが、釈然としないような気持ちになる。チェスや将棋をすれば、「こーするとあーなっちゃって...
九月の声名月や骨の階層深きまで今年の中秋の名月は9月21日だったということだが、 曇っていたので残念ながら出会えなかった。天気の悪い日が多かったせいか今月、月にゆっくりと出会えたのは、私の場合、1回だけだった。その時私はダイニングの椅子に腰かけていて、食事の後何をするでもなく、ただとりとめのないことを考えていたのだけれど、誰かがいるような気がしてふと窓の外を見ると、いましたね、九月の月。ああ、やっぱり...
風鈴本日の1曲・SANDY DENNY - LISTEN,LISTEN風鈴鳴りて流れ出す空と雲今年の夏は、しまい込んだ風鈴が見つからなくなった。ありそうなところは大抵探したのだが、いまだに出てこない。こんなに寂しいことは無い。夏に風鈴が無いということは、梅雨に紫陽花を一度も見なかった、というのとほぼ同じである。これがあるから、厳しい夏もまあいいとするか、と思える一瞬、これがあるから鬱陶しい梅雨もまあいいとするか、と思える一瞬...
夏草本日の1曲・All Thru the Night/Larry Carlton夏草や命の先端恐ろしき以前富士山麓へ行った時、草の丈の大きいことに驚いた。どこでも見かけるような夏草ばかりだったと思うが、その大きなこと、人の背丈なんぞ優に越している。よく「草葉の陰から」などと言うが、街中の脆弱な夏草と違い、こういうものが滾々と噴き出してそこいらじゅうに生い茂っているからには、陰にどのようなものが隠されていたとて何の不思議もない。木...
桜本日の1曲・David Fray and Esa-Pekka Salonen - Ravel, Piano Concerto in G Major抜けて来し風の湿りて桜かなひとの背を見ているひとや花冷えぬ夜桜に幾千万の瞳のありぬ桜というものは、なにか巨きなものに、繋がっている。それが何なのか、一口にいう事は難しいのだけれども、巨きな静謐、巨きな溜息、巨きな安らぎ、巨きな悲しみ、巨きな歓び、それは一人の溜息ではない。それは一人の安らぎではない。それは一人の悲しみで...
紅梅紅梅にひかり一喜一憂す新しき水彩絵の具春立ちぬ春が立つとはまさによく言ったもので、晴れた日の陽の光が、日に日に立ち上がってくる感じがある。実際に太陽の通り道の高度が上がるのだから、当然と言えば当然なのだろうけれども、風や気温はまだ冬と大差ない日であっても、光だけが勢いを得て、背丈が増してくる。それからこの後、段々と風が暴れ出すようになってくると、いよいよ春が頭角を現し始める。それはまだ、...
寒オリオン本日の1曲・Dana Winner - When You Say Nothing At All 眉間より我を洗へば寒オリオン我が家には新年は来たけれども、正月はまだ来ていない。何故と言って、まだ雑煮を食べていないからだ。先月25日にケーキを買いに行った主人が、帰ってくるとひどく咳き込んだ。そのケーキ屋は、この辺では知る人ぞ知る安くて美味しいケーキを、変わり者のぶっきらぼうな店主が一人で作って売っている店で、そこのケーキはボリュ...
冬銀河本日の一曲・Lauren Daigle - Winter Wonderland (Deluxe Edition)秒針のすみやかに行く冬銀河眉を濃く描き過ぎてゐる寒さかな寒月が夜の肋骨組み立てるにほんブログ村頼まれて断れなくて山茶花咲く昔にもそのまた昔山眠るさめざめと泣けば流れるシクラメンにほんブログ村語るべきことひとつ無く冬木立寒燈やたまに口紅引いてみるクリスマスいつかどこかにあるリボン「そんなに言う事を聞かないなら、今年のクリスマスは皆プ...
十一月の無限本日の1曲・Dana Winner - Fields Of Gold 十一月のどこにでもある無限そんなつもりはなかったのに・・・人はいつの間にか十一月に深入りしてしまう。それは十一月というものの通低音が「無限」でできているのだから、当然と言えば当然の話である。一年を通して賑やかだった日々の舞台の、様々な大道具、小道具も、いつの間にかどこかへ片付けられていて、カメラの超広角レンズを覗いた時のように、風景は一瞬に...
鱗雲少しづつ始動している鱗雲何かを始めると、ついつい早くその結果を出したくなる。特に自分は、せっかちな方だと思う。サプリメントを呑み始めてまだ3日目だというのに、なにか喜ばしい変化はないものかしらと自己観察するし、花の種を植えて1,2日で芽が出るわけもないのに、ただ真っ黒な土の表面を見ては、そこに何の兆しも無いことが、釈然としないような気持ちになる。チェスや将棋をすれば、「こーするとあーなっちゃって...