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落合順平 作品集 https://blog.goo.ne.jp/saradakann

現代小説を中心に、連載で小説を書いています。 時々、画像もアップします。

落合順平 作品集
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2017/03/26

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  • 上州の「寅」(40)ハチと自然

    上州の「寅」(40)オリーブの栽培が本格化したのは1908年(明治41年)。日露戦争に勝利した日本政府は、北方漁場の海産物を保存する方法として、オリーブオイルを使用したオイル漬けに着目した。オリーブオイルを生産するため、農商務省がオリーブの試験栽培を開始。香川・三重・鹿児島の3県が栽培地として指定された。その中で香川県の小豆島のみが栽培に成功した。1911年(明治44年)。74㎏の実を収穫することができた。小豆島の気候が地中海沿岸とよく似ていたこともあるが、技師たちのたゆまぬ努力が実を結んだといえる。3年後。オリーブ栽培が島全体に普及した。いまに続く栽培の礎が築かれた。「なるほど。それでこの島がオリーブの島になったのですか。で、ご老人はこの小豆島で日本ミツバチを飼う元祖になったと伺ったのですが、なぜハチ飼いをは...上州の「寅」(40)ハチと自然

  • 上州の「寅」(39)オリーブの島

    上州の「寅」(39)「いまから15年前だ。作業小屋の換気口に見慣れぬものがあった。日本ミツバチの巣じゃ。ほう。こんな島にも日本ミツバチがいたのか。それがわしとハチの出会いじゃ。それからわしの養蜂がはじまった」自転車店の店主・麦わら帽子の老人は、小豆島における養蜂の先駆者。大学や専門家たちに聴きながら試行錯誤の養蜂を学んだ。いまは七ヶ所の畑に巣箱を置き、年間50キロのハチミツを採るという。「ひとつの巣箱に1匹の女王バチがいて、群れが暮らす。群れの大きさは様々だ。たいてい1万~2万匹。収穫は一年に一度。とれたはちみつは売らん。ちかくの人へおすそわけじゃ」「もったいないです・・・高価なのに」「欲をかくとロクなことがねぇ。日本ミツバチがたくさんいて、いろんな花があちこちで咲く。そんな風景を子や孫にのこせれば、それで充分...上州の「寅」(39)オリーブの島

  • 上州の「寅」(38)元祖のはちみつ

    上州の「寅」(38)「おやっさん。居るかい?。若い者を連れてきたぜ~」店の前へベンツを停めた大前田氏が窓から顔を出す。奥へ向かって呼びかける。返事はない。明かりはついているが人の気配はない。古い自転車店だ。組み立て中の自転車が数台、店の中で乱雑に置かれている。ということはまだ自転車店として成り立っているらしい。だが店名を書いたペンキは、すでにじゅうぶん色あせている。「居ねえのか。しょうがねぇ。探しに行くか」大前田氏が店の裏手へむかう。足取りが慣れている。その先に店主が居ることを知っているようだ。はたして・・・「なんだよ。居るじゃねぇか。居るんだったら返事してくれ」「おう。おまえさんか。おれはまた性質のわるい仲買人が、はちみつを買いに来たと思った」麦わら帽子が巣箱の前から立ち上がる。「この子たちがつくるはちみつは...上州の「寅」(38)元祖のはちみつ

  • 上州の「寅」(37)小豆島

    上州の「寅」(37)九州の南端から小豆島までを、大前田氏の黒いベンツは7時間余りで走破した。「ほら見ろ。おれがその気で飛ばせば、こんなものだ。小豆島といえば二十四の瞳とオリーブの島。おまえ。二十四の瞳を知ってるか?いろんな女優が映画やドラマで新任の教師・大石先生を演じたがおれがいちばん好きなのは1987年に公開された田中裕子だ。初々しくて、じつにチャーミングだった」田中裕子は知っているが、1987年と言えば寅が生まれる13年も前のことだ。いまの田中裕子なら知っているが、生まれる前のことなどまったくわからない。はて?、と寅が首をかしげる。「知らんのか。昔の田中裕子は・・・。そういえば男はつらいよシリーズの、30作目にも登場しているぞ。花も嵐も寅次郎のマドンナ、蛍子だ。鼻にかかった甘い声。猫のように男にしだれかかる...上州の「寅」(37)小豆島

  • 上州の「寅」(36)もと暴走族

    上州の「寅」(36)鹿児島から小豆島まで756㎞。九州縦貫自動車道と山陽自動車道を経由しておよそ11時間。寅を助手席に乗せ、後部座席にチャコとユキを乗せたベンツが一ヶ月を過ごした荒れた日本庭園をあとにする。九州縦貫自動車道へ乗る少し前、ベンツが弁当店の前で停車した。「昼のぶんだけでいい。途中はトイレ休憩以外は停まらんからな。夕方には小豆島へ着くだろう。着いたらうまい魚を食わせてやるから感謝しろ」夕方には小豆島へ着く?。「そういえばお前。約束手形を持っているだろう。そいつをよこせ。現金にかえてやる」寅が額面10万円の約束手形を大前田氏へ差し出す。「たしかに。じゃこれ。遠慮なく受け取れ」分厚い封筒を寅へ手渡す。手ごたえが有る。10万円にしては重すぎる。寅が中を確かめる。真新しい帯封がひとつ。100万円がおさまってい...上州の「寅」(36)もと暴走族

  • 上州の「寅」(35)黒いベンツ

    上州の「寅」(35)寅がこの地へやってきて3週間。カレンダーが3月になった。鹿児島の春は早い。青く芽生えた野原に、あっという間にさまざまな野草が乱れ咲く。「気がついたら春だ。九州の最南端は春がはやいな」荒れ果てた日本庭園をとりまく森にも春が来た。あれから2度。分蜂の群れを発見し、2度とも無事、捕獲に成功した。設置した20個の巣箱のうち、3ヵ所で分蜂した群れが入居したのも確認できた。ぜんぶで5つの日本ミツバチの群れを確保した。どれほどの確率で巣に入るのか分からないが、素人が設置したにしては上出来と言える結果になるだろう。それから数日後。あたたかい南風が吹く日の朝。眼下へ車がやってきた。この奥に集落は無い。道も行き止まりになる。ということは此処へ用のある人物が、車を走らせていることになる。「誰か上がって来た。なんだ...上州の「寅」(35)黒いベンツ

  • 上州の「寅」(34)おっぱい?お尻?

    上州の「寅」(34)それから15分。網がからになった。あれほどいたハチがすべて、巣箱の中へ居場所をうつした。「凄い。ホントに巣箱へ移った。まるで魔法を見ているようだ」「ニホンミツバチの群れは女王蜂、働き蜂、雄蜂で構成されている。数千匹の群れがまるでひとつの生物のように振舞うんだ。とても興味深い生き物さ」「巣箱から逃げ出さないのか?」「よほどのことがないかぎり定着すると思う。ここは南にむかってひらけているし、木陰で夏も過ごしやすい。こんな環境はめったにない。気難しい日本ミツバチもここなら気に入ってくれそうだ」「ということは捕獲成功、第一号、ということだな!」「そうよ。大成功。成功を祝って祝杯をあげよう。今夜は」「待て。まずいだろ。未成年が祝杯をあげるのは」「あら18歳は大人でしょ。選挙権もあるし」「酒とたばこは駄...上州の「寅」(34)おっぱい?お尻?

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