上州の「寅」(52)泣き虫
上州の「寅」(52)「あの子は泣き虫でした」昨日よりやわらかい笑顔の恵子さんが、寅とチャコを出迎える。「どうぞ」手招きされた。「紅茶?。コーヒー?。今日はわたしにおごらせて」こころが落ち着いたせいか、物腰も昨日よりはるかにやわらかい。「ユキはね。とっても泣き虫な赤ん坊でした」コーヒーが2つ運ばれてきたあと、恵子さんがユキの話を始めた。「わたしも泣き虫だったよ。私のDNAを受け継いだようです。うまれたときからユキはとにかくよく泣きました。何が気に入らないのか、火がついたように泣くの。はじめてのことでどうしたらいいかわからず、一晩中、抱っこしたまま公園を歩いたこともあります。好きなだけ泣いて泣きつかれるとようやく眠るの。その時の寝顔が可愛いの。泣くときは悪魔、眠るときの顔は天使。とにかく手を焼きました。それが産まれ...上州の「寅」(52)泣き虫
2021/01/30 17:34