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落合順平 作品集 https://blog.goo.ne.jp/saradakann

現代小説を中心に、連載で小説を書いています。 時々、画像もアップします。

落合順平 作品集
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2017/03/26

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  • 北へふたり旅(108)メロン記念日③

    北へふたり旅(108)床面積の広いスーパーマーケット。そんなイメージで地下へ降りていく。エレベーターのドアが開いた瞬間、目を見張った。そこはまるで食のテーマパーク。洗練された店舗が華やかに並んでいる。(いまどきのデパ地下は、こんな風になっているのか・・・)(ホント。じつに美味しそうです)メロンを見にいくはずが、妻の目は華やかな弁当にクギづけになった。北海道の食材をふんだんに盛り込んだ弁当が、これでもかとばかり並んでいる。「駅弁よりこちらのほうがおいしそうに見えます」「問題は時間だ。朝10時だ。買えるか、ここで」デパートの開店は10時。その時間、弁当はここへ並んでいるのか?。「だいじょうぶです。開店とどうじに販売できるよう、ご準備しております。駅弁として楽しんでいただけるようお茶もセットで用意してございます」妻の...北へふたり旅(108)メロン記念日③

  • 北へふたり旅(107)メロン記念日②

    北へふたり旅(107)「この味がいいね」と君が言ったから、8月27日はメロン記念日」「何。それ?」「俵万智。1987年に発売されたサラダ記念日。そこからの盗作」「あら。懐かしいです、俵万智。『寒いね』と話しかければ『寒いね』と答える人のいるあたたかさ。ハンバーガーショップの席を立ち上がるように男を捨ててしまおう、という作品も好きでした」「そういえば、おしまいにするはずだった恋なのにしりきれとんぼにしっぽがはえる。なんて作品もあったね」「えっ。いったいなんのお話ですか?」ユキちゃんがキョトンと振りかえる。無理もない。40代から上の年齢層なら知っているが、平成生まれは俵万智を知らない。「サラダ記念日は、280万部のベストセラー。口語体で現代短歌を詠んだ人、それが俵万智というひと」「へぇぇ・・・」「ここだけの話、サラ...北へふたり旅(107)メロン記念日②

  • 北へふたり旅(106)メロン記念日①

    北へふたり旅(106)2人が手ぶらでわたしの前にあらわれた。「あれ・・・どうしたの?。買ったものは?」「大きな荷物をもって戻って来ると思っていたの?。もしかして。遅れていますねぇ。いまどきはお店から送ってくれる時代です」なんでも宅配で送れる。おおきな荷物をかかえ電車へ乗りこむわたしが、いきなり時代遅れになった。「ユキちゃんにすっかりお世話になりました」「本当だ。あらためてお礼をしたいね」「なにか欲しいものがある?。遠慮なく言ってちょうだい」「わたし・・・メロンが大好物なんです」「メロン。いいわね。わたしも大好き!お世話になったお礼にメロンを買いに行きましょう。ねぇあなた」女2人ですでに筋書きが出来ているようだ。「このさき。西の出口にメロンを売っているデパートがあるそうです。駅弁も置いてあるそうですから、あしたの...北へふたり旅(106)メロン記念日①

  • 北へふたり旅(105)北の赤ひげ⑧

    北へふたり旅(105)「こちらだべ」ユキちゃんがアンテナショップの前で立ち止まる。北海道どさんこプラザと書いてある。コンビニよりすこし大きな店構えだ。「こんなところにぜんぶ揃っているの?」「こんなところだから全部そろっているっしょ」定番みやげの菓子。毛ガニをはじめとする海産物と加工品。チーズ、バター、地酒、ビール、ワイン・・・なるほど。コンパクトな中に、北海道らしい品物がこれでもかとばかり並んでいる。これならリクエストされた土産のほとんどが手に入りそうだ。「土産はぜんぶ揃いそうだ。ユキちゃん。もうひとつ教えてくれないか。少し疲れた。ひと休みしたい。ちかくにそんな場所があるかな?」「たっぷり歩いていますからねぇ。ユンケルを過信し過ぎて無理すると、あとで祟るっしょ。すぐそこの通路を右へすすむと、喫茶店があります」「...北へふたり旅(105)北の赤ひげ⑧

  • 北へふたり旅(104)北の赤ひげ⑦

    北へふたり旅(104)タクシーが札幌駅の北口へ滑りこんだ。繁華街に面している南口と様子が異なる。こちらはすこし、閑静な雰囲気がただよっている。「駅中へ入るの?」「はい。ここがおすすめの場所です」札幌駅は駅としての機能だけでなく、おとずれる人が買い物をたのしめる。商業施設としての役割もはたしている。4つのショッピングセンターに、600以上の店舗がある。そのどれかへ行くかと思ったら、西の改札を目指してあるきはじめた。東西をつなぐ通路にたくさんのコインロッカーが並んでいる。コインロッカーの数を見るだけで、駅の観光度がわかる。そういえば北陸新幹線が開通したばかりの金沢駅で、コインロッカー探しに苦労したことがあった。どこを見ても、すべてのコインロッカーが使用中。一時預かりのフロントも、荷物を預けたい観光客でごった返してい...北へふたり旅(104)北の赤ひげ⑦

  • 北へふたり旅(103)北の赤ひげ⑥

    北へふたり旅(103)気がついたら時計が午後の1時をまわっている。今日は旅の3日目、明日の午前10時30分から、帰路の長い電車旅がはじまる。(ということは札幌へ居るのは、実質あと半日か・・・)学生たちの喫茶店でゆっくりコーヒーをのんだ後、海鮮丼が食べたいという妻の希望で、北大近くの食堂へ場所を移した。メニュー表を見て驚いた。一番高い海鮮丼でも1400円。「安いな。大丈夫か此処・・・鮮度は?」「ご心配なく。ここは学生向けの極安食堂だべさ。でも間違っても大盛を頼まないでほしいっしょ。驚くなかれ、普通サイズがすでに超大盛ですから。うふっ」「大盛りの店なのか。ここは」「当たり前です。あなたと違い若い人たちは食欲旺盛。学生たちの胃袋を満足させるのが、こちらのお店の売りなのでしょう。スペシャルをひとつを頼んで、あなたとわた...北へふたり旅(103)北の赤ひげ⑥

  • 北へふたり旅(102)北の赤ひげ⑤

    北へふたり旅(102)「驚いた。薬は出さない。心配だったらユンケル皇帝液を呑めば大丈夫、なんて言いだした。大丈夫か、あの医者は・・・」「うふ。いつもそうなんだべさ。あの先生」診察が終ったあと。あるいて5分ほどの、学生たちが集まる喫茶店へ移動した。「よかったじゃないの。たいしたことなくて」妻は紅茶をかきまぜながらほほ笑んでいる。「他人事だと思って冷静だね。君は」「だってぇ。大病院へ行っていたら診察待ちで、まだ時間を浪費している頃です。ユキちゃんの機転のおかげで短時間で済んだのよ。感謝しなさい。ユキちゃんと赤ひげ先生に」「赤ひげ先生?。さっき診察してくれたのは藪医者じゃなくて、赤ひげだというのか?」「正真正銘の赤ひげ先生、だそうです。ねぇユキちゃん」「はい。赤ひげ大賞というのを知っていますか?。おじさま」「赤ひげ大...北へふたり旅(102)北の赤ひげ⑤

  • 北へふたり旅(101)北の赤ひげ④

    北へふたり旅(101)心電図を受け取った先生が、「ふ~む」と覗き込む。「よく見えんな」メガネを上へずらす。「なるほど。ふむふむ・・・」先生の口の中で言葉が消えていく。すこしの間、沈黙がつづく。沈黙の間が気になる。それほど悪いのか?。危険な状態だろうか・・・「急を要する事態ではないですな」大丈夫でしょうと先生が顔を上げる。「しかし、油断は禁物です。甘く見るとたいへんなことになるかもしれません」「どっちなのですか先生。わたしの症状は・・・」「心電図を見る限り、不整脈が出ています。しかしまぁ、いますぐ入院する必要はないでしょ」「ということは、このまま旅をつづけても大丈夫ということですか?」「旅をつづけても大丈夫。ただし・・・」「ただし?」「群馬へ戻られたら、はやめに心疾患専門病院で検査したほうがいいでしょう」「それは...北へふたり旅(101)北の赤ひげ④

  • 北へふたり旅(100)北の赤ひげ③

    北へふたり旅(100)大病院へ行くかと思ったら、タクシーは小さな医院の前で停まった。(ここか?・・・大丈夫か。古い看板がかかっている町医者だぞ)「学生たちが良く来る病院です」とユキちゃんがささやく。「学割がきくの?。ここは」「うふっ。よかった。冗談が出るまで回復したようです」「タクシーの中ですこし休めたからね」「でも急に動かないで。気を付けてくださいな。病院へ着いたからと言って、安心するのはまだ早いっしょ」孫に諭されるジイャのように病院へみちびかれていく。受付で容態を説明するユキちゃんによどみは無い。「てきぱきしています、あの娘は。おかげで助かります。わたしが説明したのでは要領を得ず、たぶん、しどろもどろですから」待つこと5分。診察室へ通された。中で50代半ばくらいの、メガネをかけた先生がまっていた。「とりあえ...北へふたり旅(100)北の赤ひげ③

  • 北へふたり旅(99)北の赤ひげ②

    北へふたり旅(99)自分なりに元気に歩きはじめた・・・つもりだった。しかし、疲れはすぐにやってきた。改札は無事に通過した。だがさいしょの階段を中ほどまで降りたとき、重い疲労感がやってきた。足が止まった。「まただ。いったいどうしたんだ・・・足が重い」「壁に寄りましょ」妻が声をかけた。階段を乗客たちがつぎつぎ降りてくる。流れをよどませないよう、わたしを壁へと軽く押す。「だから言ったのに。無理は禁物ですって」「すまん。急に体が重くなってきた」「大丈夫ですか?」ユキちゃんが心配そうにのぞき込んで来た。「喫茶店へ行く前に行かなければならない処ができたようです。地下鉄のホームより、地上のほうが近いです」来た道を戻り、改札を左へ曲がると地上へ出る階段があります。先に行きタクシーをつかまえますので、あとからご主人と来てください...北へふたり旅(99)北の赤ひげ②

  • 北へふたり旅(98)街の赤ひげ①

    北へふたり旅(98)ベンチで休息しはじめてかれこれ30分。気分が落ち着いてきた。「なんだったんだ。さっきまでの重い疲労感は・・・」「だいじょうぶ?」妻が顔をよせてくる。落ち着いたみたいだ。もう歩けるだろうと立ち上がる。「無理しないで。若くないんだから」妻が心配そうに見つめる。「どこへ行こうか。ユキちゃん。おすすめはどこだ?」「大通駅には札幌の地下鉄、3路線すべてが乗りいれています。地下歩道を北へあるけばJR札幌駅。南へいくともうひとつの地下街、ポールタウンへ出ます」さすが札幌の中心地、選択肢はやまほどありそうだ。「ランチはまだ早い。どこか落ち着ける所でコーヒーなんか呑みたいな」「それなら3択っしょ。観光客向け、地元民向け、学生御用達、どれがいいべ?」「へぇぇ。学生御用達の店があるの、北の都・札幌に!」「北海道大...北へふたり旅(98)街の赤ひげ①

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