chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
落合順平 作品集 https://blog.goo.ne.jp/saradakann

現代小説を中心に、連載で小説を書いています。 時々、画像もアップします。

落合順平 作品集
フォロー
住所
未設定
出身
未設定
ブログ村参加

2017/03/26

arrow_drop_down
  • 上州の「寅」(33)女は度胸

    上州の「寅」(33)「準備は良いかい。落とすよ」チャコが枝の下へ忍び寄る。群れは動かない。ハチたちはまだ真下へ迫ったチャコに気づいていない。(しっかり網を構えて)チャコの目が指示を出す。(おう・・・)寅がおよび腰で網を差し出す。(そこじゃない。ずれてるよ。ちゃんと真下に構えて!)チャコの眼が鋭く光る。言われた通り、寅がせいいっぱい腕を伸ばして網をかまえる。チャコがすこしずつ体を起こす。群れはまだ動かない。手を伸ばせば届く位置まで立ち上がる。(あいつ。どうするつもりだ・・・まさか手で払い落すつもりか!)(落とすよ。準備は良いね)(あいつ、手で払い落とすつもりだ・・・なんという大胆な女だ)立ち上がったチャコがを群れに向かって手を伸ばす。茶色の群れはまだ無警戒。ためらいなく伸びた手が、無造作に枝から群れを切り離す。バ...上州の「寅」(33)女は度胸

  • 上州の「寅」(32)強制捕獲

    上州の「寅」(32)半分ほど設置が終ったとき、ぶ~んというかすかな羽音が聞こえた。いや聞こえたような気がする。「ハチか?・・・」耳を澄ます。遠くに羽音があるような気がする。しかしハチの姿は見えない。「羽音を聞いたような気がしたけど・・・空耳かな」「あんたも聞こえた?。偵察隊かもしれないね」「偵察隊?」「ちかくに分蜂した群れがあるかもしれない。住処を見つけるため、はたらきバチたちが偵察に出る」「群れが居るのか!。俺たちの近くに・・・」「おおきな声を出さないで。驚いて逃げちゃうから」チャコが軽トラックの荷台へ立ち上がる。前方に一本の巨木がある。引っ越し途中の群れは一時的に、巨木の枝に集合することがある。「遠すぎるね。気配を消して近づくか」念のため防護ネットをかぶっていこうと、チャコが助手席から取り出す。「顔をおおっ...上州の「寅」(32)強制捕獲

  • 上州の「寅」(31)キンリョウヘン

    上州の「寅」(31)巣箱の設置がはじまった。まとめて一ヶ所へ置くわけでは無い。ひとつずつ離して置いていく。それも最低300mは離す。巣箱は全部で20個ある。300mずつ離して置いていくと、トータル距離は6000mを超える。ゴルフ場を一周するのとほぼ同じ距離。「新居を置いたって、それだけでミツバチが入ってくれる訳じゃない。魚を釣るときだって集めるため、撒き餌をするでしょう」「撒き餌が有るのか。ミツバチ用の?」「あるわ。それもとっておきのやつが。それがこれ。はい。日本ミツバチ捕獲のための強い味方、その名も待ち箱ルアー」「なんだこれ?。新手の芳香剤か」「当たらずとも遠からず。これは蜜蜂蘭(みつばちらん)と呼ばれるキンリョウヘン(金稜辺)。キンリョウヘンは日本ミツバチを誘引する花なの。そのフェロモンを科学的に再生したも...上州の「寅」(31)キンリョウヘン

  • 上州の「寅」(30)刺されると・・・

    上州の「寅」(30)「準備はできたね。じゃ巣箱を仕掛けに行くよ」チャコとユキが立ち上がる。「おう」すこし遅れて寅がたちがる。女たちが防護服のようなつなぎを着始めた。「防護服?。刺されないための用心か?」「それもあるけど、分蜂を見つけた時の強制捕獲にそなえるの。寅ちゃんも着て。そこへ用意してあるから」なるほど。大きめのつなぎが置いてある。「春になると、新しい女王蜂が生まれる。そうすると母親の女王蜂が、働き蜂の約半数を連れて巣を飛び出す。新たな場所に巣を作るため母親が家を出る。それが分蜂。飛びだしたハチの群れの捕獲は自然入居と、強制捕獲の2つ」「自然入居と強制捕獲?」「巣を飛び出した群れは新しい巣の場所を探す。巣箱を新しい巣として選んでもらう。それが自然入居。新しい場所に引越し中の群れは、木などに一時的に集合する。...上州の「寅」(30)刺されると・・・

  • 上州の「寅」(29)蜜蝋(みつろう)

    上州の「寅」(29)「今日は天気もいいし、出来上がった巣箱の設置に行こう」朝食を終えたあと、チャコが表の様子を見てつぶやいた。今日は朝から天気が良い。温かそうな日差しが軒下へ差し込んでいる。「天気がいいとハチも行動的になるのか?」「分蜂の時期にはまだ早い。でも早めに仕掛けておいた方が自然になじむ。古ければ古いほど日本ミツバチは安心するからね」「建ったばかりの家より中古の方がいいのか。日本ミツバチは」「用心深いの。野生の虫は」表に並べて置いた巣箱は、雨とホコリのせいで古ぼている。寅が九州へ着いてはや二週間。毎日つくりつづけた結果、巣箱は20個ちかくになっている。「巣箱の天井へ蜜蝋(みつろう)を塗るよ」「蜜蝋?。なんだ、それ」「蜜蝋はその名のとおり、ハチがつくりだすロウ。巣をつくるときの材料。それが蜜蝋。中世のヨー...上州の「寅」(29)蜜蝋(みつろう)

  • 上州の「寅」(28)朝餉(あさげ)

    上州の「寅」(28)朝食の用意が整った。寅が床の間を背にして座る。金髪2人は1メートル以上離れ、テーブルの隅に相対して座る。「おかしいだろう。こんな座り方」「男女7歳にして席を同じゆうせず。7歳になれば男女の別を明らかにし、みだりに交際してはならないと言います。食をともにせず、と続く場合もあります」「家庭教師をやれと言っておきながら、ずいぶん勝手な理屈だな」「そうじゃないの。ユキが風邪気味です。だから離れて座っているだけ。いいでしょ。あなたは家長として床の間を背にして座っているんだもの」「いつから家長になったんだ。俺は」「あなたがいちばん年上です。あたしは18。ユキは15。適役でしょ。あなたが家長で」「よくわからんが・・・まぁ・・・いいか」食卓に生野菜は無い。漬物だけがならんでいる。今日に限ったことでない。毎朝...上州の「寅」(28)朝餉(あさげ)

  • 上州の「寅」(27)家庭教師

    上州の「寅」(27)寅とユキ、チャコの3人だけの生活がはじまった。朝5時に起きだす。寒い。2月の外はまだ暗い。寅がかまどの前へ坐る。それを合図に女2人の朝食の準備がはじまる。寅がかまどで飯を炊く。金髪2人が土間を行きかう。トントンと包丁で刻む音が寅の耳へひびいてくる。女2人がせっせと朝食の準備をすすめていく。そんな様子を横目で見ながら(まるで昭和初期の朝餉の風景だな・・・)寅がつぶやく。「なに?。朝餉って?」ユキが寅の背後で足をとめる。「知らないのか。永谷園の味噌汁のことさ。朝はあさげ、夜はゆうげ」寅の答えにチャコが振り向く。「こら寅。手をぬくんじゃない。ちゃんと教えてあげな。これからあんたはユキの家庭教師になるんだから」「ユキちゃんの家庭教師になる?。俺が?。なんだいったい。どういう意味だ。それは・・・」「あ...上州の「寅」(27)家庭教師

  • 上州の「寅」(26)巣箱は自前で

    上州の「寅」(26)「いい話ばかりじゃないよ。日本ミツバチはもともと野山で暮している虫。悪い面もある。まず集める蜜の量がすくない。西洋ミツバチの10分の1くらいかしら。気難しい性格で、すぐ野山へ逃げてしまう。だから日本ミツバチをつかった養蜂は難しい」「ひよっとして、その難しい日本ミツバチの養蜂に挑戦しょうという話か?」「そう。ここは日本ミツバチをつかまえる最適の地なの」「日本ミツバチを捕まえる最適の地・・・ここが・・・ホントかよ。ということは日本ミツバチを捕まえるため、おれはここへ呼ばれたのか」「そう。大正解。ハチを捕まえるのが最初のあなたの任務」「最初の?。なんだ。ほかにもなにか有るのか。俺の任務が」「あっ・・・気にしないで。ふたつ目は。あとでくわしく話すから。ということでまずは、これ。今日は捕獲したみつばち...上州の「寅」(26)巣箱は自前で

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、落合順平 作品集さんをフォローしませんか?

ハンドル名
落合順平 作品集さん
ブログタイトル
落合順平 作品集
フォロー
落合順平 作品集

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用